説明

大表面積電極を有する体内型電源

植え込み型および摂取型デバイスのような、体内デバイスを有効化する電源が提供される。本発明の体内電源の局面は、固体支持体と、第1の大表面積電極と、第2の電極とを含む。体内電源の実施形態は、標的生理学的部位と接触すると、検出可能信号を発するように構成される。また、本発明の電源を作製および使用する方法が提供される。また、本発明の体内電源と、受信器とを備えるシステムが提供される。さらに、本発明の体内電源を備えるキットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本特許出願は、米国特許法第119条(e)に従って、米国仮特許出願第60/889,870号(2007年2月14日出願)の出願日に対する優先権を主張する。この仮出願の開示は、本明細書において参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
医療技術の進歩に伴って、多くの診断および治療活動が、ますます小型化する植え込み型医療デバイスまたは摂取型医療デバイスを用いて行われている。植え込み型医療デバイスおよび摂取型医療デバイスは、これに限定するものではないが、例えばデバイスが1つ以上のセンサを含む、診断機能、例えばデバイスが電気パルスの送達、薬学的活性剤の送達などの治療作用を有効化する、治療機能、などを含む種々の異なる機能を行うように構成され得る。
【0003】
植え込み型および摂取型の、医療ならびに関連技術に関しては、例えば、使用の容易さの向上などを提供するために、常に、デバイスをより小型化することが望まれる。サイズを縮小するためには、デバイスの個々の構成要素は、全体の物理的サイズを縮小するように設計されるとともに、機能性を維持しなければならない。
【0004】
多くの植え込み型および摂取型デバイスに存在する構成要素の種類の1つは、例えば、バッテリ、コンデンサなどの電源である。植え込み型および摂取型デバイスのような体内デバイスで採用され得るような、適切かつ信頼性のある機能性を有する、さらなる小型の電源の開発に、継続的な関心が集まっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
植え込み型および摂取型デバイスのような体内デバイスを有効化する電源が提供される。本発明の体内電源の局面は、固体支持体と、第1の大表面積電極と、第2の電極とを含む。体内電源の実施形態は、標的の生理学的部位と接触すると、検出可能信号を発するように構成される。また、本発明の電源を作製および使用する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による、多孔質の陰極下層を有するバッテリの一実施形態を示す。
【図2】図2は、本発明の種々の実施形態の電気回路の、特定の実装の詳細を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
植え込み型および摂取型デバイスのような体内デバイスを有効化する電源が提供される。本発明の体内電源の局面は、固体支持体と、第1の大表面積電極と、第2の電極とを含む。体内電源の実施形態は、標的の生理学的部位と接触すると、検出可能信号を発するように構成される。また、本発明の電源を作製および使用する方法が提供される。
【0008】
本発明をより詳細にさらに説明するに際して、体内電源およびそれを含む体内デバイスの実施形態が最初に考察され、体内電源を含むデバイスを有するシステムと、そのようなデバイスおよびシステムを使用する方法の説明がそれに続く。また、本発明の体内電源を有するデバイスを含むキットが、以下で詳細に考察される。
【0009】
(体内電源およびそれを含むデバイス)
上記で概説されたように、本発明は、体内デバイスでの使用のために構成される電源を提供する。体内デバイスは、生体内で使用するように構成されるデバイスである。体内デバイスの実施例は、これに限定するものではないが、植え込み型デバイス、例えば、植え込み型治療デバイス、植え込み型診断デバイス、例えば、センサなど、および摂取型デバイス、例えば、摂取型事象マーカ(例えば、以下に詳述される)などを含む。
【0010】
本発明の実施形態による体内電源は、固体支持体と、該固体支持体の表面上に存在する第1の大表面電極と、第2の電極とを含む。固体支持体は、体内電源が採用されるデバイスの性質に応じて異なり得る。ある実施形態では、固体支持体は小型であって、例えば、幅は約0.01mmから約100mmまで、例えば、約0.1mmから約20mmまでであって、約0.5mmから約2mmまでを含み、長さは約0.01mmから約100mmまで、例えば、約0.1mmから約20mmまでであって、約0.5mmから約2mmまでを含み、高さは約0.01mmから約10mmまで、例えば、約0.05mmから約2mmまでであって、約0.1mmから約0.5mmまでを含むように、寸法設定される。固体支持体要素は、チップ型構成、円筒形構成、球形構成、円盤形構成のような、しかしこれらに限定されない、種々の異なる構成をとり得、意図される用途、製造方法などに基づいて、特定の構成が選択され得る。固体支持体が加工される材料は、体内電源が使用のために構成される特定のデバイスに応じて大幅に異なり得るが、ある実施形態では、固体支持体は、半導体材料、例えばシリコンで作られる。多孔質の下層の製造用に提供するために、例えば、後述されるように、固体支持体表面の一部は、伝導性材料、例えば、これに限定するものではないが、金などのような、金属または金属合金を含み得る。
【0011】
ある実施形態では、固体支持体は、1つ以上の回路要素を含む半導体支持体であって、ある実施形態では、支持体は集積回路である。存在する場合には、集積回路は、いくつかの個別機能ブロック、すなわちモジュールを含む。所与の固体支持体内では、例えば、電源、プロセッサ、送信器などの機能ブロックの、少なくとも一部、例えば2つ以上、最大で全部が、単一集積回路内に存在し得る。単一集積回路とは、デバイスのための異なる所望の機能ブロックの全部を含む、単一回路構造を意味する。これらの実施形態では、集積回路は、半導体材料の薄型基板の表面に製造されてきた、小型電気回路(半導体デバイスならびに受動構成要素を含み得る)である、モノリシック集積回路(IC、マイクロ回路、マイクロチップ、シリコンチップ、コンピュータチップ、またはチップとしても公知である)である。本発明のある実施形態の集積回路は、ハイブリッド集積回路であり得、それは、基板または回路基板に接着される個々の半導体デバイスならびに受動構成要素で構築される、小型電気回路である。
【0012】
前述のように、本発明の電源が使用される体内デバイスの種類の1つは、摂取型事象マーカである。説明を容易にするために、体内電源はここで、体内電源が摂取型事象マーカの同定器(identifier)の一部である実施形態の観点からさらに説明される。しかしながら、上述のように、本発明の体内電源は、摂取型事象マーカ以外のデバイスにおいても使用され、したがって、本発明の体内電源は、摂取型事象マーカ(IEM)での使用のために構成されるものに限定されない。
【0013】
IEM組成物の同定器は、同定器が標的の生理学的部位と接触すると、検出可能信号を発生する(すなわち、発する)ものである。本組成物の同定器は、標的の生理学的位置、例えば胃と接触して活性化(すなわち、起動)される限りにおいて、特定の実施形態および組成物の意図される用途に応じて異なり得る。したがって、同定器は、標的の身体(すなわち、生理学的)部位に接触すると信号を発する同定器であり得る。同定器は、活性化に続いて、例えば標的部位と接触すると、検出可能信号を提供することができる任意の構成要素またはデバイスであり得る。ある実施形態では、同定器は、その組成物が標的の生理学的部位、例えば、胃と接触すると信号を発する。実施形態に応じて、標的の生理学的部位または位置は異なり得、問題の代表的な生理学的部位は、口、食道、胃、小腸、大腸、などの胃腸管内の位置を含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、同定器は、標的部位の特定の組成物にかかわらず、標的部位内の流体と接触すると活性化されるように構成される。
【0014】
特定の用途の必要性に応じて、同定器から得られる信号は、一般的信号、例えば組成物が標的部位に接触したことを単に識別する信号であり得、または、一意的信号、例えばバッチ内の一群のまたは複数の異なるマーカのうちの特定の摂取型事象マーカが、標的の生理学的部位に接触したことを何らかの方法で一意的に識別する信号であり得る。したがって、同定器は、単位用量のバッチ、例えば錠剤のバッチと共に使用されるときに、バッチの任意の他の単位用量メンバーの同定器によって発せられる信号と区別できない信号を発するものであり得る。さらに他の実施形態では、同定器は、その特定の同定器を一意的に識別する信号を発する。故に、ある実施形態では、同定器は、同定器のある種類を他の種類の同定器から区別する一意的信号を発する。ある実施形態では、同定器は、その同定器を他の同定器から区別する一意的信号を発する。ある実施形態では、同定器は、一意的信号、すなわち、今までに生成された任意の他の同定器によって発せられる信号と区別可能な信号を発し、そのような信号は、普遍的一意的信号(例えば、任意の他の個人の任意の他の指紋とは異なり、それ故に、普遍的レベルで個人を一意的に識別する、ヒトの指紋に類似する)として考えられ得る。一実施形態では、信号は、所与の事象に関する情報を直接伝達するか、または、データベースから、すなわち、同定コードと組成物とをリンクさせるデータベースからその事象に関する情報を読み出すために使用され得る、識別コードを提供し得る。
【0015】
同定器は、RF信号、磁気信号、伝導性(近接場)信号、音響信号、などを含むが、これらに限定されない、種々の異なる種類の信号を発生し得る。係属中のPCT特許出願第PCT/US2006/16370号(2006年4月28日出願)に記載の特定の信号が、ある実施形態において着目され、本出願の種々の種類の信号の開示は、本明細書において具体的に参考として援用される。同定器の伝送時間は異なり得、ある実施形態では、伝送時間は、約0.1μ秒から約48時間以上にまで及び得、例えば、約0.1μ秒から約24時間以上にまで、例えば、約0.1μ秒から約4時間以上にまで、例えば、約1秒から約4時間までに及び、約1分から約10分までを含む。所与の実施形態に応じて、同定器は信号を1回伝送するか、または信号を2回以上伝送し得、その結果として、信号は冗長信号としてみなされ得る。
【0016】
本組成物の同定器は、標的の生理学的位置、例えば胃と接触すると活性化(すなわち、起動)される限りにおいて、特定の実施形態および組成物の意図される用途に応じて異なり得る。したがって、同定器は、標的身体(すなわち、生理学的)部位と接触すると、信号を発する同定器であり得る。加えて、または代替案として、同定器は、活性化された後に、問い合わせを行うと信号を発する同定器であり得る。本発明の実施形態の同定器の構成要素は、(a)活性化構成要素と、(b)信号発生構成要素とを有し、信号発生構成要素は、例えば、前述のように、活性化構成要素によって活性化されて識別信号を生成する。
【0017】
活性化構成要素は、その組成物が胃などの、問題の標的の生理学的部位と接触すると、同定器の信号発生要素を活性化し、例えば発生によって、または問い合わせに応じて、信号を提供する構成要素である。同時係属中のPCT特許出願第PCT/US2006/016370号の中に見られるように、同定器の活性化はいくつかの異なる方法で達成され得、そのようなアプローチは、バッテリの完成、バッテリの接続、などを含むが、これらに限定されない。この同時係属中の特許出願に開示される異なる活性化アプローチは、本明細書に記載されるように、活性化を提供するために容易に適合され得、それらは、全体として本明細書において参考として援用される。
【0018】
バッテリの完成形式に基づく活性化要素の実施形態は、本発明の体内バッテリ源を採用し、活性化されると体内バッテリ電源は、陰極と、陽極と、電解質とを含む。そのような実施形態では、陰極および陽極が胃液と接触すると、胃液はバッテリの電解質成分として作用し、その結果として、胃液の添加成分がバッテリを完成させる。
【0019】
ある実施形態では、使用されるバッテリは、バッテリの2つの電極(例えば、陽極および陰極)を構成する、2つの異なる電気化学的材料を備えるものである。電極材料が、胃酸または他の種類の流体のような体液と接触(単独で、または乾燥伝導性媒体前駆物質と組み合わせて)すると、2つの電極で生じるそれぞれの酸化および還元反応の結果として、電位差、すなわち電圧が電極間に発生する(その結果として、ボルタ電池すなわちバッテリが生成される)。故に、本発明の実施形態では、体内電源は、2つの異なる材料が、例えば胃、消化管、などの標的部位に曝露されるきに、電圧が発生するように構成される。電解質内の2つの異なる材料は異なる電位にある。これらの実施形態の一部では、体内バッテリ電源は、胃液、血液、または他の体液などのイオン溶液および一部の組織における電気化学的反応を利用する電源とみなされ得る。
【0020】
電極を作る異なる材料は、同定器が作動する環境に適切な、任意の2つの材料から成り得る。活性材料は、異なる電気化学的電位を有する任意の対の材料である。例えば、イオン溶液が胃酸を備える一部の実施形態では、電極は、それが早期に腐食しないように、貴金属(例えば、金、銀、プラチナ、パラジウム、など)から成り得る。代替案として、電極は、アルミニウムまたは任意の他の伝導性材料であって、その適用イオン溶液内での使用可能時間が、同定器がその意図される機能を行うことが可能な十分な長さであるような、材料で加工され得る。好適な材料は金属に制限されず、ある実施形態では、対となる材料は、金属と非金属とから選択され、例えば、金属(Mgなど)および塩(CuIなど)から成る対が選択される。活性電極材料に関して、好適にも異なる電気化学的電位(電圧)および低い界面抵抗を有する、任意の対の物質(金属、塩、または内位添加化合物)が適している。
【0021】
種々の異なる材料が、バッテリ電極として採用され得る。ある実施形態では、電極材料は、標的の生理学的部位、例えば胃と接触すると、同定器の信号発生要素を駆動するために十分な電圧を提供するように選択される。ある実施形態では、電源の金属が標的の生理学的部位と接触するときに、電極材料によって提供される電圧は0.001V以上であって、0.01V以上を含み、例えば、0.1V以上、例えば、0.3V以上、0.5V以上を含み、さらに1.0V以上を含み、ある実施形態では、電圧は、約0.001から約10Vまで、例えば、約0.01から約10Vまでに及ぶ。
【0022】
問題の材料および対は、以下の表1に報告されるものを含むが、それらに限定されない。
【0023】
【表1】

ある実施形態では、金属の一方または両方が、例えば、バッテリの電圧出力を向上させるために、非金属によってドープされ得る。ある実施形態において、ドープ剤として使用され得る非金属は、硫黄、ヨウ素、などを含むが、これらに限定されない。
【0024】
ある実施形態では、電極材料は、陰極としては、ヨウ化第一銅(CuI)または塩化第一銅(CuCl)であり、陽極としては、マグネシウム(Mg)金属またはマグネシウム合金である。本発明の実施形態は、身体に害を及ぼさない電極材料を使用する。
【0025】
上記に概説したとおり、2つの異なる材料の電極(直前で検討されたような)を含むバッテリのような、本発明の体内電源は、少なくとも1つの大表面積電極を、例えば、大表面積陰極および/または大表面積陽極を含む。大表面積電極とは、電源内の、例えば、バッテリ内の電極によって覆われる固体支持体の表面積よりも、約2倍以上、例えば約10倍以上の表面積を有する電極を意味する。ある実施形態では、電極の表面積は、約0.01mmから約100mmまで、例えば、約0.1mmから約50mmまでに及び、約1mmから約10mmまでを含む。ある実施形態では、大表面積電極は、多孔質の下層の上に存在する活性電極材料(例えば、例示的な陰極および陽極材料が、上記に提供されている)から成る電極を有することによって得られる。ある実施形態では、電極は全部が大表面積電極であり、その一方で、他の実施形態では、電極の一部のみが、例えば電極の1つが大表面積電極である。
【0026】
特定の実施形態に応じて、陰極および陽極は、同一支持体または異なる支持体上に存在し得、例えば、2つ以上の異なる支持体がともに接合されて、例えば「フリップチップ」実施形態において存在するような、バッテリ構造を生成する。同様に、所与のバッテリ内の陰極および陽極の数は、実施形態に応じて大幅に異なり得、例えば、所与の実施形態は、1つの陽極および陰極を有する単一バッテリ、複数の陽極および/または陰極を有する単一バッテリ、あるいは、各々が1つ以上の陰極および/または陽極から成る2つ以上の個別バッテリを含み得る。問題のバッテリ構成は、これに限定するものではないが、PCT特許出願第PCT/US2006/016370号「Pharma-Informatics System」(2006年4月28日出願)、PCT特許出願第PCT/US2007/022257号「In-vivo Low Voltage Oscillator for Medical Devices」(2007年10月17日出願)、PCT特許出願第PCT/US US2007/82563号「Controlled Activation Ingestible Identifier」(2007年10月25日出願)、米国特許出願第11/776,480号「Acoustic Pharma Informatics System」(2007年7月11日出願)、および第PCT/US US2008/52845号「Ingestible Event Marker System」(2008年2月1日出願)に開示されたものを含み、これらの特許出願の開示(特に、その中で開示されたバッテリ構成)は、本明細書において参考として援用される。
【0027】
図1は、本発明の実施形態による、バッテリ電源の該略図を提供し、バッテリ電源は、大表面積電極、具体的には、大表面積陰極を含む。図1に示されるバッテリ100は、上表面140を有する固体支持体120を含む。上表面140の上には、陰極160および陽極180が存在する。陰極160は、多孔質の下層150および活性陰極材料170を含む。次に、これらの要素の各々が、以下に詳細に説明される。描かれた実施形態は、陰極が多孔質の下層を含むものであるが、ある実施形態では、陽極が多孔質の下層を含み、さらに他の実施形態では、陰極および陽極の両方が多孔質の下層を有する。陰極および陽極の両方が、固体支持体の表面上に存在する。図1に示されるようなある実施形態では、2つの電極が、固体支持体の同一表面上に存在する。さらに他の実施形態では、2つの電極は、支持体の異なる表面、例えば、支持体の両側の表面上に存在し得る。
【0028】
多孔質の下層150は、活性電極(例えば、陰極)材料170を機械的に支持し、接着性を向上させ、および/または電極の表面積を増加させ、陰極材料と要素、例えば固体支持体120上の回路網(以下に詳述される)との間の、電流通過を提供する層である。多孔質の下層は、例えば、銅、チタン、アルミニウム、黒鉛、金、プラチナ、イリジウム、などの伝導性材料のような、種々の異なる材料から加工され得、材料は、純粋材料、または、例えば合金など見られる2つ以上の成分から成る材料であり得る。陰極に関して、陰極の多孔質の下層のための問題の材料は、Au、Cu、Pt、Ir、Pd、Rh、Ru、ならびにそれらの二元および三元合金を含むが、これらに限定されない。陽極に関して、陽極の多孔質の下層のための問題の材料は、Tiおよびその合金(例えば、Ti−W、Ti−Cr、TiN)、W、W−C、などを含むが、これらに限定されない。下層の厚さは異なり得、ある実施形態では、厚さは、約0.01から約100μmまで、例えば、約0.05から約50μmまでに及び、約0.01から約10μmまでを含む。固体支持体の表面上での、長さおよび幅に関する多孔質の下層の寸法は、所望に応じて、活性陰極材料の同じ寸法と同寸であり得、またはそうでなくてもよい。
【0029】
上記に概説されたように、下層は、粗面または多孔質であり得る。下層の多孔率または粗度は、それが電極に、例えば陰極に所望の表面積を付与する限りにおいて、異なり得る。ある実施形態では、下層の多孔率または粗度は、多孔質の下層を欠く比較電極から得られるものよりも大きな、約1.5倍以上から約1000倍以上まで、例えば、約2から約100倍以上まで、例えば、約2から約10倍以上までの、有効表面積増加率を提供するように選択される。表面積増加率は、粗面または多孔質の電極の電気化学的静電容量または周期的ボルタモグラムを、同一材料の平滑電極のものと比較することによって決定され得る。粗度はまた、原子間力顕微鏡法(AFM)、電子顕微鏡法、電気化学的インピーダンス分光法、またはBrunauer−Emmett−Teller(BET)分析のような、他の手法によって決定され得る。
【0030】
多孔質の陰極下層は、任意の便利なプロトコルを使用して生成され得る。ある実施形態では、平面処理プロトコルが採用される。表面マイクロマシニングおよびバルクマイクロマシニング技術を含む、微小電気機械システム(MEMS)加工技術のような、平面処理技術が採用され得る。構造を加工するある実施形態において採用され得る堆積技術は、これに限定するものではないが、電着(例えば、電気めっき)、陰極アーク堆積、プラズマスプレー、スパッタリング、電子ビーム蒸着、物理的気相堆積、化学的気相堆積、プラズマ強化化学的気相堆積、などを含む。材料除去技術は、これに限定するものではないが、反応性イオンエッチング、異方性化学的エッチング、等方性化学的エッチング、平坦化、例えば、化学機械研磨、レーザアブレーション、放電加工(EDM)、電溶/電解研磨(金属が堆積され、次いで、選択領域が溶解され、粗面および多孔質になる)、などを含む。別の問題のプロトコルは、堆積方法としての無電解めっきである。これらの堆積プロトコルでは、金属は、還元剤によって溶液から堆積される。堆積された金属層は、炭素、アルミナ、ポリマー、ゼオライト、酸化シリコン、非晶質炭素、およびナノチューブのような、既存の粗面非伝導性/低伝導性表面層または粒子を被覆するために使用され得る。非伝導性層は、陰極アーク、電気泳動堆積、または糊/接着剤含有粒子のような、任意の好適な平面処理方法を介して堆積され得る。リソグラフィプロトコルがまた着目される。ある実施形態では、平面処理プロトコルの使用が着目され、その場合には、順次に基板に適用される種々の異なる材料除去および堆積プロトコルを使用して、構造が、元々平面であった基板の表面または複数の表面に構築されおよび/またはそこから除去される。問題の例示的加工方法が、同時係属中のPCT特許出願第PCT/US2006/016370号にさらに詳細に記載されており、その開示は、本明細書において参考として援用される。
【0031】
多孔質の下層に対して、ある実施形態では、電着プロトコルが採用される。多孔質の陰極下層が金属(単数または複数)を含む場合には、電気めっき(金属の電着)が採用され得る。ある実施形態では、採用される電気めっきプロトコルは、電流密度および/または溶液の撹拌が選択されて、堆積された多孔質の陰極下層に所望の粗度または多孔率を付与するようなプロトコルである。ある実施形態では、金属の、例えば銅の薄膜が、質量移動限度で電気めっき浴中で堆積される。「質量移動限度」とは、浴中の金属イオン濃度および浴の流速と共に電流密度が最適化され、その結果として、金属イオンが表面に到達し得る実質的に最大限度において、堆積が生じるることを意味する。質量移動限度における堆積は、ある実施形態では、樹枝状の堆積された材料をもたらす。特定の金属およびそのイオン濃度に応じて、電流密度は異なり得る。ある実施形態では、選択される電流密度は、約5から約2000mAmps/cmまで、例えば、約50から約400mAmps/cmまでに及び、例えば、約200mAmps/cmである。めっきは、撹拌を伴うめっき槽、パドルセル、または噴水セルのような、適切なめっきセル内で行われ得る。流量は、所望の多孔率または粗度を達成するように、適用される電流密度と併せて選択され得る。回転混合器を備えるめっき槽では、撹拌速度は、約0と約200rpmとの間、例えば、約50から約500rpmまでの間であり得る。金属イオン濃度に関しては、低電流密度で粗面堆積を得るために、比較的低い金属イオン濃度が採用され得、その一方で、高電流密度で粗面堆積を得るために、比較的高いイオン濃度が採用され得る。ある実施形態では、金属イオン濃度は、0.001mol/Lから4mol/Lまで、例えば、0.05mol/Lから1mol/Lまでに及ぶ。堆積の際に採用される流速はまた、堆積される薄膜の性質に影響を及ぼす。電流密度が低いほど、低流速が使用され得る。
【0032】
所望の場合には、所望の多孔率に高めるために、種々の添加剤が電気めっき流体内に含まれ得る。溶液内に含まれ得る添加剤は、これに限定するものではないが、有機酸、例えば、酢酸、クエン酸、例えば、ポリマー、例えば、PEG、などを含む。めっき溶液はまた、アルコール(例えば、エタノール)、アミン、およびチオール(例えば、チオ尿素)を含有し得る。一般的な銅めっき浴組成物(酸、例えば、硫酸/硫酸銅のような)およびアルカリ(例えば、ピロリン酸またはクロム酸溶液)がまた使用され得る。ポリマーが添加される場合には、ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)のような、線形または分岐水溶性ポリマーであり得る。他の関連ポリマーがまた、本発明の実践における使用に適しており、PEGまたはポリ(エチレングリコール)という用語の使用は、この点において包含的であって、排他的でないことが意図される。一部の実施形態では、ポリマーは、2から約300までの末端を有する。一部の実施形態では、ポリマーは、透明、無色、無臭、水溶性、熱安定性、多くの化学物質に対し不活性であり、加水分解または劣化せず、かつ無毒である。一部の実施形態では、ポリマーは生体適合性であり、すなわちポリマーは、害を及ぼすことなく生体組織または有機体と共生可能である。一部の実施形態では、ポリマーは非免疫原性であり、すなわちポリマーは、生体内で免疫反応を生成しない。一部の実施形態では、ポリマーは、化学式Ra−(CHCHO)m−CHCH−を含むPEGであり、ここで、mは、約3から約4000まで、または約3から約2000までであり、Raは、水素、−OH、CH−O−、CHCH−O−、またはCHCHCH−O−である。ポリマーは、線形または分岐であり得る。一部の実施形態では、分岐ポリマーは、中心枝コア部分と、中心枝コアに連結された複数の線形ポリマー鎖とを有する。PEGは、グリセロール、ペンタエリトリトール、およびソルビトールのような種々のポリオールにエチレンオキシドを添加することによって調製可能な分岐形態を含む。分岐PEGは、Rb(−PEG−OH)nのような一般式で表され得、ここで、Rbは、グリセロールまたはペンタエリトリトールのようなコア部分を表し、nは枝の数を表し、2から300までである。一部の実施形態では、PMは線形または分岐PEGである。採用され得る適切なポリマーは、これに限定するものではないが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびポリ(プロピレングリコール)(PPG)のようなポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ならびにそれらのコポリマー、ターポリマー、誘導体、および混合物を含む。ポリマーの各鎖の分子量は、約100Daから約100,000Daまで、または約6,000Daから約80,000Daまでに及び得る。適切なPEGは、これに限定するものではないが、PEG(100)、PEG(200)、PEG(300)、PEG(400)、PEG(600)、PEG(1000)、PEG(1500)、PEG(2000)、PEG(3000)、PEG(3350)、PEG(4000)、PEG(5000)、PEG(6000)、PEG(8000)、およびPEG(10000)、ならびにそれらのメトキシおよびエトキシ誘導体、ならびに上記の分子量のいずれか以内の分子サイズを有する任意のPEGを含む。ポリマー成分は、所望に応じて、任意の便利なプロトコルを使用して合成され得、または商業的供給源から購入され得る。適したPEGは、Sigma−Aldrich Corp.(St. Louis、MO)のような多くの供給源から市販されている。
【0033】
問題の添加剤は、これに限定するものではないが、促進剤、抑制剤、湿潤剤、平坦化剤、および浴安定剤を含む。問題の促進剤は、これに限定するものではないが、チオ尿素および3−スルホプロピルジスルフィドのような、チオールを含み、問題の促進剤は、単独または他の添加剤との組み合わせによって、金属の、例えば銅の、堆積速度を加速する。ある実施形態では、促進添加剤は、1ppBから1000ppmまで、例えば10ppbから500ppmまでに及ぶ濃度で存在する。ある実施形態では、添加剤の濃度は、実質的に指数関数的な速度で成長する樹枝状結節を提供する流速と組み合わされて採用され、例えば、樹枝状結晶の一端は、比較的に濃い促進剤環境に存在し、表面に近い樹枝状結晶の反対端は、比較的に薄い促進剤環境に存在する。これらの実施形態のあるものでは、流速は、この種の成長を提供する、ある拡散層の厚を有するように設定され、ここで、拡散層の厚さは、0.01から500μmまで、例えば1から100μmまでに及び得る。
【0034】
ある実施形態では、促進添加剤は、抑制添加剤と組み合わせて採用される。問題の抑制添加剤は、金属の表面を物理的に遮断する化合物であって、そのような添加剤は、これに限定するものではないが、ポリエチレングリコール、アミノ化合物、および有機化合物を含む。固体支持体の表面を物理的に遮断することによって、堆積された構造の表面遠位端における成長は、表面近位端における成長と比較して促進され得る。
【0035】
これらの実施形態では、促進添加剤の濃度および種類は、抑制添加剤の影響を排除するように採用され得、促進剤は抑制剤を追い出す。これらの実施形態のあるものでは、抑制添加剤と促進添加剤とを有する溶液が採用され、抑制添加剤の濃度は、質量移動から制限される。小量の結節生成を有する溶液の任意の一部が、反応促進剤のより高い濃度領域に到達し、次いで、指数関数的に成長して所望の粗度の値を提供する。これらの実施形態では、表面に近い領域は、抑制剤によって厳しく抑制される。溶液中に突出する成長結節の部分は、抑制剤中に侵入し抑制剤を追い出し得る促進剤と接触し、所望の樹枝状形態または結節を提供する。
【0036】
例えば、前述のような、抑制剤を採用することに対する代替案は、ガスの同時発生を含むプロトコルを採用することであり、この場合には、遮断ガス気泡が、堆積の間、固体支持体の表面に生成される。これらの実施形態では、堆積条件は、金属が堆積される固体支持体の表面において、ガス、例えば水素ガスを発生するように選択される。所望の場合には、これらのプロトコルにおいて生成される気泡のサイズは、所望の寸法の気泡を提供するように湿潤特性を制御する表面張力剤、例えば、酢酸、ポリエチレングリコール、または他の薬剤を採用することによって調整され得る。比較的少ない湿潤剤が、より大きな、例えばミクロンサイズの気孔を提供するために採用され得、その一方で、より小さなサイズの気孔のために、比較的多くの湿潤剤が採用され得る。
【0037】
両アプローチは共に、固体支持体の表面を物理的に遮断し、促進剤の存在が堆積された構造の表面遠位端における成長を促進するために採用され得るので、ガス同時発生プロトコルは、抑制剤に関して上述したものと類似の方法で、適切な促進剤とともに採用され得る。故に、固体支持体の表面全体に流れるときには、金属、例えば銅は、気泡または抑制剤種のような物理的遮断剤の存在のために促進種が存在しない領域、例えば堆積された構造の間の谷間とは対称的に、促進種が存在する場所を優先的にめっきする。
さらに別の実施形態では、実際に、固体支持体の表面に共有結合的に接着し得る有機ジアゾニウム含有種である、自己集合単分子層または電解グラフト化層が採用され得る。上述の気泡および抑制剤に類似する方法で、そのような堆積された種はまた、表面を物理的に遮断して、めっきされた構造の形態を調整し、所望の多孔質の構造を提供し得る。電解グラフト化層の核の濃度または自己集合単分子層の密度を制御することによって、堆積された金属構造の性質が調整され得る。ある実施形態では、これらのプロトコルは、固体支持体のものと異なる金属が、固体支持体上に堆積される場合に採用される。ある実施形態では、固体支持体の表面上に堆積される構造の性質をさらに調整するために、マスキングアプローチが採用される。
【0038】
さらに他の実施形態では、所望の多孔質の陰極下層を生成するために、陰極アーク堆積プロトコルが採用される。そのようなプロトコルでは、陰極アークで発生された金属イオンプラズマが、例えば、前述のように、多孔質の陰極下層の所望の構造を生成するために十分な条件下で、基板の表面に接触する。陰極アークで発生された金属イオンのイオンプラズマビームは、任意の便利なプロトコルを使用して生成され得る。陰極アークプロトコルによってイオンビームを生成する際には、陰極と1つ以上の陽極との間に十分な出力の電気アークが生成され、その結果として、陰極材料イオンのイオンビームが生成される。陰極アーク金属の堆積に先立って、シード金属層が、少なくとも1つの、しかし多くの場合2つ以上のコンフォーマルな金属下層から生成される。これらの下層は、これに限定するものではないが、TiN、Ti、W、Cr、またはこれらの金属の合金を含む、金属を含有する薄い接着層で始まる。この第1の金属層は、より厚い陰極アーク金属の接着性を向上させ、これに限定するものではないが、Au、Pt、Ag、Cu、Pt、Ir、Pd、Rh、またはRu、あるいはこれらの金属の合金を含む、貴金属によってシールされ得る。キャップ金属は、接着金属を化学的にシールし、また、陰極アークプロセスによって堆積される、より厚い金属によく接着するように選択される。陰極アークは、種々の条件において実行され得、その条件は、これに限定するものではないが、より高い圧力の不活性ガス(ガスは、Ar、Ne、He、Xe、またはこれらの単純混合物であり得、圧力は、50mTから1000mTまでに及び得る)および中立(バイアスなしの)標的を含む。より高い圧力および中立標的の場合には、これは、膜成長の際に標的表面において、より大きなマクロ粒子に有利に働くように小さいイオン化金属粒子を抑制し、その結果として、平均堆積膜厚の0.2倍から10倍までに及ぶピークツーピーク粗度値を有し得る膜をもたらす。成長した膜は、0.25umから25umまでの薄さであり得、ある実施形態では、それが下層電極構造に対する所望の粗度を達成する前には、厚さ3から10umまでの範囲内である。陰極アーク堆積を介して構造を生成するための他の便利なプロトコルが採用され得、本発明における使用のために適合され得る当該分野において公知のプロトコルは、これに限定するものではないが、米国特許第6,929,727号、第6,821,399号、第6,770,178号、第6,702,931号、第6,663,755号、第6,645,354号、第6,608,432号、第6,602,390号、第6,548,817号、第6,465,793号、第6,465,780号、第6,436,254号、第6,409,898号、第6,331,332号、第6,319,369号、第6,261,421号、第6,224,726号、第6,036,828号、第6,031,239号、第6,027,619号、第6,026,763号、第6,009,829号、第5,972,185号、第5,932,078号、第5,902,462号、第5,895,559号、第5,518,597号、第5,468,363号、第5,401,543号、第5,317,235号、第5,282,944号、第5,279,723号、第5,269,896号、第5,126,030号、第4,936,960号、ならびに、公開された米国特許出願第20050249983号、第20050189218号、第20050181238号、第20040168637号、第20040103845号、第20040055538号、第20040026242号、第20030209424号、第20020144893号、第20020140334号、および第20020139662号、に記載のものを含み、これらの開示は、本明細書において参考として援用される。そのようなプロトコルは、種々の異なる材料、例えば、銅、チタン、アルミニウム、などの堆積において着目される。付加的陰極アークプロトコルおよびそれによって生成される構造は、これに限定するものではないが、公開されたPCT特許出願第WO2007/149546号「Implantable Medical Devices Comprising Cathodic Arc Produced Structures」に記載されたものを含み、その開示は、本明細書において参考として援用される。
【0039】
さらに他の実施形態では、電気泳動堆積プロトコルが採用され得る。電気泳動堆積(EPD)は、電気コーティング、電気泳動コーティング、または電気泳動塗装を含む、幅広い産業プロセスのための用語である。EPDでは、液体媒体中に懸濁するコロイド粒子が、電場の影響下で移動(電気泳動)し、伝導性表面上に堆積される。安定した懸濁液を形成するために使用され得、かつ電荷を運搬し得るコロイド粒子は、すべて電気泳動堆積に使用され得る。これは、ポリマー、顔料、染料、セラミック、および金属のような材料の種類を含む。例えば、堆積される材料が黒鉛である場合には、黒鉛粒子の懸濁液が生成され得、黒鉛粒子に所望の電荷を付与するために、界面活性剤が懸濁液に含まれ得る。黒鉛粒子のサイズは異なり得て、ある実施形態では、約0.1から約100μmまで、例えば、約0.1から約2μmまでに及び得る。任意の便利な界面活性剤は、懸濁液中の黒鉛粒子に所望の電荷を付与可能なものを含み得、イオンおよび非イオン界面活性剤を含む。次いで、電場が懸濁液に印加され得、印加される電場は、黒鉛粒子を支持体の表面に移動させ、所望の多孔質の下層の形態で堆積させるために十分なものである。
【0040】
さらに他の実施形態では、固体支持体表面は、例えば、電気化学的溶解を介して電気化学的に改変され、この場合には、表面の一部は選択的に除去され、所望の多孔質の構造を提供する。例えば、陽極電位が金属表面に印加され、金属表面を溶解し得る。そのようなアプローチは、パターニングフォトレジスト層および/または添加剤と組み合わせて採用され得、表面上に所望の粗度またはパターンの結節を生成する。これらの実施形態のあるものでは、金属層は、最初に、例えば任意の便利な堆積プロトコルによって堆積される。次に、添加剤および/またはマスキング(例えば、フォトレジスト)が採用され、表面のある領域を選択的に溶解し、表面を粗面化する。
【0041】
ある実施形態では、金属の同時堆積および溶解アプローチが採用される。これらの実施形態では、2つの金属が、(例えば、陰極アーク、蒸発、スパッタリング等を介して)同時に堆積され、複合物層を生成し、金属は、(1)Pt、PtIr、Ir、Au、またはCuのような、不活性電極金属、および(2)Mg、Zn、Liのような、高酸化性かつ溶解性金属である。結果として生じる堆積層は複合物であり、大部分が金属1から成るが、しかし金属2の分離領域を有する。次いで、層は、電解溶液、例えば、水または有機酸(硫酸、硝酸、または塩酸のような)のような溶媒、塩基(NaOH、アルミニウム腐食液のような)、中性塩(NaCl、KCl、CuSO4、マグネシウム、リチウム、亜鉛塩のような)、または有機添加剤および界面活性剤(ポリエチレングリコールのような)に浸漬される。浸漬されると、金属2は溶解して、孔を含む金属1の膜を残す。孔のサイズは、金属(2)の粒子のサイズとなる。ある実施形態では、例えば、膜内に金属2を全く残さないことを所望する場合には、第2の金属の堆積条件(堆積電流、濾過、陰極温度、など)が、所望の全膜厚と同程度の粒子をもたらすように設定される。第1の金属粒子は、第2の金属粒子よりも小さく、コンパクトなものとなるように選択されえる。陰極アークは、制御された粒子サイズを有する粒子の堆積が可能であるために、複合物膜の堆積に特に適している。溶解ステップは、印加電流によって実行(陽極溶解)され得、または、印加電流を用いずに行うこともでき、その場合には、それは、金属2と溶液成分との間の化学反応、および/または金属2を腐食させる金属1と金属2との間の流電結合の結果である。上述のアプローチはまた、非金属粗膜、例えば、陰極アークを介して堆積される任意の対の材料に対しても適用され得、その一方は、多孔質の層を残すように選択的に溶解またはエッチングされ得る。また、上述のアプローチは2つの金属に限定されず、すなわち、2つ以上の金属(または合金)が複合物膜内に含まれ得る。
【0042】
多孔質の下層の上部には、活性電極(例えば、陰極)材料が存在する。上記で検討したように、活性電極材料は、種々の異なる材料を含み得る。電極が陰極である場合には、ある実施形態では、陰極材料は銅を含み、ある実施形態で特に着目されるものは、陰極材料としてのヨウ化第一銅(CuI)または塩化第一銅(CuCl)である。所望の場合には、例えば、バッテリの電圧を向上させるために、活性材料は、付加的元素、例えば硫黄などによってドープされ得る。
【0043】
活性陰極材料は、任意の便利なプロトコルを使用して、多孔質の下層の上に提供され得る。ある実施形態では、電着、例えば、電気めっき、または蒸発、例えば、化学気相堆積のような、堆積プロトコルが採用される。
【0044】
また、バッテリ内には、少なくとも1つの陽極が存在する。上記で検討したように、陽極材料は、種々の異なる材料を含み得る。ある実施形態では、陽極材料は、マグネシウム(Mg)金属またはマグネシウム合金を含む。活性陽極材料は、任意の便利なプロトコルを使用して、多孔質の下層の上に提供され得る。ある実施形態では、電着、例えば、電気めっき、または蒸発、例えば、化学気相堆積のような、堆積プロトコルが採用される。
【0045】
上記で検討したように、ある実施形態では、固体支持体120は、回路網支持体要素である。回路支持体要素は、任意の便利な構成を取り得、ある実施形態では、集積回路(IC)チップである。電極要素が配置される表面は、上表面、裏表面、または他の表面、例えば、所望に応じて側表面であり得、ある実施形態では、電極要素が少なくとも部分的に存在する表面は、ICチップの上表面である。
【0046】
上述の同定器のバッテリ構成要素に加えて、本発明の同定器はまた、信号発生構成要素を含む。同定器要素の信号発生構成要素は、活性化構成要素によって活性されると、例えば、以下に詳述されるように、例えば受信器によって受信可能な、検出可能信号を発する構造である。ある実施形態の信号発生構成要素は、活性化構成要素によって活性化されると、検出可能信号を生成し、および/または変換された送信出力を変調することができる、任意の便利なデバイスであり得る。問題の検出可能信号は、これに限定するものではないが、伝導性信号、音響信号、などを含む。上記で検討したように、信号発生器によって発せられる信号は、一般的または一意的信号であり得、問題の信号の代表的種類は、これに限定するものではないが、周波数偏移符号化信号、振幅変調信号、周波数変調信号、などを含む。
【0047】
ある実施形態では、信号発生要素は回路網を含み、以下に詳述されるように、回路網は信号を生成または発生する。選択される回路網の種類は、少なくとも部分的に、同定器の電源によって供給される駆動力に依存し得る。例えば、駆動力が1.2V以上である場合、標準CMOS回路網が採用され得る。他の実施形態で、駆動力が約0.7から約1.2Vまでの範囲にある場合、サブスレショウルド(sub−threshold)回路設計が採用され得る。駆動力が約0.7V以下の場合、ゼロスレショウルド(zero−threshold)トランジスタ設計が採用され得る。
【0048】
ある実施形態では、信号発生構成要素は、活性化構成要素による活性化に応じて、デジタルクロック信号を発生し得る電圧制御発振器(VCO)を含む。VCOは、アドレスが割り当てられ、制御電圧によってVOCを制御し得るデジタル回路によって、制御され得る。このデジタル制御回路は、活性化構成要素および発振器を含むチップ上に埋め込まれ得る。振幅変調またはアドレスをエンコードするための位相偏移キーを使用して、識別信号が伝送される。
【0049】
信号発生構成要素は、以下で詳細に検討されるように、患者の内部または外部にあり得る遠隔受信器に、発生された信号を伝送するように機能する、個別送信器構成要素を含み得る。送信器構成要素は、存在する場合には、例えば、生成および放出される信号の種類に応じて、いくつかの異なる構成をとり得る。ある実施形態では、送信器構成要素は、1つ以上の電極から成る。ある実施形態では、送信器構成要素は、例えば、アンテナ(単数または複数)の形態の、1つ以上のワイヤから成る。ある実施形態では、送信器構成要素は、1つ以上のコイルから成る。したがって、信号送信器は、種々の異なる送信器、例えば、電極、アンテナ(例えば、ワイヤの形態)、コイル、などを含み得る。ある実施形態では、信号は、1つまたは2つの電極、あるいは1つまたは2つのワイヤによって伝送される。二電極の送信器は、双極子であり、一電極の送信器は、単極子を形成する。ある実施形態では、送信器は、一ダイオード電圧降下分の電力のみを必要とする。一部の実施形態では、送信器ユニットは、電気双極子または電気単極子アンテナを使用して、信号を伝送する。
【0050】
図2は、本発明による、同定器内で採用され得る電気回路の一実装の詳細を示す。左側には、2つのバッテリ電極、すなわち金属1および金属2(32および33)がある。これらの金属は、電解質(上記で検討したように、単独で、または乾燥伝導性媒体前駆物質と組み合わせて、標的部位流体に接触すると生成される)に接触すると、バッテリを形成し、発振器61(この場合には、概略図として示される)に電力を提供する。金属1(32)は、低電圧(接地)を発振器61に提供する。金属2(33)は、高電圧(Vhigh)を発振器61に提供する。発振器61が作動すると、発振器は互いに反対のクロック信号62と逆クロック信号63とを発生する。これらの2つのクロック信号は、カウンタ64に進入し、カウンタは、単にクロックサイクルの数をカウントし、そのカウントをいくつかのレジスタに格納する。本明細書で示される実施例では、8ビットカウンタが採用される。したがって、カウンタ64の出力は、「00000000」の値から開始し、第1のクロックサイクルで「00000001」に変化し、「11111111」になるまで続く。カウンタ64の8のビット出力は、アドレスマルチプレクサ(mux)65の入力に連結される。一実施形態では、mux65は、回路内に配線接続可能なアドレスインタープリタを含有し、制御電圧を発生して発振器61を制御する。mux65は、カウンタ64の出力を使用して、シリアルビット配列にアドレスを再現し、それは信号伝送駆動回路にさらに供給される。mux65はまた、信号伝送のデューティサイクルを制御するために使用され得る。一実施形態では、mux65は、カウンタ64によって生成されるクロックカウントを使用して、16分の1の時間だけ信号伝送を作動させる。このような低デューティサイクルは、電力を節約し、また、他のデバイスが妨害なしに信号を伝送できるようにする。所与のチップのアドレスは、8ビット、16ビット、または32ビットであり得る。例えば、同定器が異なる種類の薬剤に関して採用される場合、および各薬剤がその独自の特定アドレスを有することが望ましい場合には、所望に応じて、8を超えるビット数が製品中で使用され得る。
【0051】
一実施形態によると、mux65は、アドレスを連続的にエンコードし、発振器61の出力周波数を変化させるために使用される、制御電圧を生成する。一例として、制御電圧が低いとき、すなわち、シリアルアドレスビットが0であるときには、1メガヘルツ信号が発振器によって発生される。制御電圧が高いとき、すなわち、アドレスビットが1であるときには、2メガヘルツ信号が発振器によって発生される。代替案として、これは、10メガヘルツおよび20メガヘルツであり得、または、デバイスが位相の変調のみに制限されている場合には位相偏移キーアプローチであり得る。mux65の目的は、発振器の周波数を制御すること、または発振増幅信号のAC代替実施形態である。
【0052】
mux65の出力は、電極駆動部66に連結され、それは、電極を駆動して、溶液に異なる電位を付与し、コイルを通る発振電流を駆動して、磁気信号を発生し、または単一電極を駆動して、溶液との間で電荷をプッシュ−プルし得る。このようにして、デバイスは、mux65内に格納されるアドレスを構成する0および1の配列を送信する。当該アドレスは、繰り返し送信され、金属1または金属2(32および33)が溶液中で消耗および溶解され、バッテリが作動しなくなるまで、継続して送信される。
【0053】
信号発生構成要素のための他の構成が、当然ながら可能である。問題の他の構成は、これに限定するものではないが、PCT特許出願第PCT/US2006/016370号「Pharma-Informatics System」(2006年4月28日出願)、PCT特許出願第PCT/US2007/022257号「In-vivo Low Voltage Oscillator for Medical Devices」(2007年10月17日出願)、PCT特許出願第PCT/US US2007/82563号「Controlled Activation Ingestible Identifier」(2007年10月25日出願)、米国特許出願第11/776,480号「Acoustic Pharma Informatics System」(2007年7月11日出願)、およびPCT特許出願第PCT/US US2008/52845号「Ingestible Event Marker System」(2008年2月1日出願)に記載されるものを含み、これらの特許出願の開示(特に、それらの信号発生構成要素)は、本明細書において参考として援用される。
【0054】
同定器は、任意の便利な処理技術を使用して加工され得る。ある実施形態では、平面処理プロトコルが、表面電極を有する電源を加工するために採用され、表面電極は、回路網支持体要素の同一表面上に少なくとも部分的に、少なくとも陽極および陰極を含む。ある実施形態では、平面処理プロトコルは、バッテリ源を生成するためにウエハ接合プロトコルの中で採用される。表面マイクロマシニングおよびバルクマイクロマシニング技術を含む、微小電気機械システム(MEMS)加工技術のような、平面処理技術が採用され得る。構造を加工するある実施形態で採用され得る堆積技術は、これの限定するものではないが、電着(例えば、電気めっき)、陰極アーク堆積、プラズマスプレー、スパッタリング、電子ビーム蒸着、物理的気相堆積、化学気相堆積、プラズマ強化化学気相堆積、などを含む。材料除去技術は、これに限定するものではないが、反応性イオンエッチング、異方性化学エッチング、等方性化学エッチング、例えば化学機械研磨による平坦化、レーザアブレーション、放電加工(EDM)、などを含む。また、リソグラフィプロトコルも着目される。ある実施形態では、平面処理プロトコルの使用が着目され、連続的に基板に適用される種々の異なる材料除去および堆積プロトコルを使用して、構造が、元々平面の基板の表面または複数の表面に構築され、および/またはそこから除去される。問題の例示的な加工方法は、同時係属中のPCT特許出願第PCT/US2006/016370号にさらに詳細に記載され、その開示は、本明細書において参考として援用される。
【0055】
(任意の生理学的に容認可能な担体成分)
前述のように、体内電源を含む本発明の同定器は、生理学的に容認可能な担体成分、例えば、同定器の摂取を助け、および/または着目標的部位に達するまで同定器を保護する、組成物または媒介物の中に(すなわち、組み合わされて)存在し得る。生理学的に容認可能な担体成分とは、摂取可能な固体または流体(例えば、液体)であり得る組成物を意味する。
【0056】
コーンスターチまたはゼラチン、ラクトース、デキストロース、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、第二リン酸カルシウム、塩化ナトリウム、およびアルギン酸のような、一般的な担体および賦形剤が着目される。本発明の製剤において一般的に使用される崩壊剤は、クロスカルメロース、微結晶性セルロース、コーンスターチ、グリコール酸澱粉ナトリウム、およびアルギン酸を含む。
【0057】
液体組成物は、懸濁剤、保存料、界面活性剤、湿潤剤、香味剤、または着色剤を含む好適な液体担体(単数または複数)、例えば、エタノール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコールのような非水性溶媒、油、または水の中の、化合物または薬学的に許容可能な塩の懸濁液あるいは溶液を含み得る。代替案として、液体製剤は、再構成可能粉末から調製され得る。例えば、活性化合物、懸濁剤、スクロース、および甘味料を含有する粉末は、水によって再構成されて懸濁液を形成し得、シロップが、活性成分、スクロース、および甘味料を含有する粉末から調製され得る。
【0058】
錠剤または丸薬形態の組成物が、固体組成物を調製するために日常的に使用される任意の適切な薬学的担体を使用して調製され得る。そのような担体の実施例は、ステアリン酸マグネシウム、澱粉、ラクトース、スクロース、微結晶性セルロース、および結合剤、例えばポリビニルピロリドンを含む。錠剤はまた、カラーフィルムコーティング、または担体(単数または複数)の一部として含まれる色とともに提供され得る。加えて、活性化合物は、親水性または疎水性基質を含む錠剤として、制御放出投薬形態で処方され得る。
【0059】
「制御放出」、「徐放」、および類似用語は、活性剤が、適用または注入後すぐに分散されずに、一定期間を通じて確認可能かつ制御可能な速度で、送達媒介物から放出される際に生じる、活性剤送達モードを表すために使用される。制御放出または徐放は、数時間、数日、または数ヶ月間に及び得、かつ多数の要因に応じて異なり得る。本発明の薬学的組成物に対して、放出速度は、選択された賦形剤の種類および組成物の中の賦形剤の濃度に依存する。別の放出速度の決定要因は、ポリオルトエステルのユニット間およびユニット内の連鎖の加水分解の速度である。加水分解の速度はさらに、ポリオルトエステルの組成物およびポリオルトエステル内の加水分解可能結合の数によって制御され得る。本薬学的組成物からの活性剤の放出速度を決定する他の要因は、粒子サイズ、媒体(基質の内部または外部の)の酸性度、ならびに基質内の活性剤の物理的および化学的特性を含む。
【0060】
カプセル形態の組成物が、日常的カプセル化手順を使用して、例えば、活性化合物および賦形剤の硬質ゼラチンカプセル内への組み込みによって、調製され得る。代替案として、活性化合物および高分子量ポリエチレングリコールの半固体基質が調製され、硬質ゼラチンカプセル内に充填され得、あるいは、活性化合物のポリエチレングリコール内の溶液、または食用油、例えば、流動パラフィンまたはヤシ油内の懸濁液が調製され、軟質ゼラチンカプセル内に充填され得る。
【0061】
含有され得る錠剤結合剤は、アカシア、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、澱粉、およびエチルセルロースである。使用され得る潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムまたは他のステアリン酸金属、ステアリン酸、シリコーン流体、タルク、ろう、油、およびコロイド状シリカを含む。
【0062】
ペパーミント、冬緑油、サクランボ香味料などのような香味剤がまた、使用され得る。加えて、投薬形態を外観的により目立たせるために、または製品の識別を助けるために、着色剤を添加することが望まれ得る。
【0063】
本発明の製剤の使用に適した他の成分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)の中に見られ得る。
【0064】
(任意の活性剤)
ある実施形態では、同定器は薬学的活性剤を伴わない。したがって、同定器、および摂取型事象マーカを成す任意の担体または他の成分は、活性剤を含まない。
【0065】
さらに他の実施形態では、同定器は活性剤を伴い、例えば、活性剤は同定器を含む担体組成物中に存在する。「活性剤/担体成分」とは、固体または流体(例えば、液体)であり得る組成物であって、一定量の活性剤、例えば、薬学的に許容可能な担体中に存在する投与量を有する組成物を意味する。活性剤/担体成分は、「投与製剤」とも称され得る。
【0066】
「活性剤」は、生体、例えばヒトのような哺乳類と接触すると、生理学的結果、例えば有益または有用な結果をもたらす、任意の化合物または化合物の混合物を含む。活性剤は、媒介物、担体、希釈剤、潤滑剤、結合剤、および他の調製補助剤、ならびにカプセル化または他の保護成分のような成分と区別可能である。活性剤は、生体対象内の生物学的プロセスを調節することができる、任意の分子、ならびにその結合部分またはフラグメントであり得る。ある実施形態では、活性剤は、疾患の診断、治療、または予防において、あるいは薬剤の成分として使用される物質であり得る。ある実施形態では、活性剤は、中枢神経系に影響を及ぼし、かつ挙動に変化をもたらす、麻薬または幻覚剤のような化学物質であり得る。
【0067】
活性剤(すなわち、薬物)は、生体対象内の標的と相互作用することができる。標的は、いくつかの異なる種類の自然発生構造であり得、問題の標的は、細胞内の標的と細胞外の標的との両方を含む。そのような標的は、タンパク質、リン脂質、核酸、などであり得、タンパク質は特に着目される。問題の特定のタンパク標的は、これに限定するものではないが、酵素、例えば、キナーゼ、ホスファターゼ、還元酵素、シクロオキシゲナーゼ、プロテアーゼなど、SH2、SH3、PTB、およびPDZドメインのようなタンパク質間相互作用に関与するドメイン含有標的、構造タンパク質、例えば、アクチン、チューブリンなど、膜受容体、免疫グロブリン、例えば、IgE、インテグリンなどのような細胞粘着受容体、イオンチャネル、膜貫通ポンプ、転写因子、信号伝達タンパク質、などを含む。
【0068】
活性剤(すなわち、薬物)は、標的との構造的相互作用のために必要な1つ以上の官能基、例えば、特定の薬物およびその意図される標的に応じて、疎水性、親水性、静電的、または共有結合性さえもの、相互作用に必要な基を含み得る。標的がタンパク質である場合には、薬物部分は、水素結合、疎水性間相互作用、静電的相互作用、などのような、タンパク質との構造的相互作用のために必要な官能基を含み得、かつ、官能化学基のうちの少なくとも2つのような、アミン、アミド、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基を少なくとも含み得る。
【0069】
問題の薬物は、上述の官能基のうちの1つ以上と置換される環式炭素または複素環構造、および/あるいは、芳香族または多環芳香族構造を含み得る。また、問題の薬物部分は、ペプチド、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造的類似体、またはそれらの組み合わせを含む、生体分子に見られる構造である。そのような化合物は、問題の化合物を識別するためにスクリーニングされ得、種々の異なるスクリーニングプロトコルは、当該分野において公知である。
【0070】
活性剤は、合成または天然化合物のライブラリを含む種々の源から得られ得る、天然発生のまたは合成された化合物に由来し得る。例えば、ランダム化オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの調製を含む、種々の有機化合物および生体分子のランダムな合成および指定された合成のために、多数の手段が利用可能である。代替案として、細菌、真菌、植物、および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリが利用可能であり、または容易に生成される。加えて、天然または合成的に生成されたライブラリおよび化合物は、従来の化学的、物理的、または生化学的手段を通じて容易に改変され、組み合わせライブラリを生成するために使用され得る。公知の薬理学的物質は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化、などのような指定された、またはランダムな化学的改変を受け、構造的類似体を生成し得る。
【0071】
かくして、活性剤は、組み合わせ手段を通じて生成される化合物のライブラリ、すなわち、化合物の多様な組み合わせライブラリを含む、天然発生分子または合成分子のライブラリから得られ得る。そのようなライブラリから得られるときには、採用される薬物部分は、活性のための適切なスクリーニングアッセイにおいて、何らかの望ましい活性を実証する。組み合わせライブラリ、ならびにそのようなライブラリを生成およびスクリーニングするための方法は、当該分野において公知であり、第5,741,713号、第5,734,018号、第5,731,423号、第5,721,099号、第5,708,153号、第5,698,673号、第5,688,997号、第5,688,696号、第5,684,711号、第5,641,862号、第5,639,603号、第5,593,853号、第5,574,656号、第5,571,698号、第5,565,324号、第5,549,974号、第5,545,568号、第5,541,061号、第5,525,735号、第5,463,564号、第5,440,016号、第5,438,119号、第5,223,409号に記載されており、これらの開示は、本明細書において参考として援用される。
【0072】
問題の活性剤の広範なカテゴリは、これに限定するものではないが、心血管作動薬、痛み止め薬、例えば、鎮痛剤、麻酔剤、抗炎症剤など、神経作用剤、化学治療(例えば、抗新生物)剤、などを含む。
【0073】
前述のように、種々の製造プロトコルが、組成物を生成するために採用され得、例えば、同定器は、薬学的に許容可能な担体または媒介物中に存在し、担体または媒介物は、1つ以上の活性剤をさらに含み得る。そのような組成物を製造する際には、同定器は、一部の様態で薬学的投薬形態に安定的に結合される。安定的に結合されるとは、例えば摂取によって、少なくともそれを必要とする対象に投与されるまで、同定器と投薬形態が互いに分離しないことを意味する。同定器は、いくつかの異なる方法で、組成物の薬学的担体/活性剤成分に安定的に結合され得る。担体/活性剤成分が、例えば錠剤または丸薬のような固体組成物である、ある実施形態では、担体/活性剤成分は、同定器のための空洞を提供するように生成される。次いで、同定器が空洞内に配置され、空洞は、例えば生体適合性材料によってシールされ、最終組成物を生成する。例えばある実施形態では、錠剤は金型によって生成され、金型は、結果として得られる圧縮された錠剤中に空洞を生成するような特徴を含む。同定器が空洞内に配置され、空洞がシールされ、最終錠剤を生成する。本実施形態の変形例では、錠剤は、例えばロッド形状または他の便利な形状に、取り外し可能な要素によって圧縮される。次いで、取り外し可能な要素が除去され、錠剤内に空洞を生成する。同定器が空洞内に配置され、空洞がシールされ、最終錠剤を生成する。本実施形態の別の変形例では、最初に、いかなる空洞をも伴わない錠剤が生成され、次いで、例えばレーザドリルによって、空洞が錠剤中に生成される。同定器が空洞内に配置され、空洞がシールされ、最終錠剤を生成する。さらに他の実施形態では、錠剤は、同定器を錠剤の副部品と結合することによって生成され、副部品は、事前生成された副部品であるか、または引き続いて製造され得る。例えばある実施形態では、錠剤は最初に、錠剤の裏側の半分を生成し、錠剤の裏側の半分の上のある位置に信号発生要素を配置し、次いで、裏側の半分および信号発生要素の上に錠剤の上部分を配置し、最終所望の組成物を生成することによって生成される。ある実施形態では、錠剤は同定器の周囲に生成され、その結果として、同定器が生成された錠剤内に配置される。例えば、生体適合性材料、例えばゼラチン(信号発生要素を保護するための)内に封入され得るか、または封入され得ない同定器は、担体/活性剤前駆物質、例えば、粉末と組み合わされ、同定器が錠剤の内部位置に配置されるように、錠剤に圧縮または成形される。成形または圧縮する代わりに、ある実施形態では、担体/活性剤成分が同定器上に噴霧されて、錠剤構造を構築する。さらに別の実施形態では、活性剤/担体成分前駆物質は液体製剤であり得、それは、同定器と組み合わされ、次いで硬化されて最終組成物を生成する。さらに他の実施形態では、事前生成錠剤が、同定器を錠剤に安定的に付着させることによって、同定器と嵌着され得る。錠剤の特性を変更しないプロトコル、例えば、溶解などが着目される。例えば、錠剤の一端上にスナップ嵌着し、それと一体化される同定器を有するゼラチン要素が、ある実施形態では採用される。ゼラチン要素は、ある実施形態では着色され、信号発生要素と嵌着した錠剤を容易に識別する。組成物が、例えばゼラチンカプセルの充填された構成のような、活性剤/担体組成物を充填したカプセル構成を有する場合には、同定器は、カプセル構成要素、例えば上面側または裏面側カプセルと、活性剤/担体組成物を充填されたカプセルと一体化され、最終組成物を生成し得る。上記で検討した製造方法は、単に本発明の組成物が製造され得る種々の異なる方法の提示にすぎない。
【0074】
ある実施形態では、同定器は、対象に投与されると分裂する。したがって、ある実施形態では、組成物は、例えば摂取、注射などを介して体内に送達後に、例えば溶解、分解、浸食されるなど、物理的に破壊される。これらの実施形態の組成物は、摂取され、胃腸管を通過する際に完全でないまでも実質的に原型を保って存続するように構成されるデバイスとは区別される。
【0075】
(システム)
本主題組成物を含むシステムがまた、提供される。本主題発明のシステムは、ある実施形態では、本発明の体内電源、例えば、上記で検討したような同定器と、例えば、受信器の形態の信号検出構成要素とを含む、1つ以上のデバイスを含む。信号検出構成要素は、例えば上記で検討したように、組成物の信号発生要素によって発生される信号の性質に応じて大幅に異なり得る。
【0076】
本発明の実施形態のシステムの信号受信器は、同定器から信号を受信するように、例えば、同定器の摂取後に同定器が標的生理学的部位と接触すると、同定器によって発せられる信号を受信するように構成されるものである。信号受信器は、例えば以下で検討されるように、信号発生要素によって発生される信号の性質に応じて大幅に異なり得る。したがって、信号受信器は、上述のように、これに限定するものではないが、RF信号、磁気信号、伝導性(近接場)信号、音響信号、などを含む、種々の異なる種類の信号を受信するように構成され得る。ある実施形態では、受信器は、2つの構成要素が通信媒体として患者の身体を使用して、別の構成要素、例えば同定器から伝導的に信号を受信するように構成される。したがって、同定器と受信器との間で伝達される信号は、身体を通って移動し、伝導媒体として身体を必要とする。同定器が発する信号は、身体組織を通って伝導される交流電流(AC)電圧信号の形態で、対象体の皮膚および他の身体組織を通って伝送され、そこから受信され得る。その結果として、センサデータが、対象の皮膚および他の身体組織を介して直接的に交換されるために、そのような実施形態は、自律センサユニットからシステムの中枢送受信ユニットおよび他の構成要素へセンサデータを伝送するための、いかなる付加的ケーブルまたは有線接続、あるいは無線リンク接続さえ必要としない。この通信プロトコルは、受信器が対象の身体上の任意の所望の位置に適切に配置され得、それによって、受信器は信号伝送を達成するために必要とされる導電体に自動的に接続され、すなわち、信号伝送は、対象の皮膚および他の身体組織によって提供される導電体を通じて運ばれるという利点を有する。ある実施形態では、信号検出構成要素は、同定器から発せられる信号を検出すると活性化されるものである。ある実施形態では、信号受信器は、複数の異なる信号を、例えば、2つ以上、5個以上、10個以上、などを同時に検出することができる(すなわち、そのように構成される)。
【0077】
信号受信器は、種々の異なる種類の信号受信器要素を含み得、受信器要素の性質は、必然的に、信号発生要素によって生成される信号の性質に応じて異なる。ある実施形態では、信号受信器は、信号発生要素によって発せられる信号を検出するための1つ以上の電極(例えば、2つ以上の電極、3つ以上の電極、複数の、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上の対の電極、など)を含み得る。ある実施形態では、受信器デバイスは、一定の距離、例えば、電極が電圧差を検出可能な距離だけ離れた2つの電極を備える。この距離は異なり得、ある実施形態では、約0.1から約5cmまでに及び、例えば、約0.5から約2.5cmまで、例えば、約1cmである。代替の実施形態では、単一電極を利用する受信器が採用される。ある実施形態では、信号検出構成要素は、信号発生要素によって発せられる信号を検出するための1つ以上のコイルを含み得る。ある実施形態では、信号検出構成要素は、信号発生要素によって発せられる信号を検出するための音響検出要素を含む。ある実施形態では、複数の対の電極(例えば、上記で検討したように)が提供され、例えば、信号の検出可能性を向上させる。
【0078】
問題の信号受信器は、外部信号受信器および植え込み型信号受信器の両方を含む。外部実施形態では、信号受信器は体外にあって、それは、使用時に受信器は体外に存在することを意味する。受信器が植え込まれる場合には、信号受信器は体内にある。信号受信器は、例えば、体内または体外のいずれにおいても、少なくともIEMから発せられる信号を受信している間は、身体と安定的に結合されるように構成される。
【0079】
問題の信号受信器は、これに限定するものではないが、PCT特許出願第PCT/US2006/016370号「Pharma-Informatics System」(2006年4月28日出願)、およびPCT特許出願第PCT/US US2008/52845号「Ingestible Event Marker Systems」(2008年2月1日出願)に開示される受信器を含み、これらの特許出願の開示(特に、その信号受信器構成要素)は、本明細書において参考として援用される。
【0080】
ある実施形態では、信号受信器は、受信信号のデータを前記対象の外部の場所へ提供するように構成される。例えば、信号受信器は、例えば、モニタ(ベッドサイドモニタのような)、コンピュータ(例えば、PCまたはMAC)、携帯情報端末(PDA)、電話、メッセージングデバイス、スマートフォン、などの形態をとり得る、外部データ受信器へデータを提供するように構成され得る。一実施形態では、信号受信器が、丸薬が摂取されたことを示す信号の検出に失敗した場合には、信号受信器は、丸薬を服用するように注意喚起を、対象のPDAまたはスマートフォンに送信し得、それは次いで、スマートフォン(例えば、録音メッセージ)などで電話を受信することによって、例えばPDA上のディスプレイまたはアラームで、薬剤を服用するようにユーザに催促し得る。信号受信器は、受信信号のデータを前記対象の外部の場所へ再伝送するように構成され得る。代替案として、信号受信器は、外部の問い合わせデバイスによって問い合わせが行われ、受信信号のデータを外部の場所へ提供するように構成され得る。
【0081】
したがって、ある実施形態では、システムは、受信器(ある実施形態では、植え込まれる、または局所的に適用され得る)とは異なる外部デバイスを含み、この外部デバイスは、いくつかの機能性を提供する。そのような装置は、フィードバックおよび患者に対する適切な臨床的規定を提供する能力を含み得る。そのようなデバイスは、いくつかの形態のうちの任意の形態をとり得る。一例として、デバイスは、患者に隣接するベッド上に設置するように構成され得、例えば、ベッドサイドモニタである。他の形態は、これに限定するものではないが、PDA、スマートフォン、ホームコンピュータ、などを含む。デバイスは、ペースメーカーデバイスまたは丸薬の検出のための専用インプラントによって内部で生成されるような、薬学的摂取報告および生理学的感知デバイスの両方から、本主題特許出願の他のセクションでさらに詳細に記載される情報を読み出し得る。外部装置の目的は、患者からデータを取得し、外部デバイスに送出することである。外部装置の特徴の1つは、臨床医のような遠隔位置または中央監視機関へ、電話回線のような伝送媒体を通じて伝送され得る形態で、薬理学的および生理学的情報を提供するその能力である。
【0082】
(方法)
本発明の局面は、本発明の体内電源を含む、体内デバイスを使用する方法をさらに含む。概して、本発明の方法は、例えば、デバイスを対象内に植え込むことによって、デバイスを摂取することによって、などによって、体内デバイスを何らかの方法で対象の身体に配置するステップを含む。デバイスは、種々の対象で採用され得る。概して、そのような対象は、「哺乳動物」または「哺乳類」であって、これらの用語は、哺乳類に属する生体を記述するために広く使用され、食肉目(例えば、イヌおよびネコ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む。ある実施形態では、対象はヒトである。デバイスを対象の身体内に配置した後に、デバイスは、種々の目的、例えば、1つ以上の生理学的パラメータを感知するため、1つ以上の療法を送達するため、問題の個人事象をマークするため、などに採用される。
【0083】
ある実施形態では、体内デバイスは摂取型デバイスであり、体内電源はデバイスの同定器の一部である。そのような実施形態では、同定器は摂取され、同定器によって発せられる信号が、前述のように、例えば受信器によって検出される。そのような方法は、PCT特許出願第PCT/US2006/016370号「Pharma-Informatics System」(2006年4月28日出願)、およびPCT特許出願第PCT/US US2008/52845号「Ingestible Event Marker Systems」(2008年2月1日出願)にさらに記載されており、これら特許出願の開示(特に、その信号受信器構成要素)は、本明細書において参考として援用される。
【0084】
(有用性)
本発明の体内電源を含むデバイスは、治療用途と非治療用途との両方を含む、種々の異なる用途において採用され得る。問題の特定用途は、これに限定するものではないが、PCT特許出願第PCT/US2006/016370号「Pharma-Informatics System」(2006年4月28日出願)、およびPCT特許出願第PCT/US US2008/52845号「Ingestible Event Marker Systems」(2008年2月1日出願)に記載の用途を含み、これら特許出願の開示(特に、その信号受信器構成要素)は、本明細書において参考として援用される。
【0085】
本発明のIEM体内デバイスは、種々の異なる用途において採用され得、その用途は、本質的に医療および非医療の両方であり得る。次に、異なる例示的用途が以下でさらに詳細に検討される。
【0086】
ある用途は、問題の個人事象、例えば、生理学的パラメータ(問題の症状(単数または複数)のような)の発現、活性の発現などをマークする、IEMの単独使用を伴う。例えば、ある実施形態では、事象マーカが、問題の症状の発現をマークするために採用される。そのような例では、ある個人が問題の症状を自覚すると、例えば、紅潮、吐き気、興奮、などを感じ始めると、例えば、その個人はIEMを摂取し、問題の症状の発生をマークし得る。例えば、患者は気分が悪くなり始めると、この不快感に応じて事象マーカを摂取し得る。摂取すると、マーカは信号を受信器に送信し、受信器は次いで、さらなる使用のために、例えば生理学的データなどと組み合わせるために、信号の受信を記録し得る。ある実施形態では、受信信号は、例えば受信器上のセンサによって、植え込み型レコーダからなどで、患者から取得される任意の生理学的データに対する背景情報を提供するために使用される。
【0087】
別の問題の症状は疼痛である。これらの実施形態では、摂取型事象マーカは、疼痛マーカとして採用され得る。例えば、患者が疼痛を監視されている際に、患者が疼痛を感じない場合には、患者は、第1の種類のマーカを摂取し得る。患者が、疼痛を感じる場合には、患者は、第2の種類のマーカを摂取し得る。異なる種類のマーカは、所望に応じて、色コードなどで区別され、患者による識別および適切な使用を補助し得る。例えば、患者が疼痛を感じないときに摂取されるマーカは、青色に着色され得、その一方で、患者が疼痛を感じるときに摂取されるマーカは、黄色に着色され得る。異なる種類のマーカを有する代わりに、摂取されるマーカの量が、したがって、例えば単一マーカまたは2つ以上のマーカから取得される信号の量が、疼痛のような問題の症状の尺度を表すために使用される、プロトコルが採用され得る。したがって、ある個人が激しい疼痛を有する場合には、その個人は、有効な疼痛薬を4錠同時に服用し、その一方で、軽度の疼痛に対しては、その個人は1つのマーカのみを服用し得る。
【0088】
そのような実施形態では、事象マーカの摂取および受信器による信号の検出によってマークされる問題の症状の発現は、例えば、植え込み型生理学的モニタを使用することによって、1つ以上の問題の生理学的パラメータの記録を開始する関連点として使用され得る。これらの例では、マーカから発せられた信号は、受信器によって受信され、それは、次いで、生理学的パラメータレコーダ(Reveal(登録商標) Plus Insertable Loop Recorder(ILR)、Medtronic Corporation、のような)にデータの記録を開始させ、例えば後の使用のために、データを保存させる。例えば、植え込み型生理学的パラメータレコーダは、限られた記録可能時間量(42分のような)のみを有し得る。そのような状況では、データは、何らかの方法で保護のためにフラグまたはマークが付されない限り、自動的に上書きされ得る。本方法では、IEMは、患者によって知覚されるように、問題の症状の発現をマークするために摂取され得、受信器は信号を受信すると、レコーダと共に、保護され上書きされるべきではない信号の前後の時間に(後に、または一定時間前に)取得されたデータを保護するように作用し得る。システムは、事象マーカの摂取のみではなく、生理学的感知パラメータ、例えばpHにも、応答して作用するようにさらに構成され得る。かくして、本方法は、医師が後日に確認し得るように、診断の一連の情報にフラグを付し、それを上書きから保護するという点において、事象レコーダとしても使用される。
【0089】
ある実施形態では、事象マーカは、所与の一式の生理学的データを後で解釈するための背景情報を提供する。例えば、活性センサを採用して、事象マーカと特定の薬物とを同時投与する場合には、その薬物によて引き起こされる活性の任意の変化が記録され得る。ある人物が事象マーカおよび薬物の両方を服用した後に、活性の低下が認められる場合には、その低下は、例えば眠気を催すか、または実際に眠らせることによって、薬物がその人物の活性を低減させている可能性を示す。そのようなデータは、薬物の用量を調節するために使用され得、または代替の薬剤に切り替える決定の根拠となり得る。
【0090】
ある実施形態では、事象マーカが、複数の事象のデータベースを構築するために採用される。そのようなデータベースは、複数のマークされた事象間の共通性を見出すために採用され得る。複数のマークされた事象間の共通性を見出すために、単純なまたは複雑なプロトコルが採用され得る。例えば、複数の事象が平均化され得る。代替案として、インパルス応答理論のような技術が採用され得、そのような技術は、特定の事象に結合される一式の複数のセンサストリームにおける、正確な共通特徴に関する情報を提供する。
【0091】
本発明のIEMシステムは、「気分が悪い」というような主観的症状を使用して、生理学的に実際に生じていることに関して取得された客観的測定値に、前後関係および背景を付与することができる。したがって、誰かが事象マーカを服用するたびに異常を感じる場合には、客観的センサデータのデータベースを参照して、データベース内の共通特徴を見つけることができる。そのようなアプローチは、主観的気分の根本原因を発見するために使用され得る。例えば、そのようなアプローチは、ある人物が気分が悪くなるときにはいつも、その血圧における何らかの変化があること、および主観的症状と客観的生理学的データとの間の関連性が、その診断に使用され得ることを、判断するために使用され得る。したがって、一般化可能な事象マーカは、データを任意の他の源から区別する背景情報をもたらす。したがって、経口剤事象マーカの使用は、任意の他の関連健康監視情報または健康事象のための背景情報を提供する。
【0092】
ある実施形態では、事象マーカは、マーカの摂取が、例えば患者が医療補助を必要としていることを示す、アラーム信号を患者から送信させるような、警報マーカであり得る。例えば、患者が胸痛、息切れなどのような問題の症状の発現を感じるときには、患者は、事象マーカを摂取し得る。事象マーカから発せられる信号は、受信器によって受信され得、受信器は、次いでアラームを発生し、医療従事者に配信し得る。
【0093】
ある実施形態では、事象マーカは、治療作用を発生または開始するために採用され得、例えば、植え込み型パルス発生器を活性化して電気療法を送達する、植え込まれた薬物送達デバイスを活性化して一定用量の薬物を投与する、生理学的センサを活性化してデータの取得を開始する、などのために採用され得る。例えば、患者が片頭痛を治療するための神経刺激装置を有している場合には、前兆の発現を知覚すると、患者はIEMを摂取し得る。次いで、発せられる信号は、神経刺激装置を刺激モードに活性化し、それによって、インプラントに療法を送達させる。代替案として、植え込まれた薬物送達デバイス、例えば、腫瘍剤を送達するデバイスを有している場合には、IEMの摂取は、植え込まれたデバイスに活性剤を送達させ得る。
【0094】
ある実施形態では、事象マーカは、患者内に植え込まれた医療デバイスに情報を送達するために採用される。例えば、摂取型事象マーカは、植え込み型パルス発生器、例えばペースメーカのための、ファームウェアアップグレードデータのような、植え込まれた医療デバイスのためのアップデートデータを含む信号を送信し得る。そのような例では、信号は、IEMから伝導的に医療デバイスに送信されるアップグレードコードを含み得、信号およびコードを受信すると、医療デバイスのファームウェアがアップグレードされる。
【0095】
事象マーカが単独で採用され得る他の用途は、通勤時間、運動計画の開始、睡眠時間、喫煙(例えば、喫煙量の記録)などのような、非医療的個人事象の開始をマークまたは記録することである。
【0096】
上述のように、本発明の実施形態は、事象マーカが、別の物質の組成物、例えば、薬学的組成物、食物、などと同時摂取されることを特徴とし、事象マーカは、同時摂取される物質と同じ組成物の中に存在しても、またはしなくてもよい。例えば、事象マーカは、薬剤の摂取を追跡記録するために採用され得、マーカは、問題の薬物と同時投与される。薬物およびマーカの同時投与が着目される用途は、これに限定するものではないが、臨床研究、例えば血圧薬の薬の滴定、などを含む。所望に応じて、IEMは、原則的に、薬局にて調合されるときには、単に別の丸薬として提供され得る。
【0097】
事象マーカを別の組成物、例えば、薬物、食物などと同時摂取する代わりに、マーカおよび他の組成物は、例えば、エンドユーザによって一緒に配合され得る。例えば、カプセルの形態のIEMは、エンドユーザによって開封され、薬学的組成物で充填され得る。次いで、得られた配合されたカプセルおよび活性剤は、エンドユーザによって摂取され得る。エンドユーザの代わりに、薬剤師または医療提供者が、配合するステップを行い得る。
【0098】
さらに他の実施形態では、マーカは、他の組成物の製造元、例えば、薬学的組成物の製造業者または生産者において、他の組成物と既に配合されて存在する。そのような組成物の実施例は、PCT特許出願第PCT/US2006/016370号に記載されるものを含み、その開示は、本明細書において参考として援用される。
【0099】
ある実施形態では、本発明のIEMは、ある個人が服用している薬物と、所望の効果と関連する指標に及ぼす影響との比較において、どのような所与の結果となるのかを、個別基準に基づいて確認できるようにするために採用される。例えば、所与の患者が、複数の薬剤の投薬計画を処方され、処方された治療計画に対して、患者がどのように反応するかの指標として監視される複数の異なる生理学的パラメータが存在する場合には、所与のマーカによってマークされる所与の薬物は、問題の生理学的パラメータのうちの1つ以上に及ぼす影響の観点から評価され得る。この評価の後に、適宜、調節がなされ得る。このようにして、自動化が、個々の反応に基づいて療法を調整するために採用され得る。例えば、患者が腫瘍療法を受けている場合には、事象マーカは、取得した生理学的パラメータデータにリアルタイムで背景情報を提供するために使用され得る。得られた注釈付けされたリアルタイムデータが、療法を継続すべきか、または新しい療法に変更すべきかについて決定するために使用され得る。
【0100】
ある実施形態では、投薬事象(IEMによってマークされるような)は、センサデータと相関し、どのように所与の薬物が作用するか、例えば、薬物動態および/または薬力学的モデルの観点から、プロファイルを展開する。薬物動態モデルを取得するために、センサが投薬事象のIEMマーキングとともに採用される。薬物動態モデルが得られると、投薬事象を使用してそのモデルを駆動し、血清中薬物レベルおよび反応を予測することができる。種々のセンサから判断されるように、患者の具合が良くないことを、この時点で知ることができる。薬物動態モデルを見返して、患者が具合が良くないと感じるときには、血液中の薬物のレベルが低下していることが分かる。その場合、このデータが、投薬頻度の増加または所与の投薬事象における投与量の増加を決定するために使用される。事象マーカはモデルを展開し、次いでそれを適用する方法を提供する。
【0101】
IEMが、例えば、2つの別個の組成物または単一組成物(前述のように)として、薬学的剤と同時投与される場合には、図12に示されるような本発明のシステムは、投薬タイミングおよびレベルを追跡し、療法に対する反応を測定し、個々の患者の生理および分子プロファイルに基づいて投薬の変更を推奨する、動的フィードバックおよび治療ループを可能にする。例えば、症候性心不全患者は、主に心臓の負担を軽減し、患者の生活の質を向上させることを目的として、毎日、複数の薬物を服用する。主要な療法は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、β遮断薬、および利尿薬を含む。薬学的療法を有効にするためには、患者がその処方された投与計画を順守し、必要用量を適切な時間に服用することが不可欠である。臨床文献における複数の研究が、II型およびIII型心不全患者のうちの50%を越える患者が、ガイドライン推奨療法を受けておらず、適切に調節されている患者のうちの、40〜60%のみが投薬計画を順守していることを示している。本主題システムによって、心不全患者はその療法順守を監視され、順守成果は、重要な生理学的測定とリンクされ、医師による療法の最適化を促進し得る。
【0102】
ある実施形態では、本発明のシステムは、センサデータおよび投与データを含む、集約情報を取得するために採用され得る。例えば、心拍数、呼吸数、多軸加速度データ、体液状態に関する何らかのデータ、および体温に関する何らかのデータを組み合わせて、活性指標のような生理学的指標を生成するために使用され得る、対象の総活性に関する情報を提供する指標を導出し得る。例えば、体温に上昇が見られる場合、心拍数は僅かに上昇し、呼吸数が加速するが、これは、その人物が活性状態にある指標として採用され得る。これを較正することによって、その瞬間にその人物が消費しているカロリー量が決定され得る。別の実施例では、特定の脈拍セットまたは多軸加速度データが、ある人物が階段を上っている状態を示し得て、そこから使用エネルギー量を推測し得る。別の実施形態では、体脂肪測定値(例えば、インピーダンスデータから)が、測定された生体指標の組み合わせから生成された活性指標と組み合わされて、減量管理または心臓血管健康促進プログラムに有用な生理学的指標を生成し得る。この情報は、心機能指標と組み合わされて、健康全般の全体的状況が把握され得、それは、薬学的療法投与データと組み合わされ得る。別の実施形態では、例えば、特定の製剤は、体温の若干の上昇または心電図の変化と関連することが分かる。薬物代謝の薬力学的モデルが展開され、受信器からの情報を使用して、そのモデルに自由パラメータを本質的に当てはめて、対象の血清中に実際に存在するレベルをより正確に推測することができる。この情報は投薬計画にフィードバックされ得る。別の実施形態では、子宮収縮を測定する(例えば、ひずみゲージによって)センサと、胎児心拍数を監視するセンサとからの情報が組み合わされて、ハイリスク妊娠モニタとして使用され得る。
【0103】
ある実施形態では、本発明のシステムを使用して収集される対象の特定情報は、1人以上の追加の個人からのデータと組み合わされる場所へと伝送され得、2人以上、例えば、5人以上、10人以上、25人以上、50人以上、100人以上、1000人以上、などの個人から収集されるデータの複合である一連のデータを提供する。次いで、複合データは操作され得、例えば、異なる基準に従って分類され、1つ以上の異なる種類の群、例えば患者群、医療従事者群、などに利用可能とされ、ここでデータの操作は、任意の所与の群の、アクセス可能なデータ種類へのアクセスを制限するものであり得る。例えば、データは、同一疾患を患い、同一薬剤を服用している100人の異なる個人から収集され得る。データは、薬学的投与計画に対する患者のコンプライアンスおよび全体的な健康に関する表示を追跡しやすく展開するために、処理および採用され得る。群の患者構成員は、この情報にアクセスし、患者のコンプライアンスが群の他の患者構成員と一致しているか、患者が、他の患者構成員が経験している効果を得ているかどうかを確認し得る。さらに別の実施形態では、医師はまた、自分の患者が他の医師の患者と一致しているかどうか確認するために、複合データの操作権限を付与され得、実際の患者がどのように所与の治療処置計画に反応しているかに関する有用情報を得ることができる。複合データへのアクセスを付与された群に対して、付加的機能性が提供され得、そのような機能性は、これに限定するものではないが、データに注釈を付ける能力、チャット機能、セキュリティ権限、などを含む。
【0104】
本発明の薬物動態モデルは、体内の血中濃度の変動に応答して、リアルタイムで薬物投薬計画を調節することを可能にする。薬物動態モデルは、体内の所与の薬剤の血中濃度を予測または測定し得る。次いで、このデータは、薬剤の次の用量を患者が服用すべき時を計算するために使用され得る。その時点でアラームが発せられ、用量を服用するように患者に警告し得る。血中濃度が高いままの場合には、アラームが発せられ、元々の処方時間間隔で次の用量を服用すべきではないことを患者に警告し得る。薬物動態モデルは、上述のようなIEMを含む薬剤摂取監視システムと併用され得る。このシステムからのデータは、モデル、ならびに母集団データ、測定データ、および患者によるデータ入力に組み込まれ得る。複数の源からのデータを利用することによって、非常に強力かつ正確なツールが展開され得る。
【0105】
一部の実施形態では、受信器によって収集されるデータは、いつ、どの薬剤が、どれくらいの量で投与されたかを判断するために、薬物動態モデルによって直接使用され得る。この情報は、患者内の薬剤の血中濃度の推定値を計算するために使用され得る。計算された血中濃度に基づいて、薬物動態モデルは患者に警告を送信し、血中濃度が高過ぎて、毒性レベル近傍またはそれ以上であること、あるいは、血中濃度が低過ぎて、さらに用量を服用すべきであることを、伝えることができる。薬物動態モデルは、植え込まれた受信器自体の上で、または植え込まれた受信器からデータを受信する外部システムの上で実行され得る。
【0106】
単純形の薬物動態モデルは、すべての患者が同一であると仮定し、平均的母集団データを使用して、血中濃度をモデル化し得る。より複雑かつ正確なモデルは、患者に関する他の情報を入力することによって得ることができる。この情報は、医師のようなユーザによって入力され得るか、または付随するセンサから受信器によって収集され得る。モデルを調節するために使用され得る情報は、他の要因の中でもとりわけ、服用されている他の薬剤、患者が罹患する疾患、患者の臓器機能、酵素量、代謝、体重、および年齢を含む。情報はまた、患者が血糖降下を感じる、あるいは疼痛または目まいを有する場合などに、患者自身によって入力され得る。これは、モデル予測を実証するためのさらなる証拠として使用され得る。
【0107】
食物用途の実施例は、以下のものを含む。糖尿病などのある病状では、患者が何を、いつ食べたのかが重要となり得る。そのような例では、本発明の事象マーカは、患者が食べる食物の種類に対する手がかりとなり、またはそれにリンクされる。例えば、異なる食物品目に対して一式の事象マーカを有することができ、それらは食物品目と同時に投与され得る。得られたデータから、ある個人に関する個々の代謝プロファイルが完成され得る。患者がどれくらいのカロリーを消費しているかが分かる。活性および心拍数、ならびに周囲温度に対する体温データを得ることによって、消費カロリー数が計算され得る。その結果として、どの食物をいつ食べるべきかについてのガイダンスが、患者に提供され得る。非疾患患者がまた、このようにして食物摂取を追跡し得る。例えば、厳格な訓練の食事療法に従う運動選手は、食物摂取および1つ以上の問題の生理学的パラメータに及ぼす食物摂取の影響をより詳しく監視するために、IEMを採用し得る。
【0108】
上述の議論において検討したように、本発明のIEMシステムは、治療用途および非治療用途の両方で使用される。治療用途では、IEMは、薬学的活性剤と組み合わされても、または組み合わされなくてもよい。IEMが活性剤と組み合わされる実施形態では、得られた複合組成物は、薬学情報科学対応の薬学的組成物として見なされ得る。
【0109】
そのような薬学情報科学実施形態では、IEMおよび活性剤を含む有効量の組成物が、組成物中に存在する活性剤を必要とする対象に投与され、「有効量」とは、例えば、病状またはそれに付随する症状の改善、所望の生理学的変化の達成、などの所望の結果をもたらすのに十分な投与量を意味する。投与される量はまた、治療的有効量として見なされ得る。「治療的有効量」とは、疾患を治療するために対象に投与されるときに、その疾患の治療に効果を及ぼすのに十分な量を意味する。
【0110】
組成物は、所望の結果をもたらすことができる任意の便利な手段を使用して、対象に投与され得、投与経路は、例えば、上記で検討したように、少なくとも部分的には組成物の特定の形態に依存する。上記で検討したように、組成物は、これに限定するものではないが、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐薬、および注射のような、固体、半固体、または液体を含む、治療投与のための種々の製剤に構成され得る。したがって、組成物の投与は、これに限定するものではないが、経口、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経真皮的、気管内、などの投与を含む、種々の方法で達成され得る。薬学的投薬形態では、所与の組成物は、単独でまたは他の薬学的活性化合物と組み合わされて投与され得、例えば、それは、それに安定的に付随する信号発生要素を有する組成物であり得る。
【0111】
本主題方法は、病状を含む、種々の異なる条件の治療において使用される。本主題組成物によって治療可能な特定の病状は、本主題組成物の中に存在し得る活性剤の種類に伴って変化する。したがって、病状は、これに限定するものではないが、循環器疾患、腫瘍性疾患のような細胞増殖性疾患、自己免疫疾患、ホルモン異常疾患、感染性疾患、疼痛管理、などを含む。
【0112】
治療とは、少なくとも、対象を悩ます病状に付随する症状の改善を意味し、改善とは、少なくとも、パラメータの、例えば治療される病態に付随する症状の軽減を表す、広い意味で使用される。したがって、治療はまた、病態または少なくともそれに付随する症状が、完全に阻止され、例えば、発生が防止されるか、または停止され、例えば、終了し、その結果として、対象が病態に、または少なくとも病態を特徴付ける症状に悩まされることがないような状況を含む。故に、疾患の「処置」または「治療」とは、疾患にかかりやすいが、しかし疾患の症状を未だ経験または呈していない動物における疾患の発症予防(予防治療)、疾患の抑制(疾患の発症の遅延または停止)、疾患の症状または副作用の軽減(対症治療を含む)、および疾患の緩和(疾患の退行)を含む。本発明の目的のために、「疾患」とは、疼痛を含む。
【0113】
ある実施形態では、前述のように、本主題方法は、例えば、1週間以上、1ヶ月以上、6ヶ月以上、1年以上、2年以上、5年以上、などのような長期間にかけて、病状を管理する方法である。本主題方法は、1つ以上の付加的疾患管理プロトコルと、例えば、ペーシングプロトコル、心臓再同期プロトコルなどのような、循環器疾患管理における電気刺激ベースのプロトコル、種々の異なる病状のための食事および/または運動療法のような、生活様式、などと併用して採用され得る。
【0114】
ある実施形態では、方法は、組成物から得られたデータに基ずく治療計画の調節を含む。例えば、データは、処方された治療計画との患者のコンプライアンスに関する情報を含んで取得され得る。例えば、上述のセンサデバイスのような1つ以上のセンサを使用して得られる付加的生理学的データの有無にかかわらず、このデータは、例えば、所望に応じて適切な決定ツールとともに採用され、所与の治療計画が維持されるべきであるか、あるいは何らかの方法で、例えば薬剤投与計画および/またはインプラント活性計画の修正によって、修正されるべきであるかの判断をなし得る。したがって、本発明の方法は、治療計画が、組成物(単数または複数)から得られる信号に基づいて修正される方法を含む。
【0115】
ある実施形態ではまた、本発明の組成物の履歴を判断する方法が提供され、組成物は、活性剤、同定器要素、および薬学的に許容可能な担体を含む。同定器が、問い合わせに応答して信号を発するある実施形態では、同定器は、例えば、ワンドまたは他の適切な問い合わせデバイスによって問い合わせが行われ、信号を得る。次いで、得られた信号は、組成物に関する履歴情報、例えば、原料、加工流通過程の管理などを判断するために採用される。
【0116】
ある実施形態では、複数の異なるIEM、例えば、5つ以上、7つ以上、10以上の個別IEMを含む、2つ以上の個別IEMS、3つ以上の個別IEMS、4つ以上の個別IEM、などから成るシステムが採用される。個別IEMは、区別可能信号を提供するように構成され得、例えば、信号は、信号自体の性質、信号を発するタイミング、などの観点から区別可能であり得る。例えば、そのような集合における各IEMは、異なるように符号化された信号を発し得る。代替案として、各IEMは、異なる生理学的標的部位で信号を発するように構成され得、例えば、各IEMは、異なる標的生理学的部位で活性化されるように構成され、例えば、第1のIEMは、口腔内で活性化され、第2のIEMは、食道内で活性化され、第3のIEMは、小腸内で活性化され、第4のIEMは、大腸内で活性化される。このような集合の複数の異なる区別可能IEMは、種々の異なる用途で使用される。例えば、上述の4つのIEM集合を有する場合には、その集合は、例えば、消化管を通る運動性、胃内容排出、などの消化系の機能を判断するために、診断用途において使用され得る。例えば、各IEMがそれぞれの信号を発した時刻を記録することによって、信号時間のプロットが生成され、そこから消化管機能に関する情報が取得され得る。
【0117】
本発明は、臨床医に、その治療道具における重要な新しいツールを提供する。すなわち、体内に実際に送達される薬剤の自動検出および識別である。この新しい情報デバイスおよびシステムの用途は多種多様である。用途は、これに限定するものではないが、(1)処方された治療計画との患者のコンプライアンスの監視、(2)患者のコンプライアンスに基づく治療計画の調整、(3)治験における患者のコンプライアンスの監視、(4)制御物質の使用の監視、などを含む。これらの異なる例示的用途の各々は、同時係属中のPCT特許出願第PCT/US2006/016370号において詳細に検討されており、その開示は、本明細書において参考として援用される。
【0118】
本主題システムが使用される付加的用途は、米国特許第6,804,558号に記載されるものを含み、その開示は、本明細書において参考として援用される。例えば、本主題システムは、医療情報通信システムにおいて使用され得、該システムは、患者の体内に植え込まれた植え込み型医療デバイス(IMD)の性能の監視、患者の健康の監視、および/またはIMDを通じた患者への療法の遠隔送達を可能にする。例えば、バンドエイド式または植え込み式形態のような外部形態の本発明の信号受信器は、IMDと通信し、患者の体外に位置する通信モジュール、携帯電話、および/または携帯情報端末(PDA)との双方向通信が可能である。システムは、IMDと、通信モジュールならびに/あるいは携帯電話および/またはPDAとの信号受信器と、遠隔コンピュータシステムと、双方向通信可能な通信システムとを備え得、通信モジュール、携帯電話、および/またはPDAは、IMDから情報を受信し、あるいは、上記で検討したように患者の内部または外部にある信号受信器を介して、そこへ情報を中継することができる。
【0119】
本発明の受信器が使用され得る付加的用途は、これに限定するものではないが、受精能の監視、体脂肪の監視、満腹度の監視、満腹度の制御、全血量の監視、コレステロールの監視、喫煙の検出、などを含む。
【0120】
(キット)
また、本発明の1つ以上の体内デバイスを含むキットが提供される。キットは、例えば、前述のように、1つ以上の体内デバイスを含み得る。複数の体内デバイスを有するそれらの実施形態では、そのようなデバイスは、単一の容器、例えば、単一のチューブ、ボトル、バイアル、などの中にパッケージされ得、あるいは、1つ以上の投与量が個別にパッケージされ得、その結果として、あるキットは体内デバイスの2つ以上の容器を有し得る。ある実施形態では、キットはまた、上記で検討したような、信号受信要素を含み得る。ある実施形態では、キットはまた、例えば、前述のような、外部モニタデバイスを含み得、それは、遠隔位置と、例えば医院、中央設備、などとの通信を提供し、組成物の使用に関してデータを取得し、取得したデータを処理し得る。
【0121】
本主題キットはまた、キットの構成要素を使用してどのように本主題の方法を実践するのかについての、指示を含み得る。指示は、適切な記録媒体または被印刷物に記録され得る。例えば、指示は、紙またはプラスチックのような被印刷物に印刷され得る。したがって、指示は、パッケージ挿入物として、キットの容器およびその構成要素のラベル(すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングに付随する)などとして、キット内に存在し得る。他の実施形態では、指示は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、などの上に存在する電子記憶装置データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の指示はキット内に存在せず、遠隔源から、例えばインターネットを介して、指示を取得するための手段が提供される。本実施形態の実施例は、ウェブアドレスを含むキットであり、ウェブアドレスから指示が確認され得、および/または指示がダウンロードされ得る。指示と同様に、指示を取得するためのこの手段は、適切な被印刷物に記録される。
【0122】
本主題キットの一部または全部の構成要素は、適切なパッケージング内にパッケージされ、無菌状態を維持し得る。本主題キットの多くの実施形態では、キットの構成要素は、キット封入要素内にパッケージされ、単一の取扱が容易なユニットを作り、キット封入要素、例えば箱または類似構造は、例えば、キットの一部または全部の構成要素の無菌状態をさらに保持するために気密容器であり得るが、または気密容器でなくてもよい。
【0123】
本発明は、記載された特定の実施形態に制限されず、したがって、変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためであって、制限することを意図するものではないことが理解されるべきであり、故に、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ制限される。
【0124】
一定範囲の値が提供される場合には、その範囲の上限値と下限値との間の各中間値(文脈によって明示的に示されない限り、下限値の単位の10分の1まで)、およびその記載範囲の中の任意の他の記載値または中間値は、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は、独立してより小さい範囲内に含まれ得、また、本発明内に包含され、記載範囲内の任意の具体的に除外された限界に従う。記載範囲が一方または両方の限界を含む場合には、それらの包含された限界の一方または両方を除外する範囲がまた、本発明内に含まれる。
【0125】
記載がない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語はすべて、本発明が属する当業者によって一般に理解されものと同一意味を有する。本明細書に記載のものと類似または均等の任意の方法および材料がまた、本発明の実践または試験において使用され得るが、代表的な例示的方法および材料がここで記載されている。
【0126】
本明細書に引用される刊行物および特許はすべて、各個々の刊行物または特許が具体的かつ個々に参考として援用されることが示されるように、本明細書において参考として援用され、かつ、方法および/または材料を引用される刊行物と併せて開示および説明するために、本明細書において参考として援用される。任意の刊行物の引用は、出願日前の開示に対するものであって、本発明が、先行発明という理由から、そのような刊行物に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の公開日と異なる可能性があり、それは個別に確認される必要があり得る。
【0127】
本明細書および添付の請求項において使用される際に、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって明示的に記載がない限り、複数の参照を含むことが留意されるべきである。請求項は、任意のオプション要素を除いて作成され得ることが、さらに留意されるべきである。したがって、この記載は、請求項要素の記載と併せての「単に」、「単なる」などの排他的用語の使用、または「消極的な」限定の使用のための、先行する根拠としての役割を果たすものとして意図される。
【0128】
ある範囲は、本明細書では、用語「約」によって先行される数値として提示されている。用語「約」は、それが先行する正確な数、ならびにその数の近傍または近似値に対する文字上の支持を提供するために、本明細書において使用される。ある数が、具体的に記載される数の近傍または近似値であるかどうか判断する際に、近傍または近似の記載されない数も、提示される文脈において、具体的に列挙される数の実質的均等物を提供する数であり得る。
【0129】
本開示を熟読することによって当業者には明白となるように、本明細書に記載および例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、任意の他のいくつかの実施形態の特徴から容易に分離され、またはそれらと組み合わされ得る個別の構成要素および特徴を有する。任意の記載された方法は、記載された事象の順番で、または論理的に可能な任意の他の順番で、実行され得る。
【0130】
前述の発明は、理解を明確にする目的のために、例示および一例として、ある程度詳細に記載されたが、添付の請求項の精神または範囲から逸脱することなく、一定の変更および修正がそれらに対してなされ得ることが、本発明の教示に照らして当業者には容易に明白となる。
【0131】
故に、前述の内容は、単に本発明の原理を例示するにすぎない。当業者が、本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本発明の原理を具現化し、かつその精神および範囲内に含まれる、種々の配置を考案することができることが理解される。さらに、本明細書に記載される全ての実施例および条件的用語は、主として、当該分野を促進する発明者らによって導かれる本発明の原理および概念を理解する際の、読者の助けとなることを意図され、かつ、そのような具体的に記載される実施例および条件に制限するものではないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、局面、および実施形態、ならびにその特定の実施例を記載する本明細書の全ての記述は、それらの構造的均等物と機能的均等物との両方を包含するものと意図される。加えて、そのような均等物は、現在公知の均等物と将来開発される均等物との両方、すなわち、構造にかかわらず同一機能を行うように開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示および記載される例示的実施形態に制限されることは意図されない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の請求項によって具現化される。
【0132】
本明細書および添付の請求項において使用される際に、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって明示的に記載がない限り、複数の参照を含むことが留意されるべきである。請求項は、任意のオプション要素を除いて作成され得ることが、さらに留意されるべきである。したがって、この記載は、請求項要素の記載と併せて、「単に」、「単なる」などの排他的用語の使用、または「消極的な」限定の使用のための、先行する根拠としての役割を果たすものとして意図される。
【0133】
本開示を熟読することによって当業者には明白となるように、本明細書に記載および例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、任意の他のいくつかの実施形態の特徴から容易に分離され、またはそれらと組み合わされ得る個別の構成要素および特徴を有する。任意の記載された方法は、記載された事象の順番で、または論理的に可能な任意の他の順番で、実行され得る。
【0134】
前述の発明は、理解を明確にする目的のために、例示および一例として、ある程度詳細に記載されたが、添付の請求項の精神または範囲から逸脱することなく、一定の変更および修正がそれらに対してなされ得ることが、本発明の教示に照らして当業者には容易に明白となる。
【0135】
故に、前述の内容は、単に本発明の原理を例示するにすぎない。当業者が、本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本発明の原理を具現化し、かつその精神および範囲内に含まれる、種々の配置を考案することができることが理解される。さらに、本明細書に記載される全ての実施例および条件的用語は、主として、当該分野を促進する発明者らによって導かれる本発明の原理および概念を理解する際の、読者の助けとなることを意図され、かつ、そのような具体的に記載される実施例および条件に制限するものではないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、局面、および実施形態、ならびにその特定の実施例を記載する本明細書の全ての記述は、それらの構造的均等物と機能的均等物との両方を包含するものと意図される。加えて、そのような均等物は、現在公知の均等物と将来開発される均等物との両方、すなわち、構造にかかわらず同一機能を行うように開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示および記載される例示的実施形態に制限されることは意図されない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の請求項によって具現化される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)固体支持体と、
(b)該固体支持体の表面上に存在する第1の大表面電極と、
(c)第2の電極と
を備える、体内電源。
【請求項2】
前記固体支持体は、半導体材料を備える、請求項1に記載の体内電源。
【請求項3】
前記固体支持体は、集積回路を備える、請求項2に記載の体内電源。
【請求項4】
前記第1の大表面積電極は、陰極である、請求項1に記載の体内電源。
【請求項5】
前記第1の大表面積電極は、陽極である、請求項1に記載の体内電源。
【請求項6】
前記第2の電極は、前記固体支持体の表面上に存在する、請求項1に記載の体内電源。
【請求項7】
前記第1および第2の電極は、前記固体支持体の同じ表面上に存在する、請求項6に記載の体内電源。
【請求項8】
前記第1および第2の電極は、前記固体支持体の相対する表面上に存在する、請求項6に記載の体内電源。
【請求項9】
前記大表面積電極は、多孔質の電極下層の上に存在する活性電極材料を備える、請求項8に記載の体内電源。
【請求項10】
前記多孔質の電極下層は、電着される、請求項9に記載の体内電源。
【請求項11】
前記多孔質の電極下層は、陰極アークによって生成される、請求項9に記載の体内電源。
【請求項12】
前記多孔質の電極下層は、電気泳動堆積を使用して生成される、請求項9に記載の体内電源。
【請求項13】
前記体内電源は、標的生理学的部位と接触すると、検出可能信号を発するように構成される、請求項1に記載の体内電源。
【請求項14】
前記体内電源は、薬学的に許容可能な担体組成物の中に存在する、請求項13に記載の体内電源。
【請求項15】
前記薬学的に許容可能な担体組成物は、錠剤である、請求項14に記載の体内電源。
【請求項16】
前記薬学的に許容可能な担体組成物は、カプセルである、請求項14に記載の体内電源。
【請求項17】
(a)請求項13〜請求項16のうちのいずれか一項に記載の体内電源と、
(b)同定器によって生成される信号を検出するための受信器と
を備える、システム。
【請求項18】
前記受信器は、体内受信器である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記受信器は、体外受信器である、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記システムは、データ格納要素、データ処理要素、データ表示要素、データ伝送要素、通知機構、およびユーザインターフェースのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項17〜請求項19のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
請求項13〜請求項16のうちのいずれか一項に記載の体内電源を摂取するステップと、
該体内電源によって発せられる信号を検出するステップと
を包含する、方法。
【請求項22】
請求項1〜請求項16のうちのいずれか一項に記載の体内電源を備える、
キット。
【請求項23】
前記キットは、複数の前記体内電源を備える、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記キットは、受信器をさらに備える、請求項22に記載のキット。
【請求項25】
前記キットは、データ格納要素、データ処理要素、データ表示要素、データ伝送要素、通知機構、およびユーザインターフェースのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項22に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−522409(P2010−522409A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549726(P2009−549726)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/053999
【国際公開番号】WO2008/101107
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(505222679)プロテウス バイオメディカル インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】