説明

大環状オリゴマーのポリマー中の複合体のための触媒含有クレイ材料

ナノ複合体の製造に充填剤として有用なクレイと重合触媒とを、一般には希釈剤の存在下でそれらを混合することによって合する。触媒は少なくとも一部分がクレイにインターカレートするか、又はクレイに化学結合される。その後、触媒含有クレイは、大環状オリゴマー中にクレイを分散させてから大環状オリゴマーを重合させることによって、大環状オリゴマーのポリマー中のクレイの、複合体を製造するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年6月18日に出願された米国仮特許出願番号第60/581,152号の利益を請求する。
【0002】
本発明は、有機化クレイ充填剤を含む大環状オリゴマーから得られるポリマーに関する。更に、本発明はこのような組成物の製造方法及びこのような組成物の製造において有用な触媒含有クレイにも関する。更にまた、本発明は、有機化クレイ充填ポリマー粗製組成物から製造される製品に関する。
【背景技術】
【0003】
強度、靭性、高光沢度及び耐溶剤性のような望ましい性質を有するポリマー組成物を形成する大環状オリゴマーが開発されている。好ましい大環状オリゴマーには、特許文献1(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されたような大環状ポリエステルオリゴマーがある。このような大環状ポリエステルオリゴマーは、複合体用途における良好な含浸及び浸潤を容易にする低溶融粘度を示すので、ポリマー複合体を製造するための優れた出発原料である。更に、このような大環状オリゴマーは、従来の加工技術を用いて加工するのが容易である。しかし、このようなポリマー組成物は、一部の高温用途に適合可能になるのに充分に高い加熱撓み温度を有さない。従って、層状クレイ小板がポリマーマトリックス中に分散されたこのような材料のナノ複合体が開発された。このような組成物は、特許文献2及び3に開示されている。これらの特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,498,651号
【特許文献2】米国特許第5,530,052号
【特許文献3】国際出願公開番号第WO04/058868号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのナノ複合体中の分散クレイは、延性のような他の性質を許容され得る値に保持しながら、ポリマーに対して改善された熱的性質及び補強をもたらす。このような性質の向上は、クレイが剥離され且つポリマー全体に均一に分布される程度に非常に左右される。従って、クレイ粒子を効率的に且つより均一にポリマーマトリックス全体に分布させることができる実用的な方法が非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、
a)触媒含有層状クレイを形成し;
b)前記触媒含有層状クレイを大環状オリゴマーと合し;
c)前記触媒含有層状クレイの存在下で前記大環状オリゴマーを重合させる
ことを含んでなる、大環状オリゴマーのポリマー中のクレイ小板のナノ複合体の製造方法である。
【0007】
この方法は、ポリマー相中にクレイ粒子を非常によく分散させることができる方法を提供する。このような非常によい分散は更には、ポリマーマトリックス内におけるクレイの比較的高度の剥離を可能にし、その結果、ポリマーの非常に効率的な補強並びに物理的性質の他の改善が得られる。
【0008】
別の態様において、本発明は、大環状オリゴマー重合触媒を含む層状クレイである。第3の態様において、本発明は、層状クレイを、前記層状クレイを膨潤させるが他の点では前記層状クレイに不活性である希釈剤の存在下で大環状オリゴマー重合触媒と接触させることを含んでなる、大環状オリゴマー重合触媒を含む層状クレイの形成方法である。
【0009】
この触媒含有クレイは、重合大環状オリゴマー中のクレイの複合体を形成するための優れた出発原料である。触媒含有クレイ材料の層は、一部の実施態様においては、非改質クレイの場合よりもかなり広く隔てられている。このより広い層間間隔は、クレイ層間への追加の大環状オリゴマーの浸透を容易にし、従って、その後のブレンド及び/又は重合操作の間におけるポリマー中へのクレイの更なる分散及び分布を増大させると考えられる。更に、クレイ中の触媒の存在は、クレイ層間における重合反応を促進し、従ってクレイ層間におけるポリマー鎖の生長を促進し、更にクレイの分散及び分布に役立つと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
触媒含有層状クレイは、クレイの希釈剤中スラリーを形成することによって製造するのが都合よい。この希釈剤は好ましくは触媒の溶媒である。触媒が液体である場合にはこのような希釈剤は必要ないが;以下に詳述するように、触媒をクレイに化学的に結合させるのが望ましい場合には特に、希釈剤を用いるのが好ましい。希釈剤対触媒の比は広範囲に、例えば、希釈剤100部当たりクレイ約1部からクレイ10部当たり希釈剤約1部まで(全ての部は重量に基づく)変化できる。希釈剤の典型的な量は、クレイ1重量部に対して希釈剤約0.5重量部〜約50重量部である。希釈剤の好ましい量は、クレイ1重量部当たり希釈剤約5〜約30重量部である。
【0011】
クレイ/希釈剤スラリーは、希釈剤の沸点又は分解温度未満の任意の温度において撹拌しながら、単に混合することによって製造するのが都合よい。スラリーを製造するために希釈剤又は混合物を加熱することは一般に必要ではないが、所望なら加熱を行うことができる。約0〜約50℃の温度が一般に好ましく、約20〜約40℃の温度が特に有用である。クレイを希釈剤に添加することもできるし、又は逆も可能である。クレイを希釈剤に添加する場合には、クレイは一度に、連続的に、又は2若しくはそれ以上のインクレメント(increment)で添加することができる。同様に、希釈剤をクレイに添加する場合には、一度に、連続的に又は2若しくはそれ以上のインクレメントで添加できる。クレイ及び希釈剤を合する際に又は合した後に、それらを混合してクレイを膨潤させ、又は好ましくは、クレイの希釈剤中分散体を生成する。混合は、クレイがそれほど沈降しない概ね均質な分散体が得られるまで続けるのが好ましい。
【0012】
クレイ/希釈剤スラリーを重合触媒と接触させる。これは、重合触媒を希釈剤中に予備混合することによって、又3つの成分全てを別々の流れとして同時に添加することによって、クレイ/希釈剤スラリーの製造と同時に実施することができる。また、最初にクレイ/希釈剤スラリーを形成し、その後に重合触媒を添加することもできる。重合触媒は希釈せずに添加することもできるし、又は希釈剤と混合して添加することもできるし、又は希釈剤に溶解させて添加することもできる。添加の順序は一般に決定的なものではないが、クレイ/希釈剤スラリーを最初に製造する(その後に重合触媒を添加する)こと、又は予め形成された、重合触媒の希釈剤中溶液にクレイを添加することによって製造することが好ましい。
【0013】
重合触媒をクレイ/希釈剤スラリーに添加する場合には、希釈剤への重合触媒の溶解を促進するために及びクレイの層間への少なくとも一部の重合触媒の移動を促進するために、混合物を撹拌するのが好ましい。また、混合物が均質になり且つクレイがほとんど沈殿しなくなるまで混合を続けるのが好ましい。適当な温度は前述の通りである。
【0014】
触媒の使用量は広範囲に変化することができる。例えば、触媒の量は、クレイ100重量部当たり約1〜約100重量部、又は約2〜約80重量部、又は約3〜約50重量部、又は約5〜約25重量部の範囲であることができる。クレイ及び触媒の両レベルが望ましくなるように、触媒の量はある程度は、次の重合反応において使用される触媒含有クレイのレベルと併せて選択する。
【0015】
得られる触媒含有クレイはクレイの層間に介入した多量の重合触媒を有するであろう。この触媒は依然として触媒活性であり、従って、大環状オリゴマーのその後の重合を促進するであろう。触媒はクレイ自体に化学結合することもできるし、又はクレイの処理に使用されるオニウム改質剤(後述)に化学結合することもできる。この化学結合の形成は典型的には、クレイ又はオニウムイオン上の活性水素含有基(例えばヒドロキシル又はアミン基)を介して行われる。
【0016】
触媒組成物は、更に、クレイ粒子表面に沈着し且つ/又は希釈剤相中に溶解若しくは分散された(希釈剤がスラリーから除去されない場合)多量の重合触媒を含むことができる。クレイ粒子の平均層間隔は、希釈剤による膨潤、触媒によるインターカレーション、又は両者によって、出発クレイの平均層間隔から多少増加させることができるが、これは、比較的少量の触媒を用い且つ希釈剤が除去されている場合には顕著でないことが多い。層間隔の増加が見られる場合には、それは典型的には約2〜約50Å、約2〜約30Å、約5〜約25Å又は約10〜約20Åである。絶対層間隔は、約15〜約65Å、約17〜約45Å、約20〜約40Å又は約23〜35Åであることができる。クレイ層内部の触媒の存在はまた、触媒と接触させた後に洗浄したクレイについて螢光X線法及び質量分析法を用いて検出できる。触媒がインターカレートしたクレイ及びクレイ中のオニウムに結合した触媒も観察された。
【0017】
希釈剤は、触媒含有クレイを大環状オリゴマーと合する前に、得られたスラリーから除去してもしなくてもよい。希釈剤の除去は、デカント、乾燥、蒸留、減圧蒸留、濾過又はこれらの組合せという従来の方法を用いて行うのが都合よい。乾燥及び蒸留法、特に、希釈剤を完全に又はほぼ完全により容易に除去できるので減圧乾燥法及び減圧蒸留法が好ましい。
【0018】
触媒含有クレイのスラリーを大環状オリゴマーと合することができる方法はいくつかある。第1の方法においては、触媒含有クレイを、溶融された大環状オリゴマーと混合する。活性触媒の存在のため、混合は、早期重合を回避するために可能な限り低い温度で行う必要がある。好ましい大環状オリゴマー(後述)の場合には、大環状オリゴマーを触媒含有クレイと混合する温度は好ましくは130℃又はそれ以上、より好ましくは約140℃又はそれ以上、そして最も好ましくは約150℃又はそれ以上であって、約190℃又はそれ未満、より好ましくは約180℃又はそれ未満、そして最も好ましくは約170℃又はそれ未満である。好ましくは、接触は、不活性雰囲気において、例えば、窒素又はアルゴンの存在下で行う。大環状モノマーによってクレイ粒子を更にインターカレートし、従ってクレイをモノマー全体により充分に分散させるために、剪断力を適用することができ、適用するのが好ましい。剪断力は、押出、混練又は混合のような種々の手段によって提供できる。剪断は、約2分又はそれ以上、より好ましくは約10分又はそれ以上、そして最も好ましくは約15分又はそれ以上であって、約60分又はそれ以下、より好ましくは約40分又はそれ以下、そして最も好ましくは約25分又はそれ以下の期間適用するのが都合よい。高温における剪断時間は、大環状オリゴマーの早期重合を最小限に抑えるために可能な限り短く保つのが好ましく、得られた大環状オリゴマーと触媒含有クレイとの混合物は、充分な混合が得られる場合には大環状オリゴマーの溶融温度未満に冷却するのが好ましい。この第1の方法においては、希釈剤は、大環状オリゴマーとの混合前に触媒含有クレイから除去するのが好ましいが、希釈剤が大環状オリゴマーと反応性でない場合にはこれは重要ではない。希釈剤が水であるか、水を含む(又は水混和性である)か、又は大環状オリゴマーと反応性である場合には、触媒含有クレイは高温及び/又は減圧下で乾燥させて水又は希釈剤を除去するのが好ましい。好ましくは、大環状オリゴマーは、触媒含有クレイと接触させる前に同様に乾燥する。
【0019】
第2の方法は、触媒含有クレイのスラリーを適用な溶媒中の大環状オリゴマーの溶液とブレンドする方法である。この溶媒は、触媒含有クレイスラリーを生成するのに使用する希釈剤と同一であっても異なってもよい。異なる溶媒を用いる場合には、溶媒及び希釈剤の2つは、存在する相対比率において互いに混和性であるのが好ましい。同一溶媒を用いるのが好ましい。大環状オリゴマーの溶液の使用は、比較的低温における混合を可能にするという利点を有し、通常は比較的低粘度の材料を含む。比較的低い混合温度では、早期重合の危険が減少し、取り扱いが容易になる。
【0020】
第3の方法は、スラリーから希釈剤を除去して乾燥粒子状触媒含有クレイを形成する方法である。これは、前述のように早期重合を防ぐように注意しながら、溶融された大環状オリゴマーとブレンドすることもできるし、或いは適当な溶媒中の大環状オリゴマーの溶液とブレンドすることもできる。
【0021】
得られた生成物は、大環状オリゴマー中のクレイ粒子及び重合触媒の分散体である。クレイ粒子の適当な濃度は、クレイ、大環状オリゴマー及び全ての任意のコモノマー、架橋剤又は改質剤(以下に詳述する)の総重量に基づき、約1〜20重量%である。このレベルのクレイは、ポリマーに良好な補強及び熱的性質(例えば加熱撓み)をもたらす。クレイの非常によい分散が達成できるので、約10重量%又は約7重量%より多いクレイを用いることは通常は必要ない。クレイの特に好ましい量は約2〜6重量%である。しかし、重合工程の前又は重合工程中に追加大環状オリゴマーとブレンドされるマスターバッチとして分散体を使用する場合には、クレイ濃度は、クレイ、大環状オリゴマー及び全ての任意のコモノマー、架橋剤又は改質剤の重量に基づき、60重量%以下、例えば約21〜60%又は25〜50重量%であることができる。分散体は望ましくは、大環状オリゴマー1モル当たり約0.0001〜約0.05モル、例えば約0.0005〜約0.01モル又は約0.001〜約0.006モルの触媒を含む。触媒の量は、個々の触媒の活性及び望ましい反応速度によって若干異なることができる。また、分散体をマスターバッチとして使用する場合には、相応してより高い触媒レベル(例えば3〜10倍高い濃度)が存在できる。触媒レベルは、所望ならば、重合工程の間に追加の触媒によって補うことができる。
【0022】
分散体の生成に使用する任意の希釈剤は、所望ならば重合工程の前に、除去できるが、希釈剤を残し且つ希釈剤の存在下で重合を行わせることも可能である。後者の場合には、分散体中の希釈剤の量は適当には分散体総重量の約5〜約75%であり、約10〜約60重量%又は約25〜約50重量%であることができる。ほとんどの場合には、これらの範囲内のレベルの希釈剤を含む分散体は、室温(約22℃)において固体又はペースト状組成物である傾向がある。固体分散体はペレット又は他の粒子状物質の形態にし、その形態で使用することができる。
【0023】
希釈剤を分散体から除去する場合には、種々の希釈剤フラッシュ及び抽出法を使用できる。フラッシュ法は、大環状オリゴマーの溶融温度より高温で行うことができ、このような高温への暴露時間はこの場合もやはり、早期重合を妨げるために最小限に抑えるのが望ましい。真空法を用いて、ポリマーの溶融温度未満の温度で希釈剤を除去することもできる。
【0024】
クレイ補強ポリマー複合体は、分散体を重合させることによって形成できる。環状オリゴマーの重合方法はよく知られている。この方法の例は、特に、米国特許第6,369,157号及び第6,420,048号、国際出願公開番号第WO03/080705号並びに米国特許出願公開番号第2004/0011992号に記載されている。これらの従来の重合法はいずれも、本発明に関して使用するのに適当である。
【0025】
重合は希釈せずに(即ち無溶媒で)又は溶媒の存在下で実施できる。溶媒中で実施する場合には、溶媒は、分散体の生成に用いる希釈剤と同じであることもできるし、異なる材料であることもできる。
【0026】
所望ならば重合前に、追加の大環状オリゴマーを分散体に添加することができる。
【0027】
一般に、重合は、大環状オリゴマーの溶融温度より高い温度に分散体を加熱することによって行う。重合中の混合物は、所望の分子量が得られるまで高温に保持する。適当な重合温度は約100℃〜約300℃であり、約100℃〜約280℃の温度範囲が好ましく、約150〜270℃の温度範囲が特に好ましい。200℃未満の重合温度が場合によっては最も好ましい。これは、温度が低いほど、有機材料(クレイ中のオニウム改質剤を含む)の分解が少なく、その結果、オリゴマーのポリマーへの転化率が高くなると考えられるためである。
【0028】
触媒が既に分散体中に存在する場合には、重合の実施前に分散体を追加触媒とブレンドすることは通常は必要ない。しかし、分散体が所望の触媒レベルを含まない場合には、追加触媒を添加することができる。
【0029】
重合を密閉金型中で実施して成形品を形成することができる。大環状オリゴマー重合法の利点は、熱可塑性樹脂の成形作業を、熱硬化性樹脂に一般に適用できる手法を用いて実施できることである。溶融時には、大環状オリゴマーは典型的には比較的低粘度を有する。このため、大環状オリゴマーは、液体樹脂成形、反応射出成形及び樹脂トランスファー成形のような反応性成形法において、並びに樹脂フィルム溶融注入(レジン・フィルム・インフュージョン)、繊維マット又は布の含浸、プリプレグ形成、引抜成形及びフィラメント・ワインディングのような、樹脂を繊維束の個々の繊維の間に浸透させて構造用複合体を形成する必要がある方法において使用できる。これらの型の方法のいくつかは、米国特許第6,420,047号に記載されており、この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0030】
得られるポリマーは、離型前に、その結晶化温度未満の温度に達しなければならない。従って、離型前に(又は別の方法で加工を完了させる前に)、ポリマーを冷却することが必要な場合がある。場合によっては、環状ブチレンテレフタレートオリゴマーの重合においては特に、オリゴマーの溶融及び重合温度は、得られるポリマーの結晶化温度よりも低い。このような場合には、重合温度は、有利には、オリゴマーの溶融温度とポリマーの結晶化温度との間である。これにより、ポリマーは、分子量の増加につれて重合温度において結晶化することができる(等温硬化)。このような場合には、離型を行えるようになる前にポリマーを冷却する必要はない。
【0031】
重合を塊状重合又は溶液重合として実施して、押出、射出成形、圧縮成形、熱成形、ブロー成形、樹脂トランスファー成形などのようなその後の溶融加工操作に有用な粒子状ポリマー(例えばペレット化ポリマー)を生成することもできる。
【0032】
得られた複合体は、分子量を増加させるために更に処理することができる。これを行うための2つのアプローチは、固相重合(solid state polymerization)と連鎖延長(chain extension)である。固相重合は、複合体を高温に暴露することによって後硬化させることによって行う。適当な後硬化温度は約170℃、約180℃又は約195℃から約220℃まで、約210℃又は約205℃までであるが、ナノ複合体のポリマー相の溶融温度未満である。固相重合は好ましくは非酸化性環境下で、例えば窒素又はアルゴン雰囲気下で実施し、揮発性副生成物を除去するために好ましくは真空下及び/又は流動ガス下で実施する。約1〜36時間、例えば4〜30時間又は12〜24時間の後硬化時間が一般に適当である。好ましくは、大環状オリゴマーは、重量平均分子量を約60,000又はそれ以上、より好ましくは約80,000又はそれ以上、そして最も好ましくは100,000又はそれ以上まで進行(advance)させる。固相進行(advancemnt)には通常は追加触媒の使用は必要ない。
【0033】
連鎖延長はナノ複合体を多官能価連鎖延長剤と接触させることによって実施する。多官能価連鎖延長剤は、重合された大環状オリゴマー上の官能基と反応してポリマー鎖を結合させ、それによって分子量を増加させる2個又はそれ以上の官能基を含む。適当なこのような多官能価連鎖延長剤については以下に詳述する。追加触媒は通常必要なく、前述のような高温を連鎖延長に使用する。
【0034】
本発明において有用なクレイは、層状構造を有する鉱物又は合成材料であり、個々の層は厚さが5〜100Åの範囲の小板(platelet)又は繊維である。適当なクレイとしては、カオリナイト、ハロイサイト、サーペンティン、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、サポナイト、イライト、ケニヤアイト、マガディアイト、マスコバイト、ソーコナイト、バーミキュライト、ボルコンスコアイト、パイロフィライト、マイカ、緑泥石(クロライト)又はスメクタイトが挙げられる。好ましくは、クレイは、カオリナイト、マイカ、バーミキュライト、ホルマイト、イライト又はモンモリロナイト群の天然又は合成クレイを含む。好ましいカオリナイト群のクレイとしては、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライトなどが挙げられる。好ましいモンモリロナイト類としては、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ベントナイトなどが挙げられる。イライト群の好ましい鉱物としては、ハイドロマイカ、フェンジャイト、ブランマライト、グローコナイト、セラドナイトなどが挙げられる。より好ましくは、好ましい層状鉱物としては、マスコバイト、バーミキュライト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト及びモンモリロナイトのような2:1層状シリケート鉱物としばしば称されるものが挙げられ、モンモリロナイトが最も好ましい。ホルマイト群の好ましい鉱物質としては、層状構造が一次元で遮断されることによって繊維状又はラス状粒子形態を生じる海泡石(セピオライト)及びアタパルガイトが挙げられる。
【0035】
クレイは一般に、約0.6nm又はそれ以上、好ましくは約1nm又はそれ以上であって、且つ約50nm以下、より好ましくは約20nm以下、特に約10nm以下の最小寸法を有する粒子の形態である。粒子は1ミクロン以下又はそれ以上の最大寸法を有することができる。本発明における粒度は、透過電子顕微鏡のような適当な分析方法を用いて測定された分散充填剤粒子の体積平均粒度を意味し、入手したままの充填剤だけを意味するのではない。入手したままの充填剤は、塊状の一次粒子の形態であることもできるし、又は層状構造を有することもでき、それは多くの場合、マスターバッチ及び/又は複合体の製造の過程でより小さい材料に更に分割される。
【0036】
好ましくは、クレイ粒子は約10又はそれ以上、より好ましくは約100又はそれ以上、最も好ましくは約500又はそれ以上のアスペクト比を有する。ここで使用する「アスペクト比」は、小板又は繊維の最大寸法の長さを最小寸法、好ましくは小板又は繊維の厚さで割ったものを意味する。
【0037】
前述のクレイの他に、それらから製造された混合物と、例えば石英、黒雲母、リモナイト、含水マイカ、長石などを含む副成分鉱物も使用できる。前述の層状鉱物は、種々の方法によって合成的に製造でき、合成ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイト、マイカ及びそれらのフッ素化類似体として知られる。合成クレイは、シリケートの加水分解及び水和、タルクとアルカリフルオロ珪酸塩との間の気固反応、酸化物及びフッ化物の高温溶融、フッ化物と水酸化物の熱水反応、頁岩の屋外暴露(風化)並びに酸性クレイ、腐植質及び無機酸の一次シリケートに対する作用を含む多くの方法によって製造できる。
【0038】
クレイは好ましくは、米国特許第5,707,439号及びPCT/US03/041,476に記載されたような有機オニウム化合物で改質する。この改質は、非改質クレイ中に存在する主としてアルカリ金属及びアルカリ土類陽イオンを有機オニウム化合物で置換する、有機オニウム化合物と天然クレイとの間の陽イオン交換反応を引き起こす。オニウム化合物は、負の電荷を帯びた対イオン及び正の電荷を帯びた窒素−、燐−又は硫黄−含有基を含む塩である。特に有用なオニウム化合物は、炭素数が5又はそれ以上の鎖を有する少なくとも1個の配位子を有する。好ましくは、オニウム化合物は炭素数が5又はそれ以上の鎖を有する少なくとも1個の配位子を有すると共に、重合反応の間に大環状オリゴマーと反応できる活性水素原子を有する官能基を含む少なくとも1個の(好ましくは2個又はそれ以上の)他の配位子も有する。活性水素含有基は場合によっては、重合触媒と反応して触媒をクレイ構造に結合させると考えられる。オニウム化合物中の対イオンは、オニウム化合物と共に塩を形成し且つクレイ粒子上の陰イオン種と交換されることができる任意の陰イオンであることができる。好ましくはオニウム化合物は下記式に相当する:
【0039】
【化1】

【0040】
前記式において、R1はC5又はそれ以上の直鎖、脂環式又は分岐鎖ヒドロカルビル基であり;R2は、それぞれ独立して、場合によっては1個又はそれ以上のヘテロ原子を含むC1~20ヒドロカルビル基であり;R3はC1〜C20アルキレン又はシクロアルキレン部分であり;Xは窒素、燐又は硫黄であり;Zは活性水素原子含有官能基であり;aはそれぞれ別個に0、1又は2の整数であり且つbは1〜3の整数であって、Xが硫黄である場合にはa+bの合計は2であり、Xが窒素又は燐である場合にはa+bの合計は3である。より好ましくは、Xは窒素である。より好ましくは、R1はC10〜C20炭化水素鎖であり、そして最も好ましくはC12〜C18アルキル基である。より好ましくはR2はC1〜C10ヒドロカルビルであり、そして最も好ましくはC1〜C3アルキルである。より好ましくはR3はC1〜C10アルキレンであり、そして最も好ましくはC1〜C3アルキレンである。より好ましくはZは第一又は第二アミン、チオール、ヒドロキシル、酸塩化物若しくはカルボン酸、カルボン酸エステル又はグリシジル基であり、更に好ましくは第1アミン又はヒドロキシル基であり、そして最も好ましくはヒドロキシル基である。より好ましくは、yは、それぞれ別個に、ハロゲン又は硫酸エステル(例えば、硫酸メチルのような硫酸アルキル)であり、そして最も好ましくは塩素又は臭素である。より好ましくはaは0又は1の整数であり、そして最も好ましくは1である。最も好ましくはbは2又は3である。
【0041】
活性水素含有官能基を含まない他のオニウム化合物を、前述の化合物の代わりに又は前述の化合物と組合せて使用することができる。これらの適当な例としては、米国特許第5,530,052号及び米国特許第5,707,439号に記載されたものが挙げられる。これらの特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。このような非官能性オニウム化合物を用いる場合には、これらは、官能性型と組合せて使用するのが好ましい。官能基を含むオニウム化合物は、大環状オリゴマーの重合の開始部位となる傾向がある。これらの開始部位の存在は、形成されるポリマー鎖の数を増加させる傾向があり、その結果としてポリマーの平均分子量が減少する傾向がある。官能性型と非官能性型の混合物を用いると、分子量への影響とポリマーマトリックス中へのクレイの充分な分散とをバランスさせることができる。好ましくは、官能性オニウム化合物は、使用する全オニウム化合物の少なくとも1重量%又はそれ以上、例えば少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%、約100重量%、例えば約90重量%以下、約50重量%以下又は約30重量%以下を構成する。
【0042】
オニウム化合物は、触媒及び大環状オリゴマーがクレイにインターカレートする能力を増大する傾向がある。好ましくは、クレイ上の交換可能な陽イオンの少なくとも50%、例えば少なくとも75%又は少なくとも90%を、オニウム化合物と交換する。過剰のオニウム化合物、例えば交換可能な陽イオン1当量当たり1.5当量以下又は1.25当量以下のオニウム化合物を使用できる。
【0043】
マスターバッチは、マスターバッチ中に存在するか又はその後にマスターバッチとブレンドされるであろう大環状オリゴマー及び/又は他の重合性材料のための1種又はそれ以上の重合触媒を含むことができる。錫又はチタネートをベースとする重合触媒が特に重要である。このような触媒の例は米国特許第5,498,651号及び米国特許第5,547,984号に記載されており、これらの開示を引用することによって本明細書中に組み入れる。1種又はそれ以上の触媒を一緒に又は順次使用することもできる。
【0044】
本発明において使用できる錫化合物の類の例示としては、モノアルキル錫ヒドロキシドオキシド、モノアルキル錫クロリドジヒドロキシド、ジアルキル錫オキシド、ビストリアルキル錫オキシド、モノアルキル錫トリスアルコキシド、ジアルキル錫ジアルコキシド、トリアルキル錫アルコキシド、式:
を有する錫化合物及び式:
【0045】
【化2】

【0046】
を有する錫化合物が挙げられる。前記式において、R2はC1〜C4一級アルキル基であり、R3はC1〜C10アルキル基である。本発明において使用できる有機錫化合物の具体例としては、1,1,6,6−テトラ−n−ブチル−1,6−ジスタンナ−2,5,7−10−テトラオキサシクロデカン、n−ブチル錫クロリドジヒドロキシド、ジ−n−ブチル錫オキシド、ジ−n−オクチル錫オキシド、n−ブチル錫トリ−n−ブトキシド、ジ−n−ブチル錫ジ−n−ブトキシド、2,2−ジ−n−ブチル−2−スタンナ−1,3−ジオキサシクロヘプタン及びトリブチル錫エトキシドが挙げられる。更に、米国特許第6,420,047号(引用することによって組み入れる)に記載された錫触媒を重合反応に使用することもできる。
【0047】
本発明において使用できるチタネート化合物としては、米国特許第6,420,047号(引用することによって組み入れる)に記載されたものが挙げられる。その例示としては、テトラアルキルチタネート(例えばテトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラブチルチタネート)、イソプロピルチタネート、チタネートテトラアルコキシドが挙げられる。他の例示としては、(a)式:
【0048】
【化3】

【0049】
[式中、各R4は、独立して、アルキル基であり、又は2つのR4基が一緒になって二価脂肪族炭化水素基を形成し;R5はC2〜C10二価又は三価脂肪族炭化水素基であり;R6はメチレン又はエチレン基であり;nは0又は1である]
を有するチタネート化合物、(b)式:
【0050】
【化4】

【0051】
[式中、各R7は、独立してC2〜C3アルキレン基であり;ZはO又はNであり;R8はC1〜C6アルキル基又は非置換若しくは置換フェニル基であり;ただし、ZがOである場合にはm−n−0であり、ZがNである場合にはm=0又は1で且つm+n=1である]
の少なくとも1個の部分を有するチタン酸エステル化合物、及び(c)式:
【0052】
【化5】

【0053】
[式中、各R9は、独立して、C2〜C6アルキレン基であり、qは0又は1である]
の少なくとも1個の部分を有するチタン酸エステル化合物が挙げられる。
【0054】
他の適当な重合触媒は、
n(3-n)Sn−O−X (I)
[式中、nは2又は3であり;各Rは、独立して、不活性に置換されたヒドロカルビル基であり;Qは陰イオン配位子であり;Xは隣接酸素原子に結合される錫、亜鉛、アルミニウム又はチタン原子を有する基である]
として表されることができる。適当なX基としては、−SnRn(3-n)[式中、R、Q及びnは前述の通りである];−ZnQ[式中、Qは前述の通りである]、−Ti(Q)3[式中、Qは前述の通りである]、及び−AlRp(Q)(2-p)[式中、Rは前述の通りであり、pは0、1又は2である]が挙げられる。好ましいQ基としては、−OR基[式中、Rは前述の通りである]が挙げられる。XがSnRn(3-n)である場合には、R及び/又はOR基は、触媒中に1個又はそれ以上の錫又は他の金属原子を含む環構造を形成する二価基であることができる。好ましいX基は、−SnRn(3-n)、Ti(OR)3及び−AlRp(OR)(2-p)である。nは好ましくは1又は2である。これらの触媒は、2004年4月22日に出願された米国仮特許出願第60/564,552号により詳細に記載されている。この型の具体的な重合触媒の例としては、1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−ジブロモ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−ジフルオロ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−ジアセチル−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1−クロロ−3−メトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−メトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−エトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−(1,2−グリコレート)−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン;1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトラフェニルジスタノキサン;(n−ブチル)2(エトキシ)Sn−O−Al(エトキシド)2、(n−ブチル)2(メトキシ)Sn−O−Zn(メトキシド)、(n−ブチル)2(i−プロポキシ)Sn−O−Ti(i−プロポキシド)3、(n−ブチル)3Sn−O−Al(エチル)2、(t−ブチル)2(エトキシ)Sn−O−Al(エトキシド)2などが挙げられる。適当なジスタノキサン触媒(即ちmが0であり且つXが−SnRn(3-n)である場合)は、米国特許第6,350,850号に記載されており、この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0055】
所望の重合速度を生じ且つオリゴマーのポリマーへの所望の転化率を得るのに充分な触媒を供給するが、過剰量の触媒の使用は裂けるのが通常は望ましい。エステル交換触媒対大環状オリゴマーの適当なモル比は、約0.01モル%又はそれ以上、より好ましくは約0.1モル%又はそれ以上、より好ましくは0.2モル%又はそれ以上であることができる。エステル交換触媒対大環状オリゴマーのモル比は、約10モル%又はそれ以下、より好ましくは2モル%又はそれ以下、更に好ましくは約1モル%又はそれ以下、そして最も好ましくは0.6モル%又はそれ以下である。
【0056】
大環状オリゴマーは、環構造中に2個又はそれ以上のエステル結合を有する重合性環状物質である。エステル結合を含む環構造は一緒に結合して環を形成する少なくとも8個の原子を含む。オリゴマーは、エステル結合を介して接続される2個又はそれ以上の構造反復単位を含む。構造反復単位は同一でも異なってもよい。オリゴマー中の反復単位の適当な数は約2〜約8の範囲である。通常、大環状オリゴマーは、種々の数の反復単位を有する物質の混合物を含む。好ましい種類の環状オリゴマーは、構造:
−[O−A−O−C(O)−B−C(O)]y− (I)
で表される。前記式中、Aは、二価アルキル、二価シクロアルキル又は二価モノ−若しくはポリオキシアルキレン基であり、Bは二価芳香族又は二価脂環式基であり、yは2〜8の数である。構造Iの末端に示される結合は接続して環を形成する。構造Iに相当する適当な大環状オリゴマーの例としては、1,4−ブチレンテレフタレート、1,3−プロピレンテレフタレート、1,4−シクロヘキセンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート及び1,2−エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート並びにこれらの2種又はそれ以上を含むコポリエステルオリゴマーが挙げられる。大環状オリゴマーは好ましくは、約200℃未満、好ましくは約150〜190℃の範囲の溶融温度を有するものである。特に好ましい大環状オリゴマーは1,4−ブチレンテレフタレートオリゴマーである。
【0057】
大環状オリゴマーの適当な製造方法は、米国特許第5,039,783号、第6,369,157号及び第6,525,164号、国際出願公開第WO02/18476号並びに国際出願公開第WO03/031059号に記載されている。これらの特許全てを引用することによって本明細書中に組み入れる。一般に、大環状オリゴマーは、ジオールと二酸、二酸塩化物若しくはジエステルとの反応によって、又は線状ポリエステルの解重合によって適当に製造される。大環状オリゴマーの製造方法は一般に本発明には重大ではない。
【0058】
クレイを膨潤させ、触媒を溶解し且つその他の点ではクレイ及び触媒のそれぞれに対して不活性である(即ち、クレイ又は触媒と不所望に反応しない)任意の希釈剤である。適当な希釈剤としては、塩素化炭化水素、例えばオルトジクロロベンゼン、炭化水素、高沸点エーテル、エステル及びケトンが挙げられる。触媒含有クレイと大環状オリゴマー、コモノマー又は改質剤とを接触させる前に希釈剤を除去しない場合には、ケトン及びエステル希釈剤は、大環状オリゴマー、コモノマー又は改質剤と反応性の型であってはならない。
【0059】
触媒含有クレイ及び大環状オリゴマーの分散体中には種々の追加材料を混和できる。このような材料の1つは、大環状オリゴマーと共重合してランダム又はブロックコポリマーを形成する、大環状オリゴマー以外の共重合性モノマーである。適当な共重合性モノマーとしては、環状エステル、例えばラクトンが挙げられる。ラクトンは1個又はそれ以上のエステル結合を含む4〜7員環を含むのが都合よい。ラクトンは置換されていても非置換でもよい。適当な置換基としては、ハロゲン、アルキル、アリール、アルコキシル、シアノ、エーテル、スルフィド又は第三アミン基が挙げられる。置換基は、好ましくは、それらがコモノマーを開始剤化合物として働かせるような方法ではエステル基と反応性でない。このような共重合性モノマーの例としては、グリコリド、ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン、ε−カプロラクトン、テトラメチルグリコリド、β−ブチロラクトン、ラクチド、γ−ブチロラクトン及びピバロラクトンが挙げられる。
【0060】
含ませることができる別の任意的な材料は、重合された大環状オリゴマー(及び/又はブレンド中の別のポリマー)上の官能基と反応するであろう2個又はそれ以上の官能基を有する多官能価の連鎖延長化合物である。適当な官能基の例は、エポキシ、イソシアネート、エステル、ヒドロキシル、カルボン酸、カルボン酸無水物又はカルボン酸ハロゲン化物基である。より好ましい官能基はイソシアネート又はエポキシであり、エポキシ官能基が最も好ましい。好ましいエポキシ含有連鎖延長剤は、脂肪族又は芳香族グリシジルエーテルである。好ましいイソシアネート含有連鎖延長剤としては、芳香族及び脂肪族の両者のジイソシアネートが挙げられる。好ましくは、連鎖延長剤はこのような官能基を平均して分子当たり約2〜約4個、より好ましくは約2〜約3個、そして最も好ましくは約2個有する。連鎖延長剤は官能基当たりの当量が500又はそれ以下であるのが適当である。適当な量の連鎖延長剤は、例えば重合された大環状オリゴマー中の反応性基モル当たり少なくも0.25モルの官能基を与える。
【0061】
別の任意的な材料は、その後の重合の間に重合大環状オリゴマーとポリマーブレンドを形成するであろう1種又はそれ以上のポリマー材料である。このようなポリマー材料の例としては、例えばポリエステル、例えばポリ(ε−カプロラクタム)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレートなど、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、並びにアミン官能性ポリエーテル及び/ポリエステルが挙げられる。重合された大環状オリゴマー及び/又は連鎖延長剤上の官能基と反応する官能基を含むポリオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン異性体及び/又は他の重合性アルケンのポリマー及びインターポリマー)を使用できる。大環状オリゴマー及び/又は重合された大環状オリゴマーと相溶性であるか、又は重合された大環状オリゴマーにそれらを結合させることができる官能基を含む他のポリマー材料も有用である。これらのポリマーのいくつかは、重合プロセスの間に大環状オリゴマー又はそのポリマーとのエステル交換反応に関わって、ブロックコポリマーを形成することができる。反応性官能基を有するポリマー材料は、前述のように連鎖延長剤によって、重合大環状オリゴマーに結合されることができる。適当な官能基化ポリマー材料は、このような官能基を平均して分子当たり、約1個又はそれ以上、好ましくは約2〜約3個、そして最も好ましくは約2個含み、官能基当たりの当量が500超である。これらの分子量は約100,000以下、例えば約20,000以下又は約10,000以下であるのが適当である。好ましくは、ポリマー材料は、重合された大環状オリゴマー単独のガラス転移温度よりもかなり低い(例えば少なくとも10℃低い、又は少なくとも30℃低い)ガラス転移温度を有する。ガラス転移温度が比較的低いポリマー材料は、得られる生成物の延性及び耐衝撃性を改善する傾向がある。官能基化ポリマーは、本発明の望ましい結果を達成する任意の主鎖を含むことができる。特に適当な多官能価ポリマーは、ポリエーテル又はポリエステルポリオールである。
【0062】
別の適当な追加材料は耐衝撃性改良剤である。ポリマー組成物の耐衝撃性及び靭性を改善する任意の耐衝撃性改良剤を使用できる。耐衝撃性改良剤の例としては、コアシェルゴム、オレフィン系強化剤、モノビニリデン芳香族化合物とアルカリジエンのブロックコポリマー及びエチレンープロピレンジエンモノマーに基づくポリマーが挙げられる。耐衝撃性改良剤は、官能基化されていなくてもよいし、極性官能基によって官能基化されていてもよい。適当なコアシェルゴムとしては、大環状オリゴマー又は重合された大環状オリゴマー上の官能基と反応する表面官能基を有する官能基化コアシェルゴムが挙げられる。好ましい官能基は、グリシジルエーテル部分又はグリシジルアクリレート部分である。コアシェルゴムは一般に約30〜約90重量%のコアを含むであろう。「コア」は、コアシェルゴムの中心のエラストマー部分を意味する。コアシェルゴムは、押出機のような高剪断環境中で、重合の完了後に添加できる。
【0063】
天然又は合成ゴムは、組成物に添加することができる有用な別の型の改質剤である。ゴムは一般に、ポリマーの靭性を改善するために添加する。本発明に係るゴム改質ポリマーは望ましくは、落槍衝撃強さ(ASTM D3763−99による)が約50インチ−lbs又はそれ以上、より好ましくは約150インチ−lbs又はそれ以上、そして最も好ましくは約300インチ−lbs又はそれ以上である。
【0064】
前述の連鎖延長剤及び改質剤の他に、種々の任意的な材料を重合プロセスに取り入れることができる。このような材料の例としては、補強剤(例えば、ガラス、炭素又は他の繊維)、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、離型剤、潤沢剤、紫外線安定剤などが挙げられる。
【実施例】
【0065】
本発明を説明するために以下の実施例を記載するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。特に断らない限り、全ての部及び%は重量に基づく。
【0066】
実施例1〜4
環状ブチレンテレフタレートオリゴマー中の触媒含有クレイの分散体を以下の一般的方法で製造する:
最初に、クレイ0.25部をガラスバイアル中に量り入れる。塩化メチレン10部を添加し、放置時に沈降しない半透明の懸濁液が得られるまで混合物を振盪する。次いで、1,3−ジクロロ−1,3−ジ−n−ブチルジスタノキサン触媒約0.02部をこの懸濁液に加え、混合物を再び振盪する。添加する触媒の正確な量は、触媒含有クレイを環状ブチレンテレフタレートオリゴマー4.73gと混合する場合にオリゴマーモル当たり0.15モルの触媒を与えるのに充分なものである。短期間の振盪後、希釈剤を蒸発させ、得られた粒子状物質を乾燥させる。
【0067】
実施例1〜4において使用するクレイは以下の通りである:
【0068】
【表1】

【0069】
触媒含有クレイを環状ブチレンテレフタレートオリゴマー4.73部と、前記オリゴマーの溶融温度より高い温度で溶融ブレンドして、分散クレイ約5重量%及び触媒0.15モル/モル(オリゴマー)を含む分散体を形成する。
【0070】
重合を、Advanced Rheometric Expansion System(Rheometric Scientific)動的機械的分光計中で窒素雰囲気下においてRSI Orchestratorソフトウェアを用いて行う。装置に、特注のアルミニウムカップ−プレート固定具を装着する。カップ及びプレートの直径はそれぞれ、25及び7.9mmである。乾燥環状ブチレンテレフタレートオリゴマー/触媒混合物約3gを、約160℃に予熱されているカップ中に装入する。混合物中のオリゴマーを加熱によって溶融させた後、上部プレートを下げて、溶融オリゴマーの表面と接触させ、カップとプレートとの間の距離を測定する。プレート、カップ及び混合物の温度を190℃まで急速に上昇させ、190℃に保持して、オリゴマーの重合を監視する。
【0071】
カップに取り付けたアクチュエーターによってカップの内容物に歪み振幅の小さい振動を与える。アクチュエーターは、縦軸を中心とする捻り運動で正弦的にカップを強制的に振動させる。このエネルギーの一部は、サンプルを通してプレートに伝達され、プレートを正弦的に捻れさせる。このサンプルの複素剪断粘度(complex shear viscosity)η*を、カップの角変位の振幅、プレート上のトルクの振幅、カップに対するプレートの位相の遅れ、正弦波信号の角周波数及びサンプルの寸法から概算する。複素剪断粘度の大きさ|η*|は、重合の進行状況の重要な測定基準であり、以後単に粘度と称する。この方法は、約20ポアズから約10,000ポアズを若干上回るまでの粘度増加の良好な概算値を与え、重合の進行状況の追跡を可能にする。
【0072】
実施例1〜4は全て、約1分後に重合の開始を示し、いずれも、クレイを含まない対照の重合速度に非常によく似た重合速度を開始後に示す。これは、インターカレートされたクレイ中の触媒の活性を立証する。
【0073】
実施例5
実施例1を繰り返す。今回は、クレイ各3重量部に対して触媒2重量部を用いる。乾燥触媒含有クレイについて、X回折パターンを取る。触媒含有クレイの層間距離は、約30Åと測定され、これは未処理クレイの約2倍の層間距離である。これは、触媒がクレイの層間に浸透することを立証する。
【0074】
実施例6
ジブチル錫オキシド(0.038g)及びSomasif(登録商標)MEE(0.5g)を50mlのトルエン中で3時間還流させて、触媒含有クレイを形成する。混合物を室温まで冷却させた後、環状ブチレンテレフタレート9.46gを撹拌しながら添加する。90℃における真空オーブン乾燥によって、トルエンを除去する。次いで、得られた乾燥粉末を190℃で約1時間重合させる。質量分析のデータは、新しい共有結合錫オニウム錯体の存在を示している。この種は重合活性を示し、重合されたナノ複合体は、X線回折及びTEMのいずれによって測定された場合も良好なクレイ分散を示している。
【0075】
実施例7及び8
Somasif MEE(登録商標)クレイ、1,1,6,6−テトラ−n−ブチル−1,6−ジスタンナ−2,5,7−10−テトラオキサシクロデカン及び環状ブチレンテレフタレートオリゴマーの粉末混合物をドライブレンドし、真空オーブン中で80℃において一晩処理する。170℃において5lbs/時で運転される18−mm Leistritz同方向回転型二軸スクリュー押出機にこの粉末混合物を供給することによって、この組成のマスターバッチを製造する。溶融された押出物を固化し、粒状化し、結晶化させ、貯蔵する。X線回折は、マスターバッチ中のクレイの層間間隔がクレイの初期値に比べて増加することからわかるように、このマスターバッチがオリゴマーがインターカレートしたクレイを含むことを示す。抽出されたサンプルの螢光X線データは、錫はクレイに結合したままであることを示している。
【0076】
実施例8は、クレイ濃度を3倍に増加させた以外は前述と同様にして製造する。
【0077】
実施例9〜11
実施例7から反応性押出(REX)法によって組成物を製造する。REX法は、下流に向かってギアポンプ、1”スタティックミキサー(Kenics)、2.5”フィルター(80/325/80メッシュ)及び2穴式ダイを装着した同方向回転型二軸スクリュー押出機(Werner Pfleiderer and Krupp,25mm,38L/D)で行う。押出機は、10ポンド(4.5kg)/時で平均滞留時間を7.5分として運転する。粒状化されたマスターバッチ及び(大環状オリゴマー/ジスタノキサン触媒混合物)を、使用前に真空オーブン中で90℃において少なくとも8時間乾燥させる。これらは別々に、振動フィーダーを用いて押出装置の供給口に供給する。フィーダー及びホッパーには、運転の間中、不活性ガスを充填する。押出機は、最初のゾーンでは120℃で、下流ゾーンは170℃で、追加の下流の装置は250℃で運転する。ダイから押出された、撚られたポリマーを空冷し、ペレタイザー中で細断する。次に、押出されたペレットを真空オーブン中で8時間200℃において固相進行させる(advanced)。28トンのArburgプレスを使用して、260℃のバレル温度及び88℃の金型温度を用いて、試験片を成形する。得られた成形品(実施例9)の機械的性質及び熱的性質は、標準試験法を用いて得る。これらは表II中に記載する通りである。
【0078】
実施例10のポリマーは、実施例7のマスターバッチを環状ブチレンテレフタレートオリゴマー中にレットダウンさせ且つ重合触媒としてブチル錫クロリドジヒドロキシドを用いる以外は実施例9と同様にして生成する。結果は、表IIに示す通りである。
【0079】
実施例11のポリマーは、実施例8のマスターバッチを環状ブチレンテレフタレートオリゴマー中にレットダウンさせ且つ触媒を添加しない以外は実施例9と同様にして製造する。結果は、表IIに示す通りである。
【0080】
【表2】

【0081】
本発明の範囲は添付した「特許請求の範囲」によって規定され、本発明の精神から逸脱しなければ、本明細書中に記載した本発明に多くの変更を行えることがわかるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)触媒含有層状クレイを形成し;
b)前記触媒含有層状クレイを大環状オリゴマーと合し;
c)前記触媒含有層状クレイの存在下で前記大環状オリゴマーを重合させる
ことを含んでなる、大環状オリゴマーのポリマー中のクレイ小板のナノ複合体の製造方法。
【請求項2】
前記クレイが、約0.6nm〜約50nmまでの最小寸法を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が錫若しくはチタネート化合物又は2種若しくはそれ以上の錫若しくはチタネート化合物の混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記大環状オリゴマーが1,4−ブチレンテレフタレート、1,3−プロピレンテレフタレート、1,4−シクロヘキセンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート及び1,2−エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのオリゴマー又はこれらの2種若しくはそれ以上のオリゴマーである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程b)を希釈剤の存在下で実施する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
大環状オリゴマー重合触媒を含む層状クレイ。
【請求項7】
前記クレイが、約0.6nm〜約50nmまでの最小寸法を有する請求項6に記載の層状クレイ。
【請求項8】
前記触媒が錫若しくはチタネート化合物又は2種若しくはそれ以上の錫若しくはチタネート化合物の混合物である請求項6に記載の層状クレイ。
【請求項9】
希釈剤を更に含んでなる請求項8に記載の層状クレイ。
【請求項10】
触媒の少なくとも一部がクレイの層中にインターカレートされている請求項6に記載の層状クレイ。
【請求項11】
触媒の少なくとも一部がクレイに化学結合している請求項6に記載の層状クレイ。
【請求項12】
前記クレイが有機オニウム化合物を含む請求項6に記載の層状クレイ。
【請求項13】
前記触媒がオニウム化合物に化学結合している請求項12に記載の層状クレイ。
【請求項14】
クレイを膨潤させるがその他の点ではクレイに不活性である希釈剤の存在下において、クレイと大環状オリゴマー重合触媒とを接触させることを含んでなる触媒含有層状クレイの形成方法。
【請求項15】
前記クレイが、約0.6nm〜約50nmまでの最小寸法を有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が錫若しくはチタネート化合物又は2種若しくはそれ以上の錫若しくはチタネート化合物の混合物である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒の少なくとも一部がクレイの層中にインターカレートされる請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒の少なくとも一部がクレイに化学結合される請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記クレイが有機オニウム化合物を含む請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒がオニウム化合物に化学結合される請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2008−503614(P2008−503614A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516756(P2007−516756)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/021374
【国際公開番号】WO2006/009803
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】