説明

大規模な使い捨て型バイオリアクター

植物組織または植物細胞を培養するための、再使用可能な使い捨て型デバイスであって、400リットル以上の培養培地において植物組織または植物細胞を培養するために好適な酸素飽和度および剪断力を維持するために設計される大きさおよびガス交換ポートを有する非剛直性の容器を含むデバイスが提供される。また、本明細書の1つの実施形態の使い捨て型デバイスを使用する、植物細胞において触媒活性なヒト組換えタンパク質を産生するための方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞/組織培養のための大規模な使い捨て型バイオリアクターに関し、具体的には、植物細胞培養のための大規模なバイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養および組織培養は、例えば、ホルモン、酵素、タンパク質、抗原、食品添加物および天然殺虫剤を含む様々な化合物の商業的規模の製造のために日常的に利用される。
【0003】
細胞培養物および/または組織培養物を工業的規模で製造するために現在利用されている技術は、組み立ておよび維持のために費用がかかる再使用可能なガラス製またはステンレス鋼製のバイオリアクターシステムに基づく。そのようなバイオリアクターシステムでは、バッチ間における清浄化および殺菌が要求され、また、清浄化後の清浄度および清浄化後の清浄化剤残渣の存在についての費用および時間のかかる妥当性確認が必要であることに起因して、製造物を転換する間により徹底した清浄化が要求される。
【0004】
加えて、これらのタイプの工業的バイオリアクターシステムでは、複雑で費用のかかる混合技術が用いられ、例えば、高価で複雑な無菌シールによって作動するインペラーなどが用いられる。一部の高価なバイオリアクターは、ガスをバイオリアクターの中に吹き込むことにより培地の混合およびガス飽和をもたらすように設計されたエアーリフト用マルチパート構造を含む。しかしながら、ガス圧力、気泡サイズ、および培地における望ましくない剪断力の生成のために、複雑な通気技術の実施が余儀なくされる。加えて、そのようなバイオリアクターは、その時点で要求される最大体積容量に従って設計される。従って、パイロットプラントのバイオリアクターから大規模なバイオリアクターへのスケールアップを行うときや、製造を既存のバイオリアクターの能力を超えて増大させる必要性が生じるときに、様々な問題が生じる。大容量のバイオリアクターを運転することに対する現在の代替策は、全体的な容量を増大または減少させるための一定の柔軟性を提供しながら、全体の体積容量が要求と一致する多数の小型のモジュール式のガラス製バイオリアクターまたはステンレス鋼製バイオリアクターを組み合わせることである。しかしながら、数個の小型のバイオリアクターを使用することは、費用および維持時間を増大させ、従って、数個の小型のバイオリアクターを使用することは、一個だけの大型のバイオリアクターを使用することよりも費用がかかり、かつ労働集約的である。
【0005】
これらの制限のために、植物細胞を先行技術のバイオリアクターで培養することでは、二次代謝産物および組換えタンパク質の両方を含めて、比較的高価な抽出可能な製造物がもたらされ、そのような製造物は、代替的な製造システムによって製造される同等の製造物と商業的に競合することができない。
【0006】
現在、植物細胞バイオリアクターで製造される、培養に基づく唯一の組換えタンパク質医薬品は、ニューカッスルウイルスの処置において獣医学的に使用される市販の抗ウイルスワクチンである。しかしながら、このワクチンのほかには、現在、非常に少数の二次代謝産物が、バイオリアクターにおける細胞培養によって製造されるにすぎない(例えば、植物代謝産物のパクリタキセル(タキソール)およびシコニンなど)。
【0007】
商業的規模において、バイオリアクターシステムでは、従来から永久的または半永久的な成長チャンバーが用いられる。様々な使い捨て型成長チャンバーが、この技術分野ではよく知られているが、それらの成長チャンバーは、典型的には小規模な製造量について利用されており、例えば、自家醸造において、また、研究室での実験的な研究のために利用される。小規模のバイオリアクターでは、典型的には、研究室環境において利用することができる使い捨て可能なバッグが用いられる。
【0008】
より大きい体積を伴う使用のために好適な使い捨て型バイオリアクターもまた提案されている。先行技術のシステムは、リアクター体積のスケールアップに伴ってより重要になる培養培地の撹拌および通気の要求に、いくつかの様式で対処している。Applikon Biotechnology(オランダ)およびStedim Inc.(フランス)は、培養培地の通気および撹拌をもたらすように培養バッグを揺り動かすモーター駆動のプラットホームに設置するように設計された50リットルの柔軟な培養バッグを使用するAppliflex(登録商標)単回使用バイオリアクターシステムを提供する。類似する使い捨て型バイオリアクターデバイスが、Wave Biotech,LLD(Somerset、NJ)によって提供される。Wave Biotech,LLDは、同様にモーター駆動のプラットホームによって通気および撹拌される1000Lまでの体積のための培養バッグを提供する。Hyclone Inc.(Logan、UT)は、Baxter Biosciencesと共同で、ステンレス鋼製バイオリアクター槽を改良するように設計された、250Lまでの動物細胞培養のために設計された使い捨て可能な培養バッグ(単回使用バイオリアクター「SUB」)を提供する。通気および撹拌が、培養バッグに一体化される複雑なインペラー装置に取り付けられる使い捨て型でないインペラー駆動装置によって提供される。米国特許出願第2005/0272146号(Hodge他)は、混合のためのインペラーブレードまたは他の機械的手段を有する150リットルの使い捨て型バイオリアクターを開示する。さらに別のタイプの使い捨て型バイオリアクターは、U字型のバッグを有しており、培養培地を側板の相互の持ち上げにより撹拌および通気するために、クレーン様装置を必要とする。なおもさらに別の解決策は、定期的な間隔で膨張および収縮し、これによって絞りタイプの混合運動をもたらすように作製される、柔軟な培養バッグを取り囲む加圧カフに基づく。
【0009】
すべての上記システムにおいて、支持体システムおよび通気/撹拌システムは複雑化しており、費用がかかり、特定の使用に専用であり、また、容量において制限される。従って、たとえリアクター槽自体が使い捨て可能であり得るとしても、また、単回使用のために意図され得るとしても、これらのシステムの使用に際しては、費用のかかる設備準備および維持が要求される。
【0010】
培養物の撹拌および通気のために空気を使用する使い捨て型バイオリアクターデバイスもまた提案されているが、気泡に基づく通気および混合を大きい体積に適合させることには問題がある。多くのより小さい体積のバイオリアクターでは、1つのガス導入口およびスパージャーにより、またはガス気泡のための他のタイプのデフューザーにより、十分な通気が提供される[例えば、Osmotec(イスラエル)によって提供されるZetaバイオリアクター(Agritech Israel、第1号、1997年(秋号)、19頁)を参照のこと]。そのようなシステムの欠点の1つは、(デフューザーからの)非常に小さい気泡を導入することによって行われる通気が、剪断力に対して特に感受性の強い植物細胞培養物の場合には特に、細胞に対する損傷を生じさせることである。
【0011】
医薬品使用のためのタンパク質は従来、哺乳動物または細菌の発現システムで産生されている。しかしながら、例えば、植物の分子生物学システム(例えば、アグロバクテリウム法など)を使用して、タンパク質およびペプチドの大量製造のために遺伝子を植物および植物細胞に導入することが比較的簡便であるために、植物細胞技術が、代替的なタンパク質発現システムとしてますます広まりつつある[Ma,J.K.C.、Drake,P.M.W.およびChristou,P.(2003)、Nature reviews、4、794〜805]。
【0012】
植物細胞培養は、代謝要求に関してだけでなく、一般に大きいサイズを有する植物細胞が、従来の工業的バイオリアクターにおいて見出される剪断力に対して極めて脆いという結果としてもまた、細菌細胞培養または哺乳動物細胞培養とは異なる。従って、植物細胞培養のすべての局面の十分な通気を保証するために、十分な混合を植物細胞培養において提供することが重要である一方で、これを、培養で成長させられる脆い植物細胞に好適な様式で行わなければならない。
【0013】
従って、製造物のより大きい収量および品質、ならびに改善された費用効果を提供するために、使い捨て可能な細胞/組織培養のための既存のシステムおよびデバイスを改善することが絶えず求められている。本発明は、組換えタンパク質を製造するための様々な細胞/細胞培養を伴う使用のために効果的である、大きい体積の、使い捨て可能な、しかし再使用可能なバイオリアクターであって、使い捨て型リアクターの体積のスケールアップに固有の問題について対処されているバイオリアクターを提供する。
【発明の概要】
【0014】
本発明の1つの局面によれば、少なくとも400リットルの体積を有し、かつデバイスが少なくとも2回の連続する培養/採取サイクルのために連続して使用されることを可能にするガス交換ポートおよび採取用ポートを伴って構成される非剛直性の容器を含む、植物組織および/または植物細胞を培養および採取するための使い捨て型デバイスが提供され、ここで、本デバイスは、前記植物組織および/または植物細胞を培養するために好適な酸素飽和度および剪断力を維持するために設計および構築される。
【0015】
本発明の別の局面によれば、植物組織および/または植物細胞を、400リットルを超える体積で培養および採取するための方法が提供され、この方法は、(a)少なくとも400リットルの体積を有し、かつデバイスが少なくとも2回の連続する培養/採取サイクルのために連続して使用されることを可能にするガス交換ポートおよび採取用ポートを伴って構成される使い捨て可能な非剛直性の容器を提供すること(ただし、デバイスは、前記植物組織および/または植物細胞を培養するために好適な酸素飽和度および剪断力を維持するために設計および構築される)、および(b)接種物を、前記採取用ポートを介して提供すること、(c)無菌の培養培地および/または無菌の添加物を提供すること、(d)必要な場合には、前記容器を外部の光により照らすこと、および(e)前記細胞および/または組織を所望の収量にまで前記培地において成長させることを含む。
【0016】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記植物組織および/または植物細胞を培養するために好適な前記酸素飽和度および前記剪断力は、下記のパラメーターの値または値範囲を組み合わせることによって維持される:
a)高さ対体積比;
b)入口ガス圧力;
c)断面積あたりのガス入口の密度;
d)入口での通気速度;および
e)入口でのガス気泡体積。
【0017】
本発明の別の局面によれば、植物組織および/または植物細胞を培養および採取するための使い捨て型デバイスと、前記植物組織および/または植物細胞を培養するために好適な培養培地とを含む植物細胞培養システムが提供される。
【0018】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、このシステムはさらに、前記培地において成長する植物細胞懸濁物または植物組織培養物を含む。
【0019】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、植物細胞培養物は、植物の根から得られる植物細胞を含む。
【0020】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、植物細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rihzogenes)により形質転換された根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態におけるさらなる特徴によれば、植物細胞はタバコ細胞であり、より好ましくはニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabaccum)細胞である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態におけるさらなる特徴によれば、タバコ細胞はヒト組換えアセチルコリンエステラーゼを発現する。ヒト組換えアセチルコリンエステラーゼは、アセチルコリンエステラーゼ−Rであり得る。アセチルコリンエステラーゼ−Rは、配列番号9に示されるようなアミノ酸配列を有することができる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態におけるさらなる特徴によれば、タバコ細胞は、配列番号9に示されるようなポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0024】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、パラメーターの値または値範囲は、下記の値または値範囲のうちの少なくとも1つから選択される:
a)約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比;
b)約1バール〜5バールの入口ガス圧力;
c)約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度;
d)単位体積の培地あたり1分につき約0.05体積のガス〜0.12体積のガスである入口での通気速度;および
e)約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積。
【0025】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、酸素飽和度は、前記容器に含有される液体において単位体積あたり少なくとも15%の体積である。
【0026】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、該組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約1バール〜5バールの入口ガス圧力との組合せである。
【0027】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、該組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度との組合せである。
【0028】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、該組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、単位体積の培地あたり1分につき約0.05体積のガス〜0.12体積のガスである入口での通気速度との組合せである。
【0029】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、該組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積との組合せである。
【0030】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、該組合せはさらに、約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積のパラメーターを含む。
【0031】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、該組合せはさらに、約1バール〜5バールの入口ガス圧力のパラメーターを含む。
【0032】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、該組合せはさらに、約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度のパラメーターを含む。
【0033】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、該組合せはさらに、単位体積の培地あたり1分につき約0.05体積のガス〜0.12体積のガスである入口での通気速度のパラメーターを含む。
【0034】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、該組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約1バール〜5バールの入口ガス圧力と、約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度と、約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積とを含む。
【0035】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、該組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約1バール〜5バールの入口ガス圧力と、約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度と、単位体積の培地あたり1分につき約0.05体積のガス〜0.12体積のガスである入口での通気速度と、約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積との組合せである。
【0036】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、高さ対体積比は、約0.1cm/リットル〜約0.5cm/リットルである。
【0037】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、高さ対体積比は、約0.44cm/リットルである。
【0038】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、入口ガス圧力は、約1.5バール〜約4バールである。
【0039】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、入口ガス圧力は、約1.5バール〜約2.5バールである。
【0040】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、断面積あたりのガス入口の密度は、約40個/1平方メートル〜約60個/1平方メートルである。
【0041】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、断面積あたりのガス入口の密度は、55個/1平方メートルである。
【0042】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、ガス気泡形成速度は、約20リットル/分〜約50リットル/分であり、より好ましくは30リットル/分である。
【0043】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、入口でのガス気泡体積は、約300立方ミリメートルである。
【0044】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、使い捨て型容器は、透明および/または半透明である。
【0045】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、容器は、ポリエチレン、ポリカーボナート、ポリエチレンとナイロンとのコポリマー、PVC、ならびにEVAからなる群から選択される材料から作製される。
【0046】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、容器は、前記材料の2層以上の積層物から作製される。
【0047】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、デバイスはさらに、本デバイスを支持するための支持体構造物を含む。
【0048】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、支持体構造物は、円錐状の基部を有する剛直な円筒状フレームを含む。
【0049】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、採取用ポートは、前記容器の底端部の底部に位置する。
【0050】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記採取用ポートは、前記容器の底端部の底部の近くに位置し、その結果、それぞれの採取サイクルが終了したとき、細胞および/または組織を含有する前記培地の残り部分が、ハーベスターのレベルよりも下側のレベルに至るまで前記容器の前記底端部において自動的に残留する。
【0051】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、前記底端部は、実質的に円錐状である。
【0052】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、前記底端部は、実質的に円錐台状である。
【0053】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記容器は約400リットル〜約30000リットル、好ましくは約500リットル〜8000リットル、より好ましくは約1000リットルの内部充満可能体積を含む。
【0054】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、本発明の方法はさらに、混入物について、および/または前記容器において産生される細胞/組織の品質について調べること(ただし、混入物が見出されるか、または産生される細胞/組織が不良な品質であるならば、デバイスおよびその内容物が処分される);混入物が見出されないならば、細胞および/または組織を含有する前記培地の一部を採取することを含む。
【0055】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、本発明の方法はさらに、前記一部を採取する一方で、細胞および/または組織を含有する培地の残り部分を前記容器に残すことを含み、この場合、培地の前記残り部分は、次回の培養/採取サイクルのための接種物として役立つ。
【0056】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、本発明の方法はさらに、無菌の培養培地および/または無菌の添加物を次回の培養/採取サイクルのために提供すること;および成長サイクルを、前記混入物が見出されるまで、または、産生される細胞/組織が不良な品質となるまで繰り返すことを含み、ただし、前記混入物が見出されるとき、または産生される細胞/組織が不良な品質であるとき、デバイスおよびその内容物が処分される。
【0057】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおもさらなる特徴によれば、無菌の空気が、少なくとも1回の培養/採取サイクルの間中、連続して前記ガス交換ポートを介して供給される。
【0058】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、無菌の空気が、少なくとも1回の培養/採取サイクルの期間中、パルス的に前記複数のガス入口を介して供給される。
【0059】
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、デバイスは、培養培地を混合および通気するための機械的手段を何ら有しない。
【0060】
本発明は、組換えタンパク質を製造するための様々な細胞/細胞培養を伴う使用のために効果的である、大きい体積の、使い捨て可能な、しかし再使用可能なバイオリアクター、並びにその使用のための方法およびシステムを提供することによって、現在知られている構成の欠点に対処することに成功している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図1】図1は、本発明のデバイスの1つの例示的な実施形態の主要構成要素を断面側面図において例示する。
【図2】図2は、本発明のデバイスの1つの例示的な実施形態の主要構成要素と、例示的な支持体構造物とを正面図において例示する。
【図3】図3は、大規模使い捨て型バイオリアクターを使用する植物細胞培養において達成される優れた酸素飽和度を示すヒストグラムである。ニンジン細胞を異なる体積のバイオリアクター(三角フラスコ(青色の柱);10リットルのリアクター(PX−10、赤色の柱);100リットルのリアクター(PX−100、白色の柱)および400リットルのリアクター(PX−400、オレンジ色の柱))において培養培地に接種し、それぞれのシステムの最適な条件のもとで3日間〜4日間培養した(本明細書中下記の材料および方法を参照のこと)。それぞれのリアクターは、O飽和度を示された日に求めるための無菌のシリコンチップ[(カタログ番号SFPST3YOPSUP(Presens Presision Sensing GmbH))]を備える[Oは、Fibox3(Presens Presision Sensing GmbH)を使用して測定される]。大規模な(PX−100型およびPX−400型の)バイオリアクターにおけるO飽和度の優れたレベルに留意すること。
【図4】図4は、大規模使い捨て型バイオリアクターを使用したときの組換えGCDの優れた産生を示すウエスタンブロットの写真である。異なる体積のバイオリアクターから得られる4日目または7日目の細胞培養抽出物の粗抽出物の5μlサンプル(これは、本明細書中以下(材料および方法を参照のこと)に記載されるように調製された)をPAGEで分離し、ニトロセルロース転写メンブランにブロットし、特異的なウサギ抗GCDポリクローナル抗体と反応させた。バンドを、SuperSignal West Pico化学発光基質により可視化した。レーン1−空気吹き込みを伴う10リットルのリアクター;レーン2−8mmの内径開口部を有する10リットルのリアクター;レーン3−100%の酸素が4日目から加えられる10リットルのリアクター;レーン4およびレーン5−400リットルのリアクター、4日目;レーン6−400リットルのリアクター、7日目;レーン7およびレーン8−100リットルのリアクター、7日目;レーン9およびレーン10−prGCD標準物(25ng)。10リットルおよび100リットルのリアクターと比較して、著しく優れた大規模使い捨て型バイオリアクターにおけるGCDの収量に留意すること。
【図5】図5a〜5bは、イオン交換クロマトグラフィーを使用したAntifoam−Cの除去を示すRP−HPLC分析である。0.075%のAntifoam−Cエマルション(Dow Corning(登録商標)、Corning、NY)を15mlのカチオン交換カラム(Bio Rad USA)に負荷し、素通り、洗浄および塩グラジエント(0.2MのNaCl;1.2MのNaCl;および1.2MのNaClにおける12%EtOH)溶出物のサンプルをAntifoam−Cの検出のために262nmでモニターした。図5aは、カラムに負荷された溶液におけるAntifoam−Cの検出を示す。図5bは、カラム素通りにおけるAntifoam−Cの検出を示す。Antifoam−Cのカラムでの保持がないことに留意すること。
【図6】図6は、大規模使い捨て型バイオリアクターで産生されたGCDの同一性を示すSDS−PAGE分析である。400リットルのリアクターから得られるGCDのサンプル(レーン1、10μg)、80リットルのリアクターから得られるGCDのサンプル(レーン2およびレーン3、それぞれ10μgおよび20μg)、および商業的に調製されるグルコセレブロシダーゼのCerezyme(10ngおよび20ng)(レーン4およびレーン5、それぞれ10μgおよび20μg)をSDS−PAGEで分離した。バンドをクーマシーブルーによる染色によって可視化した。レーン6は分子量マーカーである。大規模バイオリアクター、小規模バイオリアクターおよび市販のグルコセレブロシダーゼ調製物に由来するGCDが、電気泳動的に同一であることに留意すること。
【図7】図7は、大規模使い捨て型バイオリアクターで産生されたGCDの同一性を示すウエスタンブロットである。400リットルのリアクターから得られるGCDのサンプル(レーン1およびレーン2、それぞれ50ngおよび100ng)、80リットルのリアクターから得られるGCDのサンプル(レーン3およびレーン4、それぞれ50ngおよび100ng)、および商業的に調製されるグルコセレブロシダーゼのCerezyme(登録商標)(レーン5およびレーン6、それぞれ50ngおよび100ng)をSDS−PAGEで分離し、ニトロセルロース転写メンブランにブロットし、特異的なウサギ抗GCDポリクローナル抗体と反応させた。バンドを、SuperSignal West Pico化学発光基質によって可視化した。大規模バイオリアクター、小規模バイオリアクターおよび市販のグルコセレブロシダーゼ(Cerezyme(登録商標))調製物に由来するGCDが、電気泳動的および免疫学的に同一であることに留意すること。
【図8a】図8aは、大規模使い捨て型バイオリアクターで産生されたグルコセレブロシダーゼのペプチドマッピング(トリプシン消化)を示すグラフである。小規模使い捨て型バイオリアクター(80リットル)および大規模使い捨て型バイオリアクター(400リットル)から採取されたグルコセレブロシダーゼのサンプルをプロテアーゼにより消化し、アミノ酸「フィンガープリント」を得るために、RP−HPLC Jupiter 4u Proteo 90Aカラム(Phenomenex、00G−4396−E0)で分離し、フラグメントを214nmおよび280nmでモニターした。図8aは、10リットルのバイオリアクターで産生されたグルコセレブロシダーゼのプロフィルである(214nmでの検出)。大規模使い捨て型バイオリアクターおよび小規模使い捨て型バイオリアクターについて、製造物が同一であることに留意すること。
【図8b】図8bは、大規模使い捨て型バイオリアクターで産生されたグルコセレブロシダーゼのペプチドマッピング(トリプシン消化)を示すグラフである。小規模使い捨て型バイオリアクター(80リットル)および大規模使い捨て型バイオリアクター(400リットル)から採取されたグルコセレブロシダーゼのサンプルをプロテアーゼにより消化し、アミノ酸「フィンガープリント」を得るために、RP−HPLC Jupiter 4u Proteo 90Aカラム(Phenomenex、00G−4396−E0)で分離し、フラグメントを214nmおよび280nmでモニターした。図8bは、10リットルのバイオリアクターで産生されたグルコセレブロシダーゼのプロフィルである(280nmでの検出)。大規模使い捨て型バイオリアクターおよび小規模使い捨て型バイオリアクターについて、製造物が同一であることに留意すること。
【図8c】図8cは、大規模使い捨て型バイオリアクターで産生されたグルコセレブロシダーゼのペプチドマッピング(トリプシン消化)を示すグラフである。小規模使い捨て型バイオリアクター(80リットル)および大規模使い捨て型バイオリアクター(400リットル)から採取されたグルコセレブロシダーゼのサンプルをプロテアーゼにより消化し、アミノ酸「フィンガープリント」を得るために、RP−HPLC Jupiter 4u Proteo 90Aカラム(Phenomenex、00G−4396−E0)で分離し、フラグメントを214nmおよび280nmでモニターした。図8cは、400リットルのバイオリアクターで産生されたグルコセレブロシダーゼのプロフィルである(214nmでの検出)。大規模使い捨て型バイオリアクターおよび小規模使い捨て型バイオリアクターについて、製造物が同一であることに留意すること。
【図8d】図8dは、大規模使い捨て型バイオリアクターで産生されたグルコセレブロシダーゼのペプチドマッピング(トリプシン消化)を示すグラフである。小規模使い捨て型バイオリアクター(80リットル)および大規模使い捨て型バイオリアクター(400リットル)から採取されたグルコセレブロシダーゼのサンプルをプロテアーゼにより消化し、アミノ酸「フィンガープリント」を得るために、RP−HPLC Jupiter 4u Proteo 90Aカラム(Phenomenex、00G−4396−E0)で分離し、フラグメントを214nmおよび280nmでモニターした。図8dは、400リットルのバイオリアクターで産生されたグルコセレブロシダーゼのプロフィルである(280nmでの検出)。大規模使い捨て型バイオリアクターおよび小規模使い捨て型バイオリアクターについて、製造物が同一であることに留意すること。
【図9】図9a〜9bは、大規模使い捨て型バイオリアクターで産生されたグルコセレブロシダーゼのRP−HPLC分析を示すグラフである。大規模使い捨て型バイオリアクター(400リットル)から採取されたグルコセレブロシダーゼを本明細書中以下に記載されるように精製し、C−4 RP−HPLCカラムで分析し、214nm(図9a)および280nm(図9b)でモニターした。prGCDが、prGCD標準物の保持時間(64.70分)と類似する64.12分の保持時間を有する単一ピークとして現れることに留意すること。
【図10】図10は、大規模使い捨て型バイオリアクターを使用して産生されたprGCDの優れた純度を示すIEFゲルの写真である。大規模使い捨て型バイオリアクター(400リットル)で産生され、本明細書中以下に記載される5つのカラム精製プロセスで精製されたprGCDのサンプルを、小規模使い捨て型バイオリアクター(10リットル)から精製されたprGCDと一緒に等電点フォーカシングゲルで分離した。レーン2−大規模、第3の精製段階;レーン3−大規模、第4の精製段階;レーン4−大規模、第5の精製段階;レーン5−小規模;レーン1およびレーン6、IEF PI標準物。精製のすべての段階における、大規模使い捨て型バイオリアクターから得られるprGCDの同一性および高レベルの純度に留意すること。
【図11】図11は、大規模使い捨て型バイオリアクターを使用して産生されたprGCDの純度を示すウエスタンブロットである。400リットルのリアクターから得られるGCDのサンプル(レーン1およびレーン2、それぞれ50ngおよび100ng)、80リットルのリアクターから得られるGCDのサンプル(レーン3およびレーン4、それぞれ50ngおよび100ng)、商業的に調製されるグルコセレブロシダーゼのCerezyme(レーン5およびレーン6、それぞれ50ngおよび100ng)、およびニンジン宿主タンパク質(CHP)(レーン7およびレーン8、それぞれ50ngおよび100ng)をSDS−PAGEで分離し、ブロットし、特異的な抗CHPポリクローナル抗体と反応させた。バンドを、SuperSignal West Pico化学発光基質によって可視化した。大規模使い捨て型バイオリアクターでは、それ以外のすべてのprGCD調製物の場合のように、不純物が存在しないことに留意すること。
【図12】図12は、培養培地の通気および混合を提供するための多数のガス入口と、例示的な円錐状の剛直な支持体構造体とを示す、本発明の例示的な使い捨て型バイオリアクターの底端部の写真である。
【図13】図13は、一連の、本発明の例示的な大規模使い捨て型バイオリアクターを示す写真である。
【図14】図14は、再使用可能な採取用ポートを示す、本発明の例示的なバイオリアクターの写真である。
【図15】図15は、植物発現によるヒト組換えAChEの免疫検出を示すウエスタンブロットの写真である。本発明の1つの実施形態による大規模使い捨て型バイオリアクターで産生された組換えヒトAChE−R(レーン1〜レーン3)、および市販されている組換えヒトAChE−S(レーン4〜レーン6)の50ng(レーン3およびレーン7)、100ng(レーン2およびレーン6)および200ng(レーン1およびレーン5)を、ヒト起源のAChEのN末端部のペプチドに対して惹起されたアフィニティー精製によるヤギポリクローナル抗体(Santa−Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)(AChE−RおよびAChE−Sにおいて同一)を使用して検出した。レーン4は分子量標準物である。強い抗体結合が、すべてのサンプルにおいて明白である。
【図16】図16は、市販されているAChE−Sのプロフィルと比較したときの、本発明の1つの実施形態による大規模使い捨て型バイオリアクターで産生された植物発現によるヒト組換えAChE−RのSDS−PAGEゲルのFlamingo(商標)非特異的タンパク質染色の写真である。植物発現によるAChE−R(レーン1〜レーン3)および哺乳動物細胞により産生されたAChE−S(レーン5〜レーン7)を図13の場合のように分離し、ゲルを本明細書中に記載されるようにFlamingo(商標)試薬により染色した。AChE−Rの移動プロフィルが、抗AChE抗体を使用する免疫アッセイによって検出されるAChE−Rの移動プロフィル(図13、上記)に対応することに留意すること。さらに、図13に示されるようにゲルで観測される単一のバンドは、精製が効率的であることを示している。
【図17】図17は、大規模使い捨て型バイオリアクターで培養された植物細胞におけるアセチルコリンエステラーゼ触媒活性を検出するために染色されたKarnovskyアッセイゲルである。触媒活性なアセチルコリンエステラーゼ−Rを、本発明の1つの実施形態による400Lの大規模使い捨て型バイオリアクターで培養された細胞のプールされたバッチから採取されたBY−2細胞から精製した。細胞から精製されたタンパク質の減少する量(レーン1およびレーン4=200ng;レーン2およびレーン5=100ng;レーン3およびレーン6=50ng)を非変性条件下での10%ネイティブポリアクリルアミドゲルで分離し、洗浄し、アセチルコリンエステラーゼ触媒活性を明らかにするために処理した(Karnovsky染色)。対応する量のアセチルコリン−S(レーン4〜レーン6)がコントロールとして含まれた。AChE−RおよびAChE−Sの電気泳動を非変性条件下での10%ネイティブポリアクリルアミドゲルにおいて行った。ゲルを4℃で処理し、H2Oにより3回洗浄し、アセチルチオコリン(0.5mg/mL;Sigma)、酢酸ナトリウム(65mM、pH6.0;Sigma)、クエン酸ナトリウム(5mM;Sigma)、硫酸第二銅(3mM;Sigma)およびフェリシアン化カリウム(0.5mM;Riedel De Haen)を含有する緩衝液において撹拌しながら1時間インキュベートした。触媒活性を目視により検出した。上側の矢印は、AChE−Sの四量体の移動を示す。下側の矢印は、単量体AChEの移動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、植物組織または植物細胞を培養するための、再使用可能な使い捨て型デバイスの発明である。具体的には、本発明のデバイスは、400リットル以上の培養培地において植物組織または植物細胞を培養するために好適な溶存酸素濃度および剪断力を維持するために設計される大きさおよびガス交換ポートを有する非剛直性の容器を含む。このようなデバイスは、細胞および/または培養培地から、組換えられた、植物に由来する生物学的に活性な物質(例えば、医薬品)の産生のために形質転換された植物細胞を培養するために使用されることができる。また、本発明のデバイスを使用する植物細胞培養システムも提供される。
【0063】
本発明の原理および作用が、図面および付随する説明を参照してより十分に理解されることができる。
【0064】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであって、限定であると見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0065】
本明細書中上記に記載されるように、使い捨て型バイオリアクターの大きい体積へのスケールアップでは、通気および混合の問題に対する独特の解決策が要求される。いくつかの先行技術バイオリアクターでは、この目的のためにガスが用いられている。米国特許出願第2005/0282269号(Proulx他)は、通気および混合を提供するために、容器の底端部に設置された入口ポートにおける組み込まれたガスデフューザーおよびガスフィルターを持つ多数のガス入口を有する使い捨て型バイオリアクターを開示する。そのような形態は、フィルターが液体培地と接触していることにより、閉塞しやすく、また、十分なガス供給を妨げやすい傾向があるという点で制限される。体積容量または大きさは、何ら開示されていない。
【0066】
ガスを通気および撹拌のために使用する別のタイプの使い捨て型バイオリアクターが、Cellexus Biosystems,PCC(Cambridge、英国)によって提供される。このバイオリアクターは、空気またはガスを通気および混合のために導入するために、デバイスの内側底端部に沿って取り付けられるか、または設置される一体化したスパージャーチューブを有する柔軟なバッグである。Cellexusのバイオリアクターバッグは、バッグの流体体積の大部分をバイオリアクターの上半分に集中させる独特の非対称的な幾何形状に従って設計される。この設計では、特別に設計された支持体筺体(Cellmaker Lite(商標))が運転のために要求される。
【0067】
米国特許第6432698号(Gaugler他)は、線虫の培養のための柔軟な使い捨て可能な培養バッグを開示する。この培養バッグには、ガス入口およびガスデフューザーが、培養培地の通気および混合のためにチューブの形態で取り付けられる。200リットルまでの体積が想定されているが、実施化は何ら提供されていない。具体的な大きさは、何ら開示されていない。
【0068】
米国特許出願第2005/0272146号(Hodge他)は、混合のための一体化されたインペラーブレードを有する150リットルの使い捨て型バイオリアクターを開示する。インペラーによるバイオリアクター内の培養培地の混合は、植物細胞を培養するためには適さない剪断力を生じさせることが知られている。
【0069】
米国特許第6391683号(Shaaltiel他)(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参照によって本明細書に組み込まれる)は、単回使用のために、または培養および採取の多数回のサイクルのために設計され、ガス入口ポートおよびガス出口ポートを有する非剛直性のバッグを含む使い捨て可能な培養デバイスを開示する。このデバイスでは、注意深く調節された気泡体積および気泡数による空気圧が、培養物を混合および通気するために用いられる。様々な異種(哺乳動物および非哺乳動物)の組換えタンパク質を正確に発現する形質転換された植物細胞の効率的な培養が、Shaaltielによって記載されるように、このようなバイオリアクターを使用して報告されている(米国特許第6391683号、米国特許出願第10/784295号;国際特許出願公開PCT番号WO2004/091475、同WO2005/080544および同WO2006/040761を参照のこと。これらのすべてが、全体が本明細書中に示されるかのように参照によって本明細書に組み込まれる)。しかしながら、Shaaltiel他は、米国特許第6691683号において、より小さいサイズおよび中程度のサイズの体積について好適な設計を開示しており、そのため、それらにおいて合成される組換えタンパク質の収量が制限される。
【0070】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、透明または半透明な非剛直性の材料から構成される大規模な再使用可能な使い捨て型バイオリアクターを設計している。このバイオリアクターは、少なくとも2回の連続する培養サイクルのための使用を可能にするサンプル抜取りポート、特定の大きさ、そして、400リットルを超える体積における植物細胞の効率的な成長のために、好適な溶存酸素濃度および剪断力を伴ってバイオリアクターにおいて細胞培養物を混合および通気するために十分な様式でガスを提供するガス交換ポートを有する。
【0071】
従って、本発明の1つの局面によれば、植物組織および/または植物細胞を培養および採取するための使い捨て可能なデバイスが提供される。
【0072】
本発明のデバイスは、少なくとも400リットルの体積を有し、かつデバイスが少なくとも2回の連続する培養/採取サイクルのために連続して使用されることを可能にするガス交換ポートおよび採取用ポートを伴って構成される非剛直性の容器を含む。
【0073】
本発明のデバイスは、任意のタイプの細胞または組織を培養するために使用することができるが、植物細胞および植物組織の効率的な大規模培養を可能にするように設計される。
【0074】
培地の酸素飽和度は、細胞の効率的な成長および組換えタンパク質の発現のために非常に重要であり、従って、バイオリアクターの適正な運転、および組換え細胞産物の産生におけるその使用に非常に重要である。植物細胞は、細菌細胞または哺乳動物細胞よりも酸素飽和度における変動の影響を受けやすいので、植物細胞の培養による成長のためのバイオリアクターの酸素飽和度は、一層より重要である(Schlatmann他、Biotech.Bioeng.、1995、45:435〜39を参照のこと)。さらに、植物細胞は、おそらくはより大きい植物細胞サイズ、夥しい液胞形成および凝集パターンを最大の原因として、従来型バイオリアクターにおける流体力学的環境に対して敏感である。従って、ガス気泡を容器に導入することによる培養培地の通気によって混合がもたらされるが、脆い植物細胞には有害な剪断力は避けなければならない。近年、培養されている植物細胞が、致死的でない剪断力に対して感受性であり、これにより、植物細胞バイオリアクターの効率を結果として著しく制限する特徴的な「亜溶解的」応答を伴って応答することが示されている(NamdevおよびDulop、App.Biochem and Biotech,Part A、Frontiers in Bioprocessing、1995)。
【0075】
従って、本発明のデバイスは、植物組織および/または植物細胞を400リットル以上の体積で培養するために好適な酸素飽和度および剪断力を、培養における酸素飽和度および剪断力を決定するために非常に重要であるパラメーター、またはそのようなパラメーターの組合せを用いることによって維持する。
【0076】
植物組織および/または植物細胞を本発明のデバイスで培養するために好適な酸素飽和度および剪断力が、a)高さ対体積比、b)入口ガス圧力、c)断面積あたりのガス入口の密度、d)入口での通気速度、およびe)入口でのガス気泡体積の値または値範囲の組合せによって維持される。
【0077】
高さ対体積比:機械的混合方法は、大きい体積の培地が処理されている場合には特に、植物細胞バイオリアクターにおける使用には不適である。大規模バイオリアクターにおける培養培地の通気および混合を、ガス気泡を培地の中で移動させることによって達成することができる。培地とのガス気泡の接触が広範囲であればあるほど、ガス交換の可能性が大きくなり、また、培地におけるガスの混合作用が効率的になる。従って、体積の小さいバイオリアクターの高さ対体積比がより大きい柔軟性を可能にしてきたかもしれないが、大きい体積(例えば、400リットル以上)で使用されるためのバイオリアクターデバイスの高さ対体積比は、約0.06センチメートル/リットル〜1センチメートル/リットルの範囲内に維持されなければならない。高さ対体積比は、デバイスの容器の高さ(長さ)およびデバイスの平均断面積から計算することができる。本明細書中で使用される場合、デバイスの体積は、高さに断面積を掛けたものである。例えば、200センチメートルの高さ(長さ)および400Lの体積を有する(例えば、約25センチメートルの平均半径を有する)バイオリアクターについては、高さ対体積比は200/400であり、すなわち0.5である;300cmの高さおよび3000Lの体積を有するバイオリアクターについては、高さ対体積比は300/3000であり、すなわち0.1である。本発明のバイオリアクターでの使用のために好適である高さ対体積比の範囲の例は、約0.06センチメートル/リットルであり、好ましくは約0.1センチメートル/リットル〜約0.5センチメートル/リットルであり、最も好ましくは約0.44センチメートル/リットルである。
【0078】
さらに、高さ対体積比は、容器の潜在的な総充満可能内部体積を使用して、またはバイオリアクターにおいて流体レベルの上方に典型的に見出される「ヘッドスペース」を含まない、容器の運転のための機能的な充満可能内部体積である、総充満可能内部体積の示された一部を使用して、計算できることが理解される。
【0079】
入口ガス圧力:十分なガス(例えば、空気または酸素)を大規模バイオリアクターの培養培地の混合および通気のために提供するためには、入口でのガス圧力が、バイオリアクターにおける液体の柱の下向きの力に打ち勝つために、また、同時に、多すぎる気泡の生成、または植物細胞培養のためには適さないサイズの気泡の生成に伴う剪断力を回避するために十分である必要がある。本発明の大規模バイオリアクターは、植物細胞培養のために好適な高さ対体積比を有するので、より小さい体積のバイオリアクターの場合よりも大きい、ガス入口でのガス圧力を必要とする。ガス圧力はバール単位で表される(1バールは100000パスカル(Pa)または1000000ダイン/cmである)。ガス入口でのガス圧力をモニターするための様々な圧力計、およびガス入口でのガス圧力を制御するための様々な圧力調整器が、この技術分野では広く知られており、また、広範囲に市販されている。本発明のバイオリアクターのために好適である入口ガス圧力の範囲の例は、約1.5バール〜約4バールの範囲であり、より好ましくは約1.5バール〜約2.5バールの範囲である。
【0080】
断面積あたりのガス入口の密度:小さい体積のバイオリアクターは、典型的には、所望の体積の十分なガス気泡をバイオリアクター槽における培養培地の混合および通気のために提供するために、1個だけまたは非常に少ない数のガス入口に制限される。他方で、大きい体積のバイオリアクター(例えば、本発明のデバイスなど)は、デバイスにおける培養培地の柱の圧縮力に打ち勝つために、また、植物細胞培養での使用のために好適な様式で混合および通気を提供するために要求される入口ガス圧力の範囲を達成するために、ガス入口のより大きい密度を必要とする。ガス入口での圧力の制御、ならびに大きい体積のバイオリアクターにおける培養培地の混合および通気のために最適な気泡サイズの維持をもたらすために、複数のガス入口が提供され、これらは、デバイスの使い捨て可能な非剛直性の容器に所定の密度で配置される。ガス入口の密度は、デバイスの容器の1平方メートルの外側表面あたりの入口の数として表される。本発明のバイオリアクターにおける使用のために好適であるガス入口の密度の範囲の例は、容器の表面の約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの入口である。好ましくは、断面積あたりのガス入口の密度は、約40個〜60個/1平方メートルの入口であり、より好ましくは55個/1平方メートルの入口である。
【0081】
入口での通気速度:一般には増大した通気(すなわち、より迅速なガス交換の存在)、および具体的には増大した酸素はともに、培養における細胞の成長速度を増大させる。植物細胞培養のためのより小さい体積のバイオリアクターには、典型的には、空気が、ガス入口において、0.15vvm〜0.3vvm(単位体積の培地あたり1分につき0.15体積の空気〜0.3体積の空気)の通気速度で提供され、この場合、通気速度は、体積が増大するにつれ大きくなる。しかしながら、細胞の循環の促進における気泡の有効性は、1つの大きい同等な体積の場合よりも小さい複数の閉じた体積の方が異なっており、従って、比例的でない通気速度が、同じ培地の総合体積を有する多数の小さい体積における通気速度と比較して、大きい体積における空気循環および酸素分布を促進させるために要求される。
【0082】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、驚くべきことに、大規模なバイオリアクターでは、通気速度(vvm)を体積の増大とともに比例的に増大させるのではなく、vvmで測定される通気速度の範囲を低下させることによって、改善された結果が達成されたことを見出している。植物細胞を大きい体積のバイオリアクターで培養するために好適であるガス入口での通気速度の範囲の例は、約0.05vvm〜0.12vvmであり、好ましくは約0.07vvm〜約0.1vvmである。そのような低下した通気速度の利点には、大きい体積のバイオリアクターでのより大きい収量、および改善されたエネルギー効率が含まれ、これらは工業的規模の培養において非常に重要である。
【0083】
入口でのガス気泡体積:大規模なリアクターにおける好適な混合装置の重要性は、誇張しても誇張しすぎることはない。いくつかの場合において、特に植物細胞に関しては、ガス気泡サイズが、バイオリアクターにおける細胞の効率的な培養および成長のために非常に重要である。小さい気泡は、実際に植物細胞に損傷を与えることがあるが、20立方ミリメートル以上の平均気泡体積により、この潜在的な問題が実質的に克服される。従って、ガス圧力および入口の数とともに、入口でのガス気泡体積の制御は、植物細胞を成長させるために効果的な培養培地の混合および通気を達成するために重要である。ガス入口によって送達される気泡のサイズは、デバイスの使用法に従って変化するが、入口でのガス気泡体積の好適な範囲の例は、20立方ミリメートルの体積〜1800立方ミリメートルを超える体積までであり、好ましくは約40立方ミリメートル〜約1000立方ミリメートルであり、より好ましくは約100立方ミリメートル〜約500立方ミリメートルであり、最も好ましくは約300立方ミリメートルである。より小さい気泡が所望される場合、気泡のサイズを小さくしながらも、大規模な植物細胞バイオリアクターのための好適なサイズよりも小さくしないために、スパージャーをガス入口で使用することができる。
【0084】
従って、本発明の使い捨て型バイオリアクターは、本明細書中で述べられるこれらのパラメーターに従って、大きい体積の培養条件を提供する一方で、植物細胞培養物および培地の優れた通気および非機械的混合を維持すること(これらに限定されない)を含めて、現在知られているデバイスより優れた数多くの利点を有しており、従って、これらにより、培養細胞および細胞に由来する産物の優れた収量および純度を達成する。
【0085】
図1は、デバイス10として本明細書中に示される、本発明のデバイスの1つの実施形態を例示する。
【0086】
図1に示されるように、デバイス10は、植物組織および/または植物細胞を培養および採取するために役立つ容器12を含む。容器12は、図1では、液体により部分的に満たされて、従って、その膨張した(比較的剛直性の)状態で示される。しかしながら、容器12は、好ましくは非剛直性の容器として構築されること(例えば、柔軟な材料から構築されること)に留意しなければならない。従って、容器12の内容物が容器の壁に及ぼす圧力により、容器12の形状が維持される。空であるとき、または部分的に満たされたとき、容器12は、本来的にはその非剛直性の設計によって、部分的または完全に折り畳むことができる。容器12のこの特徴は、空であるとき、貯蔵および輸送を容易にする。容器12は、約400リットル〜約30000リットル(より好ましくは約500リットル〜8000リットル、最も好ましくは約600リットル〜3000リットル)を収容することができる内部体積を有する。容器12は、約0.06センチメートル対リットル〜1センチメートル対リットルの典型的な高さ対体積比を有することができる。
【0087】
容器12は、好ましくは、ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリカーボナート、ポリエチレンとナイロンとのコポリマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ならびにエチレンビニルアルコール(EVOH)など)から構築される。様々な規格、密度およびタイプのポリマーを使用することができる(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)および線状低密度ポリエチレン(LLDPE)など)。容器12は、ポリマーシートから溶接することによって、または溶融ポリマーからブロー成形することによって、またはこの技術分野において知られているいずれかの他の標準的なプラスチック−ポリマー製造方法によって構築することができる。
【0088】
1つの好ましい形態において、容器12は、1つまたは複数のタイプのポリマーの数層からなる積層体から構築される。積層体は、様々な厚さを有する、類似するか、または異なる柔軟な材料から製造することができる2層、3層、4層、および7層までの層、9層までの層、15層までの層、またはそれ以上に至るまでの層を含有することができ、材料および厚さを、例えば容器12の流体体積に従って選択することができる。これらの層は、共押し出しによって製造することができる。積層体は、容器の内側表面および外側表面に対して特定の滑らかさまたは粗い組織、程度の差はあるが、所定の引張り強さ、弾性、柔らかさ、柔軟性、靭性、耐久性、加工性などをもたらすように設計することができる。低いレベルの不活性化された動物由来加工剤を有するか、または好ましくは有しない材料を選択することができる。スリップ剤および/または粘着防止剤(例えば、シリカまたは珪藻土など)を、摩擦を低下させるために、および/または自己接着を防止するために、積層体の層に含ませることができる。
【0089】
本発明の容器12は、容器に透明性および/または半透明性を与えるように設計された材料から作製することができ、いくつかの実施形態において、光が細胞または産物に損傷を与え得る場合、材料はまた、不透明とすることができる。本明細書中で使用される場合、透明は、必ずしもすべての光ではないが、ほとんどの光を容易に透過させて、透き通っていると定義され、一方、半透明は、すべての光ではないが、一部の光を透過させると定義される。1つの実施形態において、デバイスは、光合成の能力を有しない、培養されている植物細胞のためのものである。別の実施形態において、他のタイプの細胞(例えば、コケ細胞、藻類細胞、光合成能を有する光合成細菌)をこのデバイスにおいて成長させることができる。好ましくは、容器の内部体積の中に通される光は、バイオリアクターで培養される植物細胞の光合成色素および他の集光色素による使用のために好適な波長の光である。光はまた、二次代謝産物(例えば、ワイン用ブドウ細胞によるアントシアニン)の産生のために必要とされる場合がある。より好ましくは、容器12は、培養の状態を示す可能性のある、培養および/または培養培地における変化(例えば、汚染から生じる色、細胞凝集、濁り)を検出するために、内部体積の目視または機器(例えば、分光光度法)による観察および/またはモニタリングを可能にする材料から設計される。
【0090】
容器12は、任意の望ましい形態で製造することができ、好ましくは、容器12が空であるときには、平坦であり、容器12が満たされているときには、実質的に円筒状の断面形状をもたらすことができる2つの側壁18を介してつながれる上部14および底部16(図1において円錐状)を有する先細りスリーブ様の形態である。他の断面形状(例えば、長方形または多面体)もまた好適である場合がある。
【0091】
円筒状の形状は、植物細胞培養物に対して有害である乱流を最小限にし、また、植物細胞培養物に対して有害である望まれない剪断力の生成を最小限にして混合するために、最も一様で、かつ邪魔されない流体の流れを初めから最後までもたらすので、細胞培養容器に最も適することが理解される。好ましくは、底部16は、好適には沈降を最小限に抑える形状に形成される。例えば、底部16は、上に向かって傾斜する(1つまたは複数の)壁を少なくとも有する(図1に示されるように)実質的には円錐台状とすることができる。本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、この形状が、崩壊および細胞死を促進し、従って培養物の全体的な生存性に影響を及ぼし得る細胞の沈降を避けるために、円錐状の形状よりも優れていることを見出している。代替として、底部16は実質的に円筒状とすることができ、または、代替的に凸型とすることができる。底部16の上記の形態は、底部16の近くで容器12に供給されるガスが、底部16での沈降を効果的に最小限に抑える容器内容物への混合運動を誘導することを可能にする。それにもかかわらず、底部16は、本発明の他の実施形態では実質的に平坦にすることができる。
【0092】
容器12は、好適な材料の(側壁18を形成する)2つのパネルを接合/溶接することによって製造することができる。例えば、ポリマー材料の2枚のシートをほぼ細長い長方形の形状に切断し、一方を他方の上にして置くことができる。その後、シートは、2つの長い方の辺の端に沿って、また、短い方の末端の一方の周りに沿って継ぎ目を形成するために、この技術分野において広く知られている様式で融着され、そして、継ぎ目を容器の上部14において形成するために、再び同方向に内側に向かって移される。
【0093】
容器の底部16を、シートの残る短い末端を2つの傾斜する継ぎ目ラインに沿って融着することによって形成することができ、これにより、底部16が長辺の継ぎ目から互いに一点に集まる。場合により、2つの傾斜する継ぎ目ラインを、長辺の継ぎ目に対してほぼ直交する別の融着された継ぎ目ラインによって、それらの先端の上につなぐことができる。2枚のシートを融着する前に、硬質プラスチックのボスを、(以下にさらに記載される)対応する入口ポートおよび出口ポートのための取り付け点に対応する場所に融着することができる。
【0094】
容器12はまた、柔軟なポリマー材料の連続したスリーブから製造することができ、これにより、継ぎ目を容器の長辺に沿って溶接する必要性がなくなり、また、連続する、切れ目のない円形の断面が容器の高さのほとんどにわたってもたらされる。溶接継ぎ目がないことにより、培養培地の通気および混合の期間中の乱流および剪断力が最小限に抑えられるので、製造用材料のスリーブを使用することが望ましい。
【0095】
図1に示されるように、容器12は、細胞および/または組織を含有する培地の少なくとも一部を採取し、それにより、デバイス10が、清浄化、殺菌および/または試験をサイクル間において必要とすることなく、少なくとも2回の連続する培養サイクルまたは採取サイクルのために連続して使用されることを可能にするための採取用ポート19Iをさらに含む。代替的には、採取を、バイオリアクターの内容物のすべてを排出するためにバイオリアクターの底部に位置し、従って、バイオリアクター内の全培養物の採取を可能にするさらなる採取用ポート(19II)を介して行うことができる。細胞および/または組織を含有する培地の残留する第2の部分は、次回の培養・採取サイクルのための接種物として役立ち、ここで、以下に記載されるように、培養培地および/または要求される添加物を与えることができる。採取ポート(1つまたは複数)19はまた、接種物の最初の体積を容器に導入するとともに、採取物がポートを通って容器から外に流れ出ることを可能にするために使用することができる。
【0096】
採取ポート(1つまたは複数)19は、容器12の内部体積と流体連絡している採取入口22を有する採取パイプ20と、容器12の外側に配置される採取出口24とを含む。代替的には、採取ポート(1つまたは複数)19を、内側から内部体積と接触し、容器の外側への出口を有する、容器12の中に溶接された単一のオリフィスから作製することができる。採取パイプ20を、この技術分野では広く知られているようなポリマー材料または合金から作製することができる。
【0097】
採取が細胞凝集塊の存在によってしばしば妨げられるので、好ましくは、大きい内径(例えば、1cm〜10cmの範囲における大きい内径)を有し、かつ/または障害物の排出を可能にする程度の弾性を有する採取パイプ20が製造される。
【0098】
採取ポート(1つまたは複数)19の位置は、培地ならびに細胞および/または組織の残留する一部が、容器12の体積の所定の割合(例えば、5%〜35%)であるように、容器12の体積に従って選択される。
【0099】
採取ポート19を、容器12の内容物の大部分を採取する一方で、細胞および/または組織を含有する培地の一部を接種物としての使用のために保持することを可能にする、容器12の底部に近い位置に設置することができる。
【0100】
代替的に、または加えて、採取ポート19IIを容器12の底部16のさらに下方に設置することができ、従って、操作者は、細胞および/または組織を含有する培地の好適な一部が、培地ならびに細胞および/または組織の所望される一部を採取した後で容器12に残留することを、必要な場合には手作業により確保することができる。ポート19IIを底部16のさらに下方の位置に有することにより、培地のすべてまたはほとんどを取り出すことができる。
【0101】
採取用ポート19および採取用ポート19IIの前記位置は、上記では選択すべきものとして示されるが、両方が1つのデバイス10に組み込まれ得、これにより、操作者に選択的な採取用ポートが提供されることが理解される。
【0102】
採取ポート(1つまたは複数)19は、流量調節器26をさらに含む。流量調節器26は、例えば、容器12の中への、または容器12から外への、採取ポート(1つまたは複数)19を介する物の流れを調節するためのバルブであることが可能である。流れはまた、耐久性の殺菌可能な材料(例えば、ガラス、ステンレス鋼および硬質プラスチックなど)から作製される無菌コネクターを介して調節することができる。採取ポート(1つまたは複数)19はまた、採取後における容器12内への意図されない物の導入を防止するために、汚染防止器(図示せず)(例えば、流体トラップなど)を含むことができる。
【0103】
容器12は、さらなるサンプル抜取りポートを含むことができ、このサンプル抜取りポートは、構造において採取ポート(1つまたは複数)19に類似しており、採取ポート19の近くに配置することができる。容器12は、培地または他の添加物を導入するために、必要に応じてさらなる添加物入口51をさらに含む。いくつかの実施形態において、添加物入口51は、培養培地の上方の「ヘッドスペース」と連絡して容器12の上端部に設置される。他の実施形態において、添加物入口51は、容器12の中央部分または底端部の近くに設置される。他の実施形態において、添加物入口51は、培地添加期間中または培地添加後などにおける容器12内への物の意図されない導入を防止するために、汚染防止器(図示せず)(例えば、流体トラップなど)をも含むことができる。
【0104】
デバイス10はさらに、ガスを容器12の中に、またガスを容器12から外に連絡するための複数のガス交換ポートを含む。ガス交換ポートは、少なくとも1つのガス入口ポート28を、ガス(例えば、空気、酸素または他のガスなど)を培地に浸透させるために、また、植物細胞培養物の通気および混合のために含み、かつ少なくとも1つのガス排出ポート30を、容器12の内容物(例えば、培養培地および細胞)に浸透するガスを放出するために含む。ガス入口ポートおよびガス排出ポートは、本明細書中に詳しく記載されるフィルター49を備えることができる。1つの実施形態において、空気圧をより良く分布させる一方で、気泡の所望される流れのために必要な流入を提供するために、複数のガス入口が提供される。
【0105】
ガス入口ポート(1つまたは複数)28を、1つまたは複数のガス供給チューブを介してガス供給源(例えば、ポンプ)に接続することができる。
【0106】
ガス入口ポート28を柔軟な材料(例えば、シリコーン)または剛直性の材料(例えば、ステンレス鋼)から作製することができる。ガス入口ポート(1つまたは複数)28のガス入口34(ガス入口34(I)は位置Iにおいてガス入口ポート28(I)に対応し、ガス入口34(II)は位置IIにおいてガス入口ポート28(II)に対応する)が、本明細書中上記に記載されるように、望ましくない剪断力を生じさせることなく、植物培養培地を通気および混合し、かつ沈降を防止するために好適な体積のガス気泡を提供するように設計される。ガス入口34は、所望される気泡形状および気泡サイズを提供するために、形状を変化させることができる(狭い、広い、先細り、円錐状、丸形など)。代替的に、ポートを、採取用ポート19について記載されるように、直径が内側開口部および外側開口部において異なる一体品に作製することができる。
【0107】
ガス交換ポート28およびガス交換ポート30、採取ポート(1つまたは複数)19、ならびに必要に応じて使用されるサンプル抜取りポートは、この技術分野では広く知られているように、その開口部を容器12の表面に作り、開口部をさらなる剛直性の材料または非剛直性の材料によりポートの周りで補強することによって形成される。
【0108】
好適な混合および通気を提供するために、複数のガス入口ポート28を20個〜70個/1平方メートルの入口の密度で提供することができる。ガス入口ポート28を、容器12の周囲に沿って、その底端部16から所定の距離で配置することができる。ガス入口ポート28の存在位置は、容器の体積および高さによって、また、具体的な植物培養使用のために所望される通気のタイプによって決定される。ガス入口ポート28を容器の底部16から15センチメートル〜65センチメートに設置することができる。本発明の1つの実施形態において、ガス入口ポートの少なくとも1つは、採取用ポート18のレベルよりも低い位置に存在する。
【0109】
さらなるガス入口ポート28を、例えば、非常に大きい長さ寸法を有する容器については、または、より大きい体積の容器については、ガス入口圧力またはガス気泡体積を増大させることなくより大きい体積のガスを提供するために、必要に応じて提供することができる。さらなるガス入口ポート28を容器12の表面において任意の場所に設置することができ、好ましくは、培地の実質的な混合および通気を提供するために、容器12の高さの底部側半分の部分に配置することができる。複数のガス入口ポートを有するそのような形態は、植物細胞培養物の効率的な混合および通気を提供するために、ガス入口34(I)およびガス入口34(II)をそれぞれ有し、互いに所定の距離で配置される、位置Iにおけるガス入口ポート[28(I)]および位置IIにおけるガス入口ポート[28(II)]によって、本明細書において示される。ガス入口ポートは、混入するガス、流体または固体(例えば、浮遊する微生物)が容器12の内部体積および培養培地の中に入ることを防止することができる汚染防止機構(例えば、フィルター49またはトラップ(図示せず)など)をさらに含むことができる。
【0110】
容器12は、ガス排出ポート30を、培養培地の上方に蓄積するガスの放出および除去のために含む。ガス排出ポート30は、容器12の上側半分(好ましくは上側1/3)の部分において、流体(例えば、培養培地)のレベルを実質的に超え、その結果、培養培地の上方の「ヘッドスペース」と流体連絡しているような場所に設置される。ガス排出ポート30の外側のガス排出開口部46は、環境に通じることができ、排出ガスの流れは、ガス排出ポート30において調節されない。場合により、また、代替として、ガス排出ポート30は、容器12からのガスの流れを調節し、従って、陽圧のガス圧力を容器12の内部に生じさせ、従って、容器12を十分に膨張させて、所望の円筒形状に維持することができるガス排出調節器48(例えば、圧力バルブまたは圧力クランプ)をさらに含むことができる。ガス排出ポート30は、混入するガス、流体または固体(例えば、浮遊する微生物)が容器12の内部体積および培養培地の中に入ることを防止することができる汚染防止機構(例えば、フィルター49またはトラップなど)をさらに含むことができる。
【0111】
本発明の容器12は、少なくとも400リットルで、数千リットルに至るまでの培養培地の体積を伴う使用のために設計されるので、また、本発明の容器12は、本質的には柔軟であるので、デバイス10はさらに、容器12を所定の位置で支えるための支持体構造物を含む。
【0112】
図2に示されるように、支持体50は、力を容器12およびその中の内容物に及ぼすことなく、支えを容器12に提供するように設計される円錐状の構造物を含むことができる。
【0113】
支持体50を、スチール、木材、プラスチックまたはセラミックから製造することができる。支持体を、リング状の支持体部材52および棒状の支持体部材54からなる格子様構造物を形成する軽量の円筒形または楕円形の管材料から作製することができる。代替として、支持体部材は、垂直な棒様部材につながれ、かつ水平のリング状部材にさらにつながれるプレートであることが可能である。プレートは連続していることが可能であり、これにより、容器のための外殻様支持体を本質的にもたらすことができ、または、たる板様であることが可能であり、これにより、すき間が間に存在する幅広い支持体要素のリングを提供することができる。支持体構造物50は、支えなしで立っていることができ、または移動用のキャスター(図示せず)に取り付けることができ、あるいは、支持体構造物50は、剛直な構造物(例えば、壁、床、柱など)に取り付けることによってさらに支えることができる。
【0114】
容器12は使い捨て可能であり、従って、最小限の損失および環境への影響を伴って使用(1回または複数回の培養サイクル)の後で廃棄されるように設計される。例えば、本発明のデバイスにおいて使用されるプラスチック(例えば、柔軟なプラスチックなど)から作製されるデバイスは、比較的安価であり、従って、処分することが所望されるならば、無視できるほどの経済的損失を伴って使用後に処分することができる。これらの物品の低い資本費用までもが、使用の容易さ、貯蔵、および他の実用的な検討事項を背景にして相殺されるので、これらのバイオリアクターデバイスの処分は、一般に、使用者に経済的不利益を与えない。処分は、環境を汚染し得る消毒剤および他のきつい化学物質による徹底した洗浄の必要性がなくなるという点で好都合である。従って、ポリマーの使い捨て型バイオリアクターデバイス(例えば、容器12など)は容易に再生利用することができ、従って、その使用による汚染および環境への影響を減らすことができる。
【0115】
容器12は殺菌し、再使用することができるが、容器12は、好ましくは事前に殺菌された形態で提供され、それにより、費用および時間がかかる殺菌手順の必要性が除かれる。非剛直性容器の殺菌を、湿式殺菌プロセスおよび/または乾式殺菌プロセスを使用して行うことができる。好ましくは、殺菌は、本明細書中で述べられる柔軟な非硬質プラスチック材料を伴う使用のために適する乾式殺菌プロセスであり、例えば、この技術分野では広く知られているガンマ線照射または電子ビーム照射、およびガス(例えば、エチレンオキシド)殺菌などである。
【0116】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記に記載された個々のデバイスおよび/または一組のデバイスの操作は、コンピュータ(図示せず)によって制御される。コンピュータは、場合により、また、好ましくは、温度、容器に入るガスまたはガス組合せの量および時期、容器から出ることが許されるガスの量および時期、少なくとも1つの物(例えば、栄養分および培養培地など)を加える量および時期、ならびに/あるいは光の量のうちの1つまたは複数のような、本発明による一組のデバイスおよび/または1つのデバイスを操作するパラメーターを制御することができる。コンピュータは必要な場合にはまた、産生されている廃棄物の量を検出することができる。
【0117】
コンピュータは、好ましくは、本発明の操作を自動化または半自動化するためのシステムの一例として、本発明の操作に関して存在する様々な測定装置につながれる。例えば、コンピュータは、好ましくは、ガスまたはガス組合せの流れを制御するための1つまたは複数の計器(図示せず)につながれる。計器は、好ましくは、好適な空気供給源に接続可能なパイプにつながれ、パイプへの空気または他のガスの流れを制御する。
【0118】
コンピュータはまた、好ましくは温度計につながれるが、この場合、温度計は、より好ましくは容器12の環境に存在し、しかし、より好ましくは容器12の内部に存在しない。コンピュータはまた、場合により、また、好ましくは、温度を制御するための機構(例えば、加熱装置および/または冷却装置など)を制御することができる。
【0119】
コンピュータは、場合により、また、好ましくは、栄養物/培地容器から容器12への培地および/または他の栄養分の流れを制御するための計器につながれる。
【0120】
コンピュータは、好ましくは、容器の少なくとも1つのポートにつながれ、より好ましくは、少なくとも採取ポート19につながれる。コンピュータは、必要な場合には、試験および/または採取を行うために、必要に応じて使用されるサンプル抜取りポートから容器の内容物の一部を取り出すための自動化されたサンプラーおよび/またはハーベスターを制御することができる(図示せず)。コンピュータはまた、場合により、例えば、コンピュータを操作するためのフィードバックを提供するために、内容物のこれらの一部を分析するための分析計につなぐことができる。
【0121】
本明細書中上記で述べられるように、デバイス10は、植物細胞培養物を培養するために設計される。本発明のデバイスにおいて大きい体積の植物細胞を培養するために好適である培養培地は、この技術分野において知られている植物細胞培養培地のどれでもよい。好適な培養培地の具体的な、しかし限定されない例として、Murashige−Skoog培地(Sigma Ltd、St.Louis、MO)、Anderson培地およびSchenk−Hildebrandt培地などが挙げられる。多くの植物組織培養培地が市販されている(例えば、Phytotechnology Laboratories(Shawnee Mission、KY)を参照のこと)。
【0122】
表現「植物細胞培養(培養物)」は、任意のタイプの野生型(天然に存在する)植物細胞、または遺伝子改変された植物細胞(例えば、外因性遺伝子の安定的発現または一過性発現を行うことができる遺伝子改変された植物細胞)を示す。好ましくは、植物細胞培養(物)は、医薬品産業(薬物または薬物API)、食品産業(例えば、調味料、芳香)、農業(例えば、殺虫剤)および化粧品などにおける使用のために商業的に所望される有効成分を産生する細胞の培養(培養物)を示す。
【0123】
好ましくは、植物細胞培養(物)は、植物組織(例えば、根または葉の分裂組織など)から得られる植物細胞を含む。より好ましくは、植物細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスにより形質転換された根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、タバコ細胞、アルファルファ細胞、トマト細胞、レタス細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される。
【0124】
本発明において成長させることができるさらなる細胞培養物には、酵母、コケ、藻類、光合成細菌が含まれる。
【0125】
本発明のデバイスおよび方法による使用のために好適な植物細胞培養物には、樹立細胞株および植物の根、葉、茎および花などから作製される細胞株が含まれるが、これらに限定されない。樹立細胞株の限定されない例には、Nicotiana tabacum L.cv Bright Yellow−2(BY−2)細胞株およびNicotiana tabacum L.cv Petit Havana細胞株がある。
【0126】
本発明の大規模バイオリアクターに好適である混合および通気を提供するために要求される増大したガス入口圧力、増大したガス入口密度、増大したガス通気速度およびガス容積は、細胞に対して、また培地の内容物に対して有害であり得る、植物細胞培養の泡立ちという起こり得る問題を提起し得ることが理解される。泡立ちを抑制するためにこの技術分野において知られている方法には、小さい気泡を、より大きい、それほど有害でない気泡に合体させるように作用する消泡剤(例えば、シリコーン、有機ホスファートおよびアルコールなど)を使用することが含まれるが、これに限定されない。工業および食品加工において一般に使用される食品規格の消泡剤には、例えば、ポリジメチルシロキサンおよびシメチコンが含まれる。本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターにおける消泡剤の使用は、本明細書中下記の実施例の節において詳しく記載される。
【0127】
本発明はまた、植物細胞を大規模使い捨て型バイオリアクターにおいて培養および採取するための方法に関する。このデバイスは、場合により、また好ましくは、本明細書中上記に記載されるデバイスに従って構成され、最も好ましくは、下記の実施例1に記載されるデバイスに従って構成される。この方法において、植物細胞は、好ましくは本発明によるデバイスの容器に入れられる。場合により、またより好ましくは、植物細胞は懸濁状態で培養される。
【0128】
本発明の好ましい実施形態によれば、植物細胞は液体培地での懸濁状態で培養され、この場合、少なくとも1つの無菌のガスまたはガス組合せ(複数のガス)が必要に応じて加えられる。場合により、また好ましくは、無菌のガスは、より好ましくは無菌の空気を含む無菌のガス組合せを含む。無菌のガスおよび/またはガス組合せは、好ましくは、前記に記載されるように、それぞれのサイクルの期間中に、連続的またはパルス的のどちらかで、好ましくは滅菌用フィルター(好ましくは、0.2ミクロンのフィルター)につながれる空気入口を介して容器に加えられる。
【0129】
無菌の培養培地および/または無菌の添加物が、好ましくは容器に入れられ、そして、好ましくは、前記に記載されるような1つまたは複数の滅菌用フィルターを通って添加物入口51を介してバイオリアクターの中に移される。
【0130】
植物細胞(無菌接種物の一例として)は、場合により、また好ましくは、ハーベスターを介して加えられる。場合により、また好ましくは、容器(12)における植物細胞は、特に容器が透明および/または半透明であるならば、例えば、外部の光(容器の外部にある照明源)により光にさらすことができる。場合により、光源が全く使用されず、場合により、容器は暗条件で維持される。
【0131】
細胞は、細胞および/または細胞によって産生される物質(例えば、タンパク質または二次代謝産物など)の所望される収量にまで成長させることができる。
【0132】
好ましい実施形態によれば、過剰な空気および/または廃棄ガスは、好ましくは、場合により、またより好ましくは連続的および/または断続的ではあるが、必要な場合にはフィルターを介して、ガス出口を経由して容器から出て行くことができる。
【0133】
同様に、場合により、また好ましくは、容器内の物(例えば、細胞培養培地など)は、1つまたは複数の混入物について、ならびに/あるいはこの容器で産生される細胞および/または細胞産物の品質について調べられる。より好ましくは、1つまたは複数の混入物が培養物に存在することが見出された場合、あるいは産生される細胞および/または細胞産物が不良な品質である場合、デバイスおよびその内容物が処分される。
【0134】
適切な時点において、特に、混入物、ならびに/あるいは不良な品質の細胞および/または細胞産物が見出されない場合、容器における物の少なくとも第1の部分が好ましくは採取される(例えば、細胞および/または細胞産物を含有する培地など)。より好ましくは、物の残留する第2の部分(例えば、細胞および/または細胞産物を含有する培地など)を容器に残留させることができ、この場合、この第2の部分が、場合により、次回の培養/採取サイクルのための接種物として役立ち得る。次いで、無菌の培養培地および/または無菌の添加物を、汚染の防止のためにフィルター49に必要に応じてつながれる添加物入口51を介して、次回の培養/採取サイクルのために提供することができる。
【0135】
前記に記載されたサイクルは、必要な場合には2回以上行われる。場合により、および好ましくは、この方法は、細胞が嫌気的に培養および/または採取されることを可能にする。
【0136】
そのような嫌気的な実施形態のために、酸素または空気の代わりに、不活性ガスがデバイスのガス入口を介して提供される。その少なくとも1つのデバイスのために、下記のプロセスが行われる。無菌接種物が、採取用ポートを介してデバイスに導入される。次に、無菌の培養培地および/または無菌の添加物が、共通する添加物入口配管を介してデバイスに加えられる。場合により、デバイスは、前記に記載されるように照らされる。
【0137】
デバイスにおける細胞は、細胞および/または細胞の産物の所望される収量にまで培地において成長させることができる。場合により、および好ましくは、過剰な空気および/または廃棄ガスは、ガス排出ポートを介して、より好ましくは連続的に、必要な場合にはフィルターを通ってデバイスから出て行くことができる。
【0138】
前記方法について、容器内の物は、1つまたは複数の混入物の存在、ならびに/あるいは不良な品質の細胞および/または不良な品質の細胞産物についてモニターされ、そのような場合には、容器およびその内容物は、好ましくは処分される。同様に、前記方法について、細胞および/または細胞産物は、好ましくは好適な時点で採取され、例えば、細胞産物の所望される量が産生されたときに採取される。
【0139】
典型的には、水精製システムにより、脱イオン化され、かつ実質的にエンドトキシンを含まない水が、高濃度培地を含むタンクに供給され、その後、希釈された培地が添加物入口を介してデバイス10にポンプにより送られる。フィルター(典型的には0.2マイクロメートル)が、それぞれのデバイス10における容器内容物の汚染の危険性を最小限にするために、供給パイプに取り付けられ、入口のすぐ上流側にもまた取り付けられる。代替的に、または加えて、バルブもまた、この危険性を最小限にするために使用することができる。
【0140】
それぞれのデバイス10の最初の培養サイクルのために、接種物、典型的には、デバイス10において採取することが要求されるタイプの細胞の十分なサンプルが、事前に殺菌された容器において培地または水と事前に混合され、典型的にはハーベスターポートを介してデバイス10に導入されるが、代替的に、または場合により、別個の添加物入口ポートを介してデバイス10に導入される。培地が、その後、ハーベスターポートを介して、または場合により使用される添加物入口ポートを介してデバイス10に導入される。続くサイクルについては、本明細書中前記に記載されたように、培地および/または添加物のみが導入される。
【0141】
典型的には、空気コンプレッサーにより、実質的に殺菌された空気またはガスが、いくつかの装置を介して、例えば、粒子を除くための粗い目のフィルター、湿度を除くための乾燥機および湿度装置、ならびに混入物を除くための細かい目のフィルター(典型的には0.2マイクロメートル)を介して、それぞれのデバイス10に提供される。好ましくは、ガス入口のすぐ上流側の別のフィルターにより、容器内容物の汚染の危険性がさらに最小限に抑えられる。
【0142】
それぞれのデバイス10について、容器12へのすべての接続、すなわち、ガス入口ポート、添加物入口ポート、および好ましくは、同様にガス排気ポート、ならびにハーベスターへの接続のすべてが、使用前に殺菌され、無菌性が、接続を層状の気流フードにおいて行うことによって、例えば、空気の供給および排気を含めて、周辺設備への接続の期間中において維持される。
【0143】
それぞれのデバイス10のための温度制御が、好ましくは、好適な空気取り扱い装置によって提供される。場合により行われるデバイスの照明を、細胞成長または化合物産生のために要求されるときには、デバイス10の周りに好適に配置される好適な蛍光灯によって提供することができる。
【0144】
それぞれのデバイス10のそれぞれの培養サイクルの期間中、それぞれの対応する容器12の内容物は、典型的には、制御された温度条件および照明条件のもとで約3日間〜約14日間またはそれ以上にわたって通気および混合される。培養条件および培養の継続期間は、それぞれの培養サイクルの個々の要件に従って、例えば、培養されている細胞のタイプ、採取される組換え産物、および接種物の濃度などに従って決定される。
【0145】
それぞれのデバイス10についての培養サイクルが終了したとき、対応するハーベスターポートは、典型的には、本明細書中前記に記載されたように、接続前および接続期間中に殺菌される好適なコネクターにより、事前に殺菌された環境につながれる。その後、採取が行われ、これにより、典型的には約10%〜約35%ではあるが、約2.5%〜約45%の細胞および/または組織が、次のサイクルのための接種物として役立たせるために残される。
【0146】
採取された細胞/組織および/または細胞産物は、その後、必要な場合には、必要に応じて乾燥または抽出することができる。
【0147】
場合により行われる別の調節は、純酸素を細胞培養プロセスの期間中に加えることであり、より好ましくは、純酸素を、培養プロセスを開始した後の3日目または4日目に加えることである。
【0148】
本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターにおいて培養するために好適である好ましい細胞タイプの一例は、下記の実施例の節において記載される形質転換されたニンジン細胞である。実施例の節において記載されるように、この細胞は、ヒトグルコセレブロシダーゼ(hGCD)をコードする外因性遺伝子を発現する、アグロバクテリウム・ツメファシエンスにより形質転換されたニンジン細胞である。本発明の1つの局面の別の実施形態において、細胞タイプはタバコ(Nicotiana tabacum)である。本発明のさらに別の実施形態において、タバコ細胞はBY−2細胞である。本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターでの使用のために好適であるニンジンおよび他の細胞タイプにおける外因性遺伝子の形質転換および発現のための様々な方法が、この技術分野では広く知られている。使い捨て型バイオリアクターを使用するニンジン細胞培養および他の細胞培養における生物学的に活性な外因性タンパク質の形質転換および発現が、米国特許出願第10/784295号およびPCT公開公報WO2004/096978に詳しく開示される(これらは全体が本明細書中に組み込まれる)。
【0149】
下記の実施例の節では、上記に記載されたニンジン細胞を培養することにおける本発明のデバイスの使用、およびタバコ(Nicotiana tabacum)細胞での本発明のデバイスの使用が明らかにされる。下記の実施例において示されるように、400リットルを超える体積を有する大規模バイオリアクターデバイス10におけるトランスジェニックニンジン細胞およびトランスジェニックタバコ細胞の培養では、組換えタンパク質の優れた収量および純度がもたらされた。ヒトグルコセレブロシダーゼを発現するニンジン細胞、およびアセチルコリンエステラーゼ−Rを発現するタバコ細胞を大規模使い捨て型バイオリアクターおよびより小規模の使い捨て型バイオリアクターで培養し、培養条件、収量および生成物を分析および比較した(実施例2および実施例3を参照のこと)。結果は、本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターでは、培養培地の増大したO飽和度が著しくより低い入口通気速度でもたらされ、O飽和度が培養の少なくとも7日間にわたって30%にまで至り、また、より大きい培養効率がもたらされ、その結果、組換えタンパク質産物のより大きい収量が得られることを示す。ペプチドマッピング(図8)、IEF(図10)、SDS−PAGEおよび免疫学的分析(図7、図15〜図17)、ならびにクロマトグラフィー(図6および図9)による組換えタンパク質の分析では、大規模使い捨て型バイオリアクターから採取された細胞から得られるグルコセレブロシダーゼ酵素調製物およびアセチルコリンエステラーゼ酵素調製物が、標準的規模の技術によって得られる標準的調製物のそれと同一であることが示された。このことは、80L、400Lおよび800Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素調製物の一貫性および同一性を強く示している。大規模使い捨て型バイオリアクターに由来する酵素調製物はまた、優れていないとしても、同等な触媒活性および比活性を示した(表5および図17を参照のこと)。さらに、本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターで産生された組換えβ−グルコセレブロシダーゼは、検出できないレベルのニンジン宿主細胞タンパク質を含有し、標準的体積の製造方法によって製造されたβ−グルコセレブロシダーゼの純度を最低でも有することが示された(図11)。従って、本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターは、より小さい体積で、それどころか、はるかにより小さい体積で開発された、組換えタンパク質を発現する植物細胞培養物のスケールアップのための正確で、効率的で、かつ優れてさえいる条件を提供することができる。
【実施例】
【0150】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0151】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験手順には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻(1994)Ausubel,R.M.編;Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、米国ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク(1998);米国特許の第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク(1994);MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク(1980);利用可能な免疫アッセイ法は、特許と科学文献に広範囲にわたって記載されており、例えば:米国特許の第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらの文献の全ては、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0152】
(実施例1)
大規模使い捨て型バイオリアクターにおける植物細胞の効率的な培養
大規模使い捨て型バイオリアクターを使用して産生された培養物および細胞産物の成長パラメーター、収量および特徴を調べるために、ヒトグルコセレブロシダーゼを発現するニンジン細胞を大規模使い捨て型バイオリアクターおよびより小規模の使い捨て型バイオリアクターで培養し、培養条件、収量および産物を分析および比較した。
【0153】
材料および実験方法:
GCDを発現するニンジン細胞の形質転換および培養:細胞の形質転換および培養を実施例2に記載されるように行った。
【0154】
バイオリアクターにおけるアップスケール培養での成長。rh−GCD遺伝子を含有する遺伝子改変されたニンジン細胞カルスの約1cm(直径)を、4.4gr/lのMSD培地(Duchefa、Haarlem、オランダ)、9.9mg/lのチアミンHCl(Duchefa)、0.5mgの葉酸(Sigma Ltd、St Louis、MO)、0.5mg/lのビオチン(Duchefa)、0.8g/lのカゼイン加水分解物(Duchefa)、30g/lの糖およびホルモンの2,4−D(Sigma)を含有する、9cmのプレートにおける寒天培地に置床した。カルスを25℃で14日間成長させた。
【0155】
細胞懸濁培養物を、この技術分野では広く知られているように、形質転換されたカルスを、0.2mg/lの2,4−ジクロロ酢酸を含有するMSD液体培地で継代培養することによって調製した。その後、細胞懸濁培養物を、25℃で、60rpmの振とう速度により、250ml三角フラスコにおいて培養した(25mlの作業体積で開始し、体積を7日間の培養の後で50mlに増大させた)。続いて、細胞培養体積を同じ条件のもとで1Lの三角フラスコにおいて300mlにまで増大させた。
【0156】
4LのMSD培地を含有する小型のバイオリアクター(10L)[国際特許出願公開WO98/13469を参照のこと]の接種物を、7日間培養された2つの1L三角フラスコに由来する400mlの細胞懸濁物を加えることによって得た。1Lpmの空気流での25℃での1週間の培養の後、MDS培地を10Lにまで加え、培養を同じ条件のもとで続けた。さらなる培養(5日)の後、細胞のほとんどを、細胞培地を80ミクロンの網に通すことによって採取し、集めた。余分な培地を絞り出し、押し固めた細胞ケークを−70℃で保存した。
【0157】
消泡剤:泡立ちを避けるために、Medicinal Antifoam C Emulsion(ポリジメチルシロキサン−PDMS、Dow Corning、Midland、MI)を使用した(これは、30%のシメチコンUSP、メチルセルロース、ソルビン酸および水を含有する)。消泡剤を10ppmの濃度で400Lバイオリアクターの培地に加えた。
【0158】
消泡剤の分析:Antifoam C Emulsion(PDMS)は、抗膨満剤として、また、非規格化食品における成分として使用される。PDMSの存在を、シメチコンエマルションについてのすべてのUSP要求事項に準じて、また、そのようなUSP要求事項に従って評価した。0.075%PDMSの450mlの溶液を15mlのカチオン交換クロマトグラフィーカラム(Macro−Prep(登録商標)High S担体、BioRad、Hercules、CA)に負荷した。PDMS分析用のアリコートを、負荷物から、素通り(非結合物)から、ならびに0.2MのNaCl、1.2MのNaCl、および1.2MのNaClにおける12%エタノールの3つの溶出工程から取った。
【0159】
異なるクロマトグラフィー工程(負荷、素通り、洗浄および溶出の工程)の期間中における採取培養物のアリコートサンプルを集め、262nm(Antifoam C Emulsionのピーク吸光度)においてモニターされるC4カラムを用いてRP−HPLC法を使用してPDMSの存在について分析した。
【0160】
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)では、タンパク質が主にその分子量によって分離される。加えて、この技術は、タンパク質の純度および組成に関する多くの情報をもたらす。大規模使い捨て型バイオリアクターから採取された細胞から製造されるprGCDの分子量同一性およびタンパク質不純物パターンを、標準的なゲル分離プロトコルに従って、クーマシーブリリアントブルー染色を使用するSDS−PAGE分析によって調べた。簡単に記載すると、SDSゲルは濃縮ゲル(3%)および分離ゲル(12%)からなる。泳動緩衝液はTris/SDS(pH8.3)であり、負荷緩衝液はグリセロール−Tris−メルカプトエタノール(pH6.8)であった。
【0161】
逆相高速(高圧)液体クロマトグラフィー(RP−HPLC):RP−HPLCでは、無傷なタンパク質および他の成分をタンパク質溶液から分離することが含まれる。それぞれの化合物のまさにその保持時間が特徴的であり、この保持時間により、目的とするタンパク質の同一性および純度を決定することができる。植物組換えGCD(prGCD)の特徴的なピークおよび保持時間を、定常相C−4(Phenomenex Jupiter 5u C4 proteo 300A、4.6x250mm、Phenomenex、Torance、CA)カラムを、A:0.1%TFA/HO、およびB:0.1%TFA/アセトニトリルの移動相グラジエントとともに使用して求めた。タンパク質の検出を、2つの波長(214nmおよび280nm)で検出するダイオードアレイ分光光度計により行った。
【0162】
ポリクローナル抗体の調製:組換えGCD(75マイクログラム、Cerezyme(商標)、Genzyme、Cambridge、MA)を3mlの完全フロイントアジュバント(Difco、Voigt、Lawrence、Kansas)に懸濁し、2羽のウサギのそれぞれに注射し、その後、追加免疫注射を2週間後に与えた。ウサギは追加免疫注射の約10日後に採血され、抗体力価が低下し始めるまで1週間の間隔で再び採血された。凝血塊を除いた後、血清を小分けし、−20℃で保存した。
【0163】
ウエスタンブロッティング:ウエスタンブロットを、特異的なアフィニティー精製された抗GCD抗体を使用することによって、大規模使い捨て型バイオリアクターから採取された細胞から精製される植物組換えGCD(prGCD)分子を、以前の製造バッチおよび市販のヒトβ−グルコセレブロシダーゼ(Cerezyme(登録商標)、Genzyme、Cambridge、MA)との比較において特定するために行った。タンパク質の転写を、実質的には本明細書中に記載されるように行った。簡単に記載すると、ゲルからニトロセルロースへの転写を100ボルトにおいて4℃で90分間行った。転写後、メンブランをブロッキング緩衝液[1%ドライミルク、0.1%Tween20(カタログ番号:P1379;Sigma Ltd、St Louis、MO)、リン酸緩衝液において]においてインキュベートした。その後、タンパク質を抗GCD抗体とのインキュベーションによって免疫検出し、洗浄し、好適な二次抗体(例えば、ヤギ抗ウサギ(完全分子)HRP(カタログ番号A−4914)など)と反応させた。その後、ブロットをECL発色剤試薬(RPN2209、Amersham、Pharmacia Biotech UK LTD)により発色させ、オートラジオグラフィーを可視化のために使用した。
【0164】
異なるバイオリアクターおよび異なる通気法におけるprGCD産生の比較:prGCDを発現する組換え細胞を、4日間〜7日間、異なる体積のバイオリアクター(10L、100L、400L)で成長させた。細胞を、異なる通気法(スパージャーによる通気法;8mmの内腔開口部による通気法;100%の酸素が4日目から加えられる通気法)に供される3つの異なる10Lバイオリアクターで成長させた。粗抽出物のサンプル(5μl)を4日目または7日目に取り、25ngのprGCD標準物と一緒にPAGEで分離し、ニトロセルロース転写メンブランにブロットし、特異的なウサギ抗GCDポリクローナル抗体と反応させた。バンドを、SuperSignal West Pico化学発光基質(Pierce Biotechnology、Rockford、IL)によって可視化した。
【0165】
溶存酸素:溶存酸素速度がKlaの単位で示される:dC/dT=Kla,(Cs−C)、式中、Csは酸素の飽和レベル(mg/l)であり、Cは実際の酸素濃度(mg/l)である。
【0166】
通気速度:通気速度は、入口での空気流量をバイオリアクターの作業体積により除することによって計算されるように、ガス入口における、単位体積の液体体積あたり1分につき1気圧の圧力での空気の体積(体積/体積/分)と定義される。
【0167】
最適な通気速度の決定:最適な通気速度を決定するために、最適化を、より少ない体積のバイオリアクターの通気速度を達成するために空気流量をアップスケールし、通気速度を、最適な所定のパラメーターを達成するまで変えることによって、(100Lから、400Lおよび800Lの大規模バイオリアクターへの)体積におけるすべての増大について行った。異なる通気速度の影響を、泡立ちレベル、液体の乱流レベル、空気の流出に対するフィルター抵抗、およびバイオリアクターの膨張を含む様々な物理的パラメーターに関して調べた。生物学的パラメーターには、1回の成長サイクル(7日)についての細胞新鮮重量(gr/L)の毎日の記録によって示されるような培養細胞の成長曲線、および7日間でのタンパク質産物収量が含まれた。10回〜15回の成長サイクルを、最適化された通気速度を達成するために比較した。
【0168】
結果
大規模使い捨て型バイオリアクターでの培養は、より低い通気速度を要求する:
増大した通気は培養における細胞の成長速度を増大させるということは、細胞培養の公理である。植物細胞培養のためのより小さい体積のバイオリアクターでは、典型的には、空気が0.15vvm〜0.3vvmの通気速度で提供される。驚くべきことに、様々な体積のバイオリアクターの培養効率を、最小限の剪断力を維持しながら、空気循環および酸素分布を促進させるために好適な通気速度の範囲について評価したとき、大規模バイオリアクターのための最適な通気速度が、より小さい体積のリアクターのための通気速度よりも比例的に小さかったことが見出された。下記の表1は、より小さい体積のバイオリアクター(100Lまで)では、体積における増大が、効率を維持するために、通気速度における増大を要求する一方で、大規模バイオリアクター(400L以上)では、最適な通気速度が、バイオリアクターの体積が増大するに伴って実際には低下することを示す。そのような低下は、剪断力を低下させる能力、およびエネルギー効率がより大きいことの両方のために、工業的規模の培養において好都合である。
【0169】
【表1】

【0170】
大規模使い捨て型バイオリアクターは優れた酸素飽和度レベルをもたらす:バイオリアクターにおけるガスの導入、混合および放出に影響を及ぼす各種パラメーターの適正な組合せは、本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターの効率的な運転にとって非常に重要である。気泡体積、通気速度、入口でのガス圧力、気泡におけるガス圧力、および培養培地の中を通り抜ける気泡の進路を、通気および混合を最適化するためにバランスさせなければならず、また、その一方で懸濁物の内部における破壊的な剪断力および乱流を最小限に抑えなければならない。これらのパラメーターを評価するために、酸素飽和度レベルを求めた。
【0171】
図3は、400リットルの大規模使い捨て型バイオリアクターにおける培地のパーセントO飽和度を、接種時(0日目)、ならびに培養の3日目、4日目および7日目にサンプルとして抜き取られたアリコートで測定したときの、より小型のリアクター槽(三角フラスコ、10リットルのバイオリアクターおよび100リットルのバイオリアクター)を使用する培地におけるO飽和度と比較して示す。空気の圧力および流量は、大規模バイオリアクターでは35L/分であり、より小型の10リットルおよび100リットルのリアクターでは10L/分であった。接種後の飽和度における減少は、懸濁物における細胞含有量が比例的に増大するので、広く知られている現象である。だが、7日間にわたる緩やかな減少にもかかわらず、大規模使い捨て型バイオリアクターは、明らかに、接種後7日までのどの示された時点でも30%を超える、培地の優れたO飽和度のための条件をもたらす。
【0172】
下記の表2は、800リットルのバイオリアクターが、より小さい体積のバイオリアクターと比較されたとき、Kla(mg/L)として表される、一層より大きいO飽和度レベルを達成することを示す。この優位性は、通気速度の範囲にわたって維持される。
【0173】
【表2】

【0174】
大規模使い捨て型バイオリアクターは優れた組換えタンパク質収量をもたらす:培養での組換えタンパク質の産生効率に対する大規模使い捨て型バイオリアクターにおける培養の影響を明らかにするために、リアクターのそれぞれから得られる懸濁物の抽出物をSDS−PAGEによって分離し、ブロットし、抗ヒトグルコセレブロシダーゼ(GCD)抗体による免疫検出によって分析した。400Lの大規模使い捨て型バイオリアクターでの組換え産物の収量(図4、レーン4〜レーン6)、ならびに10Lのリアクターでの組換え産物の収量(図4、レーン1〜レーン3)、および100Lのリアクターでの組換え産物の収量(図4、レーン7および8)における比較では、明らかに、大規模バイオリアクターにおける増大したタンパク質レベルおよび培地のより効率的な使用が示される。実際、4日および7日の培養での大規模バイオリアクターにおけるGCDの収量(それぞれ、レーン4、レーン5およびレーン6)は、増大したガス入口内腔(図4、レーン2)および4日目からのOの添加(図4、レーン3)を伴う10LのリアクターにおけるGCDの収量よりも優れていた。
【0175】
これらの結果は、本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターでは、培養培地の増大したO飽和度および培養のより高い効率がもたらされ、その結果、組換えタンパク質産物のより大きい収量およびより高いエネルギー効率が得られることを示している。
【0176】
大規模使い捨て型バイオリアクターにおける培養培地からの消泡剤の効率的かつ簡便な除去:より高い空気圧を大規模使い捨て型バイオリアクターの通気のために使用することにおいて、培地の泡立ちという問題は、多くの理由から避けなければならない問題であり、注意を必要とする。400Lのバイオリアクターに移されるとき、消泡剤(10ppm)を細胞成長培地に加えた。
【0177】
標準化された実験室技術(例えば、HPLCおよび原子吸光など)を使用する検出下限レベルは、およそ7ppmである。
【0178】
大規模使い捨て型バイオリアクターからの組換え産物の採取および精製が消泡剤残渣を除くことができることを確認するために、大過剰のPDMS消泡剤を精製プロセスの初期段階に供し、消泡剤の存在を初めから終わりまでモニターした。
【0179】
図5aは、カチオン交換カラムの負荷溶液のアリコートにおけるPDMS消泡剤(0.075%)のRP−HPLC分析を示す。保持時間(ピーク)は、22.531分であった。図5bは、カラムの素通りにおける消泡剤を示し(保持時間22.554分)、ピークのサイズおよび262nmでの吸光度は、負荷物と類似している。PDMSは、3つのその後の溶出工程(0.2MのNaCl、1.2MのNaCl、および1.2MのNaClにおける12%エタノール)のいずれに由来するサンプルにおいても全く検出されなかった。下記の表3は、PDMSがカラムに保持されなかったことを明瞭に示している:
【0180】
【表3】

【0181】
これらの結果は、消泡剤残渣が培地から容易に除去され、単離・精製プロセスの最初の段階から検出可能なレベルよりも低いままであることを明瞭に示している。
【0182】
(実施例2)
大規模使い捨て型バイオリアクターを使用するニンジン細胞懸濁物でのヒトグルコセレブロシダーゼの効率的発現
本実施例は、本発明のいくつかの実施形態に従って本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターで培養される形質転換された植物細胞を用いて行われた実験の記載を提供する。
【0183】
材料および実験方法
プラスミドベクター:CE−T −これを、Galili教授から得られたプラスミドCEから構築した[米国特許第5367110号、1994年11月22日]。
プラスミドCEをSalIにより消化した。SalIの付着末端を、DNAポリメラーゼIのラージフラグメントを使用して平滑末端にした。その後、プラスミドをPstIにより消化し、SmaIおよびPstIにより消化された塩基性エンドキチナーゼ遺伝子[Arabidopsis thaliana]由来のER標的化シグナル(ATGAAGACTAATCTTTTTCTCTTTCTCATCTTTTCACTTCTCCTATCATTATCCTCGGCCGAATTC)(配列番号6)およびタバコキチナーゼA由来の液胞標的化シグナル(GATCTTTTAGTCGATACTATG)(配列番号5)をコードするDNAフラグメントに連結した。
【0184】
pGREENII −これをP.Mullineaux博士から得た[Roger P.Hellens他(2000)、Plant Mol.Bio. 42:819〜832]。pGREENIIベクターからの発現は、カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーター、TMV(タバコモザイクウイルス)のΩ翻訳エンハンサーエレメント、および、アグロバクテリウム・ツメファシエンス由来のオクトピンシンターゼターミネーター配列によって制御される。
【0185】
ヒトグルコセレブロシダーゼ(hGCD)cDNA:ヒトグルコセレブロシダーゼをATCC(アクセション番号65696)から得た。グルコシダーゼβ(酸性)[グルコセレブロシダーゼ]を含有するGC−2.2[GCS−2kb;λ−EZZ−γ3ホモサピエンス]。インサート長さ(kb):2.20;組織:繊維芽細胞WI−38細胞。
【0186】
hGCD発現プラスミドの構築:hGCDをコードするcDNA(ATTCクローン番号65696)を、フォワードプライマー(5’CAGAATTCGCCCGCCCCTGCA3’)(配列番号3)およびリバースプライマー(5’CTCAGATCTTGGCGATGCCACA3’)(配列番号4)を使用して増幅した。精製されたPCR DNA産物をEcoRIおよびBglIIのエンドヌクレアーゼにより消化し(プライマー内の下線部の認識配列を参照のこと)、同じ酵素により消化された、発現カセットCE−Tを有する中間ベクターに連結した。発現カセットを、SmaIおよびXbaIの制限酵素を使用して切断し、中間ベクターから取り出し、その後、バイナリーベクターpGREENIIに連結し、これにより、最終的な発現ベクターを形成した。発現カセットを提供するために、カナマイシン抵抗性が、pGREENIIベクターと一緒に得られるnosプロモーターにより駆動されるNPTII遺伝子によって付与される。
【0187】
得られたプラスミドを、下記の配列決定用プライマーを使用して、シグナルの正しいインフレーム融合を保証するために配列決定した:5’側35Sプロモーター:5’CTCAGAAGACCAGAGGGC3’(配列番号1)、および、3’側ターミネーター:5’CAAAGCGGCCATCGTGC3’(配列番号2)。
【0188】
ニンジンカルスの確立および細胞懸濁培養:本発明者らが行ったニンジンカルスの確立および細胞懸濁培養は、Torres K.C.によって以前に記載された通りであった(Tissue culture techniques for horticular crops、111頁、169)。
【0189】
ニンジン細胞の形質転換および形質転換細胞の単離:ニンジン細胞の形質転換は、以前に記載された方法[Wurtele,E.S.およびBulka,K.Plant Sci.、61:253〜262(1989)]の適合化を使用するアグロバクテリウム浸潤によって行われた。液体培地で成長する細胞を、カルスの代わりに、プロセスを通して使用した。インキュベーション時間および成長時間を、液体培養されている細胞の形質転換のために適合化した。簡単に記載すると、アグロバクテリウム細菌をエレクトロポレーションによってpGREENIIベクターにより形質転換し[den Dulk−Ra,A.およびHooykaas、P.J.Methods Mol.Biol.55:63〜72(1995)]、その後、カナマイシンを使用して選抜した。ニンジン細胞をアグロバクテリウム細菌により形質転換し、液体培地においてパロモマイシン抗生物質を使用して選抜した。
【0190】
高レベルのGCDを発現するカルスを単離するための形質転換されたニンジン細胞のスクリーニング:細胞をSDSサンプル緩衝液においてホモジネートし、得られたタンパク質抽出物をSDS−PAGE[Laemmli U.(1970)、Nature、227:680〜685]で分離し、ニトロセルロースメンブラン(hybondCニトロセルロース、0.45ミクロン、カタログ番号:RPN203C;Amersham、Pharmacia Biotech UK LTD)に転写した。GCDを検出するためのウエスタンブロットを、ポリクローナル抗hGCD抗体(本明細書中以下に記載される)を使用して行った。
【0191】
大規模バイオリアクターにおける細胞の培養およびスケールアップ:細胞の培養を、本明細書中上記の実施例1で詳しく記載されるように行った。
【0192】
タンパク質分析:タンパク質の同一性および純度の分析を、本明細書中上記の実施例1に記載されるように行った。
【0193】
質量分析:質量分析法(MS)による分析を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間/飛行時間(MALDI−TOF)質量分析計(4700、Applied Biosystems、Foster City、CA)およびイオントラップ質量分析計(LCQ classic、Finnigan、San Jose、CA)を使用して行った。
【0194】
RP−HPLCを使用するペプチドマッピングまたはタンパク質「フィンガープリンティング」:ペプチドマッピングは、「フィンガープリンティング」と呼ばれる明確なプロフィルとともに再現性のある高分解能の分離を提供するためのRP−HPLCがタンパク質のタンパク質分解消化の後で行われる、タンパク質のタンパク質分解消化から生じるペプチドを分析するための方法である。非常に特異的な同定方法として、この分析は、標準的な製造プロセスで製造される酵素調製物と、400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素調製物(PX−400−GC−2;技術の範囲内において)とが同一であることを確認するために役立つ。prGCDを、トリプシンと1:50(w/w)で50mMの(NHCO(pH8.0)において37℃で6時間インキュベートし、その後、室温で一晩インキュベートすることによってトリプシンにより消化した。
【0195】
RP−HPLC分析のために、50μgの消化ペプチドをC−18カラム(カラム:Phenomenex Jupiter 4u proteo 90A、4.6x250mm、Phenomenex、Torance、CA)に負荷し、ペプチドを分離し、本明細書中上記に記載されるように検出した。
【0196】
IEF:等電点フォーカシング(IEF)は、タンパク質を電場におけるその電荷に基づいて分離する技術である。IEFは、同定ツールとして用いられ、また、正しいpI範囲を伴うパターンによって明らかにされるようなタンパク質の均一性を保証するために用いられる。prGCDおよびCerezyme(登録商標)の等電点フォーカシングを標準的プロトコルに従って行った。簡単に記載すると、prGCDの等電点(pI)を特定するために、精製された酵素を、指定された陽極緩衝液および陰極緩衝液ならびにpI標準物(Amersham Pharmacia Biotech UK LTD)を使用して、pH範囲が3〜10であるプレキャストポリアクリルアミドIEFゲル(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)で泳動した。prGCDおよびCerezyme(登録商標)のそれぞれのサンプルに対して、0.05%のタウロコール酸(わずかなアニオン性界面活性剤)を、ゲルにおける移動度を改善するために加えた。
【0197】
prGCDタンパク質およびCerezyme(登録商標)タンパク質のバンド形成パターンを、製造者によって指示されるようにBio−Safe(商標)クーマシー染色(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)によって可視化した。それぞれのタンパク質バンドのpIを、IEF Calibration Kit High Rang pI5−10.5(Amersham Pharmacia Biotech UK LTD)のタンパク質標準物を使用することによって推定した。prGCDおよび商業的に製造されるCerezyme(登録商標)の類似するバンド形成プロフィルが明らかにされた。prGCDのバンド形成プロフィルはまた、バッチ間の一貫性について調べられた。
【0198】
酵素活性アッセイ:β−グルコセレブロシダーゼは、糖脂質グルコセレブロシドのグルコースおよびセラミドへの加水分解を触媒する。組換えグルコセレブロシダーゼの触媒活性を評価するために、合成基質を使用する酵素アッセイが、それぞれのバッチを評価するために用いられる。酵素ユニットが、37℃における1分あたり1マイクロモルの合成基質(パラ−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド(pNP−Glc))の加水分解を触媒する酵素の量として定義される。
【0199】
結果
大規模使い捨て型バイオリアクターから得られる組換えグルコセレブロシダーゼの特徴づけ:大規模使い捨て型バイオリアクターによってもたらされる改善された培養条件の最適な特性を明らかにするために、また、これらの条件の確実性および再現性を試験するために、大規模使い捨て型バイオリアクターで産生される組換え産物の分子的特徴および物理化学的特徴を、より小規模のバイオリアクターで産生される調製物と比較した。
【0200】
質量分析法によって決定されるグルコセレブロシダーゼの分子量:質量分析法による分析を、タンパク質標準物を必要とすることなく、タンパク質の質量を決定するために行った。2つの質量分析方法を使用して、400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素の分子量を決定し、これを、より小規模のリアクターで産生されるグルコセレブロシダーゼと比較した。すべての酵素調製物を同じ様式で単離および精製した。
【0201】
下記の表4には、両方の装置(LCQ classicおよびMALDI−TOF)によって得られるいくつかの酵素バッチの分子量がまとめられる。400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造されるprGCDの様々なバッチがPX400−GCによって示される。
【0202】
【表4】

【0203】
質量分析の結果は、すべての調製物におけるタンパク質の分子量の推定値が通常にはおよそ60800ダルトンであり、400Lおよび80リットルのバイオリアクターから採取された細胞から製造されるバッチの間で一致したままであることを示す。この分子量は、56642.6ダルトンを与える506個のアミノ酸と、残る4158ダルトン(約7%)を与えるグリカン構造の付加とを有するグリコシル化ポリペプチドと一致している。
【0204】
SDS−PAGE分析およびウエスタンブロット分析による分子量および純度の確認、決定:400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造されるグルコセレブロシダーゼの分子量同一性およびタンパク質不純物パターンを、クーマシーブリリアントブルー染色を使用してSDS−PAGE分析によって調べた。
【0205】
図6は、標準的な酵素調製物(PLX−GC−016−0505DS)、Cerezyme、および400Lの大規模使い捨て型バイオリアクターから採取される細胞から製造されるグルコセレブロシダーゼ(PX−400−GC−2)のクーマシーブリリアントブルー染色によるSDS−PAGEを示す。
【0206】
図6ではさらに、大規模バイオリアクターで培養された細胞から得られるprGCDが、他の方法で製造されるGCDと同一に近い特性を示すことが立証される。それぞれのバッチにおけるタンパク質の移動は類似しており、推定された分子量は60.9kDであった。さらに、タンパク質バンドのパターンは、標準的なバイオリアクターから得られるバッチと、400Lのバイオリアクターから得られるバッチとの間で同一であり、このことは、400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素におけるタンパク質不純物の証拠がないことを示している。
【0207】
抗グルコセレブロシダーゼ抗体によるSDS−PAGE分離タンパク質の免疫検出(ウエスタンブロット)を、400Lのバイオリアクターから採取された細胞から精製されるβ−グルコセレブロシダーゼ分子を、特異的なアフィニティー精製された抗β−グルコセレブロシダーゼ抗体を使用することによって、以前に製造されたバッチおよび市販のヒトβ−グルコセレブロシダーゼ(Cerezyme(登録商標)、Genzyme)との比較において特定するために行った。
【0208】
図7は、特異的なウサギ抗β−グルコセレブロシダーゼ抗体を、標準的なβ−グルコセレブロシダーゼ(PLX−GC−016−0505DS)、Cerezyme(登録商標)、および400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造されるタンパク質(PX−400−GC−2)を検出するために使用するウエスタンブロット分析を示す。特異的な抗体によって特定されるタンパク質バンドは、標準的なバイオリアクター手法のバッチと、400Lのバイオリアクター手法のバッチとの間で同一である。この分析では、さらなる分解されたバンドは、400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素タンパク質において、何ら明らかにされない。
【0209】
従って、SDS−PAGE分析および免疫学的分析によれば、標準的(80L)バイオリアクターまたは400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素の間において、同一性および純度における違いを示す証拠が何ら認められない。
【0210】
逆相高速(高圧)液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を使用するペプチドマッピングまたはタンパク質「フィンガープリンティング」:標準的な製造プロセス(80L)で製造される酵素調製物と、400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素調製物(PX−400GC−2)とが同一であることを確認するために、タンパク質フィンガープリンティングを、80Lおよび400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造されるprGCDに対して行った。
【0211】
図8aおよび図8bは、C−18クロマトグラフィーカラムで行われた、市販のグルコセレブロシダーゼ(PLX−GC−016−0505DS)のトリプシン消化マップの典型的なプロフィルを示す。図8aは、214nm(ペプチド結合)においてモニターされる分離されたペプチドを示し、図8bは、280nm(トリプトファンおよびチロシン)においてモニターされる分離されたペプチドを示す。図8cおよび図8dは、214nm(図8c)および280nm(図8d)においてモニターされる、400Lのバイオリアクターから採取された細胞から調製されるグルコセレブロシダーゼ(PLX−400−GC−2)のトリプシン消化マップを表す。
【0212】
従って、大規模使い捨て型バイオリアクターから採取された細胞から得られるセレブロシダーゼ酵素調製物のペプチドマップは、標準的規模の技術により得られる標準的な調製物のペプチドマップと同一であり、このことは、80Lおよび400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素調製物の一貫性および同一性を強く示している。
【0213】
逆相高速(高圧)液体クロマトグラフィー(RP−HPLC):400Lの大規模バイオリアクターで培養される細胞によって産生されるタンパク質のさらなる特徴づけを、RP−HPLCにより行った。
【0214】
図9aおよび図9bは、400Lのバイオリアクターから採取された細胞から精製されるグルコセレブロシダーゼ(PLX−400−GC−2)の214nmにおけるクロマトグラム(9a)および280nmにおけるクロマトグラム(9b)を表す。大規模使い捨て型バイオリアクターで産生される酵素タンパク質のクロマトグラムにおいて、酵素は、以前に調製されたグルコセレブロシダーゼ酵素の保持時間(64.70分)と類似する64.12分の保持時間を有する1つの無傷ピークとして現れる。
【0215】
従って、標準的なクロマトグラフィー条件のもとでは、大規模使い捨て型バイオリアクターおよび標準的規模の使い捨て型バイオリアクターの両方によって産生される組換えグルコセレブロシダーゼが、類似し、かつ一貫した保持時間で溶出した。1つの無傷ピークの出現は、酵素調製物の以前のバッチに対して行われた分析から得られた結果と一致している。ごく小さい不純物ピークのパターンおよびサイズが、グルコセレブロシダーゼ標準物と類似しており、しかし、不純物レベルは要求仕様の範囲内である。
【0216】
等電点フォーカシング(IEF):本発明の大規模バイオリアクターで培養された細胞によって製造される組換えタンパク質をさらに特定するために、また、本発明の大規模バイオリアクターで培養された細胞によって製造される組換えタンパク質の均一性を保証するために、大規模な400Lバイオリアクターから採取された細胞(PX−400−GC−2)、および標準的な80Lリアクターの調製物から採取された細胞(PLX−GC−016−0505DS)から得られるグルコセレブロシダーゼバンド形成プロフィルのpI範囲を求めた。
【0217】
図10は、標準的な体積のバイオリアクターの調製物から得られる酵素サンプル(PLX−GC−016−0505DS)、および400Lのバイオリアクターから採取された細胞から得られる酵素サンプル(PX−400−GC−2)の、クーマシーブリリアントブルー染色によって可視化されたpIバンド形成パターンを、異なる精製段階(C−3、C−4およびC−5によってそれぞれ示される、第3、第4および第5の精製カラムの後)において示す。
【0218】
標準的な体積のバイオリアクターによって製造される酵素、および400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素のプロフィルは、パターンにおけるバンドの数と、それぞれのアナログバンドの強度との両方において同一である。従って、大規模使い捨て型バイオリアクターで製造された酵素のIEFイソ型パターンと、以前に製造された調製物のIEFイソ型パターンとは同一である。
【0219】
酵素活性アッセイ:大規模バイオリアクターで製造される組換えグルコセレブロシダーゼの触媒活性を評価するために、合成基質−β−D−グルコピラノシド(pNG−Glc)を使用する酵素アッセイを用いた。表5には、400Lのバイオリアクターから採取された細胞から製造されるグルコセレブロシダーゼ(PX−400−GCによって示される)、および標準的な体積のバイオリアクターによって製造されるグルコセレブロシダーゼの比活性がまとめられる。
【0220】
【表5】

【0221】
従って、400のLバイオリアクターから採取された細胞から製造される酵素の比活性は、標準的規模の製造で製造される酵素の比活性の範囲に含まれる。そのうえ、下記の表6に示されるように、800リットルのバイオリアクターで成長させられるprGCD発現細胞培養物の3つのロットの成長パラメーターを、400リットルのバイオリアクターで成長させられる培養物の値と比較したとき、電気伝導率、浸透圧モル濃度および収量(細胞およびタンパク質)のパラメーターは、これら2つの大規模使い捨て型バイオリアクターにおける培養物について同じ範囲内であった。
【0222】
【表6】

【0223】
大規模使い捨て型バイオリアクターから得られるβ−グルコセレブロシダーゼは宿主細胞タンパク質を含まない:ニンジン宿主細胞タンパク質(CHP)の検出のために、広範囲の様々なタンパク質不純物を検出することができる高感度な免疫アッセイが開発されている。このアッセイのために、ポリクローナル抗体を、形質転換されていないニンジン細胞(β−グルコセレブロシダーゼ構築物を有しないニンジン細胞)から作製されるタンパク質調製物による免疫化によって作製した。これらのポリクローナル抗体を、組換えβ−グルコセレブロシダーゼに結合する糖との交差反応を防止するために、糖成分/残基に対してではなく、タンパク質のポリペプチドコアに対する特異的な結合を与えるためにさらに分離した。
【0224】
ニンジン宿主タンパク質(CHP)調製物が、宿主に関連づけられるタンパク質不純物のための参照標準物として使用され、また、免疫アッセイのために使用されるポリクローナル抗体を調製するための抗原として使用される。
【0225】
図11は、SDS−PAGE分析、および特異的な抗ニンジン細胞宿主タンパク質抗体によるウエスタンブロット分析によって分析される宿主タンパク質サンプルおよびβ−グルコセレブロシダーゼの様々なバッチに対する、特異的な抗宿主タンパク質抗体の反応性を示す。標準的な体積のバイオリアクターから得られるβ−グルコセレブロシダーゼの様々なバッチ(PLX−GC−016−0505DS)、および400のLバイオリアクターから採取された細胞から製造されるβ−グルコセレブロシダーゼの様々なバッチ(PX−400GC−2)を、ニンジン宿主タンパク質抽出物から得られるサンプルと同様に分析した。4つの主要なタンパク質バンドが、ニンジン細胞宿主タンパク質サンプルにおいて特定された(図11、レーン7およびレーン8)が、対応するCHPタンパク質バンドのどれもがこれらのβ−グルコセレブロシダーゼサンプルのどちらにおいても検出されない。このことは、本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターで製造された組換えβ−グルコセレブロシダーゼが、検出できないレベルのニンジン宿主細胞タンパク質を含有し、標準的な体積の製造方法によって製造されたβ−グルコセレブロシダーゼの純度を最低でも有することを示している。
【0226】
(実施例3)
大規模使い捨て型バイオリアクターを使用するBY−2細胞懸濁でのヒトアセチルコリンエステラーゼの効率的発現
本実施例は、本発明の1つの実施形態に従って大規模使い捨て型バイオリアクターで培養される、ヒトアセチルコリンエステラーゼにより形質転換されたタバコ(Nicotiana tabaccum)BY−2細胞を用いて行われた実験の記載を提供する。
【0227】
材料および実験方法
cDNA:挿入されたヒトアセチルコリンエステラーゼ「読み抜け」変異体(AChE−R)をコードするcDNAを、Hermona Soreq博士(エルサレム・ヘブライ大学、イスラエル)から得た(エルサレム・ヘブライ大学のYissum Technology Transfer Company、番号pTM240)。この遺伝子の配列を植物のために最適化した。その配列は、ER内への本来のリーダー配列(N末端での33アミノ酸、配列番号7、これは成熟タンパク質では分解される)、および組換え遺伝子(配列番号9)のC末端に融合されるER保持配列(SEKDEL;配列番号8)を含む。
【0228】
アセチルコリンエステラーゼ発現プラスミドの構築:pBluescriptSK+プラスミド(カタログ番号212205、Stratagene、La Jolla、CA)を植物発現カセットの構築のための骨格として使用した。高レベル発現のために要求される必要なエレメントを有する植物発現カセットを、pBluescriptSK+プラスミドに組み込んだ。この発現カセット(CE)は、CaMVの35Sプロモーター、Ω翻訳エンハンサー、ならびにアグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトピンシンターゼ遺伝子の転写終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルを含む(CEカセット)。
【0229】
AChE−Rを、SalIおよびPstIの制限部位(太字下線で示される)を含有する下記のプライマーを使用するAChE−RのPCR増幅によって、発現カセットを含有するBluescript(登録商標)発現ベクターにサブクローニングした(フォワードプライマー:5’−CGGCGTCGACACAAGAGGCCTCCACAAT−3’(配列番号10);リバースプライマー:5’−CCCCCTGCAGCTAGAGTTCATCCTTCTC−3’(配列番号11))。その後、AChE−Rのコード配列を有する発現カセットを中間ベクターから取り出し、本明細書中に記載されるように、バイナリーベクターのpGREENII nos−Kana(Hellens他、2000)に、NotIおよびAcc651を使用してさらにサブクローニングした。陽性クローンを、PCR分析および制限分析を使用して選抜した。
【0230】
Ache−Rを発現するBY−2細胞の形質転換、スクリーニングおよび培養:BY2細胞への浸潤に先立つアグロバクテリウムの形質転換を、以前に記載された(den Dulk−RasおよびHooykass、1995)通りに行った。カナマイシン抵抗性が、pGREENベクターと一緒に得られるnosプロモーターにより駆動されるNPTII遺伝子によって付与されるので、カナマイシン抵抗性を形質転換体のスクリーニングおよび選抜のために使用した。
【0231】
遺伝子改変されたタバコ細胞(BY2系統)のアグロバクテリウムによる浸潤およびその後の培養を、本質的には、本明細書中上記の実施例2におけるニンジン細胞の形質転換について記載される通りに行った。高レベルのAche−Rを発現するカルスについての選抜を、本明細書中に記載されるElman触媒活性アッセイおよびウエスタンブロットにより行った。選抜された細胞の細胞懸濁培養物を、一定の撹拌および制御された温度条件(25±2℃)において、旋回式振とう機(80rpm)で、250mlの三角フラスコにおける50mlの懸濁物として維持した。製造プロセスには、抗生物質のパロモマイシンおよびセフォタキシムを選抜剤として含有する培地での成長期が含まれた。
【0232】
バイオリアクターにおける培養物成長のスケールアップ:10Lへの培養のスケールアップを段階的に行った。最初に、200mL〜400mLの細胞懸濁物の接種物を、3.6L〜9.8Lの培地を含有する12Lのバイオリアクターに導入した。7日間の培養(25±2℃、1.5Lpmの無菌空気)の後、培地を10Lにまで増やし、培養を同じ条件のもとでさらに7日間続けた。400Lのバイオリアクターには10Lの懸濁細胞を接種し、その後、350Lに至るまで培地を徐々に満たし、培養を同じ条件のもとで続けた。
【0233】
消泡剤(10ppm)を、400Lに移されたときに細胞成長培地に加えた。使用された消泡剤は、本明細書中に記載されるように、Medicinal Antifoam C Emulsion(ポリジメチルシロキサン−PDMS)である。
【0234】
ウエスタンブロット:ウエスタンブロットを、ヒト起源のAChEのN末端におけるペプチドに対して惹起されるアフィニティー精製されたヤギポリクローナル抗体(Santa−Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)を用いて行った。N末端は、AChEのすべての形態で同一であり、従って、この抗体はAChE−Rを同様に認識することができる。検出をECL検出キット(Pierce)により行った。
【0235】
SDS−PAGEを標準的な条件のもとで行った。AChE−SおよびAChE−Rを10%SDS−PAGEで分析した。電気泳動は、Criterion(商標)セル垂直電気泳動装置(Bio−Rad Laboratories)を混合済みの電気泳動用のTris−グリシン−SDS泳動緩衝液(Bio−Rad Laboratories)とともに使用して行われる。10%アクリルアミドゲルを、40%アクリルアミド/Bisの混合済み溶液および10%SDS溶液を使用して調製した。ビス−アクリルアミドゲルからニトロセルロースメンブランへのタンパク質の転写を、ブロッターP3レディープランを使用するiBlot(商標)Dry Blotting System(Invitrogen)を使用して行った。転写を室温で8分間行った。タンパク質をメンブランに転写した後、メンブランをブロキング処理し、洗浄し、One−step(商標)Complete Western Kit(GenScript Corporation)を使用して一次抗体および二次抗体に結合させた。一次抗体(N−19;Santa Cruz、CA)を1:200の希釈でOne−step(商標)(GenScript)の作業溶液に加えた。検出をECL検出キット(Pierce)により行った。AChE−Rの免疫反応性を市販のヒト組換えAChE−S(Sigma)の免疫反応性と比較した。バンドを、Molecular Imager Gel Doc XR System(Bio−Rad Laboratories)を使用して検出した。
【0236】
Flamingo(商標)蛍光ゲル染色:Flamingo(商標)蛍光ゲル染色(Bio−Rad Laboratories)は、非常に高感度で、非特異的なタンパク質染色方法である。AChE−R(バッチ9〜バッチ11)を、市販のヒト組換えAChE−S(Sigma)との比較で、いくつかの濃度(50ng/サンプル、100ng/サンプルおよび200ng/サンプル)で負荷した。サンプルを、本明細書中に記載される標準的な手順のもとでの10%SDS−PAGEで分析し、製造者の説明書に従ってFlamingo(商標)蛍光ゲル染色により染色した。
【0237】
Ellmanアッセイ:Ellman試薬をタンパク質におけるフリーチオールの修飾のために使用する(Ellman他、1961)。Ellman試薬は、チオールとのジスルフィド結合を迅速に形成し、405nmにおいて測定することができる特徴的な色を有するチオラートイオンを放出する。Ellmanアッセイを、粗ホモジネートサンプルにおけるAChE−R活性および活性酵素の濃度を測定するために、同様にまた、精製されたサンプルにおける活性酵素の濃度を求めるために行った。酵素ユニットは、室温およびpH=7.4における1分あたり1マイクロモルの合成基質アセチルチオコリンヨージド[(2−メルカプトエチル)トリメチルアンモニウムヨージドアセタート]の、(2−メルカプトエチル)トリメチルアンモニウムヨージドおよび酢酸への加水分解を触媒する酵素の量と定義される。AChE−Rの触媒活性を、アセチルチオコリンヨージド(Sigma、St Louis、MO)を基質として使用して求めた。サンプルを約60ng/ml(精製サンプル)または50ng/ml〜100ng/ml(粗ホモジネート)の濃度でAChE触媒活性について調べ、Ellman他(1961)によって開発された分光光度法による方法の後、リン酸緩衝液(0.1M;pH=7.4;0.025%BSA)に溶解した。この方法では、AChE、アセチルチオコリンヨージド(20mM)およびEllman試薬−DTNB[5−5’−ジチオ−ビス(2−ニトロベンゾアート);9mM;Sigma]が混合され、加水分解を、光学濃度を405nmにおいて2分間隔で20分間測定することによって分光光度法によりモニターした。陰性コントロールは、試験された抽出物を除くすべての成分を含有した。結果を時間に対してプロットし、初期速度をグラフの直線部分の傾きから計算した。
【0238】
それぞれのAChE調製物のユニット活性は、下記の式を使用して計算される:

【0239】
特異的なAChE阻害剤DEPQを使用するEllman試薬:DEPQ[7−(O,O−ジエチル−ホスフィニルオキシ)−1−メチルキノリニウムメチルスルファート]は、AChEの強力な不可逆的阻害剤であり、これを、その活性をモニターするために使用する。酵素溶液の活性部位滴定を、様々な量のDEPQ(0.2nM〜0.8nM)を加えることによってリン酸塩衝液(0.1M;pH=7.4;0.025%BSA)の存在下で行った。活性を、上記に記載されるようなEllmanアッセイを使用して測定した。阻害百分率を阻害剤の濃度に対してプロットした。DEPQは、AChE−Rと1:1の比率で反応する。これらの値を使用して、μMで表されるAChE−R濃度を求めた。
【0240】
Karnovsky染色を使用するコリンエステラーゼ活性:KarnovskyおよびRootsのコリンエステラーゼ活性染色(KarnovskyおよびRoots、1964)は、コリンエステラーゼ(AChEおよびBChE)活性を視覚的に検出するために使用される特異的な方法である。この方法は、チオコリンエステルを基質として利用し、フェリシアニドが、コリンエステラーゼ活性により放出されるチオコリンによってフェロシアニドに還元されることに基づく。形成されるフェロシアニドが銅によって捕捉されて、フェロシアン化銅を形成し、その後、このフェロシアン化銅が肉眼によって視覚化される。
【0241】
ネイティブ(非変性)PAGE:ネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)は、ポリアクリルアミドゲルによってもたらされる均一な細孔サイズのために、サイズが5kDaから2000kDaにまで及ぶタンパク質について使用される。SDS−PAGEとは異なり、ネイティブゲル電気泳動では、電荷を有する変性剤は使用されない。従って、分離されている分子は、分子量および固有電荷において異なる。タンパク質は、分離の間中、未変性の状態のままであるので、タンパク質を、一般的なタンパク質染色試薬によってだけでなく、酵素の特異的な触媒性質を用いる試薬によってもまた検出することができる。
【0242】
結果
組換えAChE−Rのプロフィル:本発明の方法によって製造される組換えAChE−Rタンパク質は、図15(レーン1〜レーン3)に示されるように、64kDaの分子量で推定される。コントロールのAChE−S(レーン5〜レーン7)は、中性条件下では四量体であるが、SDS−PAGEではその単量体に還元され、従って、AChE−Rと同様に移動した。これは、ACE−S単量体が約70kDaであり、AChE−Rよりも6kDa重いからである。従って、大規模使い捨て型バイオリアクターにおいてBY2タバコ細胞で発現されるAChE−Rは、HEK293細胞でその単量体形態で発現される組換えヒトAChE−S(Sigma)と類似する(電気泳動移動度によって決定されような)3次元構造を有する。
【0243】
Flamingo(商標)非特異的染色ではさらに、検出されたバンドが、抗AChE抗体を使用する免疫アッセイによって検出されたのと同じ移動パターンを示すので(図16)、組換えの、植物発現によるAChE−Rの移動プロフィルが確認される。さらに、単一の染色バンドが、図16に示されるようにゲルで観測されたことは、植物発現による酵素タンパク質の精製が著しく効率的であったことを示している。
【0244】
組換えAChE−Rの活性:図17は、植物発現によるAChE−Rポリペプチドおよび哺乳動物細胞発現によるAChE−Sポリペプチドが、Karnovsky染色を使用したとき、触媒的に同一であることを示す。50ng(レーン3およびレーン6)、100ng(レーン2およびレーン5)および200ng(レーン1およびレーン4)のAChE−Rをゲルに負荷した。活性が3つの負荷濃度物のすべてにおいて明白であった。このことから、本発明の大規模バイオリアクターから採取されたBY−2細胞から精製されるAche−Rの活性が確認された。市販のヒト組換えAChE−Sは、その四量体形態で現れ(上側の矢印を参照のこと)、従って、AChE−R単量体(下側の矢印)よりも遅く移動し、その活性を保持している。AChE−R単量体のバンド(レーン1〜レーン3)と同一に移動する、レーン4〜レーン6で検出されるそれほどはっきりしていないバンドは、植物発現によるAChE−S単量体がサイズにおいて同一であるだけでなく、市販のヒト組換えAChE−Sと同等に触媒活性であることを示している。
【0245】
下記の表7は、DEPQ阻害を使用するEllman活性アッセイによって試験されたとき、小さい体積のバイオリアクターで製造されるバッチにおける植物発現AChE−Rの活性および濃度と、本発明の1つの実施形態による大規模使い捨て型バイオリアクターで製造されるバッチにおける植物発現AChE−Rの活性および濃度との比較を示す。表7は、AChEタンパク質の収量(mgタンパク質/Kg細胞として表される)が、酵素活性の範囲における減少を伴うことなく、大規模培養デバイスでは著しく増大することを明瞭に示す。
【0246】
【表7】

【0247】
従って、まとめると、これらの結果はさらに、より小さい体積の発現システムおよび動物に基づく発現システムの欠点の多くを回避しながら、組換えタンパク質の正確かつ非常に効率的な発現および翻訳後プロセシングについて、本発明のいくつかの実施形態に従って本発明の大規模使い捨て型バイオリアクターでトランスジェニック植物細胞を培養することの著しい利点を裏付けている。
【0248】
参考文献
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Proulx他の米国特許出願第2005/0282269号
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NamdevおよびDulop,App.Biochem and Biotech,Part A,Frontiers in Bioprocessing,1995
【配列表フリーテキスト】
【0249】
配列番号1、2、10および11は、一本鎖DNAヌクレオチドの配列を示す。
配列番号3および4は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列を示す。
配列番号5は、タバコキチナーゼA由来の液胞標的化シグナルペプチドをコードする核酸配列を示す。
配列番号6は、Arabidopsisの塩基性エンドキチナーゼ遺伝子由来のERシグナルペプチドをコードする核酸配列を示す。
配列番号7は、ER内へのアセチルコリンエステラーゼリーダー配列を示す。
配列番号8は、ER保持シグナルの配列を示す。
配列番号9は、アセチルコリンエステラーゼ「読み抜け」変異体(AChE−R)に融合されたER内への本来のリーダー配列およびER保持配列からなる組換えタンパク質の配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物組織および/または植物細胞を培養および採取するための使い捨て型デバイスであって、少なくとも400リットルの体積を有し、かつ前記デバイスが少なくとも2回の連続する培養/採取サイクルのために連続して使用されることを可能にするガス交換ポートおよび採取用ポートを伴って構成される非剛直性の容器を含み、前記植物組織および/または植物細胞を培養するために好適な酸素飽和度および剪断力を維持するために設計および構築される使い捨て型デバイス。
【請求項2】
前記植物組織および/または植物細胞を培養するために好適な前記酸素飽和度および前記剪断力は、下記のパラメーターの値または値範囲を組み合わせることによって維持される請求項1に記載の使い捨て型デバイス:
a)高さ対体積比;
b)入口ガス圧力;
c)断面積あたりのガス入口の密度;
d)入口での通気速度;および
e)入口でのガス気泡体積。
【請求項3】
下記の値または値範囲のうちの少なくとも1つから選択されるパラメーターの値または値範囲を有する請求項1に記載の使い捨て型デバイス:
a)約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比;
b)約1バール〜5バールの入口ガス圧力;
c)約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度;
d)単位体積の培地あたり1分につき約0.05体積のガス〜0.12体積のガスである入口での通気速度;および
e)約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積。
【請求項4】
前記酸素飽和度は、前記容器に含有される液体において単位体積あたり少なくとも15%の体積である、請求項1に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項5】
前記組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約1バール〜5バールの入口ガス圧力との組合せである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項6】
前記組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度との組合せである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項7】
前記組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、単位体積の培地あたり1分につき約0.05体積のガス〜0.12体積のガスである入口での通気速度との組合せである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項8】
前記組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積との組合せである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項9】
前記組合せは、約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積のパラメーターをさらに含む、請求項5〜7のいずれかに記載の使い捨て型デバイス。
【請求項10】
前記組合せは、約1バール〜5バールの入口ガス圧力のパラメーターをさらに含む、請求項6〜8のいずれかに記載の使い捨て型デバイス。
【請求項11】
前記組合せは、約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度のパラメーターをさらに含む、請求項5、7および8のいずれかに記載の使い捨て型デバイス。
【請求項12】
前記組合せは、単位体積の培地あたり1分につき約0.05体積のガス〜0.12体積のガスである入口での通気速度のパラメーターをさらに含む、請求項5、6および8のいずれかに記載の使い捨て型デバイス。
【請求項13】
前記組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約1バール〜5バールの入口ガス圧力と、約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度と、約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積とを含む、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項14】
前記組合せは、約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比と、約1バール〜5バールの入口ガス圧力と、約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度と、単位体積の培地あたり1分につき約0.05体積のガス〜0.12体積のガスである入口での通気速度と、約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積との組合せである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項15】
前記高さ対体積比は、約0.1cm/リットル〜約0.5cm/リットルである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項16】
前記高さ対体積比は、約0.44cm/リットルである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項17】
前記入口ガス圧力は、約1.5バール〜約4バールである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項18】
前記入口ガス圧力は、約1.5バール〜約2.5バールである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項19】
前記断面積あたりのガス入口の密度は、約40個/1平方メートル〜約60個/1平方メートルである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項20】
前記断面積あたりのガス入口の密度は、55個/1平方メートルである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項21】
前記通気速度は、単位体積の培地あたり1分につき約0.07体積のガス〜約0.10体積のガスである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項22】
前記通気速度は、単位体積の培地あたり1分につき約0.9体積のガスである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項23】
前記入口でのガス気泡体積は、約300立方ミリメートルである、請求項2に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項24】
前記使い捨て型容器は、透明および/または半透明である、請求項1に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項25】
前記容器は、ポリエチレン、ポリカーボナート、ポリエチレンとナイロンとのコポリマー、PVC、ならびにEVAからなる群から選択される材料から作製される、請求項24に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項26】
前記容器は、前記材料の2層以上の積層物から作製される、請求項25に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項27】
前記デバイスを支持するための支持体構造物をさらに含む、請求項1に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項28】
前記支持体構造物は、円錐状の基部を有する剛直な円筒状フレームを含む、請求項27に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項29】
前記採取用ポートは、前記容器の底端部の底部に位置する、請求項1に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項30】
前記採取用ポートは、前記容器の底端部の底部の近くに位置し、その結果、それぞれの採取サイクルが終了したとき、細胞および/または組織を含有する前記培地の残り部分が、ハーベスターのレベルよりも下側のレベルに至るまで前記容器の前記底端部において自動的に残留する、請求項1に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項31】
前記底端部は、実質的に円錐状である、請求項1に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項32】
前記底端部は、実質的に円錐台状である、請求項1に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項33】
前記容器は約400リットル〜約30000リットル、好ましくは約500リットル〜8000リットル、より好ましくは約1000リットルの内部充満可能体積を含む、請求項1に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項34】
培養培地の通気および混合が、機械的通気および混合手段によって行われない、請求項1に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項35】
前記機械的通気および混合手段はインペラーである、請求項34に記載の使い捨て型デバイス。
【請求項36】
植物組織および/または植物細胞を、400リットルを超える体積で培養および採取するための方法であって、
(a)少なくとも400リットルの体積を有し、かつデバイスが少なくとも2回の連続する培養/採取サイクルのために連続して使用されることを可能にするガス交換ポートおよび採取用ポートを伴って構成される使い捨て可能な非剛直性の容器を提供すること、ただし、デバイスは、前記植物組織および/または植物細胞を培養するために好適な酸素飽和度および剪断力を維持するために設計および構築される、
(b)接種物を、前記採取用ポートを介して提供すること、
(c)無菌の培養培地および/または無菌の添加物を提供すること、
(d)必要な場合には、前記容器を外部の光により照らすこと、および
(e)前記細胞および/または組織を所望の収量にまで前記培地において成長させること
を含む方法。
【請求項37】
前記酸素飽和度および前記剪断力は、下記のパラメーターの値または値範囲の組合せによって維持される請求項36に記載の方法:
a)高さ対体積比;
b)入口ガス圧力;
c)断面積あたりのガス入口の密度;
d)入口での通気速度;および
e)入口でのガス気泡体積。
【請求項38】
前記パラメーターの値または値範囲は、下記の値または値範囲のうちの少なくとも1つから選択される請求項37に記載の方法:
a)約0.06センチメートル/リットル〜約1センチメートル/リットルの高さ対体積比;
b)約1バール〜5バールの入口ガス圧力;
c)約20個/1平方メートル〜約70個/1平方メートルの断面積あたりのガス入口の密度;
d)単位体積の培地あたり1分につき約0.05体積のガス〜0.12体積のガスである入口での通気速度;および
e)約20立方ミリメートル〜約1800立方ミリメートルの入口でのガス気泡体積。
【請求項39】
前記定常状態の酸素飽和度は、前記容器に含有される液体において単位体積あたり少なくとも15%の体積である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記高さ対体積比は、約0.1cm/リットル〜約0.5cm/リットルである、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記高さ対体積比は、約0.44cm/リットルである、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記入口ガス圧力は、約1.5バール〜約4バールである、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記入口ガス圧力は、約1.5バール〜約2.5バールである、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記断面積あたりのガス入口の密度は、約40個/1平方メートル〜約60個/1平方メートルである、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記断面積あたりのガス入口の密度は、55個/1平方メートルである、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記通気速度は、単位体積の培地あたり1分につき約0.07体積のガス〜約0.10体積のガスである、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記通気速度は、単位体積の培地あたり1分につき約0.09体積のガスである、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記入口でのガス気泡体積は、約300立方ミリメートルである、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
混入物について、および/または前記容器において産生される細胞/組織の品質について調べること、ただし、混入物が見出されるか、または産生される細胞/組織が不良な品質であるならば、デバイスおよびその内容物が処分される、および
混入物が見出されないならば、細胞および/または組織を含有する前記培地の一部を採取すること
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
前記一部を採取する一方で、細胞および/または組織を含有する培地の残り部分を前記容器に残すことを含み、この場合、培地の前記残り部分は、次回の培養/採取サイクルのための接種物として役立つ、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
無菌の培養培地および/または無菌の添加物を次回の培養/採取サイクルのために提供すること;および
成長サイクルを、前記混入物が見出されるまで、または、産生される細胞/組織が不良な品質となるまで繰り返すこと、ただし、前記混入物が見出されるとき、または産生される細胞/組織が不良な品質であるとき、デバイスおよびその内容物が処分される
をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
無菌の空気が、少なくとも1回の培養/採取サイクルの間中、連続して前記ガス交換ポートを介して供給される、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
前記無菌の空気が、少なくとも1回の培養/採取サイクルの期間中、パルス的に前記複数のガス入口を介して供給される、請求項36に記載の方法。
【請求項54】
請求項1に記載のデバイスと、前記植物組織および/または植物細胞を培養するために好適な培養培地とを含む植物細胞培養システム。
【請求項55】
前記培地において成長する植物細胞懸濁物または植物組織培養物をさらに含む、請求項54に記載の植物細胞培養システム。
【請求項56】
前記植物細胞は、組換えタンパク質を発現する、請求項55に記載の植物細胞培養システム。
【請求項57】
前記植物細胞培養物は、植物の根から得られる植物細胞を含む、請求項54に記載の植物細胞培養システム。
【請求項58】
前記植物細胞は、アグロバクテリウム・リゾゲネスにより形質転換された根細胞、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される、請求項55に記載の植物細胞培養システム。
【請求項59】
前記植物細胞はタバコ細胞である、請求項55に記載の植物細胞培養システム。
【請求項60】
前記タバコ細胞は、ニコチアナ・タバクム細胞である、請求項59に記載の植物細胞培養システム。
【請求項61】
前記細胞は、ヒト組換えアセチルコリンエステラーゼを発現する、請求項59に記載の植物細胞培養システム。
【請求項62】
前記ヒト組換えアセチルコリンエステラーゼは、アセチルコリンエステラーゼ−Rである、請求項61に記載の植物細胞培養システム。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−525833(P2010−525833A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507055(P2010−507055)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000614
【国際公開番号】WO2008/135991
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505161910)プロタリクス リミテッド (8)
【Fターム(参考)】