説明

大気中の可溶性ガスの捕集及び取出し用デヌーダ組立体

本発明によるデヌーダは、サンプルガスからガス分析物を捕集し除去する。デヌーダは、内部キャビティ(32)を備えたハウジングと、内部キャビティ(32)を横切るバリヤシート(33)を有する。バリヤシート(33)は、内部キャビティ(32)を液体リザーバ(34)とサンプルガス入口に接続されたガス流通チャネル(35)とに分離すると共に、液体リザーバ表面(55)及びガスチャネル表面(56)を有し、液体及びガスに対して透過性である。デヌーダは、更に、液体リザーバ(34)内に入れらたれたデヌーダ液体(36)を有する。デヌーダ液体(36)は、バリヤシート(33)を透過してそのガスチャネル表面(56)を覆い、ガス流通チャネル(35)内を流れるサンプルガスに接触する。ガス分析物は、バリヤシート(33)を通過して液体リザーバ(34)内に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、大気中の可溶性ガスの捕集及び取出しのためのデヌーダ組立体に関し、特に、湿潤(濡れた)状態の膜を利用するデヌーダ組立体及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の微量ガスの捕集のための拡散型デヌーダ技術は、フィルタを利用した方法に大きく取って代わった。ガスと粒子の混合物からガスをデヌーダによって選択的に取出すことは、ガスと粒子の拡散係数の差が大きいことを利用している。空気サンプルをデヌーダ中に層流条件下で引き込むと、空気サンプルのガス分子は、拡散してデヌーダの壁に向かって捕捉され、これに対し、微小粒子は、非常にゆっくりと拡散するので壁に到達することができない。種々のコーティング式デヌーダが大気中のガスの捕集及び取出しのために用いられているが、かかるコーティング式デヌーダを利用した既知の方法には幾つかの欠点があり、例えば、既知の方法は、デヌーダ管をコーティングし、乾燥させ、洗浄する工程を含むので、労力及び時間がかかると共に汚染しやすい。
【0003】
これとは対照的に、湿式デヌーダは、ガスと液体の直接的な接触を利用している。既知の湿式デヌーダでは、サンプルガスの流れは、典型的には、流れているコレクタ液体によって包囲されている。湿式デヌーダのデヌーダ表面の湿潤性(濡れ性)は、薄い液膜をサンプル採取された空気に晒した状態に維持する上で極めて重要な要因であり、かかるサンプル採取された空気は、典型的には、非常に多量に且つ全体として液体の流れとは逆に(向流状態で)流れる。かかる連続湿潤型デヌーダは、最近の15年間に報告されている。例えば、コウケン等(Keuken et al.)は、環状設計の初期の湿潤型デヌーダを報告しており、かかるデヌーダは、環状域を一様に湿潤状態に保つためにその軸線回りに回転し、水平形態で動作する。これについては、メノ・P・コウケン(Menno P. Keuken)他著,「サイマルテイニアス・サンプリング・オブ・NH3,HNO3,HCl,SO2・アンド・H2O2・イン・アンビエント・エア・バイ・ア・ウェット・アニュラー・デヌーダ・システム(Simultaneous Sampling Of NH3, HNO3, HCl, SO2 And H202 In Ambient Air By A Wet Annular Denuder System)」,「アトモスフェリック・エンバイロンメント(Atmospheric Environment)」,第22巻,11号,1988年,p.2541〜2548を参照されたい。かかる環状デヌーダでは、多くの水溶性ガスに関する捕集効率は、最高32L/分までのサンプル採取速度では定量的に近く、他方、デヌーダは、<1%の粒子損失を示す(試験対象の粒径の場合)。
【0004】
他の既知の湿潤型デヌーダシステムは、重力による堆積に起因するデヌーダ内の粒子損失を回避するよう上下方向に動作する。例えば、ダスグプタ等(Dasgupta et al.)は、シリカでコーティングされた湿潤領域と大流量(例えば、50L/分)でコンパクトな多数の平行な板から成る11個のデヌーダ支承湿潤型ポリエステルスクリーンを有する平行板湿式デヌーダを記載している。これについては、例えば、プルネンドゥ・K・ダスグプタ(Purnendu K. Dasgupta)他著,「ア・マルチプル・パラレル・プレート・ウェッテッド・スクリーン・ディフュージョン・デヌーダ・フォー・ハイ−フロー・エア・サンプリング・アプリケーションズ(A Multiple Parallel Plate Wetted Screen Diffusion Denuder For High-Flow Air Sampling Applications)」,「アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)」,第69巻,24号,1997年,p.5018〜5023を参照されたい。ジャエスケ等(Jaeschke et al.)は、湿潤デヌーダ表面が壁内張りとしてナイロンストッキング材料を有する管状ガラス湿式デヌーダを報告している。これについては、W・ジャエスケ(W. Jaeschke)他著,「フェーズ・パーティショニング・オブ・アンモニア・アンド・アンモニウム・イン・ア・マルチフェーズ・システム・スタディード・ユージング・ア・ニュー・バーティカル・ウェット・デヌーダ・テクニーク(Phase Partitioning Of Ammonia And Ammonium In A Multiphase System Studied Using A New Vertical Wet Denuder Technique)」,「アトモスフェリック・エンバイロンメント(Atmospheric Environment)」,第25巻,3号,1998年,p.365〜371を参照されたい。最近、ロスマン等(Rosman et al.)は、湿潤性が得られるようポリエステル内張りを備えたペルフルオロアルコキシ(PFA)TEFLONの平行板湿式デヌーダを開発した。これについては、カイ・ロスマン(Kai Rosman)他著,「ラボラトリー・アンド・フィールド・インベスティゲイションズ・オブ・ア・ニュー・アンド・シンプル・デザイン・オブ・ザ・パラレル・プレート・デヌーダ(Laboratory And Field Investigations Of A New And Simple Design Of The Parallel Plate Denuder)」,「アトモスフェリック・エンバイロンメント(Atmospheric Environment)」,第35巻,2001年,p.5301〜5310を参照されたい。かかる既知の湿式デヌーダは、良好に働き、少なくとも最高5L/分のサンプル採取速度では大気中の通常の可溶性微量ガスの定量的に近いコレクタである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知の湿式デヌーダの大きな欠点は、これらデヌーダがこれらの設計対象である上下な向き又は水平の向きで厳密に作動されなければならないということにある。僅かな時間でも傾きが大きいと、それによりコレクタ液体が空気サンプル入口に入る場合があり、それにより後で分析物が失われることになる。例えば、空気中サンプル採取の際には湿式デヌーダを用いるのが有利である。航空機は通常空気中サンプル採取の際に水平飛行中であるが、既知の湿式デヌーダを航空機を利用した空気中サンプル採取の際に用いるのは問題がある。航空機は、高度を変化させながらバンク旋回をしている際及び/又は航空機が乱流の作用を受けた際、縦揺れ、横揺れ及び/又は偏揺れをする場合がある。かくして、デヌーダが傾く。上述した湿式デヌーダのうちの1つを用いた場合、コレクタ液体がデヌーダの傾斜時に空気サンプル入口内へこぼれると共に(或いは)これに流入すると、分析物が失われる場合がある。
【0006】
管状膜を利用したデヌーダ(拡散スクラバと呼ばれる場合が多い)では、サンプル採取されたガスは、膜の一方の側面、即ち、一方の面に流れ、コレクタ液体は、他方の側面、即ち、もう一方の面に流れる。よく見かけられることとして、疎水性膜が、かかる管状膜利用型デヌーダに利用されている。親水性イオン交換膜、例えば、デラウェア州ウェリントン所在のイー・アイ・デュ・ポン・デ・ネムール・アンド・カンパニー(E. I. Du Pont De Nemours And Company)によりNAFION(登録商標)で市販されているタイプの膜が用いられる場合でも、膜の厚さ及びその水浸透性は一般に、ガスの流れと接触状態にある膜の表面を「湿潤(濡れ)」状態に保つほど高くはない。さらに、イオノゲン系ガスは、イオン交換膜では都合よくは捕集できない。というのは、関心のある分析物は、膜に強く結合され過ぎており又はドナン(Donnan)排除されるからである。サカモト等(Sakamoto et al.)により説明された形式の最近導入された「人工肺」サンプラは、多数本の中空ファイバ、例えば約10,000本のポリオレフィン中空ファイバを有し、これらは、大規模な粒子付着を生じる恐れが多分にある。これについては、K・サカモト(K. Sakamoto)他著,「ディベロップメント・オブ・アン・オートマティック・コンティニュアス・アナライザ・フォー・ウォーター−ソリュブル・ガスイズ・イン・エアー・バイ・コンバイニング・アン・アーティフィシャル・ラング・ウィズ・アン・イオン・クロマトグラフ(Development Of An Automatic Continuous Analyzer For Water-Soluble Gases In Air By Combining An Artificial Lung With An Ion Chromatograph)」,「アトモスフェリック・エンバイロンメント(Atmospheric Environment)」,第36巻,2002年,p.441〜448を参照されたい。
【0007】
既知の膜利用コレクタには利点があるが、これまで、拡散スクラバを利用したコレクタが関心のある大気中ガスを連続的に取出すことができる最大流量は、非常に低く、これらを用いてガスを粒子分析システムの前で取出すことは非現実的であった。先頃、粒子分析システムは典型的には、4〜5L/分のサンプル採取速度を利用していた。これら条件下においては、バックエンドで用いられるイオンクロマトグラフィー(IC)計装は、十分に感度が高いので達成可能な検出限度(LOD)は、周囲空気測定に必要な限度よりも極めて低いというわけではなく、これら検出限度は、ブランク変動制限性(blank-variation limited )であった。現世代のIC計装は、より感度が高くなっている。現行のIC計装では、1L/分のサンプル採取速度は、関心のある大抵のエーロゾル相の可溶性イオン分析物について低いng/m3LODを達成するのに十分である。
【0008】
既知の湿式デヌーダ及び拡散スクラバの上述の欠点及び他の欠点を解決する可溶性大気中ガスの捕集及び取出しのためのデヌーダが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要を説明すると、本発明の一特徴は、サンプルガスからのガス状分析物の捕集及び取出しのためのデヌーダに関する。デヌーダは、内部キャビティを備えたハウジングと、サンプルガス源に流体的に接続されたサンプルガス入口と、デヌーダ液体源に流体的に接続されたデヌーダ液体入口と、内部キャビティを横切って延び、内部キャビティを液体リザーバとガス流通チャネルとに分離するバリヤシートと、を有し、ガス流通チャネルは、サンプルガス入口の下流側でこれに流体的に接続され、バリヤシートは、液体リザーバ表面及びガスチャネル表面を更に有し、液体及び関心のある分析物ガスから得られる溶液スペース化学種に対して透過性であり、デヌーダは、液体リザーバ内に入れられていて、バリヤシートを透過してバリヤシートのガスチャネル表面を覆い、それにより、ガスチャネル表面上のデヌーダ液体がガス流通チャネル内を流れているサンプルガスに接触することが可能であり、捕集された分析物がバリヤシートを通って液体リザーバ内に移動することが可能である。
【0010】
ハウジングは、サンプルガスに対して不活性であるのがよい。好ましくは、ハウジングの少なくとも一部は、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリテトラフルオロエチレン又はポリカーボネートで作られる。
【0011】
好ましくは、バリヤシートは、膜である。膜は、親水性であるのがよい。適切には、膜は、セルロースアセテート、NAFION(登録商標)、ポリビニルアセテート、セルロースニトレート又はセルロースエステルで作られる。バリヤシートは、実質的に平らであるのがよい。バリヤシートは、実質的に上下方向の向きに配置されてもよいし、実質的に非上下方向の向きに配置されてもよい。
【0012】
側板は、内部キャビティの一部を構成する内側凹部を備えるのがよい。液体リザーバは、その少なくとも一部が内側凹部及び液体−リザーバ表面によって構成され、ガス流通チャネルは、その少なくとも一部が、ガスチャネル表面及び内側キャビティの残部によって構成されるのがよい。一実施形態では、側板は、内側凹部内に位置する凹凸付き表面を有する。
【0013】
一実施形態では、側板は、内側凹部の一端部に設けられていて、デヌーダ液体リザーバに流体的に接続されたデヌーダ液体入口と、内側凹部の反対側の端部に設けられたデヌーダ液体出口とを有する。デヌーダ液体出口は、分析のための検出器に流体的に接続されるのがよい。
【0014】
一実施形態では、内側凹部は、V字形の端部を備えた矩形の形状を有している。デヌーダ液体入口は、V字形端部のうちの低い方の一方に隣接して設けられ、デヌーダ液体出口は、V字形端部の上端に隣接して設けられているのがよい。
【0015】
一実施形態では、液体リザーバは、クロマトグラフィーシステムに流体的に接続されたデヌーダ液体出口を有する。クロマトグラフィーシステムは、特にイオンクロマトグラフィーシステムであり、又は蛍光検出システム又は吸光度検出システムであるのがよい。ガス流通チャネルは、粒子検出器、粒子コレクタ又は粒子分析システムに流体的に接続された出口を有するのがよい。
【0016】
一実施形態では、ハウジングは、各々が内側凹部を備えた1対の互いに平行な側板と、側板の間に設けられ且つ内側凹部と整列した中央孔を備えたスペーサとを有し、側板及びスペーサは、ハウジングを形成し、中央孔及び内側凹部は、内部キャビティを構成し、ハウジングは、内部キャビティをガス流通チャネルと1対の液体リザーバとに分離する1対のバリヤシートを更に有し、各バリヤシートは、スペーサと平行な側板のそれぞれとの間に設けられる。
【0017】
本発明の別の特徴は、サンプルガス中の少なくとも1つのガス状分析物の捕集及び取出しのための方法であって、ハウジングに設けられた内部キャビティを横切って延び、内側キャビティをガス流通チャネルと液体リザーバとに分離するバリヤシートを備えたデヌーダを準備する段階と、一定の容積のデヌーダ液体を液体リザーバ内に準備して、バリヤシートを透過させ、バリヤシートのガスチャネル表面をデヌーダ液体の膜で覆う段階と、サンプルガスをガス流通チャネル中に流して、ガスチャネル表面上のデヌーダ液体の膜を、ガス流通チャネル内を流れているサンプルガスに接触させ、1つの分析物を捕集して、バリヤシートを通過させ、液体リザーバ内に拡散させる段階と、拡散させた1つの分析物を含む一定の容積のデヌーダ液体をガス流通チャネルから分析のために取出す段階とを有する方法に関する。
【0018】
1つの分析物は、水性液に直接又は反応時に溶ける大気中ガスを有するのがよい。一実施形態では、本方法は、デヌーダをバリヤシートが上下方向の向きに配置される段階を更に有する。変形例として、本方法は、デヌーダをバリヤシートが非上下方向の向きにはいちされる段階を更に有してもよい。
【0019】
一実施形態では、デヌーダは、各々がそれぞれの液体リザーバの一部を構成する内側凹部を備えた1対の互いに平行な側板と、内側凹部と整列していて、ガス流通チャネルの少なくとも一部を構成する中央孔を備えたスペーサとを有し、本方法は、バリヤシートをスペーサと平行な側板のそれぞれの間に設けて、内部キャビティをガス流通チャネルと1対の液体リザーバとに分離する段階と、スペーサと平行な側板を互いに固定する段階とを更に有する。
【0020】
本方法は、バリヤシートを平行な側板の外周及びスペーサの外周の少なくとも一方に沿って切除する段階を更に有するのがよい。本方法は、取出したデヌーダ液体中の拡散分析物を検出する段階を更に有するのがよい。
【0021】
一実施形態では、サンプルガスは、少なくとも第2の分析物を含み、本方法は、検出前、1つの分析物とこれとは別個の第2の分析物を分離する段階を更に有する。分離は、クロマトグラフィーによって行われるのがよく、特に、イオンクロマトグラフィー、蛍光検出又は吸光度検出によって行われるのがよい。
【0022】
一実施形態では、サンプルガスは、粒子を更に含み、本方法は、粒子が大部分取出されていない状態でガス流通チャネルから出た後、サンプルガス中の粒子を分析する段階を更に有する。
【0023】
本発明の目的は、分析システム、例えばイオンクロマトグラフィーシステムに容易に結合でき、1種類以上のサンプルガスの同時且つほぼリアルタイムの測定を可能にする連続湿潤型デヌーダ組立体を提供することにある。
【0024】
本発明の別の目的は、数種類のガスの同時且つほぼリアルタイムの測定を可能にする上述の連続湿潤型デヌーダ組立体の使用方法を提供することにある。
【0025】
本発明の別の目的は、デヌーダ組立体の傾斜にもかかわらず、入口ライン内へのデヌーダ液体のこぼれを最小し、且つ/又は阻止する膜式の収容液体流路を備えた連続湿潤型デヌーダ組立体を提供することにある。
【0026】
本発明の可溶性大気中ガスの捕集及び取出しのためのデヌーダ組立体は、本願の一部をなすものとして組み込まれている添付の図面、以下の発明の詳細な説明から明らかであり又はこれらに詳細に記載されている他の特徴及び他の利点を有し、これら図面及び詳細な説明は一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の好ましい実施形態について詳細に説明し、かかる実施形態の例は、添付の図面に記載されている。本発明を好ましい実施形態と関連して説明するが、本発明をこれら実施形態に限定するものではないことは理解されよう。これとは逆に、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲に含まれる変形例、改造例及び均等例を含むものである。
【0028】
次に図面を参照すると(種々の図において、同一の部分は同一の参照符号で示されている)、図1に注意を向けると、この図は、全体的に符号30で指示する、本発明に従ってガス状分析物をサンプルガスから捕集して取出すためのデヌーダ組立体の一実施形態を概略的に示している。デヌーダ組立体は、大気中の微量ガスの捕集及び取出しのために構成されており、種々の分析システムに組み込むことができ、かかるシステムは、限定するわけではないが、クロマトグラフィーシステム及び抽出システムを含み、これらシステムは、環境業界、医薬品業界、ライフサイエンス業界、バイオテクノロジー業界、化学業界、石油化学業界、発電業界及びエレクトロニクス業界において化学的混合物の成分を分離し、単離し、識別するよう構成されている。
【0029】
一般に、デヌーダ組立体30は、内部キャビティ32を備えたハウジング31と、1対のバリヤシート33を有している。バリヤシートは、内部キャビティを横切って延び、この内部キャビティを1対の液体リザーバ34とガス流通チャネル、即ち、ガスチャネル35に分離している。ガスチャネル35は、サンプルガスがガスチャネルの中を流れるように、サンプルガス源に流体的に接続されている。各液体リザーバ34は、デヌーダ液体がバリヤシート33を透過してその上に薄膜37を形成するように、一定容量のサンプル捕集液体、即ち、デヌーダ液体36を受入れ且つこれを保持するように構成され、薄膜37は、図4で最もよく分かるように、サンプルポリオレフィンガスとデヌーダ液体との直接的なガス(気体)/液体接触をもたらす。
【0030】
デヌーダ組立体のバリヤシート形態により、直接的なガス/液体接触を行うデヌーダ組立体を提供し、デヌーダ組立体は、デヌーダ液体がガスチャネルのサンプルガス入口内へ漏れ入ることなしに、角度方向傾斜を許容できる。かくして、本発明のデヌーダ組立体は、空気サンプル採取入口内への液体の漏れの可能性を最小にし且つ/又は防止し、かくして、サンプルガスの正確な分析を促進する。
【0031】
図1に示すように、一実施形態では、ハウジング31は、1対の実質的に平行な端板38と、端板間に設けられた実質的に平らなスペーサ39とを有している。好ましくは、ハウジングは、サンプルガスに対して不活性な材料で作られる。例えば、ハウジングは、ポリマー材料で作られたものであるのがよく、かかるポリマー材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリテトラフルオロエチレン(例えば、PFA TEFLON(登録商標))及び/又はポリカーボネートを含むが、これらに限定されない。当業者であれば認識することは、十分な構造的一体性を有すると共に意図するサンプルガスに対して実質的に不活性である他の適当な材料で、ハウジングを作ってもよいことである。
【0032】
各側板は、内側凹部40を有し、スペーサは、側板の内側凹部と整列した中央孔41を有している。側板の内側凹部とスペーサの孔は一緒になって、ハウジング31の内部キャビティ32を形成する。当業者であれば理解するように、ハウジングは他の形態を有していてもよい。例えば、スペーサ及び一方の端板に代えて、凹みチャネルを備えた単一の一体形ブロックを用いてもよく、この場合、単一の端板が、凹みチャネルを覆う。また、以下に明らかになるように、内部キャビティを複数個のサンプルガスチャネル及び/又は液体リザーバに分離するために、1つ、2つ、3つ又は4つ以上のスペーサを設けてもよい。
【0033】
図2に示すように、図示の実施形態では、各端板の内側凹部は、矩形部及びV字形端部42、43を有している。好ましくは、デヌーダ液体源45(例えば、図5参照)に流体的に接続されているデヌーダ液体入口44が、下側のV字形端部43に隣接して位置決めされる。この下方入口形態により、即ち、正の静水圧に起因して、液体リザーバ内のデヌーダ液体の水頭圧力が減少し、かくして、デヌーダ液体がバリヤシートを内方に弓形に曲げ、膨らませ、且つ/又は撓ませることを最小にし且つ/又は防止する。クロマトグラフィー又は他の分析システムに流体的に接続されているデヌーダ液体出口46が、上方のV字形端部42に隣接して位置決めされている。しかしながら、当業者であれば理解すべきように、デヌーダ液体出口が設けられる必要はなく、この場合、デヌーダ液体回路は、デヌーダ液体を液体リザーバから液体入口経由で取出すよう構成される。
【0034】
図2に示す実施形態では、各端板の内側凹部40は、端板の上端と下端のそれぞれから約40mmのところで始まる深さ約100μmのチャネルを有する。この実施形態では、内側凹部の長さは、約220mmであり、その幅は約13mmである。チャネルの表面は、内側凹部の表面上へのデヌーダ液体の保持を促進させてデヌーダ液体が液体リザーバを満たすのを容易にするために、湿潤性(濡れ性)を向上させるように機械加工され、即ち、凹凸付き表面仕上げを有するように機械加工されている。湿潤可能な凹凸面を形成するには、ダイヤモンドパターン又は「ローレット(刻み)」を形成するクロスハッチパターンの細い溝を表面上に機械加工するのがよく、かかるダイヤモンドパターン又はローレットは、液体の直線的な流れを引き起こしにくい。小さなダイヤモンドのパターンに加えて、表面仕上げを粗いままにし、例えば、機械加工に起因する工具跡が適所に残された状態にして、デヌーダ液体の分散を広い面積にわたって容易にするのがよい。
【0035】
一実施形態では、スペーサは、実質的に平らなPFA TEFLON(登録商標)の板から機械加工された1対の同一の半部を有する。しかしながら、当業者が理解すべきように、スペーサ半部を、ハウジング31に関して上述したように、他の適当な材料で作ってもよい。好ましくは、スペーサ半部の厚さは、約2.0mmである。スペーサの上端部47及び下端部48は、適当なチューブ材を受け入れる溝49,50を有し、サンプルガスは、サンプルガス源からこのチューブ材を通って流れ、ガス流通チャネルに出入りする。例えば、溝49,50は、デヌーダ組立体30を上流側のサンプルガス源51(例えば、図5参照)及び下流側の分析装置(例えば、図6のフィルタ67参照)及び/又は大気に通じる排気部又は通気部に流体的に接続する外径が0.25インチ(6.35mm)のPFA TEFLON(登録商標)チューブ材又は他の適当な流体回路手段を受け入れるような寸法及び形状のものであるのがよい。
【0036】
好ましくは、スペーサ39及び端板38は、適当な締結手段を用いて組立て及び分解が容易であり、かかる締結手段は、ねじ、ナットとボルト及び/又は他の周知の締結手段を含むが、これらに限定されない。図1に示す実施形態では、ハウジングは、各端板及びスペーサに設けられた28個のねじ孔を有する。一方の端板の孔は、8〜32条のねじ山を備えたねじ山付き孔52である。他方の端板及びスペーサは、貫通孔53を有する。かくして、当業者であれば、複数本の組立て用ねじ54を用いて組立体を互いにねじ締めすることにより、ハウジングを所望通りに容易に組み立て、分解し、再び組み立てることができる。
【0037】
次に、バリヤシートを参照すると、バリヤシート33は、内部キャビティ32を横切って延び、内部キャビティ32を、ガス流通チャネル35と1対のデヌーダ液体リザーバ34に分離している。各バリヤシートは、図4に示すように、液体リザーバ表面55及びガスチャネル表面56を有している。各液体リザーバ34は、内側凹部40の内面及びバリヤシートの液体リザーバ表面55によって定められる所定の容積を有する。ハウジング31の内部キャビティの残部は、ガス流通チャネルを形成する。ガスチャネル35は、スペーサ39の内面及び実質的に平行に互いに間隔をおいたバリヤシートのガスチャネル表面56によって定められる所定の容積を有する。
【0038】
バリヤシートの上述の構成により、デヌーダ液体の膜式収納流路が得られる。バリヤシートの中を通る液体の侵入速度は、使用条件下において、バリヤシート33がデヌーダ液体36を薄膜37を除いて液体リザーバ34内に実質的に収容するに十分遅く、かくして、ガスチャネル35内へのバルク液体の漏れを阻止する。かくして、ガスチャネル内へのデヌーダ液体のこぼれは、デヌーダ組立体30の角度方向の傾斜と無関係に阻止される。
【0039】
かくして、バリヤシートの構成は、たとえデヌーダ組立体30を水平の向きから傾けたとしても、ガス入口及び/又は出口ライン(例えば、溝49,50)内へのデヌーダ液体36のこぼれを阻止する。当業者であれば理解すべきように、入口ライン内へのかかるこぼれをなくすことにより、ガス流がデヌーダ組立体に流入する前における可溶性ガスの損失を防止する。
【0040】
バリヤシート33は、ガス及び液体に対して透過性であり、かくして、液体リザーバ内へのバリヤシートの中を通るサンプルガス分析物の拡散を容易にする。バリヤシートのガスチャネル表面56の上の液体薄膜37は、サンプルガス分析物のシンクとしての役目を果たす。いったんサンプルガス分析物が液体薄膜によって捕集され又はその中に拡散すると、サンプルガス分析物は、凝縮相をなし、即ち、もはやガス相をなさない。サンプルガス分析物の凝縮相は、溶液相分析物の形態で膜を透過する。図示の実施形態では、バリヤシートは、実質的に平らであり、実質的に上下方向の向きに配置されている。しかしながら、当業者であれば理解すべきように、各バリヤシートの形状は、変化してもよい。例えば、バリヤシートのうちの少なくとも1枚の全体的形状は、平らであってもよいし、しわ付きであってもよいし、弧状であってもよいし、且つ/又は波形であってもよい。また、バリヤシートのうちの少なくとも1枚を非上下方向の向きに配置してもよい。例えば、バリヤシートのうちの1枚又は2枚以上を水平方向の向きに配置してもよいし、傾斜した角度をなす向きに配置してもよい。
【0041】
図1に示す実施形態は1対のバリヤシートを有しているが、当業者であれば理解すべきように、本発明のデヌーダ組立体は、内部キャビティを1つ又は2つ以上のガス流通チャネル及び1つ又は2つ以上の液体リザーバに分離する1枚、2枚、3枚又は4枚以上のバリヤシートを有していてもよい。例えば、デヌーダ組立体の内部キャビティを、複数個のガス流通チャネルと、その各々が有する1つ又は2つ以上の専用デヌーダ液体リザーバに分離し、かくして、マルチチャネル型デヌーダ組立体を構成してもよい。
【0042】
好ましくは、バリヤシートは、親水性膜であり、ガス及び液体に対して浸透性の材料で作られる。バリヤシートの適当な材料は、セルロースアセテート、セルロースニトレート、他のセルロースエステル、NAFION(登録商標)、ポリビニルアセテート、ポリスルフォン及び/又は他の適当な材料を含むが、これらには限定されない。図示の実施形態では、各バリヤシートは、テキサス州スィーグウィン(Seguin)所在のメンブレン・フィルトレーション・プロダクツ・インコーポレイテッド(Membrane Filtration Products, Inc.)によりCELLU−SEP(登録商標)で市販されている形式の再生セルロース透析膜である。例えば、適当な膜の1つは、CELLU−SEP(登録商標)T3タイプ1210−100膜であり、この膜は、約12,000〜14,000の分子量カットオフを有し、平らにしたときに幅が約100mmになる管状の形態で市販され、約107μmの「湿潤」厚さ、即ち、水で飽和した状態の膜シートの厚さを有している。管状のCELLU−SEP T3膜は、スリットを入れることにより開き、それにより、幅が約200mmの単一層のバリヤシートを形成する。
【0043】
好ましくは、バリヤシートは、湿潤可能な膜で形成され、この湿潤可能な膜は、水又は他のデヌーダ液体が、膜の反対側の面を湿潤させる(例えば、ガスチャネル表面56上に薄膜37を形成する)が、実質的に膜を通り抜けて流れない程度に膜を透過するのに十分な薄さのものであり、即ち、デヌーダ液体は、水が膜の反対側の面に溜まって実質的にこれから滴下したり流れ落ちたりする程度には膜を透過しない。また、好ましくは、この膜は、膜を通り抜けて膜の液体側に至る捕集分析物の移動を妨げたり遅らせたりするほど厚くはないが、構造的一体性を維持する程度に厚い。バリヤシート33の透過性により、薄膜37は、ガスチャネル表面56全体を実質的に覆って、サンプルガス分析物のシンクとしての役目を果たすことができる。かかる構成は、サンプルガスとデヌーダ液体との接触面積が大幅に増加するので、先行技術の疎水性膜形態よりも効率が著しく高い。
【0044】
デヌーダ組立体30は、第1のバリヤシート33をスペーサ39と一方の端板38との間に配置し、第2のバリヤシートをスペーサと他方の端板との間に配置することによって容易に組み立てられる。バリヤシートに利用される膜は、湿潤時に寸法変化を起こす場合が多いので、かかる寸法変化に対応するために、バリヤシートは、組立て前に湿潤されることが好ましい。かかる形態は、このようにすることにより、液体リザーバがデヌーダ液体で満たされるとき、バリヤシートの膨出を最小にする。湿潤膜シート33及びスペーサ39が端板38間の適所にあれば、組立て用ねじをこれらのそれぞれのねじ孔に挿入して締め付けるのがよく、それにより、スペーサと端板を互いに固定してハウジングを組み立てる。バリヤシートの幅は、全体として大きめであり、即ち、バリヤシートはスペーサ及び端板よりも幅が広いので、ハウジングの組立て後に余分の膜を切除する。
【0045】
当業者であれば理解すべきように、2つの作動中の捕集表面と捕集表面と間の有効離隔距離、即ち、実質的に平らなバリヤシートのガスチャネル表面56間の有効離隔距離は、スペーサ39の厚さである。当業者であれば理解すべきように、所望の厚さを達成するためにこのスペーサに代えて1つ又は2つ以上のスペーサを用いることにより有効離隔距離を変化させることができる。
【0046】
いったんデヌーダ組立体を組み立てたら、サンプルガスから周知の仕方で取り出された分析物を含むデヌーダ液体を分析するための検出器に、デヌーダ液体出口46を流体的に接続するのがよい。例えば、デヌーダ液体出口46を、全体として符号57で指示する流体分析機器に流体的に接続するのがよい。流体分析機器は、クロマトグラフィーシステムであるのがよく、かかるクロマトグラフィーシステムとしては、イオンクロマトグラフィーシステムが挙げられるが、これには限定されない。検出器は、クロマトグラフィー用途に用いられる任意の形式のものであってよく、かかる検出器としては、導電性検出器、蛍光検出器又は吸光度検出器が挙げられる。また、当業者であれば理解すべきように、ガス流通チャネル35のガス出口は、ガス分析機器に周知の仕方で流体的に接続されるのがよい。全体的に符号58で指示するガス分析機器としては、粒子検出器、粒子捕集器及び/又は粒子分析システムが挙げられるが、これらには限定されない。変形例として、サンプルガスのそれ以上の分析を望まない場合、ガス流通チャネルのガス出口を単に大気に通気させてもよい。
【0047】
一実施形態では、捕集又はデヌーダ液体36は、好ましくは露出したバリヤシートの全長にわたって液体が接触する高さレベルまで、液体リザーバ34を実質的に満たす。液体リザーバ内のデヌーダ液体は、バリヤシート33を透過し、バリヤシートのガスチャネル表面56を覆う。透過型シート構成により、ガスチャネル表面上にデヌーダ液体の薄膜37が形成され、この薄膜は、ガス流通チャネル35内を流れているサンプルガスと直接的なガス−液体接触状態にある。透過型シート構成により、サンプルガスからの分析物は、バリヤシート33を通り抜けて、液体リザーバ34を満たしているデヌーダ液体36内へ拡散することを可能にする。
【0048】
サンプルガス中の少なくとも1種類のガス状分析物の捕集及び取出し方法について以下に説明する。上述したように、デヌーダ組立体30は、ハウジング31の内部キャビティ32を横切って延びる1対のバリヤシート33を有し、バリやシート33は、内部キャビティをガス流通チャネル35及び1対の液体リザーバ34に分離している。所定量のデヌーダ液体36を液体リザーバ内に入れると、デヌーダ液体は、バリヤシートを透過し、バリヤシートのガスチャネル表面56をデヌーダ液体の薄膜37で覆う。
【0049】
大気中ガスであり且つ一般に水性液中に溶けることが可能な、分析すべきサンプルガスを、ガスチャネル35の中を流れるように差し向ける。サンプルガスがガスチャネルの中を流れているとき、サンプルガスは、バリヤシートのガスチャネル表面56上のデヌーダ液体の薄膜37と直接的に接触する。サンプルガスからの分析物は、デヌーダ液体中に拡散し、デヌーダ液体によって保持され、バリヤシート33を通り抜け、液体リザーバ34内へ流れる。一実施形態では、サンプルガスは、デヌーダ液体中に溶解する。
【0050】
いったん所定の期間が経過したら、拡散状態の分析物を含む或る量のデヌーダ液体を液体リザーバ34から抜き取り、そして好ましくは図10に示すように分析のために流体分析機器57に差し向ける。
【0051】
当業者であれば理解すべきように、種々のデヌーダ液体を用いてサンプルガスから種々の分析物を捕捉することができる。サンプルガス中の多種類の分析物の測定を行いたい場合、本発明の方法は、サンプルガスから第2、第3等の分析物を取出す段階と、これら分析物を検出に先立ってデヌーダ液体中で分離する段階とを更に有するのがよい。かかる分離は、クロマトグラフィーにより実施できる。分離は、種々の方法で実施でき、かかる方法としては、イオンクロマトグラフィーを含む種々の形態のクロマトグラフィーを実施し、次に、例えば導電率、蛍光性、吸光度及び/又は当該技術分野において周知の検出モードにより検出を行うことが挙げられるが、これには限定されない。
【0052】
一般に、関心のある分析物ガスをデヌーダ液体により単に溶解によってサンプルガスから捕捉することができる(例えば、H22のようなガスは、例えば可溶性が極めて高く、これと同様に、ホルムアルデヒドも又、メチレングリコールとして水に溶ける)。サンプルガスと反応してこれを保持する成分をデヌーダ液体に入れることによって、捕捉は助長できる。例えば、ホルムアルデヒドの取込み又は捕捉を促進させるには、亜硫酸水素塩を捕集物又はデヌーダ液体に添加して亜硫酸水素アルデヒド付加物が形成されるようにするのがよい。酸性ガスの取込み又は捕集を促進させるには、塩基をデヌーダ液体に添加して塩を形成するのがよく、塩基性ガスの取込み又は捕捉を促進させるには、酸を添加して塩を形成するのがよい。例えば、アンモニアの取込み又は捕捉を促進させるには、希H2SO4をデヌーダ液体に添加するのがよい。当業者が理解すべきように、他の形式の反応性取込み又は捕捉がおこなわれてもよい。例えば、H22をデヌーダ液体に添加することにより、例えば、H2SO4を生じさせることによりSO2の取込み又は捕捉を促進させ、これを一段と促進させるには、NaOHを更に添加して溶液をアルカリ性にするのがよい。バリヤシートが水性デヌーダ液体のためのイオン交換膜で作られている場合、バリヤシートは、水和イオン交換部位を有し、この水和イオン交換部位は、膜を通り抜ける連続液体経路を形成する水溜まりを生じさせる。
【0053】
通常可溶性ガスである分析物ガスをデヌーダ液体によっていったん取出すと、粒子の可溶性成分は、それを溶液中にスクラビング(scrubbing)して、分析用溶解粒子成分を含み且つ結果的に得られた溶液を送ることにより、例えばイオンクロマトグラフィーによりかかる粒子の可溶性成分を容易に分析することができ、これについては、例えば、P・K・シモン(P. K. Simon)他著,「コンティニュアス・オートメーティッド・メジャメント・オブ・ザ・ソリュブル・フラクション・オブ・アトモスフェリック・パーティキュレート・マター(Continuous Automated Measurement of the Soluble Fraction of Atmospheric Particulate Matter)」,「アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)」,第67巻,1995年,p.71〜78;P・K・シモン(P. K. Simon)他著,「コンティニュアス・オートメーティッド・メジャメント・オブ・ガシアス・ナイトラス・アンド・ナイトリック・アシッズ・アンド・パーティキュレート・ナイトライト・アンド・ナイトレイト(Continuous Automated Measurement of Gaseous Nitrous and Nitric Acids and Particulate Nitrite and Nitrate)」,「エンバイロンメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー(Environmental Science & Technology)」,第29巻,1995年,p.1534〜1541;C・B・ボーリング(C. B. Boring)他著,「フィールド・メジャメント・オブ・アシッド・ガスイズ・アンド・ソリュブル・アナイアン・イン・アトモスフェリック・パーティキュレート・マター・ユージング・ア・パラレル・プレート・ウェット・デヌーダ・アンド・アン・オルタネーティング・フィルタ−ベースド・オートメーティッド・アナリシス・システム(Field Measurement of Acid Gases and Soluble Anions in Atmospheric Particulate Matter using a Parallel Plate Wet Denuder and an Alternating Filter-Based Automated Analysis System)」,「アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)」,第74巻,2002年,p.1256〜1268を参照されたい。なお、これら非特許文献を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部となす。
【0054】
〔実施例〕
以下の実験においては、特段の指示がなに限り、以下の試験用デヌーダ組立体を上下形態で動作させ、デヌーダ液体を、デヌーダ組立体の高さレベルのすぐ下に配置されたリザーバから吸引した。
【0055】
〔ガス発生及び捕集効率測定〕
図5を参照すると、pH4に緩衝させた既知の濃度の水性亜硫酸水素硫黄液を含む溶液中に浸漬され且つヘンリーの法則に基づく多孔質膜源を用いて発生させた二酸化硫黄(SO2)ガスを用いて、試験用デヌーダ組立体30のガス捕集効率を測定した。1.0ppmvSO2試験流を1.0〜2.0毎分標準リットル(SLPM)の流量範囲にわたって試験用デヌーダ組立体に送り込んだ。全体として符号59で示し且つ長さが60cmの発泡PTFE膜管拡散スクラバ(ePTFE MDS)を設け、次に、これに直列に試験用デヌーダ組立体30を配置した。全体的な構成を図5に示す。試験用デヌーダ組立体30に関し、5mMH22又は5mMH22+5mMNaOH溶液をデヌーダ液体に用いた。拡散スクラバの場合、5mMH22をスクラバ又はデヌーダ液体として用いた。デヌーダ液体とスクラバ液体は両方とも、500μL/分の流量であり、これらをGILSON Minipuls2蠕動ポンプ60(ワイオミング州ミドルトン所在のギルソン・インコーポレイテッドによって市販されている)により吸引した。ePTFE拡散スクラバ流出液の導電性信号(S1)をCDM−2導電率検出器61(カリフォルニア州サニーベール所在のディオネックス・コーポレイションによって市販されている)で測定した。また、試験用デヌーダ組立体を定位置に設けないで導電性信号を測定した(S2)。部分捕集効率fを次の式(1)で計算した。
f=(1−S1/S2)・・・式(1)
【0056】
〔粒子発生及び粒子損失測定〕
試験用デヌーダ組立体30の粒子発生及び粒子損失を測定した。全体的な実験設備を図6に示す。振動オリフィスエーロゾル発生器62(ミネソタ州セントポール所在のTSI・インコーポレイテッドによって市販されているモデル3450)を用いてフルオロセインをドープした単分散NaClエーロゾルを発生させて、エーロゾルを容易に測定できるようにした。純粋化合物を液滴型エーロゾル発生器から噴霧した場合、最終的な乾燥粒径は、供給溶液濃度の立方根に比例する。濃度が5μM、50μM、500μM、2.5mM及び5.0mMの塩化ナトリウム溶液をそれぞれ粒子発生に使用した。全てのNaCl溶液に、トレーサとしてフルオロセインをドープした。名目上、これら発生粒子の直径はそれぞれ、0.24μm、0.52μm、1.1μm、1.9μm及び2.4μmであった。
【0057】
エーロゾル発生器を、オリフィス直径20μm、注射器容量60mL、注射器ポンプ速度5.0×10-4cm/秒(流量0.165cm3/分)、駆動周波数50.5kHz、1次空気流量1.5SLPM、及び稀釈空気流量35.0SLPMで動作させた。エーロゾルが無い「ゼロ」空気を、容量が100SLPMの純粋空気発生器63(オハイオ州クレブス所在のアドバンスト・アナリティカル・デバイス・カンパニーにより市販されているAADCO Model 737-14)により発生させた。発生した1次エーロゾルを稀釈し、2次空気流で乾燥させた。次に、エーロゾルは、Kr−85ニュートライザ(中和器)64(ミネソタ州セントポール所在のTSI・インコーポレイテッドによって市販されているモデル3054エーロゾルニュートライザ)を通り、それによりエーロゾルは、平衡ボルツマンチャージを達成できた。次に、エーロゾル流を完全に乾燥させるために2つの一連の20−L容積ポリエチレンチャンバに導入した。スプリッタ65を用いて、流れを3つの流れに分割した。エーロゾル粒径分布を測定するために、レーザを利用したマルチチャネル(6つのレンジ、0.1〜>3.0μm)光学粒子カウンタ66(オレゴン州グランツパス所在のメット−ワン社により市販されているモデルA2212−01−115−1)により1つの流れをサンプル採取した。試験用デヌーダ組立体30(例えば図6では上下方向形態で動作し、或いは、例えば図7では水平方向形態で動作する)を設け、次にフィルタ67(英国ケント・メイドストーン所在のワットマン・インターナショナル・リミテッドにより製造された直径47mmのガラス繊維フィルタ、即ち、WHATMAN型GF/A)を設け、これをそれ自体の吸引ポンプ(AP)68及び質量流量コントローラ(MFC)69に連結し、第2の流れをサンプル採取した。第3の流れは、過剰の流れをエーロゾル源から抜いた。
【0058】
デヌーダ/フィルタ組立体によるサンプル採取を1.0又は2.0SLPMの空気流量で1〜2時間かけて行った。フィルタを10分間かけて超音波抽出処理し、蛍光性測定に先立って20mLの水及び注射器を濾過した(0.2μm)。試験用デヌーダ組立体からのデヌーダ流出液(純水を、流量500μL/分でデヌーダエーロゾル堆積測定のために入力液体として用いた)も、捕集してその蛍光性を測定した。湿潤膜に堆積する任意の可溶性エーロゾルをデヌーダ流出液に溶かして一体にした。試験用デヌーダ組立体の空気入口管及び出口管(内径0.16インチ(4.064mm)×外径0.25インチ(6.35mm)×長さ50mm)へのエーロゾルの付着の程度も又、10mLの純水でこれらの部分のサンプル採取後、抽出によって測定した。2NのNaOHの1滴を各抽出物に加えた後、λex=490nm、λem=520nmを用いて蛍光測定を行った(日本国の島津製作所のモデルRF−540分光蛍光計)。試験用デヌーダ組立体における全粒子損失量(TPL)を次の式(2)のようにして計算した。
TPL=(a+b)/(a+b+c)×100%・・・式(2)
上式において、a,b,cはそれぞれ、(a)デヌーダ液体流出液、(b)デヌーダ空気入口/出口管、及び(c)バックアップフィルタ抽出物中に見受けられるフルオロセインの総量である。
【0059】
〔液体滞留量〕
デヌーダ液体リザーバ45を(a)試験用デヌーダ組立体の真上及び(b)真下に配置した状態で試験用デヌーダ組立体30の液体滞留量を測定した。膜は、薄く且つ可撓性なので、正の静水圧下で膨出する場合がある。試験構成を図8に示す。液体滞留量を、全液体流量が480μL/分及び空気サンプル採取速度が1.2SLPMにおいて測定した。ループインジェクタを用いて100μLの5mMNaClの注入を行った。注入時からピークが見えるまでの時間(t)を測定した。これに対応するブランクについての時間(t0)を測定した(全ての構成要素は、デヌーダ組立体が省かれ、通常これに連結された管を直接互いに連結したことを除き定位置に位置していた)。補正した時間(t−t0)に液体流量を乗算して、平均滞留量を得た。
【0060】
〔分析物ガスに対応した応答時間〕
デヌーダ組立体が試験用ガス濃度中の瞬間的なパルスに対応する速度を導電率信号中の10〜90%の立ち上がり時間及び90〜10%の立ち下がり時間により1ppmvSO2のパルスとして測定し、これを5mMH2O2が500μL/分でデヌーダ組立体を通って流れている状態で、1SLPMのガス流量で試験用デヌーダ組立体に適用した。これら実験を並流と向流のガス−液体流れで装置の観察された応答時間に対し短い(1分)又は長い(10分)試験用ガスパルス持続時間で行った。
【0061】
〔デヌーダ組立体のガス取出し効率〕
板が層流条件下においてガスについて理想的なシンクであると仮定し、Q(cm3/秒)の堆積流量で流れているガスの拡散係数がD(cm2/秒)である場合、2枚の同一の板を有する平行板型デヌーダ組立体の理想的な捕集効率fは、次式(3)で与えられる。
f=1−0.91exp(−2.4πwDL/Qs)・・・式(3)
上式において、平行な各板は、作動領域において長さL(cm)及び幅w(cm)を有し、平行な板は、距離s(cm)だけ互いに離されている。
【0062】
上記式(3)では、Lwは積としてのみで生じるので、アスペクト比は重要ではなく、重要なのは総面積だけである。式(3)は、理想化された(可能な限り最高の)捕集効率を予測している。というのは、この方程式は、ガス分子と実効捕集表面の全ての衝突の結果として、ガス分子の取込み又は捕捉が起こることを仮定しているからである。試験用デヌーダ組立体の理想的な捕集効率と実験により得られた捕集効率を、1ppmvSO2ガスについて図9に示す。白丸(○)と黒丸(●)はそれぞれ、デヌーダ液体として5mMH22溶液及び5mMH22+5mMNaOH溶液を用いた捕集効率を示している。実線は、各デヌーダ液体について実験結果の最良の当てはめ(最良適合)であり、破線は、理想的な捕集効率を示している(L=22cm、w=1.3cm、s=0.2cm、296KにおけるSO2についてのDの最適予測は、0.12cm2/秒であり、フィッシュ(Fish)及びダーハム(Durham)の初期の測定結果と良好に一致している)。
【0063】
上記結果の示すところによれば、捕集効率は、理想的な挙動の結果として得られ、最高28cm3/秒のサンプル採取量までほぼ定量的である(1.4SLPM、周囲圧力680mmHg、周囲温度296K)。流量がこれよりも高い場合、実験による捕集効率は、理想的な計算値よりも小さい。シンクとしての膜表面の効率は明らかに、デヌーダ液体中に混ぜ込まれたNaOH及び/又はH22で決まり、確かに、NaOH+H22配合物は、識別可能なほどH22単独よりも良好である。これが示唆することは、表面飽和が高い流量で生じているということである。これは又、理論的な捕集効率がシンク試薬の低い試験SO2濃度又はこれよりも高い濃度でこの場合に観察された効率を超えて持続している可能性が多分にあるということを示唆している。これと同様に、理論捕集効率は、硝酸(HNO3)、即ち、SO2とほぼ同じ拡散係数を有するが、付着係数が非常に大きなガスに関し、〜30cm3/秒のサンプル採取量を超えて持続することが見込まれる。捕集効率を測定する際に適切なのは、ガスの質量流量ではなく、デヌーダ組立体を通るその速度であることに注目することも又重要である。
【0064】
上述の実験において、SO2について99+%の捕集効率が、1.4標準リットル/分(SLPM)の流量で観察された(理論的に予測された)。実験室は、988mの高度に位置していた。海面レベルでは、1.4SLPMよりも大きな質量流量が可能であり、他方、依然として理論捕集効率を達成する。これよりも高い高度/低い周囲圧力では、最大許容質量流量を、ほぼ定量的な捕集効率が維持されなければならないとすると、減少させなければならない。本発明の膜型デヌーダ組立体は、最低で485mmHgの圧力(名目上、最高11,900ft/3,600mの高度まで)まで、1SLPMの流量で最も重要な無機大気中ガス、即ち、HCl、HONO、HNO3、SO2及びNH3についてほぼ定量的な捕集効率を達成できることが必要であることは明らかである。
【0065】
式(3)は、ln(1−f)とサンプル採取量の逆数との間に線形関係を予測する。この場合に用いられる両方の吸収体に関し、この関係式についての線形値r2は、≧0.99であった。
【0066】
〔粒子損失〕
表1は、試験用デヌーダ組立体における粒子損失を示している。上下形態で作動されると、試験用デヌーダ組立体の粒子損失は、0.38〜3.48μmの粒子空力学的直径範囲にわたり、1.0及び2.0SLPMの空気流量において、0.88%〜2.88%であり、平均1.79%であった。粒子のうち〜0.5%だけが、実際にデヌーダ液体中に現れた。これよりも小さなサブミクロン級の粒子についての粒子損失は、これよりも低い空気流量では高く、恐らくほとんどは静電気による理由及び微小粒子の高い拡散性に起因して、入口/出口TEFLON(登録商標)管で生じた。水平方向形態では、恐らくは重力による沈殿に起因して、特に大きな粒子についてはこれよりも大きな損失が生じる。1.93μm試験用粒子の場合、例えば、損失は、10%を超える。したがって、この形態は、推奨できず、それ以上の大がかりな試験を行わなかった。
【0067】
【表1】

*立方体の形の塩化ナトリウム(NaCl)粒子を考慮に入れ、且つ、カニンガム滑り補正を利用して、単位密度を仮定する。
【0068】
〔液体滞留量〕
水リザーバを試験用デヌーダ組立体の高さレベルのすぐ下に配置した状態で試験用デヌーダ組立体の液体滞留量(LRV)を測定して、690μL(相対標準偏差において±0.74%、n=3)を得た。これは、デヌーダ組立体により空気をサンプル採取してもしなくても、著しくは変化しなかった。しかしながら、リザーバの位置をデヌーダ組立体のすぐ上に持ち上げた場合、膜の液体側に加わる外向きの圧力は、非常に高く、LRVは、2倍以上の1.88mL(±1.6%、n=3)になった。注目すべきこととして、性能仕様の全ては、液体リザーバが及ぼす流体圧力の影響を受ける。流体圧力により膜が膨出する場合、粒子は、突き出た膜上に容易に付着する(これとは逆に、膜内離隔距離sが減少すると、ガス捕集効率が高くなる)。本発明者の用途では、粒子付着の大幅な増加は、許容できず、従って、本発明者は、かなり大きな静水圧が膜に加わらないように、常に作業した。
【0069】
各板の滞留量も個別に測定した。繰り返し測定を行い、繰り返し組立てを行うと、個々の板の滞留量は、同一ではなく、一方の側から他方の側にかけて且つ種々の試験用組立体相互間において代表的には5%未満のばらつきがあった。
【0070】
〔応答時間〕
関心のある標的ガスから得られる分析物イオン/分子が膜を通過し、検出器流中に現れる量は最終的には、分析又は分析反応時間が流量測定段階ではない場合、分析システム全体が変化するガス状分析物濃度にどれほど素早く応答するかを決定する要因である。湿式デヌーダが一般に、各クロマトグラムについてのイオンクロマトグラフィー(IC)サイクル時間(5〜15分程度)が決定要因になるイオンクロマトグラフィー(IC)システムに用いられているが、膜応答が制限要因になりうる場合、迅速な分析反応が用いられる場合、他の非イオン極性分析物、例えばホルムアルデヒド(HCHO)及び過酸化物が存在する。一般に、これら装置は、短いサンプル採取時間及び長いゼロ持続時間(例えば、2分サンプル、8分ゼロ)で動作する。したがって、本発明者は、本発明者が現在本発明者のIC装置で用いる短い(1分)持続時間のサンプルパルスと同一の持続時間(15分)の両方について応答時間を測定した。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

*空気流量1SLPM;総液体流量(一方又は両方の板がアクティブ)500μL/分
【0072】
2つの互いに異なるサンプル採取状況は、(a)移行状況及び(b)定常状況を記載しており、後者の場合、完全な平衡状態は、サンプルガスとデヌーダ液体流出液との間で達成される。サンプル濃度の迅速な変化に続くため、より適切なのは、真に状況aである。注目されるように、向流動作は常時、実質的に良好な立ち上がり時間を生じさせ、これに対し、膜を通る拡散時間によって制限される可能性のある立ち下がり時間は、本質的に、並流又は向流について同一である。各板についてのLRV値の比較した場合のように、各板を独立して動作させることにより、本質的に同一の結果が与えられ、2枚の板からの応答時間は一緒になって、2つの個々の板応答時間の予想二乗平均値の和に近い値を生じさせる。
【0073】
以上要するに、本発明者は本明細書において、通常の大気中の酸性及び塩基性ガスを少なくとも約1L/分の流量で定量的に取出すことができ、立証可能に非常に低い粒子付着を示す有利な大きさの膜利用型デヌーダ組立体を説明した。本発明のデヌーダ組立体を適合性のある粒子捕集器を有する完全なシステムと組み合わせて使用できる。両性イオン性緩衝液をかかるデヌーダ組立体に用いて酸性ガスと塩基性ガスの両方を独立のICシステムで捕集し、イオンクロマトグラフィーにより分析することが可能であり、又、各板を別々の液体で動作させることが可能である。
【0074】
有利には、本発明のデヌーダ組立体は、可溶性大気中ガス、例えばSO2(これには限定されない)を1L/分を超える流量で本質的に定量的に取出すことができる。
【0075】
本発明の一実施形態では、デヌーダ組立体30を有するシステム70は、図11に示すように、サンプルガスから2種類の分析物を同時に捕捉するよう構成されている。同一の部品を示すために同一の参照符号が用いられている。デヌーダ組立体30のガスチャネルは、上述したガスチャネルとほぼ同じ仕方で、サンプルガス源51及びガス分析機器58に流体的に接続されている。しかしながら、この実施形態では、各液体リザーバ34,34′は、専用液体源45,45′を有し、かかる専用液体源では、特に1種類の分析物に適した1つのデヌーダ液体が左側リザーバ34に送られ、別の種類の分析物について特に適した第2のデヌーダ液体が、右側リザーバ34′に送られる。左側及び右側リザーバは、サンプルガスから採取された2つの互いに異なる分析物の別々の分離を可能にするために、別個独立の流体分析装置57,57′に流体的に接続されている。
【0076】
本発明の別の実施形態では、デヌーダ組立体は、図12〜図14に示すように、改造形態のスペーサ/端板を有している。この実施形態では、端板38aは、隆起段部又は肩部分71を有し、この隆起段部又は肩部分は、スペーサ39aの中央孔41aの形状と相補する周辺形状を有している。特に、端板は、肩71が平らなフランジ部分72から約0.2インチ(0.508cm)上方に延び、かくして、デヌーダ組立体を組み立てたときに、中央開口部41aの一部内に延びるようになっている。内側凹部40aが、図14に最も明確に示されているように、肩部分の上面に設けられている。
【0077】
段付き端板構成により、スペーサ39aは、厚さが大きくなり、かくして、追加の構造的一体性及び単純化された設計が得られる。特に、厚いスペーサにより、デヌーダ組立体の組立てを容易にする一体形設計が可能になる。有利には、ガス入口73及びガス出口74を容易に孔あけでき、所望ならば、皿座ぐりをスペーサ39aに直接施し、かくして、ガスサンプル入口及び出口チューブ材をガスチャネルに流体的に接続するための単純な取り付け手段が得られる。動作及び使用中、スペーサ39a及び端板38aは、上述したスペーサ39及び端板38と実質的に同一の仕方で用いられる。
【0078】
説明の便宜上、又特許請求の範囲における正確な定義が得られるよう、「上」又は「上方」、「下」又は「下方」、「内側」及び「外側」及びこれらに類似した用語は、図面に記載された、かかる特徴の位置に関して本発明の特徴を説明するために用いられている。
【0079】
本発明の特定の実施形態の上記説明は、図示及び説明の目的で与えられている。かかる説明は、排他的ではなく、又は、本発明を開示した形態そのものに限定するものではなく、上記教示に照らして多くの改造例及び変形例を想到できることは明らかである。実施形態は、本発明の原理及びその実用的な用途を最もよく説明し、それにより当業者が本発明及び想定される特定の用途に合うように種々の改造が施された種々の実施形態を最適利用できるようにするために選択されて説明されている。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及びその均等範囲に基づいて定められる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】スペーサと各側板との間に設けられた1対の膜を有し、本発明に従って可溶性大気中ガスを捕集して取出すデヌーダ組立体の側面図である。
【図2】図1の側板の一方の正面図である。
【図3】図1のスペーサの正面図である。
【図4】図1のデヌーダ組立体の拡大詳細図である。
【図5】ガス捕集効率の測定が可能であるように構成された、図1のデヌーダ組立体を有するシステムの概略図である。
【図6】粒子損失度の測定が可能であるように構成された、図1のデヌーダ組立体を有するシステムの概略図である。
【図7】図6のシステムと同様に粒子損失度の測定が可能であるように構成され、図1のデヌーダ組立体が水平方向の向きに配置されたシステムの概略図である。
【図8】残留量の測定が可能であるように構成された、図1のデヌーダ組立体を有するシステムの概略図である。
【図9】本発明に従ってサンプル採取速度とデヌーダ液体組成の関数としてガス捕集効率を示すグラフである。
【図10】図1のデヌーダ組立体を有する、本発明に従って大気中の可溶性ガスの捕集及び取出しのためのシステムの概略図である。
【図11】図1のデヌーダ組立体を有する、本発明に従って大気中の可溶性ガスの捕集及び取出しのための別のシステムの概略図である。
【図12】図3に示すスペーサと類似した別のスペーサの正面図である。
【図13】図2に示す側板と類似した別の側板の一方の正面図である。
【図14】図12のスペーサ及び図13の端板の図12について14a−14a線、図13については14b−14b線における分解組立て側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルガスからのガス状分析物の捕集及び取出しのためのデヌーダであって、
内部キャビティを備えたハウジングと、
サンプルガス源と流体的に接続されたサンプルガス入口と、
デヌーダ液体源と流体的に接続されたデヌーダ液体入口と、
前記内部キャビティを横切って延び且つ前記内部キャビティを液体リザーバとガス流通チャネルとに分離するバリヤシートと、を有し、前記ガス流通チャネルは、前記サンプルガス入口の下流側にそれと流体的に接続され、前記バリヤシートは、液体リザーバ表面とガスチャネル表面とを有し、液体に対して及び関心のある分析物ガスから得られる溶液スペース化学種に対して透過性であり、
更に、前記液体リザーバ内に配置されるデヌーダ液体を有し、このデヌーダ流体は、前記バリヤシートを透過して前記バリヤシートのガスチャネル表面を覆い、それにより、前記ガスチャネル表面上の前記デヌーダ液体が前記ガス流通チャネル内を流れるサンプルガスに接触することを可能にし、且つ、捕集された分析物が前記バリヤシートを通過して前記液体リザーバ内に移動することを可能にする、デヌーダ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記サンプルガスに対して不活性である、請求項1記載のデヌーダ。
【請求項3】
前記ハウジングの少なくとも一部分は、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリテトラフルオロエチレン又はポリカーボネートで作られる、請求項2記載のデヌーダ。
【請求項4】
前記バリヤシートは膜である、請求項1記載のデヌーダ。
【請求項5】
前記膜は親水性である、請求項4記載のデヌーダ。
【請求項6】
前記膜は、セルロースアセテート、NAFION(登録商標)、ポリビニルアセテート、セルロースニトレート又はセルロースエステルで作られる、請求項5記載のデヌーダ。
【請求項7】
前記バリヤシートは、実質的に平らである、請求項1記載のデヌーダ。
【請求項8】
前記バリヤシートは、実質的に上下方向の向きに配置される、請求項1記載のデヌーダ。
【請求項9】
前記バリヤシートは、実質的に非上下方向の向きに差し向けられる、請求項1記載のデヌーダ。
【請求項10】
前記ハウジングは、前記内部キャビティの一部を構成する内側凹部を備えた側板を有し、前記液体リザーバは、その少なくとも一部が、前記内側凹部及び前記液体リザーバ表面によって構成され、前記ガス流通チャネルは、その少なくとも一部が、前記ガスチャネル表面及び前記内側キャビティの残部によって構成されている、請求項1記載のデヌーダ。
【請求項11】
前記側板は、前記内側凹部内に位置する凹凸面を有する、請求項10記載のデヌーダ。
【請求項12】
前記側板は、前記デヌーダ液体リザーバに流体的に接続された前記内側凹部の一方の端部に設けられたデヌーダ液体入口と、前記内側凹部の反対側の端部に設けられたデヌーダ液体出口とを有する、請求項10記載のデヌーダ。
【請求項13】
前記デヌーダ液体出口は、前記分析のための検出器と流体的に接続される、請求項12記載のデヌーダ。
【請求項14】
前記内側凹部は、V字形の端部を備えた矩形の形状を有する、請求項12記載のデヌーダ。
【請求項15】
前記デヌーダ液体入口は、前記V字形端部の低い方の一方と隣接して設けられ、前記デヌーダ液体出口は、前記V字形端部の上端と隣接して設けられる、請求項14記載のデヌーダ。
【請求項16】
前記液体リザーバは、クロマトグラフィーシステムと流体的に接続されたデヌーダ液体出口を有する、請求項1記載のデヌーダ。
【請求項17】
前記クロマトグラフィーシステムは、イオンクロマトグラフィーシステム、蛍光検出システム又は吸光度検出システムを有する、請求項16記載のデヌーダ。
【請求項18】
前記ガス流通チャネルは、粒子検出器、粒子コレクタ又は粒子分析システムと流体的に接続された出口を有する、請求項1記載のデヌーダ。
【請求項19】
前記ハウジングは、
各々が内側凹部を備えた1対の互いに平行な側板と、
前記側板の間に設けられ、前記内側凹部と整列した中央孔を備えたスペーサと、を有し、前記側板及び前記スペーサは、前記ハウジングを形成し、前記中央孔及び前記内側凹部は、前記内部キャビティを構成し、
更に、前記内部キャビティを前記ガス流通チャネルと1対の液体リザーバとに分離する1対のバリヤシートを有し、各バリヤシートは、前記スペーサと前記平行な側板のそれぞれとの間に設けられる、請求項1記載のデヌーダ。
【請求項20】
サンプルガス中の少なくとも1つのガス状分析物の捕集及び取出しのための方法であって、
ハウジングに設けられた内部キャビティを横切って延び、前記内側キャビティをガス流通チャネルと液体リザーバとに分離するバリヤシートを備えたデヌーダを準備する段階と、
一定の容積のデヌーダ液体を前記液体リザーバ内に供給する段階と、を有し、それにより、前記バリヤシートを透過させ、前記バリヤシートのガスチャネル表面を前記デヌーダ液体の膜で覆い、
更に、サンプルガスを前記ガス流通チャネルの中に流す段階を有し、それにより、前記ガスチャネル表面上の前記デヌーダ液体の前記膜を、前記ガス流通チャネル内を流れるサンプルガスに接触させ、1つの分析物を捕集し、それを前記バリヤシートを通過させて前記液体リザーバ内に拡散させ、
更に、前記拡散した1つの分析物を含む一定の容積の前記デヌーダ液体を前記ガス流通チャネルから分析のために取出す段階とを有する、方法。
【請求項21】
前記1つの分析物は、水性液に直接又は反応時に溶解する大気中ガスを有する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
更に、前記デヌーダを、前記バリヤシートが上下方向の向きに配置す段階を有する、請求項19記載の方法。
【請求項23】
更に、前記デヌーダを前記バリヤシートが非上下方向の向きに配置する段階を有する、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記デヌーダは、1対の互いに平行な側板を有し、側板の各々は、前記液体リザーバのそれぞれの一部を構成する内側凹部を備え、
前記デヌーダは、更に、前記内側凹部と整列し且つ前記ガス流通チャネルの少なくとも一部を構成する中央孔を備えたスペーサを有し、
更に、バリヤシートを前記スペーサと前記平行な側板のそれぞれとの間に設けて、前記内部キャビティを前記ガス流通チャネルと1対の液体リザーバとに分離する段階と、
前記スペーサと前記平行な側板を互いに固定する段階とを有する、請求項19記載の方法。
【請求項25】
更に、前記バリヤシートを前記平行な側板の外周及び前記スペーサの外周の少なくとも一方に沿って切除する段階を有する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
更に、前記取出したデヌーダ液体中の拡散分析物を検出する段階を有する、請求項19記載の方法。
【請求項27】
前記サンプルガスは、少なくとも第2の分析物を含み、
更に、検出前に前記1つの分析物とこれと別個の前記第2の分析物を分離する段階を有する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記分離は、クロマトグラフィーによって行われる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
更に、蛍光検出又は吸光度検出段階を有する、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記サンプルガスは、更に、粒子を含み、
更に、前記ガス流通チャネルから出た後に前記サンプルガス中の粒子を分析する段階を有する、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−503585(P2007−503585A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524769(P2006−524769)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/027314
【国際公開番号】WO2005/022059
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】