説明

大画面モニタ用ウェットワイパー、及びワイパー包装体

【課題】繊維に含まれた薬液が過剰に滲み出さず、画面への薬液残存(拭き残り)が少ない大画面モニタ用ウェットワイパー、及びワイパー包装体を提供する。
【解決手段】親水性繊維であるコットン繊維又は再生セルロース系繊維を70質量%以上含み、坪量50〜120g/mで寸法200mm×250mm以上、350mm×400mm以下のシート状繊維集合体に、薬液を含浸してなる大画面モニタ用ウェットワイパーであって、前記薬液は、炭素数1〜3のアルコール5〜35質量%、界面活性剤1質量%以下、残部水分からなり、WET感指数が1.0以上1.5以下である。但し、WET感指数={(前記薬液の含浸質量)/(前記シート状繊維集合体の質量)}×100/(前記シート状繊維集合体中の前記親水性繊維の質量%)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大画面の液晶テレビやプラズマテレビ等のモニタ用ウェットワイパー、及びワイパー包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、32インチ以上の大画面の液晶テレビやプラズマテレビが急速に普及しているが、これらの大画面モニタは手垢や埃等の汚れが目立ち易く、拭き取りがし易いワイパーが要望されている。又、液晶テレビの場合、モニタ表面が樹脂製の偏光フィルムからなるため、キズを付けずに拭き取ることが要求される。
各種の対象物を拭き取るワイパーとして、薬液が含浸されたものが知られている(特許文献1〜3)。例えば、特許文献1、2には、それぞれ合成繊維のワイパー用不織布、及び合成繊維不織布に界面活性剤と帯電防止剤を含むクリーナー液を含浸させたワイパーが記載されている。又、特許文献3には、ポリアルキレングリコールを含む繊維集合体に、アルコール濃度70質量%以上の薬液を含浸させたワイパーが記載されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平17-120504号公報
【特許文献2】特開平8-280596号公報
【特許文献3】特開平17-230474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、合成繊維の不織布は親水性が乏しくて保水量が少ないため、水分を多く含む薬液をこの不織布に含浸させた場合、不織布から薬液が過剰に滲み出て拭き残りが生じやすいという問題がある。又、汚れの拭き取り性を向上させるべく、アルコール濃度の高い薬液を用いたワイパーの場合、引火性危険物となるので、管理及び取扱いに特別な注意が必要となる。
従って本発明は、繊維に含まれた薬液が過剰に滲み出さず、画面への薬液残存(拭き残り)が少ない大画面モニタ用ウェットワイパー、及びワイパー包装体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の大画面モニタ用ウェットワイパーは、親水性繊維であるコットン繊維又は再生セルロース系繊維を70質量%以上含み、坪量50〜120g/mで寸法200mm×250mm以上、350mm×400mm以下のシート状繊維集合体に、薬液を含浸してなる大画面モニタ用ウェットワイパーであって、前記薬液は、炭素数1〜3のアルコール5〜35質量%、界面活性剤1質量%以下、残部水分からなり、WET感指数が1.0以上1.5以下である。但し、WET感指数={(前記薬液の含浸質量)/(前記シート状繊維集合体の質量)}×100/(前記シート状繊維集合体中の前記親水性繊維の質量%)
【0006】
ここで、WET感指数を1.0〜1.5とすると、薬液を過剰に含まない必要最小限の含浸量を規定することができ、液ダレを起こさず、且つ画面を2〜3回程度繰り返し拭いても薬液がシート状繊維集合体に残存する程度の薬液量を規定することができる。
薬液が液ダレを起こさず、且つ画面を2〜3回程度繰り返し拭いても薬液がシート状繊維集合体に残存する程度の含浸量は、シート状繊維集合体中の親水性繊維の構成割合によって左右される。そして、親水性繊維の構成割合が高いほど、同じ坪量のシート状繊維集合体であっても薬液(親水系薬液)の保水量が高くなり、同一量の薬液を含ませた場合に液ダレを起こし難い。また、疎水性繊維から成るシート状繊維集合体では、同一の薬液量を含ませた場合に保水力が乏しいため、液ダレを起こしやすく、一方で、薬液の含浸量を少なくすると2〜3回拭取るには薬液が足りなくなることがある。このようなことから、本発明ではWET感指数を導入している。又、本発明の大画面モニタ用ウェットワイパーは、(親水系の)薬液を含ませて使用するため、シート状繊維集合体中の親水性繊維の構成比率が70質量%以上である必要がある。
【0007】
本発明のワイパー包装体は、前記大画面モニタ用ウェットワイパーを1〜10枚包装してなる。上記したように、本発明の前記大画面モニタ用ウェットワイパーはWET感指数を1.0〜1.5としており、薬液の含浸量が通常のウェットティッシュの含浸量(シート状繊維集合体に対して薬液が200〜300質量%)に比べてかなり少ないことから、ワイパー1枚ごとの密封個包装として薬液の揮発を少なくすることが最も望ましい。コスト面から、多数枚包装する場合は、開封後の包装体の気密性が完全でなく薬液が自然揮発する可能性があるため、10枚以下とし、短期間(1〜2ヶ月)で使い切る枚数とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、繊維に含まれた薬液が過剰に滲み出さず、画面への薬液残存(拭き残り)が少ない大画面モニタ用ウェットワイパーが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る大画面モニタ用ウェットワイパーは、以下に述べるシート状繊維集合体に薬液を含浸してなる。なお、特に断らない限り、%は質量%を表す。
シート状繊維集合体は、公知の不織布や編織物の形態とすることができる。繊維集合体を構成する繊維としては、親水性繊維であるコットン繊維又は再生セルロース系繊維を70質量%以上含むものを用いる。コットン繊維や再生セルロース系繊維は親水性が高く、これら繊維を70質量%以上含む繊維集合体も親水性が高くなって薬液の保水性に優れる。そのため、水分を多く含む薬液を適正範囲(上記したWET感指数1.0〜1.5)でこの繊維集合体に含浸させると、繊維集合体から薬液が過剰に滲み出ることが少なく、また薬液が不足することなく拭取れるので、液ダレや液残りによる拭き残りが生じ難く、また薬液不足による拭きムラが生じない。特に、32インチ以上の大画面モニタの拭き取りの際には、画面に拭き残りや拭きムラが目立つので本発明が有効である。
繊維集合体には、コットン繊維又は再生セルロース系繊維を70質量%以上含まれていればよく、コットン繊維又は再生セルロース系繊維と合成繊維との混合繊維を用いてもよい。又、コットン繊維又は再生セルロース系繊維を100%用いて繊維集合体を製造してもよい。
なお、再生セルロース系繊維としては、レーヨン、リヨセルが例示される。
【0010】
繊維集合体の坪量を50〜120g/mとし、寸法を200mm×250mm以上、350mm×400mm以下とする。寸法を200mm×250mm以上とする理由は、シートサイズが大きくなって一回の拭取り面積が大きく、32インチ以上の大画面モニタの拭き取りの際、拭取り回数が少なくて済むからである。特に、寸法を(250〜300)mm×(300〜350)mmとすることが好ましい。なお、本発明の大画面モニタ用ウェットワイパーにおいて、上記繊維集合体は、通常、1プライ(1枚)とする。
又、繊維集合体の坪量が50g/m未満であると、繊維集合体の寸法を200mm×250mm以上とした時のボリューム感と柔らかさが低下し、32インチ以上の大画面モニタの拭き取りがし難くなる。さらに、繊維集合体の保水性も低下する。一方、繊維集合体の坪量が120g/mを超えると、繊維集合体が嵩高くなり過ぎ、かえって拭き取りがし難くなるとともに、製品が嵩張ったり、製品のコストアップを招く等の不具合が生じる。
【0011】
薬液としては、炭素数1〜3のアルコール5〜35質量%、界面活性剤1質量%以下、残部水分からなる組成のものを用いる。炭素数1〜3のアルコールを用いると、これらアルコールと水との混合物全体の沸点が(共沸作用で)低下し、蒸発しやすい。(MeOH(メチルアルコール)の沸点65℃、EtOH(エチルアルコール)の沸点78℃、PrOH(イソプロピルアルコール)の沸点83-97℃)また、炭素数1〜3のアルコールを用いると、薬液の表面張力が低下し、画面の表面への薬液の馴染みが良くなる。
又、薬液中のアルコール濃度を5〜35質量%とする理由は、アルコール濃度が5質量%未満であると洗浄効果が低く、35質量%を超えると引火性危険物となってワイパーの管理及び取扱いが面倒になるからである。
【0012】
薬液中の界面活性剤としては、1)ポリオキシエチレンアルキルエーテル系またはショ糖脂肪酸エステル系界面活性剤(いずれも非イオン活性剤);2)非イオン系界面活性剤(ポリエチレングリコール類、グリセリン脂肪酸エステル類)及び/又はカチオン性界面活性剤(アルキルアミン塩、第4級アミン塩);3)第4級アミン塩、フェノキシエタノール、イミダゾリン誘導体、ヨードプロビニル類;を挙げることができる。これらのうち、1)は洗浄効果のある界面活性剤、2)は帯電防止効果のある界面活性剤、3)は防カビ効果のある界面活性剤である。
これら1)〜3)の成分のうち1種又は2種以上を組み合わせ、界面活性剤として用いることができる。これら1)〜3)の成分の2種以上を組み合わせた場合、これらの合計量を薬液中の界面活性剤の量とみなす。
なお、薬液中に防腐剤を添加した場合、当該防腐剤と界面活性剤の合計量を、薬液中の界面活性剤の量とみなす。
【0013】
薬液中の界面活性剤の濃度を1質量%以下とする理由は、濃度が1質量%を超えると拭き取り後に界面活性剤が画面に残り、拭き残りが目立つからである。又、薬液中の界面活性剤の濃度の下限値は特に限定されないが、通常、0.2質量%である。
【0014】
繊維集合体に対し、上記したように、WET感指数1.0以上1.5以下の範囲で薬液が含浸されている。WET感指数が1.0未満であると、薬液の含浸量が少なすぎて拭きムラが生じ、画面の洗浄効果が低い。また、WET指数が1.5を超えると、繊維集合体から薬液が過剰に滲み出て拭き残りが生じ易くなる。特に、32インチ以上の大画面モニタの拭き取りの際に、拭き残りが目立つ。
なお、WET感指数1.0以上1.5以下の場合、親水性繊維100質量%のシート状繊維集合体では含浸率{(薬液の質量)/(シート状繊維集合体の質量)}が100〜150%であり、親水性繊維70質量%のシート状繊維集合体では含浸率が70〜105%である。
【0015】
本発明のワイパー包装体は、上記した大画面モニタ用ウェットワイパーを1〜10枚包装してなるものである。本発明の大画面モニタ用ウェットワイパーはWET感指数1.0以上1.5以下(セミウェット)であり、液ダレや液残りが生じずに2〜3回の拭取り作業で使い切る様に薬液の含浸量を必要最小限としたものであり、包装を開封後に薬液が蒸発し易い。このため、ウェットワイパーを1枚ずつ個包装とするか、10枚以下のウェットワイパーを包装して包装体とする。1つの包装体に含まれるウェットワイパーが10枚以下であれば、通常の使用で1〜2ヶ月程度で薬液が蒸発する前に使い切ることができる。又、もともとウェットワイパーが寸法200mm×250mm以上の大判シート状であるため、ウェットワイパーを11枚以上重ねて包装体とすると、包装体が大きくなり過ぎて扱いや保管に難がある。なお、通常、ウェットワイパーをC折りして2つ折りや4つ折りなどに折り畳んで包装する。
ワイパー包装体に用いる包装としては、薬液の蒸発を防ぐ樹脂フィルム等を用いることができる。
【0016】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は勿論これらの例に限定されるものではない。
【0018】
表1に示す繊維を用い、スパンレース法で不織布(繊維集合体)を作製した。この繊維集合体に、表1に示す組成の薬液(残部水分)を含浸させて大画面モニタ用ウェットワイパーを得た。
この大画面モニタ用ウェットワイパーに対し、以下の評価を行った。
1.拭き易さ
37インチの液晶モニタ画面を用い、ワイパーを4つ折にして手のひらで拭き取るときの作業のし易さを、以下の基準で評価した。なお、評価◎、○であれば実用上問題なく使用できる。
◎:一拭きで大きな面積が拭き取れ、拭取り回数が10回以下
○:拭取り回数が11〜15回
△:拭取り回数が16〜20回
×:拭取り回数が21回以上
2.拭き残り
37インチの液晶モニタ画面をサッと一拭きしたときの画面表面の拭き跡(拭き残り)を目視で判定し、以下の基準で評価した。なお、評価◎、○であれば実用上問題なく使用できる。
◎:拭き跡が残らない
○:拭き跡があるが殆ど目立たない
△:拭き跡やや目立つ
×:拭き跡が目立つ
【0019】
3.洗浄効果
ティシュペーパー1枚(1.4g)に市販オリーブオイルを1g含ませて37インチの液晶モニタ画面に塗布後1時間放置した。そして、この画面を拭き取り後の画面表面の汚れを目視で判定し、以下の基準で評価した。なお、評価◎、○であれば実用上問題なく使用できる。
◎:一拭きで汚れが落ちる
○: 2〜3度拭いて汚れが落ちる
△:4回以上拭いて汚れが落ちる
4.帯電防止効果
37インチの液晶モニタ画面をサッと一拭きして拭き取り後、24時間経過したときの画面表面への浮遊チリの付着状況を目視で判定し、以下の基準で評価した。なお、評価◎、○であれば実用上問題なく使用できる。
◎:チリが殆ど付着しない
○:チリが僅かに付着する
△:拭き取り前と変わらない
【0020】
得られた結果を表1に示す。なお、表の%は質量%を表す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1から明らかなように、各実施例の場合、画面を拭き易く、洗浄効果及び帯電防止効果に優れ、拭き残りも少なかった。
一方、シート寸法が200mm×250mm未満である比較例1の場合、ウェットワイパーの寸法が小さく、且つWET感指数が1.0未満であり、拭き取り回数が15回を超え、薬液が不足して拭き易さ及び洗浄効果が劣り、拭きムラが生じた。比較例2の場合、シート寸法が200mm×250mm未満であるために拭き取り回数が15回を超え、拭き易さに劣った。
繊維集合体の繊維として合成繊維のみを用いた比較例3,4の場合、シート寸法が200mm×250mm未満であるため、拭き取り回数が15回を超えて拭き易さに劣った。又、液残りによる拭き残りが目立った。これは、比較例3,4の場合、繊維集合体の親水性が低く、保水性に劣るためと考えられる。
薬液中の界面活性剤の量が1質量%を超えた比較例5の場合も拭き残りが目立った。これは、拭き取り乾燥後界面活性剤が画面に残ったためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性繊維であるコットン繊維又は再生セルロース系繊維を70質量%以上含み、坪量50〜120g/mで寸法200mm×250mm以上、350mm×400mm以下のシート状繊維集合体に、薬液を含浸してなる大画面モニタ用ウェットワイパーであって、
前記薬液は、炭素数1〜3のアルコール5〜35質量%、界面活性剤1質量%以下、残部水分からなり、WET感指数が1.0以上1.5以下である大画面モニタ用ウェットワイパー。
但し、WET感指数={(前記薬液の含浸質量)/(前記シート状繊維集合体の質量)}×100/(前記シート状繊維集合体中の前記親水性繊維の質量%)
【請求項2】
前記大画面モニタ用ウェットワイパーを1〜10枚包装してなるワイパー包装体。

【公開番号】特開2011−136014(P2011−136014A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297484(P2009−297484)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000183462)日本製紙クレシア株式会社 (112)
【Fターム(参考)】