説明

大気・水質浄化用ブロック

【課題】表層部に含まれる二酸化チタンによる触媒効果が遅滞なく発現されると共に、表層部に射し込んだ光を有効利用する。
【解決手段】基層部に、セメントと骨材と触媒用の二酸化チタン及び水を配合したモルタルよりなる表層部を一体成形してなる大気・水質浄化用ブロックにおいて、上記表層部の骨材として粒径が1.0mmを超え、10.0mm未満の粒分が60重量%以上含むガラス粉砕物を用い、表層部の硬化後、この表層部の表面を粗面加工して、二酸化チタン粒子やガラス粉砕物粒子を露出させた。また、表層部の骨材中にガラス粉砕物のほかに、このガラス粉砕物の量より少ない量の砂を入れてもよく、あるいはこの砂を入れなくてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒機能を有する二酸化チタンを含有して大気及び河川、湖沼の水質の浄化を可能にした大気・水質浄化用ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、セメントコンクリートやモルタルに二酸化チタンを混入し、大気や水質を浄化する材料が開発され、実用化されてきた。その多くには、光の触媒面積の増加に工夫が図られている。すなわち、ポーラスコンクリートを利用して、空隙の奥に光が射し込みやすくする方法や、表面に凹凸を設けて接触面積を増大させる方法である。また、二酸化チタンを含有するモルタル表面を叩いて粗面化仕上げとし、接触面積を増大させた例がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−331292号公報
【特許文献2】特開平10−96204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例の特許文献1に示されたコンクリート積みブロックでは、光触媒用の二酸化チタンを混入したコンクリートにてブロック表面を構成している。そしてこのブロックの製造に際しては、二酸化チタンを混入したセメントペーストを底面に凹凸を有する型枠に流し込んで、ブロックの表面に所定の凹凸を設けているが、このようなブロックにあっては、二酸化チタンの粒子の表面がセメントペーストの薄膜で覆われてしまうため、この二酸化チタンは光に接触する機会が少なく、触媒機能効率がよくないという問題がある。
【0005】
また、特許文献2に示されるものは、骨材として他の骨材と共に透明性のあるガラス粉末を混入してブロックを成形した後に、表面に叩き加工を施すことにより、ブロック表面を粗面にし、これによりブロックに内在する二酸化チタンを露出させるようにしているが、この従来のものにあっては、ブロック構成材中における透明性骨材の量が少ないため、この透明性骨材の露出度が悪く、光が斜めから射し込んだ際には、浮き出た他の骨材の影になる部分は触媒としての効率が落ちる、という問題がある。
【0006】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、二酸化チタンによる触媒効果の遅滞ない発現と、射し込んだ光を有効利用できる大気・水質浄化用ブロックを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は係る大気・水質浄化用ブロックは、基層部に、セメントと骨材と触媒用の二酸化チタン及び水を配合したモルタルよりなる表層部を一体成形してなる大気・水質浄化用ブロックにおいて、上記表層部の骨材として粒径が1.0mmを超え、10.0mm未満の粒分が60重量%以上含むガラス粉砕物を用い、表層部の硬化後、この表層部の表面を粗面加工して、二酸化チタン粒子やガラス粉砕物粒子を露出させた構成になっている。
【0008】
そして上記大気・水質浄化用ブロックにおいて、表層部の骨材としてガラス粉砕物のほかに、このガラス粉砕物の量より少ない量の砂を混入し、またはこの砂の混入をゼロにした構成にする。そしてさらに二酸化チタンがセメント重量に対して10%以上50%未満含有している構成にした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表層部表面に多数凹凸があると共に、多数のガラス粒子が露出されることにより、表層部に含まれる二酸化チタンによる触媒効果が遅滞なく発現されると共に、表層部に射し込んだ光を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すように、基礎部となるコンクリート基層部1を図示しない型枠内に打設後、これがまだ硬化しないうちにセメント、ガラス粉砕物、二酸化チタン及び必要に応じてガラス粉砕物の量より少ない量の砂を混合したモルタルを表層部2として打設し、両者が一体となったブロック3を成形する。そしてその後、上記表層部2の表面2aに洗い出し加工、あるいは叩き加工による粗面加工を施し、図2に示すように表層部2の表面2aを粗面(凹凸状)にする。
【0011】
この粗面加工により、表層部2の表面2aは粗面により受光面積が大きくなると共に、汚染物質が付着しやすくなる。
【0012】
また、上記表層部2の表面2aにおけるガラス粉砕物と二酸化チタンの粒子は、上記粗面加工により外部に露出される。従ってこの表層部2に照射される光はガラスの粒子を透過し、及び乱反射して表層部2の奥部まで到達され、より多くの二酸化チタンに対する触媒機能が向上されて、この表層部2に付着された汚染物質が効率よく分解される。
【0013】
このとき、表層部2における砂の粒は光透過の阻害材の作用をするので、骨材中の砂の量は少ない方がよく、骨材となるガラス粉砕物の重量比で50%以下でゼロでもよい。またガラス粉砕物は無職透明が好ましいが着色されていてもよく、この場合光の乱反射が期待できる。
【0014】
また、骨材として用いられるガラス粉砕物の粒の大きさは、1mm以下ではこれの表面が白くなって光を透過または反射しにくくなり、また10mm以上になるとガラスの粒の存在感が大きくなって景観上不都合となる。
【0015】
このことから、ガラス粉砕物中において、粒径が1.0mm以下と10.0mm以上の粒径のガラス粉砕物の量は、重量比で40%未満とする。すなわち、骨材として用いられるガラス粉砕物は、粒径が1.0mmを超え、10mm未満の粒分が重量比で60%以上含有するものを用いる。
【0016】
表層部2に用いられる二酸化チタンは、ルチル型またはアナターゼ型等一般的なものが用いられる。そしてこの二酸化チタンの含有量は、セメント重量の10%以上50%未満とした。表層部2の表面を上記のように粗面加工を行っても、二酸化チタンの粒子の触媒効果を発揮できるのは表層の粒子であり、その大部分はセメントに覆われることとなる。しかしながら、二酸化チタン粒子の圧倒的な数によって触媒効果が得られる。そしてこれの含有量が10%未満では上記効果が充分ではなく、50%以上では経済的に不利となる。
【0017】
このようにして得られたブロック3は、普通の建設用ブロックに応用され、大気中にあってはNOxなどの大気汚染物質の分解に寄与し、水中にあっては溶解有機物や窒素化合物の分解に寄与する。
【実施例】
【0018】
図1、図2に示したブロック3の表層部2の原材料の配合割合は、砂を配合した例として1立方メートル当たり、普通ポルトランドセメント697kg、砂242kg、ガラス粉砕物364kg、光触媒用の二酸化チタン209kg、水475kgである。
【0019】
また、砂を使用しない場合の配合の配合割合の例では、同様に普通ポルトランドセメント665kg、ガラス粉砕物644kg、光触媒用の二酸化チタン200kg、水454kgである。
【0020】
ここで使用した砂の粒径はJIS A 5308レディミクストコンクリートの付属書1表2「砂利及び砂の標準粒度」に定める粒度であり、使用するセメントはJIS R 5210に定めるポルトランドセメント、JIS R 5211に定める高炉セメント、JIS R 5213に定めるフライアッシュセメント等である。
【0021】
表層部2の表面2aは、この表面部2の脱型後、洗い出し加工あるいは叩き加工により粗面にした。これにより表層部2の表面2aには、二酸化チタンの粒子やガラスの粒子がそれぞれの表面を外部に露出した状態となった。
【0022】
なお、ブロック3の成形において、基層部1のコンクリート打設後、これがまだ固まらないうちに表層部2を打設して両者を一体固化する方法と、先に表層部2を打設し、後から基層部1を打設する方法がある。さらに表層部2を別途パネル状に成形し、これをコンクリートブロックからなる基層部1にあと付けしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】基層部に表層部を一体化した状態を示す斜視図である。
【図2】表層部表面を粗面にした状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1…基層部、2…表層部、2a…表面、3…ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層部に、セメントと骨材と触媒用の二酸化チタン及び水を配合したモルタルよりなる表層部を一体成形してなる大気・水質浄化用ブロックにおいて、
上記表層部の骨材として粒径が1.0mmを超え、10.0mm未満の粒分が60重量%以上含むガラス粉砕物を用い、
表層部の硬化後、この表層部の表面を粗面加工して、二酸化チタン粒子やガラス粉砕物粒子を露出させたことを特徴とする大気・水質浄化用ブロック。
【請求項2】
表層部の骨材としてガラス粉砕物のほかに、このガラス粉砕物の量より少ない量の砂を混入したことを特徴とする請求項1記載の大気・水質浄化用ブロック。
【請求項3】
表層部の骨材として砂の混入をゼロにしたことを特徴とする請求項1記載の大気・水質浄化用ブロック。
【請求項4】
二酸化チタンがセメント重量に対して10%以上50%未満含有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つの請求項に記載の大気・水質浄化用ブロック。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−204467(P2006−204467A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19025(P2005−19025)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000162216)共和コンクリート工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】