説明

大気圧化学イオン化に使用する単純操作モードと多重操作モードのイオン源

質量分析計に界接する大気圧化学イオン化(APCI)源は、APCI注入プローブアセンブリ内にコロナ放電針を備える。APCI注入プローブに流入する液体試料がコロナ放電区域を通過する前に霧化/気化され、APCI注入プローブアセンブリに収容される。コロナ放電区域生成イオンは、APCIプローブ出口を通るイオン搬送を最大化すべくAPCIプローブ中心線に集束される。APCIプローブ出口開口に進入する外部電界は、APCIプローブからの試料イオンを集束させる追加中心線を提供する。APCIプローブは、コロナ放電区域から電界を遮蔽する一方、外部電界の進入を許してAPCI生成イオンを質量電荷比分析のための真空へのオリフィス内に集束させる。APCIプローブから出るイオンは、外部電界とガス流によってのみ質量電荷比分析器内へのイオン搬送を最大化するように方向づけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンを大気圧によって生成し、続いて化学、生物学、医学、法医学および環境の試料の質量分光分析を行うために大気圧化学イオン化を利用する単純操作モードおよび多重操作モードのイオン源に関する。
【背景技術】
【0002】
大気圧化学イオン化(APCI)においては大気圧で荷電種が、検体分子に付着され、または検体分子から除去される。試薬イオンは、典型的にコロナ放電またはグロー放電区域において大気圧で開始される気相反応の連鎖によって生成される。気相反応がエネルギー的に有利であるならば、試薬イオンは、荷電種を検体分子に運ぶか、または検体イオンを形成している検体分子から荷電種を取除くであろう。水が試薬ガスとして存在するならば、ヒドロニウムまたはプロトン化した水(H0)の試薬イオンが、コロナ放電区域において陽イオン極性操作で起こるイオン化プロセスによって形成される。ヒドロニウムイオンが検体イオンに衝突すると、ヒドロニウムイオンから出る陽子が検体分子に運ばれ、ここで検体イオンは、Hよりも高い陽子親和性を有し、陽極性(M+H)検体イオンとHOを形成する。反対に、陰極性コロナ放電において起こるイオン化プロセスによって形成されたOHイオンが、OHよりも低い陽子親和性を有する検体分子に衝突すると、検体分子は、陽子をOHに運んで陰極性(M−H)検体イオンとHOを形成する。コロナ放電区域において代替カチオン種が形成され、それらはナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはアンモニア(NH)を有するが、これらに限らない。陽極性検体イオンは、陽子親和性の低い検体分子から代替カチオンとの電荷交換によって形成され得る。反対に、陰極性検体イオンは、試薬イオンから搬送された塩素(Cl)などのイオンの付着によって形成され得る。幾つかの検体種では、大気圧化学イオン化において電子の付加または除去によってラジカル検体イオンが形成される。
【0003】
試料溶液、たとえば液体クロマトグラフィー(LC)カラムからの流出物は、典型的に大気圧化学イオン化が起こるコロナ放電区域を通過する前に空気圧によって霧化および気化される。試料溶液の空気圧霧化のために、典型的に窒素が使用されてコロナ放電を維持する。霧化された試料溶液の液滴は、典型的に200〜450℃の温度で動作する加熱器を通過することによって気化される。その結果生じる霧化ガス、溶媒および検体蒸気試料の気相混合物は、通常2〜8キロボルトの高電圧を先の尖った針またはピンに印加することによって生成されるコロナ放電を通過する。代替的に、大気圧化学イオン化液相試料においてグロー放電を維持するためにヘリウムを使用できる。質量分析計またはイオン移動度分析器に界接された慣用的な大気圧化学イオン化源において、コロナ針は、大気圧イオン源容積内で、霧化および気化試料注入アセンブリの外部に、かつ、質量分析計(MS)またはイオン移動度分析計(IMS)のサンプリングオリフィスの近傍に配置されている。最も高い大気圧化学イオン化/質量分析計または大気圧化学イオン化/イオン移動度分析計感度を達成するためには、化学イオン化プロセスと、後続の質量分析計またはイオン移動度分析計のサンプリングオリフィスへのイオンの輸送の双方が、最適化されることが必要である。質量分析計またはイオン移動度分析計分析を用いて大気圧化学イオン化の効率を最大化するために、
1.気化した検体の流れは、試薬イオンの最大濃度が位置するコロナ放電またはグロー放電またはその近傍を通過するように集中される必要がある。
2.コロナ針電圧、従ってコロナ電流は、所望の試薬イオン種の最高濃度を発生するために最適化を必要とする。
3.イオンをサンプリングオリフィス内に集束させ、続いて真空またはイオン移動度分析
計内に輸送する効率を最大化するために、コロナ放電区域と質量分析計またはイオン移動度分析計サンプリングオリフィスとの間の区域で形成される電界が、最適化されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,041,972号明細書
【特許文献2】米国特許第7,078,681号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/114,439号明細書
【特許文献4】米国特許第6,949,741号明細書
【特許文献5】米国特許第4,542,293号明細書
【特許文献6】米国特許第6,207,954号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
慣用的な大気圧化学イオン化/質量分析計源において、コロナ放電針は、開いた大気圧化学イオン化源室内でサンプリングオリフィス近傍に配置されている。このような慣用的なイオン源構成は、上記の基準を同時に満たすことができない。慣用的な大気圧化学イオン化源の形態において検体蒸気の流れは、気化器から出ると急速に広がって、コロナ針周囲の検体濃度を減少させる。更に、コロナ針の先端に形成される高い電界によって、形成された検体イオンを真空へのオリフィス内に集束させるために必要とされる、電界をサンプリングオリフィスの近傍に最適に集束するように形成することが妨げられる。慣用的な大気圧化学イオン化源の構成および操作は、2つの相反するプロセスの間の妥協点を要求し、その結果大気圧化学イオン化/質量分析計性能が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様は、最大イオン化効率および真空へのイオン輸送効率改善のために最適化された改良された大気圧化学イオン化源設計を提供する。本発明の好適な実施態様において、コロナ放電針は、大気圧化学イオン化プローブ気化器の出口端に構成されている包囲された蒸気流路内に配置されている。蒸気流路形態は、検体蒸気を包含してコロナ放電区域を通過させ、その結果生じる検体イオンが、蒸気流およびコロナ放電路の出口開口を通過するときに蒸気流路中心線に向けて集束される。検体イオンを中心線に向けて集束させると、蒸気流路壁との接触によるイオン中性化を最小化または防止する。蒸気流路は、コロナ放電針の先端の周囲に形成された高い電界を部分的に包囲して大気圧化学イオン化室を遮蔽し、検体イオンを脱集束電界から進出させる。大気圧化学イオン化源室内に配置された電極に印加される電圧は、蒸気流の出口開口に進入する集束電界を形成する。進出するイオンは、これらの進入する電界によって蒸気流路中心線に向けて集束されて、検体イオンの大気圧化学イオン化プローブから大気圧化学イオン化室内への搬送を改善する。大気圧化学イオン化室の電界は、引続きイオンを、真空に続くサンプリングオリフィスに向かわせて集束させ、そこでイオンの質量電荷比が分析される。蒸気流路構成は、気体およびイオンの妨害されない流れを提供して、流路から出る前に流路の壁に衝突することによる検体イオンの損失を最小限にする。
【0007】
特許文献1は、気化器の出口端に配置された包囲体内で操作されるコロナ放電針を有する大気圧化学イオン化源を開示している。イオンおよび中性蒸気は、気化器軸線に対して90度に配置された流路開口を通って進出し、出口流路は、包囲体から出る前に90度曲げて構成されている。このような構成(図6)は、コロナ放電針の先端の周囲に乱流の区域を生み出すが、これは検体イオン包囲体壁との衝突および中性化を増大させ得る。上記の装置は、直接妨害されない出口流路、およびイオン損失が起こり得る表面から離れる方向に検体イオンを集束させるように構成された電極を提供しない。特許文献1に開示され
た大気圧化学イオン化源構成は、検体イオンの、真空に続くサンプリングオリフィスへの最適な輸送を提供しない。本発明は、コロナ放電針の先端を取囲む蒸気流路を有し、この蒸気流路は、試料蒸気流をコロナ放電に通して化学イオン化効率を最大化すると同時に、流路壁への検体イオン損失を最小化するように構成されている。蒸気流路もコロナ放電電界を部分的に遮蔽する一方で、外部イオン集束電界の進入を可能にして、真空に続くサンプリングオリフィスへのイオン搬送効率を最大化するように構成されている。
【0008】
大気圧化学イオン化は、限られた範囲の化学種に対して効率的なイオン化を提供することが知られている。典型的に大気圧化学イオン化は、劣化することなく気化され得る低分子量の化学種から質量分析用のイオンを生成するために使用される。エレクトロスプレーイオン化は、比較的小さい揮発性種および熱的に不安定な比較的高分子量の極性化学種を有する広範なタイプの化合物を分析するために使用される。エレクトロスプレーイオン化は、大気圧化学イオン化の性能とかなり重なっているが、幾つかの分析的用途は、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化の双方を実行して、より広範な化合物および化学系にわたって改良されたイオン化効率を達成する能力の恩恵を受ける。
【0009】
特許文献2に開示されているエレクトロスプレー(ES)と大気圧化学イオン化源を組合わせた複合実施態様では、試料は、エレクトロスプレーイオンを生成するように操作され得る空気圧霧化器を通して導入される。コロナ放電針は、開いた源容積内で気化および霧化された蒸気滴の一部をイオン化した後で質量分光分析のために試料を真空に導入するように構成されている。特許文献2に開示されたイオン源の組合せのすべての実施態様において、すべてのガス流および液体流は、試料注入プローブからイオン源内に入り、試料蒸気が遮蔽されてないコロナ放電区域を通過する。特許文献3にエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合わせの別種の構成が開示され、試料蒸気は、エレクトロスプレーイオン化を伴い、または伴わずに試料溶液の空気圧霧化によって生成され、次に気化加熱器を通過する。試料蒸気は、コロナ放電を通過せずに、包囲された反応室内でコロナ放電から生成されたイオンと混合する。エレクトロスプレーおよび大気圧化学イオン化イオンは、反応室から出て90度出口流路を通ってイオン源室に入る。イオンは、ガス流によって駆動された反応室から出るが、流路中に集束電界は、存在しない。本発明の代替的な実施態様は、部分的に遮蔽されたコロナ放電区域を有する大気圧化学イオン化プローブ、およびエレクトロスプレーイオン化と大気圧化学イオン化を組合わせたエレクトロスプレー試料注入プローブで構成されている。質量分析計(MS)に界接されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せは、すべての操作モードで高いイオン化効率および高いイオン搬送効率を発揮する。
【0010】
プローブに導入された固体試料と液体試料、および大気圧イオン源に直接導入されたガス試料は、導入された試料と独立の源から試薬イオンが生成される大気圧化学イオン化を用いてイオン化され得る。このようなイオン源の構成は、特許文献4に開示されている。ここではコロナ放電を用いて導入されたガス分子(主としてヘリウム)から電子的に励起された原子または振動によって励起された分子(準安定種)を生成し、これらがイオン源容積および気化された試料内の気体と相互作用して、大気圧化学イオン化または直接イオン化気相反応によって検体イオンを形成する。その結果生じるイオンは、試料としガス流によって駆動されることによってオリフィスを通り真空に導入されるが、電界は、適用されない。
【0011】
本発明の代替的な実施態様において、コロナ放電を有する大気圧化学イオン化プローブは、大気圧化学イオン化プローブ入口端で供給される液体と気体双方の試薬化学種から試薬イオンを提供する。この大気圧化学イオン化プローブは、本発明によれば多機能大気圧イオン(API)源において構成されている。この遠隔試薬大気圧化学イオン化源に導入された固相、液相、または気相試料は、効率的にイオン化され、真空に搬送されて質量電
荷比が分析される。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、大気圧化学イオン化源は、試料注入プローブ、加熱器、または気化器、加熱器または気化器の下流側に配置された蒸気流路を有して構成されている。大気圧化学イオン化プローブに入る試料溶液は、空気圧霧化手段で霧化される。霧化器内で生成された液滴のスプレーは、加熱器を通過して気化される。試料蒸気は、大気圧化学イオン化プローブ加熱器を出て、コロナ放電針、1個以上の静電レンズおよび加熱器軸線にほぼ整合されている開いた出口端を有する蒸気流路に入る。蒸気流路形態は、試料蒸気が半径方向に消散するのを制限し、試料蒸気をコロナ放電区域に通す。コロナ放電は、蒸気流路内に構成されたコロナ放電針と、これを取囲む反対電極に適当な電圧を印加することによって維持される。蒸気流路の形状は、蒸気およびイオンが制約されずに軸方向に流れるようにする一方で、コロナ放電によって形成された電界を包含または遮蔽する。蒸気流路内で構成された1個以上の静電レンズは、検体イオンを大気圧化学イオン化プローブ中心線に向けて集束させるように配置および成形されている。大気圧化学イオン化によって生成されたイオンを集束させるこの中心線は、検体イオンが蒸気流路の壁によって失われるのを最小化または除去する。蒸気流路から出るイオンは、更に外部電界が蒸気流路出口端に進入することによって中心線に向けて集束される。大気圧化学イオン化源室内で構成された電極に印加される電圧は、電界を形成し、この電界が大気圧化学イオン化プローブから出るイオンを、真空に続くサンプリングオリフィス内に向かわせ、そこで検体イオンの質量電荷比が分析される。本発明は、大気圧化学イオン化効率を改善し、真空へのイオン搬送効率を高める。慣用的な大気圧化学イオン化源構成を用いた大気圧化学イオン化質量分析計性能と比較したとき、本発明によって構成および操作される大気圧化学イオン化源を用いて著しく改善された大気圧化学イオン化質量分析計信号強度が達成される。本発明によって構成された大気圧化学イオン化源の代替的な実施態様は、2個の溶液霧化器/注入アセンブリ、1個の上流側ボール形分離器および拡大された蒸気流路形態を有し、種々の分析用途に対して大気圧化学イオン化質量分析計性能を改善するためにコロナ放電針位置調節を備えている。
【0013】
本発明の別の実施態様では多機能大気圧化学イオン化源は、本発明によって構成された遮蔽されたコロナ放電大気圧化学イオン化プローブと、固相試料、液相試料および/または気相試料を別々に大気圧化学イオン化注入プローブから導入する手段を備えて構成されている。固相試料、液相試料、または気相試料プローブは、別々に導入されたイオン化されるべき試料を、大気圧化学イオン化プローブ蒸気流路の近傍に配置する。大気圧化学イオン化プローブから出る加熱されたガスと試薬イオンは、液体試料または固体試料を気化させて、大気圧化学イオン化によってイオンを生成する。気相検体分子に衝突する試薬イオンが、大気圧化学イオン化源室内で検体イオンを形成する。大気圧化学イオン化源室内に構成された電極に印加される電圧は、検体イオンを真空へのオリフィスに向かわせる電界を形成する。検体イオンは、印加された電界と中性ガス流によって、真空に続くサンプリングオリフィス内に向かわせられる。試薬イオンは、大気圧化学イオン化プローブ入口端に導入された試薬溶液または1個以上の試薬ガスまたは試薬液と試薬ガスの組合せから形成される。本発明によって構成された大気圧化学イオン化プローブの入口に導入された試薬液は、霧化および気化され、次にコロナ放電を通過して試薬イオンを形成する。試薬イオンは、蒸気流路から出る前に印加された静電界とガス流によって大気圧化学イオン化プローブ中心線に向けて集束される。静電界とガス流は、試薬イオンビームを大気圧化学イオン化プローブ出口開口の下流側に配置された固体、液体、または気体に衝突させてイオン化効率を最大化する。蒸気流路は、大気圧化学イオン化源室をコロナ放電電界から遮蔽して、大気圧化学イオン化源室内に形成された検体イオンを、真空に続くサンプリングオリフィスに向かわせる静電界の最適化を可能にする。本発明によって構成された多機能大気圧化学イオン化源は、1個以上の固体試料プローブ、液体試料プローブおよび/またはガス注入口を有することができる。ガス試料は、多機能大気圧化学イオン化源室から源
室出口に設けられたガス流ポンプを用いて引き出されてよく、またはガス試料は、ガスクロマトグラフィーのカラムから、もしくはガス注入ポートを通して手動で導入され得る。多機能大気圧化学イオン化源は、液体試料流大気圧化学イオン化でも、たとえば大気圧化学イオン化プローブ入口に導入された試料溶液を使って液体クロマトグラムから操作できる。
【0014】
本発明の更に別の実施態様では、エレクトロスプレー(ES)と大気圧化学イオン化源の組合せは、本発明によって構成された大気圧化学イオン化プローブおよびエレクトロスプレー注入プローブを有して、質量分析計に界接している。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せは、エレクトロスプレーのみで、または大気圧化学イオン化のみで、またはエレクトロスプレーイオン化と大気圧化学イオン化を組合わせたモードで操作できる。エレクトロスプレー注入プローブは、空気圧霧化手段を備えて構成される。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源室の組合せでは、エレクトロスプレー注入プローブとコロナ放電を遮蔽された大気圧化学イオン化プローブが構成されていて、霧化エレクトロスプレープルームは、最初にサンプリングオリフィス中心線の近傍を通り、次に大気圧化学イオン化プローブ出口端に入る。更に大気圧化学イオン化プローブから出る加熱されたガスがエレクトロスプレープルームに含まれている液滴を気化させ、その結果生じる蒸気は、コロナ放電区域を通過するときに大気圧化学イオン化プローブによって生成された試薬イオンによってイオン化される。コロナ放電針に印加する電圧をゼロボルトにすることによって大気圧化学イオン化をオフにすることができる。エレクトロスプレーイオン化は、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源端板の組合せおよび毛細管入口電極に印加する電圧を変化させることによってオフおよびオンにすることができる。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せによって、霧化またはエレクトロスプレーされた試料溶液から形成されるのではなく、別々の試薬イオン種を大気圧化学イオン化プローブに導入することが可能である。霧化またはエレクトロスプレーされたプルームを気化させるための加熱は、エレクトロスプレー注入プローブに対して同心的に導入される加熱されたシースガス、大気圧化学イオン化プローブから導入される加熱されたガスまたは蒸気、および加熱された向流乾燥ガスによって加えられる。エレクトロスプレーイオンは、エレクトロスプレープルーム内の気化している荷電液滴によって形成され、大気圧化学イオン化が行われる前に印加された静電界によって真空へのサンプリングオリフィスに向かわせられる。大気圧化学イオン化によって生成されたイオンは、エレクトロスプレーによって生成されたイオンとは反対の方向から真空へのオリフィスに接近して、空間電荷脱集束効果を最小化し、電荷減少またはエレクトロスプレーイオンと試薬ガスとの交換を最小化する。大気圧化学イオン化プローブで加熱されたガス流、加熱された向流乾燥ガス流およびエレクトロスプレープローブで霧化され加熱されたシースガス流の流量と温度は、種々の試料溶液組成、流量およびエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化イオン源を組合わせた種々の操作モードに対してイオン源性能を最大化するように調節される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によって構成された、試料溶液霧化器、加熱器、およびコロナ放電針とこれを取囲む電極を包含する蒸気流路を有する、大気圧化学イオン化注入プローブを有する大気圧化学イオン化源の好適な実施態様の略図。
【図2】質量分析計に界接している、慣用的な大気圧化学イオン化源構成の略図。
【図3A】図1に示す略図と同様の本発明の実施態様を用いて、水と0.1%酢酸を含有するメタノールを1:1の割合で混合した溶液に、レセルピン1pgを添加した注入液1μlの流量1ml/minによるベースイオンクロマトグラム(BIC)。
【図3B】図3Aと同じ注入液、試料溶液および流量を使用するが、図2に示す略図と同様の慣用的な大気圧化学イオン化源を用いて得られるベースイオンクロマトグラム。
【図4】模擬された大気圧化学イオン化操作中の計算された電界線とイオン軌道を示す、本発明によって構成された大気圧化学イオン化プローブの一実施態様の断面図。
【図5】加熱器およびコロナ放電針と1個の集束電極を備えた蒸気流を有する大気圧化学イオン化注入プローブ内に、2個の試料溶液注入口が構成されている、代替的な大気圧化学イオン化プローブ実施態様の断面図。
【図6A】蒸気流路開口の形態とコロナ放電針の位置が調節可能である、本発明の代替的な実施態様の断面図。図6Aは、大気圧化学イオン化プローブ加熱器軸線上に配置されたコロナ放電針を示す。
【図6B】コロナ針の位置が加熱器軸線から離して調節され、蒸気流路が拡大された蒸気流路サイズに調節された、図6Aに示した本発明の実施態様の断面図。
【図7】気化加熱器の上流側に気体スプレー液滴のボール形分離器を有する、本発明によって構成された大気圧化学イオン化プローブの断面図。
【図8】蒸気流路の出口開口が縮小されている、大気圧化学イオン化プローブの代替的な実施態様の断面図。
【図9A】図8に示す実施態様と同様の、蒸気流路の実施態様の断面図。蒸気流路内に構成された電極に印加された種々の電圧に対する模擬された、大気圧化学イオン化操作中の計算された電界線とイオン軌道を示す。
【図9B】図8に示す実施態様と同様の、蒸気流路の実施態様の断面図。蒸気流路内に構成された電極に印加された種々の電圧に対する模擬された、大気圧化学イオン化操作中の計算された電界線とイオン軌道を示す。
【図9C】図8に示す実施態様と同様の、蒸気流路の実施態様の断面図。蒸気流路内に構成された電極に印加された種々の電圧に対する模擬された、大気圧化学イオン化操作中の計算された電界線とイオン軌道を示す。
【図10】大気圧化学イオン化源が本発明によって構成され、試薬イオンを供給して注入プローブによって導入された固相試料または液相試料をイオン化する大気圧化学イオン化注入プローブを有している本発明の代替的な実施態様の断面図。
【図11】大気圧化学イオン化源が本発明によって構成され、真空へのオリフィスの軸線に沿って配置され、試薬イオンを供給して注入プローブによって導入された固相試料または液相試料をイオン化する大気圧化学イオン化注入プローブを有している本発明の代替的な実施態様の断面図。
【図12】図11に示す図と同様に構成された大気圧化学イオン化源を用いて、固体プローブによって導入されたカフェインの試料から得られた飛行時間型質量スペクトル。
【図13】図11に示す図と同様に構成された大気圧化学イオン化源を用いて、固体プローブによって導入されたアスピリン錠から得られた飛行時間型質量スペクトル。
【図14】図10に示す図と同様に構成された大気圧化学イオン化源に導入された、20ドル紙幣から気化したコカインを有する分子の飛行時間型質量スペクトル(TOFMS)。
【図15】図11に示す図と同様に構成された大気圧化学イオン化源を用いて固体プローブによって導入された、タイレノール錠剤から得られた飛行時間型質量スペクトル。
【図16】多機能多重試料注入大気圧化学イオン化源が、真空へのオリフィスの軸線にほぼ沿って配置され、更に試薬イオンを供給して注入プローブによって導入された固相試料もしくは液相試料または別個の注入口から導入された気相試料をイオン化する本発明によって構成された大気圧化学イオン化注入プローブを有している、本発明の代替的な実施態様の断面図。
【図17】多機能多重試料注入大気圧化学イオン化源が、真空へのオリフィスの軸線にほぼ沿って配置され、更に試薬イオンを供給して別個の注入システムによって導入された液相試料または気相試料をイオン化する本発明によって構成された大気圧化学イオン化注入プローブを有している、本発明の代替的な実施態様の断面図。
【図18】エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せが、サンプリングオリフィス軸線に対してほぼ垂直に配置され、エレクトロスプレー注入プローブ軸線にほぼ整合されている、本発明によって構成された遮蔽された大気圧化学イオン化注入プローブを有している本発明の代替的な実施態様の断面図。
【図19】エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せが、サンプリングオリフィス軸線に対して所定の角度で配置され、およびエレクトロスプレー注入プローブ軸線に対して所定の角度で配置されている、本発明によって構成された遮蔽された大気圧化学イオン化注入プローブを有している本発明の代替的な実施態様の断面図。
【図20】図18に示す図と同様に構成されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せを用い、エレクトロスプレーのみのモードで操作された、インシュリンとインドールを有する試料溶液混合物の飛行時間型質量スペクトルスペクトル。
【図21】図18に示す図と同様に構成されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せを用い、大気圧化学イオン化のみのモードで操作された、インシュリンとインドールを有する試料溶液混合物の飛行時間型質量スペクトルスペクトル。
【図22】エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せが、拡大された蒸気流路形態を有し、サンプリングオリフィス軸線に対して所定の角度で配置され、およびエレクトロスプレー注入プローブ軸線に対して所定の角度で配置されている、本発明によって構成された遮蔽された大気圧化学イオン化注入プローブを有している、本発明の代替的な実施態様の断面図。
【図23】図22に示すエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せの、エレクトロスプレーおよび大気圧化学イオン化区域の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の好適な実施態様を示す。本実施形態は、質量分析計3に界接している大気圧化学イオン化源2内に構成された大気圧化学イオン化(APCI)プローブ1を有している。大気圧化学イオン化プローブ1は、試料溶液注入霧化器アセンブリ5、加熱器または気化器アセンブリ7、および蒸気流路アセンブリ4を有している。試料溶液は、試料注入管8を通して大気圧化学イオン化プローブ1内に導入される。出口端10で注入管8から出る試料溶液の空気圧霧化によって液滴のスプレー15が形成されて、加熱器または気化器7に向かわせられる。霧化ガス12は、霧化器アセンブリ5のガス注入口11を通して導入され、注入管8を取囲んでいる環状路32を通って出口端10から出る。更に、補助ガス注入路14を通して導入された補助ガス流13が霧化ガス流12を補足して、霧化された試料溶液の液滴スプレー15を気化器7に運んで通す。霧化された液滴スプレー15は、気化器7の流路17を通るときに気化する。加熱コイル16の温度は、気化器7の流路17の出口21に配置されたサーモカップル20からのフィードバックを有する温度コントローラで調節可能である。出口端21で気化器の流路17を出た試料蒸気は、蒸気流路アセンブリ4の蒸気流路48に入る。コロナ放電針34の先端28は、蒸気流路48の中心線にほぼ沿って配置されている。コロナ放電針34は、円筒電極22および電圧源30に電気的接続されている。円筒電極23および24は、蒸気流路アセンブリ4内に構成され、それぞれ電圧源50および51に電気的接続されている。絶縁体25(60)が電極22、23、24および本体27を電気的絶縁している。操作中、コロナ放電35を選択された放電電流レベルに維持し、かつ、大気圧化学イオン化によって生成された進出するイオンを大気圧化学イオン化プローブ中心線に向けて集束させるために、コロナ放電針34および静電レンズ22および23で相対電圧が設定される。
【0017】
大気圧化学イオン化操作中、試料溶液から気化した溶媒の一部は、試料溶液蒸気がコロナ放電35またはその近傍を通過する際に試薬イオンを形成する。試薬イオンは、カチオンまたはアニオンを気化した検体分子と交換して検体イオンを形成する。コロナ放電針34に印加された電圧極性が、円筒電極23に印加された電圧に対して相対的に陽であるならば、陽極性の試薬および検体イオンが形成される。反対に、コロナ放電針34に印加された電圧極性が、円筒電極23に印加された電圧に対して相対的に陰であるならば、陰極性の試薬および検体イオンが形成される。大気圧化学イオン化操作中、コロナ放電針34と円筒電極22および23に相対電圧が印加されて、コロナ放電35を所望の放電電流に維持し、検体および過剰な試薬イオンが大気圧化学イオン化プローブから出るときにこれ
らを蒸気流路48の中心線に向けて集束させる。蒸気流路48から出る検体イオンは更に、電界55が蒸気流路48の出口端に進入することによって、大気圧化学イオン化プローブ1の中心線に向けて集束される。蒸気流路48から出る検体イオンは、端板および突起電極37と毛細管入口電極38に印加された電圧から形成された電界55によって、誘電体毛細管52のオリフィス44の入口43に向かわせられる。気体加熱器41によって加熱された向流乾燥ガス流36は、開口18を通って出て端板電極37に向かう。大気圧化学イオン化によって生成されたイオン58は、電界55によって駆動されることによって毛細管オリフィス入口43に向かわせられる。イオン58は、向流乾燥ガス36、典型的には窒素に抗して移動する。向流乾燥ガス36は、高温の蒸気の凝結を防止し、中性溶媒蒸気が真空に入るのを防ぐ。向流ガス流37は、またイオン軌道を減速させて集束させることを目指す。それによってイオン軌道が集束電界58に従うのを容易にする。誘電体毛細管のオリフィスまたは流路44に入るイオンは、中性ガス流によって大気圧から真空45に運び入れられる。真空に入る検体イオンの一部は、質量電荷比分析器3によって質量電荷比が分析される。質量電荷比分析器3は、四重極型、三連四重極型、三次元イオントラップ型、直線イオントラップ型、飛行時間型、フーリエ変換型、オービトラップ型または磁場型質量分析計を有するが、これらに限らない任意のタイプであってよい。注入管8を通して導入される試料溶液は、液体クロマトグラム、イオンクロマトグラムまたはシリンジポンプから供給されてよいが、これらに限られない。
【0018】
参照によって本明細書に組入れられる特許文献5に開示されている誘電体毛細管52は、入口端43と出口端47を物理的にも静電的にも分離している。入口端43で毛細管オリフィス44に入るイオンは、毛細管入口電極38に印加された電圧とほぼ等しい位置エネルギーを有する。出口端47でオリフィス44から出るイオンは、毛細管の出口電極42に印加された電圧とほぼ等しい位置エネルギーを有する。広がる中性ガス流に押されて毛細管オリフィス44内を通されるイオンは、入口の位置エネルギーと比べて数千ボルト高い出口位置エネルギーを有することができる。従って端板電極37および毛細管入口電極38に電圧が印加されることができ、検体イオンの毛細管オリフィス44への集束を最大化する一方で大気圧化学イオン化プローブ注入管8を接地電位に保つ。イオンは、使用される質量電荷比分析器にとって最適な電位で真空に送られる。大気圧化学イオン化プローブ1の好適な実施態様では、蒸気流路アセンブリ4の本体27および試料注入管8は、接地電位で操作される。大気圧化学イオン化で陽極性イオンが生成されるときは、端板電極37および毛細管入口電極38に陰極性電位が印加される。陰極性イオンが生成されるときは、端板電極37および毛細管入口電極38に陽極性電位が印加される。代替的に、オリフィス44へのイオン集束を最適化するために蒸気流路本体27に電圧が印加される場所に大気圧化学イオン化プローブアセンブリ1を構成することができる。毛細管52は、代替的に導電性加熱毛細管、ノズルまたは真空への細いオリフィスとして構成されてよい。
【0019】
蒸気流路アセンブリ4は、操作中コロナ放電35電界を部分的に包含または遮蔽するコロナ放電針34を取囲むように構成されている。大気圧化学イオン化源室53内でコロナ放電電界をイオン集束電界55から遮蔽することによって、検体イオンを毛細管オリフィス44に最適に集束させることが可能になる。蒸気流路48の開放端は、電界55が蒸気流路48の入口に進入することを可能にする。電界55の進入によって蒸気流路48から出るイオンは、集束され、毛細管オリフィス44の入口43に向かわせられる。このイオン集束は、図4に例示されている。図4は、本発明によって構成された大気圧化学イオン化プローブ1において典型的に電極に印加される電圧を用いて計算された電界線と蒸気流を通るイオン軌道の略図である。図4について見れば、円筒電極71は、コロナ放電針135(81)に電気的接続されている。断面形状は、僅かに異なるが、電極71、72および73、接地された本体70、コロナ放電針135(81)ならびに電極74は、図1に示す本発明の実施態様における電極22、23および24、本体27、コロナ放電針3
4ならびに端板電極37と同様に構成され操作される。図4は、模擬された陽イオン極性大気圧化学イオン化操作電圧に対する電界線75およびイオン軌道82の略図である。電界およびイオン軌道の計算において、電圧+3000V、0V、0V、0Vおよび−1500Vが電極71/135(81)、72、73、70および74にそれぞれ印加される。図4に示されているように、印加された電圧から形成される電界線78は、蒸気流路48の出口端43(54)内へと広がり、蒸気流路48から出る検体イオンを蒸気流路48の中心線に向けて集束させる。コロナ放電針の先端80の近傍で生成されたイオンの軌道は、出口端43(54)に向かって移動するときにコロナ放電電界77によって脱集束される。大気圧化学イオン化検体および試薬イオンは、電界77および78およびガス流84によって出口端43(54)に向かって移動する。イオン軌道82は、電界力のみを用いて計算され、蒸気流路48を通るガス流の追加的な集束力は、考慮に入れていない。図1および図4に示す実施態様では、円筒電極24および73は、それぞれ電極23および72よりも大きい内径で構成されている。出口端43(54)で内径が増大していることによって、集束電界78がよりも深く進入し、電荷の中性化の原因となる電極73との接触を最小化することができる。コロナ放電35によって形成された電界77は、半径方向に広がらないように遮蔽され、大気圧化学イオン化源室53に続く下流方向で部分的に遮蔽されている。蒸気流路48から出るイオンは、毛細管オリフィス44の入口43に向かって最適化された集束電界に自由に従うことができる。電極形態、印加される電極電圧、蒸気流路形態およびガス流は、イオン化効率、および大気圧化学イオン化によって生成されたイオンの大気圧化学イオン化プローブ1から毛細管オリフィス44の入口43への集束および伝達を最大化する。
【0020】
図2に示された慣用的な大気圧化学イオン化イオン源形態では、注入された検体が同量であれば感度は、試料溶液流量に伴い急速に低下する。本発明では、気化した試料溶液が加熱器7から出ると蒸気流路48に強制されることによって、たとえ試料溶液流量が10μl/min以下であっても、慣用的な大気圧化学イオン化源形態の性能と比べて大気圧化学イオン化効率が改善される。慣用的な大気圧化学イオン化源100が図2に示されている。大気圧化学イオン化源100内に構成された大気圧化学イオン化注入プローブ90は、試料溶液注入管91、霧化器ガス注入口92、補助ガス注入口93および加熱器94を有している。空気圧で霧化されたスプレー95は、加熱器94内で気化し、出口端96から出て大気圧化学イオン化源室101内に入る。大気圧化学イオン化操作中、蒸気の一部がコロナ放電針102の先端に形成されるコロナ放電98およびその周囲を通過する。大気圧化学イオン化注入プローブ本体105が接地電位に保たれ、コロナ放電針102、端板電極103および毛細管入口電極104に印加される相対電圧がコロナ放電98を発生させて維持する。これらの印加された電圧は、毛細管オリフィス107へのイオン集束を最適化するように設定されなければならない。図4に示すように、コロナ放電電界は、イオン軌道の脱集束を引き起こす。慣用的な大気圧化学イオン化源100においてコロナ針102の位置および電極に印加される電圧は、性能を最適化するように設定されるが、このような最適化は、イオン化効率とイオン輸送効率との間の妥協である。加熱器94から出る検体蒸気は、大気圧化学イオン化源室101内で消散して、イオン化効率を低下させる。コロナ放電強度とイオン集束電界の妥協の結果、信号強度が減少する。図1に示す本発明の実施態様は、大気圧化学イオン化効率と真空へのイオン伝達効率を同時に高め、大気圧化学イオン化質量分析計性能を著しく改善する。
【0021】
図3Aは、図1に示された本発明の実施態様である大気圧化学イオン化源を用いて、水と0.1%酢酸を含有するメタノールを1:1の割合で混合した溶液にレセルピン1pgを添加した注入液1μlの多重ピーク111を有するベースイオンクロマトグラム(BIC)110を示す。試料溶液注入管に入る試料溶液の流量は、1ml/minであった。図3Bは、図2に示された態様で構成された慣用的な大気圧化学イオン化源に同じ流量で入る同じレセルピン試料溶液流の注入液1μlの多重ピーク113を有するベースイオン
クロマトグラム112を示す。各ベースイオンクロマトグラム110および112について、飛行時間型質量分析計質量スペクトルは、1秒当り20スペクトルの速度で得られた。本発明によって構成された大気圧化学イオン化源2は、慣用的な大気圧化学イオン化源の性能と比較して、検体信号強度は、6倍以上の増加、信号対雑音比は、10倍以上の改善を示す。本発明によって構成された大気圧化学イオン化源2は、また表1に陽極性イオンの生成について要約したように、慣用的なイオン源の性能と比較して、比較的低い試料溶液流量で高い感度を示した(1K=1キロつまり1000)。
【0022】
【表1】

各欄の最初の数字は、慣用的な大気圧化学イオン化源を用いて測定された大気圧化学イオン化質量分析計信号強度であり、各欄でコロンの後に続く数字は、図1に示す本発明によって構成された大気圧化学イオン化源を用いて測定された大気圧化学イオン化質量分析計信号強度である。
【0023】
表2に示すように、本発明によって構成および操作される大気圧化学イオン化源は、慣用的な大気圧化学イオン化源の性能に比べて陰極性イオン生成の性能において有意な改善を示した。
【0024】
【表2】

ここでも各欄の最初の数字は、慣用的な大気圧化学イオン化源を用いて測定された大気圧化学イオン化質量分析計信号強度であり、各欄でコロンの後に続く数字は、図1に示す本発明によって構成された大気圧化学イオン化源を用いて測定された大気圧化学イオン化質量分析計信号強度である。
【0025】
図5は、代替的な実施態様を示す。大気圧化学イオン化プローブ120は、2個の試料溶液注入霧化器アセンブリ121および122を備えて構成される。試料注入管132および133を通して同時に2個の試料溶液または1個の試料溶液と1個の校正溶液を大気圧化学イオン化プローブ120に導入できる。空気圧霧化ガス130および131は、それぞれ流路137および138を通って注入霧化器アセンブリ121および122に入る。試料溶液注入管132および133を通って流れる溶液は、それぞれ空気圧で霧化された試料スプレー135および136を形成し、これらは混合物として加熱器または気化器123に流入する。二元試料スプレー混合物または試料スプレーと校正スプレーの混合物は、加熱器123を通過するときに気化する。加熱器123から出る蒸気は、蒸気流路アセンブリ127内の蒸気流路129を通過するときに、コロナ放電134またはその周囲を通過する。二元注入大気圧化学イオン化プローブ120は、注入管132および133を通して同時または個別に導入される試料溶液および/または校正溶液と一緒に操作され得る。蒸気流路アセンブリなしで構成される二元注入大気圧化学イオン化プローブが、参照によって本明細書に組入れられる特許文献6に開示されている。試料溶液と同時に第2の校正溶液を加えることによって、校正溶液を直接試料溶液に混入することなく、得られた質量スペクトルにおいて試料ピークと校正ピークを得ることができる。得られたスペクトルにおける校正ピークは、質量測定精度を改善するための内部基準として役立つ。校正溶液と試料溶液が別々の注入プローブを通して導入されると、試料溶液の組成を変化させる可能性のある試料溶液と校正溶液の液相の相互作用が起こることはない。また試料溶液流の経路が校正溶液によって汚染されないので、注水洗浄時間が短縮される。
【0026】
二元試料溶液または試料溶液と校正溶液は、注入管132および133を通して同時または個別に導入できる。たとえば校正溶液は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)実行の前と後に導入して、液体クロマトグラフィー質量分析データを校正スペクトルとまとめて、質量測定精度を改善できる。最初に、液体クロマトグラフィー質量分析実行を開始する前に注入管133を通して校正溶液を導入する。液体クロマトグラフィー質量分析実行中に試料溶液が注入管132を通って流れ続けている間は、校正溶液流は、オ
フにされる。液体クロマトグラフィー質量分析実行が完了した後で、校正質量スペクトルを得るために校正溶液流は、オンにされる。正確な外部校正基準を提供するために、液体クロマトグラフィー質量分析実行の前と後に得られた校正質量スペクトルを平均する。代替的に、得られた質量スペクトルにおいて内部質量測定校正標準を提供するために、液体クロマトグラフィー質量分析実行中も校正溶液をオンのままにしておくことができる。
【0027】
本発明によって構成された蒸気流路アセンブリ127は、コロナ放電針124を部分的に包囲し、大気圧化学イオン化源室をコロナ放電134によって形成される電界から遮蔽する。図1に示された本発明の実施態様が3個の円筒電極22、23および24を有するのに対し、図5に示された本発明の好適な実施態様では蒸気流路アセンブリ127は、2個の円筒電極125および128を有している。円筒電極125は、コロナ放電針124に電気的接続され、絶縁体137によって円筒電極128から電気的絶縁されている。試料蒸気または試料蒸気と校正蒸気の混合物が蒸気流路129を通って流れるとき、コロナ針124と電極128に印加された相対電圧がコロナ放電134を形成する。蒸気流路アセンブリ127内に構成される電極の数を減らすと、コストおよび複雑さが低減し、必要とされる電圧源は、1個減り、これに関連する電子およびソフトウェアコントロールもなくなる。大気圧化学イオン化プローブアセンブリ120は、図2に示された大気圧化学イオン化源アセンブリ2と同様に、大気圧化学イオン化源アセンブリ内で質量分析計に界接して構成されることができる。
【0028】
図6Aおよび図6Bに示された本発明の代替的な実施態様では、より高い溶液流量で実行すると大気圧化学イオン化性能を最適化できる。蒸気流路アセンブリ140は、可動部材、すなわち電極144、絶縁体150およびコロナ放電針142で構成され、蒸気流路形状およびコロナ針の位置を調節することが可能である。電極144と絶縁体150を内方または外方に動かして蒸気流路148の開口のサイズを縮小または拡大することができる。電極144および絶縁体150を加熱の中心線147に向かって内方に動かすと、図6Aに示された気化器および大気圧化学イオン化プローブの軸線147を中心として軸方向に対称な蒸気流路148が形成される。電極148および150を軸線147から離して位置決めすると、図6Bに示されているように伸張された蒸気流路148が形成される。コロナ放電針142の位置は、十分大きい範囲で調節可能であり、コロナ放電針の先端をほぼ大気圧化学イオン化プローブおよび加熱器の中心線147上に配置するか、または中心線147から加熱器出口の直径1個分以上ずらして配置することができる。蒸気流路開口148の形状とコロナ放電針の位置が調節可能であることによって、比較的高い試料溶液流量で安定したコロナ放電の操作が可能となる。典型的には1ml/min以上の高い試料溶液流量では、霧化されたスプレーが加熱器141によって完全に気化されないことがあり、その結果として液滴がコロナ放電146を通過する。液滴は、コロナ放電146から電荷を取得することもあるが、不完全に気化した荷電液滴のままであり、これらが真空に入ると得られる質量スペクトルに信号雑音スパイクを生じさせる恐れがある。また、コロナ放電146を通過する液滴は、コロナ放電電流を不安定に、その結果大気圧化学イオン化質量分析計信号を変動させる。蒸気流路148の断面を拡大し、コロナ放電針の先端151の位置を中心線147からずらして調節すると、部分的に気化した液滴の流れの外部でコロナ放電146を操作することが可能になるが、これは試料溶液の流量が高い場合に起こり得る。本発明によって構成された大気圧化学イオン化プローブ152を真空への試料オリフィスに対して相対的に配置して、コロナ放電区域で形成されたイオンを選好的に供給する一方、部分的に気化した荷電液滴が真空に取込まれるのを最小化する。
【0029】
電極143は、コロナ針142に電気的接続されている。蒸気流路電極部材144および145は、電気的接続されて、コロナ放電針の先端151を取囲んで遮蔽する反対電極を形成している。電極144および145は、典型的に接地電位で運転される。コロナ針の先端151にコロナ146を形成するために、コロナ放電針142に電圧が印加される
。図1に示された本発明の実施態様について説明されたように、蒸気流路148は、出口端が開いており、大気圧化学イオン化源に、電極に印加された電圧から形成された集束電界の進入を可能にしている。電極144および145の成形は、コロナ放電電界の遮蔽を提供する一方、大気圧化学イオン化によって生成された検体イオンの集束および最大伝達を提供する。
【0030】
図7は、本発明の代替的な実施態様の略図であり、加熱器または気化器163の上流側で試料スプレー174の流動経路内に液滴分離ボール171が構成されている。注入管158を通して高速の試料液流が導入されると、霧化ガス175および霧化器ガス注入口181を備えた空気圧霧化器アセンブリ162は、液滴サイズの広い分布を生じることがある。空気圧で霧化されたスプレー174内に形成された大きい液滴は、コロナ放電170を備えた蒸気流路167を通過する前に加熱器163を通過するときに完全に気化しない。図6Aおよび図6Bに示された本発明の代替的な実施態様で説明されたように、部分的に気化した液滴がコロナ放電170またはその近傍を通過すると、コロナ170の不安定を引き起こし、得られる質量スペクトルで望まれない雑音スパイクを生じさせる恐れがある。大気圧化学イオン化プローブ160内で、スプレー174中に取込まれた大きい液滴は、ボール形分離器171に衝突するが、スプレー174中の霧化された小さい液滴は、ボール形分離器171の周囲を通る。分離ボール171上に蓄積された試料液は、排液管172内に滴下し、過剰な液体は、流路177を通って除去される。ボール分離器流路159は、拡散セクション179と集中セクション173を有し、乱流を最小化して、小さい液滴の加熱器163への伝達を最大化する。
【0031】
流路178を通ってボール形分離器区域159に入る補助ガス流176の流量は、所望の液滴サイズの加熱器163への伝達を最適化するように調節できる。代替的に、加熱器163内に搬送される液滴サイズの分布を最適化するために、分離ボール171の大きさと下流側の位置を調節できる。図7に示された本発明の実施態様は、試料溶液の比較的高い流量に対して、慣用的な大気圧化学イオン化構成と比較して、雑音が少なく振幅の大きい安定した大気圧化学イオン化質量分析計信号を提供する。蒸気流路アセンブリ164の好適な実施態様は、開放端の円筒電極166、円筒電極168およびコロナ放電針165を有している。電極166は、典型的に接地電位で操作されるが、代替的に非ゼロ電圧を印加して運転できる。電極166の形状は、電界をコロナ放電170から部分的に遮蔽するとともに、外部電界の進入を可能にし、大気圧化学イオン化によって生成された進出するイオンが蒸気流路167の中心線に向けて集束するのを助ける。円筒電極168は、コロナ放電針165に電気的接続され、絶縁体180および182によって電極166から電気的絶縁されている。絶縁体180、電極168および166、コロナ放電針165は、検体イオンの大気圧化学イオン化効率を最大化し、質量分光分析のために検体イオンの真空への搬送を最大化するように構成および操作される。本発明によって構成された分離ボール171は、より均一な液滴サイズの分布が加熱器163に入るようにし、その結果として広範な試料溶液流量にわたり一貫した試料蒸気流が蒸気流路167を通過する。
【0032】
図8は、本発明の代替的な好適な実施態様を示す。大気圧化学イオン化プローブアセンブリは、導入された試料の大気圧化学イオン化のために、大気圧化学イオン化プローブ184の内部または外部に試薬イオン源を提供するように構成されている。本発明によって構成された大気圧化学イオン化プローブ184は、試料注入管186、霧化器アセンブリ185、加熱器187および試料試薬ガスまたは蒸気の流路アセンブリ188を有している。電極189、190、191およびコロナ放電針194は、図1に示された大気圧化学イオン化プローブ1内の電極22、23、24およびコロナ放電針34と同様に構成されている。蒸気流路202の出口開口193は、出口板192を付加することによって、図1に示された本発明の実施態様の蒸気流路48の出口開口に比べて縮小されている。出口板192内の出口開口193のサイズを縮小すると、加熱されたより集束された流れが
中性ガス大気圧化学イオン化源室に供給される一方、大気圧化学イオン化によって生成され大気圧化学イオン化プローブ184の中心線203に向けて集束された進出するイオンビームは、保持される。蒸気流路202は、コロナ放電197によって生成された電界を遮蔽するように構成されている。上述した本発明の実施態様と同様に、霧化ガス198は、流路199を通って霧化器アセンブリ185に導入できる。補助ガス200は、注入路201を通して個別に導入され、試薬溶液または試料溶液は、注入管186を通して導入される。注入管186から出る溶液は、霧化されて液滴スプレー204を形成する。大気圧化学イオン化プローブ184は、試料溶液から大気圧化学イオン化によって検体イオンを生成するために、または試薬ガスもしくは試薬溶液から試薬イオンを形成するために使用できる。試薬溶液と試薬ガスの組合せをイオン化して、外部試料の大気圧化学イオン化を行うために用いられる試薬イオン混合物を形成できる。霧化、気化およびイオン化された試薬溶液を導入することによって、気体混合割合を試薬ガスのみが導入された場合よりも緻密に制御できる。試薬溶液は、水、メタノール、アセトニトリル、アセトン、トルエンおよびアンモニアを有することができるが、これらに限らない。霧化ガスまたは補助ガスは、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、またはこれらの気体の混合物を有することができるが、これらに限らない。大気圧化学イオン化プローブ184への溶液流またはガス流に種々の試薬種を添加して、特定の試料分子タイプに対するイオン化効率を高めることができる。
【0033】
たとえば、所望の試薬イオンがヒドロニウムイオン(HO)である場合、液相水が注入管186を通して導入され、加熱器187内で霧化および気化されて、蒸気流路202を流れる特定の濃度の水蒸気を形成する。供給される水の液体流量が1.0μl/minであり、窒素霧化ガスが流路199を通して流量1.2L/minで導入されるならば、水の気相濃度は、1ppth(パーツ・パー・サウザンド)以下のレベルで正確に制御されよう。窒素霧化ガスと補助ガスの組合せの所定の流量に対し、気相水分子の相対濃度は、注入管186を通る水溶液流量を変化させることによって制御され得る。水の最適な濃度は、より多量のヒドロニウムイオンを生み出し、陽子親和性が高く、従って大気圧化学イオン化試薬イオンとしての効率が低いプロトン化した水クラスターは、減るだろう。注入管186を通して種々の溶媒または溶媒混合物を導入でき、霧化ガス注入口199または補助ガス注入口201を通して種々の気体種または気体種の混合物を導入できる。出口開口193から出る試薬イオンおよび中性ガス混合物の温度は、加熱器187内の加熱温度を設定することによって制御される。試薬ガス温度は、外部試料の気化を助け、気相大気圧化学イオン化プロセスを助ける。
【0034】
コロナ放電針194、円筒電極190および191、出口板192に印加される相対電圧は、大気圧化学イオン化によって生成された進出するイオンを中心線203に向けて集束させるように設定できる。イオンを中心線203に向けて集束させると伝達効率が最大化され、蒸気流路202内の表面での汚染蓄積が最小化される。大気圧化学イオン化操作中、絶縁体195がコロナ放電針194および電極189、190、191、192を電気的絶縁している。図9A、図9Bおよび図9Cは、電極191に印加される3通りの集束電圧に対して計算された電界およびイオン軌道を示す。この計算は、開口193から出るガス流の追加的なイオン集束効果を考慮していないため、実際の中心線203に向かうイオン軌道の集束は、図9A、図9Bおよび図9Cに示されているものよりも改善されるであろう。
【0035】
図9Aについて見れば、電極213、214、215、コロナ放電針216および出口板217は、それぞれ、図8に示された電極189、190、191、コロナ放電針194および出口板192に機能的に相当する。蒸気流路アセンブリ210内の蒸気流路211を通って流れる試薬ガスまたは試料蒸気212の一部は、コロナ放電針216の先端またはその近傍を通過するときにイオン化される。上述したように、イオン軌道計算は、電
界のみに基づいており、蒸気またはガス流212は、イオン集束力として考慮していない。図8および図9に示された本発明の好適な実施態様において、イオンビームが開口193から出るとガス流212がイオン軌道を中心線203に向けて追加的に集束させる。図9Aにおいて、陽極性イオンの大気圧化学イオン化生成に対して電極213/コロナ放電針216、214、215、217、218に印加される電圧値は、それぞれ+3000V、0V、0V、0V、−1500Vに設定される。蒸気流路211内のイオン軌道221は、最初にコロナ放電電界223のために中心線225から脱集束する。イオン224が開口193に接近すると、開口193に進入する集束電界222のために中心線225に向けて集束される。開口193に進入する電界222の集束は、出口板217に印加される接地電圧またはゼロボルトとは相対的に反対電極218に印加される−1500ボルトによって形成される。しかしながら、例示の計算された集束条件に対して中心線225から更に離れて形成されたイオンは、出口開口板217に衝突する。
【0036】
図9Bにおいて、陽極性イオンの大気圧化学イオン化生成に対して電極213/コロナ放電針216、214、215、217、218に印加される電圧値は、再びそれぞれ+3000V、0V、0V、0V、−1500Vに設定される。電極215に印加された電圧がコロナ放電によって形成された脱集束電界223を減弱するので、イオン221および224の改善された集束が達成される。大気圧化学イオン化によって生成されたイオンのより高いパーセンテージが開口193から出て平行イオンビーム220を形成する。図9Cでは、電極213/コロナ放電針216、214、215、217、218にそれぞれ+3000V、0V、+1000V、0V、−1500Vが印加される。イオン221の集束が改善されて、大気圧化学イオン化によって生成されたイオンの高いパーセンテージが出口開口193を通過して平行イオンビーム220を形成する。開口193を通る中性ガス流は、更に開口193を通るイオン搬送の効率を高めるであろう。図9Cに示された本発明の実施態様は、大気圧化学イオン化によって生成されたイオンとこれを取囲む加熱された中性搬送ガスを同時に、模擬された大気圧化学イオン化源室227へと集束させる。
【0037】
図10は、本発明の別の好適な実施態様が示し、多機能大気圧化学イオン化源234が質量電荷比分析器3に界接している。大気圧化学イオン化源234は、大気圧化学イオン化プローブ184、試料注入プローブ231、加熱された向流乾燥ガス流36を伴う端板電極37、入口電極38とオリフィス44を有する誘電体毛細管52を有している。大気圧化学イオン化プローブ184は、その中心線203が毛細管52の延長された中心線235を指しているが、これに対して所定の角度で配置されている。試料導入プローブ231は、ポート233を通して手動で、または自動化された試料処理手段を用いて出し入れできる。試料導入プローブ231に装入される試料232は、液相または固相であってよい。大気圧化学イオン化プローブ184から出る加熱された試薬イオンおよび中性ガス混合物230は、試料232の気化もしくは揮発した分子から大気圧化学イオン化によってイオンを生成する。イオン気体混合物230の温度は、加熱器187の温度を設定することによって調節できる。試薬イオンと中性ガスの組成は、上述したように、選択された霧化ガス、補助ガスおよび試薬溶液を大気圧化学イオン化プローブ184に導入することによって決定される。大気圧化学イオン化によって生成された試料イオンは、端板電極37、毛細管入口電極38、印加された電圧を持ち得る試料導入プローブ231、および典型的に接地電位で運転される大気圧化学イオン化プローブ184の本体に印加される電圧によって形成された電界によって毛細管オリフィス44に向かわせられる。試料導入プローブが取除かれると、注入管186を通して流れる試料溶液を導入することによって、流れる試料溶液の大気圧化学イオン化および質量分析計分析を行うことができ、これは上述したように本発明によって試料蒸気の大気圧化学イオン化を伴う。本発明によって構成された多機能大気圧化学イオン化源234は、たとえば液体クロマトグラムからの試料液流に対する大気圧化学イオン化源として質量分析計分析と一緒に操作され得る。代替的に大気
圧化学イオン化源234は、大気圧化学イオン化プローブ184の外部に位置する試料注入プローブ231で大気圧化学イオン化源234に導入された固相試料または液相試料の大気圧化学イオン化によってイオンを生成するために操作され得る。このような大気圧化学イオン化によって生成されたイオンの一部が真空に搬送されて質量電荷比が分析される。試料注入プローブ231を通して校正試料が導入されて質量校正のための校正イオンを生成する。試料溶液流大気圧化学イオン化質量分析計分析においてこのような校正試料の導入は、注入管186を通して試料溶液流が導入される液体クロマトグラフィー質量分析実行の前、間または後で適用され得る。流れる試料溶液の大気圧化学イオン化または試料注入プローブの大気圧化学イオン化操作モードは、図10に示された大気圧化学イオン化源234に急速に切替えることができる。
【0038】
図11に示された本発明の代替的な実施態様では、多機能大気圧化学イオン化源242は、軸線203が誘電体毛細管52の軸線235にほぼ整合されて配置された大気圧化学イオン化プローブ184を有している。試料導入プローブ240は、毛細管52の軸線235に対して直角に動くように配置されている。試料導入プローブ240に装入された多数の固相試料または液相試料は、大気圧化学イオン化プローブ184の出口開口193を急速に横断することができ、多くの試料の急速な大気圧化学イオン化質量分析計分析を可能にする。試料注入プローブ240は、ポート241を通して手動で、または自動化された試料処理手段を用いて出し入れされる。大気圧化学イオン化源242は、1個以上の試料導入プローブ、たとえば大気圧化学イオン化源242の2側面ないし4側面からの導入の急速な交換を可能にする。大気圧化学イオン化プローブ184の出口開口193を通して加熱された試薬イオンおよび中性ガスを集束させることによって、大気圧化学イオン化が試料注入プローブ240に沿った限定された区域で起こるように集束される。この大気圧化学イオン化の局所化された集束によって、試料間でイオン化の混線が僅かしか生じないか、全く生じることなく、試料を試料導入プローブ240に沿って狭い間隔で並べることが可能になる。出口開口193を通して加熱された試薬イオンおよび中性ガスの中心線集束によって、試料間のキャリーオーバーを伴うことなく多数の試料の急速な質量分析計分析が可能になる。大気圧化学イオン化源242は、図10に示された大気圧化学イオン化源234と同様に、注入管186を通して試料溶液が導入され、導入プローブ240が大気圧化学イオン化源242から取出されると、液体クロマトグラフィー質量分析分析のための試料溶液流大気圧化学イオン化源として操作され得る。
【0039】
図12は、図11に示された大気圧化学イオン化源242と同様に構成された多機能大気圧化学イオン化源を用いて得られたカフェイン試料の飛行時間型質量スペクトル244を示す。質量電荷比(m/z)=195でプロトン化したカフェインのピーク245を有する陽イオン極性質量スペクトル244は、ステンレス鋼製の導入プローブ240に装入されたカフェインの試料20pMから得られた。コロナ針194、出口板192、試料導入プローブ240、端板電極37、毛細管出口電極38にはそれぞれ、+3600V、0V、0V、−200V、−1000Vの電圧が印加された。
【0040】
図13は、試料注入プローブ240に装入され、多機能大気圧化学イオン化源242と同様の大気圧化学イオン化源で実行されたアスピリン錠の陰イオン極性質量スペクトル246を示す。質量スペクトル246は、プロトン化したアスピリンのピーク247およびアスピリン錠に含まれている追加的成分の質量電荷比ピークを示す。
【0041】
図14は、大気圧化学イオン化源242と同様に構成された多機能大気圧化学イオン化源に20ドル紙幣(米国)を導入することによって得られたコカインのピーク244を有する質量スペクトル248を示す。
【0042】
図15は、図11に示された大気圧化学イオン化源242と同様に構成された多機能大
気圧化学イオン化源に、試料導入プローブ240でタイレノール錠剤を導入することによって得られたアセトアミノフェンのピーク251を有する質量スペクトル250を示す。
【0043】
図16に示された本発明の好適な実施態様において、気相試料導入プローブを付加することによって多機能大気圧化学イオン化源242の分析能力を拡張できる。図16について見ると、本発明によって構成された多機能大気圧化学イオン化源260は、固相試料および液相試料導入プローブ240、気体試料注入プローブ261、大気圧化学イオン化プローブ184、端板電極37、加熱された向流乾燥ガス36および真空への毛細管52のオリフィス44を有する。多機能大気圧化学イオン化源260において試料および/または試薬種は、固相試料および液相試料導入プローブ240、ガス試料導入プローブ261、液体試料注入管186、霧化ガス注入口199または補助ガス注入口201を通して同時または個別に導入され得る。先に説明したように、固体または液体注入プローブ240は、ポート241を通して手動で導入されるか、または自動化された試料処理手段268によって導入されてよい。ガス試料は、気体注入プローブ261を通して大気圧化学イオン化プローブ184の出口開口193と端板37との間の区域278に導入でき、区域278には、固体試料または液体試料導入プローブ240が配置され、または配置されていない。ガス試料は、コネクタ264に挿入された手動また機械駆動のシリンジ263を用いてガス注入ポート261に導入されてよい。注入管262を通るガス流は、バルブ265を用いてオンまたはオフにすることができる。試料または試薬ガスは、気体注入プローブ261を通して導入されてよい。試料ガスは、大気圧化学イオン化プローブ184から出る試薬イオンによってイオン化される。固体試料または液体試料導入プローブ240で装入された特定の試料の化学イオン化を強めるために、気体注入プローブ261を通して導入され多種の試薬イオンによってイオン化されて大気圧化学イオン化プローブ184から出る試薬ガスが導入されてよい。代替的に、試料または試薬ガス種は、霧化ガス注入口199または補助ガス注入口201を通して導入できる。霧化ガス注入口199の上流側に、試薬液274を入れた液体容器272を構成できる。霧化ガスおよび補助ガスは、それぞれ圧力源273および270から、ガス流がそれぞれバルブおよび/または圧力レギュレータ271および269によって制御されて供給される。試料または試薬溶液流は、手動または機械的に操作されるシリンジ275から注入管186を通して導入され得る。代替的に、液体試料は、液体クロマトグラフィーまたはイオンクロマトグラフィーシステムから注入管186を通して導入されてよい。大気圧化学イオン化プローブ184の蒸気流路202によって生成された試薬イオンは、区域278に導入されたガス試料液試料または固体試料をイオン化する。その結果大気圧化学イオン化によって生成された試料イオンは、区域278内の電界によって毛細管52のオリフィス44に向かわせられる。真空へのオリフィス44を通過するイオンの一部は、質量電荷比が分析される。化学分析において特定の化学イオン化、電荷減少または化学反応が所望される場合は、大気圧化学イオン化プローブ184内で生成された試料イオンは、区域278に導入された試料種と反応するように選択できる。
【0044】
図17に示された本発明の代替的な実施態様では、大気圧化学イオン化源280内に多数の気体試料導入ポートが構成されている。大気圧化学イオン化源280は、加熱されたガスクロマトグラフィー注入口281、加熱された周囲ガスサンプリング注入口283、ガス試料注入ポート261、本発明によって構成された大気圧化学イオン化プローブ184、気体ポンピングポート290、気体排出口287、端板電極37、誘電体毛細管52および加熱された向流乾燥ガス36を有している。大気圧化学イオン化源室293の容積は、導入されたガス試料の消散を最小化するために縮小されている。ガス試料は、ガスクロマトグラフ282から加熱された注入口281を通して大気圧化学イオン化区域294に導入されてよい。ガス試料は、手動もしくは機械的に操作されるシリンジ263または他のガス導入装置を用いてガス注入口ポート261を通して導入され得る。ガスクロマトグラフ282、シリンジ263、補助ガス源274から、または霧化ガス源273から大
気圧化学イオン化源室293に導入されたガス試料は、上流側のより高いガス圧によって区域294に供給される。ガス試料は、諸源または反応容器から、周囲圧力またはそれに近い圧力で加熱されたサンプリング管285を通して、または周囲ガスサンプリングのために構成された補助ガス注入口201を通して導入される。ガスは、大気圧化学イオン化室293の圧力を下げることによって周囲圧力源から大気圧化学イオン化源室293に採取される。ガス圧は、密封された大気圧化学イオン化源室293内で真空ポンプ、ダイヤフラムポンプまたはファン291を用いてガスポンピングポート290を通してガスをポンピングすることによって下げられる。周囲ガスサンプリングの間、バルブ292は、大気圧化学イオン化源室293に加えられるポンピング速度を調節する。加熱されたサンプリング管285または補助ガス注入口ポート201を通るガスサンプリングの流量は、サンプリング管285の内径と長さ、採取されたガスの温度、それぞれガス流調節バルブ269および/または284、および大気圧化学イオン化源室293内で維持される圧力によって調節される。周囲圧力ガス源からガスが採取されているときは、ガスクロマトグラフィー注入バルブが閉じられか、またはガスクロマトグラフィー注入口が取除かれて排出バルブ288が閉じられる。大気圧化学イオン化源のすべての操作モードに対して、試薬霧化ガス、補助ガスおよび/または試薬液は、それぞれ霧化ガス注入口199、補助ガス注入口201および/または注入管186を通して導入される。すべての操作モードの間、バルブ295は、大気圧化学イオン化源室293に入る加熱された向流ガスの流れを調節する。向流ガス流36は、すべての操作モードの間、イオン化されなかった汚染物質中性分子が真空に入るのを防ぐ。向流ガスの流量は、典型的に真空への毛細管52のオリフィス44を通るガス流量に等しいか、それ以上に設定される。大気圧化学イオン化によって生成された試薬イオンまたは試料イオンは、蒸気流路の出口開口193を通って大気圧化学イオン化プローブ184から出て大気圧化学イオン化源室293内の縮小された容積区域294に入る。気体入口261、281または283を通って個別または同時に導入されたガス試料は、大気圧化学イオン化プローブ184から出る試薬イオンまたは試料イオンを用いる大気圧化学イオン化によってイオン化される。その結果生じるガス試料イオンは、区域294で印加された電界によって毛細管52のオリフィス44に向かわせられる。オリフィス44を通って真空に送り込まれたイオンの一部は、質量電荷比が分析される。本発明によって構成された大気圧化学イオン化源280は更に、上述した固体または液体プローブ240を有してもよい。
【0045】
質量分析計に界接した大気圧化学イオン化源は、非常に有用で堅牢な分析ツールを提供する。しかしながら、大気圧化学イオン化は、同技術でイオン化され得る質量範囲と分子タイプに関して制限を有する。大気圧化学イオン化は、熱的に不安定ではなく、極性が比較的少なく、かつ、陽イオン極性モードで気相のカチオンを受容し、または陰イオン極性操作モードでカチオンを放出し、もしくはアニオンを受容する分子種をイオン化するために使用できる。一般に、大気圧化学イオン化は、分子量1000amu以下の非極性または微極性分子をイオン化することに制限されている。エレクトロスプレー(ES)イオン化は、分子量範囲または化合物の熱的不安定に本質的に制限のない広い範囲の極性化合物、更には非極性化合物を直接溶液からイオン化することを可能にする強力なイオン化技術である。多くの分析用途にとって、大気圧化学イオン化と質量分光分析を伴うエレクトロスプレーイオン化は、相補的な技術である。試料が単機能大気圧化学イオン化とエレクトロスプレーイオン源によって処理されるときは、2種類の別個の分析が必要とされ、追加的な時間、資源および試料を増大させる。従って選択された分析用途に対して、単一の試料溶液インプットにエレクトロスプレーイオン化と大気圧化学イオン化を有するイオン源の組合せを適用すると、分析性能、簡便性および効率が改善され、分析速度が増す。
【0046】
図18に示されている本発明の代替的な実施態様では、本発明によって構成された大気圧イオン源においてエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化が組合わされ、質量電荷比分析器に界接している。本発明によって構成されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオ
ン化源300の組合せは、エレクトロスプレー注入プローブ301、大気圧化学イオン化プローブ320、端板電極37、誘電体毛細管52、真空システム327および質量電荷比分析器3を有している。エレクトロスプレー注入プローブ301は、試料溶液注入管308、霧化器ガス注入口303および加熱器305を備えた加熱されたシースガスの注入口330で構成されている。大気圧化学イオン化プローブ320は、本発明によって霧化器アセンブリ322、気化器または加熱器323および蒸気流路アセンブリ328を備えて構成されている。図18に示された本発明の実施態様において、エレクトロスプレー注入プローブ301の軸線と大気圧化学イオン化プローブ320の中心線341とはほぼ整合されている。エレクトロスプレー注入プローブ301の出口端は、大気圧化学イオン化プローブ320の出口端に対面しているので、イオン源操作中にエレクトロスプレープルーム310の一部313が蒸気流路319(340)の出口端に入る。蒸気流路319(340)に入るエレクトロスプレープルーム310の一部313は、区域338で大気圧化学イオン化によって気化およびイオン化される。蒸気流路319(340)内に構成された円筒電極326は、コロナ放電針324に電気的接続されている。接地された電極317は、コロナ放電の反対電極として働き、大気圧化学イオン化源室334をコロナ放電電界から部分的に遮蔽する。コロナ放電316は、コロナ放電針324に適当な電圧を印加することによってオンにされる。エレクトロスプレー注入プローブ301は、接地電位で操作される。エレクトロスプレー注入プローブ301の注入管308を通して導入された試料溶液は、エレクトロスプレー注入プローブ出口端307で空気圧によって霧化された液滴スプレー310を形成する。より高い試料溶液流量では、加熱されたシースガス流をオンにして液滴スプレー310の気化を助けることができる。加熱されたシースガス304は、エレクトロスプレー注入プローブ301の出口端307を同心的に囲んでいる大気圧化学イオン化室334に入る。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源300を組合わせたすべての操作モードにおいて、端板電極37と毛細管入口電極38との間に電圧差が印加されて、エレクトロスプレーおよび大気圧化学イオン化によって生成されたイオンを誘電体毛細管52のオリフィス44に集束させる電界315を維持する。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化イオン源300との組合せは、エレクトロスプレーのみでも、大気圧化学イオン化のみでも、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化を組合わせた操作モードでも実行できる。
【0047】
陽イオン極エレクトロスプレーイオン化は、端板電極37と毛細管入口電極38に陰極性キロボルト電位を印加することによって実行される。霧化エレクトロスプレープルーム310内で陽極性荷電液滴が生成される。液滴がスプレープルーム310内で気化すると、エレクトロスプレーイオン311が生成され、電界315によって毛細管オリフィス44へと集束されて、加熱された向流乾燥ガス36に抗して移動する。陰極性エレクトロスプレーイオンは、端板電極37と毛細入口電極38に陽極性キロボルト電位を印加することによって生成される。たとえば陽イオン極性エレクトロスプレー操作に対して、端板電極37と毛細管入口電極38にそれぞれ−5KVおよび−5.5KVないし6.0KV電位が印加される。陰イオン極性エレクトロスプレー操作に対しては、電圧極性が逆にされる。毛細管オリフィス44にマイナスキロボルト電位で入る陽極性イオンは、中性ガス流によって駆動されることによって、オリフィス44およびイオン出口毛細管52を通り、毛細管出口電極42に印加された電位で真空内に広がる。オリフィス44の全長を移動するイオンの位置エネルギーを変化させる誘電体毛細管52の能力は、以上に説明され、また特許文献5に開示されている。エレクトロスプレーのみの操作が所望される場合は、上述したように端板電極37と毛細管入口電極38にキロボルト電位が印加されてコロナ放電316がオフにされる。より高い試料液流量が必要とされる場合は、霧化ガス流335または補助ガス流336がオンにされて、大気圧化学イオン化プローブ320を通過するときに加熱される。蒸気流路319(340)を通って大気圧化学イオン化プローブ320から出る加熱されたガス流337は、エレクトロスプレープルーム310内で荷電液滴が気化するのを助ける。改善された荷電液滴の気化率は、イオン集束電界315の区域内
でのエレクトロスプレーイオン生成の効率を増大させる。
【0048】
大気圧化学イオン化のみの操作は、端板電極37と毛細管入口電極38に印加される電圧を単極性・高電荷のエレクトロスプレー液滴の生成に必要とされるレベル以下に下げることによって実行される。端板電極37と毛細管入口電極38に低められた電圧が印加されると、注入管308を通って流れる試料溶液の空気圧霧化によって中性極性液滴スプレーが生成される。コロナ放電316を維持するためにコロナ放電針324に電圧が印加される。気化しつつある純粋に中性的な液滴スプレー313が蒸気流路319(340)に入り、加熱された試薬ガスおよびイオン流337に抗して移動する。気化された試料スプレー313は、区域338でコロナ放電316によって駆動されることによって大気圧化学イオン化を生じさせるのに十分な距離だけ蒸気流路319(340)内に進入する。試薬イオン種は、試料溶液、または加熱された試薬ガス、または大気圧化学イオン化プローブ320内で生成された蒸気に由来する気化した溶媒分子から生成される。本明細書の先の部分で説明されたように、試薬イオン種は、大気圧化学イオン化プローブ320内で霧化ガス流335、補助ガス流336、または注入管331を通して注入されて空気圧霧化によってスプレー321を形成する試薬溶液から生成され得る。加熱された蒸気流337は、大気圧化学イオン化によって生成された試料イオンを蒸気流路319(340)から押し出す。蒸気流路319(340)に進入する集束電界315は、大気圧化学イオン化によって生成された試料イオン314を毛細管オリフィス44に向かわせる。エレクトロスプレー注入プローブ301を通して導入される種々の試料溶液流量に対して最適な大気圧化学イオン化のみの操作は、大気圧化学イオン化ガス流量337、大気圧化学イオン化プローブ試薬ガスの温度、およびコロナ放電針の電流または電圧を調節することによって達成される。代替的に大気圧化学イオン化のみの操作モードは、本明細書の先の部分で説明されたように操作される大気圧化学イオン化プローブ320によって、注入管331を通して大気圧化学イオン化プローブ320に試料溶液を導入することによって実行できる。この大気圧化学イオン化のみの操作モードでは、エレクトロスプレー注入プローブ301から試料溶液は導入されないが、大気圧化学イオン化によって生成されたイオンが毛細管オリフィス44に向かって移動するのを助けるために、加熱されたシースガスをオンにすることができる。
【0049】
エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化を組合せた操作モードは、エレクトロスプレーのみの操作モードについて上で説明されたように、端板電極37と毛細管入口電極38にキロボルト電位を印加することによって実行される。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化を組合わせた操作モードにおいて、コロナ放電316および加熱されたガス流337は、エレクトロスプレー操作の間オンのままである。気化している荷電液から形成されたエレクトロスプレーイオン311は、電界315によって毛細管オリフィス44に向かわせられる。気化している荷電液滴から生成される中性試料ガス313は、蒸気流路319(340)に進入する。大気圧化学イオン化のみの操作モードについて上で説明されたように、気相試料分子の大気圧化学イオン化が、区域338で起こる。加熱されたガスまたは蒸気流337とコロナ放電316からの電界が、大気圧化学イオン化によって生成されたイオンを蒸気流路319(340)から押し出す。蒸気流路319(340)に入る集束電界315は、大気圧化学イオン化によって生成された試料イオン314を、加熱された向流乾燥ガス流36に抗して毛細管オリフィス44に向かわせる。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化によって生成された試料イオンの混合物は、広がる中性ガス流によって毛細管52のオリフィス44を通って真空に吹き込まれ、質量電荷比分析器3によって質量電荷比が分析される。エレクトロスプレー注入プローブ301を通して試料溶液が導入されると、コロナ放電針324、端板電極37および毛細管入口電極38に印加される電圧値を急速に変化させることによって、エレクトロスプレーのみの操作モード、大気圧化学イオン化のみの操作モードおよびエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化を組合わせた操作モードの間で急速に切替えることができる。すべての操作モードにおいて
、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ300に流入する過剰な気体および蒸気は、排出口325から出る。
【0050】
図19に示された本発明の代替的な実施態様では、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ354は、上で説明されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ300と同じ部材を有している。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ354において、中心線341は、毛細管52の軸線または中心線235の投影を通るが、これに対して所定の角度で配置されている。エレクトロスプレー注入プローブ301は、その延長された軸線がコロナ316の近傍でほぼ大気圧化学イオン化プローブ320の中心線341を通るように配置されている。エレクトロスプレー注入プローブ301の注入管308を通して導入された試料溶液は、霧化されたエレクトロスプレープルーム310を形成する。エレクトロスプレー操作モードおよびエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化を組合わせた操作モードにおいて、エレクトロスプレー荷電液滴および気化しつつあるエレクトロスプレー液滴によって形成されたイオン311は、電界345によって毛細管52のオリフィス44の入口43に向かわせられる。電界345によって加熱された向流乾燥ガス36に抗して移動するエレクトロスプレー荷電液滴は、気化してイオンを生成し、これらのイオンは、電界345によって毛細管オリフィス44の入口43に向かって集束される。スプレー310の一部313は、霧化したスプレープルーム310の推進力のために蒸気流路319(340)の出口端351に入る。蒸気流路319(340)に入るスプレープルーム310の一部313に含まれている液滴は、加熱されたガスおよび試薬イオン流352に抗して移動する。大気圧化学イオン化プローブ320で加熱されたガスまたは蒸気352は、スプレー310の一部313に含まれた液滴の気化を助けて、蒸気流路319(340)の区域350で試料および溶媒蒸気を形成する。図18に示されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ300の実施態様について上述したように、大気圧化学イオン化のみ操作モードおよびエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化を組合わせた操作モードの間、コロナ放電316は、維持される。コロナ放電316は、コロナ放電針324に電圧を印加する一方で、円筒遮蔽電極317を接地電位に維持することによって形成される。代替的に、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化イオン源354との組合せにおいて、非誘電体毛細管または導電性毛細管または真空へのオリフィスが構成されている場合は、円筒電極317に電圧を印加できる。
【0051】
区域347において蒸気流路319(340)内で大気圧化学イオン化によって生成された検体イオン344は、加熱されたガスおよび試薬イオン流352とコロナ放電316からの電界によって蒸気流路319(340)から押し出される。進出する検体イオンは、端板電極37と毛細管入口電極38に印加される電圧によって形成された電界345によって毛細管オリフィス44の入口43に向かわせられる。大気圧化学イオン化プローブ320の軸線341が、エレクトロスプレー注入プローブ301の軸線および毛細管中心線235に対して所定の角度で配置されているため、大気圧化学イオン化によって生成された試料および試薬イオン344は、進入するスプレープルーム313に対して所定の角度にあり直接対向しない軌道で蒸気流路319(340)を出る。所定の角度で配置された大気圧化学イオン化プローブ320は、進入する試料スプレープルームおよび蒸気313と進出する試料イオン、試薬イオンおよび蒸気に対して異なる流動経路と角度を提供する。より高い試料液流量に対してはある程度重なりが生じるにもかかわらず、試料蒸気の種々の入口角度と出口角度および軌道を設けることによって、大気圧化学イオン化によって生成された試料イオンと、進入する試料スプレープルームの部分的に気化した中性液滴との相互作用が減少する。このような相互作用は、大気圧化学イオン化によって生成された試料イオンを中性化して、感度を低下させる。所定の角度で配置された大気圧化学イオン化プローブ320は、試料注入管331を通して導入される試料溶液で大気圧化学イオン化のみのモードを実行するとき、より最適化された性能を提供する。大気圧化学イオン化プローブ320を、毛細管中心線235およびエレクトロスプレー注入プローブ301
の中心線に対して所定の角度で配置すると、試料溶液の流量の広い範囲にわたりエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ354の性能を改善する。大気圧化学イオン化プローブ320とエレクトロスプレー注入プローブ301と毛細管入口43との相対的位置は、試料溶液の種々の流量および組成に対して性能を最適化するために調節可能である。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の実施態様300との組合せについて説明されたように、エレクトロスプレーのみの操作モード、大気圧化学イオン化のみの操作モードおよびエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化を組合わせた操作モードの間の切替えは、コロナ放電針324、端板電極37および毛細管入口電極38に印加される電圧を変えることによって行われる。各々の操作モードの性能を最適化するために、向流乾燥ガス36の流量と温度、シースガス304の流量と温度、および大気圧化学イオン化プローブ320ガスまたは蒸気の流量と温度も変えることができる。更に、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源354を組合わせた種々の操作モードを切替えるときに性能を最適化するために、大気圧化学イオン化プローブ320の注入管331を通して導入される試薬溶液の流量と組成を変化させ、またはオンにし、またはオフにすることができる。
【0052】
図20の質量スペクトル350は、図19に示されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ354と同様に構成されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せを用いて、陽イオン極性エレクトロスプレーのみのモードを実行して得られたものである。水と0.1%ギ酸を含有するメタノールを1:1の割合で混合した溶液に、インドール20pM/μlとインシュリン100pM/μlを添加した試料溶液混合物を、エレクトロスプレー注入プローブ301の注入管308を通して導入した。陽イオン極性エレクトロスプレーのみのモードにおいて、エレクトロスプレー注入プローブ301およびコロナ放電針324は、接地電位で操作され、端板電極37と毛細管入口電極38には、キロボルト負電位が印加される。質量スペクトル350には、ウシインシュリンの多価イオン一連の質量スペクトルピーク351、および高分子化合物のエレクトロスプレーイオン化の特性が含まれている。大気圧化学イオン化によっては、熱的に不安定なウシインシュリンの多価イオン信号は、生成されないであろう。エレクトロスプレーのみの質量スペクトル350では予想された通り、低強度ピーク352が観察される。
【0053】
図21に示された質量スペクトル353は、上述したものと同じエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せを用い同じ試料溶液を導入して、陽極性大気圧化学イオン化のみのモードを実行して得られた。この飛行時間型質量スペクトル353を得るのに先立ち、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ354と同様に構成されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せの操作モードを、エレクトロスプレーのみの操作モードから大気圧化学イオン化のみの操作モードに切替え、同じ試料溶液流を用いた。大気圧化学イオン化のみの操作モードにおいて、コロナ放電316を維持するために、コロナ放電針324に電圧が印加され、端板電極37および毛細管入口電極38に印加される電圧は、エレクトロスプレーイオン化に必要とされる値以下に低められた。質量スペクトル353に含まれている大気圧化学イオン化によって生成されたインドールイオンの質量スペクトルピーク354は、エレクトロスプレーのみのモードで得られた質量スペクトルで観察されるピークよりも有意に高い。質量スペクトル350および353は、本発明によって構成されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ354の拡大された分析的有用性を実証している。本発明は、エレクトロスプレー注入プローブ301を通して試料溶液を導入して、最適化されたエレクトロスプレーのみの操作モード、大気圧化学イオン化のみの操作モード、およびエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化を組合わせた操作モードを急速に切替えることを可能にする。代替的に、大気圧化学イオン化プローブ320の注入管331を通して導入される試料溶液流を用いて大気圧化学イオン化のみの操作を行うことができる。大気圧化学イオン化のための試薬溶液は、大気圧化学イオン化プローブ320の注入管331を通して導入するか、または試料溶液の一部としてエレクトロスプレー注入プローブ301を通して導入することができる。大気圧
化学イオン化のための試薬ガスは、霧化ガス流335または補助ガス流336によって大気圧化学イオン化プローブ320に導入できる。すべての操作モードにおいて最適な性能を達成するために、すべてのガス、蒸気および液体の流量と温度、電圧およびコロナ放電の電流を調節することができる。すべての操作モードにおいて試料溶液の種々の流量と組成に対して最適な性能を達成するために、大気圧化学イオン化プローブ320およびエレクトロスプレー注入プローブ301を調節できる。
【0054】
表3は、本発明によって構成されたエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ354を、標準的な単機能のエレクトロスプレーおよび大気圧化学イオン化と比較した相対的性能を示している。試料溶液は、水と0.1%酢酸を含有するメタノールを1:1の割合で混合した溶液にレセルピン1pg/μlおよびインドール10pg/μlを添加した混合物であり、表3に掲げる試料溶液の流量で注入した。
【0055】
【表3】

図22と図23は、本発明の代替的な実施態様を示し、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化イオン源の組合せ370は、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化イオン源の組合せ354と同様に構成されているが、本発明によって構成された蒸気流路アセンブリ371は、変更されている。図23は、蒸気流路アセンブリ371、エレクトロスプレー導入プローブ301の出口先端387および毛細管オリフィス44の入口43の拡大図である。図6Bに示された伸張された蒸気流路構成と同様に、蒸気流路380内に進入する液滴および蒸気スプレープルーム383の軌道を、進出する大気圧化学イオン化によって生成された試料および試薬イオン384の軌道を更に分離するために蒸気流路380が伸張されている。蒸気流路アセンブリ371の形態は、進入する気化しつつある液滴および蒸気スプレープルーム383が、大気圧化学イオン化プローブ378で加熱されたガスおよび蒸気流381に抗してより深く進入することを可能にする。このプルーム383のより深い進入によって、たとえ高い試料液流量においても効率的な液滴の気化を提供する。蒸気流路アセンブリ371は、コロナ放電針372を取囲んでこれに電気的接続された電極375、部分的に遮蔽する反対電極373、絶縁体374および388を有している。コロナ放電382は、コロナ放電針372に電圧を印加し、これを遮蔽する反対電極373を接地電圧または他の最適化された電圧値で操作することによって維持される。図18および図19で示された本発明の実施態様について説明されたように、蒸気流路38
0内の区域387において大気圧化学イオン化によって生成された試料および試薬イオンは、蒸気流路から出る蒸気またはガス流381、コロナ放電382の電界、および端板電極37と毛細管入口電極38に印加された電圧によって形成される電界385の組合せによって、毛細管オリフィス44の入口43に向かわせられる。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ370における部材の構成によって提供されるように、エレクトロスプレーによって生成されたイオン379と、ガス液滴および蒸気流383と、大気圧化学イオン化によって生成されたイオン384の軌道を更に分離することによって、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化によって生成されたイオンの電荷中性化が最小化され、また質量電荷比分析における試料イオン信号強度の減少を招く可能性のある、気化する液滴とイオンとの相互作用が最小化される。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ370でエレクトロスプレーのみのモード、大気圧化学イオン化のみのモード、およびエレクトロスプレーと大気圧化学イオン化を組合わせたモードの操作は、エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源を組合せた実施態様300および354について説明された操作と同様である。エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源の組合せ370の設計および操作によって、すべての操作モードにおいて最適な性能を達成するために、加熱されたガスまたは蒸気381の流量、組成および温度、シースガス304の流量と温度、向流乾燥ガス36の流量と温度、印加される電圧、および大気圧化学イオン化プローブ378とエレクトロスプレー注入プローブ301の相対的位置を有するすべての変数が調節可能である。
【0056】
上述の好適な実施態様は、本発明の原理とその応用の最良の例示を提供し、ひいては当業者が本発明を様々な実施態様において、かつ、想到された特定の使用に適する種々の修正を加えて利用できるようにするために説明されたものと理解されなければならない。このようなすべての修正および変更は、添付された特許請求の範囲が合法的かつ公正に認められる幅に従って解釈されたとき、これらの請求項によって決定される発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学種をイオン化するために、大気圧化学イオン化注入プローブとイオン源とを有する化学種イオン化装置であって、
前記イオン源は、
試料溶液霧化器と;
霧化された試料溶液を気化させるための加熱器と;
先端を備えたコロナ放電針と、コロナ放電電界を部分的に遮蔽し、かつ、外部電界が前記蒸気流路の出口端に進入できるように成形された少なくとも1個の反対電極とを有する蒸気流路と
を有し、
前記蒸気流路は、
壁と;
圧を有する端板電極と;
前記コロナ放電針に電圧を印加するための手段と
を有し、
前記少なくとも1個の反対電極と前記端板電極とは、前記先端でコロナ放電を形成し、前記蒸気流路に進入する電界を提供することによって、大気圧化学イオン化によって生成されたイオンを前記蒸気流路の壁から離れる方向に集束させる、化学種イオン化装置。
【請求項2】
前記コロナ放電針の位置は、調節可能である、
請求項1記載の化学種イオン化装置。
【請求項3】
前記試料溶液霧化器は、1個以上の溶液霧化器注入アセンブリを有する、
請求項1記載の化学種イオン化装置。
【請求項4】
前記試料溶液霧化器は、2個の溶液霧化器注入アセンブリを有する、
請求項1記載の化学種イオン化装置。
【請求項5】
前記化学種イオン化装置は更に、前記大気圧化学イオン化源の上流側に位置するボール形分離器を有する、
請求項1記載の化学種イオン化装置。
【請求項6】
前記化学種イオン化装置は更に、前記大気圧化学イオン化イオン源内に構成された前記大気圧化学イオン化プローブに界接している質量電荷比分析器を有する、
請求項1記載の化学種イオン化装置。
【請求項7】
前記化学種イオン化装置は更に、前記大気圧化学イオン化によって生成されたイオンを真空に搬送するための手段を有する、
請求項6記載の化学種イオン化装置。
【請求項8】
前記化学種イオン化装置は更に、前記加熱器の温度を調節するための手段を有する、
請求項1記載の化学種イオン化装置。
【請求項9】
前記化学種イオン化装置は更に、前記大気圧化学イオン化プローブへの補助的なガス注入を有する、
請求項1記載の化学種イオン化装置。
【請求項10】
前記イオン源は、ガス圧下で操作し、更に前記ガス圧を制御するための手段を有する、
請求項1記載の化学種イオン化装置。
【請求項11】
前記質料分析器は、前記大気圧化学イオン化源に軸方向に整合されたエレクトロスプレー注入プローブを有する、
請求項6記載の化学種イオン化装置。
【請求項12】
前記質料分析器は、前記大気圧化学イオン化源に軸方向に整合されないエレクトロスプレー注入プローブを有する、
請求項6記載の化学種イオン化装置。
【請求項13】
前記質料分析器は、前記大気圧化学イオン化源内に噴霧するように構成されたエレクトロスプレー注入プローブを有する、
請求項6記載の化学種イオン化装置。
【請求項14】
化学種をイオン化するために多機能大気圧化学イオン化源を有する化学種イオン化装置であって、前記多機能大気圧化学イオン化源は、
部分的に遮蔽されたコロナ放電区域を有する大気圧化学イオン化プローブと、
少なくとも1個の試料注入プローブと
を備えることを特徴とする、化学種イオン化装置。
【請求項15】
前記試料注入プローブは、少なくとも1個の固体試料注入プローブを有する、
請求項14記載の化学種イオン化装置。
【請求項16】
前記試料注入プローブは、液体試料注入プローブを有する、
請求項14記載の化学種イオン化装置。
【請求項17】
前記試料注入プローブは、液体試料注入プローブを有する、
請求項15記載の化学種イオン化装置。
【請求項18】
前記試料注入プローブは、ガス試料注入プローブを有する、
請求項14記載の化学種イオン化装置。
【請求項19】
前記試料注入プローブは、ガス試料注入プローブを有する、
請求項15記載の化学種イオン化装置。
【請求項20】
前記試料注入プローブは、ガス試料注入プローブを有する、
請求項16記載の化学種イオン化装置。
【請求項21】
前記化学種イオン化装置は更に、前記大気圧化学イオン化イオン源内に構成された前記大気圧化学イオン化プローブに界接している質量電荷比分析器を有する、
請求項14記載の化学種イオン化装置。
【請求項22】
前記化学種イオン化装置は更に、前記大気圧化学イオン化プローブへの補助的なガス注入口を有する、
請求項14記載の化学種イオン化装置。
【請求項23】
化学種をイオン化する化学種イオン化装置であって、前記化学種イオン化装置は、
エレクトロスプレーと大気圧化学イオン化源との組合せと;
エレクトロスプレー注入プローブと;
蒸気流路内に構成されたコロナ放電針を具備する大気圧化学イオン化プローブであって、前記蒸気流路は、コロナ放電電界を部分的に遮蔽し出口端に開口を備えるように構成さ
れていることと;
前記エレクトロスプレー注入プローブを、前記蒸気流路内に噴霧するように向けることと;
端板電極と;
真空へのオリフィスと
を有することを特徴とする、化学種イオン化装置。
【請求項24】
前記エレクトロスプレー注入プローブは、前記大気圧化学イオン化源に軸方向に一直線をなしている、
請求項23記載の化学種イオン化装置。
【請求項25】
前記エレクトロスプレー注入プローブは、前記大気圧化学イオン化源に軸方向に一直線をなしていない、
請求項23記載の化学種イオン化装置。
【請求項26】
前記化学種イオン化装置は更に、前記化学種イオン化装置を組入れた質料分析器を有する、
請求項23記載の化学種イオン化装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図22】
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【図23】
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【図3A】
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【図3B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−522259(P2011−522259A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511837(P2011−511837)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/045573
【国際公開番号】WO2009/146396
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(509329888)パーキンエルマー ヘルス サイエンス インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES INC.
【Fターム(参考)】