大腿骨骨接合用インプラント部材
【課題】手術中に容易に大転子部に密着でき、かつ手術後骨から伝わる大きな荷重によっても変形しない大転子固定部材を備えた大腿骨骨接合用インプラント部材を提供する。
【解決手段】大転子固定部材12を可動部21と固定部22とで構成し、この可動部21と固定部22を、互いのなす角度が変化できるように連結軸23を介して連結し、この可動部21と固定部22のいずれか一方の部材には軸受け部を形成し、他方の部材には連結軸23を一体に接合し、この連結軸23を前記軸受け部で回転自在に支持し、さらに前記軸受け部の内面へ貫通する雌ネジを有するボルト穴25を形成し、この雌ネジに螺合する雄ネジを有する固定ボルトを備え、この固定ボルトを締め込むことにより連結軸23を前記軸受け部に押し付けて固定するように構成する。
【解決手段】大転子固定部材12を可動部21と固定部22とで構成し、この可動部21と固定部22を、互いのなす角度が変化できるように連結軸23を介して連結し、この可動部21と固定部22のいずれか一方の部材には軸受け部を形成し、他方の部材には連結軸23を一体に接合し、この連結軸23を前記軸受け部で回転自在に支持し、さらに前記軸受け部の内面へ貫通する雌ネジを有するボルト穴25を形成し、この雌ネジに螺合する雄ネジを有する固定ボルトを備え、この固定ボルトを締め込むことにより連結軸23を前記軸受け部に押し付けて固定するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腿骨骨頭近傍を骨折した際の治療において、骨の固定治療用として用いるインプラント部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、大きな荷重のかかる大腿骨骨頭近傍には骨折が多く発生することから、骨頭用軸部材とプレートが「く」の字状に連結されたインプラント部材を用い、骨折した骨を所望の形状に保持する治療が行われている。
【0003】
図8は、骨折した大腿骨骨頭近傍にインプラント部材を取り付けた状態を説明する断面図であり、大腿骨骨頭部15と大腿骨骨幹部16が大腿骨頚部18で骨折している場合である。このように骨折した大腿骨に対して、骨頭用軸部材10が骨頭部15に挿設され、この骨頭用軸部材10に連結したプレート11がネジ部材13によって骨幹部16に沿って固定されて、頚部18を連結固定している(従来例1)。
【0004】
なお、上記従来例1のインプラント部材は、骨頭用軸部材10とプレート11のなす角度が固定されているが、大腿骨の骨頭部と骨幹部とのなす角度は個人差があり、このため、種々の角度のインプラント部材を準備する必要があった。そこで、骨頭用軸部材とプレートのなす角度を可変式としたインプラント部材が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3など)。
【0005】
なかでも、本発明者らが特許文献3に開示したインプラント部材は、図9に示すように、骨頭用軸部材の一部を構成する大腿骨チューブ32とプレート11とが、互いのなす角度が変化できるように連結軸34を介して連結されており、図10(a)〜(c)に示すように、第1作動部材35(雄ネジ35b)を回転操作して第2作動部材36(雌ネジ36b、凸部36a)を移動させ、この移動により凹部36cが移動し、大腿骨チューブ32が連結軸34回りに回転し、上記角度(連結角度)が変化するように構成されているので、手術中に連結角度の微調整ができ、かつ骨外に張り出す部分が小さいため出血が少ないなど患者の負担が軽減でき、しかも手術後骨頭部にかかる大きな荷重に抵抗することができる優れたインプラント部材である(従来例2)。
【0006】
しかしながら、大腿骨骨頭部近傍には筋に連結された腱に接続される大転子、小転子などがあり、これらは腱から大きな荷重を受けることがあるために破断してしまうことが多い。また、骨頭部近傍は関節から大きな荷重を受けるため複雑な骨折を起すことが比較的多い。このような骨折に対応するため、図11に示すようなインプラント部材が提案されている。
【0007】
このインプラント部材は、プレート11の上端部につば状の比較的肉厚の延長部分(大転子固定部材)12を一体的に設け、この延長部分(大転子固定部材)12に複数のネジ係合孔を形成し、このネジ係合孔にネジ部材13を係合させて骨内にねじ込むことによって大転子部17近傍の骨折部を固定したり、過剰なスライディングを防止するような機能を持つ(従来例3)。
【0008】
また、特許文献4には、図12に示すように、従来のプレート11の上端部の肩部に対し着脱自在に構成された肉厚の延長プレート(大転子固定部材)12を設け、この延長プレート(大転子固定部材)12にネジ係合孔14を形成して大転子部近傍の骨折を固定するためのネジ部材を挿通、係合させるようにしたものが開示されている(従来例4)。
【0009】
さらに、特許文献5には、図13に示すように、従来のプレート11の上端部の肩部に対し着脱自在に構成された肉薄の延長プレート(大転子固定部材)12を設け、この延長プレート(大転子固定部材)12には複数の舌状部43を、手術中に手指などで容易に変形可能に構成し、各舌状部にはネジ係合孔14を形成して大転子部近傍の骨折を固定するためのネジ部材を挿通、係合させるようにしたものが開示されている(従来例5)。
【0010】
ところが、実際の大転子近傍の骨形状は患者ごとに大きく異なるため、上記従来例3の延長部分を一体的に備えたプレートを用いた場合、プレートが全体として骨幹部から浮き上がってしまったり、逆に延長部分が大転子部から離れてしまうケースがある。特に、本発明者らが開発した上記従来例2の大腿骨チューブとプレートとの連結角度が調整できるインプラント部材において、大腿骨チューブの下端部近傍に一体的に延長プレート(大転子固定部材)を設けた場合、前記連結角度が変わると延長プレート(大転子固定部材)とプレートとの角度も変わってしまうため、延長プレート(大転子固定部材)と大転子部とを密着させることはさらに困難となる。
【0011】
一方、上記従来例4のプレートの場合、プレートに対して延長プレート(大転子固定部材)を着脱可能に構成しているため、延長プレート(大転子固定部材)のみ多種類用意しておけば必要に応じて延長プレート(大転子固定部材)を取り替えることができる。しかし、プレートを骨表面に固定した状態での延長プレート(大転子固定部材)の着脱が難しい上、手術中に適合する延長プレート(大転子固定部材)を探しながら延長プレート(大転子固定部材)の着脱を繰り返さなければならないという問題がある。
【0012】
また従来例5は、従来例3および4の問題を解決すべく提案されたものであり、手術中に前記舌状部を手指などにより容易に大転子部の表面形状に合わせて変形できるとするものである。しかし、前記舌状部が手指などで容易に変形できる程度の強度であるため、前記舌状部が骨から伝わる約200Nを超える荷重を受けて変形してしまう可能性がある。
【特許文献1】特表平7−509621号公報
【特許文献2】米国特許3554193号明細書
【特許文献3】特開平10−52438号公報
【特許文献4】実用新案登録第3021149号公報
【特許文献5】特許第2942539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明の課題は、多種多様な患者に低コストで適用できるインプラント部材を提供することにあり、具体的には、上記従来の延長プレート(大転子固定部材)を備えたインプラント部材の各問題点を解決するため、手術中に容易に大転子部に密着でき、かつ手術後骨から伝わる大きな荷重によっても変形しない延長プレート(大転子固定部材)を備えたインプラント部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、大腿骨骨頭部に埋設される骨頭用軸部材と、この骨頭用軸部材の下端部に接続され大腿骨骨幹部外表面に沿って固定されるプレートと、このプレートの上端部から上方に延長され大腿骨大転子部外表面に沿って固定される大転子固定部材とを備えたインプラント部材において、前記大転子固定部材が、可動部と固定部とで構成され、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部が、前記可動部と前記固定部のなす角度が変化できるように連結手段を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられていることを特徴とする大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0015】
本発明によれば、大転子固定部材に肉厚の材料を用いても上記可動部が上記固定部に対して角度を自在に変更できるので、大転子部の形状によらず、手術中容易に上記可動部を大転子部に接触させて固定することができ、手術後の骨からの大きな荷重により変形することもない。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記角度調整手段が、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部のいずれか一方の部材には軸受け部が形成され、他方の部材には前記連結手段としての連結軸が一体に接合され、この連結軸が前記軸受け部で回転自在に支持され、さらに前記軸受け部の内面へ貫通する雌ネジを有するボルト穴が形成され、この雌ネジに螺合する雄ネジを有する固定ボルトが備えられ、この固定ボルトが締め込まれることにより前記連結軸を前記軸受け部に押し付けて固定するように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0017】
本発明によれば、前記連結軸回りに前記大転子固定部材の前記可動部を回転させて大転子部に接触させた位置で上記固定ボルトを締め込むことにより、前記連結軸が前記軸受け部内面に押し付けられて摩擦力により固定されるので、前記連結軸に一体に結合した前記可動部がちょうど大転子部に接触した位置で固定できる。前記連結軸と前記軸受け部内面との間の摩擦力は、これらのうち少なくともどちらか一方の表面に溝を付ける、もしくは金属溶射やショットブラストなどにより表面を荒らすことにより高めることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記角度調整手段が、外部から回転操作可能な第1作動部材と、この第1作動部材と連動する第2作動部材が設けられ、前記第1作動部材または前記第2作動部材のいずれか一方が雄ネジを備えた部材で形成され、他方が前記雄ネジに螺合する雌ネジを備えた部材で形成され、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部のいずれか一方には、前記第1作動部材が取り付けられ、他方には前記第2作動部材が取り付けられ、前記第1作動部材を回転操作して、前記第2作動部材を該第1作動部材に対して相対的に移動させることにより、前記可動部が前記連結手段としての連結軸の回りに回転するように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0019】
本発明によれば、上記雄ネジと上記雌ネジの螺合する部分が広く、この螺合している部分全体で、骨からの荷重を受けることになり、さらに大きな荷重に対しても十分に抵抗することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記可動部と前記固定部が着脱自在に構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプラント部材である。
【0021】
本発明によれば、可動部を固定部に対して着脱自在としていることから、サイズや形状の異なる可動部のみを複数種類準備しておくだけで、骨折の状況に応じてより適切な可動部を選択することができ、大転子固定部材を一体に設けたインプラント部材を複数種類準備することに比して大幅にコストが節約できる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、前記軸受け部に、前記連結軸を出し入れできる開放部が形成されるとともに、前記固定ボルトが締め込まれたときその先端が前記開放部側に突き出るように構成されている請求項2に記載のインプラント部材である。
【0023】
本発明によれば、簡単な構造で可動部と固定部を着脱自在としつつ、可動部を固定部に装着したときに可動部が外れないようにできる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、前記プレートの上端部と前記骨頭用軸部材の下端部とが、前記プレートと前記骨頭用軸部材とのなす角度が変化できるように連結軸を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0025】
本発明によれば、手術中に骨頭部軸部材とプレートとのなす角度を調整した後、さらに大転子固定部材の角度を調整できるので、手術時間を短縮しつつより確実で適切な固定が達成できる。また、インプラント部材を多種類準備しておく必要がないのでコストも大幅に節約できる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、前記大転子固定部材が、前記骨頭用軸部材の下端部又は前記プレートの上端部に着脱自在に備えられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0027】
本発明によれば、大転子固定部材を着脱自在としていることから、従来の大転子固定部材を備えていないインプラント部材を利用することができ、新たに大転子固定部材を一体に備えたインプラント部材を製作する必要がないので、コストが節約できる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、前記骨頭用軸部材が、先端に軸部材を備えたラグスクリューと、このラグスクリューの下端が挿入される大腿骨チューブとを備え、前記ラグスクリューが前記大腿骨チューブにその軸方向に摺動自在に挿設されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0029】
本発明によれば、骨頭用軸部材をラグスクリューと大腿骨チューブで構成し、軸方向に摺動自在に挿設したことから、請求項1〜7に記載の発明の効果に加えて、骨頭部と骨幹部の癒合を促進することができる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載の発明によれば、大転子固定部材が可動部と固定部で構成され、前記可動部と前記固定部が、互いのなす角度が変化できるように連結手段を介して連結されているので、大転子固定部材に肉厚の材料を用いても上記可動部が上記固定部に対して角度を自在に変更できるので、大転子部の形状によらず、手術中容易に上記可動部を大転子部に接触させて固定することができ、手術後の骨からの約200Nを超える荷重により変形することもない。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、前記可動部と前記固定部のいずれか一方の部材には軸受け部が形成され、他方の部材には前記連結手段としての連結軸が一体に接合され、この連結軸が前記軸受け部で回転自在に支持され、さらに前記軸受け部の内面へ貫通する雌ネジを有するボルト穴が形成され、この雌ネジに螺合する雄ネジを有する固定ボルトを備えたので、この固定ボルトを締め込むことにより、前記連結軸が前記軸受け部内面に押し付けられて摩擦力により固定されるので、前記連結軸に一体に結合した前記可動部がちょうど大転子部に接触した位置で固定できる。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、可動部と固定部の連結部には、外部から回転操作可能な第1作動部材と、該第1作動部材と連動する第2作動部材が設けられ、前記第1作動部材または前記第2作動部材のいずれか一方が雄ネジを備えた部材で形成され、他方が前記雄ネジに螺合する雌ネジを備えた部材で形成され、前記可動部と前記固定部のいずれか一方には、前記第1作動部材が取り付けられ、他方には前記第2作動部材が取り付けられ、前記第1作動部材を回転操作して、前記第2作動部材を該第1作動部材に対して相対的に移動させることにより、前記可動部を前記連結手段としての連結軸の回りに回転させるように構成したので、前記雄ネジと前記雌ネジの螺合する部分が広く、この螺合している部分全体で骨からの荷重を受けることになり、さらに大きな荷重に対しても十分に抵抗することができる。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、前記可動部と前記固定部が着脱自在に構成されているので、サイズや形状の異なる可動部のみを複数種類準備しておくだけで、骨折の状況に応じてより適切な可動部を選択することができ、大転子固定部材を一体に設けたインプラント部材を複数種類準備することに比して大幅にコストが節約できる。
【0034】
請求項5に記載の発明によれば、前記軸受け部に、前記連結軸を出し入れできる開放部が形成されるとともに、前記固定ボルトが締め込まれたときその先端が前記開放部側に突き出るように構成されているので、簡単な構造で可動部と固定部を着脱自在としつつ、可動部を固定部に装着したときに可動部が外れないようにできる。
【0035】
請求項6に記載の発明によれば、プレートの上端部と骨頭用軸部材の下端部とが、互いのなす角度が変化できるように連結軸を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられているので、手術中に骨頭部軸部材とプレートとのなす角度を調整した後、さらに大転子固定部材の角度を調整できるので、手術時間を短縮しつつより確実で適切な固定が達成できる。また、インプラント部材を多種類準備しておく必要がないのでコストも大幅に節約できる。
【0036】
請求項7に記載の発明によれば、大転子固定部材が、プレートの上端部に着脱自在に備えられているので、従来の大転子固定部材を備えていないインプラント部材を利用することができ、新たに大転子固定部材を一体に備えたインプラント部材を製作する必要がなく、コストが節約できる。
【0037】
請求項8に記載の発明によれば、骨頭用軸部材が、先端に軸部材を備えたラグスクリューと、このラグスクリューの下端が挿入される大腿骨チューブとを備え、前記ラグスクリューが前記大腿骨チューブに回転自在に且つ軸方向に摺動自在に挿設されているので、請求項1〜7に記載の発明の効果に加えて、骨頭部と骨幹部の癒合を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係る大腿骨骨接合用インプラント部材の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
図1〜4は請求項1、2、4〜8に記載の発明の実施の一態様である着脱式の大転子固定部材を備えたインプラント部材を説明する図であり、図1は各構成部分の関係を示す矢視図、図2は組立て断面図、図3は大転子固定部材の構造を説明する断面図(a)、左側面図(b)、及び右側面図(c)、図4は大転子固定部材の構造を説明する、(a)は可動部装着時の矢視図、(b)は可動部取り外し時の矢視図である。
【0040】
本発明(請求項1、2、4〜8)の実施の形態のインプラント部材は、生体に埋設されることからすべて生体適合性材料、例えばチタン合金などで構成され、図1および2に示すように、先端にネジ部を有するラグスクリュー33と、このラグスクリュー33の下端が挿入される大腿骨チューブ32により骨頭用軸部材10が構成され、プレート11の上端部と大腿骨チューブ32の下端部とが、互いのなす角度が変化できるように、角度調整手段であるアジャスタブルユニット20を介して「く」の字状に接続され、さらに、着脱自在の大転子固定部材12が、その下部(固定部22)を大腿骨チューブ32の下端部の肩部に差し込まれて固定されている。
【0041】
図3および4に示すように、大転子固定部材12は、可動部21と固定部22とに上下に2分割され、可動部21の下端部と固定部22の上端部とは、可動部21と固定部22とのなす角度が自在に変化できるように水平な連結軸23を介して連結されている。可動部21に連結軸23を結合して可動部21と連結軸23が一体に回転するようにするとともに、固定部22に軸受け部24を設けて連結軸23を回転自在に支持する構造とし、さらに、軸受け部24内面まで貫通する雌ネジのボルト穴25を形成し、この雌ネジに螺合する雄ネジの固定ボルト25aを備えている。これにより、可動部21を手指などにより自在に回転させてその位置(角度)を定めた後、固定ボルト25aをねじ込んで連結軸23を軸受け部24内面に押し付けて摩擦力で固定することにより可動部21を任意の位置(角度)で固定できる。可動部21と連結軸23の結合の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、通常行われるような、連結軸23の一部の表面を切り欠いて断面形状を円形ではない形状とし、可動部21には前記断面形状に嵌合する孔を設けて連結軸23を挿入・嵌合する方法でもよいし、可動部21に設けた円形断面の孔に連結軸23を挿入後、接着する方法やピン止めする方法でもよい。本実施の形態では、固定部部材22の上端部の両方の幅端部にそれぞれ軸受け部24を形成しそれぞれにボルト穴25を設けている(したがって軸受け部、ボルト穴とも2箇所存在する)が、これに限るものではなく、例えば、固定部部材22の上端部の幅中央部に軸方向に長い軸受け部を1箇所形成し、ボルト穴を中央に設けてもよい(この場合、軸受け部、ボルト穴とも1箇所でよい)。さらに、図4に詳細を示すように、軸受け部24の一部を切り欠いて開放しておき、軸受け部24と連結軸23とを着脱できる構造としておくと可動部21のみを固定部22から取り外して交換できるのでより好ましい。この場合、固定ボルト25aの先端が軸受け部24の開放部24a側に突き出るような構造にしておくと固定ボルト25aを締め込んで可動部21の角度を固定したとき固定部22が軸受け部24から外れないのでより好ましい。なお、本実施の形態と逆に、可動部21に軸受け部24を設け、固定部22に連結軸23を結合しても同じ作用効果が得られる。また、可動部21は大転子部からの約200Nを超える繰り返し荷重により変形しない程度の肉厚構造とし、大転子部の形状に個人差があることや骨折の状況がさまざまであることを考慮して、可動部21は、その幅や長さ、ネジ嵌合孔14の数、ワイヤ係合溝26の有無等が異なる複数種類を準備しておくこともよい。そうすれば、手術に際してはその内の最適のものを選択して使用し、手術中に可動部21の角度調整を行なうことによって、大転子固定部材12をより大転子部に密着させて設置することができる。
【0042】
本実施の形態では、大転子固定部材12を大腿骨チューブ32の肩部へ固定する方法として、大転子固定部材下部(固定部22)を前記肩部に嵌め合わせる方法を採用しているが、これに限るものではなく、大転子固定部材下部(固定部22)を前記肩部に差し込んだのち大転子固定部材下部(固定部22)をかしめる方法、ネジ止めする方法等通常行われる固定方法を用いてもよい。また、本実施の形態では大転子固定部材を着脱式としたが、これに限るものではなく、最初から大腿骨チューブ32の肩部に一体に形成してもよい。
【0043】
なお、プレート11と大腿骨チューブ32のなす角度の角度調整手段であるアジャスタブルユニット20としては、前述した従来例2の連結角度調整機構を採用すればよい。従来例2で説明した連結角度調整機構を以下に再度示す。すなわち、図10(a)〜(c)に示すように、骨頭用軸部材の一部を構成する大腿骨チューブ32とプレート11とを互いのなす角度が変化できるように連結軸34を介して連結し、第1作動部材35(摘み部35a、雄ネジ35b)を回転操作して第2作動部材36(雌ネジ36b、凸部36a)を移動させ、この移動により凹部36cが移動し、大腿骨チューブ32が連結軸34回りに回転し、上記角度(連結角度)が変化するように構成すればよい。上記雄ネジと上記雌ネジの螺合する部分が広く、この螺合部分全体で大転子部からの荷重を受け止めることになるので、大きな荷重に対しても十分抵抗することができる。
【0044】
また、ラグスクリュー33が大腿骨チューブ32の筒内に軸方向に摺動自在に挿設されているから、骨頭部と骨幹部の癒合を促進することができる。また、骨頭をラグスクリューが突き破るいわゆるカットアウトを防止するため、ラグスクリューの骨頭側先端を球面形状とすることが好ましい。
【0045】
以上のように構成された本実施の形態のインプラント部材(請求項1、2、4〜8に記載の発明)を大腿骨の骨折に用いた例を図5により説明する。図5に示すように、頚部18と大転子部17に骨折が生じている場合を想定する。骨幹部16から骨折により分離した骨頭部15および大転子部17を骨幹部16に押し付けておき、所定の角度でドリル及びタップを用いて穿孔し、その孔に大腿骨チューブ32に嵌め込んだラグスクリュー33を挿入し骨頭部15にねじ込む。なお、大腿骨チューブ32の下端にはアジャスタブルユニット20を介してプレート11が一体に取り付けられている。ラグスクリュー33を完全に締め込む前にアジャスタブルユニット20の角度調節ネジ(摘み部35a)をドライバー等を用いて左右に回転することによってプレート11の角度を調節し、プレート11が骨幹部16表面と平行になったのを確認した後、ラグスクリュー33を完全に締め込んでプレート11を骨幹部16表面に密着させ、プレート11に予め形成されているネジ嵌合孔14を通してコーティカルスクリュー(ネジ部材13)を骨幹部16にネジ込みプレート11を骨幹部16表面に沿って固定する。
【0046】
次いで、大転子固定部材12の可動部21を手指にて前後に動かし大転子部17表面にちょうど接触する位置(角度)でボルト穴25内の固定ボルト25aを締め込んで可動部21を固定する。その後、必要により、可動部21に予め形成されているスクリューホール(ネジ係合孔14)を通してキャンセラススクリュー(ネジ部材13)を大転子部17内にねじ込んで大転子部17を可動部21に固定する。あるいは、図5に示すように、頚部18に巻き付けたワイヤ27を可動部21に予め形成されているワイヤ係合溝26に係合させることにより大転子部17の骨片を頚部18に締結してもよい。
【0047】
このように本発明のインプラント部材を用いることにより、従来の大腿骨チューブとプレートとの連結角度および大転子固定部材の角度がともに固定のインプラント部材を用いた場合に問題となるプレートの骨幹部からの浮き上がりや大転子固定部材の大転子部からの離脱がなく、したがって、手術に際して複数のインプラント部材や大転子固定部材を準備する必要がなくなり、手術中の部材の取り換えをも不要とするので、容易かつ短時間で最適な状態に(骨に密着させて)インプラント部材の取り付けが可能となるものである。
【0048】
上記実施の形態では、大転子固定部材の角度調整に請求項2に記載の発明を適用した場合について説明したが、別の実施の形態として、大転子固定部材の角度調整に請求項3に記載の発明を適用した場合について以下に説明する。すなわち、上記実施の形態の中で説明した大腿骨チューブとプレートとの連結角度の調整手段を大転子固定部材の連結部にも応用したものである。図7を用いて、この別の実施の形態の構成を詳細に説明する。
【0049】
図7において、第1作動部材45は雄ネジ45bを有し、また外部から回転操作が可能な摘み部45aを備えている。第2作動部材46には、上記雄ネジ45bに螺合する雌ネジ46bを有する貫通孔が形成され、かつ上方に突出する断面形状逆U字状の凸部46aが形成されてなり、固定部22の上端に形成された凹部間に回転が阻止された状態で嵌め込まれている。上記第1作動部材45と上記第2作動部材46により角度調整手段が構成されており、第1作動部材45が固定部22の上端部に回転可能に取り付けられ、第2作動部材46は可動部21の下端部に形成された断面形状逆U字状の凹部46cに嵌入されることにより可動部21の下端に取り付けられ(連結され)ている。可動部21の角度の調整の際には、図7(b)に示すように、摘み部45aを摘んで、あるいはドライバー等で第1作動部材45を回すと、雄ネジ45bに対する雌ネジ46bの位置が移動し、この移動に伴って凸部46aとこれに嵌合する凹部46cが移動する。この凹部46cの移動によって、可動部21が連結軸23回りに回転し、固定部22と可動部21のなす角度が変化する。凹部46cと連結軸23との距離が短いから、凹部46cが小さく移動することによりその角度を大きく変えることができる。したがって、前述した大腿骨チューブとプレートの連結角度調整手段と同様、可動部21と固定部22の連結部が小さいものでありながらも、広い角度範囲の調整をおこなうことができる。また、上記雄ネジと上記雌ネジの螺合する部分が広く、この螺合部分全体で大転子部からの荷重を受け止めることになるので、大きな荷重に対しても十分抵抗することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、大腿骨チューブとプレートとの連結角度が可変の構造としたが、これに限定されるものではなく、従来の連結角度が固定のインプラント部材にも当然適用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明(請求項2)のインプラント部材の各構成部分の関係を示す矢視図である。
【図2】本発明(請求項2)のインプラント部材の組立て断面図である。
【図3】本発明(請求項2)のインプラント部材を構成する大転子固定部材の構造を説明する、(a)は左側面図、(b)は断面図、(c)は右側面図である。
【図4】本発明(請求項2)のインプラント部材を構成する大転子固定部材の構造を説明する、(a)は可動部装着時の矢視図、(b)は可動部取り外し時の矢視図である。
【図5】本発明(請求項2)のインプラント部材を大腿骨に取り付けた様子(大転子部をネジ部材で固定したケース)を表す断面図である。
【図6】本発明(請求項2)のインプラント部材を大腿骨に取り付けた別の様子(大転子部をワイヤで固定したケース)を表す断面図である。
【図7】本発明(請求項3)のインプラント部材を構成する大転子固定部材の構造説明する、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図8】従来例1のインプラント部材を大腿骨に取り付けた様子を表す断面図である。
【図9】従来例2のインプラント部材を示す正面図である。
【図10】従来例2のインプラント部材を構成する角度調整手段を示す、(a)は図9のBB断面図、(b)及び(c)は図10(a)のCC断面図である。
【図11】従来例3のインプラント部材を大腿骨に取り付けた様子を表す断面図である。
【図12】従来例4の着脱式の大転子固定部材を示す、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図13】従来例5のインプラント部材を大腿骨に取り付けた様子を表す正面図である。
【符号の説明】
【0052】
10…骨頭用軸部材、11…プレート、12…大転子固定部材(延長部分、延長プレート)、13…ネジ部材(キャンセラススクリュー)、14…ネジ係合孔(スクリューホール)、15…大腿骨骨頭部、16…大腿骨骨幹部、17…大転子部、18…大腿骨頚部、20…角度調整手段(アジャスタブルユニット)、21…可動部、22…固定部、23…連結軸、24…軸受け部、24a…開放部、25…ボルト穴、25a…固定ボルト、26…ワイヤ係合溝、27…ワイヤ、32…大腿骨チューブ、33…ラグスクリュー、34…連結軸、35…第1作動部材、35a…摘み部(角度調節ネジ)、35b…雄ネジ、36…第2作動部材、36a…凸部、36b…雌ネジ、36c…凹部、43…舌状部、45…第1作動部材、45a…摘み部、45b…雄ネジ、46…第2作動部材、46a…凸部、46b…雌ネジ、46c…凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腿骨骨頭近傍を骨折した際の治療において、骨の固定治療用として用いるインプラント部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、大きな荷重のかかる大腿骨骨頭近傍には骨折が多く発生することから、骨頭用軸部材とプレートが「く」の字状に連結されたインプラント部材を用い、骨折した骨を所望の形状に保持する治療が行われている。
【0003】
図8は、骨折した大腿骨骨頭近傍にインプラント部材を取り付けた状態を説明する断面図であり、大腿骨骨頭部15と大腿骨骨幹部16が大腿骨頚部18で骨折している場合である。このように骨折した大腿骨に対して、骨頭用軸部材10が骨頭部15に挿設され、この骨頭用軸部材10に連結したプレート11がネジ部材13によって骨幹部16に沿って固定されて、頚部18を連結固定している(従来例1)。
【0004】
なお、上記従来例1のインプラント部材は、骨頭用軸部材10とプレート11のなす角度が固定されているが、大腿骨の骨頭部と骨幹部とのなす角度は個人差があり、このため、種々の角度のインプラント部材を準備する必要があった。そこで、骨頭用軸部材とプレートのなす角度を可変式としたインプラント部材が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3など)。
【0005】
なかでも、本発明者らが特許文献3に開示したインプラント部材は、図9に示すように、骨頭用軸部材の一部を構成する大腿骨チューブ32とプレート11とが、互いのなす角度が変化できるように連結軸34を介して連結されており、図10(a)〜(c)に示すように、第1作動部材35(雄ネジ35b)を回転操作して第2作動部材36(雌ネジ36b、凸部36a)を移動させ、この移動により凹部36cが移動し、大腿骨チューブ32が連結軸34回りに回転し、上記角度(連結角度)が変化するように構成されているので、手術中に連結角度の微調整ができ、かつ骨外に張り出す部分が小さいため出血が少ないなど患者の負担が軽減でき、しかも手術後骨頭部にかかる大きな荷重に抵抗することができる優れたインプラント部材である(従来例2)。
【0006】
しかしながら、大腿骨骨頭部近傍には筋に連結された腱に接続される大転子、小転子などがあり、これらは腱から大きな荷重を受けることがあるために破断してしまうことが多い。また、骨頭部近傍は関節から大きな荷重を受けるため複雑な骨折を起すことが比較的多い。このような骨折に対応するため、図11に示すようなインプラント部材が提案されている。
【0007】
このインプラント部材は、プレート11の上端部につば状の比較的肉厚の延長部分(大転子固定部材)12を一体的に設け、この延長部分(大転子固定部材)12に複数のネジ係合孔を形成し、このネジ係合孔にネジ部材13を係合させて骨内にねじ込むことによって大転子部17近傍の骨折部を固定したり、過剰なスライディングを防止するような機能を持つ(従来例3)。
【0008】
また、特許文献4には、図12に示すように、従来のプレート11の上端部の肩部に対し着脱自在に構成された肉厚の延長プレート(大転子固定部材)12を設け、この延長プレート(大転子固定部材)12にネジ係合孔14を形成して大転子部近傍の骨折を固定するためのネジ部材を挿通、係合させるようにしたものが開示されている(従来例4)。
【0009】
さらに、特許文献5には、図13に示すように、従来のプレート11の上端部の肩部に対し着脱自在に構成された肉薄の延長プレート(大転子固定部材)12を設け、この延長プレート(大転子固定部材)12には複数の舌状部43を、手術中に手指などで容易に変形可能に構成し、各舌状部にはネジ係合孔14を形成して大転子部近傍の骨折を固定するためのネジ部材を挿通、係合させるようにしたものが開示されている(従来例5)。
【0010】
ところが、実際の大転子近傍の骨形状は患者ごとに大きく異なるため、上記従来例3の延長部分を一体的に備えたプレートを用いた場合、プレートが全体として骨幹部から浮き上がってしまったり、逆に延長部分が大転子部から離れてしまうケースがある。特に、本発明者らが開発した上記従来例2の大腿骨チューブとプレートとの連結角度が調整できるインプラント部材において、大腿骨チューブの下端部近傍に一体的に延長プレート(大転子固定部材)を設けた場合、前記連結角度が変わると延長プレート(大転子固定部材)とプレートとの角度も変わってしまうため、延長プレート(大転子固定部材)と大転子部とを密着させることはさらに困難となる。
【0011】
一方、上記従来例4のプレートの場合、プレートに対して延長プレート(大転子固定部材)を着脱可能に構成しているため、延長プレート(大転子固定部材)のみ多種類用意しておけば必要に応じて延長プレート(大転子固定部材)を取り替えることができる。しかし、プレートを骨表面に固定した状態での延長プレート(大転子固定部材)の着脱が難しい上、手術中に適合する延長プレート(大転子固定部材)を探しながら延長プレート(大転子固定部材)の着脱を繰り返さなければならないという問題がある。
【0012】
また従来例5は、従来例3および4の問題を解決すべく提案されたものであり、手術中に前記舌状部を手指などにより容易に大転子部の表面形状に合わせて変形できるとするものである。しかし、前記舌状部が手指などで容易に変形できる程度の強度であるため、前記舌状部が骨から伝わる約200Nを超える荷重を受けて変形してしまう可能性がある。
【特許文献1】特表平7−509621号公報
【特許文献2】米国特許3554193号明細書
【特許文献3】特開平10−52438号公報
【特許文献4】実用新案登録第3021149号公報
【特許文献5】特許第2942539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明の課題は、多種多様な患者に低コストで適用できるインプラント部材を提供することにあり、具体的には、上記従来の延長プレート(大転子固定部材)を備えたインプラント部材の各問題点を解決するため、手術中に容易に大転子部に密着でき、かつ手術後骨から伝わる大きな荷重によっても変形しない延長プレート(大転子固定部材)を備えたインプラント部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、大腿骨骨頭部に埋設される骨頭用軸部材と、この骨頭用軸部材の下端部に接続され大腿骨骨幹部外表面に沿って固定されるプレートと、このプレートの上端部から上方に延長され大腿骨大転子部外表面に沿って固定される大転子固定部材とを備えたインプラント部材において、前記大転子固定部材が、可動部と固定部とで構成され、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部が、前記可動部と前記固定部のなす角度が変化できるように連結手段を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられていることを特徴とする大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0015】
本発明によれば、大転子固定部材に肉厚の材料を用いても上記可動部が上記固定部に対して角度を自在に変更できるので、大転子部の形状によらず、手術中容易に上記可動部を大転子部に接触させて固定することができ、手術後の骨からの大きな荷重により変形することもない。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記角度調整手段が、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部のいずれか一方の部材には軸受け部が形成され、他方の部材には前記連結手段としての連結軸が一体に接合され、この連結軸が前記軸受け部で回転自在に支持され、さらに前記軸受け部の内面へ貫通する雌ネジを有するボルト穴が形成され、この雌ネジに螺合する雄ネジを有する固定ボルトが備えられ、この固定ボルトが締め込まれることにより前記連結軸を前記軸受け部に押し付けて固定するように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0017】
本発明によれば、前記連結軸回りに前記大転子固定部材の前記可動部を回転させて大転子部に接触させた位置で上記固定ボルトを締め込むことにより、前記連結軸が前記軸受け部内面に押し付けられて摩擦力により固定されるので、前記連結軸に一体に結合した前記可動部がちょうど大転子部に接触した位置で固定できる。前記連結軸と前記軸受け部内面との間の摩擦力は、これらのうち少なくともどちらか一方の表面に溝を付ける、もしくは金属溶射やショットブラストなどにより表面を荒らすことにより高めることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記角度調整手段が、外部から回転操作可能な第1作動部材と、この第1作動部材と連動する第2作動部材が設けられ、前記第1作動部材または前記第2作動部材のいずれか一方が雄ネジを備えた部材で形成され、他方が前記雄ネジに螺合する雌ネジを備えた部材で形成され、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部のいずれか一方には、前記第1作動部材が取り付けられ、他方には前記第2作動部材が取り付けられ、前記第1作動部材を回転操作して、前記第2作動部材を該第1作動部材に対して相対的に移動させることにより、前記可動部が前記連結手段としての連結軸の回りに回転するように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0019】
本発明によれば、上記雄ネジと上記雌ネジの螺合する部分が広く、この螺合している部分全体で、骨からの荷重を受けることになり、さらに大きな荷重に対しても十分に抵抗することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記可動部と前記固定部が着脱自在に構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプラント部材である。
【0021】
本発明によれば、可動部を固定部に対して着脱自在としていることから、サイズや形状の異なる可動部のみを複数種類準備しておくだけで、骨折の状況に応じてより適切な可動部を選択することができ、大転子固定部材を一体に設けたインプラント部材を複数種類準備することに比して大幅にコストが節約できる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、前記軸受け部に、前記連結軸を出し入れできる開放部が形成されるとともに、前記固定ボルトが締め込まれたときその先端が前記開放部側に突き出るように構成されている請求項2に記載のインプラント部材である。
【0023】
本発明によれば、簡単な構造で可動部と固定部を着脱自在としつつ、可動部を固定部に装着したときに可動部が外れないようにできる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、前記プレートの上端部と前記骨頭用軸部材の下端部とが、前記プレートと前記骨頭用軸部材とのなす角度が変化できるように連結軸を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0025】
本発明によれば、手術中に骨頭部軸部材とプレートとのなす角度を調整した後、さらに大転子固定部材の角度を調整できるので、手術時間を短縮しつつより確実で適切な固定が達成できる。また、インプラント部材を多種類準備しておく必要がないのでコストも大幅に節約できる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、前記大転子固定部材が、前記骨頭用軸部材の下端部又は前記プレートの上端部に着脱自在に備えられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0027】
本発明によれば、大転子固定部材を着脱自在としていることから、従来の大転子固定部材を備えていないインプラント部材を利用することができ、新たに大転子固定部材を一体に備えたインプラント部材を製作する必要がないので、コストが節約できる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、前記骨頭用軸部材が、先端に軸部材を備えたラグスクリューと、このラグスクリューの下端が挿入される大腿骨チューブとを備え、前記ラグスクリューが前記大腿骨チューブにその軸方向に摺動自在に挿設されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材である。
【0029】
本発明によれば、骨頭用軸部材をラグスクリューと大腿骨チューブで構成し、軸方向に摺動自在に挿設したことから、請求項1〜7に記載の発明の効果に加えて、骨頭部と骨幹部の癒合を促進することができる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載の発明によれば、大転子固定部材が可動部と固定部で構成され、前記可動部と前記固定部が、互いのなす角度が変化できるように連結手段を介して連結されているので、大転子固定部材に肉厚の材料を用いても上記可動部が上記固定部に対して角度を自在に変更できるので、大転子部の形状によらず、手術中容易に上記可動部を大転子部に接触させて固定することができ、手術後の骨からの約200Nを超える荷重により変形することもない。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、前記可動部と前記固定部のいずれか一方の部材には軸受け部が形成され、他方の部材には前記連結手段としての連結軸が一体に接合され、この連結軸が前記軸受け部で回転自在に支持され、さらに前記軸受け部の内面へ貫通する雌ネジを有するボルト穴が形成され、この雌ネジに螺合する雄ネジを有する固定ボルトを備えたので、この固定ボルトを締め込むことにより、前記連結軸が前記軸受け部内面に押し付けられて摩擦力により固定されるので、前記連結軸に一体に結合した前記可動部がちょうど大転子部に接触した位置で固定できる。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、可動部と固定部の連結部には、外部から回転操作可能な第1作動部材と、該第1作動部材と連動する第2作動部材が設けられ、前記第1作動部材または前記第2作動部材のいずれか一方が雄ネジを備えた部材で形成され、他方が前記雄ネジに螺合する雌ネジを備えた部材で形成され、前記可動部と前記固定部のいずれか一方には、前記第1作動部材が取り付けられ、他方には前記第2作動部材が取り付けられ、前記第1作動部材を回転操作して、前記第2作動部材を該第1作動部材に対して相対的に移動させることにより、前記可動部を前記連結手段としての連結軸の回りに回転させるように構成したので、前記雄ネジと前記雌ネジの螺合する部分が広く、この螺合している部分全体で骨からの荷重を受けることになり、さらに大きな荷重に対しても十分に抵抗することができる。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、前記可動部と前記固定部が着脱自在に構成されているので、サイズや形状の異なる可動部のみを複数種類準備しておくだけで、骨折の状況に応じてより適切な可動部を選択することができ、大転子固定部材を一体に設けたインプラント部材を複数種類準備することに比して大幅にコストが節約できる。
【0034】
請求項5に記載の発明によれば、前記軸受け部に、前記連結軸を出し入れできる開放部が形成されるとともに、前記固定ボルトが締め込まれたときその先端が前記開放部側に突き出るように構成されているので、簡単な構造で可動部と固定部を着脱自在としつつ、可動部を固定部に装着したときに可動部が外れないようにできる。
【0035】
請求項6に記載の発明によれば、プレートの上端部と骨頭用軸部材の下端部とが、互いのなす角度が変化できるように連結軸を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられているので、手術中に骨頭部軸部材とプレートとのなす角度を調整した後、さらに大転子固定部材の角度を調整できるので、手術時間を短縮しつつより確実で適切な固定が達成できる。また、インプラント部材を多種類準備しておく必要がないのでコストも大幅に節約できる。
【0036】
請求項7に記載の発明によれば、大転子固定部材が、プレートの上端部に着脱自在に備えられているので、従来の大転子固定部材を備えていないインプラント部材を利用することができ、新たに大転子固定部材を一体に備えたインプラント部材を製作する必要がなく、コストが節約できる。
【0037】
請求項8に記載の発明によれば、骨頭用軸部材が、先端に軸部材を備えたラグスクリューと、このラグスクリューの下端が挿入される大腿骨チューブとを備え、前記ラグスクリューが前記大腿骨チューブに回転自在に且つ軸方向に摺動自在に挿設されているので、請求項1〜7に記載の発明の効果に加えて、骨頭部と骨幹部の癒合を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係る大腿骨骨接合用インプラント部材の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
図1〜4は請求項1、2、4〜8に記載の発明の実施の一態様である着脱式の大転子固定部材を備えたインプラント部材を説明する図であり、図1は各構成部分の関係を示す矢視図、図2は組立て断面図、図3は大転子固定部材の構造を説明する断面図(a)、左側面図(b)、及び右側面図(c)、図4は大転子固定部材の構造を説明する、(a)は可動部装着時の矢視図、(b)は可動部取り外し時の矢視図である。
【0040】
本発明(請求項1、2、4〜8)の実施の形態のインプラント部材は、生体に埋設されることからすべて生体適合性材料、例えばチタン合金などで構成され、図1および2に示すように、先端にネジ部を有するラグスクリュー33と、このラグスクリュー33の下端が挿入される大腿骨チューブ32により骨頭用軸部材10が構成され、プレート11の上端部と大腿骨チューブ32の下端部とが、互いのなす角度が変化できるように、角度調整手段であるアジャスタブルユニット20を介して「く」の字状に接続され、さらに、着脱自在の大転子固定部材12が、その下部(固定部22)を大腿骨チューブ32の下端部の肩部に差し込まれて固定されている。
【0041】
図3および4に示すように、大転子固定部材12は、可動部21と固定部22とに上下に2分割され、可動部21の下端部と固定部22の上端部とは、可動部21と固定部22とのなす角度が自在に変化できるように水平な連結軸23を介して連結されている。可動部21に連結軸23を結合して可動部21と連結軸23が一体に回転するようにするとともに、固定部22に軸受け部24を設けて連結軸23を回転自在に支持する構造とし、さらに、軸受け部24内面まで貫通する雌ネジのボルト穴25を形成し、この雌ネジに螺合する雄ネジの固定ボルト25aを備えている。これにより、可動部21を手指などにより自在に回転させてその位置(角度)を定めた後、固定ボルト25aをねじ込んで連結軸23を軸受け部24内面に押し付けて摩擦力で固定することにより可動部21を任意の位置(角度)で固定できる。可動部21と連結軸23の結合の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、通常行われるような、連結軸23の一部の表面を切り欠いて断面形状を円形ではない形状とし、可動部21には前記断面形状に嵌合する孔を設けて連結軸23を挿入・嵌合する方法でもよいし、可動部21に設けた円形断面の孔に連結軸23を挿入後、接着する方法やピン止めする方法でもよい。本実施の形態では、固定部部材22の上端部の両方の幅端部にそれぞれ軸受け部24を形成しそれぞれにボルト穴25を設けている(したがって軸受け部、ボルト穴とも2箇所存在する)が、これに限るものではなく、例えば、固定部部材22の上端部の幅中央部に軸方向に長い軸受け部を1箇所形成し、ボルト穴を中央に設けてもよい(この場合、軸受け部、ボルト穴とも1箇所でよい)。さらに、図4に詳細を示すように、軸受け部24の一部を切り欠いて開放しておき、軸受け部24と連結軸23とを着脱できる構造としておくと可動部21のみを固定部22から取り外して交換できるのでより好ましい。この場合、固定ボルト25aの先端が軸受け部24の開放部24a側に突き出るような構造にしておくと固定ボルト25aを締め込んで可動部21の角度を固定したとき固定部22が軸受け部24から外れないのでより好ましい。なお、本実施の形態と逆に、可動部21に軸受け部24を設け、固定部22に連結軸23を結合しても同じ作用効果が得られる。また、可動部21は大転子部からの約200Nを超える繰り返し荷重により変形しない程度の肉厚構造とし、大転子部の形状に個人差があることや骨折の状況がさまざまであることを考慮して、可動部21は、その幅や長さ、ネジ嵌合孔14の数、ワイヤ係合溝26の有無等が異なる複数種類を準備しておくこともよい。そうすれば、手術に際してはその内の最適のものを選択して使用し、手術中に可動部21の角度調整を行なうことによって、大転子固定部材12をより大転子部に密着させて設置することができる。
【0042】
本実施の形態では、大転子固定部材12を大腿骨チューブ32の肩部へ固定する方法として、大転子固定部材下部(固定部22)を前記肩部に嵌め合わせる方法を採用しているが、これに限るものではなく、大転子固定部材下部(固定部22)を前記肩部に差し込んだのち大転子固定部材下部(固定部22)をかしめる方法、ネジ止めする方法等通常行われる固定方法を用いてもよい。また、本実施の形態では大転子固定部材を着脱式としたが、これに限るものではなく、最初から大腿骨チューブ32の肩部に一体に形成してもよい。
【0043】
なお、プレート11と大腿骨チューブ32のなす角度の角度調整手段であるアジャスタブルユニット20としては、前述した従来例2の連結角度調整機構を採用すればよい。従来例2で説明した連結角度調整機構を以下に再度示す。すなわち、図10(a)〜(c)に示すように、骨頭用軸部材の一部を構成する大腿骨チューブ32とプレート11とを互いのなす角度が変化できるように連結軸34を介して連結し、第1作動部材35(摘み部35a、雄ネジ35b)を回転操作して第2作動部材36(雌ネジ36b、凸部36a)を移動させ、この移動により凹部36cが移動し、大腿骨チューブ32が連結軸34回りに回転し、上記角度(連結角度)が変化するように構成すればよい。上記雄ネジと上記雌ネジの螺合する部分が広く、この螺合部分全体で大転子部からの荷重を受け止めることになるので、大きな荷重に対しても十分抵抗することができる。
【0044】
また、ラグスクリュー33が大腿骨チューブ32の筒内に軸方向に摺動自在に挿設されているから、骨頭部と骨幹部の癒合を促進することができる。また、骨頭をラグスクリューが突き破るいわゆるカットアウトを防止するため、ラグスクリューの骨頭側先端を球面形状とすることが好ましい。
【0045】
以上のように構成された本実施の形態のインプラント部材(請求項1、2、4〜8に記載の発明)を大腿骨の骨折に用いた例を図5により説明する。図5に示すように、頚部18と大転子部17に骨折が生じている場合を想定する。骨幹部16から骨折により分離した骨頭部15および大転子部17を骨幹部16に押し付けておき、所定の角度でドリル及びタップを用いて穿孔し、その孔に大腿骨チューブ32に嵌め込んだラグスクリュー33を挿入し骨頭部15にねじ込む。なお、大腿骨チューブ32の下端にはアジャスタブルユニット20を介してプレート11が一体に取り付けられている。ラグスクリュー33を完全に締め込む前にアジャスタブルユニット20の角度調節ネジ(摘み部35a)をドライバー等を用いて左右に回転することによってプレート11の角度を調節し、プレート11が骨幹部16表面と平行になったのを確認した後、ラグスクリュー33を完全に締め込んでプレート11を骨幹部16表面に密着させ、プレート11に予め形成されているネジ嵌合孔14を通してコーティカルスクリュー(ネジ部材13)を骨幹部16にネジ込みプレート11を骨幹部16表面に沿って固定する。
【0046】
次いで、大転子固定部材12の可動部21を手指にて前後に動かし大転子部17表面にちょうど接触する位置(角度)でボルト穴25内の固定ボルト25aを締め込んで可動部21を固定する。その後、必要により、可動部21に予め形成されているスクリューホール(ネジ係合孔14)を通してキャンセラススクリュー(ネジ部材13)を大転子部17内にねじ込んで大転子部17を可動部21に固定する。あるいは、図5に示すように、頚部18に巻き付けたワイヤ27を可動部21に予め形成されているワイヤ係合溝26に係合させることにより大転子部17の骨片を頚部18に締結してもよい。
【0047】
このように本発明のインプラント部材を用いることにより、従来の大腿骨チューブとプレートとの連結角度および大転子固定部材の角度がともに固定のインプラント部材を用いた場合に問題となるプレートの骨幹部からの浮き上がりや大転子固定部材の大転子部からの離脱がなく、したがって、手術に際して複数のインプラント部材や大転子固定部材を準備する必要がなくなり、手術中の部材の取り換えをも不要とするので、容易かつ短時間で最適な状態に(骨に密着させて)インプラント部材の取り付けが可能となるものである。
【0048】
上記実施の形態では、大転子固定部材の角度調整に請求項2に記載の発明を適用した場合について説明したが、別の実施の形態として、大転子固定部材の角度調整に請求項3に記載の発明を適用した場合について以下に説明する。すなわち、上記実施の形態の中で説明した大腿骨チューブとプレートとの連結角度の調整手段を大転子固定部材の連結部にも応用したものである。図7を用いて、この別の実施の形態の構成を詳細に説明する。
【0049】
図7において、第1作動部材45は雄ネジ45bを有し、また外部から回転操作が可能な摘み部45aを備えている。第2作動部材46には、上記雄ネジ45bに螺合する雌ネジ46bを有する貫通孔が形成され、かつ上方に突出する断面形状逆U字状の凸部46aが形成されてなり、固定部22の上端に形成された凹部間に回転が阻止された状態で嵌め込まれている。上記第1作動部材45と上記第2作動部材46により角度調整手段が構成されており、第1作動部材45が固定部22の上端部に回転可能に取り付けられ、第2作動部材46は可動部21の下端部に形成された断面形状逆U字状の凹部46cに嵌入されることにより可動部21の下端に取り付けられ(連結され)ている。可動部21の角度の調整の際には、図7(b)に示すように、摘み部45aを摘んで、あるいはドライバー等で第1作動部材45を回すと、雄ネジ45bに対する雌ネジ46bの位置が移動し、この移動に伴って凸部46aとこれに嵌合する凹部46cが移動する。この凹部46cの移動によって、可動部21が連結軸23回りに回転し、固定部22と可動部21のなす角度が変化する。凹部46cと連結軸23との距離が短いから、凹部46cが小さく移動することによりその角度を大きく変えることができる。したがって、前述した大腿骨チューブとプレートの連結角度調整手段と同様、可動部21と固定部22の連結部が小さいものでありながらも、広い角度範囲の調整をおこなうことができる。また、上記雄ネジと上記雌ネジの螺合する部分が広く、この螺合部分全体で大転子部からの荷重を受け止めることになるので、大きな荷重に対しても十分抵抗することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、大腿骨チューブとプレートとの連結角度が可変の構造としたが、これに限定されるものではなく、従来の連結角度が固定のインプラント部材にも当然適用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明(請求項2)のインプラント部材の各構成部分の関係を示す矢視図である。
【図2】本発明(請求項2)のインプラント部材の組立て断面図である。
【図3】本発明(請求項2)のインプラント部材を構成する大転子固定部材の構造を説明する、(a)は左側面図、(b)は断面図、(c)は右側面図である。
【図4】本発明(請求項2)のインプラント部材を構成する大転子固定部材の構造を説明する、(a)は可動部装着時の矢視図、(b)は可動部取り外し時の矢視図である。
【図5】本発明(請求項2)のインプラント部材を大腿骨に取り付けた様子(大転子部をネジ部材で固定したケース)を表す断面図である。
【図6】本発明(請求項2)のインプラント部材を大腿骨に取り付けた別の様子(大転子部をワイヤで固定したケース)を表す断面図である。
【図7】本発明(請求項3)のインプラント部材を構成する大転子固定部材の構造説明する、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図8】従来例1のインプラント部材を大腿骨に取り付けた様子を表す断面図である。
【図9】従来例2のインプラント部材を示す正面図である。
【図10】従来例2のインプラント部材を構成する角度調整手段を示す、(a)は図9のBB断面図、(b)及び(c)は図10(a)のCC断面図である。
【図11】従来例3のインプラント部材を大腿骨に取り付けた様子を表す断面図である。
【図12】従来例4の着脱式の大転子固定部材を示す、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図13】従来例5のインプラント部材を大腿骨に取り付けた様子を表す正面図である。
【符号の説明】
【0052】
10…骨頭用軸部材、11…プレート、12…大転子固定部材(延長部分、延長プレート)、13…ネジ部材(キャンセラススクリュー)、14…ネジ係合孔(スクリューホール)、15…大腿骨骨頭部、16…大腿骨骨幹部、17…大転子部、18…大腿骨頚部、20…角度調整手段(アジャスタブルユニット)、21…可動部、22…固定部、23…連結軸、24…軸受け部、24a…開放部、25…ボルト穴、25a…固定ボルト、26…ワイヤ係合溝、27…ワイヤ、32…大腿骨チューブ、33…ラグスクリュー、34…連結軸、35…第1作動部材、35a…摘み部(角度調節ネジ)、35b…雄ネジ、36…第2作動部材、36a…凸部、36b…雌ネジ、36c…凹部、43…舌状部、45…第1作動部材、45a…摘み部、45b…雄ネジ、46…第2作動部材、46a…凸部、46b…雌ネジ、46c…凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨骨頭部に埋設される骨頭用軸部材と、この骨頭用軸部材の下端部に接続され大腿骨骨幹部外表面に沿って固定されるプレートと、このプレートの上端部から上方に延長された大転子固定部材とを備えたインプラント部材において、前記大転子固定部材が、可動部と固定部とで構成され、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部が、前記可動部と前記固定部のなす角度が変化できるように連結手段を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられていることを特徴とする大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項2】
前記角度調整手段が、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部のいずれか一方の部材には軸受け部が形成され、他方の部材には前記連結手段としての連結軸が一体に接合され、この連結軸が前記軸受け部で回転自在に支持され、さらに前記軸受け部の内面へ貫通する雌ネジを有するボルト穴が形成され、この雌ネジに螺合する雄ネジを有する固定ボルトが備えられ、この固定ボルトが締め込まれることにより前記連結軸を前記軸受け部に押し付けて固定するように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項3】
前記角度調整手段が、外部から回転操作可能な第1作動部材と、この第1作動部材と連動する第2作動部材が設けられ、前記第1作動部材または前記第2作動部材のいずれか一方が雄ネジを備えた部材で形成され、他方が前記雄ネジに螺合する雌ネジを備えた部材で形成され、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部のいずれか一方には、前記第1作動部材が取り付けられ、他方には前記第2作動部材が取り付けられ、前記第1作動部材を回転操作して、前記第2作動部材を該第1作動部材に対して相対的に移動させることにより、前記可動部が前記連結手段としての連結軸の回りに回転するように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項4】
前記可動部と前記固定部が着脱自在に構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【請求項5】
前記軸受け部に、前記連結軸を出し入れできる開放部が形成されるとともに、前記固定ボルトが締め込まれたときその先端が前記開放部側に突き出るように構成されている請求項2に記載のインプラント部材。
【請求項6】
前記プレートの上端部と前記骨頭用軸部材の下端部とが、前記プレートと前記骨頭用軸部材とのなす角度が変化できるように連結軸を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項7】
前記大転子固定部材が、前記骨頭用軸部材の下端部又は前記プレートの上端部に着脱自在に備えられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項8】
前記骨頭用軸部材が、先端に軸部材を備えたラグスクリューと、このラグスクリューの下端が挿入される大腿骨チューブとを備え、前記ラグスクリューが前記大腿骨チューブにその軸方向に摺動自在に挿設されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項1】
大腿骨骨頭部に埋設される骨頭用軸部材と、この骨頭用軸部材の下端部に接続され大腿骨骨幹部外表面に沿って固定されるプレートと、このプレートの上端部から上方に延長された大転子固定部材とを備えたインプラント部材において、前記大転子固定部材が、可動部と固定部とで構成され、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部が、前記可動部と前記固定部のなす角度が変化できるように連結手段を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられていることを特徴とする大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項2】
前記角度調整手段が、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部のいずれか一方の部材には軸受け部が形成され、他方の部材には前記連結手段としての連結軸が一体に接合され、この連結軸が前記軸受け部で回転自在に支持され、さらに前記軸受け部の内面へ貫通する雌ネジを有するボルト穴が形成され、この雌ネジに螺合する雄ネジを有する固定ボルトが備えられ、この固定ボルトが締め込まれることにより前記連結軸を前記軸受け部に押し付けて固定するように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項3】
前記角度調整手段が、外部から回転操作可能な第1作動部材と、この第1作動部材と連動する第2作動部材が設けられ、前記第1作動部材または前記第2作動部材のいずれか一方が雄ネジを備えた部材で形成され、他方が前記雄ネジに螺合する雌ネジを備えた部材で形成され、前記可動部の下端部と前記固定部の上端部のいずれか一方には、前記第1作動部材が取り付けられ、他方には前記第2作動部材が取り付けられ、前記第1作動部材を回転操作して、前記第2作動部材を該第1作動部材に対して相対的に移動させることにより、前記可動部が前記連結手段としての連結軸の回りに回転するように構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項4】
前記可動部と前記固定部が着脱自在に構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプラント部材。
【請求項5】
前記軸受け部に、前記連結軸を出し入れできる開放部が形成されるとともに、前記固定ボルトが締め込まれたときその先端が前記開放部側に突き出るように構成されている請求項2に記載のインプラント部材。
【請求項6】
前記プレートの上端部と前記骨頭用軸部材の下端部とが、前記プレートと前記骨頭用軸部材とのなす角度が変化できるように連結軸を介して連結され、この連結部には角度調整手段が設けられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項7】
前記大転子固定部材が、前記骨頭用軸部材の下端部又は前記プレートの上端部に着脱自在に備えられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【請求項8】
前記骨頭用軸部材が、先端に軸部材を備えたラグスクリューと、このラグスクリューの下端が挿入される大腿骨チューブとを備え、前記ラグスクリューが前記大腿骨チューブにその軸方向に摺動自在に挿設されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の大腿骨骨接合用インプラント部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−296390(P2007−296390A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213504(P2007−213504)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【分割の表示】特願2001−215439(P2001−215439)の分割
【原出願日】平成13年7月16日(2001.7.16)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(596117935)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【分割の表示】特願2001−215439(P2001−215439)の分割
【原出願日】平成13年7月16日(2001.7.16)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(596117935)
【Fターム(参考)】
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