説明

大容量性ELパネル駆動回路

【課題】A0判〜A2判といった大型容量性ELパネルを冷却装置を使用せずに高輝度・高安定で、故障なく駆動することのできるEL駆動回路を提供する。
【解決手段】昇圧トランス11と、昇圧トランス11に接続されたコンバータ12と、コンバータ12に接続されたインバータ13とから成る主回路と、大容量性ELパネル17に流れる負荷電流を検出する負荷電流検出回路15と、負荷電流検出回路15に接続されたCPU91と、CPU91に接続されたPWM制御回路92と、から成る制御回路と、を備え、PWM制御回路12の出力をインバータ13に接続して成る大容量性ELパネル駆動回路17において、インバータ13の出力側にリアクトル14を接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大容量性ELパネル駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
容量性EL素子の駆動回路はこれまでにもいろいろ提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
EL駆動用のインバータの多くはELサイズ(面積)が大きくなるにつれて、インバータの変換効率の向上と電源のコンパクト化が強く求められるようになっている。特に、最近、A0判(841×1189mm)〜A2判(420×594mm)という大型のEL表示素子が開発されているが、このような大容量の大型ELパネルを従来の自励式ブロッキング発振方式や直列共振他動インバータ方式の駆動回路を用いて駆動させると、大電流が流れるため、発熱が多くて、液冷装置で冷却する必要がある等、実用化が困難であった。
【特許文献1】特開2003−333849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこれらの課題を解決するためになされたもので、A0判〜A2判といった大型の容量性EL表示素子を冷却装置を使用せずに高輝度・高安定で、故障なく駆動することのでき、かつEL表示素子の劣化による容量の低下に対応できるEL駆動回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の発明は大容量性ELパネル駆動回路に係り、昇圧トランスと、前記昇圧トランスに接続されたコンバータと、前記コンバータに接続されたインバータとから成る主回路と、
負荷である大容量性ELパネルに流れる負荷電流を検出する負荷電流検出回路と、前記負荷電流検出回路に接続されたCPUと、前記CPUに接続されたPWM制御回路と、から成る制御回路と、を備え、前記PWM制御回路の出力を前記インバータに接続して成る大容量性ELパネル駆動回路において、
前記インバータ13の出力側にリアクトルを接続したことを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の大容量性ELパネル駆動回路において、フィルター回路を前記リアクトルの前又は後に接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
このような構成により、冷却装置を使用せずに高輝度・高安定で、故障なく駆動することのできる大容量性ELパネル駆動回路が得られ、かつEL表示素子の劣化による容量の低下に対応できるようにもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明では従来の直列共振他動インバータ方式の駆動回路を止めて、PWM制御インバータ方式の駆動回路を用いることによって、大型の容量性EL表示素子の駆動回路を得るようにするものである。
PWM制御自体は従来のモータの制御に使われているよく知られた技術である。図2はPWM制御自体がモータの制御に使われている回路例を示している。 図において、昇圧トランス21とコンバータ22とインバータ23とインダクションモータ24とでモータの主回路を構成している。
【0007】
これの制御は次のようになる。
オペレータが入出力装置から運転条件をCPU91に与えて運転開始すると、CPU91は制御プログラムにしたがって運転条件から指令を演算してこれをPWM制御回路92に与える。PWM制御回路92は指令からPWM制御にしたがったオン・オフ制御信号をDC/ACインバータ23のスイッチング素子に与える。これによりモータ24はPWM制御にしたがった制御が行われる。
モータ24の回転数は付属のエンコーダによって検出され、検出値はCPUにフィードバック制御され、次の指令に反映される。
これによりモータの駆動回路を高周波化することができるので小形・軽量化がはかれるようになる。
【0008】
ここで、本発明が扱うパルス幅変調(Pulse Width Modulation)制御について、説明する。図3は3相電流形インバータの主回路構成図を示している。電流形インバータは直流回路にリアクトルLを挿入してインピーダンスを高くしたもので、交流出力側からみれば電流源として動作する。交流側にはコンデンサCが接続され、出力電流の急激な変化に伴うサージ電圧を吸収している。
【0009】
図4は負荷の電圧(たとえば、交流電動機の逆起電力)に同期した正弦波電流を出力する場合のPWM制御電流形インバータの基本動作を示したものである。電流形インバータではリアクトルLの電流経路を常に確保する必要があり、電圧形インバータとは少し異なったPWM制御動作になる。
基本周波数の電気角を60°ごとに分割し、その60°期間で変調率の最も大きな相の一つの素子をオン状態にし、他の2相の素子をPWM制御して、正弦波出力電流を得るようにしている。例えば、a〜bの60°期間では素子S1をオンし、S5およびS6をPWM制御して、V相およびW相の電流をコントロールする。このとき、S5、S6がともにオフになる期間が発生するが、その期間、素子S4にオン信号を与え、U相の上下アームを短絡させ、リアクトルの電流経路を確保する。結果的に、U相電流iuは図示のようになり、その平均値として負荷電圧vuに同期した正弦波電流が得られる。
【0010】
図5は上記モータ制御に使われているPWM制御を本発明が対象としている大容量性ELパネルに適用した回路例である。
図において、昇圧トランス11とコンバータ12とインバータ13と負荷である大容量性ELパネル17とで主回路を構成し、モータが備えていたエンコーダの代りに電流・電圧検出回路15をインバータ13と負荷である大容量性ELパネル17との間に挿入している。
これの制御は、オペレータが入出力装置から運転条件をCPUに与えて運転開始すると、CPUは制御プログラムにしたがって運転条件から指令を演算してこれをPWM制御回路に与える。PWM制御回路は指令からPWM制御にしたがったオン・オフ制御信号をDC/ACインバータのスイッチング素子に与える。
これにより大容量性ELパネルはPWM制御にしたがった制御が行われる筈であった。ところが、そのモータの代りに大容量性ELパネルパネルを用いてインバータで駆動して見たところ、インバータ13が突然故障してしまって、実用化にはならなかった。
【0011】
そこで、本出願人はその原因を追求したところ、モータの場合は生じなかった過大な突入電流が大容量性ELパネルパネルには流れるからであるということが判明した。本発明は図5の欠点を改良して、その結果、過大な突入電流が大容量性ELパネルパネルには流れないようにしたものである。
【0012】
図1は本発明に係る大容量性ELパネル駆動回路で、PWM制御を大容量性ELパネルに適用した成功例である。
図において、昇圧トランス11とコンバータ12とインバータ13と負荷である大容量性ELパネル17とで主回路を構成し、モータが備えていたエンコーダの代りに電流・電圧検出回路15をインバータ13と負荷である大容量性ELパネル17との間に挿入しているまでは図5と同じであるが、インバータ13と電流・電圧検出回路15との間にリアクトルを挿入している点で異なっている。
負荷電流検出回路15は負荷である大容量性ELパネルに流れる負荷電流を検出し、CPU91に送信する。CPU91の出力はコンバータ12とPWM制御回路92とに送られ、PWM制御回路92の出力はインバータ13に送られる。
【0013】
これの制御は、オペレータが入出力装置から運転条件をCPU91に与えて運転開始すると、CPU91は制御プログラムにしたがって運転条件から指令を演算してこれをPWM制御回路92に与える。PWM制御回路92は指令からPWM制御にしたがったオン・オフ制御信号をDC/ACインバータ13のスイッチング素子に与える。
【0014】
フイードバック系15は次のように機能する。
今、大容量性ELパネルが劣化したりして輝度が少なくなると、大容量性ELパネル17に流れる電流も少なくなるので、これを電流検出回路15が小検出値で検出うるので、CPU91にはそれに見合った小検出値が入ることとなり、基準値との差が大きくなり、CPU91はこの差を縮める方向にDC/ACインバータ13に指令を与え、これにより大容量性ELパネルの輝度が増すこととなる。
これにより大容量性ELパネル17はPWM制御にしたがった制御がスムーズに行われ、問題は生じなかった。
リアクトル14が大容量性ELパネル17に流れ込む大きな突入電流を防止する機能を果たしているからであると推察できる。
【0015】
また、リアクトルをインバータ13と電流・電圧検出回路15との間に挿入しているが、電流・電圧検出回路15と負荷17(又はフィルター回路)との間に挿入しても構わない。
【0016】
さらに、フィルター回路16をリアクトル14と大容量性ELパネルパネル17との間に設けたことにより、リアクトル14を挿入したことに起因すると思われるスパイクノイズを吸収することで、ようやく大容量性ELパネル17の駆動回路として実用化にこぎつけた。
【0017】
以上のように、本発明によれば、昇圧トランスと、前記昇圧トランスに接続されたコンバータと、前記コンバータに接続されたインバータとから成る主回路と、
負荷である大容量性ELパネルに流れる負荷電流を検出する負荷電流検出回路と、前記負荷電流検出回路に接続されたCPUと、前記CPUに接続されたPWM制御回路と、から成る制御回路と、を備え、前記PWM制御回路の出力を前記インバータに接続して成る大容量性ELパネル駆動回路において、前記インバータ13の出力側にリアクトルを接続したことにより、A0判〜A2判といった大型の容量性EL表示素子を冷却装置を使用せずに高輝度・高安定で、故障なく駆動することのでき、かつEL表示素子の劣化による容量の低下に対応できるEL駆動回路が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る大容量性ELパネル駆動回路の回路構成図である。
【図2】PWM制御自体がモータの制御に使われている回路例を示している。
【図3】3相電流形インバータの主回路構成の1例を示す図である。
【図4】負荷電圧に同期した正弦波電流を出力する場合のPWM制御電流形インバータの基本動作を示す図である。
【図5】モータ制御のPWM制御を大容量性ELパネルに適用した回路例である。
【符号の説明】
【0019】
11 昇圧トランス
12 コンバータ
13 インバータ
14 リアクトル
15 負荷電流検出回路
16 フィルター回路
17 大容量性ELパネル
91 CPU
92 PWM制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧トランスと、前記昇圧トランスに接続されたコンバータと、前記コンバータに接続されたインバータとから成る主回路と、
負荷である大容量性ELパネルに流れる負荷電流を検出する負荷電流検出回路と、前記負荷電流検出回路に接続されたCPUと、前記CPUに接続されたPWM制御回路と、から成る制御回路と、を備え、前記PWM制御回路の出力を前記インバータに接続して成る大容量性ELパネル駆動回路において、
前記インバータ13の出力側にリアクトルを接続したことを特徴とする大容量性ELパネル駆動回路。
【請求項2】
フィルター回路を前記リアクトルの前又は後に接続したことを特徴とする請求項1記載の大容量性ELパネル駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−95560(P2007−95560A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285037(P2005−285037)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】