説明

大型容器および廃棄物含有ブロック

【課題】コンクリートスラッジ等の廃棄物を収容して処分するための大型容器であって、簡易な構造の壁体によって、廃棄物に含まれる種々の物質が周囲の環境中に拡散するのを防ぐことができ、かつ、例えば1辺が4m以上の箱型の大型容器として作製しても、移動等が可能な程度の質量に抑えることができ、大型化による廃棄物処理の効率化を図ることのできる大型容器を提供する。
【解決手段】大型容器1は、容積50m3以上の容器本体2と、蓋体3を含む。容器本体2および蓋体3は、セメント、平均粒径1.0μm以下のポゾラン質微粉末、最大粒径2mm以下の細骨材、金属繊維、減水剤および水を含むセメント系配合物の硬化体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事等で発生するコンクリートスラッジ等の廃棄物を収容して処分するための大型容器、および該大型容器内に廃棄物を収容してなる廃棄物含有ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を収容して処分するためのコンクリート製の容器として、種々のものが提案されている。
一例として、合成ゴム等の被覆材で内面をコーティングした強化コンクリートからなる函体と、この函体の中に収容された所定の廃棄物と、この廃棄物の上面を覆う合成ゴム等の液状被覆材と、上記の函体に嵌合させた蓋とからなる廃棄物処理ユニットが提案されている(特許文献1)。
他の例として、鉄筋コンクリートからなる外層とポリエチレン製容器からなる内層との二重構造を有する容器構造物の中に、廃棄物とセメントを一緒に練り合わせたものを投入し固化させた後、この固化物の上に普通モルタルを加え、次いで、ポリエチレン製容器に蓋を固定し、最後に、ポリエチレン製容器の上方にて格子状に鉄筋を縫い合わせ、この格子状の鉄筋を含む空間内に普通コンクリートを流し込んで、ポリエチレン製容器を密封してなる、廃棄物を収容した構造物が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−176396号公報
【特許文献2】特開2000−176397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来の技術においては、廃棄物に含まれる種々の物質がコンクリートを通過して周囲の環境中に拡散するのを防ぐために、コンクリート製の箱型の容器本体の内側に、廃棄物の通過を遮断するための内壁面形成材料として、合成ゴム等の被覆材や、ポリエチレン製容器を設けている。しかし、このような内壁面形成材料が必要であることから、容器の製造に手間がかかるという問題がある。
一方、普通コンクリートを用いて1辺が4m以上の箱型の容器を製造する場合、強度を確保するために、この箱型の容器を構成する壁体の厚さを20cm以上に定めるとともに、普通コンクリートの内部に多数の補強用鉄筋を配設する必要がある。しかし、この場合、箱型の容器の質量が大きくなり、箱型の容器を移動させる作業等が非常に困難になる。この点、廃棄物を収容可能な1辺が4m以上の箱型の大型容器であって、この大型容器を構成する壁体の厚さが10cm程度であり、かつ十分な強度を有する大型容器を製造することができれば、大型容器の移動時に必要な強度等を確保しつつ、廃棄物の処理効率が高まり、好都合である。
そこで、本発明は、合成ゴム等の被覆材を含む二重構造の壁体を採用しなくても、単一の材料からなる簡易な構造の壁体によって、廃棄物に含まれる種々の物質が周囲の環境中に拡散するのを防ぐことができ、かつ、例えば1辺が4m以上の箱型の大型容器として作製しても、移動等が可能な程度の質量に抑えることができ、容器の大型化による廃棄物処理の効率化を図ることのできる大型容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の材料を含むセメント系配合物を用いて、廃棄物を収容するための不透水性の容器本体を形成することによって、(a)この容器本体の内面を合成ゴム等でコーティングしなくても、廃棄物に含まれる種々の物質の周囲環境中への拡散を防ぐことができること、および、(b)補強用の鉄筋を不要もしくは少量にしつつ、この容器本体を構成する壁体の厚さを小さくすることができ、例えば1辺が4m以上の箱型の大型容器として作製しても、容器全体の質量が過大とならず、大型容器の移動等が可能になること、を見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] 容積50m3以上の容器本体を含む大型容器であって、上記容器本体が、セメント、平均粒径1.0μm以下のポゾラン質微粉末、最大粒径2mm以下の細骨材、金属繊維、減水剤および水を含むセメント系配合物の硬化体からなることを特徴とする大型容器。
[2] 上記セメント系配合物が、平均粒径3〜20μmの無機粉末を含む前記[1]の大型容器。
[3] 上記容器本体と同様のセメント系配合物の硬化体からなる蓋体を含む前記[1]又は[2]の大型容器。
[4] 上記容器本体と上記蓋体の間に、上記容器本体と同様のセメント系配合物の硬化体からなる接合部を有する前記[3]の大型容器。
[5] 上記容器本体は、1辺が4m以上の箱型の成形体であり、かつ、当該容器本体を構成する壁体の厚さが7〜13cmである前記[1]〜[4]のいずれかの大型容器。
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかの大型容器と、該大型容器の中に収容された廃棄物を含むことを特徴とする廃棄物含有ブロック。
【発明の効果】
【0006】
本発明の大型容器は、容器本体が不透水性であるので、この容器本体に収容される廃棄物中の種々の物質が周囲の環境中に拡散するのを防ぐことができる。また、容器本体と同様の材料によって、蓋体や、容器本体と蓋体の接合部を形成することによって、容器全体の不透水性、密封性および機械的強度を確保することができる。
また、本発明の大型容器は、容器本体の材料が大きな機械的強度を有することから、補強用の鉄筋を要しないかもしくは少量の使用で足りるとともに、容器本体を構成する壁体の厚さを小さくすることができる。例えば1辺が4m以上の箱型の大型容器として作製しても、移動等が可能な質量に抑えることができる。そして、容器の大型化によって、廃棄物処理の効率化を図ることができる。
また、本発明の大型容器は、容器本体が単一の材料からなるので、簡易な工程によって容易かつ効率的に製造することができる。また、容器本体と同様の材料によって、蓋体や、容器本体と蓋体の接合部を形成することによって、さらなる製造の容易化および効率化を図ることができる。
さらに、本発明の大型容器は、緻密性に優れた材料からなるため、使用時に周囲の環境中から水分が浸透することがなく、優れた耐久性を有する。そのため、本発明の大型容器は、廃棄物を収容した後、屋外に野積みするかもしくは土中に埋設して処分することの他、例えば、防波ブロック等の用途に利用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の大型容器は、通常、廃棄物を収容するための、開口部を有する容器本体と、この容器本体と組み合わせて用いられる、上記開口部に取り付け可能な蓋体とからなる。
なお、容器本体の開口部から廃棄物を投入した後、この開口部からモルタル、コンクリート等の硬化性組成物を流し込んで、廃棄物を密封することもできる。しかし、この場合、硬化性組成物の使用量が大きくなる傾向がある。そのため、本発明においては、容器本体と蓋体の組み合わせを用いることが好ましい。
容器本体は、セメント、平均粒径1.0μm以下のポゾラン質微粉末、最大粒径2mm以下の細骨材、金属繊維、減水剤および水を含むセメント系配合物の硬化体からなるものである。
以下、容器本体の材料について詳しく説明する。
セメントの種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメント等を用いることができる。
本発明において、早期強度発現性を向上させようとする場合は、早強ポルトランドセメントを使用することが好ましく、配合物の流動性を向上させようとする場合は、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
【0008】
本発明においては、平均粒径が1.0μm以下のポゾラン質微粉末が用いられる。平均粒径が1.0μmを超えると、硬化体の強度発現性が低下するので、好ましくない。
ポゾラン質微粉末としては、例えば、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降シリカ等が挙げられる。中でも、シリカフュームおよびシリカダストは、平均粒径が1.0μm以下であり、粉砕等を行なう必要がないので、コスト的に有利である。
ポゾラン質微粉末の配合量は、配合物の流動性や硬化体の強度発現性の観点から、セメント100質量部に対して、5〜50質量部とするのが好ましい。
該配合量が5質量部未満または50質量部を超えると、配合物の流動性が低下し、成形等の作業が困難となる。また、硬化体の強度発現性および耐久性が低下するうえ、硬化体の使用開始後に、硬化体の一部に欠けや剥れ等が発生するおそれがあり、それに伴う外観の悪化も生じ得るので、好ましくない。
【0009】
本発明においては、最大粒径2mm以下の細骨材が用いられる。細骨材の最大粒径が2mmを超えると、硬化体の強度発現性が低下するので好ましくない。
なお、本発明においては、硬化体の強度発現性等の観点から、最大粒径が1.5mm以下の細骨材を用いることが好ましい。
細骨材としては、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂又はこれらの混合物等を使用することができる。
細骨材の配合量は、配合物の流動性や、硬化体の強度発現性、さらには、自己収縮や乾燥収縮の低減、水和発熱量の低減等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部、より好ましくは80〜180質量部である。
【0010】
本発明においては、金属繊維が用いられる。
金属繊維としては、例えば、鋼繊維、アモルファス繊維等が挙げられる。中でも、鋼繊維は、高い強度を有し、かつコストや入手のし易さの点でも優れているため、好ましく用いられる。
金属繊維の形状および寸法は、好ましくは、長さが2mm以上で、長さ/直径の比が20以上であり、より好ましくは、長さが2〜30mmで、長さ/直径の比が20〜200である。
金属繊維の長さが2mm未満では、曲げ強度を向上させる効果が低下するので、好ましくない。該長さが30mmを超えると、混練の際にファイバーボールが生じ易くなるので、好ましくない。
金属繊維の長さ/直径の比が20未満では、同一配合量(同一体積)での本数が少なくなり、曲げ強度を向上させる効果が低下するので、好ましくない。該比が200を超えると、金属繊維自身の強度が不足し、張力を受けた際に切れ易くなるので、好ましくない。
金属繊維の配合量は、配合物中の体積割合で、好ましくは0.1〜6%、より好ましくは0.5〜5.5%である。該配合量が0.1%未満では、硬化体の曲げ強度が低下することがある。該配合量が6%を超えると、混練時の作業性等を確保するために単位水量を増加しなければならず、硬化体の強度の低下を招くことがある。
【0011】
減水剤としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を使用することができる。中でも、ポリカルボン酸系の高性能減水剤および高性能AE減水剤は、減水効果が大きいため、好ましく用いられる。
減水剤の配合量は、セメント100質量部に対して、固形分換算で好ましくは0.1〜4.0質量部、より好ましくは0.3〜1.5質量部である。該配合量が0.1質量部未満では、混練が困難になるとともに、配合物の流動性が低下するので、好ましくない。該配合量が4.0質量部を超えると、硬化体の強度発現性が低下するので、好ましくない。
なお、減水剤は、液状と粉末状のいずれでも使用可能である。
水量は、セメント100質量部に対して、好ましくは10〜30質量部、より好ましくは15〜25質量部である。該量が10質量部未満では、混練が困難になるとともに、配合物の流動性が低くなるので、好ましくない。該量が30質量部を超えると、硬化体の強度発現性が低下するので、好ましくない。
【0012】
本発明においては、配合物の流動性や、硬化体の緻密性や耐久性を向上させる観点から、前記配合物に、平均粒径3〜20μm(好ましくは4〜10μm)の無機粉末を含ませることが好ましい。配合物の流動性を高めることによって、硬化体の製造が容易になる。また、硬化体の緻密性や耐久性を向上させることによって、大型容器の耐久性を向上させることができる。無機粉末の平均粒径が上記範囲外では、配合物の流動性、硬化体の緻密性や耐久性を向上させる効果が小さくなるので好ましくない。
無機粉末としては、スラグ、石灰石粉末、長石類、ムライト類、アルミナ粉末、石英粉末、フライアッシュ、火山灰、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末等が挙げられる。中でも、スラグ、石灰石粉末、石英粉末は、コストの点や硬化後の品質安定性の点で好ましく用いられる。
無機粉末の配合量は、配合物の流動性や、硬化体の緻密性や耐久性を向上させる観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは60質量部以下、より好ましくは5〜50質量部である。
【0013】
本発明においては、硬化体の靭性を高める観点から、前記配合物に、平均粒度1mm以下の繊維状粒子又は薄片状粒子を含ませることができる。ここで、粒子の粒度とは、その最大寸法の大きさ(特に、繊維状粒子ではその長さ)である。繊維状粒子又は薄片状粒子の平均粒度が1mmを超えると、硬化体の靭性を高める効果が小さくなるので好ましくない。
繊維状粒子としては、ウォラストナイト、ボーキサイト、ムライト等が、薄片状粒子としては、マイカフレーク、タルクフレーク、バーミキュライトフレーク、アルミナフレーク等が挙げられる。
繊維状粒子又は薄片状粒子の配合量は、配合物の流動性や、硬化体の靱性、緻密性や耐久性等の観点から、セメント100質量部に対して、好ましくは35質量部以下、より好ましくは1〜25質量部である。
なお、繊維状粒子においては、硬化体の靱性を高める観点から、長さ/直径の比で表される針状度が3以上のものを用いるのが好ましい。
【0014】
材料の混練方法は、特に限定されるものではなく、例えば、
(1)水、減水剤以外の材料を予め混合して、プレミックス材を調製し、該プレミックス材、水および減水剤をミキサに投入し、混練する方法;
(2)水以外の材料(ただし、減水剤としては粉末状のものを使用する。)を予め混合して、プレミックス材を調製し、該プレミックス材および水をミキサに投入し、混練する方法;
(3)各材料を、それぞれ個別にミキサに投入し、混練する方法;
等が挙げられる。
混練に用いるミキサとしては、通常のコンクリートの混練に用いられる任意のタイプのミキサを用いることができ、例えば、揺動型ミキサ、パンタイプミキサ、二軸練りミキサ等が挙げられる。
混練後、所定の型枠内に配合物を投入して成形し、その後、養生すれば、所定の形状を有する容器本体が得られる。なお、養生方法としては、気中養生、水中養生、蒸気養生等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられるセメント系配合物の物性は、次の通りである。
本発明で用いられる配合物は、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において15回の落下運動を行わないで測定したフロー値(以下、「0打ちフロー値」ともいう。)が、230mm以上、好ましくは240mm以上であり、流動性に優れるものである。そのため、配合物の混練作業や、配合物を型枠内に投入して成形する作業等を容易に行なうことができる。特に、本発明においては、容器本体が例えば1辺が4m以上の箱型であり、かつ、容器本体を構成する壁体の厚さが10cm程度と小さくても、配合物が優れた流動性を有することから、型枠内の空間の隅々まで配合物を行き渡らせることができる。
上記配合物の硬化体は、130N/mm2以上の圧縮強度と、25N/mm2以上の曲げ強度を発現するなど、極めて大きな機械的強度を有するものである。そのため、容器本体を構成する壁体の厚さの削減を図ることができる。また、補強用の鉄筋(鉄筋コンクリート用の鉄筋)を不要にするかもしくはその使用量を少なくすることができる。
【0016】
上記配合物の硬化体は、構造的に極めて緻密に形成されているので、水を浸透させることがなく、例えば、容器本体の中に収容された廃棄物に含まれている液状物等が、容器本体の壁体を通過して周囲の環境中に拡散したり、あるいは、周囲の環境中の水分が、容器本体の壁体を通過して容器本体の中に浸入するのを阻止することができる。また、通常のコンクリートに見られるような、冬季における浸入した水分の凍結融解による強度の低下等が生じ難い。さらに、硬化体中の金属繊維に錆が発生せず、金属繊維による補強効果が長年に亘って維持される。
【0017】
容器本体の容積は、50m3以上、好ましくは70m3以上、より好ましくは80m3以上である。該容積が50m3未満では、廃棄物の収容量が小さくなり、廃棄物の処理効率が低下するので、好ましくない。
容器本体の容積の上限値は、特に限定されないが、容器の移動を可能とするために、好ましくは500m3以下、より好ましくは400m3以下である。
容器本体の形状は、特に限定されないが、好ましくは、上方が開口した箱型である。この場合、容器本体の1辺の寸法は、廃棄物の処理効率を高める観点から、好ましくは4m以上である。該寸法の上限値は、特に限定されないが、容器の移動容易性の観点から、好ましくは10m以内である。また、容器本体の全体の寸法は、廃棄物の処理効率の向上、および容器の移動容易性の観点から、好ましくは、5〜10m(長さ)×4〜6m(幅)×4〜6m(高さ)である。
【0018】
容器本体を構成する壁体の厚さは、好ましくは7〜13cm、より好ましくは8〜12cmである。該厚さが7cm未満では、容器の移動時にひび割れ等が発生する可能性がある。該厚さが13cmを超えると、容器の強度および耐久性の向上の効果が頭打ちになる一方、製造コストの増大および質量の増大を招くので、好ましくない。
容器本体は、好ましくは、1つまたは複数の補強用のリブを含む。補強用のリブは、例えば、容器本体の側壁と底壁の間に介在する直角三角形状の板状体として形成される。
容器本体は、内部空間を区画する1つ以上の隔壁を有してもよい。例えば、10m(長さ)×5m(幅)×5m(高さ)の寸法を有する容器本体に対し、長さ方向の中央の位置に隔壁を設けることにより、5m(長さ)×5m(幅)×5m(高さ)の寸法を有する2つの小室に区画することができる。
容器本体の中に補強用の鉄筋を埋設してもよい。ただし、鉄筋の量は、普通コンクリートを補強する場合と比べて少量でよい。
【0019】
蓋体は、廃棄物を収容した容器本体の開口部を封じて、廃棄物を密封するために使用される。
蓋体は、好ましくは、容器本体と同様のセメント系配合物を用いて形成される。ここで、「容器本体と同様のセメント系配合物」とは、セメント、平均粒径1.0μm以下のポゾラン質微粉末、最大粒径2mm以下の細骨材、金属繊維、減水剤、水および必要に応じて配合される材料(例えば、平均粒径3〜20μmの無機粉末や、平均粒度1mm以下の繊維状粒子又は薄片状粒子等)を含むセメント系配合物を意味するものであり、各成分の種類や配合量について容器本体の材料と全く同一であることを意味するものではない。ただし、容器本体および蓋体を全く同一の材料で形成することは、材料の調製工程の簡易化等の観点から好ましい。
なお、蓋体を構成する各成分の種類(具体例)、配合量等は、容器本体の材料と同じである。
蓋体が、容器本体と同様のセメント系配合物から形成される場合、蓋体の厚さは、容器本体と同様の理由により、好ましくは7〜13cm、より好ましくは8〜12cmである。
なお、蓋体は、複数の成形体に分割してもよい。例えば、10m(長さ)×5m(幅)×5m(高さ)の寸法を有する容器本体に対し、5m(長さ)×5m(幅)×7〜13cm(厚さ)の寸法を有する2つの蓋体を用いることができる。
【0020】
容器本体に蓋体を固定する方法としては、(a)容器本体と蓋体の間に、モルタル、ペースト、セメント用接着剤(例えば、エポキシ樹脂系接着剤、酢酸ビニルエマルジョン接着剤等)等の接着用材料からなる接合部を介在させて固定する方法、(b)容器本体と蓋体の各々に固着具挿通用の孔を穿設しておき、容器本体と蓋体を組み合わせた状態で、上記の固着具挿通用の孔に固着具(例えば、コンクリート用アンカー)を打ち込み、固定する方法、等が挙げられる。なお、上記(b)の方法における固着具挿通用の孔は、例えば、蓋体の四隅およびそれに対応する容器本体の所定の地点と、これら四隅の相互間の所定の間隔毎の地点に設けることができる。
中でも、好ましい方法の一例として、上記(a)の方法であって、接着用材料として、容器本体と同様のセメント系配合物を用いる方法が挙げられる。
好ましい方法の他の例として、上記(a)と上記(b)を組み合わせた方法であって、接着用材料として、容器本体と同様のセメント系配合物を用いる方法が挙げられる。
【0021】
容器本体に収容される廃棄物の例としては、コンクリート工場やアジテータ車等で生じるコンクリートスラッジや、ビル等の建造物の破壊時等に生じるコンクリート廃材等が挙げられる。なお、コンクリートスラッジは、液状のまま容器本体に収容してもよいし、あるいは、固化材で固化した後に容器本体に収容してもよい。
容器本体には、通常、満杯になるまで廃棄物が収容される。廃棄物の収容後に、容器本体の中に空間が残存する場合には、この空間内にコンクリートやモルタル等の硬化性組成物を充填してもよい。
容器本体の中に廃棄物を収容した後、容器本体の開口部に蓋体を嵌合させるなどして固定すれば、廃棄物含有ブロックが得られる。なお、この際、上述のとおり、容器本体と蓋体の間に接合部を設けることができる。
廃棄物含有ブロックは、通常、屋外に野積みするかもしくは土中に埋設することによって処分される。廃棄物含有ブロックは、防波ブロック等に利用することもできる。
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の大型容器の形態例を説明する。図1は、本発明の大型容器の一例の構成部品(容器本体および蓋体)を示す斜視図、図2は、図1に示す大型容器の中に廃棄物を充填してなる廃棄物含有ブロックを示す斜視図、図3は、図2に示す廃棄物含有ブロックの平面図、図4は、図3中のA−A線で廃棄物含有ブロックを切断した状態を示す断面図、図5は、図4に対応させた、容器本体と蓋体の固定手段の他の例を示す断面図、図6は、本発明の大型容器の他の例の構成部品(容器本体および蓋体)を示す斜視図、図7は、図6に示す大型容器の中に廃棄物を充填してなる廃棄物含有ブロックを示す斜視図、図8は、図7に示す廃棄物含有ブロックの平面図、図9は、図8中のB−B線で廃棄物含有ブロックを切断した状態を示す断面図、図10は、図9に示す断面図から廃棄物およびモルタルを除いた状態(容器本体および蓋体)を示す断面図である。
【0023】
図1および図2中、大型容器1は、上方が開口した箱形の容器本体2と、容器本体2に嵌合可能な蓋体3と、接合部4(図2参照)とからなる。なお、容器本体2、蓋体3および接合部4は、いずれも、同一のセメント系配合物から形成されている。
蓋体3は、図4に示すように、容器本体2の側壁の上面に載置される部分である上側の板状部と、容器本体2の開口部に嵌め込まれる部分である下側の板状部とが一体的に形成されてなる。
大型容器1中に廃棄物5を収容してなる廃棄物含有ブロック6(図4参照)の製造方法を説明すると、まず、容器本体2の中に廃棄物5を収容した後、容器本体2の側壁の上面に、容器本体2と同様のセメント系配合物(モルタル)を所定の厚さ(例えば、10〜30mm程度)で塗布して硬化前の接合部4を形成させ、次いで、接合部4の上に蓋体3を載置し、容器本体2の開口部に蓋体3を嵌合させると、廃棄物含有ブロック6が完成する。なお、容器本体2と接合部4との境界面(接触面)、および蓋体3と接合部4との境界面は、凹凸を有する形状に形成しておけば、接合力が大きくなり、好ましい。
【0024】
大型容器の他の例を、図5に示す。図5中、大型容器11は、上方が開口した箱形の容器本体12と、容器本体12に嵌合可能な蓋体13と、接合部14と、固着具(コンクリート用アンカー)17とからなる。
なお、容器本体12、蓋体13および接合部14は、いずれも、同一のセメント系配合物から形成されている。また、容器本体12と蓋体13には、各々、固着具17を挿通するための複数の固着具挿通用孔が穿設されている。
廃棄物含有ブロック16の製造方法を説明すると、まず、容器本体12の中に廃棄物15を収容した後、容器本体12の側壁の上面のうち、固着具挿通用孔が位置する部分を除いて、容器本体12と同様のセメント系配合物(モルタル)を所定の厚さ(例えば、5〜15mm程度)で塗布して硬化前の接合部14を形成させる。次いで、接合部14の上に蓋体13を載置して、容器本体12の開口部に蓋体13を嵌合させる。その後、蓋体13の上方から固着具挿通用孔に対して固着具17を打ち込めば、廃棄物含有ブロック16が完成する。
【0025】
大型容器の他の例を、図6〜図10に示す。
図6および図7中、大型容器21は、上方が開口した箱形の容器本体22と、容器本体22に嵌合可能な蓋体23と、接合部24(図7参照)とからなる。なお、容器本体22、蓋体23および接合部24は、いずれも、同一のセメント系配合物から形成されている。
図10に示すように、容器本体22は、側壁の上面22aと、上面22aの内周縁から下方に垂下する垂直面22bと、垂直面22bの下端から内方に水平に延びる水平面22cと、水平面22cの内周縁から下方に垂下する垂直面22dと、垂直面22dの下端を外周縁とする底面22eを有する。
蓋体23は、容器本体22の水平面22cに載置される部分である上側の板状部と、容器本体22の開口部に嵌め込まれる部分である下側の板状部とが一体的に形成されてなる。
より詳しくは、蓋体23は、上面23aと、上面23aの外周縁から下方に垂下する垂直面23bと、垂直面23bの下端から内方に水平に延びる水平面23c(以上の面が、上側の板状部の輪郭を形成する。)と、水平面23cの内周縁から下方に垂下する垂直面23dと、垂直面23dの下端を外周縁とする底面23e(以上の面が、下側の板状部の輪郭を形成する。)を有する。
容器本体22と蓋体23が嵌合した状態において、容器本体22の上面22aと蓋体23の上面23aは、接合部24(図9参照)を形成するモルタルを充填可能な溝を隔てた状態で、同一平面上に位置する。
廃棄物含有ブロック26(図9参照)の製造方法を説明すると、まず、容器本体22の中に廃棄物25を収容した後、容器本体22の開口部に蓋体23を嵌合させ、次いで、容器本体22と蓋体23の間に形成された溝の中に、容器本体22と同様のセメント系配合物(モルタル)を充填し、接合部24を形成させれば、廃棄物含有ブロック26が完成する。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を説明する。
[使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント;低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製;ブレーン比表面積:3,200cm2/g)
(2)ポゾラン質微粉末;シリカフューム(平均粒径:0.25μm)
(3)石英粉末(平均粒径:7μm)
(4)細骨材;珪砂(最大粒径:0.6mm)
(5)減水剤;ポリカルボン酸系高性能減水剤
(6)水;水道水
(7)金属繊維;鋼繊維(直径:0.2mm、長さ:15mm)
【0027】
[実施例1]
低熱ポルトランドセメント100質量部、シリカフューム30質量部、石英粉末32質量部、細骨材120質量部、鋼繊維(配合物中の体積割合:2%)、高性能減水剤1.0質量部(固形分換算)、水22質量部を二軸ミキサに投入して混練し、配合物を調製した。
該配合物の0打フロー値は、250mmであった。
また、上記配合物を型枠(φ50×100mm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生した。得られた硬化体(3本)の圧縮強度(平均値)は、230N/mm2であった。
また、上記配合物を鋼製型枠(4×4×16cm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生した。得られた硬化体(3本)の曲げ強度(平均値)は、45N/mm2であった。
また、上記配合物を型枠(φ50×100mm)に流し込み、20℃で48時間静置後、90℃で48時間蒸気養生した。得られた硬化体の透水係数を「地盤工学会基準JGS 0231(土の透水試験方法)」の変水位透水試験方法で測定した。その結果、水の浸透は認められず、透水係数は0であった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の大型容器の一例の構成部品を示す斜視図である。
【図2】図1に示す大型容器の中に廃棄物を充填してなる廃棄物含有ブロックを示す斜視図である。
【図3】図2に示す廃棄物含有ブロックの平面図である。
【図4】図3中のA−A線で廃棄物含有ブロックを切断した状態を示す断面図である。
【図5】図4に対応させた、容器本体と蓋体の固定手段の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明の大型容器の他の例の構成部品を示す斜視図である。
【図7】図6に示す大型容器の中に廃棄物を充填してなる廃棄物含有ブロックを示す斜視図である。
【図8】図7に示す廃棄物含有ブロックの平面図である。
【図9】図8中のB−B線で廃棄物含有ブロックを切断した状態を示す断面図である。
【図10】図9に示す断面図から廃棄物およびモルタルを除いた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1,11,21 大型容器
2,12,22 容器本体
3,13,23 蓋体
4,14,24 接合部
5,15,25 廃棄物
6,16,26 廃棄物含有ブロック
17 固着具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積50m3以上の容器本体を含む大型容器であって、上記容器本体が、セメント、平均粒径1.0μm以下のポゾラン質微粉末、最大粒径2mm以下の細骨材、金属繊維、減水剤および水を含むセメント系配合物の硬化体からなることを特徴とする大型容器。
【請求項2】
上記セメント系配合物が、平均粒径3〜20μmの無機粉末を含む請求項1に記載の大型容器。
【請求項3】
上記容器本体と同様のセメント系配合物の硬化体からなる蓋体を含む請求項1又は2に記載の大型容器。
【請求項4】
上記容器本体と上記蓋体の間に、上記容器本体と同様のセメント系配合物の硬化体からなる接合部を有する請求項3に記載の大型容器。
【請求項5】
上記容器本体は、1辺が4m以上の箱型の成形体であり、かつ、当該容器本体を構成する壁体の厚さが7〜13cmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の大型容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の大型容器と、該大型容器の中に収容された廃棄物を含むことを特徴とする廃棄物含有ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−282407(P2006−282407A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100849(P2005−100849)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】