説明

大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oレベルの考慮に関連する方法、システム、およびポリマー物質

【課題】大気圧窒素誘電体−バリア放電を利用してポリマー物質の表面を処理する方法を提供。
【解決手段】大気圧窒素誘電体−バリア放電処理装置内のH2Oを測定および制御することによって、大気圧窒素誘電体−放電が、予め定められた量よりも低いH2Oのレベルを有するように維持され、望ましい特性を生じるポリマー物質のための表面処理をもたらすことができる。H2Oレベルは、予め定められた量によってまたは得られたポリマー表面の分析などの別のパラメータによって測定および制御されてもよい。例えば、ポリマー表面には、処理されたポリマーのこれらの分析に基づいて処理装置内のH2Oレベルを制御するなどによって、添加された窒素対添加された酸素の最適な比および/または洗浄後の前進接触角および未洗浄の前進接触角に基づいた最適な安定性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー物質の表面を処理するために用いられた大気圧窒素誘電体−バリア放電に関する。より詳しくは、本発明は、処理装置の大気圧窒素誘電体−バリア放電のH2Oレベルの作用の考慮に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー物質への大気圧窒素誘電体−バリア放電の印加は、ポリマー物質の表面特性を改良する公知の費用効果が高い方法である。本明細書中で用いられるとき、ポリマー物質は、フィルム、フォーム、不織材料、三次元物体などのいずれのポリマー材料をも含める。本明細書中で用いられるとき、大気圧窒素誘電体−バリア放電は概して、活性窒素種(フリーラジカル、イオン、または電気または振動励起状態など)が窒素含有分子による電子衝撃によって生み出される、いずれかの方法を指す。
【0003】
また、本明細書中で用いられるとき、大気圧窒素誘電体−バリア放電は多くの他の用語によって公知である。これらの用語には、窒素コロナ、窒素コロナ放電、窒素バリア放電、大気圧窒素プラズマ、大気圧窒素グロー放電、大気圧非平衡窒素プラズマ、静音窒素放電、大気圧部分イオン化窒素ガス、窒素フィラメント放電、直接または遠隔大気圧窒素放電、外部保持または自己保持大気圧窒素放電などがあるがそれらに限定されない。
【0004】
大気誘電体−バリア放電によって達成される改良には、ポリマー物質の表面への窒素の付着が挙げられる。表面の湿潤性が大幅に改善され、それによって、表面が処理されないままである場合よりもポリマー物質をより多くの用途に有用にする。
【0005】
しかしながら、大気圧窒素誘電体−バリア放電の従来の印加には欠点がある。例えば、ポリマーの表面の添加された窒素対添加された酸素の比が、望ましいよりも小さいことがある。この比において用いられるときの添加された窒素および添加された酸素は、特に放電プロセスによってポリマー表面に付着される、それぞれ、原子窒素および原子酸素を指す。別の欠点として、処理されたポリマー表面上の水または別の液体の接触角が、望ましいよりも大きいことがある。さらに、ポリマーの表面は、水または他の液体への暴露に敏感性であることがあり、それによって水または他の液体は、ポリマーの湿潤性を低減させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、処理装置内に存在するH2Oレベルを考慮することによってこれらの問題および他の問題に対処する。処理装置内のH2Oレベルを最小にすることによって、放電によって付着される窒素の量を増加させること、水への暴露に対する表面特性の過敏性を減少させること、および湿潤性を改良することなどによって、処理された表面の特性を改良することが発見された。必要に応じてポリマーの表面特性を生じさせるためにH2Oレベルを測定および制御してもよい。さらに、H2Oレベルは、予め定められた量以下に維持されてもよく、および/または処理装置を出るポリマー物質の分析に応じて調節されてもよい。
【0007】
1つの実施形態は、大気圧窒素誘電体−バリア放電によって処理された表面を有するポリマー物質である。表面は、1.5以上の、添加された窒素対添加された酸素の比を有する。また、表面は、洗浄後の前進水接触角と5度以下異なる未洗浄の前進水接触角を有する。
【0008】
別の実施形態は、ポリマー物質の表面を大気圧窒素誘電体−バリア放電で処理する方法である。前記方法は、大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程を含む。前記方法は、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを測定および制御する工程をさらに含む。大気圧窒素誘電体−バリア放電がポリマー物質の表面に印加される。
【0009】
別の実施形態は、以下の工程から得られる処理された表面を含むポリマー物質である。大気圧窒素誘電体−バリア放電が発生される。大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルが測定および制御され、大気圧窒素誘電体−バリア放電がポリマー物質の表面に印加される。
【0010】
別の実施形態は、ポリマー物質の表面を大気圧窒素誘電体−バリア放電で処理する方法である。前記方法は、大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程を含む。前記方法は、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを予め定められた量よりも少なく維持する工程をさらに含む。大気圧窒素誘電体−バリア放電がポリマー物質の表面に印加される。
【0011】
別の実施形態は、以下の工程から得られる処理された表面を含むポリマー物質である。大気圧窒素誘電体−バリア放電が発生される。大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルが、予め定められた量よりも少なく維持され、大気圧窒素誘電体−バリア放電がポリマー物質の表面に印加される。
【0012】
別の実施形態は、ポリマー物質の表面を大気圧窒素誘電体−バリア放電で処理する方法である。前記方法は、大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程と、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質の表面に印加して、処理された表面を形成する工程とを含む。前記方法は、前記処理された表面の未洗浄の前進接触角と洗浄後の前進接触角との間の差を決定する工程をさらに含む。前記差が予め定められた差より大きいとき、次いで前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを減少させ、次いで、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電を後続のポリマー物質の表面に印加する。
【0013】
別の実施形態は、ポリマー物質の表面を大気圧窒素誘電体−バリア放電で処理する方法である。前記方法は、大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程と、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質の表面に印加して、処理された表面を形成する工程とを含む。前記方法は、前記処理された表面の添加された窒素対添加された酸素の比を決定する工程をさらに含む。前記比が予め定められた比より小さいとき、大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを減少させ、次いで、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電を後続のポリマー物質の表面に印加する。
【0014】
別の実施形態は、大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質に印加するためのシステムである。前記システムは、窒素ガス入力部と、前記窒素ガス入力部に接続された内部を有する処理装置筐体とを備える。前記内部は、大気圧窒素誘電体−バリア放電を含有し、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電と接触しているポリマー物質を含有する。処理装置筐体は、窒素ガス入力部を通って窒素ガスの連続した流れを受容する。前記システムは、処理装置筐体の内部のH2Oレベルを測定するために配置されたH2Oセンサーをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】存在するH2Oレベルに対して考慮がなされている、大気圧窒素誘電体−バリア放電を利用するポリマー表面処理方法およびシステムの1つの例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態は、大気圧窒素誘電体−バリア放電によって処理されたポリマー物質の表面特性を改良するためにH2Oレベルを考慮する。本明細書中で用いられるとき、H2Oレベルという用語は、H2Oの体積濃度を指す。これらの実施形態は、H2Oレベルの測定および制御によっておよびH2Oレベルを予め定められた量よりも低く維持することによってなど、様々な方法でH2Oレベルを考慮する。H2Oレベルの考慮は、ほかの場合なら可能でない特定の範囲内の表面特性を有するポリマー物質の製造を可能にする。
【0017】
図1は、大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oレベルを考慮するために使用されてもよいポリマー物質処理方法およびシステム100の例を図表で示す。図1の方法は、処理装置筐体106内に大気圧窒素誘電体−バリア放電を生じさせる工程と、この放電をポリマー物質102に印加して表面特性を改良する工程とを含む。前記方法は、処理装置筐体106内の付加的な物質、すなわち酸素およびH2Oの存在をモニタする工程と、必要なときにこれらの物質のレベルを変えることによって対応する工程とをさらに含む。
【0018】
処理装置筐体の設計は変わってもよい。しかしながら、処理装置筐体106は前記方法への入力を受容することができるべきであり、大気の漏れを最小にしながら、処理されたポリマー物質を出力として提供できるのがよいことは理解されよう。この漏れを最小にすることによって、処理装置106内の酸素およびH2Oなどの物質の制御を可能にする。
【0019】
窒素ガスは窒素ガス供給源104から提供され、前記方法は、窒素ガスを1つの入力として受容する。窒素供給源104は典型的に、極低温によって誘導された窒素ガスを前記方法に提供する。この窒素供給源104は、処理装置筐体106の内部へ入力部を通って窒素ガス流量の制御を可能にする弁を設けられてもよい。窒素ガスを用いて処理装置106の内部をパージし、酸素およびH2Oなどの物質の制御を可能にする。処理装置106内の窒素パージガスの体積の増加は、他の物質のレベルの減少をもたらす。従って、H2Oのレベルを減少させることが必要であるとき、1つの選択肢は、窒素供給源104の弁をさらに開けて処理装置106への流量を増加させ、および/または付加的な量の窒素パージガスが処理装置106に入るまで処理方法の開始を遅らせることである。
【0020】
窒素ガスは、処理装置106に入る前に窒素乾燥システム110に通されてもよい。窒素乾燥システム110は、窒素ガスに存在するH2O含有量を低減する。窒素乾燥システム110の例には、活性化炭素トラップ、分子篩、および標準商用脱水装置などがある。処理装置106内に存在するH2Oのレベルを制御する代替のまたは付加的な方法として所望の場合に窒素乾燥システム110が窒素ガス110に適用されてもよい。
【0021】
また、プロセスは、別の入力として、典型的に処理されていない、ポリマー物質102を受容する。このプロセスのポリマー物質102は、ポリオレフィン、例えばポリプロピレンおよびポリエチレン、およびエチレンとポリプロピレンとのコポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどがあるがそれらに限定されない任意の様々なものであってもよい。大気圧窒素誘電体−バリア放電に暴露するためにポリマー物質102を処理装置106の内部に充填する。放電がポリマー物質102の表面と相互作用して窒素を表面に付着させ、湿潤性を改良する。具体的には、処理された表面上の液体の接触角は大幅に低減される。
【0022】
ポリマー物質102は外部位置から処理装置106内に充填または移されるので、ポリマー物質102自体は、処理装置106の内部に導入されるH2Oの供給源である。したがって、ポリマー物質102は、処理装置106に入る前に物質乾燥システム108を通過されてもよい。ポリマー物質乾燥システム108の例には、赤外線加熱ランプ、乾燥空気または乾燥窒素環境を有する付属チャンバ、または熱風炉などがある。この物質乾燥システム108は、処理装置106内に存在するH2Oのレベルを制御する代替のまたは付加的な方法として所望の場合にポリマー物質102に適用されてもよい。
【0023】
処理装置106は、酸素センサー112とH2Oセンサー114との両方によってこの例においてモニタされる。たいていのポリマー処理プロセスにおいて、両方の物質をモニタすることと、処理装置106内の各々のレベルを制御することもまた、望ましいことが見出されている。酸素センサー112の例は、マサチューセッツ州、ノーウッドのサーヴォメックス(Servomex,Norwood,MA)製のモデル4100ガス純度分析器である。H2Oセンサー114の例は、コネチカット州、ウェザーフィールドのカーン・インストルメンツ(Kahn Instruments,Wethersfield,CT)のサーメットII(Cermet II)湿度計である。これらの分析器は、体積による百万分率(「ppm」)の出力を提供する。
【0024】
酸素センサー112およびH2Oセンサー114の出力は、制御装置116に中継されてもよい。制御装置116は、プログラム可能型論理デバイスなどの自動化電子制御装置あるいは人間のオペレーターなど、様々な形で例示することができる。制御装置116は、酸素およびH2Oレベルを分析して低減が必要であるかどうか決定する。例えば、与えられた処理プロセスが、H2Oのレベルが特定の範囲内にあるかまたは特定のレベルより低く維持されることを必要とする場合がある。H2Oのレベルが範囲の上限に近づいているかまたは特定のレベルを超えようとしているとき、制御装置116は、H2Oレベルの低減を行うことができる。
【0025】
2Oレベルの低減を行う例には、供給源104の弁をさらに開けることによって窒素ガス流量を増加させること、窒素乾燥システム110を設置またはさらに作動させることによって窒素ガス乾燥の量を増加させること、および/または物質乾燥システム108を設置またはさらに作動させることによって行われたポリマー物質乾燥の量を増加させることなどがあるがそれらに限定されない。おそらくより関わりが深いが、処理装置106への大気漏れの低減は、H2Oレベルの低減の別の例である。
【0026】
処理装置106から出力される処理されたポリマー物質118を検査システム120によって分析することができ、H2Oレベルの作用を考慮することができる。検査システム120は、酸素および炭素などの他の元素に対して窒素の存在を決定するためのX線光電子分光法(すなわち、XPSまたはECSA)などの様々な試験を含んでもよい。検査システム120は、処理された物質118を水または別の液体で洗浄する前および後の両方に行われた前進および/または後退接触角についての水または別の液体の接触角の測定など、さらに別の試験も含んでよい。
【0027】
次に、検査システム120からの試験の結果を制御装置116にフィードバックしてもよく、そこで、処理されたポリマー物質118が望ましい表面特性を有するかどうかに基づいてH2Oおよび/または酸素のレベルを制御する処置をとることができる。例えば、分光分析法によって測定されたときの添加された窒素対添加された酸素の比が望ましいよりも小さい場合、それは、湿潤性および接着力が良好でない可能性が高いことを示すが、H2Oのレベルが上述の様々な方法の1つまたは複数によって低減されてもよい。別の例として、前進または後退接触角が大きすぎる場合、それは、湿潤性および接着力が不十分であることを直接に示すが、H2Oのレベルが低減されてもよい。さらに、未洗浄の前進接触角(すなわち、物質が洗浄される前に測定された前進接触角)と洗浄後の前進接触角(すなわち、物質が洗浄された後に測定された前進接触角)との間の差が大きすぎる場合、それは、表面が水などの液体への暴露に過度に敏感性であることを示すが、H2Oのレベルが低減されてもよい。
【0028】
ポリマー物質の処理時のH2Oの様々なレベルの作用が検討され、これらの作用は、以下に記載された表1に提供されるように挙げられている。ポリプロピレンフィルムが、処理される当該ポリマー物質として選択された。特に、幅30cm、厚さ0.05mmのポリプロピレンフィルムが、360,000の重量平均分子量および163℃のピーク融点を有するホモポリマー樹脂を用いて熱押出および後続の配向によって製造された。次に、フィルムに大気圧窒素誘電体−放電を印加した。
【0029】
大気圧窒素誘電体−放電による処理の間、ポリプロピレンフィルムは、ウィスコンシン州、ユニオングローブのアメリカンローラー(American Roller,Union Grove,Wisconsin)によって製造されたCL500セラミック誘電体の厚さ2mmの層でコーティングされた直径25cm、面幅50cmの鋼接地ロールと接触保持された。この「被覆ロール」電極配置において、印加された電極は、1.5mmの電極間隙によって接地ロールから隔てられた2つの200cm2、33cm面幅ステンレス鋼シューから成った。規準化放電エネルギーは1.7J/cm2に固定されたが、それは940Wの放電パワーおよび10m/分のフィルム速度に相当した。
【0030】
処理装置筐体を、極低温によって誘導された窒素ガスの約1500リットル/分で連続的にフラッシし、処理装置内の分子状酸素の濃度を10ppm未満に維持した。処理装置内に存在する酸素の微量は、主に、処理装置筐体内への大気漏れの結果であった。処理装置内のH2Oの濃度は、液体の水の制御量を処理装置筐体内に入れることによって変化された。H2Oは20ppmから4000ppm超まで変化され、非常に広い範囲にわたって作用の決定を可能にした。
【0031】
処理されたポリプロピレンフィルムの試料は、X線光電子分光法(XPSまたはECSA)によって分析された。ECSAスペクトルは、90度の表面に対する電子放出極角においてモノクロAl Kα光子供給源を用いてクラトス・アクシス・ウルトラ(Kratos Axis Ultra)スペクトロメータで得られた。スペクトルは、炭化水素について観察された284.6eV炭素1sレベルに対して参照された。未処理のポリプロピレン上に酸素は検出されず、いずれの処理されたポリプロピレン上にも窒素、炭素、および酸素以外の元素は検出されなかった。添加された酸素対添加された炭素、添加された窒素対添加された炭素、および添加された窒素対添加された酸素などの原子比を高解像度ESCAスペクトルから決定した。
【0032】
また、処理されたポリプロピレンの試料を水接触角の測定のために分析した。脱イオン濾過水の空気中での前進および後退接触角の測定をサーモ・カーン(Thermo Cahn)DCA−322動的接触角計測器でウィルヘルミー(Wilhelmy)プレート法を用いて実施した。接触角を測定するためのウィルヘルミープレート法の詳細は公知であり、C・M・チャン(C−M Chan)著の「Polymer Surface Modification and Characterization」(1994年)またはJournal of Adhesion Science and Technology、第17巻、第5号、643〜653ページ(2003年)などの様々な文献に見出される。サーモ・カーン(Thermo Cahn)計測器を用いて制御された方法で、処理されたフィルムを脱イオン濾過水で洗浄した。水以外の液体が接触角の測定のためにおよびポリマー物質の洗浄のために用いられてもよいことは理解されよう。しかしながら、以下の表1に示されたデータは、接触角の測定およびポリマー物質の洗浄の両方について水の使用に基づいている。
【0033】
ウィルヘルミープレート法によって水接触角を測定する間、表面の洗浄は、ポリプロピレンフィルムを水槽に圧入し、フィルムを2分間そこに保持し、次いでフィルムを取り出すサイクルによって行われた。洗浄の約1分後、前進および後退水接触角の第2の測定が実施され、洗浄後の測定を行った。後退水接触角は常に、前進水接触角の測定の間に浸漬のために、洗浄された表面で測定されたので、洗浄後の後退水接触角と未洗浄の後退水接触角との間の差はない。
【0034】
初期または未洗浄の前進接触角の測定(第1のウィルヘルミーサイクル)と洗浄後の前進接触角の測定(第2のウィルヘルミーサイクル)との間の差は、物質の処理された表面の、水への暴露に対する敏感性を定量化する。未洗浄の前進接触角と洗浄後の前進接触角との間にほとんどまたは全く差を示さない試料は、水への暴露に敏感性でないと考えられる。
【0035】
以下の表1は、処理装置内のH2Oレベルを変えることの作用を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
これらの測定について、比の標準偏差は0.01〜0.02である。水接触角の測定の標準偏差は2〜3度である。水レベルの標準偏差は10%である。特定の値の前後の比への一切の言及または別の特定の値の前後の水接触角の差への一切の言及は、相応する標準偏差のプラスマイナスを伴って少なくとも表示された値を包含するように意図される。
【0038】
このデータは、H2Oレベルが約200ppmを上回るとき、窒素対炭素および窒素対酸素の比が減少することを示す。さらに、H2Oレベルがこの量を上回るとき、未洗浄の前進水接触角と洗浄後の前進水接触角の測定の間の差は、後退水接触角が増加する間、増加する。このため、放電においてのH2Oのレベルの増加は、ポリマー表面への有効な窒素の付着を減少させ、水への暴露に対してより敏感性にし、一般により好ましくない湿潤性をもたらす。
【0039】
特に、200ppm以下のH2Oレベルについては、得られたフィルムは、5度未満の未洗浄の水接触角と洗浄後の水接触角の測定の間の差を有したまま、少なくとも1.5の添加された窒素対添加された酸素の比を有する、優れた特性を有した。さらに、H2Oのレベルが100ppmに低減されたとき、後退水接触角がゼロに低下した。H2Oのレベルが55ppmに維持されたとき、得られたフィルムは、未洗浄の水接触角と洗浄後の水接触角との差がないままで、2の添加された窒素対添加された酸素の比を有する、優れた特性を有した。
【0040】
これらの結果に基づいて、図1の制御装置116によって論理を適用して処理されたポリマー表面のための所望の結果を達成することができる。特に、制御装置116は、200ppm以下など、予め定められたレベルにおいて処理装置106内のH2Oレベルを維持することによって多くの目的のために望ましい結果を達成することができる。特定の目的のためにより良い場合がある結果は、50ppm以下に処理装置内のH2Oレベルを維持することによって得られる場合がある。さらに、制御装置116は、特定の範囲にわたってH2Oレベルを制御および変化させて、その全体にわたってポリマー物質の特性の変化などの他の結果を達成することができる。さらに、制御装置116は、得られた物質が実際に所望の結果を達成しているかどうか、例えば添加された窒素対添加された酸素の比が少なくとも1.5など、十分に大きいかどうか、または洗浄後の接触角と未洗浄の接触角との間の差が、水接触角について5度以下など、十分に小さいかどうかの測定に基づいて、H2Oレベルを調節することができる。
【0041】
本発明はその様々な実施形態を参照して特に示され、説明されたが、形態および詳細において様々な他の変更を本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく実施できることは当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が、
約1.5以上の、添加された窒素対添加された酸素の比と、
洗浄後の前進水接触角と約5度以下異なる未洗浄の前進水接触角とを有する、大気圧窒素誘電体−バリア放電によって処理された表面を含むポリマー物質。
【請求項2】
前記表面が約0度の後退水接触角をさらに有する、請求項1に記載のポリマー物質。
【請求項3】
ポリプロピレンをさらに含む、請求項1に記載のポリマー物質。
【請求項4】
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電が、予め定められた量よりも低く維持されたH2Oレベルを含有する、請求項1に記載のポリマー物質。
【請求項5】
大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを測定および制御する工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質の表面に印加する工程とを含む、ポリマー物質の表面を大気圧窒素誘電体−バリア放電で処理する方法。
【請求項6】
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電を印加する工程が、前記表面に約1.5以上の、添加された窒素対添加された酸素の比をもたせる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー物質がポリプロピレンフィルムである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
2Oの前記レベルを測定および制御する工程が、H2Oレベルが予め定められた量を超えるかどうか測定する工程と、前記H2Oレベルが前記予め定められた量を超えるとき、H2Oレベルの低減を実施する工程とをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記予め定められた量が200ppm以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記H2Oレベルの低減を実施する工程が、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電への窒素パージガス流を増加させる工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記H2Oレベルの低減を実施する工程が、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に供給されている窒素パージガスに行われた乾燥の量を増加させる工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記H2Oレベルの低減を実施する工程が、処理前に前記ポリマー物質に行われている乾燥の量を増加させる工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを測定および制御する工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質の表面に印加する工程とから得られた処理された表面、を含むポリマー物質。
【請求項14】
前記処理された表面が、約1.5以上の、添加された窒素対添加された酸素の比および洗浄後の前進水接触角と約5度以下異なる未洗浄の前進水接触角を有する、請求項13に記載のポリマー物質。
【請求項15】
前記表面が約0度の後退水接触角をさらに有する、請求項13に記載のポリマー物質。
【請求項16】
ポリプロピレンをさらに含む、請求項13に記載のポリマー物質。
【請求項17】
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電が、200ppmよりも低く維持されたH2Oレベルを有する、請求項13に記載のポリマー物質。
【請求項18】
大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを予め定められた量よりも少なく維持する工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質の表面に印加する工程とを含む、ポリマー物質の表面を大気圧窒素誘電体−バリア放電で処理する方法。
【請求項19】
前記予め定められた量が200ppm以下である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記予め定められた量が50ppm以下である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電を印加する工程が、前記表面に約1.5以上の、添加された窒素対添加された酸素の比をもたせる工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー物質がポリプロピレンフィルムである、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
2Oの前記レベルを前記予め定められた量よりも低く維持する工程が、H2Oレベルが前記予め定められた量を超えるとき、H2Oレベルの低減を実施する工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを予め定められた量よりも少なく維持する工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質の表面に印加する工程とから得られた処理された表面、を含むポリマー物質。
【請求項25】
前記処理された表面が、1.5以上の、添加された窒素対添加された酸素の比および洗浄後の前進水接触角と約5度以下異なる未洗浄の前進水接触角を有する、請求項24に記載のポリマー物質。
【請求項26】
前記表面が約0度の後退水接触角をさらに有する、請求項24に記載のポリマー物質。
【請求項27】
ポリプロピレンをさらに含む、請求項24に記載のポリマー物質。
【請求項28】
前記予め定められた量が200ppm以下である、請求項24に記載のポリマー物質。
【請求項29】
大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質の表面に印加して、処理された表面を形成する工程と、
前記処理された表面の未洗浄の前進接触角と洗浄後の前進接触角との間の差を決定する工程と、
前記差が予め定められた差より大きいとき、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを減少させ、次いで、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電を後続のポリマー物質の表面に印加する工程とを含む、ポリマー物質の表面を大気圧窒素誘電体−バリア放電で処理する方法。
【請求項30】
前記未洗浄の前進接触角が未洗浄の前進水接触角であり、前記洗浄後の前進接触角が洗浄後の前進水接触角であり、前記予め定められた差が約5度以下である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記処理された表面の後退水接触角が0より大きいかどうか決定する工程と、前記後退水接触角が約0より大きいとき、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oの前記レベルを減少させる工程とをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電を前記ポリマー物質の前記表面に印加するときにH2Oレベルを予め定められた量よりも低く維持して、前記処理された表面を形成する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
大気圧窒素誘電体−バリア放電を発生させる工程と、
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質の表面に印加して、処理された表面を形成する工程と、
前記処理された表面の添加された窒素対添加された酸素の比を決定する工程と、
前記比が予め定められた比より小さいとき、大気圧窒素誘電体−バリア放電に存在するH2Oのレベルを減少させ、次いで、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電を後続のポリマー物質の表面に印加する工程とを含む、ポリマー物質の表面を大気圧窒素誘電体−バリア放電で処理する方法。
【請求項34】
前記予め定められた比が約1.5である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記大気圧窒素誘電体−バリア放電を前記ポリマー物質の前記表面に印加するときにH2Oレベルを予め定められた量よりも低く維持して、前記処理された表面を形成する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
窒素ガス入力部と、
前記窒素ガス入力部に接続された内部を有する処理装置筐体であって、前記内部が、大気圧窒素誘電体−バリア放電を含有し、前記大気圧窒素誘電体−バリア放電と接触しているポリマー物質を含有する、前記窒素ガス入力部を通って窒素ガスの連続した流れを受容する処理装置筐体と、
前記処理装置筐体の前記内部のH2Oレベルを測定するために配置されたH2Oセンサーと、を含む、大気圧窒素誘電体−バリア放電をポリマー物質に印加するためのシステム。
【請求項37】
前記H2Oセンサーによって決定されたときの前記処理装置筐体内のH2Oの前記レベルを制御するための手段をさらに含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
2Oの前記レベルを制御するための前記手段が窒素ガス供給源と処理装置との間の弁を含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
2Oの前記レベルを制御するための前記手段が窒素ガス乾燥システムを含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記窒素ガス乾燥システムが活性化炭素トラップを含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記窒素ガス乾燥システムが脱水システムを含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記窒素ガス乾燥システムが分子篩を含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項43】
2Oの前記レベルを制御するための前記手段がポリマー物質乾燥システムを含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項44】
前記ポリマー物質乾燥システムが赤外ランプを含む、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記ポリマー物質乾燥システムが、乾燥環境を含有する付属チャンバを含む、請求項43に記載のシステム。
【請求項46】
前記ポリマー物質乾燥システムが熱風炉を含む、請求項43に記載のシステム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−52120(P2012−52120A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−222128(P2011−222128)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2007−520420(P2007−520420)の分割
【原出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】