説明

大流量エッジ・ブリーザー及びその方法

【課題】複合部品の製造時にはエッジ・ブリーザーが配置されるが、熱及び圧力によって圧縮されて吸気が妨げられることがある。そのため、複合部品を効率よく製造するためには、復元力を有する大流量エッジ・ブリーザーが必要となる。
【解決手段】部品を処理する真空バッグ用のブリーザーは、部品の周囲に配置された復元力のある材料によるスリーブを含む。その結果、大流量通気特性を保持し、熱及び圧縮圧が除かれると、実質的に圧縮されていない元の形状に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、複合部品の製造に使用される装置と補給品に関し、より具体的には複合レイアップの真空処理に使用される大流量エッジ・ブリーザーを扱う。
【背景技術】
【0002】
複合部品の製造時には、密閉された真空バッグによる真空下で後処理される部品レイアップのエッジの周囲にエッジ・ブリーザーが配置されることがある。ブリーザーは、圧縮及び硬化処理サイクル時に空気及び揮発性物質を逃がすように、部品レイアップ末端部の周囲に概して一様な通気路を提供する。部品の空隙率を減らし、部品の性能を高めるためには、空気及び揮発性物質の除去が望ましい。
【0003】
真空バッグに熱及び圧力が印加されると、空気及び揮発性物質を除去するエッジ・ブリーザーの能力は低下することがあり、真空バッグはエッジ・ブリーザーを圧縮する傾向があるため、エッジ・ブリーザーを介しての吸気が妨げられること、及び/又はエッジ・ブリーザーが真空圧によって隔絶されることがある。既知のエッジ・ブリーザーは印加される圧縮圧に反応する十分な復元力を有していないことがあるため、熱及び圧力を取り除いた後も、流量が低下したままとなることがある。このようなエッジ・ブリーザーはポリエステル又はナイロン、様々な重量の不織布材料、及び特定用途向けに定寸された繊維ガラス織布を含むことがある。復元力が限定的で処理サイクル後は圧縮されたままに留まる傾向があるため、このような従来のエッジ・ブリーザーは熱及び圧力下で流量の低下が起こりやすいため、再使用できないことがある。
【0004】
したがって、圧縮圧への抵抗に不可欠となる復元力を有する大流量エッジ・ブリーザーが必要であり、これにより硬化サイクル時に部品レイアップから空気及び揮発性物質を高い流量率で逃がすことができる。また、再使用可能な、及び/又は複数の処理サイクルで使用可能なエッジ・ブリーザーの改良が必要となる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、真空バッグに熱及び圧力が印加される場合でも、部品レイアップから空気及び揮発性物質を取り除くための大流量エッジ・ブリーザーを提供する。このブリーザーは、印加された真空圧によってエッジ・ブリーザーが隔絶される状態を減らす又はなくすことができる。エッジ・ブリーザーは、真空バッグ処理コンポーネントの組立時に容易に導入することが可能で、ブリーザー材料の消耗を減らすことができる。処理サイクル後も、エッジ・ブリーザーはその復元力の結果として大流量通気特性を保持し、熱及び圧縮圧が取り除かれると、実質的に圧縮されていない元の形状に戻る。したがって、エッジ・ブリーザーは特定部品の製造に要する複数の処理サイクルで使用すること、及び/又は連続的な硬化作業で複数の部品の硬化に使用することが可能である。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、エッジ・ブリーザーは、部品のエッジの周囲に配置されるように適用される材料のスリーブを含む、複合部品の真空処理に提供される。材料のスリーブは実質的に多孔質であり、部品に真空が印加された場合には、空気及び揮発性物資が通過できる多数の隙間を含んでいる。材料のスリーブは熱可塑性物質で編み上げられた繊維を含んでいてもよい。
【0007】
別の有利な実施形態によれば、複合部品を処理するためのブリーザーは、復元力のある編み上げられた繊維で形成されたスリーブを含む。繊維は熱可塑性物質を含んでいてもよい。スリーブは、それぞれのエッジにそって結合され、一般的に折り畳まれた第1及び第2の層を含む。
【0008】
さらなる実施形態によれば、複合部品レイアップの真空バッグ処理用のエッジ・ブリーザーは、復元力のある編み上げられた繊維で形成されたスリーブを含み、そのスリーブは部品レイアップの周囲に延びる曲線部分を含む。曲線部分は部品レイアップの角部分に存在する。
【0009】
別の実施形態によれば、柔軟な真空バッグによって圧縮される複合部品から空気及び揮発性物質を逃がすことが可能である方法が提供される。この方法は、多孔質の材料でできたスリーブをバッグ下の部品の周囲に配置するステップ、及び部品のエッジの周囲を通して空気及び揮発性物質を逃がすことが可能であるエッジ・ブリーザーとしてスリーブを使用するステップを含む。この方法はさらに、スリーブをスリーブ自体の上に折り畳むことによって、部品の角部分の周囲のスリーブを包むステップを含む。また、この方法は、複数の部品の各々を連続的に処理するために、スリーブを再使用するステップを含むことができる。
【0010】
さらに別の実施形態によれば、複合部品の製造方法が提供される。この方法はツール上に部品レイアップを配置するステップ、及び部品レイアップの周囲に復元力のあるブリーザースリーブを配置するステップを含む。柔軟性のあるバッグが部品レイアップ及びブリーザースリーブの上に配置される。柔軟性のあるバッグはブリーザースリーブ末端部の周囲のツールに密閉されており、部品レイアップを圧縮し、部品レイアップから空気及び揮発性物質を引き出すため、真空引きが行われる。この方法はさらに、部品レイアップのエッジから空気及び揮発性物質を逃がすことが可能であるブリーザースリーブを使用するステップを含む。ブリーザースリーブを使用するステップは、バッグの真空引きの間にブリーザースリーブがつぶれるのを防止するためスリーブの復元力を使用するステップを含む。
【0011】
要約すると、本発明の一実施形態によれば、部品のエッジの周囲に配置される材料のスリーブを含む、複合部品の真空処理のためのエッジ・ブリーザーが提供される。
【0012】
有利には、材料のスリーブが実質的に多孔質であるエッジ・ブリーザーである。
【0013】
有利には、部品に真空が印加された場合には、材料のスリーブに、空気及び揮発性物資を通すことが可能である多数の隙間が含まれるエッジ・ブリーザーである。
【0014】
有利には、材料のスリーブが編み上げられた繊維で形成されているエッジ・ブリーザーである。
【0015】
有利には、編み上げられた繊維が熱可塑性物質を含むエッジ・ブリーザーである。
【0016】
有利には、熱可塑性物質がナイロン、PET、ポリオレフィン及びPVC のうちの少なくとも1つを含むエッジ・ブリーザーである。
【0017】
有利には、材料のスリーブが復元力があり高温で編み上げられた繊維で形成されているエッジ・ブリーザーである。
【0018】
本発明の別の態様によれば、復元力のある編み上げられた繊維で形成されたスリーブを含む、複合部品を処理するためのブリーザーが提供される。
【0019】
有利には、繊維が熱可塑性物質を含むブリーザーである。
【0020】
有利には、熱可塑性物質がナイロン、PET、ポリオレフィン及びPVCのうちの1つであるブリーザーである。
【0021】
有利には、スリーブに柔軟性があり、空気及び揮発性物質を通すことが可能である複数の間隙を含むブリーザーである。
【0022】
有利には、スリーブが、それぞれのエッジにそって結合され、一般的に折り畳まれた第1及び第2の層を含むブリーザーである。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態によれば、復元力のある編み上げられた繊維で形成されたスリーブを含み、そのスリーブが部品レイアップの周囲に延びる曲線部分を含む、複合部品レイアップの真空バッグ処理用のエッジ・ブリーザーが提供される。
【0024】
有利には、曲線部分が部品レイアップの角部分に位置するエッジ・ブリーザーである。
【0025】
有利には、スリーブに柔軟性があり、空気及び揮発性物質を通すことが可能である複数の間隙を含むエッジ・ブリーザーである。
【0026】
有利には、スリーブが実質的に部品レイアップの周囲に連続していて、それぞれのエッジにそって結合され、一般的に折り畳まれた第1及び第2の層を含んでいる、エッジ・ブリーザーである。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、バッグ内部の部品の周囲に多孔質の材料からなるスリーブを配置するステップ、及び部品のエッジのスリーブから空気及び揮発性物質を通すことを可能にするステップを含めて、柔軟性のある真空バッグによって圧縮される複合部品から空気及び揮発性物質を逃すことを可能にする方法が提供される。
【0028】
有利には、スリーブをスリーブ自体の上に折り畳むことによって、部品の角部分にスリーブを包み込むステップをさらに含む方法である。
【0029】
有利には、スリーブを角部分で湾曲させていくことによって、部品の角部分にスリーブを包み込むステップをさらに含む方法である。
【0030】
有利には、複数の部品を連続的に処理するため、スリーブをブリーザーとして再使用するステップをさらに含む方法である。
【0031】
本発明のまたさらなる態様によれば、ツール上に部品レイアップを配置するステップ、部品レイアップの周囲のツール上に復元力のあるブリーザースリーブを設置するステップ、部品レイアップ及びブリーザースリーブ上に柔軟性のあるバッグを配置するステップ、ブリーザースリーブ末端部の周囲のツールに柔軟性のあるバッグを密閉するステップ、部品レイアップ圧縮して部品レイアップから空気及び揮発性物質を引き出すためにバッグ内で真空引きするステップ、及び部品レイアップのエッジから空気及び揮発性物質を逃がすことを可能にするためブリーザースリーブを使用するステップを含む、複合部品を製造する方法が提供される。
【0032】
有利には、ブリーザースリーブを使用するステップが、バッグの真空引きの間にブリーザースリーブがつぶれるのを防止するためスリーブの復元力を使用するステップを含む方法である。
【0033】
有利には、複数の部品を連続的に処理するため、ブリーザーをエンドブリーザーとして再使用するステップをさらに含む方法である。
【0034】
有利には、少なくとも2つの処理サイクルで真空が引かれ次に解放される部品サイクルの処理に対する複数の処理サイクル中に、ブリーザーをエンドブリーザーとして再使用するステップをさらに含む方法である。
【0035】
有利には、補給品から柔軟性のあるスリーブを一片切り取るステップと、切り取った一片のスリーブを部品のエッジの周囲のツール上に並べるステップとを含む、ツール上にブリーザーを配置するステップをさらに含む方法である。
【0036】
特徴、機能及び利点は、本発明の様々な実施形態で独立に実現することが可能であるか、以下の説明及び図面を参照してさらなる詳細が理解されうる、さらに別の実施形態で組み合わせることが可能である。
【0037】
新規の機能と考えられる有利な実施形態の特徴は、特許請求の範囲に明記される。しかしながら、有利な実施形態と、好ましい使用モードと、さらにはその目的及び利点とは、添付図面を参照して本発明の有利な一実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態による大流量エッジ・ブリーザーを使用する真空バッグ組立品の幾つかのコンポーネントの斜視図である。
【図2】真空による圧縮に先立って、わずかに拡張したレイアップ組立品のコンポーネントを示す、真空バッグ組立品の断面図である。
【図3】図2と同様の図であるが、バッグ内で真空引きが行われ、ツールに対して圧縮された組立品のコンポーネントを示している。
【図4】本明細書で開示されている一片の大流量エッジ・ブリーザーの斜視図で、わずかに拡張した状態で描かれている。
【図5】図4の中の「図5」と示された領域を示している。
【図6】編み上げられた材料の代替的な形態の斜視図である。
【図7】図4に示された編み上げられたスリーブの端面図で、わずかに拡張した状態で描かれている。
【図8】図7と同様の図であるが、完全につぶれて圧縮された状態の編み上げスリーブを示している。
【図9】本明細書で開示されている大流量エッジ・ブリーザーを使用する複合部品製造法のフロー図である。
【図10A】図1の中の「図10A」と示された領域でツール上にブリーザーを設置する技法を示す図である。
【図10B】図1の中の「図10B」と示された領域でツール上にブリーザーを設置する技法を示す図である。
【図10C】図1の中の「図10C」と示された領域でツール上にブリーザーを設置する技法を示す図である。
【図11】航空機の製造及び保守方法を示すフロー図である。
【図12】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
最初に図1を参照すると、複合部品レイアップ26を製造するために使用される真空バッグ組立品は概して、プリプレグプライを含むことがある部品レイアップ26が真空バッグ30によって圧縮されるツール表面24aを有するツール24を含む。真空バッグ30は、バッグ30内で真空引きを行う真空源25に接続されている一又は複数のポート32を有しており、ツール表面24a上で容積を減らし、圧縮し及び/又は部品レイアップ26を形成する。周囲密閉部28は、従来の封止テープを含みうるが、バッグ30とツール表面24aとの間に十分に高い気密を形成する。本発明の実施形態に従って、大流量エッジ・ブリーザーは、部品レイアップ26と部品レイアップ26を取り囲む周囲密閉部28との間のツール表面24a上に設置される。
【0040】
以下で検討するように、バッグ30内で真空引きが行われると、エッジ・ブリーザー22によって、部品レイアップ26から空気及び揮発性物質を引き出すことができる。部品レイアップ26はまた、バッグ30内で真空引きが行われる際に加熱されることがある。部品レイアップ26の製造時に使用された同一のブリーザーは、部品レイアップ26の硬化時に再度使用することができる。プリプレグレイアップ部品が製造される用途ではブリーザー22が示されているが、ブリーザー22は、限定しないが、樹脂注入及び真空注入処理など、エッジ・ブリーザーを必要とする複合部品の製造に使用されるその他の処理で使用されることがある、という点に注目すべきである。さらに、ブリーザー22がエッジ・ブリーザーとして特に有効となることがある一方で、幾つかの用途では表面ブリーザーとしての用途を有することもある。
【0041】
次に図2を参照すると、真空バッグ組立品20は、随意によるカウル・プレート38及び表面ブリーザーに沿って、レイアップ26上に一対のピールプライ34、36をさらに含む。エッジ・ブリーザー22はバッグ30の周辺部分30aに覆われており、部品レイアップ26と周辺密閉部28との間に配置されている。以下で説明するように、エッジ・ブリーザー22は、明確にするため図2にわずかに拡張した細長いスリーブを含む。
【0042】
図3を参照すると、バッグ30内で真空引きが行われる場合、バッグ30は、ピールプライ34、36、部品レイアップ26、カウル・プレート38及びブリーザー40の組立品をツール表面24aに対して圧縮を行う。エッジ・ブリーザー22は、バッグ30が部品レイアップ26のエッジ26aでツール表面24aに対して密閉することを防止し、部品レイアップエッジ26aから空気及び揮発性物質を逃がし、一又は複数の排出口から真空バック外へ抜け出るようにする。
【0043】
次に図4及び図5を参照すると、大流量エッジ・ブリーザー22は、好適な管状編み上げ材料42(図5)を用いて、用途に適したスリーブ幅Wで形成された、多孔質で復元力がある柔軟なスリーブ35を含む。編み上げ材料42は、用途での熱及び圧力に耐えることができる、柔軟で復元力のある繊維44、46を用いて形成することができる。例えば、限定しないが、繊維44、46はナイロン、PET、PVC、ポリオレフィンなどの好適な熱可塑性物質、又は種々の熱可塑性物質の組合せを含むことができる。他の柔軟で復元力のある繊維材料も可能である。繊維44、46は、対角繊維44、46の間に間隙54を形成する方法で編み上げられる。間隙54により、部品レイアップ26の加熱・圧縮工程でスリーブ35が圧縮されているときに、ブリーザー22を通して空気及び揮発性物質を逃がすことができる。
【0044】
一実施形態では、編み上げ材料42は、斜子織りで2本の繊維(又は2本の繊維束、例えば粗紡糸)44、46が対角線上に編み上げられる2軸編み上げ構造を含みうる。各繊維44、46は、事前に設定した編組軸52からの編組角θを有しており、スリーブ35の長さ方向に沿って実質的に連続している。図5に示した実施例は2次元の編組みであるが、用途によっては必要に応じて3次元の編組み(図示せず)が採用されて、繊維44、46がスリーブ35の厚みt(図7)の層の中にも編み上げられることがある。連続繊維44、46の編組みは、真空バッグ30がツール表面24aに対して下向きにスリーブ35を圧縮する際に、スリーブ35に課せられる圧縮負荷を有利に吸収し分散するらせん構造でかみ合っている。
【0045】
図6はブリーザースリーブ35を形成するように使用される編み上げ材料42の別の実施形態を示している。この実施例では、第3軸繊維55が対角繊維44、46に沿って編み上げられ、3軸編み上げ材料42を形成する。エッジ・ブリーザー22を通して空気及び揮発性物質を逃がすことができる間隙54(図5及び6)を有する、復元力のあるスリーブ35となる他の種々の編組み配列が可能である。編み上げ材料42が図解されているが、多数の小孔と復元力を有する柔軟なスリーブを生み出すように、繊維を織り合わせる又は組み合わせる他の技法を使用してスリーブ35を製造することが可能である。
【0046】
図7では、ブリーザー22がわずかに拡張した状態で示されており、スリーブ35は、エッジ35a に沿って連続的に接続された層56、58を重ねることによって形成された扁平な管状断面形状を有している。編み上げ材料42を使用することにより、編み上げられたスリーブ35には、ブリーザー22からの流量を減少させる永続的な圧縮に耐えるために必要な大きさの復元力が提供される。図8は、重ねられた真空バッグ30(図3)からの真空圧によって、部分的に圧縮された状態にある編み上げスリーブを示している。
【0047】
ここで、上述の大流量エッジ・ブリーザー22を使用して複合部品を製造する方法のステップを示した図9に注目する。ステップ60から始まって、第1のピールプライ34がツール表面24a上に配置され、ステップ62に示すように、続いて第1のピールプライ上にプライレイアップ26が組み立てられる。ステップ64では、部品レイアップ26の上に第2のピールプライ36が配置され、ステップ66では、任意であるが必要に応じてカウルプレート38が設置されることがある。ステップ68では、部品レイアップ26の上に表面ブリーザー40が適用され、ステップ70では、部品レイアップ26のエッジ26aを囲むように、ツール表面24a上に本発明の大流量エッジ・ブリーザー22が設置される。幾つかの実施形態では、大流量エッジ・ブリーザー22は、ステップ68で表面ブリーザー40が適用される前に、ツール表面24a上に設置されることがある(ステップ70)。ステップ72では、エッジ・ブリーザー22を囲むツール表面24aに、エッジ密閉材28又は他の好適な密閉材が適用される。ステップ74では、真空バッグ30が部品レイアップ26の上に配置され、密閉材28を使用してツール表面24a上に密封される。ステップ76では、真空源25が真空バッグ30に結合され、ステップ78では、熱を加えた又は加えていない状態で部品レイアップ26の容積を減らし、形成及び/又は圧縮を行うため、バッグ30内で真空引きが行われる。ステップ80では、真空バッグ組立品20を、部品レイアップ26を硬化するために熱及び圧力が印加されるオートクレーブ(図示せず)内に配置してもよい。ステップ82では、必要に応じて硬化部品の欠陥を修正し、切り揃える。任意であるが、ステップ84では、再使用が必要な場合、エッジ・ブリーザー22を取り外し洗浄してもよい。ステップ86では、一又は複数の追加部品の処理で再使用するためエッジ・ブリーザー22を所定の位置に残してもよい。
【0048】
図10A、10B 及び10C はそれぞれ、図9のステップ70で示したツール24上に大流量エッジ・ブリーザーを設置する2つの技法を図解している。図10Aを参照すると、当該形式で編み上げられた連続する長さのスリーブ35(図4)は、事前に細片22´、22´´に切断して、ブリーザー22の角部分88で重ね合わせてもよい。代替的には、図10Bに示したように、単一の連続する長さの編み上げられたスリーブ35は、各角部分88で折り重ねてもよい。図10Cを参照すると、部品レイアップ26の輪郭形状及びツール24のサイズ/幾何学的配置に応じて、連続する長さの編み上げスリーブ35は、一又は複数回屈曲させること又は角部分88で湾曲89させることが可能で、編み上げられたスリーブ35の切断又は折り曲げの必要性を回避することができる。編み上げられたスリーブ35は、好適な加圧のみで接着するテープ(図示せず)によって、ツール表面24a上の所定の位置に保持することができる。
【0049】
本発明の実施形態は、様々な用途に使用される可能性を有し、特に、例えば航空宇宙、船舶、自動車を含む輸送機産業での用途、及び自動積層装置を使用しうる用途で使用することができる。したがって、図11及び12に示すように、本発明の実施形態は、図11に示す航空機の製造及び保守方法100、及び図12に示す航空機102に関して使用することが可能である。本発明の実施形態の航空機応用は、例えば、限定しないが、2〜3例を挙げるならば、ビーム、スパー及びストリンガーを含む補剛部材などの複合部品のレイアップ、圧縮及び硬化を含むことがある。製造前の段階では、例示的な方法100は、航空機102の仕様及び設計104及び材料の調達106を含むことがある。製造段階では、航空機102のコンポーネント及びサブアセンブリの製造108と、システムインテグレーション110とが行われる。その後、航空機102は運航114に供するために、認可及び納品88が行われる。顧客により運航される間に、航空機102は定期的な整備及び保守116(改造、再構成、改修なども含みうる)を受ける。
【0050】
方法100の各プロセスは、システムインテグレーター、第三者、及び/又はオペレーター(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の目的のために、システムインテグレーターは、限定しないが、任意の数の航空機製造者、及び主要システムの下請業者を含むことができ、第三者は、限定しないが、任意の数のベンダー、下請業者、及び供給業者を含むことができ、オペレーターは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関などでありうる。
【0051】
図12示されるように、例示的方法100によって製造された航空機102は、複数のシステム120及び内装122を有する機体118を含むことができる。高レベルのシステム120の例には、推進システム124、電気システム126、油圧システム128、及び環境システム130のうちの一又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、船舶及び自動車産業などの他の産業にも適用可能である。
【0052】
本明細書に具現化されたシステムと方法は、製造及び保守方法100の一又は複数の任意の段階で採用することができる。例えば、製造工程108に対応するコンポーネント又はサブアセンブリは、航空機102が運行中に製造されるコンポーネント又はサブアセンブリに類似の方法で作製又は製造される。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせは、例えば、航空機102の組立てを実質的に効率化するか、又は航空機102のコストを削減することにより、製造段階108及び110の間に利用することができる。同様に、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、或いはそれらの組み合わせを、航空機102の運航中に、例えば限定しないが、整備及び保守116に利用することができる。
【0053】
種々の有利な実施形態の説明は、例示及び説明を目的として提供されているものであり、網羅的な説明であること、又は開示された形態に実施形態を限定することを意図していない。当業者には、多数の修正例及び変形例が明らかであろう。さらに、種々の有利な実施形態は、他の有利な実施形態に照らして別の利点を提供することができる。選択された一又は複数の実施形態は、実施形態の原理、実際の用途を最もよく説明するため、及び他の当業者に対し、様々な実施形態の開示内容と、考慮される特定の用途に適した様々な修正との理解を促すために選択及び記述されている。
【符号の説明】
【0054】
20 真空バッグ
22 エッジ・ブリーザー
22´、22´´ 細片
24 ツール
24a ツール表面
25 真空源
26 部品レイアップ
26a、35a エッジ
28 密閉材
30 真空バッグ
32 ポート
34、36 ピールプライ
35 スリーブ
38 カウル・プレート
40 ブリーザー
42 編み上げ材料
44、46 繊維
52 編組軸
54 間隙
55 第3軸繊維
56、58 層
88 角部分
89 湾曲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品のエッジの周囲に配置されるように適用される材料のスリーブを含む、複合部品の真空処理のためのエッジ・ブリーザー。
【請求項2】
前記材料のスリーブが実質的に多孔質である、請求項1に記載のエッジ・ブリーザー。
【請求項3】
前記材料のスリーブが、前記部品上で真空引きが行われた場合に、空気及び揮発性物質を通すことができる複数の間隙を含んでいる、請求項1又は請求項2に記載のエッジ・ブリーザー。
【請求項4】
前記材料のスリーブが編み上げられた繊維によって形成されている、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のエッジ・ブリーザー。
【請求項5】
前記編み上げられた繊維が熱可塑性物質を含む、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のエッジ・ブリーザー。
【請求項6】
前記熱可塑性物質がナイロン、PET、ポリオレフィン及びPVC のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載のエッジ・ブリーザー。
【請求項7】
前記材料のスリーブが、復元力があり、高温で編み上げられた繊維によって形成されている、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のエッジ・ブリーザー。
【請求項8】
柔軟性のある真空バッグによって圧縮される複合部品から空気及び揮発性物質を逃すことを可能にする方法であって、
前記バック内の前記部品の周囲に多孔質の材料からなるスリーブを配置するステップと、
前記部品のエッジから空気及び揮発性物質を通すことを可能にするステップと
を含む、方法。
【請求項9】
前記スリーブをスリーブ自体の上に折り畳むことによって、前記部品の角部分に前記スリーブを包み込むステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記スリーブを前記の角部分で湾曲させていくことによって、角部分の周囲に前記スリーブを包み込むステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
複数の部品を連続的に処理するため、前記スリーブをブリーザーとして再使用するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−95141(P2013−95141A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−240310(P2012−240310)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】