説明

大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法及びその評価方法を用いた眼鏡レンズの設計方法

【課題】脳活動を測定することでユーザーに適用可能な眼鏡レンズについて客観的に評価することのできる大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法とその評価方法を用いた眼鏡レンズの設計方法を提供する。
【解決手段】被験者に評価対象レンズを装用させ、大脳の視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方の活動を誘発するための視覚刺激対象を前記評価対象レンズを通して目視させ、評価対象レンズによる視覚刺激対象の目視時の大脳視覚野及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方の誘発活動(大脳視覚野等の誘発活動)を脳波計や脳磁計によって測定し、視覚刺激を受けてからその変化が生じるまでの時間(潜時)、活動の大きさ(振幅)に基づいて眼鏡レンズを評価するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大脳視覚野等の誘発活動を利用した眼鏡レンズの評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザーが眼鏡店で新たに眼鏡を新調する場合には、必ずしも完全矯正されたレンズ度数やオートレフなどによる屈折測定から導き出したレンズ度数がそのユーザーにとって最適とは限らず、最終的にはユーザーや検査者の主観を考慮してレンズ条件が選択されている。これは、累進屈折力レンズの加入度や、加入度以外の累進の設計特性、球面レンズや非球面レンズと言ったレンズの種類選択、サングラスのカラー色の選択などについても同様である。このように、実際に決定される眼鏡レンズの仕様は一義的に決まるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開平10−97369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼鏡レンズは基本的にこのようにユーザーの主観によって決定された仕様に対応して所定の設計データに基づいて作製されるものであり、元々ユーザーにとって好適なレンズ群の中から選択されるものであるから、従来からユーザーが選択したレンズの仕様が当該ユーザーに適したものであるかどうかを評価したいという要請があった。あるいはユーザーが候補として挙げられた眼鏡レンズのうち、どれが良いのか決めかねている際にその判断の指標がほしいという要請があった。あるいはレンズ開発時の試作品について、どの試作品が当該のユーザーに適しているかを客観的に判断するための指標がほしいと言う要請があった。
ところで、人の脳は外界刺激に応じて脳活動をしている。脳活動は、神経(ニューロン)の活動を伴うため、外部から間接的に脳波(電流)を電圧の変化として測定することができ、あるいは磁界(磁束密度)の変化として測定することが可能である。測定される脳波や磁界(磁束密度)の経時的な波形は一様ではなく外界刺激に応じて変化することが知られている。そして、このような脳活動の測定を利用したいくつかの技術が提案されている。例えば特許文献1は異なる視覚刺激を与える複数の点滅タイミングの異なる光源を用意し、光源毎に機能を割付け、その機能を実行する際に対応する光源を注視してその際の脳波を検出することで機能を実行するようにした技術である。本発明もこのような脳活動を測定する技術を利用したものである。
本発明の目的は、脳活動を測定することでユーザーに適用可能な眼鏡レンズについて客観的に評価することのできる眼鏡レンズの評価方法及びその評価方法を用いた眼鏡レンズの設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、被験者に評価対象レンズを装用させ、大脳の視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の少なくとも一方の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激対象を前記評価対象レンズを通して目視させ、前記評価対象レンズによる視覚刺激対象の目視時の大脳視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方の誘発活動(以下、大脳視覚野等の誘発活動)を測定し、前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記評価対象レンズは、レンズ特性の異なるものを複数用意しておき、各評価対象レンズ毎に前記視覚刺激対象目視時の前記大脳視覚野等の誘発活動を測定し、大脳の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また請求項3の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記誘発活動は視覚誘発磁界を測定し、その値に基づいて評価することをその要旨とする。
また請求項4の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記誘発活動は視覚誘発電位を測定し、その値に基づいて評価することをその要旨とする。
また請求項5の発明では請求項請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激対象は塗りつぶしの無い線分の組み合わせによって構成されていることをその要旨とする。
また請求項6の発明では請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激対象は有彩色の組み合わせによって構成されていることをその要旨とする。
また請求項7の発明では請求項1〜6のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激とは空間周波数であって、この空間周波数によって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また請求項8の発明では請求項1〜6のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激とは高輝度光によるまぶしさであって、このまぶしさによって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また請求項9の発明では請求項1〜6のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激とはコントラストであって、このコントラストによって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また請求項10の発明では請求項9に記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激対象の有彩色の組み合わせはコントラストを評価したい風景、画像または映像などから選択された色から構成されることをその要旨とする。
【0006】
また請求項11の発明では請求項1〜10のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記大脳視覚野等の誘発活動の評価は、前記大脳視覚野の特定部位又は網膜視覚細胞の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激対象呈示時から誘発活動が出現するまでの時間を評価指標とすることをその要旨とする。
また請求項12の発明では請求項1〜10のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記大脳視覚野等の誘発活動の評価は、前記大脳視覚野の特定部位の活動又は網膜視覚細胞の特定部位を誘発するための視覚刺激対象を呈示したことによる誘発活動の大きさを評価指標とすることをその要旨とする。
また請求項13の発明では請求項11に記載の発明の構成に加え、前記誘発活動が出現するまでの時間が早い方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することをその要旨とする。
また請求項14の発明では請求項12に記載の発明の構成に加え、前記誘発活動の大きさが大きい方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することをその要旨とする。
また請求項15の発明では請求項11に記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激がまぶしさである場合においては、前記網膜視覚細胞における前記誘発活動が出現するまでの時間は遅い方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することをその要旨とする。
また請求項16の発明では請求項12に記載の発明の構成に加え、前記網膜視覚細胞における前記誘発活動の大きさが小さい方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することをその要旨とする。
また請求項17の発明では請求項8、11、12、15及び16のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記大脳の誘発活動から紡錘状回の誘発活動を分離し、分離後の紡錘状回の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また請求項18の発明では請求項1〜17のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記大脳視覚野の特定部位は、2次視覚野または3次視覚野であることをその要旨とする。
また請求項19の発明では請求項1〜18に記載の発明の構成に加え、前記大脳の誘発活動から2次視覚野または3次視覚野の誘発活動を分離し、分離後の2次視覚野または3次視覚野の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また請求項20の発明では請求項1〜19のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記大脳の誘発活動から1次視覚野の誘発活動と2次視覚野または3次視覚野の誘発活動を分離し、分離後の1次視覚野の誘発活動を評価することをその要旨とする。
また請求項21の発明では請求項18又は19に記載の発明の構成に加え、視覚誘発電位を用いる場合において、1次視覚野を視覚刺激することにより誘発されるP100成分の直後であって、P100成分とはピーク極値が逆となる3次視覚野由来の誘発電位を評価に用いることをその要旨とする。
また請求項22の発明では請求項1〜21のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動は、前記大脳視覚野等の誘発活動から分離して算出することをその要旨とする。
また請求項23の発明では請求項1〜22のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激対象の輝度又はコントラストは、評価対象の眼鏡レンズの光学性能の差または形状の差または分光波形の差により設定し、評価対象の眼鏡レンズの光学性能の差または形状の差または分光波形の差が小さい場合には、前記視覚刺激の輝度またはコントラストを小さく設定することをその要旨とする。
また請求項24の発明では請求項1〜23のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激対象は視覚下半域に配置されることをその要旨とする。
また請求項25の発明では請求項1〜24のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記視覚刺激対象はレンズの中心から離れた周辺部のみを通って眼に入射するように呈示することをその要旨とする。
また請求項26の発明では請求項1〜25のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記評価対象の眼鏡レンズはレンズの周辺部の形状を少しずつ変化させた非球面レンズであることをその要旨とする。
また請求項27の発明では請求項1〜26のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記評価対象の眼鏡レンズはレンズ形状を少しずつ変化させた累進屈折力レンズであることをその要旨とする。
また請求項28の発明では請求項1〜27のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記評価対象の眼鏡レンズは、光の吸収または反射等により、レンズの分光透過率を変化させたレンズであることをその要旨とする。
また請求項29の発明では請求項1〜28のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法を用いることをその要旨とする。
【0007】
上記のような構成においては、まず被験者に評価対象レンズを装用させ、視覚刺激対象をそのレンズを通して目視させ、その結果得られる大脳視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方の誘発活動(以下、大脳視覚野等の誘発活動)を測定し、大脳視覚野等を評価する。
ある単一の評価対象のレンズについて測定した誘発活動を評価してもよく、レンズ特性の異なる評価対象レンズを複数用意しておき、これらのレンズについて測定した誘発活動を評価してもよい。評価は必ずしも最良の結果のものを選択するというわけではない。ここではあくまで、評価することでレンズ選択が客観的に可能な情報を得ることができるという点がポイントである。
評価は大脳視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方であり、いずれかのみ、あるいは両方を評価してもよい。ここで、網膜視覚細胞の特定部位とは、外界からの光(視覚刺激)が電気信号に変換され、大脳視覚野に向けて電気信号として伝送される部位であり、網膜色素上皮細胞、錐体細胞、捍体細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、神経節細胞、視神経などである。網膜視覚細胞の活動として計測機器で記録できる特定の活動部位は、明順応や暗順応などの眼の順応状態によっても変化し、また、どのような計測機器でどのように活動を記録するかによっても変化するため、特に限定されるものではなく、網膜付近で視覚刺激により微弱な電流の変化もしくは微弱な磁界(磁束密度)の変化を発生させる部位という概念である。
また前記視覚刺激は大脳視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくても一方の活動を誘発するためのものであるとする。前記視覚刺激対象を評価のターゲットとする大脳視覚野等の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激対象とすることで、大脳視覚野等の特定部位の誘発活動を効率的に測定することが出来るためである。
このような構成とすることで、ユーザーに好適なレンズであるかどうかや、複数のレンズから好適なものを選択したり、レンズについて客観的に評価することができる。
【0008】
具体的には、誘発活動は視覚誘発磁界を測定し、その値に基づいて評価することが可能である。また、誘発活動は視覚誘発電位を測定し、その値に基づいて評価することが可能である。脳の誘発活動は脳の特定部位に微弱な電流の変化を発生させるためこの微弱な電流の変化を磁界(磁束密度)又は電位(電圧)の変化として経時的に測定することで視覚刺激を与えた際の大脳視覚野等の誘発活動の変化具合がわかることとなる。そして、大脳視覚野等の特定部位の誘発活動の測定結果に基づいて評価対象レンズについてレンズを評価することができる。
また、大脳視覚野等の誘発活動の評価は、大脳視覚野等の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激呈示時から誘発活動が出現するまでの時間を評価指標とすることができる。更に、この場合に誘発活動が出現するまでの時間が早い方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することができる。一般に視覚刺激に対して脳が反応するため視覚刺激を受けてからその変化が生じるまでの時間(潜時)が早いレンズほどユーザーが刺激を認識しやすい状態であり、効率的に脳や網膜等で視覚情報が処理されていると考えられるため、これをもって当該ユーザーに適していると評価するものである。ただし、「まぶしさ」のようにユーザーが刺激を知覚しにくい状態の方が好ましい視覚刺激である場合、網膜視覚細胞の特定部位における誘発活動が生じるまでの時間(潜時)は遅い方が好ましいレンズ条件であると評価することが出来る。これは、網膜視覚細胞が早く活動するほど網膜は強い光を受けている状態であると考えられるため、潜時が遅い方がまぶしさを感じていないと評価するものである。
また、大脳視覚野等の誘発活動の評価は、大脳視覚野等の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激を呈示したことによる誘発活動の大きさ(振幅)を評価指標とすることができる。更にこの場合に誘発活動の大きさが大きい方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することができる。これは視覚刺激に対して脳や網膜等が反応し、その変化が大きいほどユーザーが視覚情報を知覚しやすい状態であると考えられるため、これをもって当該ユーザーに適していると評価するものである。ただし、「まぶしさ」のようにユーザーが刺激を知覚しにくい状態の方が好ましい視覚刺激である場合、網膜視覚細胞の特定部位における誘発活動の大きさ(振幅)は小さい方が好ましいレンズ条件であると評価することが出来る。これは、網膜視覚細胞が大きく活動するほど網膜は強い光を受けている状態であると考えられるため、振幅が小さい方がまぶしさを感じていないと評価するものである。
このように潜時速度と誘発活動の大きさ(振幅)のいずれかの値あるいは両方の値によってレンズを評価し、より好適なレンズを選択することが可能である。
ここに、電位変化は視覚誘発電位(VEP)を脳波計によって計測することが一般的である。また、磁界(磁束密度)変化は視覚誘発磁界(VEF)を脳磁計によって計測することが一般的である。
【0009】
視覚刺激を与えるための対象は塗りつぶしのない線分の組み合わせから構成することが可能である。視覚野には輪郭や線で構成される線分を検出する細胞があるため、このような刺激を目視させることで特定の脳部位に脳活動を誘発できるためである。
視覚刺激を与えるための対象は有彩色の組み合わせで構成することが可能である。日常生活において見るもの(レンズを通して見られるもの)は色彩豊かな有彩色で構成されているため、視覚刺激対象を有彩色とすることで日常生活により近い視覚刺激についての大脳視覚野等の特定部位の誘発活動を評価できるためである。
また、視覚刺激は空間周波数であって、この空間周波数によって誘発される大脳視覚野等の誘発活動を評価することが可能である。大脳の1次視覚野には2〜4cpd(cycle per degree)程度の高い空間周波数を認識する細胞があることが知られている。眼鏡レンズの屈折誤差などによりレンズを通して被験者に知覚される空間周波数が変わるため、空間周波数を視覚刺激として大脳視覚野等の誘発活動を評価することにより眼鏡レンズを評価することが出来る。そのため、視覚刺激対象は2〜4cpdの空間周波数を含んで構成される事が好ましい。
また、視覚刺激を高輝度光によるまぶしさとする場合には、このまぶしさによって誘発される大脳視覚野等の誘発活動を評価することが可能である。このとき高輝度光とは呈示する視覚刺激対象の輝度が1000cd/m以上であると網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動の波形がきれいに測定できるため好ましい。
また、視覚刺激を与えるための対象を隣り合う領域の輝度や色の差異によって得られるコントラストとする場合には、このコントラストによって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することが可能である。コントラストは隣り合う領域の輝度や色の差異で表されるため、塗りつぶしのない線分は空間周波数や線分としての視覚刺激対象としてだけでなく、コントラストとしても視覚刺激の対象となる場合がある。また、ある輝度状態のある図形について、輝度が増した場合には視覚刺激として図形のコントラストとともにまぶしさも兼ねる場合がある。コントラストによって視覚を刺激する際に使用される前記視覚刺激対象を有彩色の組み合わせとする場合においては、コントラストを評価したい風景、画像または映像などから評価したいコントラストの色を選択することが好ましい。これにより、日常生活でレンズを通して見られる色彩についてのコントラストを評価できるためである。
網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動は、前記大脳視覚野等の誘発活動から、大脳視覚野の誘発活動と網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動とを分離することが好ましい。誘発活動の算出は、網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動を、1つ以上の電流源位置(活動源位置)と電流(活動)の強さと電流の方向を仮定して推定解析するダイポール推定などを用いることが好ましい。
【0010】
上記において大脳視覚野の誘発活動の評価は大脳視覚野の特定部位の特に2次視覚野又は3次視覚野の脳活動に基づくことがより好ましい。その理由は次の通りである。
脳の視覚刺激による情報は次のように伝達される。まず眼から入った光は網膜に到達し、電気刺激に変換され視神経を経由して後頭葉にある1次視覚野に到達する。1次視覚野に到達した視覚情報は腹側経路と背側経路に分かれ、腹側経路では、1次視覚野に到達した情報は2次視覚野、3次視覚野と脳内で順に処理されながらより高次の脳部位へと伝えられていく。背側経路では1次視覚野に到達した情報は6次視覚野で処理されながら頭頂に伝えられていく。
従来から、1次視覚野由来の脳反応としてP100成分を誘導するパターンリバーサル刺激が眼科等で臨床的に使用されている。パターンリバーサル刺激は、大脳の視覚領のニューロンは網膜の均一な照射による刺激には鈍感で、輪郭やコントラストを有する図形による視覚刺激に対して高い感受性を持っているということを利用して開発された刺激で、視覚情報の処理段階の中で比較的早い成分を誘発することから、個人による潜時の差や屈折状態による差を受けにくいと言う特徴を持つ。具体的には反転する市松模様を看者に繰り返し注視させ、1次視覚野由来のP100成分を誘導するものである。P100成分とは視覚刺激を受けてからその刺激に応じた変化までが概ね100ミリ秒後であることから、名づけられた示準的な反応である。
しかし、パターンリバーサル刺激によるP100成分はα波の出やすい人では判別しにくい場合があるし、人により出にくい場合もある。また、P100成分の後の活動(すなわち腹側経路では2次視覚野や3次視覚野の脳活動、背側経路では6次視覚野の脳活動)と重なって判別が難しくなることもある。更に「眼鏡レンズを含む視覚路」の評価、つまり上記複数の評価対象レンズを装用した場合の評価においてレンズによる屈折状態による差も比較的受けにくい成分であることから本発明においては必ずしも適したものとはいえない。そのため、2次視覚野、3次視覚野の誘発活動に由来する電位変化又は磁束密度変化(以下の、実施例ではN130成分など)を使用することがレンズの評価においては好ましいといえる。
所定の視覚刺激を与えることによって出現する電位変化はP100成分の直後であって、P100成分とはピーク極値が逆となる3次視覚野の誘発活動に由来するものであることが好ましい。これは具体的には例えば実施例における3次視覚野の誘発活動由来のN130成分である。このような脳反応はP100成分とは異なり微妙なレンズの差を反映してよく測定結果が変動するため異なる評価対象レンズを装用した際のレンズの屈折状態の差をよく反映した脳反応を示すからである。
尚、これら成分の表記において数字が意味するものは視覚刺激を受けてからの脳反応までの時間(ミリ秒)を示すものであるが、この出現タイミングは視覚刺激対象の輝度やコントラストによっても変動するため標準的な条件において「そのあたりの時間帯で出現する」ことを示すに過ぎず、その標準的な条件から視覚刺激対象の条件に伴って出現タイミングが変動する場合には、変動前の出現タイミングをその成分を判別するための名称とするものである。このような命名は、例えば、P100の他、認知判断に関連するP300などがある。
また、このように大脳視覚野の誘発活動の評価は2次視覚野又は3次視覚野の誘発活動に基づくことがより好ましいため、視覚野全体の脳波情報から2次視覚野又は3次視覚野の脳波情報を分離し、分離後の2次視覚野又は3次視覚野の脳波情報に対する電位変化又は磁束密度変化を測定するようにすることが、1次視覚野由来の脳反応の影響を受けずに好ましい。
また、大脳視覚野の誘発活動を1次視覚野と2次視覚野又は3次視覚野の誘発活動を分離して評価する場合においては、分離後の1次視覚野の誘発活動の大きさについて評価することが2次視覚野または3次視覚野由来の脳反応の影響を受けずに好ましい。更に、大脳視覚野等の誘発活動から6次視覚野の誘発活動を分離できる場合においては、6次視覚野の活動も分離して1次視覚野の誘発活動の大きさについて評価することが好ましい。
また、前記視覚刺激がまぶしさである場合、前記大脳の誘発活動から紡錘状回の誘発活動を分離し、分離後の紡錘状回の誘発活動を評価することが好ましい。紡錘状回とはフュージフォームジャイラスとも呼ばれる高次の視覚野であるが、形態の認知、顔の認知、色の認知などに関連することが知られ、レンズによるまぶしさと相関のある脳反応が得られるためである。特に150ms〜170msの誘発活動は他の誘発活動と分離し易いため好ましい。
【0011】
視覚刺激を与えるために目視する対象は視覚下半域に配置されることが好ましい。視覚上半域、あるいは視覚全域に配置するよりも、強い誘発活動として計測可能であるためである。
また、視覚刺激を与えるために目視する対象の輝度やコントラストを低くすることで視覚誘発活動でレンズの装用差を判別し易くできるため、測定目標に応じて調整することが好ましい。輝度の調整は刺激の線分の太さや濃さの調整、コントラストは測定環境の明るさの調整や刺激の線分と線分以外部位の輝度の差の調整などによって可能である。また、視覚刺激を与えるために目視する対象を有彩色で構成する場合には、コントラストは刺激の線分の色と線分以外の色の組み合わせなどによって調整することが可能である。
評価対象の眼鏡レンズは例えばレンズの周辺部の形状を少しずつ変化させた非球面レンズが挙げられる。中心から周縁にかけてレンズ度数を少しずつ変化させてもよい。
非球面レンズは単焦点レンズに限られない。レンズ形状を少しずつ変化させた累進屈折力レンズでもよい。特に、視覚刺激対象を視覚下半域に配置する場合においては、累進屈折力レンズの面形状や光学的な変化はレンズ上部よりもレンズ下部で大きいため好適である。また、光の吸収または反射等によりレンズの分光透過率(分光分布)を変化させたレンズを選択することも可能である。分光透過率とは、光の各波長においてどれだけの割合の光がレンズを透過しているかというレンズを透過する光の波長分布を示すものであり、分光透過率を変化させることによりレンズを通して見た場合のコントラストやまぶしさを変化させることが出来る。
また、大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法を用いて眼鏡レンズの設計を行うことが好ましい。眼鏡レンズの設計とは、累進屈折力レンズや非球面レンズのように眼鏡レンズのレンズ形状を制御することによりレンズ各点における屈折力などを制御してレンズの設計情報を決定すること、及び眼鏡レンズ上または内部の光の吸収や反射を制御するなどすることによりレンズの分光透過率(分光分布)を制御することによりレンズの設計情報を決定することなどである。例えば、大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価を複数の評価対象レンズについて行い、評価対象レンズのレンズ設計情報と、その対応する大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価値を得ることができる。その複数の対応するレンズ設計情報と評価値から、レンズ設計情報の変動による評価値の変動を解析することで最適なレンズ設計情報を算出することが出来る。また、予めレンズ設計情報と評価値の検量線を作成しておき、測定した評価値をその検量線に対応させることで測定した評価値からレンズ設計情報を算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記各請求項の発明では、大脳視覚野等の特定部位の誘発活動を測定することでユーザーに好適な眼鏡レンズについて客観的に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1において視覚に刺激を与える刺激対象の一例の正面図。図中の角度は視角を示す。
【図2】実施例1における脳の各測定位置と取得した磁束密度の変化を対応させて配置した計測結果の一例。
【図3】磁束密度変化について二乗和平方根(RSS)の値と時間との関係を示すグラフ。
【図4】図2の丸印の位置の波形(グラフ)の一例を拡大して示すグラフ。
【図5】実施例2において(a)は被験者10名の平均値についてのレンズ度数とM100成分の潜時との関係を示すグラフ、(b)は同じくレンズ度数とM100成分の振幅との関係を示すグラフ。
【図6】実施例3において被験者4について測定した視覚誘発電位と時間との関係を示すグラフ。
【図7】実施例3において被験者5について測定した視覚誘発電位と時間との関係を示すグラフ。
【図8】実施例3において被験者4について異なる評価対象レンズを装用させた場合のN130の潜時との関係を示すグラフ。
【図9】実施例4において視覚に刺激を与える刺激対象の一例の正面図。
【図10】実施例4において視覚に刺激を与える刺激対象の一例の正面図。
【図11】実施例5においてある単焦点レンズの度数分布(左図)と非点収差分布(右図)を示す分布図。
【図12】実施例5においてある単焦点レンズの度数分布(左図)と非点収差分布(右図)を示す分布図。
【図13】実施例6において被験者7における分離した誘発活動源の位置と活動源を流れる電流の方向を説明する説明図。
【図14】被験者7の分離した誘発活動源の信号強度の経時変化を示すグラフであって、(a)は1次視覚野(V1)の誘発活動のレンズ度数による変化、(b)は3次視覚野の誘発活動のレンズ度数による変化。
【図15】被験者8の分離した誘発活動源の信号強度の変化を示すグラフであって、(a)は1次視覚野(V1)の誘発活動のレンズ度数による変化、(b)は3次視覚野の誘発活動のレンズ度数による変化。
【図16】実施例8において使用されるカラーレンズの分光透過率(分光分布)のグラフ。
【図17】実施例8において視覚に刺激を与える刺激対象の一例の正面図。角度は視角を示す。
【図18】実施例8において代表的な被験者における分離した誘発活動源の位置と活動源を流れる電流の方向を説明する説明図。
【図19】実施例8において代表的な被験者における分離した網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動源の位置と活動源を流れる電流の方向を説明する説明図。
【図20】実施例8において(a)は被験者の平均の網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動の経時変化のグラフ、(b)は視覚刺激対象の輝度を変化させた場合の被験者の平均の網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動の経時変化のグラフ
【図21】実施例8において被験者の平均の1次視覚野の誘発活動の経時変化の波形をレンズとの関係で示したグラフ。
【図22】実施例8においてある被験者の1次視覚野よりもやや側方位置におけるグラディオメーターの測定結果のグラフ。
【図23】(a)及び(b)は、実施例9においてそれぞれ異なる被験者における網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動の経時変化とレンズとの関係を示すグラフ。
【図24】実施例10において視覚に刺激を与える刺激対象の一例の正面図。
【図25】実施例10において被験者12の大脳視覚野等の活動から分離した1次視覚野の活動の信号強度の経時変化とレンズとの関係を示すグラフ。
【図26】実施例11においてゴルフ場の芝目を想定して、背景を草緑色とし、格子色を黄色とした緑−黄格子の刺激対象を用いることを説明する説明図。
【図27】実施例11においてある被験者14の1次視覚野の活動の磁束密度変化について二乗和平方根(RSS)の値の経時変化と分光透過率の異なるレンズ(A)〜(H)との関係を示すグラフ。
【図28】実施例8において大脳視覚野等の活動から分離した2次視覚野の活動の信号強度の経時変化とレンズとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
<実施例1>
1.誘発活動測定方法
視距離2mで例えば図1(図1は実際は目視においては反転画像となる)に示す視覚下半域に呈示する低輝度(0.16cd/m)の半視野格子の刺激対象を固視点(fixation point)を注視させながら刺激250ミリ秒(以下、ms)、刺激間間隔500msで繰り返し呈示する。すなわち、固視点が250ms呈示された後、図1が250ms呈示され、固視点が250ms呈示されるという具合に刺激対象の点滅を行う。本実施例では、予備実験においてS+4Dであっても十分に視覚誘発磁界のピークが確認できるように刺激対象の輝度を調整する。この格子の視野角は4.3度×8.6度である。
被験者には、現在掛けている眼鏡度数のレンズを常用度数とし、常用度数に加えてS+0D,S+1D,S+2D,S+4Dの各度数の評価対象レンズをプラス側から装用させて視覚誘発磁界(VEF)を測定する。測定は、暗室の磁気シールドルーム内において非磁性レンズと非磁性フレームを用い、306チャンネル脳磁計(Vector−view, ELEKTA Neuromag, Helsinki, Finland)を用いる。306チャンネル脳磁計はヘルメット形状の本体の内部に散布状に配設された磁界センサとしての102チャンネルのマグネトメーターと102ペア(204チャンネル)のグラディオメーターを備えている。306チャンネル脳磁計では被験者がその本体を頭部に被せることで脳の所定の測定位置におけるグラディオメーターの誘発磁界を取得して解析対象とする。
このような脳磁計による測定結果として例えば図2のような誘発磁界を得ることができる。図2はグラディオメーターが隣接配置された脳の各測定位置と取得した磁束密度の変化を対応させて配置した模式図である。図においては頭部を平面視した状態で上側が顔側となる。ここで図2の中で後頭葉付近で最も強く誘発反応が得られているセンサーの波形を選択する(図2の丸印の位置)。この丸印の位置は1次視覚野付近となる。図4はある被験者について図2の丸印の位置の波形(グラフ)を拡大した一例である。M2112とM2113は丸印の位置の測定位置を示すコードである。この測定位置で目視する対象が半視野でかつ上視野側にある場合、同じく半視野でかつ下視野側にある場合、同じく全視野にある場合の変化の大きさを比較すると、明らかに下視野側に目視する対象が配置される場合が大きい。そのため、実施例1では図1のような半視野格子の刺激対象を注視させるようにしている。ここでは丸印の位置の磁束密度変化について上下のグラディオメーターペアそれぞれの値を二乗し、加算した値の平方根(二乗和平方根(RSS))を計算して評価用波形を得るようにする(図3)。以下、この評価用波形をRSS波形とする。
【0015】
2.評価方法
実施例1では3人の被験者について上記の測定方法を実行した。このうちの1人(被験者1)のRSS波形のグラフが図3である。図3に示すように、算出された波形では常用度数(0D)において100ms付近に見られる誘発活動がM100成分である。この図3の事例(被験者1)では常用度数からプラスに度数がずれることにより、M100成分のピークの振幅が小さくなり、潜時が遅くなっているため常用度数(0D負荷)が好ましいことがわかる。M100成分の潜時について3人の被験者についての潜時の測定結果を表1に示した。
被験者1ではプラスの負荷度数が増えるに伴い、潜時が遅れているため、0Dのレンズ状態は好ましいと分かる。被験者2では、1Dの方が0Dよりも潜時が早くなっており、常用度数においてマイナスに強いレンズを装用している(すなわち過矯正になっている)ことが示唆される。被験者3では、100ミリ秒付近に出ることが期待されるM100成分が150ミリ秒と遅くなっている。このことは、被験者3の常用度数は、プラスに大きくずれていることを示唆する。
【0016】
【表1】

【0017】
<実施例2>
実施例2は実施例1の測定方法を使用したバリエーションである。以下に評価方法についてのみ説明する。
実施例2では被験者10名についてRSS波形を算出し、レンズ度数毎のM100成分の潜時と振幅を算出した。図5(a)は潜時と常用度数に対して加えたレンズ度数との関係を示し、図5(b)は振幅と常用度数に対して加えたレンズ度数との関係を示すグラフである。被験者10名の平均とその平均誤差をエラーバーで示す。潜時が早いほど好適なレンズであり、振幅が大きいほど好適なレンズである。
このように、潜時と振幅によって客観的な装用状態を評価できることが分かる。また、1D負荷条件で常用度数に対して10ミリ秒程度の潜時の遅れが見られるため、例えば0.25Dよりも小さな度数差であっても客観的に装用状態を評価できることが分かる。更に、刺激対象の輝度やコントラストをより低くすることで、より小さな度数差を測定していくことも可能である。
【0018】
<実施例3>
1.誘発活動測定方法
暗室において、例えば図1に示すような格子の刺激対象を全視野・上視野・下視野にそれぞれ視距離1.5mで固視点を注視させながら、刺激250ミリ秒、刺激間間隔500ミリ秒で繰り返し呈示する。図1は下視野の刺激例である。基準電極を両耳に装着し、アース電極を額に装着し、脳波計によって国際10−20電極法のOzの誘発電位を測定する。被験者には、現在掛けている眼鏡度数のレンズを常用度数とし、レンズ度数の異なる複数の評価対象レンズを装用させて視覚誘発電位(VEP)を測定するものとする。
【0019】
2.評価方法
図6は被験者4について上記測定方法によって得たある評価対象レンズについての測定値のグラフである。また、図7は被験者5について上記測定方法によって得たある評価対象レンズについての測定値のグラフである。
これら、図6及び図7のグラフにおいては、横軸が時間(ms)であり縦軸が電位(マイクロボルト)として表示されている。基準電位は刺激呈示から100ms遡った電位の100ms間の電位の平均とし、図において上方向をマイナス(陰性)方向、下方向をプラス(陽性)方向とする。
図6のグラフにおいて130ms付近の陰性ピーク(●のマークが付してあるピーク)がN130成分である。図7のグラフにおいても130ms付近の陰性ピークがN130成分である。また、図7のグラフでは第1次視覚野由来のP100成分(■のマークが付してあるピーク)が見られる。
【0020】
被験者4についてはN130成分は、全視野や上視野に比べて下視野で強く鋭く出ている。このN130成分は第3次視覚野の活動に由来する。被験者4では第1次視覚野由来のP100成分がほとんど観察されていないが、N130成分が明瞭に出現するため、P100成分が出にくい場合においても安定して観察することができる。図8は被験者4について2Dごとのレンズ度数の異なる評価対象レンズを装用させた場合のN130成分の潜時との関係を示すグラフである。このN130は被験者4の常用度数(0D条件)では130ミリ秒であったが、S+2D負荷では152ミリ秒、S+4D負荷では175ミリ秒、S−2D負荷では129ミリ秒、S−4D負荷では135ミリ秒であった。この事例では、常用度数よりも若干マイナスの度数の方が好ましいことが判断できる。このように判断した後、指標の輝度とコントラストを更に下げて、更に小さな度数誤差について比較していくことで、被験者4にとって適切なレンズ条件を導くことが可能である。
被験者5ではP100成分とN130成分の両方が観察される。被験者5においては全視野刺激および上視野刺激において比較的大きなP100成分が観察されるが、このP100成分は被験者4のように同定しにくい被験者もいることから様々な被験者に対するレンズ評価の指標として使うのは最適ではない。一方で、下視野刺激を呈示した場合、P100成分よりもN130成分は大きなピークとなっているため被験者5のようにP100成分が出やすい被験者においてもN130成分の潜時と振幅が同定可能であり下半視野刺激呈示のN130成分を用いることで、P100成分が出やすい被験者であっても出にくい被験者であってもレンズ性能を評価できる。
【0021】
<実施例4>
1.誘発活動測定方法
薄暗い室内において、例えば図9に示すような視覚下半域に呈示する低輝度の格子の刺激対象を視距離0.5mで固視点を注視させながら、刺激250ミリ秒、刺激間間隔500ミリ秒で繰り返し呈示する(図9は実際は目視においては反転画像となる)。基準電極を両耳に装着し、アース電極を額に装着し、脳波計によって国際10−20電極法のOzの誘発電位を測定した。被験者には、現在掛けている眼鏡度数のレンズを常用度数とし、常用度数のレンズの上からレンズ上部から下部に掛けて加入度を少しずつ変更した複数の評価対象レンズ(累進屈折力レンズ)を装用させて視覚誘発電位(VEP)を測定するものとする。
尚、特に周辺部のみ評価する場合においては、例えば、図10のような指標にすることが好ましい(図10は実際は目視においては反転画像となる)。このようにすることで第1次視覚野の反応の影響を小さくすることが出来、更に、レンズの周辺部のみ(すなわち周辺視)の評価を行うことができる。
【0022】
2.評価方法
実施例4は図10の視覚刺激対象を呈示したレンズ周辺部の評価事例となる。
被験者6の常用度数に対して、レンズ上部から下部に掛けて0.5D変化させた(すなわち遠用度数が0Dで加入度0.5D)条件1を負荷した場合、1.0D変化させた条件2を負荷した場合、2.0D変化させた条件3を負荷した場合を比較した場合、条件1ではN130の潜時が128ミリ秒、条件2はN130の潜時が130ミリ秒、条件3はN130の潜時が135ミリ秒であった。
このことから、被験者6では50cmの近方距離において条件1のレンズ条件が好ましいことが分かる。
【0023】
<実施例5>
1.誘発活動測定方法
実施例5は実施例4の測定方法を使用したバリエーションである。実施例4と同様の視覚刺激を与えながら被験者には、現在掛けている眼鏡度数のレンズを常用度数(例えば、この被験者の常用度数はS−5.00Dとする)とし、レンズの中心から周辺に掛けてレンズの度数及び非点収差(乱視成分)が少しずつ異なる複数の評価対象レンズ(単焦点レンズ)を装用させて視覚誘発電位(VEP)を測定するものとする。
図11および図12は同一の中心度数(S−5.00D)を持つ単焦点レンズの設計例である。このように単焦点レンズではレンズの中心から周辺に掛けてレンズの度数、非点収差(乱視成分)が変化する。図11の設計例は、レンズ中心から周辺にかけて非点収差(乱視成分)は−0.50D程度変化し、S+0.30D程度、度数が変化している。一方、図12の設計は、非点収差の変化は−0.20D程度であり設計1よりも非点収差の悪化が抑えられているが、度数の変化が0.60D程度プラスにずれており、度数の誤差が大きくなっている。
2.評価方法
このような度数と非点収差の誤差はレンズ設計上、どちらかを小さくすれば、どちらかが大きくなると言うトレードオフの関係にある。また、個人の好みもあり、はっきり見えることが好き、クッキリ見えることが好き、すっきり見えることが好きなどのように、好ましいと感じるレンズ設計は個人によって異なる。そのため、光学シミュレーション計算のみからではどのような設計が最適であるか導き出すことは難しい。
上記測定方法でN130を得ることでその潜時や振幅を指標として用いることにより、単焦点レンズの設計の違いについても、ユーザーにとって好ましい設計を選定することが可能になる。例えば、実施例4における周辺視(レンズ周辺部)の評価と同じ測定方法によって、右眼がS−4.00 C−1.00 AX170、左眼がS−4.00 C−1.00 AX15の被験者6に対して、図11の度数誤差の少ない設計と図12の非点収差誤差の少ない設計とを比較する(このとき、被験者6の度数に合わせて非球面量は調整している。また、公知の非球面乱視補正技術によって、非球面を乱視に対応したものとしている)。その結果、Ozで測定されたN130は、図11の度数誤差の少ない設計では135ms、図12の非点収差誤差の少ない設計では140msであったことから被験者6にとっては図11の設計のように周辺部の度数誤差が少ないことが重要であることが分かる。このような知見をもとに大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価値(本実施例5ではN130の潜時)を用いて眼鏡レンズの設計を行うことが出来る。また、図11と図12の設計の中間的なレンズ形状を持つ設計について被験者6においてN130を求めると134msであった。図11の設計が135ms、中間の設計が134ms、図12の設計が140msであったことから、最適な設計は図11の設計と中間の設計の間付近にあることが推察でき、それによりレンズ設計情報のパラメータを決定する。このような評価を繰り返すことによりN130の潜時を用いて眼鏡レンズの設計を行うことが出来る。
尚、潜時の遅れについては視覚刺激対象輝度を小さくする、または、コントラストを落とすことにより更に遅れを大きくしてレンズの性能差を測定することが可能であるのは、他の実施例と同様である。
【0024】
<実施例6>
実施例6は実施例1の測定方法を使用したバリエーションである。実施例1でグラディオメーターによって取得した磁束密度の変化からダイポール推定を用いて大脳視覚野の誘発活動を1次視覚野の誘発活動とより高次の2次・3次視覚野の脳活動に分離する。
図13は被験者7における誘発活動源を分離した結果の一例である。図13は脳を水平方向に切って上から見たときの平面図であり、マークは活動源の位置と活動源から電流が流れる向きを示している。正中線に近い上向きの活動は1次視覚野(V1)の活動を示し、内側に向いた左右の活動は3次視覚野(V3)の活動を示す。被験者7においては2次視覚野の活動が弱く観察されたため、2次視覚野については同定されなかったが、1次視覚野と3次視覚野の間の位置に2次視覚野の活動源を設定して2次視覚野の誘発活動を解析することができる。このようにダイポール推定にて1次視覚野と3次視覚野(2次視覚野が同定できる場合には2次視覚野も)を同定した後、それぞれの活動源の誘発活動を分析した。
図14(a)及び(b)は被験者7の分離した磁束密度変化を発生させる活動源の変化であって(a)は1次視覚野(V1)の誘発活動であり、(b)は3次視覚野の誘発活動である。横軸は視覚刺激呈示からの時間、縦軸は磁束密度変化を発生させる活動源の信号源強度(単位はナノアンペアメーター)を示している。
図14(a)を分析すると、常用度数(0D)では約100msに約15nAmのピークが観察される。これが実施例1、2で解析に用いたM100成分を発生させる1次視覚野の誘発活動である。この1次視覚野の誘発活動は常用度数(0D)に比べて度数がプラスにずれると潜時が約100msから150msに遅くなっていることが分かる。一方、3次視覚野の誘発活動である図14(b)を分析すると、0Dの場合は150msで4Dの場合は200msと度数ずれとともに潜時が変化している。実施例1、2のM100成分を分析する方法や実施例3〜5のN130成分を分析する方法は、様々な活動の集合体としての波形を分析しているがこの実施例6のようにそれぞれの脳活動に分離後分析することで、より小さなレンズの屈折差であっても評価できるようになる。
【0025】
次に被験者8の例について説明する。
図15(a)及び(b)は被験者8の分離した磁束密度変化を発生させる活動源の誘発活動であって(a)は1次視覚野(V1)の誘発活動であり、(b)は3次視覚野(V3)の誘発活動である。
被験者8では1次視覚野、2次視覚野、3次視覚野に活動源が分離できた。図15(a)を分析すると1次視覚野の誘発活動は、約100msに観察され、レンズ度数がずれるとピークの強度(=振幅)が弱くなっているが、潜時についてはほとんど変化していない。このことから被験者8の場合、レンズ度数の変化は1次視覚野においては振幅に影響するが潜時には影響しない、すなわち、1次視覚野の潜時は脳活動を分離した場合、指標としては使いにくいということが分かる。一方で、図15(b)を分析すると、3次視覚野の活動は0D条件は約130msであるが、4Dで約160msと遅れている。また、振幅についても屈折誤差の少ない0Dに比べて、屈折誤差が1D、2D、4Dと加わるに伴い低下している。同様の傾向は他の被験者でも見られるため、1次視覚野よりも高次の2次・3次視覚野の脳活動を分離して2次・3次視覚野の誘発活動の潜時または振幅を分析することでより解析誤差が少なく精度の高い分析が可能になる。
そのため、レンズ評価に適した視覚刺激としては、1次視覚野の誘発活動をなるべく少なくし、3次視覚野の誘発活動を大きく誘発する視覚刺激対象が好ましいということが分かる。1次視覚野の誘発をなるべく少なくするためには、刺激の輝度変化を少なくする、コントラスト変化を少なくする、刺激の量を少なくする、1次視覚野の誘発を加算処理でキャンセルできるようにするなどの方法が考えられ、これらは指標をカスタマイズすることで調整可能である。更に効率的に1次視覚野の誘発を少なくして3次視覚野の誘発活動を大きくする方法としては、1次視覚野を常に刺激し続けながらより高次の2次・3次視覚野を刺激する刺激対象とすることが好ましい。これには1次視覚野を常に刺激をしながら、刺激対象の輝度を変化させずに線分の組み合わせを刺激対象として呈示する。1次視覚野を常に刺激し続けることにより、1次視覚野の誘発活動が測定上観察されなくなり2次・3次視覚野の誘発活動のみを誘発することができる。更に、発明者の検討によると特に、3次視覚野のみを刺激することがレンズ評価の上では有効であり、例えば、ランダムドット刺激などを用い1次視覚野を常に誘発し続けておき、その一部分の動作を線分の組み合わせが見えるように一定時間止めることにより3次視覚野を刺激することができる。また、図1、9、10のような線分の組み合わせによる刺激対象を線分よりも低い空間周波数の画像の上に表示するなどにより、低い空間周波数の画像によって1次視覚野を常に誘発させ続けておき、線分の組み合わせ呈示により3次視覚野を誘発することができる。
【0026】
<実施例7>
実施例7は実施例6と同様に実施例1の測定方法を使用したバリエーションである。被験者7及び被験者8について実施例6と同じ測定および活動源の分離を実行することにより1次視覚野と3次視覚野の誘発活動を図14(a)、図14(b)、図15(a)及び図15(b)のように得た。
実施例6ではより高次の脳活動である2次・3次視覚野を解析対象としたが、実施例7では分離した1次視覚野の活動に着目する。図14(a)に示すように被験者7の1次視覚野の活動は0Dの時は約15nAmであるが、1Dで約14nAm、2Dで約13nAm、4Dで約10nAmに低下している。また、図15(a)に示すように被験者8でも同様に、0Dでは約20nAm、1Dで約15nAm、2Dで約12nAm、4Dで約3nAmと振幅が低下している。
実施例6に示したように、2次・3次視覚野の誘発活動と1次視覚野の誘発活動を分離した場合、1次視覚野の活動の潜時については屈折を評価する指標としては使いにくい。一方で、実施例7のように1次視覚野の誘発活動を分離した場合の1次視覚野の振幅はレンズの屈折状態の評価に適していることが分かる。この時、1次視覚野の反応は、図7のように1次視覚野の後の脳活動と重なり合って判別しにくくなる場合があるため、実施例7のようにより高次の2次・3次視覚野の誘発活動と1次視覚野の誘発活動をダイポール推定などを用いて活動源を分離することでより細かな屈折状態の評価が可能になる。
【0027】
<実施例8>
実施例8は「まぶしさ」を視覚刺激とした実施例である。
緑内障、加齢黄斑変性、網膜色素変性など様々な眼疾患の愁訴に「まぶしさ」がある。また,高輝度LEDの普及等(例えば、夜間の対向車のヘッドライトのまぶしさ)により、まぶしさを効果的に低減する眼鏡レンズが求められている。まぶしさを低減するためには単純にレンズの透過率を下げれば良いが、必要以上にレンズの透過率を下げてしまうと、見えにくくなってしまう。また、まぶしさに対する感じ方は、個人個人によって異なるため、ある個人において、どれぐらいまぶしく感じているか、「まぶしさを客観的に定量評価すること」が必要になる。本実施例8では、大脳視覚野の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激対象を高輝度の光源として、その視覚刺激対象を見たときの網膜視覚細胞と大脳視覚野の特定部位の誘発活動の評価を行う。これによって、見えていることの確認とまぶしさを同時に評価することができる。また、人間の目や脳の順応や馴化も考慮した上でのまぶしさを客観的に評価することができる。
【0028】
1.誘発活動測定方法
10名の健康成人(平均35歳)を被験者とし、図16の分光波形をもつカラーレンズ(I)〜(IV)および、無色レンズ(V)をランダムな順番で装用させ、上記306チャンネル脳磁計を用いて視覚刺激呈示時の誘発活動を計測した。
被験者を暗室のシールドルームにて着座させ、視距離2mで、視力を非磁性の無色レンズで補正して固視点を注視させながら、高輝度の映像刺激の呈示を可能としたプロジェクターを用いて、図17に示す下半視野を塗りつぶした長方形(輝度:3.7 ×10 cd/m )を刺激300ms、刺激間間隔1575ms±5%で大脳の視覚野及び網膜視覚細胞の活動を誘発するための視覚刺激として呈示した。各レンズについてそれぞれ100回測定した結果の加算波形に対して、脳解析ソフトウエア「BESA」(Brain Electric Source Analysis)を用いて、複数のダイポールを仮定して解析する多信号源解析を行った。その結果、左右の網膜視覚細胞の誘発活動(ERG)、1次視覚野(V1)、左右の2次視覚野(V2)、左右の紡錘状回(FG:フュージフォームジャイラス)、6次視覚野(V6)に分離することができた。それぞれの信号源の位置は、標準脳での座標(Talairach座標)を求めて対応する脳部位を決定した。これを表2に示す。また、代表的な被験者における信号源の分離の様子を図18及び図19に示した。
【0029】
【表2】

【0030】
2.評価方法
上記のような解析によって得られた各部位での大脳の視覚野及び網膜視覚細胞の活動に基づいて以下のように評価した。まぶしさの評価においては、網膜視覚細胞の誘発活動の評価(網膜視覚細胞での光の受光量の解析)と大脳視覚野の誘発活動の評価(実際に入力された信号は見えているかの解析)の2つが大切になる。本実施例8ではその両方を同時に測定し解析評価することが可能である。
(1)網膜視覚細胞の誘発活動(ERG)による評価
図19のように、網膜視覚細胞の誘発活動は左右の眼球表面付近に斜め下向きのダイポールとして推定される。通常の網膜活動の測定(網膜電図の測定)では、眼尻付近に電極を取り付けるなどして測定を行うが、本発明の方法では、306チャンネル脳磁計を用いて大脳視覚野等の誘発活動から網膜視覚細胞の誘発活動を分離することで眼付近に電極を取り付ける必要がなく、完全に非侵襲で被験者に対する負担が無く、通常の網膜活動の測定とほぼ同じ波形が得られるというメリットがある。
図20(a)は10名の被験者の平均の網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動の経時変化とレンズ(I)〜(V)との関係を示したグラフである。ERGのb波である60msの活動は、カラーレンズ(I)装用で潜時が9ms遅くなった。また、カラーレンズ(I)装用により、振幅はおよそ80%となった。
また、図20(b)に刺激の輝度を、3.7 × 10 cd/m、1.2× 10 cd/m、0.2× 10 cd/mと変化させた場合の10名の被験者の平均の網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動の経時変化を示したが、刺激の輝度が小さくなると60msのb波潜時が遅れ、振幅が小さくなることがわかる。すなわち、網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動でまぶしさを評価する場合においては、潜時は遅い方が好ましく、振幅は小さい方が好ましい。視覚野における誘発活動の判定基準と逆なのは、網膜視覚細胞において「見えていることの評価」と「まぶしさの評価」が逆の現象であるためである。図20(b)のように1.2×10 cd/mの条件ではきれいに波形が測定可能であり、0.2×10 cd/mの条件では波形が消失している。そのため、暗室にてまぶしさを評価するためには約1000cd/m以上の輝度の刺激対象を呈示することが望ましいと分かる。
【0031】
(2)1次視覚野の活動による評価
1次視覚野(V1)の活動はBA17(ブロードマンエリア17野)に上向きの活動として推定された。図21は10名の被験者の平均のBA17における1次視覚野の活動変化の波形をレンズ(I)〜(V)との関係で示したグラフである。
このグラフによれば、刺激呈示後75ms後、100ms後に観察された活動は、カラー(I)条件では無色条件(V)と比べて52%振幅が増大した。カラー(II)〜(IV)については、無色(V)との差はほとんどなかった。このことから、カラー(I)装用時は、眩しい光を見たときに1次視覚野に多くの視覚情報が伝達されており、好ましい条件であると評価できる。すなわち、高輝度の刺激を呈示した場合、1次視覚野の活動の振幅が大きいほどまぶしさが抑えられており、まぶしさの定量化を行うことができる。
【0032】
(3)紡錘状回(FG)の活動による評価
306チャンネルのセンサーは102チャンネルのマグネトメーターと204チャンネルのグラディオメーター(102個のグラディオメーターペア)よりなる。脳反応は活動した部位が比較的脳表面に近い場合、信号源の位置に最も近いグラディオメーターのセンサーに反映される。
図22にはある被験者9のV1よりもやや側方に位置するグラディオメーターの測定結果である。図22のように、150〜170ms付近にレンズカラー(I)のみに特徴的な活動が観察され、この活動の信号源は紡錘状回(フィージフォームジャイラス)に位置した(表1のTalairach座標により決定した)。フュージフォームジャイラスの活動は、形態視、顔認知や色の認知などに関連することが知られている。本実施例においては、レンズカラー(I)装用においてまぶしさが抑えられた結果、呈示された視覚刺激の形状が効率的に認識されていると考えられる。すなわち、紡錘状回の活動を解析することで、まぶしさの定量化を行うことができる。
(4)2次視覚野と6次視覚野の活動の解析
表2や図18のように大脳視覚野等の誘発活動から分離した2次視覚野と6次視覚野の活動は、上記の1次視覚野や紡錘状回(FG)の活動に比べて、分光波形の異なるレンズ間において誘発活動に差が観察されなかった(例として2次視覚野の誘発活動を図28に示した)。そのため、まぶしさの評価については2次視覚野と6次視覚野では、レンズ間の差が観察されにくいと言える。ただし、紡錘状回(FG)に活動を推定せずにダイポール解析を行う場合においては、2次視覚野の活動に紡錘状回(FG)の活動が重なり合って、まるで2次視覚野に活動があるかのように観察されることがある。そのため紡錘状回(FG)を信号源として仮定せず2次視覚野の活動を解析する場合においては、150〜170msに紡錘状回(FG)由来の活動、すなわちまぶしさと関連する活動が観察されることがあり、まぶしさの評価として有用である。
【0033】
<実施例9>
実施例9も「まぶしさ」を視覚刺激とした実施例である。
実施例9は網膜視覚細胞の誘発活動(ERG)によって、個々の被験者がどの程度まぶしさを感じているのかを定量化でき、それに応じて適切なレンズを提供することができる。
図23(a)及び(b)は、実施例8と同じ「まぶしさ」を視覚刺激で、かつ同じ測定法によって被験者10と被験者11について得られた網膜視覚細胞の誘発活動(ERG)とレンズカラーの関係を示すグラフである。
ここで、無色レンズ(V)とレンズカラー(I)との波形の差に着目すると、被験者11の場合(図23(a))では、図20(a)に示した10名の平均値の波形と似ており、ERGのb波潜時の遅れは9msと平均的な眩しさを感じやすい被験者であると判断できる。一方で、被験者11の場合(図23(b))では、無色レンズ(V)に比べてレンズカラー(I)装用時には50ms程度遅くなっている。また、レンズカラー(I)の振幅は無色(V)の振幅に比べて60%ぐらいに低下している。これらのことは、被験者11では、同じようにレンズで透過率を下げても、普通の被験者よりも効果が出やすいことを示す。すなわち、被験者11は、平均的なユーザーの眩しさの感じ方よりも、眩しく感じにくい被験者であると判断でき、同程度の眩しさ低減効果をレンズカラーによって得る場合には、レンズの濃度は低くても良いことになる。例えば、標準的なユーザーに対するカラー濃度を70%とする場合には、被験者10の場合には70%、被験者2の場合には50%にしたレンズを被験者にそれぞれ適したレンズとして作成して提供することができる。この際、濃度の決定は、図20(b)などの測定結果をもとに標準的な被験者について検量線を作成しておき、それに適用させることが好ましい。このようにすることで、大脳視覚野等の誘発活動の評価結果をレンズの分光透過率の設計に反映することが出来、ユーザーにとって最適なレンズの分光透過率を設計したレンズを提供することが可能となる。
【0034】
<実施例10>
実施例10は「コントラスト」を視覚刺激とした実施例である。
特定の波長を光の吸収や反射によってカットするレンズ(カラーレンズなど)を装用することによりレンズを通して見た映像のコントラストが変化する。しかしながらコントラストの客観的な測定は難しく、基本的には分光透過率曲線を使って製品設計を行い、その主観評価をすることが主な製品の開発手法となっている。そこで、本実施例10では、大脳視覚野の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激対象を分光透過率(分光分布)をコントロールしたレンズを通して目視させ、前記評価対象レンズによる視覚刺激対象の目視時の大脳視覚野の誘発活動を測定し、大脳視覚野の誘発活動を評価することによって、コントラストの定量化を行う。
大脳の1次視覚野には、輝度を認識する細胞の他、エッジや線分を認識する細胞、高い空間周波数を認識する細胞が存在している。例えば図24(この指標は線分が薄いグレー、背景が黒に近い濃いグレーで構成されている)のような指標を呈示した時に、大脳の1次視覚野の活動が高ければ(つまり、誘発活動が出現するまでの時間が早かったり、誘発活動が大きいこと)、図24の背景と線分の差を大脳1次視覚野で知覚されていることを意味し、その被験者にとってそのレンズを通して見える刺激対象が高いコントラストであることがわかる。
【0035】
1.誘発活動測定方法及び評価方法
暗室の磁気シールドルーム内において、刺激250ms、刺激間間隔500msで図24に示すような視覚下半域に呈示する低輝度で低コントラストの格子の刺激対象を呈示しながら、図16に示した(I)〜(IV)の分光波形を持つカラーレンズを装用させ、視覚誘発磁界(VEF)を測定した。測定は、非磁性レンズと非磁性フレームを用い、306チャンネル脳磁計を用いた。解析は、ダイポール推定を用いて1次視覚野の活動と2次、3次視覚野を分離した後、1次視覚野の活動を解析し、評価した。
ある被験者12では、1次視覚野の活動(M100)の潜時は、(I)<(IV)≒(III)<(II)であり、レンズ(I)でコントラストが上がる結果であった(図25)。振幅でもレンズ(I)で10%程度大きく、比較した4色の中ではカラー(I)でコントラストが向上すると判断できた。
一方で、ある被験者13のM100潜時は(IV)<(I)≒(II)<(III)であった。被験者2にとってはレンズカラー(IV)でコントラストが向上すると判断できた。
尚、本実施例10は、脳磁図によるものであるが、このような実験結果をもとに、評価するための計測ターゲットとする脳反応を絞り込んでおくことで、計測ターゲット付近のみに電極をつけて脳波を用いて測定することも可能である。例えば、この場合においては、低コントラストの視覚刺激対象と実施例3の評価手法などによりコントラストを評価することができる。
【0036】
<実施例11>
実施例11も「コントラスト」を視覚刺激とした実施例である。実施例10における図24の背景および刺激対象物(線分)を有彩色として、より日常生活に近いシーンのコントラストを評価するようにした。実施例10は無彩色におけるコントラストであったが、日常の世界は色彩豊かな有彩色で構成されている。そのため有彩色のコントラストを評価することが重要である。
実施例11では、図26のようにゴルフ場の芝目を想定して、背景を草緑色RGB(157,172,85)とし、格子色を黄色RGB(216,203,119)とした緑−黄格子の刺激対象を用いて、刺激時間250ms、刺激間間隔500msで被験者14に呈示した。
被験者14はカラー(A)〜(H)のレンズを装用して、視距離2mで306チャンネル脳磁計を用いて計測した。解析は実施例1と同様の方法を用いて、V1付近のグラディオメーターペアのRSS波形により、M100の潜時と振幅を求めた(図27)。
尚、本例においてもBESAなどでダイポール推定を行い、2次視覚野や3次視覚野と1次視覚野の活動を分離することでさらに精度の良い解析ができるのは他の実施例と同様である。図27に示したRSS波形の結果、M100の活動は、レンズカラー(A)で潜時が早く、振幅が大きかった。一方で、レンズカラー(F)では、潜時が20msほど遅れるとともに、著しい振幅の低下が観察された。すなわち、草緑色と黄色の識別(コントラストが高いと識別しやすくなる)はレンズカラーAで好ましいと評価できる。すなわち、被験者14ではレンズカラーAを装用した場合に芝目のコントラストを高く感じると言うことが分かる。更に、別の被験者における測定結果では、レンズFにおいて、振幅の低下と潜時の遅れが観察される点は被験者14と同じであったが、この被験者ではレンズカラーGで最も潜時が早く、この被験者に最も適しているのはレンズカラーGと判断できた(測定結果のグラフは省略した)。
尚、本実施例11は芝目を想定したコントラストの評価例であったが、有彩色の組み合わせはこれに限定されない。例えば、落ち葉が夕日に映えている場面のコントラストを評価したいと想定した場合、落ち葉に夕日が映っている写真や映像などから特徴的な2色(例えば、茶色RGB(125,76,30)と橙RGB(196,123,45))を選んで茶色−橙で構成される視覚刺激対象を作成し、その視覚刺激対象を被験者に見せることで、落ち葉が夕日に映えている場面の落ち葉のコントラストを評価することが出来る。
【0037】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・レンズ評価においては、1次視覚野よりも高次の2次・3次視覚野の誘発活動では、3次視覚野の誘発活動のみに着目して評価することが好ましい。これは、3次視覚野の誘発活動は視覚刺激対象および刺激方法の工夫により1次視覚野の誘発活動とほぼ完全に分離することが可能であることと比較して、2次視覚野の誘発活動は1次視覚野の誘発活動と重なりやすく、更に、3次視覚野の誘発活動はレンズの屈折差の細かな差によって変動するためである。
・実施例3〜5では国際10−20電極法におけるOzの位置を測定した例を示したが、電極位置は対象とする活動源に合わせて設定することもでき、これに限定されない。例えば、3次視覚野の誘発活動を測定する場合においては、国際10−20電極法のT5、T6の位置が活動源に近いことからT5、T6を電極位置とすることもできる。また、実施例3〜5では後頭葉における単電極の測定例であったが、前頭葉や頭頂付近の電極、例えば国際10−20電極法のFzやCzなども測定して、後頭葉の電極との差分波形を得ることでより目的とする誘発活動の波形を得ることができる。
・実施例11の有彩色の視覚刺激対象は2色の例で示したが、2色以上を用いることも可能である。例えば、背景を色彩豊かな実際の写真などとしておき、そこに刺激としてある色の線分の組み合わせを呈示するなどすると、更に実際に近い状態のコントラストを評価できる。また、コントラスト評価の目的とする場面の色使いを模した複数の色で背景や刺激となる線分を構成するなどとしても良い。本実施例では説明を容易とするため2色で記載した。
・実施例11のような有彩色の視覚刺激対象を用いることで、例えば、色弱や色盲といった個人の特性なども本発明の評価手法を用いれば大脳視覚野の誘発活動として簡易に測定できる。その場合、色弱の程度が1次視覚野の誘発活動の大きさや潜時となって測定されることになる。そして、あるレンズの装用時を測定することで、色弱や色盲がそのレンズによってどのように改善するかを評価することが出来る。このように、本発明の有彩色の視覚刺激対象およびそれを用いた大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法は、色盲や色弱の検査やそれを改善するための眼鏡レンズの評価などにも用いることが可能である。
【0038】
・本発明の誘発活動の実施例は、概ね2Hz(刺激間間隔500ms)で視覚刺激を呈示した場合を記載したが、4Hz以上(刺激間間隔250ms以下)で高速に刺激を呈示し、その測定結果をフーリエ変換などで周波数解析を行うことで誘発活動の定常状態(定常状態視覚誘発電位(または定常状態視覚誘発磁界))を計測することができる。本発明における誘発活動の大きさ(振幅)が小さくなると、一般に4Hz以上で刺激呈示した場合の定常状態視覚誘発電位(または定常状態視覚誘発磁界)の振幅も小さくなるため、本発明は4Hz以上の刺激呈示をして、定常状態視覚誘発電位(または定常状態視覚誘発磁界)を評価して眼鏡レンズを評価することもできる。
・大脳視覚野等の特定部位における誘発活動の評価は、前記特定部位における誘発活動と相関のある反応(活動)について評価することで間接的に前記特定部位における誘発活動を評価することが出来る。例えば、外部刺激(光)は網膜視覚細胞に入力されてから1次視覚野に伝わった後、より高次の脳部位に伝達され、その後、頭頂付近で認知判断に関するP300を出現させる。そのため、1次視覚野の誘発活動の反応時間(潜時)が遅れるときにはその後のP300などの反応も遅れることになるため、例えば1次視覚野の反応を計測する代わりに相関する脳反応であるP300などを計測しても良い。このように間接的に大脳視覚野等の特定部位の活動を評価する場合であっても、本発明に含まれる。
・請求項28に示した光の吸収または反射等によりレンズの分光透過率を変化させたレンズには、例えば、レンズ表面の反射防止膜などによりレンズの分光透過率を変化させたレンズも含まれ、本発明を用いることで眼鏡レンズの反射防止膜の効果なども評価することが出来る。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に評価対象レンズを装用させ、大脳の視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方の活動を誘発するための視覚刺激対象を前記評価対象レンズを通して目視させ、前記評価対象レンズによる視覚刺激対象の目視時の大脳視覚野の特定部位及び網膜視覚細胞の特定部位の少なくとも一方の誘発活動(以下、大脳視覚野等の誘発活動)を測定し、前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することを特徴とする大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項2】
前記評価対象レンズは、レンズ特性の異なるものを複数用意しておき、各評価対象レンズ毎に前記視覚刺激対象目視時の前記大脳視覚野等の誘発活動を測定し、大脳の誘発活動を評価することを特徴とする請求項1に記載した大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項3】
前記誘発活動は視覚誘発磁界を測定し、その値に基づいて評価することを特徴とする請求項1又は2に記載した大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項4】
前記誘発活動は視覚誘発電位を測定し、その値に基づいて評価することを特徴とする請求項1又は2に記載した大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項5】
前記視覚刺激対象は塗りつぶしの無い線分の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項6】
前記視覚刺激対象は有彩色の組み合わせによって構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項7】
前記視覚刺激とは空間周波数であって、この空間周波数によって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項8】
前記視覚刺激とは高輝度光によるまぶしさであって、このまぶしさによって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項9】
前記視覚刺激とはコントラストであって、このコントラストによって誘発される前記大脳視覚野等の誘発活動を評価することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項10】
前記視覚刺激対象の有彩色の組み合わせはコントラストを評価したい風景、画像または映像などから選択された色の組み合わせで構成されることを特徴とする請求項9に記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項11】
前記大脳視覚野等の誘発活動の評価は、前記大脳視覚野の特定部位又は網膜視覚細胞の特定部位の活動を誘発するための視覚刺激対象呈示時から誘発活動が出現するまでの時間を評価指標とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載した大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項12】
前記大脳視覚野等の誘発活動の評価は、前記大脳視覚野の特定部位の活動又は網膜視覚細胞の特定部位を誘発するための視覚刺激対象を呈示したことによる誘発活動の大きさを評価指標とすることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載した大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項13】
前記誘発活動が出現するまでの時間が早い方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することを特徴とする請求項11に記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項14】
前記誘発活動の大きさが大きい方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することを特徴とする請求項12に記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項15】
前記視覚刺激がまぶしさである場合においては、前記網膜視覚細胞における前記誘発活動が出現するまでの時間は遅い方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することを特徴とする請求項11に記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項16】
前記視覚刺激がまぶしさである場合においては、前記網膜視覚細胞における前記誘発活動の大きさが小さい方が好ましい眼鏡レンズ条件であると評価することを特徴とする請求項12に記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項17】
前記大脳の誘発活動から紡錘状回の誘発活動を分離し、分離後の紡錘状回の誘発活動を評価することを特徴とする請求項8、11、12、15及び16のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項18】
前記大脳視覚野の特定部位は、2次視覚野または3次視覚野であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項19】
前記大脳の誘発活動から2次視覚野または3次視覚野の誘発活動を分離し、分離後の2次視覚野または3次視覚野の誘発活動を評価することを特徴とした請求項1〜18に記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項20】
前記大脳の誘発活動から1次視覚野の誘発活動と2次視覚野または3次視覚野の誘発活動を分離し、分離後の1次視覚野の誘発活動を評価することを特徴とした請求項1〜19のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項21】
視覚誘発電位を用いる場合において、1次視覚野を視覚刺激することにより誘発されるP100成分の直後であって、P100成分とはピーク極値が逆となる3次視覚野由来の誘発電位を評価に用いることを特徴とする請求項18又は19に記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項22】
前記網膜視覚細胞の特定部位の誘発活動は、前記大脳視覚野等の誘発活動から分離して算出することを特徴とする請求項1〜21に記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項23】
前記視覚刺激対象の輝度又はコントラストは、評価対象の眼鏡レンズの光学性能の差または形状の差または分光波形の差により設定し、評価対象の眼鏡レンズの光学性能の差または形状の差または分光波形の差が小さい場合には、前記視覚刺激の輝度またはコントラストを小さく設定することを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項24】
前記視覚刺激対象は視覚下半域に配置されることを特徴とする請求項1〜23のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項25】
前記視覚刺激対象はレンズの中心から離れた周辺部のみを通って眼に入射するように呈示することを特徴とする請求項1〜24のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項26】
前記評価対象の眼鏡レンズはレンズの周辺部の形状を少しずつ変化させた非球面レンズであることを特徴とする請求項1〜25のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項27】
前記評価対象の眼鏡レンズはレンズ形状を少しずつ変化させた累進屈折力レンズであることを特徴とする請求項1〜26のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項28】
前記評価対象の眼鏡レンズは、光の吸収または反射等により、レンズの分光透過率を変化させたレンズであることを特徴とする請求項1〜27のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれかに記載の大脳視覚野等の誘発活動による眼鏡レンズの評価方法を用いることによる眼鏡レンズの設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図24】
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【図3】
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【図14】
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【図15】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−11877(P2013−11877A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−122917(P2012−122917)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【Fターム(参考)】