説明

大型のバグフィルター

【課題】
大型のバグフィルターについて、タテ糸が耐熱性で高張力の基布を介在させ、集塵機や廃ガス処理機などへの取り付け後に、フィルターの自重および/または高温の粉塵ガスの濾過によって縦伸長や膨張を起こすことが少なくする。
【解決手段】
主として耐熱性繊維を含有するカードラップと、ラップ間に配置した縦方向に高張力の基布とを備え、基布を中間に介在させてからラップ全体をニードルパンチングで一体化したシート状のフェルト体であり、該基布が、高温使用時に溶融または軟化しない耐熱性繊維製のタテ糸および比較的安価で高温使用時の耐熱性を有しない通常繊維製のヨコ糸からなる織布で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タテ糸が耐熱性で高張力の基布を介在させることにより、集塵機や廃ガス処理機などへの取り付け後に、フィルターの自重および/または高温の粉塵ガスの濾過によって縦伸長や膨張を起こすことが少ない大型のバグフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染防止法は、工場や事業場における事業活動に伴う煤煙、揮発性有機化合物および粉塵の排出などを規制している。このため、都市塵挨や産業廃棄物用の焼却炉、窯炉または石炭ボイラは、大気汚染を防止するために煤塵や粉塵を集塵機によって除去することが必要であり、該集塵機にバグフィルターを取り付け、該集塵機における含塵ガスの出口濃度を排出基準以下にしなければならない。この含塵ガスは、ガス温度が高く且つ酸性物質を多量に含むため、バグフィルターは耐熱・耐酸性であることを要し、該バグフィルターの素材には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、アラミド繊維、金属繊維などのフェルト体を用いる。
【0003】
例えば、特公平2−14456号や特公平2−36704号はPTFE繊維とガラス繊維とを配合した複合フェルト体を開示し、特開2001−262453号はシリカ繊維を耐熱性の有機繊維と混綿フェルト体を開示する。また、フェルト体をバグフィルターとして使用するには、該フェルト体を基布またはスクリムと一体化させ、バグフィルターの耐久性を高めることが必要である。バグフィルターに介在させる基布は一般に織物であって、その織物はフェルト体と同一または類似の素材であり、この素材として耐熱性のPTFE繊維、PPS繊維、ポリイミド繊維、アラミド繊維やガラス繊維を用いる。一例として、特許第3612809号では、PPS繊維の紡績糸製織物からなる基布を用い、これをPPS繊維のウェブと交絡させたフェルト体でバグフィルターを作製する。
【0004】
一方、バグフィルターにおいて、コストダウンのために基布を介在させない場合、集塵機に取り付け後に自重で伸びやすく、さらに高圧の含塵ガスの濾過によって膨れ上がりが発生しやすい。特に、長さが6mに達する大型で重いバグフィルターでは、自重による伸びさらに高圧ガスの濾過による膨れ上がりが大きくなるうえに、高圧空気を逆に流す堆積ダストの払い落し時の繰り返し振動にフェルト体が耐えることができず、バグフィルターの使用可能時間が著しく短くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平2−14456号公報
【特許文献2】特公平2−36704号公報
【特許文献3】特開2001−262453号公報
【特許文献4】特許第3612809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大型のバグフィルターに関して、フィルター自体の所定の耐熱性や濾過性能を維持させるため、フェルト体間に基布を介在させることが必須である。しかしながら、この基布として、特許第3612809号のようにPPS繊維の紡績糸製織物を用いたり、または高価なPTFE繊維、ポリイミド繊維またはアラミド繊維製の織布を使用すると、バグフィルターの製造コスト上昇に直結してしまう。
【0007】
現在のように、東南アジア諸国から安価な製品の輸入が急増するとともに、ユーザーからの経費削減の要求が非常に強い場合には、フィルター本来の耐熱性や濾過性能を殆ど下げずに、その製造コストを削減しなければならない。このコスト削減に際して、フェルト体を構成する耐熱性繊維を安価なものに変更することはできず、介在させる基布について検討の余地が残るのみである。この基布について、耐熱性を欠く安価な繊維製のものを使用すると所定の耐久性を維持できず、基布の変更も現実には実現していない。
【0008】
本発明は、基布を介在させるバグフィルターに関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、タテ糸とヨコ糸が異なる基布を使用することにより、集塵機などへ取り付けた後に伸長したり膨れ上がることが少なく、しかも耐久性が高い大型のバグフィルターを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、耐熱性繊維の量が少ない基布を介在させるので比較的安価な大型のバグフィルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るバグフィルターは、通常、集塵機や粉塵濾過に用いる長さ3m以上の大型のものである。本発明のバグフィルターは、主として耐熱性繊維を含有するカードラップと、ラップ間に配置した縦方向に高張力の基布とを備え、基布を中間に介在させてからラップ全体をニードルパンチングで一体化したシート状のフェルト体であり、該基布が、高温使用時に溶融または軟化しない耐熱性繊維製のタテ糸および比較的安価で高温使用時の耐熱性を有しない通常繊維製のヨコ糸からなる織布で構成されることにより、該基布中のタテ糸で高温使用時の縦伸長を防止する。
【0010】
本発明のバグフィルターに関して、用いる基布において、耐熱性繊維製のタテ糸は、PTFE繊維、メタアラミド繊維、PPS繊維、p−アラミド繊維,共重合ポリアミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ヘテロ環繊維、ポリイミド繊維、ポリ−p−ベンズアミド繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、炭素繊維、耐炎繊維、セラミック繊維、ロックウール、ステンレススチール繊維、アモルファス繊維またはこれらの複合繊維、混紡糸からなり、一方、通常繊維製のヨコ糸は、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、回収再生綿、綿糸またはこれらの混紡糸からなると好ましい。
【0011】
本発明のバグフィルターにおいて、ラップを構成する繊維は、主としてPTFE繊維、PPS繊維、メタアラミド繊維、PTFE繊維とガラスまたはシリカ繊維との混綿物、PPS繊維とガラスまたはシリカ繊維との混綿物、メタアラミド繊維とガラスまたはシリカ繊維との混綿物であると好ましい。本発明のバグフィルターは、シート状のフェルト体を耐熱性繊維糸によって筒状に縫着すればよく、シート状のフェルト体の表面において、耐熱性繊維糸によって複数本の直線ステッチを横方向に加えることにより、耐熱性繊維糸でシート状のフェルト体を筒状に縫着すると、その縦縫着部を加えて、直線ステッチが円周方向にほぼ等間隔に配列される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る大型のバグフィルターは、全体が耐熱性繊維製である基布の代わりに、ヨコ糸が通常繊維製であることで比較的安価な基布を介在させ、この基布はタテ糸だけを耐熱性繊維製で織成している。本発明のバグフィルターは、基布におけるタテ糸が高い耐熱性を保持することでフェルト体とともに高温環境下で長期間存在し、このタテ糸の存在によって使用時に伸びたり膨れ上がることが少ない。この基布は、比較的軽量で柔軟であるので大型のバグフィルターであっても集塵機などへ取り付けやすい。
【0013】
本発明のバグフィルターについて、基布およびフェルト体の製造は従来と同様であり、製造時にコストアップにつながる要因は存在しない。大型のバグフィルターにおいて、基布は必須であるけれども、実際に使用時の伸長や膨張を防止するのはタテ糸であって、ヨコ糸は主として基布の形状の保持するために織り込むだけにすぎない。基布は、タテ糸だけで形状を保持できないため、通常繊維からなるヨコ糸を織り込んでおり、ヨコ糸は比較的細く且つその繊維は比較的安価なものでよい。
【0014】
本発明のバグフィルターは、安価なガラス繊維やシリカ繊維を基布のタテ糸の一部または全部に使用するといっそう安価になり、仮に高価なPTFE繊維をタテ糸に使用しても、従来のバグフィルターに比べると基布のタテ糸だけでよいので経済的である。また、本発明のバグフィルターは、使用時の寸法安定性が良いので長期間の使用が可能であり、数年に亘って交換不要であるから、交換作業用の人員や時間についても節約可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】バグフィルターを構成するフェルト体を示す概略断面図である。
【図2】本発明で用いる基布を例示する部分拡大斜視図である。
【図3】本発明に係る大型のバグフィルターの一例を示す概略斜視図である。
【図4】フェルト体の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を図面によって説明すると、図1において、本発明のバグフィルター1(図3)を構成するシート状のフェルト体2の一例を示す。シート状のフェルト体2は、主として耐熱性の短繊維からなり、短繊維をカード機に通してウェブとしてから、該ウェブを用途に応じて積層して所望の目付のカードラップを形成する。
【0017】
このカードラップは、ニードルパンチングで基布3とともに一体化してシート状のフェルト体2とする。基布3は、図1に例示するように、一般にラップ4,5の間に配置するけれども、単数または複数枚をラップの上面や下面または両面に配置したり、複数枚を分けて配置することも可能である。
【0018】
本発明で用いる基布3は、図2に例示するように、通常の平織布であっても、タテ糸6とヨコ糸7を格子状に交差させて交点を融着したものでもよく、フェルト体2が高温使用時に伸びるのを防ぐために、少なくともタテ糸が耐熱性で高張力であることを要する。
【0019】
このため、基布3におけるタテ糸6は主として耐熱性繊維製であり、例えば、タテ糸6は、PTFE繊維、メタアラミド繊維、PPS繊維、パラアラミド繊維,共重合ポリアミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ヘテロ環繊維、ポリイミド繊維、ポリ−p−ベンズアミド繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、炭素繊維、耐炎繊維、セラミック繊維、ロックウール、ステンレススチール繊維、アモルファス繊維またはこれらの複合繊維や混紡糸からなり、その一部に高張力のポリエステル繊維や66ナイロン繊維などを加えてもよい。
【0020】
一方、基布3におけるヨコ糸7は、耐熱性を有しない比較的安価な通常繊維製であればよく、高温環境下において分解または溶融してもよい。例えば、ヨコ糸7は、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、回収再生綿、綿糸またはこれらの混紡糸からなり、その繊度はタテ糸6と同等またはそれ以下である。
【0021】
得たフェルト体2は、ニードルパンチング後に、テンタープレートやカレンダなどで約200〜300℃で数分間熱処理してもよい。さらに、フェルト体2は、筒状のバグフィルター1(図3)に縫製するため、カレンダやホットプレスなどの加熱・加圧処理によって所定の厚みと密度つまり通気度に調整し、例えば、約130〜200℃で数分間プレスすることによって所定のものを得る。この時に、フェルト体2の片面または両面を毛焼き加工して遊び毛を除く場合もある。
【0022】
フェルト体2を構成する耐熱性繊維は、バグフィルター1として高熱環境で使用する際に、含塵ガスの温度が150〜200℃前後に達しても耐久性を有することを要し、比較的柔軟な有機繊維を少なくとも一部含有すると好ましい。使用可能な有機繊維として、高融点または無融点のPTFE繊維、メタアラミド繊維,PPS繊維、p−アラミド繊維(ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維),共重合ポリアミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ヘテロ環繊維、ポリイミド繊維、ポリ−p−ベンズアミド繊維などが例示できる。また、使用可能な無機繊維として、シリカ繊維、ガラス繊維、炭素繊維、耐炎繊維、セラミック繊維、ロックウールなど、使用可能な金属繊維として、ステンレススチール繊維、アモルファス繊維などが例示できる。
【0023】
フェルト体2を構成する耐熱性繊維には、比較的融点の低い有機繊維を一部含有させてもよく、この有機繊維として66ナイロン繊維、ポリエステル繊維が例示できる。これらの繊維は、複合繊維や混合繊維の態様であってもよい。一例として、耐熱性繊維は、柔軟性、物性およびコストの点からPTFE繊維、PPS繊維および/またはメタアラミド繊維であり、さらにポリエステル繊維を一部加えてもよい。
【0024】
フェルト体2において、2種以上の繊維を混綿する場合、PTFE繊維とシリカ繊維、PTFE繊維とガラス繊維、PPS繊維またはメタアラミド繊維とシリカ繊維が好適である。有機繊維を無機繊維と混綿する場合、カーディングを可能とし且つ柔軟性を付与するために、耐熱性の有機繊維を少なくとも50%以上含有させることを要する。
【0025】
高温炉ガスを濾過する場合、フェルト体2を2層または3層以上の積層構造にしてもよい。例えば、塵埃滞積側のフェルト層は、PTFE繊維であるPTFEステープルファイバまたはテトラフルオロエチレン−パーフルオロ共重合体(PFA)繊維、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)繊維、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)繊維などを使用する。このPTFEステープルファイバは、分枝および/またはループを有しているのが好ましく、自己粘着性であるので加熱・加圧加工で毛羽立ちを抑制でき且つ平滑である。好ましくは、PTFEステープルファイバの繊維径は、0.5〜30デシテックス好ましくは1.5〜10デシテックスであり、該ステープルファイバの繊維長は20〜150mmである。
【0026】
また、フェルト体2には、二酸化チタンなどの光触媒反応物質を付着させてもよい。このバグフィルターについて、集塵機においてフィルタ内部に紫外線を照射すると、該バグフィルターにおいて塵埃の捕集と二酸化チタンの光触媒反応によってダイオキシンを除去できる。二酸化チタンは、その粉末を水溶液化して懸濁液にすると、ポリイミド繊維やアラミド繊維などのフェルト体2では浸漬によって容易に付着でき、PTFE繊維ではフェルト体表面に尿素樹脂加工を施し、この尿素樹脂加工面に二酸化チタンを付着させる。二酸化チタンの付着量は、一般に20〜100g/mであると好ましい。
【0027】
図4に示すように、フェルト体のダスト滞積側に剥離性シート8を縫合したりまたはニードルパンチで一体化させてもよい。剥離性シート8は、滞積ダストを効率よく落下させるのに適した素材から構成し、例えば、フッ素樹脂の多孔質膜、フッ素樹脂フィルム、フッ素樹脂コート不織布、長繊維スパンボンド不織布などを用い、ダストの種類や使用環境に応じて適宜に選択する。より好適な剥離性シート8は、コスト的にはポリエステルスパンボンド不織布であり、耐熱用途ではフッ素樹脂の多孔質膜である。
【0028】
シート状のフェルト体2の寸法は、製造するバグフィルター1の大きさに応じて定める。バグフィルター1は、比較的大型の集塵機用であって、通常、直径100〜200mm、長さ3〜10mに達する。これに応じて、フェルト体2は幅330〜660mm、長さ3〜10m程度に定めると好ましい。
【0029】
図3に示すように、バグフィルター1は、フェルト体2を縦方向に筒状に巻き、端部重合部9を耐熱性繊維糸10で縫着して製造する。耐熱性繊維糸10は、フェルト体2の構成繊維と同一または類似の縫い糸であり、ガラス繊維、シリカ繊維、PTFE繊維および/またはPPS繊維製の単糸であると好ましく、この単糸の太さは10〜30番手である。耐熱性繊維糸10による直線ステッチ11は、工業用ミシンを用いて1本針2本糸の本縫い、1または2本針1または2本糸の単環縫い、1〜3本針2〜4本糸の二重環縫いなどであればよい。
【0030】
バグフィルター1において、端部重合部9における長手方向の直線ステッチ11は、実質的に縦伸長を防止する機能を持っている。直線ステッチ11のこの機能を効果的に利用するため、フェルト体2において、さらに縦方向の直線ステッチ12を等間隔に平行に縫製しておいてもよい。直線ステッチ12は、ピッチ1〜5mmで縦方向に施し、用いる耐熱性繊維糸の繊度は200デシテックス以上である。この耐熱性繊維糸の繊度が例えば200デシテックス以上であると、バグフィルター1の縦伸長を防止する効果を有する。この結果、実質的に同一の直線ステッチ11,12が、円周方向にほぼ等間隔に3〜6本配列され(図3参照)、フィルターの自重による伸びや高圧ガスの濾過による膨れ上がりの防止を補強できる。端部重合部9に用いる耐熱性繊維糸10には、直線ステッチ12を形成する繊維糸と同等またはより太い縫い糸を用いればよい。
【0031】
図示しないけれども、フェルト体2の表面に、耐熱性繊維糸で横方向の直線ステッチを複数本加えておいてもよい。得たフェルト体2を筒状に縫着すれば、バグフィルターにおいて、耐熱性繊維糸の環状ステッチを長手方向にほぼ等間隔に配列することになる。等間隔の環状ステッチを複数本施すと、バグフィルターの耐圧性がいっそう増大する。
【0032】
バグフィルター1において、その目付は全体として300〜900g/mであると好ましく、より好ましくは350〜700g/mである。この目付が300g/m未満であると、バグフィルター1(図3)として機械強度が低くなるうえに所望の耐久性および濾過性能を欠きやすく、900g/mを超えると、コスト的に不経済であるうえに重くなりすぎて自重による伸長の可能性が生じる。
【実施例1】
【0033】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。基布3について、タテ糸6として440デシテックスのPTFEマルチフィラメント糸を、およびヨコ糸7として440デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸をそれぞれ用いて、織密度が縦/横=34/16(本/インチ)の織物を作製した。この基布3の目付は90g/mであった。
【0034】
フェルト体2に関して、繊度7.4デシテックスのPTFE短繊維(商品名:トヨフロン、東レ製)を100%用いてカードラップを作製し、このカードラップのほぼ中央に基布3を挿んでニードルパンチングによって絡合一体化させる。得たフェルト体2は、目付800g/mであった。このフェルト体2の縦方向49N荷重時の伸びは1.5%であった。フェルト体2を200℃で200時間熱処理した後の縦方向49N荷重時の伸びは1.5%であり、熱処理前と変化がなかった。また、200℃加熱時の縦方向の伸びは2%であった。これらの物性値により、このフェルト体2で縫製した大型のバグフィルター1は、200℃以上の高温で使用するごみ焼却場の粉塵濾過用バグフィルターとして好適に用いることができる。
【実施例2】
【0035】
実施例1においてカードラップとしてPTFE短繊維を100%用いる代わりに、PTFE短繊維70%、無機繊維30%を均一に混綿したものを用いた以外は実施例1と同様にして、目付700g/m2のフェルト体2を得た。このフェルト体2の縦方向49N荷重時の伸びは1.6%であり、その他の物性も問題ないので、このフェルト体2で縫製した大型のバグフィルターは、200℃以上の高温で使用するごみ焼却場の粉塵濾過用バグフィルターとして好適に用いることができる。
【0036】
比較例1
基布を用いない以外は実施例1と同様にして、目付800g/mのフェルト体を作製した。このフェルト体の縦方向49N荷重時の伸びは5.2%であり、自重による伸びが生じるため、バグフィルター用として用いることはできない。
【0037】
比較例2
基布として、タテ糸、ヨコ糸ともに440デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸を用いた織密度20/16(本/インチ)の織物を用いた以外は、実施例1と同様にして、目付750g/mのフェルト体2を得た。このフェルト体2の初期の縦方向49N荷重時の伸びは1.4%であったが、200℃で200時間熱処理した後の縦方向49N荷重時の伸びは6.0%となり、200℃以上の高温で使用するごみ焼却場の粉塵濾過用バグフィルターとして用いることはできない。
【実施例3】
【0038】
基布3において、タテ糸6として440デシテックスのメタアラミド繊維の紡績糸を、およびヨコ糸7に440デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸をそれぞれ用いて、織密度が縦/横=20/16(本/インチ)の織物基布を作製した。この基布3の目付は60g/mであった。
【0039】
フェルト体2に関して、繊度2.2デシテックスのメタアラミド短繊維(商品名:ノーメックス、デュポン製)を100%用いてカードラップを作製し、このカードラップのほぼ中央に基布3を挿んでニードルパンチングにて絡合一体化することで、目付500g/mのフェルト体2を得た。このフェルト体2の縦方向49N荷重時の伸びは2.0%であった。またこのフェルト体2を200℃で200時間熱処理した後の縦方向49N荷重時の伸びは2.0%で熱処理前と変化がなかった。これらの物性値により、このフェルト体2で縫製した大型のバグフィルター1は、200℃程度の高温で使用するアスファルトおよびセメントプラント用バグフィルターとして好適に用いることができる。
【実施例4】
【0040】
基布3において、タテ糸6として440デシテックスのPPS紡績糸を、およびヨコ糸7に440デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸をそれぞれ用いて、織密度が縦/横=22/16(本/インチ)の織物基布を作製した。この基布3の目付は70g/mであった。
【0041】
フェルト体2に関して、繊度2.2デシテックスのPPS短繊維(商品名:トルコン、東レ製)を100%用いてカードラップを作製し、このカードラップのほぼ中央に基布3を挿んでニードルパンチングにて絡合一体化することで、目付500g/mのフェルト体2を得た。このフェルト体2の縦方向49N荷重時の伸びは1.9%であった。また、このフェルト体2を170℃で200時間熱処理した後の縦方向49N荷重時の伸びは1.9%で熱処理前と変化がなかった。これらの物性値により、このフェルト体2で縫製した大型のバグフィルター1は、150℃程度の高温で使用するボイラーや焼却場の粉塵濾過用バグフィルター1として好適に用いることができる。
【実施例5】
【0042】
図4に示すフェルト体13を製造するために、実施例4で製造したフェルト体2の片面に、PTFE樹脂のディスパージョンをスプレーで塗布してから、ロール対を通して厚さ30μmのPTFE樹脂の多孔質膜である剥離性シート8を貼り合わせた。このロール対は、温度220℃、圧力0.15MPaであり、速度2.5m/分でラミネート処理すると所望のフェルト体13を得た。
【0043】
このフェルト体13で縫製した大型のバグフィルター1は、150℃程度の高温で使用するボイラーや焼却場の粉塵濾過用バグフィルターとして好適に用いることができ、剥離性シート8は、滞積ダストを効率よく落下させる。
【符号の説明】
【0044】
1 バグフィルター
2 フェルト体
3 基布
4,5 カードラップ
6 タテ糸
7 ヨコ糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵機や粉塵濾過機などに取り付ける大型のバグフィルターであって、主として耐熱性繊維を含有するカードラップと、ラップ間に配置した縦方向に高張力の基布とを備え、基布を中間に介在させてからラップ全体をニードルパンチングで一体化したシート状のフェルト体であり、該基布が、高温使用時に溶融または軟化しない耐熱性繊維製のタテ糸および比較的安価で高温使用時の耐熱性を有しない通常繊維製のヨコ糸からなる織布で構成されることにより、該基布中のタテ糸で高温使用時の縦伸長を防止する大型のバグフィルター。
【請求項2】
用いる基布において、耐熱性繊維製のタテ糸が、PTFE繊維、メタアラミド繊維、PPS繊維、p−アラミド繊維,共重合ポリアミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ヘテロ環繊維、ポリイミド繊維、ポリ−p−ベンズアミド繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、炭素繊維、耐炎繊維、セラミック繊維、ロックウール、ステンレススチール繊維、アモルファス繊維またはこれらの複合繊維、混紡糸からなる請求項1記載のバグフィルター。
【請求項3】
用いる基布において、通常繊維製のヨコ糸が、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、回収再生綿、綿糸またはこれらの混紡糸からなる請求項1記載のバグフィルター。
【請求項4】
ラップを構成する繊維が、主としてPTFE繊維、PPS繊維、メタアラミド繊維、PTFE繊維とガラスまたはシリカ繊維との混綿物、PPS繊維とガラスまたはシリカ繊維との混綿物、メタアラミド繊維とガラスまたはシリカ繊維との混綿物である請求項1に記載のバグフィルター。
【請求項5】
シート状のフェルト体を耐熱性繊維糸によって筒状に縫着する請求項1記載のバグフィルター。
【請求項6】
シート状のフェルト体の表面において、耐熱性繊維糸によって複数本の直線ステッチを横方向に加えることにより、耐熱性繊維糸でシート状のフェルト体を筒状に縫着すると、その縦縫着部を加えて、直線ステッチが円周方向にほぼ等間隔に配列される請求項1記載のバグフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−45848(P2011−45848A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197655(P2009−197655)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000136413)株式会社フジコー (26)
【Fターム(参考)】