説明

大気圧プラズマ処理装置

【課題】設置スペースの縮小及び装置コストの低減を図ることのできる大気圧プラズマ処理装置を提供すること。
【解決手段】対向配置された一対の電極(40)と、一対の電極(40)に接続された電源(5)と、被処理基材(K)を保持する保持手段(7,63a)とを備え、一対の電極(40)の少なくとも一方には、機能物質を含む含機能物質部材(42)が着脱自在に設けられ、電源(5)は、一対の電極(40)間の領域に大気圧雰囲気下でプラズマが励起し且つ含機能物質部材(42)から機能物質がスパッタリングする電力を当該一対の電極(40)に印加する構成とされ、保持手段(7,63a)は、スパッタリングした機能物質が被処理基材(K)に到達する位置となるように被処理基材(K)を保持する構成とされたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大気圧プラズマ処理装置に関する。より詳しくは、被処理基材の表面に撥水性物質等の機能物質を、大気圧雰囲気下でのプラズマ処理により付着させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基材に撥水化処理を行う装置として、大気圧プラズマ処理装置が用いられている。大気圧プラズマ処理装置では、被処理基材の表面に撥水性物質等の機能物質を、大気圧雰囲気下でのプラズマ処理により付着させている。図5は従来の大気圧プラズマ処理装置を示す概略図である。図5に示すように、従来の大気圧プラズマ処理装置50は、チャンバー51、含フッ素化合物供給管52、不活性ガス供給管53、混合ガス供給管54、対向配置された一対の電極55、及び電源56などを備える。
【0003】
大気圧プラズマ処理装置50において、含フッ素化合物供給管52から供給された含フッ素化合物と、不活性ガス供給管53から供給された不活性ガスとは、混合ガス供給管54で混合されて一対の電極55間に導かれる。一方、電源56から供給された電力により電極55間にプラズマ領域が形成され、該電極55間に配置された被処理基材Kにプラズマ励起されたフッ素を付着させることで撥水化処理が行われる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許2990608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した特許文献1に記載の大気圧プラズマ処理装置50では、撥水性物質の供給手段として、含フッ素化合物収容タンクや含フッ素化合物供給管などが必要であり、装置の設置スペースが大きくなり且つ装置コストが高くなるという問題があった。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、設置スペースの縮小及び装置コストの低減を図ることのできる大気圧プラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る大気圧プラズマ処理装置(1)は、対向配置された一対の電極(40)と、一対の電極(40)に接続された電源(5)と、被処理基材(K)を保持する保持手段(7,63a)とを備え、一対の電極(40)の少なくとも一方には、機能物質を含む含機能物質部材(42)が着脱自在に設けられ、電源(5)は、一対の電極(40)間の領域に大気圧雰囲気下でプラズマが励起し且つ含機能物質部材(42)から機能物質がスパッタリングする電力を当該一対の電極(40)に印加する構成とされ、保持手段(7,63a)は、スパッタリングした機能物質が被処理基材(K)に到達する位置となるように被処理基材(K)を保持する構成とされたことを特徴とする。
【0006】
本発明に係る大気圧プラズマ処理装置(1)によると、含機能物質部材(42)から機能物質がプラズマによりスパッタリングされて放出される。被処理基材(K)の表面では表面反応が行われ、機能物質からなる撥水膜が形成される。このように、機能物質の供給源として、電極(40)に設けられた含機能物質部材(42)のみで済む。つまり、機能物質の供給手段としての含機能物質収容タンクや配管が必要とならず、設置スペースの縮小及び装置コストの低減を図ることができる。また、電極(40)において、含機能物質部材(42)は着脱自在に取り付けた構成とされるため、含機能物質部材(42)が消耗した時点で新しい含機能物質部材(42)と容易に交換可能である。
【0007】
また、一対の電極(40)は、水平面に対して互いに略平行に対向配置され、保持手段(7)は、一対の電極(40)間に被処理基材(K)の被処置面が当該一対の電極(40)と略平行となるように被処理基材(K)を保持する構成とされる。或いは、一対の電極(40)は、水平面に対して互いに略垂直に対向配置され、保持手段(63a)は、一対の電極(40)の下方に被処理基材(K)の被処置面が当該一対の電極(40)と略垂直となるように被処理基材(K)を保持する構成とされる。このような構成とすることで、被処理基材(K)の被処置面に効率良く機能物質を付着させることができる。
【0008】
また、保持手段(7,63a)と一対の電極(40)との少なくとも一方を被処理基材(K)の被処置面に沿う方向に移動させる駆動手段(6,64a)を備える構成とすることで、比較的大きな面積の被処理基材(K)への処理も可能となる。なお、特許請求の範囲及び課題を解決するための手段の各欄において各構成要素に付した括弧書きの符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、設置スペースの縮小及び装置コストの低減を図ることのできる大気圧プラズマ処理装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について説明する。各図において直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向とする。
〔第1実施形態〕
【0011】
図1は本発明に係る第1実施形態の大気圧プラズマ処理装置を示す正面概略図、図2は図1のI−I線矢示図である。本発明に係る第1実施形態の大気圧プラズマ処理装置1は、被処理基材である基板Kの表面に撥水膜を形成して撥水化する装置であり、図1,2に示すように、チャンバー2、不活性ガス供給部3、プラズマ発生部4、電源5、電極駆動装置6、ホルダ7、搬入出ロボット8、基板ストッカー9、制御装置10及び排気管11などを備える。
【0012】
チャンバー2は、開閉自在に設けられた搬入出扉21を側部に有する密封体から構成される。
【0013】
不活性ガス供給部3は、貯留タンク3a、流量調整バルブ3b及びガス供給管3cを備える。貯留タンク3aには、Arガスが充填されている。
【0014】
プラズマ発生部4は、チャンバー2内で水平面に対して互いに平行に対向配置された一対の電極40からなる。一対の電極40は、それぞれ長方形の金属電極41と、この金属電極41と略同一形状の含撥水性物質部材42とからなる。含撥水性物質部材42は、ポリテトラフルオロエチレンを材質とし、非金属製(例えば合成樹脂)の固定部材により金属電極41に着脱自在に取り付けられる。
【0015】
電源5は、一対の電極40のそれぞれに接続される。その電力は、それぞれ一対の電極40間の領域に大気圧雰囲気下でプラズマが励起し且つ各電極40に設けられた含撥水性物質部材42がスパッタリングされて、撥水性物質であるフッ素分子が放出される大きさとされる。具体的には、電力密度が2W/cm〜5W/cmであることが好ましい。
【0016】
電極駆動装置6は、リニアモータまたはボールネジ機構及びサーボモータなどから構成され、対向配置された一対の電極40をその状態で短手方向(図中X方向)に水平駆動するように構成される。一対の電極40の移動範囲は、始端位置P1と終端位置P2との間とされる。ここで、始端位置P1とは、基板Kにおける一方の端部表面が一対の電極40に垂直対向する位置であり、終端位置P2とは、基板Kにおける他方の端部表面が一対の電極40に垂直対向する位置である。
【0017】
ホルダ7は、一対の電極40間に配設され、基板Kにおける表裏面をそれぞれ一対の電極40に対向させた状態で基板Kの周縁部を支持可能な支持ピン71を備える。この配設位置は、含撥水性物質部材42からスパッタリングされたフッ素分子が基板Kに到達する位置である。
【0018】
搬入出ロボット8は、モータ81、アーム82及び可動支持台83を備える。可動支持台83は、基板Kの周縁部を支持するための支持ピン831を備え、モータ81の駆動によりアーム82を介してX,Y,Z各方向に移動自在に構成される。
【0019】
基板ストッカー9は、撥水未処理または撥水処理済みの基板Kを仮置きするための部位であり、チャンバー2における搬入出扉21の外側に配設され、基板Kの周縁部を支持するための支持ピン91を備える。
【0020】
制御装置10は、タッチパネル等の入出力装置、メモリチップやマイクロプロセッサなどを主体とした適当なハードウエア、このハードウエアを動作させるためのコンピュータプログラムを組み込んだハードディスク装置、及び各構成部とデータ通信を行う適当なインターフェイス回路などから構成され、大気圧プラズマ処理装置1が所定の撥水処理動作を行うように、大気圧プラズマ処理装置1における各構成部を動作制御可能とするものである。
【0021】
次に、大気圧プラズマ処理装置1による撥水膜の形成動作について説明する。初期状態として、流量調整バルブ3bは閉、搬入出扉21は閉、一対の電極40の配置位置は始端位置P1、電源5はオフとする。
【0022】
作業者は、基板Kの種類及び目的とする撥水膜の厚さなどの各種条件を制御装置10に入力後、撥水膜の形成動作開始の指示を入力する。これにより搬入出ロボット8は、アーム82を基板ストッカー9の側に伸延させ、基板ストッカー9に載置保持された撥水未処理の基板Kを可動支持台83上に受け取る。続いて搬入出扉21が開き、搬入出ロボット8はアーム82を収縮させる。続いて搬入出ロボット8はアーム82をチャンバー2の側に伸延させて、基板Kをチャンバー2内に搬入する。そして、基板Kをホルダ7における支持ピン71の上に置く。ホルダ7に基板Kがセットされると、搬入出ロボット8はアーム82を収縮させる。
【0023】
続いて搬入出扉21が閉じ、撥水膜の成膜処理が開始する。すなわち、制御装置10からの信号に基づいて流量調整バルブ3bが開き、Arガスをチャンバー2内に導入する。Arガスを添加することで、比較的小エネルギーのプラズマで解離反応を行うことができるようになる。続いて、電源5がオンとなり、一対の電極40間に高周波電流を流す。これにより、一対の電極40間の領域にプラズマが発生する。
【0024】
一対の電極40における含撥水性物質部材42は、プラズマにより活性化したArによりスパッタリングされフッ素分子を放出する。基板Kの表面(本形態では表側及び裏側の両面)では表面反応が行われ、フッ素分子からなる撥水膜が形成される。この間、電極駆動装置6は、一対の電極40を始端位置P1から終端位置P2まで水平駆動する。これにより、形成される撥水膜は、基板Kの表面全体に亘って一様なものとなる。
【0025】
撥水膜の形成が終わると、流量調整バルブ3bは閉じ、電源5はオフとなる。そして、一対の電極40は始端位置P1に戻り、搬入出扉21が開く。搬入出ロボット8はチャンバー2内にアーム82を伸延させて基板Kをホルダ7から受け取る。続いて搬入出ロボット8はアーム82を収縮させ、搬入出扉21が閉じる。続いて搬入出ロボット8はアーム82を基板ストッカー9の側に伸延させて、撥水処理済みの基板Kを基板ストッカー9に移載し、その後アーム82を収縮させる。次の基板Kに撥水処理を行う場合は、上に記した動作と同様にして行う。
【0026】
大気圧プラズマ処理装置1によると、含撥水性物質部材42は、プラズマにより活性化したArによりスパッタリングされフッ素分子を放出する。基板Kの表面では表面反応が行われ、フッ素分子からなる撥水膜が形成される。このように、撥水性物質の供給源として、電極40に設けられた含撥水性物質部材42のみで済む。つまり、撥水性物質の供給手段としての含フッ素化合物収容タンク、含フッ素化合物供給管及び混合ガス供給管などが必要とならず、設置スペースの縮小及び装置コストの低減を図ることができる。また、電極40において含撥水性物質部材42は、非金属製の固定部材により着脱自在に取り付けた構成とされるため、含撥水性物質部材42が消耗した時点で新しい含撥水性物質部材42と容易に交換可能である。固定部材に非金属のものを使うことにより、固定部材自身がスパッタリングされてしまうことが防止される。また、電極駆動装置6は、一対の電極40を始端位置P1から終端位置P2まで水平駆動するので、比較的大きな面積の基板Kへの撥水処理も可能となる。
〔第2実施形態〕
【0027】
図3は本発明に係る第2実施形態の大気圧プラズマ処理装置を示す正面概略図、図4は図3のII−II線矢示図である。本発明に係る第2実施形態の大気圧プラズマ処理装置1Aは、第2実施形態の大気圧プラズマ処理装置1と同様に、被処理基材である基板Kの表面に撥水膜を形成して撥水化する装置であり、図3,4に示すように、チャンバー2A、不活性ガス供給部3、プラズマ発生部4A、電源5、基板搬送装置6A、搬入ロボット8a、搬出ロボット8b及び制御装置10Aなどを備える。なお、第1実施形態の大気圧プラズマ処理装置1と実質上同一の構成要素については、特に区別して扱う必要のない限り、第1実施形態の大気圧プラズマ処理装置1の構成要素と同一の符号を付してある。
【0028】
チャンバー2Aは、下部に開口を有しプラズマ発生部4Aを上方及び側方から包囲するように構成される。
【0029】
不活性ガス供給部3は、貯留タンク3a、流量調整バルブ3b及びガス供給管3cを備える。貯留タンク3aには、Arガスが充填されている。
【0030】
プラズマ発生部4Aは、水平面に対して互いに垂直に対向配置された一対の電極40からなる。一対の電極40は、それぞれ長方形の金属電極41と、この金属電極41と略同一形状の含撥水性物質部材42とからなる。含撥水性物質部材42は、ポリテトラフルオロエチレンを材質とし、非金属製の固定部材により金属電極41に着脱自在に取り付けられる。
【0031】
電源5は、一対の電極40のそれぞれに接続される。その電力は、それぞれ一対の電極40間の領域に大気圧雰囲気下でプラズマが励起し且つ各電極40に設けられた含撥水性物質部材42がスパッタリングされて、撥水性物質であるフッ素分子が放出される大きさとされる。具体的には、電力密度が2W/cm〜5W/cmであることが好ましい。
【0032】
基板搬送装置6Aは、回転式サーボモータ64aにより回転駆動される駆動側プーリ61a、駆動側プーリ61aからX方向に所定距離の位置に配設された従動側プーリ62a、及び基板Kを載置可能な載置面を有し前記2つのプーリに掛け渡された無端ベルト63aなどで構成される。基板搬送装置6Aは、一対の電極40の下方に次のようにして配設される。すなわち、一対の電極40と無端ベルト63aの表面とが略垂直となるように、且つ含撥水性物質部材42からスパッタリングされた機能物質が基板Kに到達する位置となるように配設される。
【0033】
搬入ロボット8aは、第1実施形態における搬入出ロボット8と同様な構成とされ、モータ81a、アーム82a及び可動支持台83aを備える。可動支持台83aは、基板Kの周縁部を支持するための支持ピン831aを備え、モータ81aの駆動によりアーム82aを介してX,Y,Z各方向に移動自在に構成される。
【0034】
基板ストッカー9aは、撥水未処理の基板Kを仮置きするための部位であり、基板搬送装置6Aの上流側に配設され、基板Kの周縁部を支持するための支持ピン91aを備える。
【0035】
搬出ロボット8bは、第1実施形態における搬入出ロボット8と同様な構成とされ、モータ81b、アーム82b及び可動支持台83bを備える。可動支持台83bは、基板Kの周縁部を支持するための支持ピン831bを備え、モータ81bの駆動によりアーム82bを介してX,Y,Z各方向に移動自在に構成される。
【0036】
基板ストッカー9bは、撥水処理済みの基板Kを仮置きするための部位であり、基板搬送装置6Aの下流側に配設され、基板Kの周縁部を支持するための支持ピン91bを備える。
【0037】
制御装置10Aは、タッチパネル等の入出力装置並びにメモリチップやマイクロプロセッサなどを主体とした適当なハードウエア、このハードウエアを動作させるためのコンピュータプログラムを組み込んだハードディスク装置、及び各構成部とデータ通信を行う適当なインターフェイス回路などから構成され、大気圧プラズマ処理装置1Aが所定の撥水処理動作を行うように、大気圧プラズマ処理装置1Aにおける各構成部を動作制御可能とするものである。
【0038】
次に、大気圧プラズマ処理装置1Aによる撥水膜の形成動作について説明する。初期状態として、流量調整バルブ3bは閉、電源5はオフとする。
【0039】
作業者は、基板Kの種類及び目的とする撥水膜の厚さなどの各種条件を制御装置10Aに入力後、撥水膜の形成動作開始の指示を入力する。これにより搬入ロボット8aは、アーム82aを基板ストッカー9aの側に伸延させ、基板ストッカー9aに載置保持された撥水未処理の基板Kを可動支持台83a上に受け取る。続いて搬入ロボット8aはアーム82aを収縮させる。続いて搬入ロボット8aはアーム82aを基板搬送装置6Aの側に伸延させて、基板Kを無端ベルト63aの上に載せる。無端ベルト63aの上に基板Kがセットされると、搬入ロボット8aはアーム82aを収縮させる。
【0040】
続いて撥水膜の成膜処理が開始する。すなわち、制御装置10Aからの信号に基づいて流量調整バルブ3bが開き、Arガスをチャンバー2A内に導入する。Arガスを添加することで、比較的小エネルギーのプラズマで解離反応を行うことができるようになる。続いて、電源5がオンとなり、一対の電極40間に高周波電流を流す。これにより一対の電極40間の領域にプラズマが発生する。
【0041】
続いて回転式サーボモータ64aは、駆動側プーリ61aを図中時計周り方向に回転駆動する。その結果、無端ベルト63aは水平方向に走行し、基板KはX方向に移動する。一対の電極40における含撥水性物質部材42は、プラズマにより活性化したArによりスパッタリングされフッ素分子を放出し下方へと向かう。基板Kの表面(本形態では表側の面のみ)では表面反応が行われ、フッ素分子からなる撥水膜が形成される。基板KがX方向に移動するので、形成される撥水膜は、基板Kの表面全体に亘って一様なものとなる。
【0042】
撥水膜の形成が終わると、流量調整バルブ3bは閉じ、電源5はオフとなる。そして、搬出ロボット8bは基板搬送装置6Aにアーム82bを伸延させて基板Kを無端ベルト63aから受け取る。続いて搬出ロボット8bはアーム82bを収縮させ、基板ストッカー9bの側に伸延させて、撥水処理済みの基板Kを基板ストッカー9bに移載し、その後アーム82bを収縮させる。次の基板Kに撥水処理を行う場合は、上に記した動作と同様にして行う。
【0043】
大気圧プラズマ処理装置1Aにおいても、大気圧プラズマ処理装置1と同様な作用効果を奏す。なお、大気圧プラズマ処理装置1Aでは、無端ベルト63aの水平方向への走行により、基板KはX方向に移動する。これにより第1実施形態の場合と同様に、比較的大きな面積の基板Kへの撥水処理も可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上に開示した実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【0045】
例えば、上述の第1実施形態では、成膜中に一対の電極40を駆動する形態としたが、ホルダ7を駆動する形態、または一対の電極40とホルダ7との両方を駆動する形態とすることもできる。また、上述の第1及び第2実施形態では、撥水処理を施す装置としたが、これとは反対に親水処理を施す装置とすることも可能である。その場合は、一対の電極40の少なくとも一方に設ける含機能物質部材42に、親水性を有する機能物質を含むものを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る第1実施形態の大気圧プラズマ処理装置を示す正面概略図である。
【図2】図1のI−I線矢示図である。
【図3】本発明に係る第2実施形態の大気圧プラズマ処理装置を示す正面概略図である。
【図4】図3のII−II線矢示図である。
【図5】従来の大気圧プラズマ処理装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1 大気圧プラズマ処理装置
4 電極
5 電源
6 電極駆動装置(駆動手段)
7 ホルダ(保持手段)
42 含撥水性物質部材(含機能物質部材)
63a 無端ベルト(保持手段)
K 基板(被処理基材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の電極(40)と、一対の電極(40)に接続された電源(5)と、被処理基材(K)を保持する保持手段(7,63a)とを備え、
一対の電極(40)の少なくとも一方には、機能物質を含む含機能物質部材(42)が着脱自在に設けられ、
電源(5)は、一対の電極(40)間の領域に大気圧雰囲気下でプラズマが励起し且つ含機能物質部材(42)から機能物質がスパッタリングする電力を当該一対の電極(40)に印加する構成とされ、
保持手段(7,63a)は、スパッタリングした機能物質が被処理基材(K)に到達する位置となるように被処理基材(K)を保持する構成とされたことを特徴とする大気圧プラズマ処理装置。
【請求項2】
機能物質が撥水性を有する物質である請求項1に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項3】
機能物質がフッ素である請求項1または請求項2に記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項4】
含機能物質部材(42)がポリテトラフルオロエチレンである請求項1から請求項3のいずれかに記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項5】
一対の電極(40)は、水平面に対して互いに略平行に対向配置され、保持手段(7)は、一対の電極(40)間に被処理基材(K)の被処置面が当該一対の電極(40)と略平行となるように被処理基材(K)を保持する構成とされた請求項1から請求項4のいずれかに記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項6】
一対の電極(40)は、水平面に対して互いに略垂直に対向配置され、保持手段(63a)は、一対の電極(40)の下方に被処理基材(K)の被処置面が当該一対の電極(40)と略垂直となるように被処理基材(K)を保持する構成とされた請求項1から請求項4のいずれかに記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項7】
保持手段(7,63a)と一対の電極(40)との少なくとも一方を被処理基材(K)の被処置面に沿う方向に移動させる駆動手段(6,64a)を備える請求項1から請求項6のいずれかに記載の大気圧プラズマ処理装置。
【請求項8】
機能物質の供給源として、電極(40)に設けられた含機能物質部材(42)のみを構成要素とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の大気圧プラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−88457(P2008−88457A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267543(P2006−267543)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】