説明

大規模従属栄養培養領域にて産生される超高純度EPAと極性脂質

予防または治療に適用するエイコサペンタエン酸(EPA)組成物およびEPA濃厚極性脂質について記載する。特定の培養微生物(ササノハケイソウの一種(Nitzschia laevis)など)からの産生が、EPA含有極性脂質など、EPAの合成を促進する。EPA濃厚極性脂質はそれ自体、極性化合物として使用し得る。EPAはリパーゼ活性により、単離された極性脂質の特定の位置から選択的に加水分解し、次いで場合によってはさらに精製することができる。本方法は漸減する魚の備蓄への依存性を回避し、また魚油および培養生物体にも見出されるDHAなどの不所望の産物から、所望のn−3HUFAを適切に分離し得ない物理化学的方法への依存性をも回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単細胞生物体により合成される脂質組成物、オメガ−3高次不飽和脂肪酸の製造とある種の適用に、および医薬物質に関し、取分け、新規の治療用組成物、食事療法組成物および健康食品組成物に関する。
【0002】
定 義
アルファ−リノレン酸は18個の炭素原子と3つの二重結合をもつオメガ−3脂肪酸である。
【0003】
アラキドン酸は20個の炭素原子と4つの二重結合をもつオメガ−6脂肪酸である。
【0004】
ジアシルガラクトリピドは脂肪酸分子が占めるSn1とSn2をもつガラクトリピドである。
【0005】
ジガラクトシルガラクトリピドは2つのガラクトース分子が付着するガラクトリピドである。
【0006】
ドコサペンタエン酸は22個の炭素原子と5つの二重結合をもつオメガ−3脂肪酸である。
【0007】
ドコサへキサン酸は、22個の炭素原子と6つの二重結合をもつオメガ−3脂肪酸である。
【0008】
エイコサペンタエン酸は20個の炭素原子と5つの二重結合をもつオメガ−3脂肪酸である。
【0009】
有効量とは、投与したときに所望の結果を惹き出すのに十分な量を意味する。
【0010】
EPAのみとは、その高次不飽和オメガ−3脂肪酸成分中に、実質的にEPAのみを含有する組成物を意味する。
【0011】
「99%純度のEPA」などの表現が、遊離の脂肪酸とのエステルを形成するために使用されるエチルもしくは他の残基を無視すると理解されるように、n−3HUFAのエステル化は理解される。
【0012】
機能性食品は、食品または食品の一部である何らかの物質であり、疾患の予防および治療を含む医療上のまたは健康上の有益性を提供する。
【0013】
純度:1.化学的純度:EPA組成物が、EPA以外のいかなる分子も実質的に含まない。
【0014】
2.機能的純度:EPA組成物が本明細書にて「不所望」と定義したそれらの物質を実質的に含まない。純度のこの定義に従うEPA組成物は、1〜10%のみのEPAを含み得る(より好ましくは60〜90%のEPAであるけれども;残りのものはガラクトリピドもしくはその成分、または添加した医薬的に許容される添加剤、抗酸化剤、吸着剤、香料などを含み得る)。
【0015】
3.医薬的純度:重量で約90%以上のEPAを含んでなり、同時に、EPAといずれかの個々の不所望の分子の比が、少なくとも約90:1であるEPA濃厚組成物をいう。
【0016】
不所望の分子または物質とは、それを同時に摂取した場合に、EPA濃厚組成物の所望の有益な健康上の作用を減じ得るものと定義する。これらは、その有効量(または臨床的有効量)を摂取したときに、EPAの所望の有益な健康への影響に拮抗し、競合し、それを遮断し、逆転し、仲介し、相乗的に作用し、あるいは変化させ得る作用を介して、所望の効果を低減させ得る分子である。本明細書の目的上、不所望の分子は、脂肪酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(AA)、18:4n−3、18:3n−3、18:2n−6および一般的な他のオメガ−3と6の脂肪酸を含む構造的または機能的に同様の分子を含むものとする。AAはEPAの前駆体である。
【0017】
EP濃厚とは、該組成物が乾燥重量で1%を超えるEPAを含むことを意味する。
【0018】
EPA産生性とは、単価あたりに産生され得るEPAの量を意味する。微細藻類培養物の大規模従属栄養培養における産生性の代用となる尺度は、収率、増殖速度、細胞密度、栄養利用効率、および希釈速度の組合わせ効果として利用される。
【0019】
脂肪酸組成物は、脂肪酸のエチルエステル、塩、遊離脂肪酸、メチルエステル、および他のアルコールエステル、およびコンビナトリアル脂質である。
【0020】
ガラクトリピドは、少なくとも2種の別個の結合する分子をもつグリセロール骨格から構成され、少なくともその分子の1つは脂肪酸であり、他が、1分子の、または2分子が結合したガラクトース(単糖または二糖の形状にある)であり、脂肪酸もしくは脂肪酸類の場合、それらはエステルで連結されるか、または稀ではあるがエーテルで連結され、またガラクトースもしくはガラクトース類の場合、すべての事例で、エーテルで連結されている。少なくとも1つのガラクトースが存在し、正常ではグリセロールのSn3位置に付着する。ガラクトースは常にピラノース型である。第二のおよび稀ではあるが第三のガラクトース分子は、ベータ−d−3−ピラノシル結合によって、前述のガラクトース分子に付着する。位置は当初の立体特異的構造にもとづく慣習に従って標識する(Sn1でアシル化されたEPA分子を含むDGMGガラクトリピド・クラスの1,3異性体を示す表1参照)。通常、ただ1個の脂肪酸分子が結合している場合、それはSn1の位置を占める。しかし、時により1個の脂肪酸がSn2の位置に付着することが可能であり、その一方、Sn1位置は空いたままとなる。このことはリソ(溶菌)誘導と呼び得る。
【化1】

【0021】
Sn1位置にアシル化されたEPA分子をもつDGMGの1,3−異性体:
ガンマ−リノレン酸は18個の炭素原子と4つの二重結合をもつオメガ−6脂肪酸である。
【0022】
従属栄養培養とは、唯一のエネルギー源が、通常有機炭素の形態(例、グルコース、酢酸塩)である供給栄養素(エネルギー代謝のための主要栄養群)に由来するものである生物体の培養を意味する。
【0023】
大規模(または部分的)従属栄養培養とは、生物体にとっての主たるエネルギー源が、通常有機炭素の形態(例、グルコース、酢酸塩)である供給栄養素(エネルギー代謝のための主要栄養群)に由来し、エネルギー代謝のための副次的エネルギー源が光である生物体の混合栄養培養を意味する。
【0024】
リノール酸は18個の炭素原子と2つの二重結合をもつオメガ−6脂肪酸である。
【0025】
モノアシルガラクトリピドは1ヶ所のみが脂肪酸で占められたガラクトリピドである。モノアシルガラクトリピドにおいて、該脂肪酸分子はSn1またはSn2のいずれかの位置に付着している。
【0026】
モノガラクトシルガラクトリピドは1個のみのガラクトース分子が付着したガラクトリピドである。
【0027】
中性脂質は非極性溶媒の使用により単離し得る生物体に含まれる脂質であり、モノ−、ジ−およびトリ−アシルグリセロールを包含する。
【0028】
光合成脂質は、その産生を光の照射により微生物の大規模従属栄養培養物に有意に変え得る極性脂質である。これらは葉緑体内で、主としてガラクトリピドとの事例のように起こり得るか、または主としてリン脂質との事例のように、他の細胞小器官とも関連し得る。
【0029】
極性脂質は極性溶媒の使用により単離し得る生物体に含まれる脂質であり、リン脂質およびガラクトリピドを包含する。
【0030】
培養物内の光合成的に活性な平均放射照度は、培養容器内のすべての位置にわたり、また全時間にわたり平均して培養物に対し照射される400nm〜700nmの波長の電磁波の量である。
【0031】
ステアリドン酸は18個の炭素原子と4つの二重結合をもつオメガ−3脂肪酸である。
【0032】
準光合成露光とは、露光の強度と露光時間の組合わせが、毎秒平方メートルあたり1〜約10マイクロモルフォトンの略等価の連続的照射に等しいか、またはそれ以下である光に対する露光を意味する。
【0033】
オメガ−3脂肪酸は、該分子のn−メチル末端からの3個の炭素原子に最初の二重結合を有する脂肪酸である。
【0034】
オメガ−6脂肪酸は、該分子のn−メチル末端からの6個の炭素原子に最初の二重結合を有する脂肪酸である。
【0035】
略 号
18:2n−6またはLA:リノール酸
18:3n−3またはALA:アルファ−リノレン酸
18:4n−3またはSDA:ステアリドン酸
18:4n−6またはGLA:ガンマ−リノレン酸
20:4n−6またはAA:アラキドン酸
20:5n−3またはEPA:エイコサペンタエン酸
22:5n−3またはDPA:ドコサペンタエン酸
22:6n−3またはDHA:ドコサヘキサエン酸
DGDG:ジガラクトシルジアシルガラクトリピド
DGMG:ジガラクトシルモノアシルガラクトリピド
LPC:リソホスファチジルコリン
n−3:オメガ−3
n−6:オメガ−6
n−3HUFA:オメガ−3高次不飽和脂肪酸
MGMG:モノガラクトシルモノアシルガラクトリピド
MGDG:モノガラクトシルジアシルガラクトリピド
N. laevis:Nitzschia laevis(UTEX2047)
N. alba:Nitzschia alba
PC:ホスファチジルコリン
LPC:リソホスファチジルコリン
PG:ホスファチジルグリセロール
PE:ホスファチジルエタノールアミン
SQDG:スルホキノボシルジアシルグリセロール
【背景技術】
【0036】
1920年代後半、ラットの正常な成長と健康が後に続くためには、特定の「必須の」食餌脂肪酸が有効量存在しなければならないことが発見された(非特許文献1:Burr & Burr J. Biol. Chem., 82: 345-367 1929)。次いで、1940年代に始まるヒト集団から集めた疫学的データは、n−3HUFAの比較的高い食事取り込みが、多くの医学的症状の発症に対して防御的であり得ること、またn−3の取込みが低いと、リスクが増大し得ることを示唆した(非特許文献2:Sinclair, Lancet 1: 381-3, 1956; 非特許文献3:Bang et al., Lancet 1: 1143-5, 1971; 非特許文献4:Hirai et al., Lancet 2: 1132-3, 1980; 非特許文献5: Kromhout et al Am. J. Clin. Nutr., 85: 1142-1147)。
【0037】
最近10年に、ヒトの食事療法において、個々のオメガ−3高次不飽和脂肪酸(n−3HUFA)を包含させる補助添加の研究は、個々の食事n−3HUFAの有益な健康作用を証明している。特に、比較的純度の高い形状のn−3HUFAエイコサペンタエン酸(EPA)を取込ませるヒトの食事補助添加の研究は、この栄養素が健康を増進し、限定されるものではないが、特定形態の心血管疾患とうつ病などの一連の一般的な疾患の影響を改善、またはさらには逆転させることを示唆している(非特許文献6:Yokoyama et al., Lancet 369: 1062-1063, 2007; 非特許文献7: Peet & Horrobin Arch. Gen. Psych. 59(10) 913-9 2002)。
【0038】
濃縮型のEPAによる食事補助添加の治療効果は、ある程度まで純度に依存する。高純度の投与形状は生物利用能が増大するので有利である。さらに、EPAの所望の効果は、不所望の分子;(本明細書に定義のように)取分け、ドコサヘキサエン酸(DHA)、またAAおよび他のオメガ−3と6の一般的脂肪酸の同時摂取によって制限され、またはさらには逆転する。それ故、効果的なEPAの医薬としての、または治療上の使用を可能とするために、不所望の分子を含まない高純度の投与形状が必要とされる。
【0039】
高純度のEPAへの要請が高まるならば、このことは恐らくあり得ると思われるが、大多数の臨床的に、または準臨床的に疾患をもつとされた人々は、生活の質を維持するために、長期間の継続的な供給に依存することとなり得る。しかし、これまでのところ、商業的な製造業者は比較的高EPA純度のEPAのみの組成物(同時に不所望の分子を欠いている)を経済的に製造し得ないでいる。
【0040】
理由は以下のとおりである:(1)商業産生用の原材料が専ら高レベルの不所望の分子を含有する特定の魚油に限定されること。(2)魚油に含まれる不所望の分子は、構造的に、または物理化学的にEPAに類似しており、精製過程で容易には除去できないこと。(3)さらなる精製のコストが純度の上昇とともに非直線的状況で上昇すること。
【0041】
その結果、百分比で略90分の1まで高純度としたEPAでも、1%以上のこれらの不所望分子が残存し得る。
【0042】
また精製方法は、脂肪酸の比較的複雑な混合と、魚油に含まれる自然の高度の多様性によって、効率が低下する。
【0043】
上記因子の実際上の影響は、高純度のEPAを含有する現在入手可能な商業製品が、治療用途にとって望ましくない上記の分子を受け容れ難い高濃度で含み得ることである。さらに、不所望分子がほんの少量しか残存していない程度にまで魚油を精製したとしても、その高コストが、これらの超高純度組成物の使用を制約する。
【0044】
現行の精製方法では、1kgの高純度EPAを製造するために、15kgまでの高EPA魚油が必要とされる。かかる製造業者の効率が当初のEPA濃度に大きく影響されるために、それらはその脂質中に高率のEPAを含むものとして捕獲された魚にもとづくものとなる。また、魚油は、治療用製剤中に受け容れることのできない、また実質的に精製過程で除去し得ない汚染物質であるトランスEPAなどの受け容れ難い分子種の形成を起こし得るため、その被害を防ぐために、プロセシングに際しては注意して取り扱い、また貯蔵しなければならない。漁業の複雑な構造、注意深い取り扱いの必要性、および高EPA魚種の減少と資源としての限界は、増大する要求に合致させるための規模拡大を困難にし、海魚からの高純度EPAの産生を維持できないと思わせる。
【0045】
多くの公表文献が、EPA濃厚組成物の代替起源の可能性、または(微細)藻類、真菌、および細菌などの培養微生物から製造されるEPAについて報告している。これら起源のあるものは、含有する不所望脂肪酸のレベルが低い。さらに、魚油に比べて、微生物の一般的にあまり複雑ではない脂肪酸組成は、精製に際して有利であり得る。培養微生物中の脂肪酸組成の変動は、魚油に比べて最小であり、精製のためにさらに有利である。生物工学方法におけるEPA濃厚組成物の産生は、おそらく迅速に拡大可能であり、一定品質を要する栄養学上と治療上両方の使用に適するEPA濃厚組成物を提供すると期待される。
【0046】
微細藻類からのEPA産生に関係する公表文献の多くは、戸外での産生システムの開発に関するものである。これらのシステムの利点は、増殖のための主たるエネルギー源が太陽光であり、無料であることである。しかし、戸外の産生システムには、いくつかの重要な欠陥がある。第一に、競合する微生物の汚染が、他の競合微生物の増殖を制限する環境条件に耐え得る種のみに、開放池または水路培養物の使用を制限する。第二に、汚染を制限するために設計された「光バイオリアクター」産生システムは、培地へ光を容易に浸透させるために、容積に対して非常に大きな表面比を必要とするが、そのことはこれらのシステムの設定において、莫大な先行投資となる設備投資を必要とし、また実を結ばぬことに固執することに関しては、現行技術での挑戦とその経費を必要とする問題が生じる。
【0047】
これまでに開発された大規模光合成培養物のさらなる弱点は、光合成により製造した場合、トリグリセリドの形状で有意な量の細胞内脂質を蓄積する種は未だに単離されていないということである。このことは極性脂質に蓄積されるEPAにEPA産生を限定するが、その上限は厳しい生理的調整下にあると思われる。
【0048】
混合栄養産生システムはEPA濃厚微生物の産生のために提案されている。これらは、培地に供給される有機炭素の形状で、ある割合の増殖用エネルギーを供給する。混合栄養の利点は、光合成産生のみで達成し得るよりもより高い産生性を含み、また可能性として光に対する全般的要件を低減する。しかし、戸外光バイオリアクター培養物に有機炭素源を添加することの不利益は、非光合成汚染生物体増殖のために基質を提供することによるさらなる汚染リスクを生み出すことである。
【0049】
EPA濃厚微生物産生のための多くの単独従属栄養システムが開示されている。これらは光合成システムの制限の多くを、光のない状態でEPA濃厚種の増殖を達成する能力によって克服する。光に対する要件を除くことにより、反応器の表面/体積比を有意に低下させ、結果として資本支出と滅菌コストを低下させることが可能となる。従属栄養産生システムのさらなる利点は、培養パラメータが確実に制御可能となり、一貫性のある品質の製品の産生に導くことができることである。
【0050】
脂質クラスと脂肪酸プロフィール
特定のEPA濃厚微細藻類の脂肪酸組成は、EPAに構造的に類似した低比率の脂肪酸類を含む。微細藻類の一般に複雑性の低い脂肪酸組成と一緒になって、このものは精製の点で、魚油を超えた利点を提供し得る。
【0051】
培養したEPA濃厚微細藻類において好適な全般的脂肪酸組成を達成することに加えて、特定の脂質クラスにおけるEPAの選択的産生も可能である。
【0052】
EPA濃厚微細藻類種における脂質の増大と全般的EPA産生のための一つの特別な戦略は、微細藻類の従属栄養培養における微生物培地での窒素制限の時限的賦課である。微生物が膜合成に必要な重要な栄養素を奪われると、脂質は脂質膜構造に広範には利用されない脂質クラスであるトリグリセリドの形状で蓄積され得る。
【0053】
EPA濃厚トリグリセリドは、潜在的に治療価値のあるものである。EPAはトリグリセリドから回収可能であり、さらに一連の常套のまた新たに出てきた技法を介して精製し得る。トリグリセリドからEPA濃厚脂質または脂肪酸組成物を抽出し、濃縮しまたは精製するために設計されたプロセスは、しかし、トリグリセリド内にEPAが局在することの観点から、比較的高レベルで広範囲の不所望の脂肪酸分子の存在および低レベルの立体特異性によって不利益となり得る。
【0054】
微細藻類の培養にて産生される特定の極性脂質クラスは、比較的EPA濃厚である。同時に、これらの脂質クラスの一部は、クラスとその異性体内でのEPA局在の観点で、高度の立体特異性を示し得る。特定の脂質クラスにおいて、予測可能な方法でのこのEPAの濃度は、精製過程での未使用フラクション中の不所望分子を隔離するさらなる機会を提供する。さらに、微細藻類の培養によって産生される特定の脂質クラスは、自己の能力によって、治療上の価値も有し得る。
【0055】
さらに驚くべきことと思えるのは、抽出、濃縮および精製過程の効率および適用可能性を高めるような方法で、極性脂質リザーバー中のEPAを局在化させ、治療用製品に取込ませるための極性脂質の源を提供するために、微細藻類の従属栄養性または大規模従属栄養性培養を誘導する可能性に対しては、あるとしてもほんの僅かの注意しか払われていないことである。事実、先行技術の開示は、この可能性からは遠く離れて教示していると思われる。
【0056】
残念ながら、今までにEPA濃厚組成物の代替起源を提供する方法の産生性を高めるために適用された戦術は、EPA濃厚微生物の極性脂質含量の低下に導いていた。
【0057】
微細藻類は2種の主要タイプの極性脂質:リン脂質および糖脂質を産生する。これらの主要な極性脂質クラスはすべて常套的に標識したSn1−3の3ヶ所をもつグリセロール骨格を含んでなる。リン脂質およびガラクトリピドクラスは、それぞれ、通常Sn−3位置でグリセロール骨格に付着するホスフェート−およびガラクトース−含有官能基に従って分類される。脂肪酸は1ヶ所以上の位置1−2でアシル化される。これらの脂質クラスの異性体形状はアシル化のパターンから生じ、その場合、すべてではないが利用可能な位置が脂肪酸により占められるか、または官能基が代替の位置に付着する。
【0058】
ガラクトリピドは主として葉緑体にて産生され、また光合成膜の構造成分である。ガラクトリピドはすべての脂質クラスの中で最も極性の高いものの一つである;グリセロール骨格に付着する1個以上のガラクトース部分の極性の故に、分子全体への電荷分布には実質的な差があり、正電荷と負電荷の空間的に離れた中心を提供する。それ故、ガラクトリピドは懸濁化剤としての適用が分かっており、薬物送達接合体として提案されている。
【0059】
ガラクトリピドの極性(他の生理化学的性質の中で)は、多くの有用な機会、例えば、限定されるものではないが、ガラクトリピドおよびガラクトリピド脂肪酸の抽出と精製、ガラクトリピドおよびガラクトリピド脂肪酸の食品、機能性食品、飲料、医薬および工業組成物への製剤化、ガラクトリピドおよびガラクトリピド脂肪酸の栄養と治療用製品の生物利用可能な形態での送達のための潜在的に有利な経路、並びにそれらの使用が促進し得る有利な治療効果と作用メカニズムなどを含む有用な機会に導く。
【0060】
リン脂質は細胞膜の主たる構造成分である。それらの疎水性脂肪酸「尾部」とカップル結合した分子の高極性「頭部」は、水性媒体においてリン脂質をミセルと二分子膜の形成に自発的に導く。葉緑体内部および外部両方のリン脂質は、光に対する微生物の生理的応答に関連して、多くの重要な役割を演じていることが期待される。一例として、細胞質リン脂質クラスに局在する脂肪酸は、光合成膜の産生に際して、葉緑体脂質に取込ませるためのリザーバーである。他の生理化学的性質の内でリン脂質の極性は、上記のガラクトリピドについて上に述べたものと同様の多くの有用な機会を提供する。PCを含む特定のリン脂質は、哺乳動物に差異的に吸収されて、治療上有利に変化し得ることが知られている。哺乳動物におけるガラクトリピド、特にMGDGの吸収に関する研究は制限されている。
【0061】
先行技術 培養:
コーエンら(非特許文献8:Cohen et al., Journal of Applied Phycology 5: 109-115, 1993)は、微細藻類ガラクトリピドを得て、脂肪酸GLAで濃厚化した組成物を製造する一般的な工程図を開示している。開示されている方法は、生物体の全脂質を抽出し、次いで全脂質フラクションからガラクトリピドを分離することからなる。これらの著者は同じ公表文献中で、工業的に有用であるためには、微細藻類中のGLA含量(恐らくは、ガラクトリピドフラクション中の)を増量させねばならないことを認めている。この研究に使用される生物体は全体として光合成条件下で増殖された。我々の知る限り、本発明以前に、コーエンとその協力者、またはいずれの他の以前の著者らも、必要とされる収率の上昇が、大規模従属栄養増殖により遂行し得ることは示唆していない。
【0062】
カイルら(特許文献1:Kyle et al; US5567732)は、珪藻植物ササノハケイソウの一種(Nitzschia alba)の細胞から暗所でEPA濃厚油を製造する方法を開示し、窒素枯渇を起こさせ、12〜24時間後にケイ酸の枯渇状態を起こさせ、一方で他の栄養素を培養物に供給し続けることにより、従属栄養培養においてこの微生物をオレオゲニック相に入るように誘導することが可能であることを教示している。珪藻類は無色種が好ましい。(一般的な無色種、特にカイルらが好ましいとした微生物は光合成色素の表現型を提示しないために無色である。例えば、N.アルバ(Nitzschia alba)は、何らの活性光合成能力をもたないことを意味する絶対従属栄養生物であると信じられる。それにも関わらず、N.アルバの公表された脂質類の分析は、脂質組成の数パーセントがガラクトリピドから構成されると報告している)。著者らは、珪藻類が成功裏に大量の単一細胞油を産生させるために、経済的に培養することができると主張し、また彼らは、「本明細書の目的上、単一細胞油とは、単細胞微生物のトリグリセリド産物を意味する」としている。我々の知る限り、本発明以前に、カイルらも、先の著者らも、我々の知る限り、EPA濃厚極性脂質の商業的同時産生において有用な従属栄養法もまたは大規模方法も開示していない。
【0063】
管状光バイオリアクターでのEPA濃厚微細藻類ハネケイソウの一種(Phaeodactylum tricornutum)の混合培養産生が文献に開示されている(非特許文献9:Ceron Garcia et al Journal of Applied Phycology 12: 239-248, 2000)。この製造では9.2g/Lのグリセロールを有機炭素源として利用し、光バイオリアクター表面に165μmolフォトン/m/sの外部放射照度を供給する。これらの著者は、光に対する必要性を減らすことにより、この混合培養増殖の形態が、大規模の戸外大量培養において、藻類細胞濃度とEPA産生性を顕著に増大させる可能性などの多くの利点を有すると主張している。しかし、セロン・ガルシア(Ceron Garcia)と協力者は、上昇した極性脂質産生という意味で、大規模従属栄養増殖の利点を確認しなかった。さらに、これらの著者も、他のこれまでの著者らも、EPA濃厚微生物を産生させるための大規模従属栄養培養における比較的低レベルの放射照度を利用する可能性については確認していない。
【0064】
多くの先行技術公表文献が、特定したEPA濃厚微細藻類種において、光強度と波長などの培養条件が、脂質と総EPA産生を上昇させ得ることを開示している。しかし、本発明の前に、準光合成光強度が脂質類の相対的産生を商業的に有用な様式で変化させるために使用し得ることは提案されていなかった。また、準光合成光強度が、商業的に有用な製造において、微細藻類の脂質リザーバーにおけるEPAの局在を変えるために利用し得ることも提案されていなかった。
【0065】
微細藻類からの極性脂質の抽出
潜在的な工業上の利用性についてのいくつかの技法が、生物学的物質のガラクトリピドフラクションからガラクトリピドおよび/または脂肪酸を抽出し、また濃縮するために提案されている。ウインゲット(特許文献2:Winget; US5767095)は、藻類クロレラ属などの多くの光合成的に産生される微細藻類から、EPAを含有する比較的純度の高いガラクトリピドなど、特定の脂質クラスを回収するために使用される一連の抽出および濃縮法を詳細に記載している。
【0066】
コーエンら(非特許文献10:Cohen et al., J. Appl. Phycol. 5: 109, 1993)は、脂肪酸DHAが光合成生物イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)のホスファチジルエタノールアミン(PE)脂質フラクションから、総脂質を抽出し、次いで周知の尿素結晶化法を用いてDHA濃厚組成物を生成させることにより、製造し得ることを開示している。ヴァリら(特許文献3:Vali et al; US6953849)は、米ぬかの脱脂とヘキサン抽出からなり、ケイ酸カラムによるHPLCを含む方法を開示している。コラロウ(特許文献4:Colarow; US5284941)は溶媒ホウ酸ゲル分離からなる方法を開示している。ブッフホルツら(特許文献5:Buchholz et al; US5440028)はpH調整による膜分離経由の単離方法を開示している。ベルグクビストら(Bergqvist et al., 1995)は、カラスムギ穀粒についての研究の後、ガラクトリピドがリン脂質と糖脂質間のアセトン中での既知の溶解差を利用して、固相抽出により一連の生物材料から商業規模で抽出し得ることを報告している。それらは熱エタノール抽出から始めて、次いでヘキサン、次いでヘキサン/アセトン、次いでアセトンを使用する。
【0067】
EPA産生性を高め、同時に特異的極性脂質フラクション中のEPA濃度を上げることができる大規模従属栄養培養を用いて培養した生物体の脂質から、商業的製造規模で、EPA濃厚組成物を選択的に単離することが可能である、と教示する先行技術文献は知られていない。
【0068】
酵素による精製
多くの先行技術文献が、魚油および他の出発原料から、脂質を放出し、濃縮精製した脂質と脂肪酸を含む組成物に到達させる酵素の使用について開示している。本発明者らは、様々なリパーゼおよびホスホリパーゼが脂質を解体し得ることを認識している。例えば、様々な溶媒にもとづく抽出系と結晶化法が開示されているが、それらは特定クラスの脂質または特定の鎖長もしくは不飽和度の脂肪酸の抽出に適している。リパーゼおよびプロテアーゼを含み得るこれらの酵素は、優先的に異なる基質に作用することが知られている。例えば、リパーゼの場合、酵素は脂質のクラス、脂肪酸、および脂質クラス内の脂肪酸の位置に特異的であることがある程度予測されている。酵素の活性と優先性は、温度などの環境条件を変えることにより、また補助因子の添加および固相化などの技法を介して変えることができる。
【0069】
脂質構造において異なる位置にある脂肪酸の局在化を評価するために使用する共通の分析法は、特定の位置に位置する脂肪酸を選択的に加水分解することのできるリパーゼに脂肪酸クラスを接触させることである。当業者の常識が、脂質の割合と標的脂肪酸の局在化の両方、並びに生物材料の脂質リザーバー内の不所望酸の同時局在化またはその欠落が、分析規模での精製過程において重要な局面を構成するという認識を含むことは当然である。しかし、我々の知る限り、これまでの著者らは、藻類極性脂質の選択的酵素による加水分解を介して、少なくとも大規模従属栄養培養にて産生される極性脂質からではない、治療用または予防用組成物の産生方法については開示していない。
【0070】
ガラクトリピドの適用
ウインゲット(Winget)は炎症の予防および治療にMGDG−EPA組成物を局所的に塗布して使用することを教示しているが、リパーゼタイプの、または事実上いずれの酵素もその適用については開示していない。後に、ブルノら(非特許文献11:Bruno et al., Eur J Pharmacol: 524; 159-168 7 Nov 2005)は、高熱性藍藻類から得られるガラクトリピド類、MGDG、DGDGおよびSQDGが、クロトン油誘発マウス耳炎症性反応において、インビボで抗炎症活性を有すると開示している。しかし、n−3HUFAのいずれかが存在するということをその要約には示していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0133】
本明細書に提供する本発明の記載は、純粋に例示のために示すものであって、如何なる方法でも本発明の範囲または適用限界を制限しようとするものではない。本明細書の全般にわたり、文面が特に別意を必要としない限り、「含んでなる」という語、およびその変化「含有してなる」または「含む」などは、定められた整数値または工程または整数値もしくは工程の群を含むことを意味するが、他の整数値または工程または整数値もしくは工程の群を除外するものではないと理解される。
【0134】
EPA産生用の単細胞生物体を培養する殆どの方法は、単一の従属栄養培養にもとづくか、または相当量の光を提供する条件下、実質的には日光または人工的等価光下で増殖する培養にもとづいていた。本発明は新規の培養関連局面を含むものであり、その場合、EPAに富む極性脂質は、大規模従属栄養である培養において中性脂質とともに同時に産生される;そこでの培養は、培養物内部で有意に低い光合成的に活性な平均放射照度を用いて産生させる混合栄養培養である。これらは最適には準光合成(すなわち、10μmolフォトン/m/s未満)であるが、40μmolフォトン/m/sと高くてもよい。
【0135】
本発明は、極性脂質中でEPAの産生性が増大する傾向、およびこれらの条件下で特定の極性脂質クラス内でEPAが局在化するようになる傾向を利用するものである。組成物は、EPA濃厚脂質クラスの引き続く精製を容易にするように提供されるか、またはEPAに富む新規サプリメントに直接取込ませ得る。
【0136】
ガラクトリピドは葉緑体の膜の主要構造成分として取込まれる。ホスファチジルコリン(PC)を含む他の極性脂質は、EPAが葉緑体に転移するのに関与する。特定のタイプの海産藻類は、すべてではないが、光照射した場合、細胞内葉緑体を生成し、光に応答してこれらの光合成脂質を生成すると期待されよう。本発明は光の供給と引き続く光合成脂質の産生との間の非直線関係を巧く利用する。
【0137】
本発明者らは、脂質の中性フラクションが有意な量のEPAを含むであろうことを知っている。この物質はそれ自体で商品価値があると思われ、その脂肪酸誘導体は下記の伝統的なまたは新たな方法により精製して、EPA製品とし得よう。したがって、本発明は置き換えというよりもむしろ中性脂質産生への付加物と見るべきである。
【0138】
低い光レベルは、有機炭素消費が低下するか、またはその使用効率が改善されている場合の範囲にあるが、さらに、戸外培養の使用の場合、技術上および環境関連上複雑であり、また大量の人工光の使用による高レベルの光を供給する場合、それを満足させるために相当するエネルギーコストが必要であるが、そのような技術上の複雑さはない。
【0139】
低光条件下で増殖する大規模従属栄養培養と同様に、さらなる選択は、特定タイプの極性脂質産生を促進するために、栄養枯渇の培養物への誘導である。かかる誘導枯渇はリン酸欠乏であるが、この欠乏は脂質産生をリン脂質から糖脂質にシフトすると期待される。珪藻類におけるケイ酸枯渇は、光合成脂質を蓄積させる手段として本発明により検討される。
【0140】
本発明はEPAの精製を容易にするために、特定の条件下に、特定の生物体中の特定の極性脂質の特別の分子構造を使用する。上記の構造上の特異性と関連して、本発明は精製を容易にするために、立体特異性などの特異的な欲求をもつ特定の酵素の使用を企図するものである。さらに、産生された光合成極性脂質クラスの特異的な生理化学性質は、例えば、ガラクトリピド分子の極性を含め、EPAの有用な投与法を提供する。
【0141】
最後に、本発明はEPAとガラクトリピド濃厚組成物を含む製剤およびその製剤の適用を開示する。
【0142】
培養細胞の起源
本明細書の出願時点で記載された手法に使用されている具体的な微生物は、ササノハケイソウの一種(Nitzschia laevis)である。細胞は要求参照番号UTEX2047として寄託されているテキサス大学微細藻類コレクションから入手した。我々は、匹敵する、または改善された産生率を示すために、着色したセット(光合成機構をもつもの)の大規模従属栄養増殖し得る他の微細藻が存在すると期待する。この時点で、我々は、人工培養条件の強制セット下にすぐれた代謝プロフィールの発現を促進するように設計し、これらのプロフィールをもつ細胞として単離可能な菌株の選択実験を実施していなかった。しかし、我々は(EPA産生に関し)プロセスの効率において測定可能な増幅率が得られると期待した。
【0143】
この時点で、(a)他の微細藻類、(b)選択された微細藻類(上記参照)または(c)遺伝子的に改変した微細藻類(「変種」参照)による試行は実施していないが、このような試行も全て本発明の範囲に含まれる。
【0144】
産生の拡大縮小
微細藻類の大規模商業的培養物は、本発明方法に従って、密接にモニターし、制御された条件下に、何万〜何10万リットルと測定される収容能力を有する容器中で、製造し得る。培養容器の規模と関連する条件および要件の変化(例えば、冷却/加熱、混合、ガス塊転移)については、当業者が予想し得る。
【0145】
EPAのさらなる精製
比較的高レベルのEPAをもつ物質が得られた場合、多くの手段によりさらに精製し得る。これらの手段は、低温度結晶化、イオン性溶媒などの種々の溶媒中の脂肪酸エステルもしくは塩の異なる溶解性を利用する精製プロセス、金属塩を用いる沈殿、選択的浸透膜の使用、脂肪酸もしくはそのエステルのカラムクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、尿素添加結晶化、分別蒸留、分取HPLC、ヨードラクトン化、および酵素による選択的再エステル化である。
【0146】
酵素およびその由来
本発明にて使用する「理想的な酵素」は、もし側鎖がEPAを含んでなるなら、いずれかの極性脂質クラスのグリセロール骨格から側鎖を切り取ることができよう。鎖長に選択性を示す数種のリパーゼが単離されている一方で、我々は鎖長にもとづく絶対的な特異性が証明されている例はないと知る。これらの酵素のいずれもが工業的プロセスには現在利用されていない。
【0147】
多くの既知のリパーゼはSn1位置のみで作用し得る能力を制限されており、Sn1位置で優先的に所望のn−3HUFAをもつ極性脂質の産生と単離が、濃縮へのルートとなることを示唆している。商業的プロセスにおいて使用する特定の酵素の選択もまた、コスト依存的であり、また乳業または製パン業において使用するために、すでにバルクで製造されているそれらリパーゼ型酵素に依存する必要があり得る;該酵素は真菌より作られる1,3特異的リパーゼ型酵素、例えば、アスペルギルス(Aspergillus spp)属に由来するリパーゼ/ホスホリパーゼ、「ベークザイム(Bakezyme)PH800BG」(DSMフード・スペシャリティズ)、またはリゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)に由来するリパーゼ、「ピカンターゼ(Piccantase; 登録商標)R8000」である。工学作製した酵素「レシターゼウルトラ(Lecitase Ultra)」(ノボザイムス(Novozymes))は1,3特異的リパーゼ活性を有するが、上昇温度ではホスホリパーゼA1活性を示す。両方の活性は、極性脂質のSn1位置からの脂肪酸の単離に有用であると思われる。
【0148】
この時点では、取分けホスホリパーゼに注意が向けられていた。しかし、評価されることは、他のリパーゼもガラクトリパーゼも、バイオマスからのEPAおよびEPA含有物質の抽出に関係があることである。明らかに、本発明内で酵素特異性のさらなる開発と最適化の機会はあるが、その理由は酵素にもとづく精製が脂肪酸の物理化学的分離以上に多くの利点をもつからである。DPAからDHAの分離または18:4脂肪酸から18:2脂肪酸分離などの作業は、既存の方法では困難であり、その多くは融点または分子サイズなどの物理化学的因子に依存するため妨げられている。
【0149】
本明細書は、ガラクトリピドEPAに富む微細藻類バイオマスを酵素と接触させることによる比較的純粋なEPAの製造法を開示する。
【0150】
本明細書に開示する商業用プロセスのいくつかの変法においては、使用するいずれもの酵素が、供給品を保存するために、技術上周知の酵素の取り扱い方法を用いることにより表面に吸着させるか、またはさもなくばプロセス内で保持されると思われる。また、選択した酵素についての作業条件の最適化は、濃度、pH、温度、塩の存在、または不所望様式の作用を妨げる競合化合物の存在など、当業者周知の作業条件の利用の結果として、有意に改善された攻撃率とより特異的なタイプの攻撃を提供すると思われる。
【0151】
一般的条件において、極性脂質は、(A)特定のタイプとして単離されるか、または(B)1つの集合群として使用し得る。AまたはBのいずれの場合も、それらは(i)直接使用し、(ii)さらに、脂質の種から脂肪酸を切断することにより、EPA濃厚脂肪酸組成物に加工処理してもよい。さらなるプロセシングの場合、極性脂質フラクションまたはフラクション類は特異的ホスホリパーゼ(または他のリパーゼ)により加水分解可能であり、放出されたEPAは適切な受容体分子が捕捉する。受容体の例は、グリセロールおよびアルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、または長鎖アルコール(ワックスを生じる))である。別法として、EPAは適切な担体型分子(ホスファチジルコリン(PC)など)に、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼ、または他のリパーゼにより移行させ得る。金属塩−膜分離。
【0152】
代表的適用
代表的な適用は以下のとおりである:(i)超高純度EPAおよび活性医薬成分の製造と使用;(ii)非医薬EPA単一治療組成物の製造と使用;(iii)食品、機能食品および食品サプリメントを含むEPA濃厚極性脂質の製造と使用;および(iv)食品または食品サプリメント用の全細胞製品の製造と使用。
【実施例1】
【0153】
N.レビス(N. Laevis)の混合栄養バッチ式培養
上記のように取得したN.レビス種の活発に増殖する細胞を、ストッパー付の500mLエルレンマイヤーフラスコ中、培地200mL中で生成させる。複数のフラスコを用いて大容量の物質を生成させる。対数期または初期定常期の細胞、0.2g/Lを種菌として用いる。温度−光制御増殖チェンバー中、フラスコを約200rpmの回転式シェーカー上に設置し、細胞を懸濁状態に維持し、大気と培地間のガス移行を助長しながら、インキュベートする。温度は20℃に維持する。光は培養液中、平均照度40μmolフォトン/m/sの光合成活性光として供給する;照度は遠地点量子センサーデジタル全天日射計により測定し、培養深度および細胞密度などの条件から計算する。増殖中に培養物の一部を採り、その時点での培養物の乾燥重量を測定する。培養物に熱滅菌したグルコース保存液(400g/L)を、その後の24時間にわたり、予測されるバイオマス産生のための有機炭素要求量を供給するように計画したレベルで、毎日加える。全培養期間中、培養物に加えた総グルコースは、3g/リットルに達した。
【0154】
培 地
標準培地中の栄養素の当初濃度は、典型的に、リットルあたり以下のとおりである:
(a)塩保存液50mlの含有物:蒸留水1Lにつき、NaCl:160.0g;MgSO4 7HO:44.0g;KCl:10.8g;CaCL2:2.04g;KH2PO4:0.8g。
【0155】
(b)以下を含んでなる50mlの窒素保存液 :蒸留水1Lにつき、NaNO3:17g;および酵母エキス:16g。
【0156】
(c)トリス緩衝保存液10ml:この保存液は蒸留水1Lにトリス緩衝液89.2gを溶解して作製する。
【0157】
(d)微量金属保存液5ml;100mlあたり以下を含有する:(NH4)6Mo7O24 4HO:0.556g;CoCl2 6HO:0.046g;MnCl2 4HO:0.500g;Na2MoO4 2HO:0.048g;H3BO3:61.120g;ZnCl2:0.622g;H2SO4(濃縮):18ml。
【0158】
(e)ビタミン溶液2ml:このものは6gの0.1%ビタミンB12、0.01gのビオチンおよび0.01gのチアミンを蒸留水100mlに溶かして作製する。
【0159】
(f)メタケイ酸ナトリウム保存液5ml:このものは24gのNa2SiO3を蒸留水1Lに溶解して作製する。
【0160】
(g)キレート鉄保存液2.7ml:このものは0.81gのFeCl3 6HOを10mlの0.1N−HClに溶かし、10gのNaEDTAを100mlの0.1N−NaOHに溶かして作製する。
【0161】
(h)硫酸銅保存液1mL:このものは9.8mgのCuSO 5HOを蒸留水1Lに溶かして作製する。
【0162】
バイオマス乾燥重量の測定
バイオマス乾燥重量は、次の通りに予め重量測定したガラスファイバーフィルターを用いて測定する。細胞と細胞凝集塊の幅広い均一な分散液とするために攪拌しながら、より大きな代表的サンプルからサンプル10mlを取り出す;培養フラスコは攪拌するために所定の位置に置いたテフロン被覆磁気攪拌棒とともに一様に滅菌する。サンプル10mlを遠心管に容れ、ヘラウス・セパテック・メガフュージ(Heraeus Sepatech Megafuge)1.0中、スイングアウト式ローターで4分間、3000rpmで回転させ、液体を傾斜除去して細胞ペレットを得る。細胞ペレットをリン酸緩衝食塩水で洗い、再遠心する。サルトリウス・グラスファイバー・フィルターに1リットルの脱イオン水を通して洗浄し、真空オーブン中、30℃で一夜乾燥し、重量測定する。真空濾過装置中、予め重量測定したフィルターにサンプル10mlを通し、次いで、60℃のオーブンに2時間放置し、再度重量測定する。乾燥前後の重量差をグラムで100回測定し、リットル当たりの乾燥重量の測定値とする。
【0163】
脂質含有物質の収穫と抽出
この時点では、培養がまだ対数期にあるので、増殖の3日後に細胞を収穫する。脂質含有細胞抽出物は、ビルフとダイエル(Bligh and Dyer)(1959)の方法に従って、フォルフ(Folch)抽出により取得し得る。数個のフラスコからの細胞を併合し、さらに使用するための十分な量の産生を可能とする。
【0164】
全脂肪酸分析
細胞抽出物サンプルの全脂肪酸を分析し、培養物質の組成を同定する。C23:0などの内部標準を反応に加え、細胞の総脂肪酸含量の測定を可能とする。脂肪酸の産生方法は、メタノール中0.5Mメトキシドでの塩基性エステル交換反応と、続くメタノール中、乾燥HClによる酸性エステル交換反応を必然的に伴う。脂肪酸メチルエステルは、ガスクロマトグラフィーによる分析の前に、ヘキサンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥することにより回収し得る。このサンプルは島津2010GC内に含まれる30m×0.25mmIDフェイムワックス(Famewax)(交差結合ポリエチレングリコール)ガラス・キャピラリーカラムにて、オートインジェクションにより分析する。カラム温度を145℃から240℃に50分間かけて上昇させ、さらに10分間、カラムを240℃に放置する。脂肪酸はレステック(Restek)が供給する既知の標準品とともに同時クロマトグラフィーを行い同定する。
【0165】
脂質分離
細胞抽出物はカラムクロマトグラフィーにより、極性フラクションおよび非極性フラクションに分離する。細胞抽出物は小容量のジエチルエーテルに溶かし、ジエチルエーテル中、シリカゲル40g(メッシュサイズ230〜350)を含むカラムに負荷する。ジエチルエーテル10mLとクロロホルム80mLを用いて、トリグリセリドを含む非極性物質を溶出する。さらに、クロロホルム/メタノール(1:1、v/v)10mLおよびメタノール80mLをカラムに加えて、ガラクトリピドとリン脂質を含む極性物質を溶出する。これらの2群の物質は別々に集めて乾燥し、そのサンプルを上記と同じ脂肪酸分析に付す。次いで、極性フラクションはさらに第二のクロマトグラフィー用カラムに付すことにより分離する。カラムはクロロホルム中のシリカゲルから構成され、それぞれ99:1(v/v)、49:1(v/v)、29:1(v/v)、19:1(v/v)、および9:1(v/v)のクロロホルム/メタノールの2倍のカラム容量、次いでメタノールの2倍カラム容量の連続洗液で洗う。さらなる工程は所望により、ガラクトリピドおよびリン脂質を互いに分離することが必要な場合に加える。
【0166】
脂質分子内の特定位置からの脂肪酸のリパーゼにもとづく分離
1,3特異的リパーゼおよびホスホリパーゼA1「レシターゼウルトラ(Lecitase Ultra; 登録商標)」(ノボザイムス(Novozymes)から)を用いて、上記の方法で単離したMGDGのSn−1位置から脂肪酸を切断する。MGDG5mgをメタノール3mLに溶かし、一方、酵素12uを3mLの10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に溶かす。これらを一緒にして60℃で5〜15分間インキュベートし、インキュベーション後に、2mLのヘキサンで3回洗い、産生された遊離の脂肪酸を集める。ヘキサン洗浄液は3mLのメタノールで新たな試験管に集め、その混合物を50℃で2時間インキュベートし、脂肪酸メチルエステルを生成させる。この期間の終末点で、ヘキサン層を除去し、濃縮して、GC上で分析する。
【0167】
結 果
フラスコ培養において72時間後、バイオマスの乾燥重量は1リットルあたり3グラムに達する。脂肪酸は培養増殖した乾燥物質の少なくとも8%を形成する。EPAは総脂肪酸の24%に達する。
【0168】
この方法で増殖したササノハケイソウの一種(Nitzschia laevis)の培養物は、12時間という短い時間で二倍となることを示す。
【0169】
第一のクロマトグラフィーカラムから回収したフラクションを分析すると、大まかに等量の脂肪酸が極性および非極性の脂質フラクションに回収されることを示す。EPAの67%が極性フラクションに局在する。
【0170】
フラクションをGCで分析すると、極性脂肪酸の約1/3が9:1(v/v)フラクションに溶出する。フラクションの薄層クロマトグラフィーは9:1(v/v)フラクションが、ガラクトリピドMGDGのバルクをMGDGの残りとともに含み、他のすべての脂質クラスがメタノールで溶出する。
【0171】
表1(下記)はその左欄に、本実施例に記載した方法を用いて単離されたMGDGの総脂肪酸プロフィールを示し、右欄に加水分解物から回収される脂肪酸の総脂肪酸プロフィールを示す。
【0172】
表1:MGDGからの総脂肪酸および酵素加水分解脂肪酸。数値はGCに負荷した総脂肪酸の百分比である。結果が「ND」(検出されず)と表わされている場合、存在量が我々の装置の検出限界を超えていたことに注意されたい。
【表1】

【0173】
考 察
本方法は、純粋に従属栄養培養にて測定される産生を超えて生起する生物体の極性脂質産生において、有意な増加を示す(75%以上の脂肪酸が非極性フラクションに見られる場合)。
【0174】
純粋な従属栄養培養では極性脂肪酸が約15%に過ぎないのと比較して、実施例では大まかに極性脂肪酸の1/3がMGDGフラクションに含まれる。
【0175】
本実施例において酵素を適用すると、MGDGフラクションの総脂肪酸に比べて、加水分解物から回収される脂肪酸から、EPAが濃厚化され、DHAが排除される。
【0176】
総MGDG脂肪酸の30〜35%のみが本実施例中の加水分解物に回収される一方、実施例中のEPAが本酵素法によて57.0%回収され、MGDGのSn1位置に優先していることが確認される。
【実施例2】
【0177】
N.レビスの大規模従属栄養バッチ培養:
N.レビスのフラスコ培養は以下を除いて実施例1の方法に従って実施する:グルコース5〜10グラムを培養実施の経過に伴って添加する。光は培養液中、平均照度10μmolフォトン/m/sの光合成活性光として供給する。収穫、分離および分析法はすべて実施例1の方法に従う。
【0178】
結 果
72時間後、バイオマス乾燥重量はフラスコ培養1リットルあたり3〜5グラムに達する。脂肪酸は培養で増殖した乾燥物質の少なくとも10%を形成する。EPAは総脂肪酸の少なくとも20%に達する。
【0179】
第一のクロマトグラフィーカラムから得られるフラクションを分析すると、35〜40%の脂肪酸が極性フラクションに回収され、60〜65%が非極性フラクションに回収される。EPAは優先的に極性フラクションに局在する。
【0180】
このフラクションをGCにより分析すると、30〜40%の極性脂肪酸が9:1(v/v)フラクションに溶出する。該フラクションの薄層クロマトグラフィーは、ガラクトリピドMGDGのバルクをMGDGの残りのものとともに含有し、他のすべての脂質クラスはメタノールで溶出する。
【0181】
MGDGフラクションを分析すると、脂肪酸の30%以上がEPAであることを示す。酵素加水分解から回収される物質の内、50〜60%がEPAである。
【0182】
考 察
さらなる脂肪酸は極性フラクションよりも非極性フラクションに回収されたが、極性フラクション中の脂肪酸の量は、光なしで増殖した同様の従属栄養培養からの量よりもなお実質的により高い(50〜200%より大きい)。EPAは、非極性フラクションと比較して、また総従属栄養培養からの極性フラクションと比較しても、より高率の脂肪酸として、極性フラクション中に見出される。
【0183】
有意には、極性クラスに回収される脂質量は混合栄養または光栄養増殖に比べた場合、全体の比としては低いが、大規模従属栄養条件下で改善された増殖率は、極性およびガラクトリピド収率が実施例1のものに等価であるか、またはそれより良いことを意味する。
【実施例3】
【0184】
栄養素の変動および/または準光合成光強度を含むN.レビス培養の「灌流培養」様式
大容量のN.レビス種の活発に増殖する細胞を、18.5リットルの有効な作業能力を有する20リットルの容器中で、密接にモニターし、制御された条件下に、増殖する。容器は「テフロン(登録商標)」で内側を内張りしてあり、攪拌、ジャケット付タンクから構成される。ジャケットは、20℃の内部温度を維持するために必要な熱水または冷水を供給する;温度は内部プローブで感知し、水弁をコントロールするスカダ(SCADA)装置により制御する。機械的シールが一端に6個の羽根をもつラッシュトン(Rushton)羽根車を有する直径19mmの羽根車シャフトを許容し、羽根車は空気噴出口近くに設置された末端から250mmの海洋羽根車である。0.25kWの3相6極モーターが1分あたり100〜900回転でシャフトを駆動する。モーター速度は監視制御装置からのアナログ信号を受容し得る可変速度ドライブにより制御する。加圧空気(1.5バール)は2〜10リットル/分の速度で、滅菌フィルターを通して空気噴出口に注入する。空気流はドウイヤー(Dwyer)のフローメータモデルTF2110により測定し、流速は調整器を用いて手動で調節するか、または「フェスト(Festo)」比例ソレノイドコントローラーにより調節する。同様に、容器からのガスの流出を測定し、調整する。溶解酸素は酸素センサー(ブロードレイ−ジェームス・コーポレーション、アーヴィン、カリフォルニア)により測定し、モーター速度を制御する監視制御フィードバックループにより、約50%飽和度に維持し、空気は小規模に流す。
【0185】
培養のpHは、浸漬pHセンサー(ブロードレイ−ジェームス・コーポレーション、アーヴィン、カリフォルニア)により、閉鎖制御ループ中、必要なアルカリ(NaOHまたはKOHとして)の添加のため、または酸(HClまたは酢酸として)の添加のためにペリスタポンプを駆動させ、pH=8.5(または要すれば別のpH)に維持する。
【0186】
栄養素の濃度は、窒素、ケイ酸、リン、グルコース、および有機炭素(例えば、グルコース)の源となる供給原料を含め、対応するペリスタポンプから無菌的に、所望濃度の無菌保存液を添加することにより、別々に制御する。無菌の基本培地も無菌ポンプにより容器に供給する。培養容量はクブラー(Kubler)レベルセンサーを用いてモニターし、基本培地または栄養素の投入量はスカダ(SCADA)装置で制御する。
【0187】
無菌に関わる予防処置は、エアロックを備え、濾過無菌空気を供給して陽圧とし、培養容器から空気が離脱するような製造環境で操作を実行することである。製造環境に汚染物が偶発的に混入するのを最小限とするように設計する当業者周知のプロトコールをスタッフは理解している。加熱に耐え得る保存液はすべて121℃で15分間、または132℃で4分間、オートクレーブ処理する。残りの媒体は0.2ミクロンのフィルターで濾過する。ポンプ、配管および容器はすべて装置の使用前に蒸気滅菌し、培養物または細胞の外部製造環境との接触はすべて無菌技法に従い、層流キャビネット中で着手する。
【0188】
容器は、容器中の細胞1リットルあたり0.1〜1gの開始時濃度を達成するために、予め蒸気滅菌したマニホールドを介して新たに増殖する培養物を導入することにより植菌する。移動のための原動力となる圧力は、無菌空気による植菌培養物の置き換えを経て供給される。
【0189】
光密度プローブもまた、培養物中に存在するバイオマスの量を示すために、タンク内に浸漬する。培養容器もまた、1つ以上の設定装置を備えるが、その装置は外付けの分液漏斗であり、その中へ、ペリスタポンプの操作により、無菌的に、経時的に、その媒体内の細胞をポンプ移入する。これらの装置は細胞含有培地を分液漏斗にポンプ移送して安定させ、一方同時に、無菌的方法で除去すべき細胞を実質的に含まない培地を消費させることにより機能する。安定装置の底に局在し、安定化した細胞に富む懸濁液を、次いで、第二のペリスタポンプの交互の操作により、培養容器にポンプで戻す。主培養容器中の合計培地容量の減少は、新しい培地で補い、排出産物を容器から取り出し、新たな栄養素を添加し得るようにする。安定装置のサイズと容積は、当業者周知の設計法により最適化し、1つ以上の安定化装置の操作を経て、タンクの総容積が24時間にわたって変化し得るものとし、一方、安定装置中の細胞の滞留時間を最小とする。
【0190】
培養に際し、微細藻類に光を供給する手段は、以下の1種以上である:外部から照射する表面をもつ容器の光学的に半透明または透明な区画の使用、外部から培養物内へ引き込み口を経由して光導体を挿入すること、滅菌可能な光放射装置(例えば、光ファイバー、常套の電球またはLED)を挿入すること。細胞はペリスタポンプなどを用いて、培地内から外部へ、光源に露光するチューブに沿って、ポンプ移送することができる。例えば、人工光線で照射する透明な平坦パネル容器を使用する。主容器と平坦パネルシステムで消費される相対的時間量が、細胞が露光する光量を決定する。
【0191】
例えば、光導体による連続的低レベルの露光は、外部システムでの高レベルの断続的露光よりも好ましい。あるいは、断続的に高強度の光でパルス照射し、培養時間全般で平均低強度となるようにする。
【0192】
ササノハケイソウの一種(Nitzschia laevis)製造の好適な方法では、その培養において、40マイクロモル・フォトン/m/s未満の光合成活性平均照射強度を提供する低強度光を使用する。
【0193】
ササノハケイソウの一種(Nitzschia laevis)製造のさらにより好適な方法では、その培養において、1〜10マイクロモル・フォトン/m/sの光合成活性平均照射強度を提供する低強度光を使用する。
【0194】
バイオマスは増殖の5〜9日後にバッチとして収穫され、超臨界ジメチルエーテル(DME)での抽出に付す。このプロセスでは、最初に細胞を集め、70℃で15分間加熱して死滅させ、内在性酵素を変性させる。次いで、細胞をスプレードライして、10%未満の水分含量の粉末を形成する。超臨界DME(60℃、40バール圧)を次いで使用し、該粉末から物質を抽出し、回収する。DMEを除去するると、タール様抽出物が残り、これが脂質並びに色素および他の細胞性物質を含む。この方法を用いて、乾燥重量の約50%が抽出される。引き続く、超臨界COによる複合体脂質混合物の抽出は、それが非極性物質(超臨界COに溶解)から極性物質(COプロセスにおいて残渣として残る)を分離する作用を有することで実施し得る。脂質を単離する他の様々な方法は当業者既知である。全抽出物または単離した中性もしくは極性脂質フラクションは、自己生得の権利において使用し得るか、または脂肪酸を当業者既知の方法を経て直接の鹸化により回収し得る。さらに、実施例1に記載のクロマトグラフィー法を次いで利用して、必要に応じて、脂質クラスまたは脂肪酸フラクションをさらに精製することができる。
【0195】
特定の極性脂質クラスのSn1位置からの脂肪酸の単離は、該脂質物質をメタノールに溶かし、固定化したレシターゼウルトラ(Lecitase Ultra)のカラムに通すことにより実施する。カラムから流出する物質にヘキサンを添加すると、酵素により加水分解された脂肪酸が単離される。次いで、これらは所望によりさらに精製する。本システムの産生性は1時間あたり、1リットルにつき5〜50mgEPAである。
【0196】
変 種
トランスジェニック生物体
本発明は、限定されるものではないが、藻類、真菌類、および細菌類を含む高等植物細胞、標準的なまたはトランスジェニック生物体を使用することを基本とする。
【0197】
培養条件
可能性のある改善の選択肢は、微生物にその脂質膜中により極性の高いガラクトリピドを産生させるために、ケイ酸塩またはリン酸塩の一方または両方を培地から枯渇させた条件下で、一定期間、該微生物を増殖させ、次いでそれを抽出することからなる。好ましくは、収穫前に、最終の増殖期に、栄養素の限定を培養物に課す。
【0198】
培養物の冷却
培養物はすでに述べたように、摂氏20度以下、培地の凍結点以上の温度に維持するのがよい。
【0199】
EPAが脂質膜をより液状にするように働くという仮説(それが適切であろうとなかろうと)にもとづく1つの選択肢は、微生物を冷却した条件下、恐らく、その脂質膜に脂質として、またはガラクトリピドとして該微生物により多くのEPAを含有させるために、海水の凍結点(−1.8℃)まで冷却した条件下で、一定期間、該微生物を増殖させ、次いでそれを抽出することからなる。好ましくは、収穫前に、最終の増殖期に、冷却を施して培養する。
【0200】
抽出した物質の使用
医療用組成物
(例えば)20%未満のEPAを含み、DHA、AAなどの他の潜在的な拮抗性分子を実質的に含まない治療用組成物が、何故100%純粋なEPA油(エステルは考慮せず)程に有効ではないとするのか、その理由はない。実質的に100%の純度を得ようとする意欲は、DHAなどの「不所望の分子」を実質的に含まないようにしたいとの再表出であろう。従って、(例えば、10〜95%純度のEPA)を受け容れたいとすることは、関連する監督機関を満足させる問題となる。本発明の役割は特定の不純物を排除する問題となる。さらに、EPAを比較的水溶性の形状(または安定な水中懸濁液)でEPAを送達する治療用組成物は、実質的な製剤化の利点をもつ。
【0201】
ガラクトリピドを含むEPA濃厚食品
極性脂質分子中に保持されたEPAに依存する食品、食物サプリメント、機能食品、または治療用製剤を作製する基本は、EPAに富む極性脂質を哺乳動物に経口投与する際に、有意な割合の脂肪酸が腸のリンパ管から血流に吸収されるように導かれ、その結果として第一関門の肝臓代謝を迂回し、従って重要なEPAの生物利用能を提供するということである。
【0202】
さらに、脂質の極性の性質はEPAのこの形状を提供するが、それが脂肪酸もしくはエステルと、または中性脂質と同じようには挙動せず、製剤することと投与することを容易にする。微生物から由来する極性脂質は、魚油抽出物に通常存在するタイプの魚臭を持たない。本発明によるガラクトリピドおよび特定のリン脂質は、特に有用であると認められる;その理由はその高いEPA含量の組み合わせ、他の潜在的なアンタゴニスト分子と不所望の脂肪酸の低含量による。
【0203】
極性炭水化物の頭部グループの親水性が付与するガラクトリピドの特徴的な生理化学的性質が、それらをすぐれた界面活性剤としている。この後者の性質は、一連のEPA単一食品および取分けEPA単一飲料の製造を可能とする;その理由は、ミセルとして分散されるガラクトリピドの能力と、水溶液中の水性油に長時間安定で存在することにある。インビトロの技法は、本発明による条件下で増殖したときに、高いEPA産生性を示すと同時に、商業的に有用な量の極性脂質と、取分けEPAに富むガラクトリピドを蓄積することができる。
【0204】
本発明による培養により製造されたEPA濃厚ガラクトリピドは、様々な物理的形状の一つを有する物質、例えば、溶液、懸濁液(水で実行可能)、またはケーキ、粉末、顆粒、錠剤、ボーラス、ピル、カプセル、またはビーズなどして、保存、輸送および販売用に調製し得る;例えば、粉末の場合、ガラクトリピドを当業者周知の手段により、不活性の粒子(デンプンなどの)に結合するか、またはカプセルに詰めることができる。
【0205】
EPAの酸化を抑制する手段は、窒素などを噴入するなどして包装に含めるとよい。さらに、食品用のマイクロカプセル封入はEPAを保護するために、リン脂質(粗製のまたは精製したレシチン)を役立て得る。該組成物は有効量のEPAに富む抽出したガラクトリピドを含み、直接の、または食品調製の技術処理の後の経口摂取に適している。
【0206】
飲 料
一集団が推奨された毎日の摂取を規定どおりに行うには、殆どの人が飲料を消費するので、飲料がもっとも好ましいルートである。n−3HUFAおよび他のPUFAが酸化分解に影響され易いため、ガラクトリピドをカプセル封入して、光、特に太陽光から保護し、摂取直前に飲料中に放出するようにするのが好適である。あるいは、ガラクトリピド含有液体を不活性ガスとともに噴出させ、EPAと酸素の接触を防止するのが望ましい。炭酸系飲料中の二酸化炭素はガラクトリピドの分散に役立ちうる。ミセルもまた炭酸系飲料の場合に溶解した炭酸ガスを保持することが可能であり、この性質を増強するためにミセルの組成を変更することもできる。特定の事例においては、これらの飲料調製品にグリセロールを添加してガラクトリピドの分散を最適化し、また飲料に対してより望ましい口当たりを提供することが好ましい。あるいは、摂取時寸前に使用者が水で完全なものとするような無水の濃縮物を頒布してもよい。濃縮物内のn−3HUFAの酸化を最小化するための工程では、遮光包装およびガラクトリピドのマイクロカプセル封入などを実施しなければならない。
【0207】
ミルクはまさしく普遍的に消費される飲料であり、販売されている「プレーン」ミルクには多くの加工処理変種がある。EPA−補足ミルクはプロセシングに際して、EPA濃厚ガラクトリピドを加えることにより作製する。通常の操作はミルクを単一プロセスで均一化し、低温殺菌する。EPAが熱にさらされるのを最小とするために、EPA濃厚ガラクトリピドを好ましくはミルクの冷却の間またはその後に加える。
【0208】
スプレッド品
スプレッド品はEPA濃厚物質を包含させたものである。かかるスプレッド品は酵母抽出物などのタンパク質濃厚タイプのもの、または脂肪をベースとするスプレッド品、例えば、アイオリ、バターおよびマーガリンなどであり、そこでの水分は分散相である。製造においてガラクトリピドは脂肪成分または水成分に添加され、分子の極性が溶解性を介助する。スプレッド品はジャムおよびゼリーでもある。EPA濃厚ガラクトリピドは懸濁液の形状でジャムに添加するとよい。さらに固形の調製品はキャンディおよびチョコレートである。EPA濃厚ガラクトリピドは、製造に際し、好ましくはガラクトリピドが熱にさらされないように、加熱後に脂肪可溶性成分として加えるとよい。
【0209】
EPA濃厚固形食品
EPA濃厚ガラクトリピドはアイスクリームに、例えば、選択した長鎖脂肪酸分子および場合によっては担体としてのホスファチジルコリン(PC)とともに加え得る。代替法では、選択的ガラクトリパーゼ/ホスホリパーゼを用いて、選択したPC分子にEPAを移動させることである。長鎖リゾ−ホスファチジルコリンはプロセシングにおいて、また生成物において利点をもつ可能な適切な受容体である。形成される生成物は、等式をその形成に向かって推進する傾向のある酵素系内で不溶であり得る。あるいは、培養物から単離されるEPA濃厚ホスファチジルコリンを使用してもよい。
【0210】
有効量のEPAを含む全細胞調製品
全細胞調製品は、未処理、部分的加水分解処理、または溶菌処理し得るが、これらは直接スプレッド型食品、製パン製品、加工処理料理または他の食品サプリメントに、(i)そのまま、または(ii)均一化(剪断または加圧により)または(iii)タンパク分解を助長する制御された酵素的または化学的加水分解の後に、包含させ得る。全細胞は、一部EPAのストリッピングが起こるとしても、有用なタンパク質と一般に高いHUFAレベルを提供する。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本明細書に記載の発明は以下を提供する:
1.合成が難しく、従って、現時点では主として限られた資源、海産魚油から得られ、さらに、人口の増大と不適切な摂取の結果についてのよりよい認識により要求が増大している化合物(EPAなど)を創出し得る工業的に上方へ拡大可能なプロセス。
【0212】
2.好適な光レベル(もし定常的割合であるなら、またはより高い割合であるが断続的に供給されるなら等価の割合となる、約80μmolフォトン/m/s)は、完全な太陽光のレベルよりも、より安価に人工的手段により供給するか、またはもし日光が使用されるなら、それを供給すること。
【0213】
3.様々な純度(治療用途に適する)のEPAを提供する上記の方法、および重要なこととして、生成物が含む不所望の分子DHAは微量であること。
【0214】
4.大規模従属栄養生物体からEPAを創出する培養方法であって、大規模製造環境において、管理、育成、およびエネルギーの供給が比較的経済的であること。
【0215】
5.EPAとトリグリセリドとの上記の同時製造法であって、治療用と予防用投与のために多くの可能性を開く極性脂質化合物(例えば、ガラクトリピド)内での製造法。
【0216】
6.極性脂質内に有用な量のEPA(栄養的および/または治療的要件の観点で)を含む、許容され容易に摂食可能な剤形。
【0217】
最後に、理解されることは、本明細書に記載の実施例および/または説明に記載した本発明の範囲が、具体的な実施態様に限定されるものではないことである。上記の説明において、既知の等価物をもつ本発明の具体的成分または整数に参照がなされている場合、それらが個々に述べられているとしても、かかる等価物も包含される。当業者は、種々の変更、付加、既知の等価物、および置換が、下記の請求項に述べる本発明の範囲と精神から逸脱することなく、可能であることを認識しよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的または予防的使用のためのエイコサペンタエン酸(EPA)濃厚(rich)組成物の取得方法であって、該方法が、大規模従属栄養増殖(largely heterotrophic growth)の能力、EPAの産生能力、および光合成脂質産生能力のために選択されるタイプの微生物の培養物を使用すること;
該方法が、有機炭素をエネルギー源として使用する条件下で細胞を増殖する培養期(phase)を含むこと;
該条件が、培養物内部で、40μmolフォトン/m/s未満の平均的光合成活性放射照度に相当するレベルで制御照射を使用することと、リンおよびシリコンを含む範囲から選択される栄養素の制限を課すこと;
当該手法が少なくとも1つのEPA側鎖を含む回収可能な極性脂質の量と、EPAに富む組成物を作り出す収穫プロセスとを最大化するために実施するものであること
を特徴とする方法。
【請求項2】
該条件が、培養物内部で、約1〜10μmolフォトン/m/sの平均的光合成活性放射照度に相当するレベルで制御照射を使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
該有機炭素成分を、4〜24時間の期間に、培養物の将来予測される増殖に従って、経時的に増加させ供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該微生物の培養物が、同定された海産微生物を含有してなることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該微生物がササノハケイソウの一種(Nitzschia laevis)(テキサス大学微細藻類コレクションUTEX2047)として知られる海産単細胞珪藻から構成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該微生物が、培養条件下にあるときに、EPAを有する少なくとも1つの側鎖を含む分子を有する回収可能な極性脂質の収率を改善するために選択される微生物の株を含有してなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項4または請求項5または請求項6に記載の方法に由来するEPA濃厚組成物であって、該EPA濃厚組成物が以下の工程:
a)選択した時間に培地から細胞を採取する工程;
b)内在性酵素を変性させるために細胞を加熱死滅させる工程;
c)細胞をバイオマスのケーキに成型する工程;
d)第一の非選択的脂質溶媒でバイオマスのケーキを抽出し、抽出した物質を残渣として溶媒から回収する工程;
e)該残渣を第二の選択的溶媒により抽出して、非極性EPA濃厚脂質組成物が極性EPA濃厚脂質組成物から分離されるようにし、場合によっては、さらに、必要な標準的純度を達成するために、EPA濃厚組成物のいずれかのタイプまたは両方をさらに精製する工程;
からなる方法によって得ることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の方法に由来するEPA濃厚組成物であって、該方法が下記の工程を用いて極性EPA濃厚脂質フラクションから得られる極性EPA濃厚脂質クラスからEPAが加水分解される手法を含むことを特徴とする組成物:
a)Sn1位置からEPAを切断し得る少なくとも1種のリパーゼ型もしくはホスホリパーゼ型酵素に、基質としての極性脂質を提示する工程;および
b)切断後に、遊離もしくはエステル化した脂肪酸としてEPAを分離し、それによって治療用組成物としての使用に、または予防用の使用に適したEPA組成物を得る工程。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の方法に由来する組成物であって、該EPA濃厚組成物をさらに精製するために、分離後に該EPA濃厚組成物を処理加工することを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項7または請求項8または請求項9に記載の組成物であって、該組成物が50〜60%のEPA、5.5%未満のアラキドン酸を含んでなり、実質的にDHAを含まないことを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項7または請求項8または請求項9に記載の組成物であって、該組成物が60〜70%のEPA、4.5%未満のアラキドン酸を含んでなり、実質的にDHAを含まないことを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項7または請求項8または請求項9に記載の組成物であって、該組成物が95〜99%のEPA、1%未満のアラキドン酸および0.1%未満のDHAを含んでなることを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項7または請求項8または請求項9に記載の組成物であって、該組成物が99.6〜99.7%のEPA、0.1%未満のアラキドン酸および0.1%未満のDHAを含んでなることを特徴とする組成物。
【請求項14】
特定の医学的症状または障害に罹患する人の治療のための医薬の製造における請求項9または請求項10または請求項11または請求項12または請求項13に記載の組成物の使用であって、該症状または障害が、限定されるものではないが、糖尿病(I型およびII型)、血糖障害糖尿病関連高血圧、癌、骨関節症、自己免疫疾患、リューマチ様関節炎、関節炎以外の炎症性および自己免疫性疾患、呼吸器疾患、神経性障害、神経変性障害(ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、大うつ病、単極性うつ病、双極性うつ病、強迫性障害、境界型人格障害、出産後うつ病、器質性脳傷害、および外傷性脳損傷などを含む)、腎性および尿路管障害、心血管系障害、脳血管系障害、眼の変性疾患、精神障害、生殖系障害、内臓障害、筋肉障害、代謝障害、前立腺肥大症と前立腺炎、勃起不全と男性不妊症、乳腺痛、男性型禿頭、骨粗しょう症、皮膚科障害、読書障害と他の学習障害、癌悪液質、肥満、潰瘍性大腸炎、クローン病、神経性食欲不振、火傷、骨関節症、骨粗しょう症、注意不足/機能亢進障害、および初期段階の結腸直腸癌、肺および腎疾患、および異常な増殖および発達に関連する障害から選択されるものである組成物の使用。
【請求項15】
請求項9または請求項10または請求項11または請求項12または請求項13に記載のように調製される組成物であって、該組成物が治療上のまたは予防的使用のためにヒトの食事療法サプリメントの形状で調製されることを特徴とする組成物。
【請求項16】
請求項15に記載のように調製され、医学的症状または障害の治療に使用する医薬の製造における有効量のEPAを含む極性脂質の使用であって、該症状または障害が、限定されるものではないが、糖尿病(I型およびII型)、血糖障害糖尿病関連高血圧、癌、骨関節症、自己免疫疾患、リューマチ様関節炎、関節炎以外の炎症性および自己免疫性疾患、呼吸器疾患、神経性障害、神経変性障害(ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、大うつ病、単極性うつ病、双極性うつ病、強迫性障害、境界型人格障害、出産後うつ病、器質性脳傷害、および外傷性脳損傷などを含む)、腎性および尿路管障害、心血管系障害、脳血管系障害、眼の変性疾患、精神障害、生殖系障害、内臓障害、筋肉障害、代謝障害、前立腺肥大症と前立腺炎、勃起不全と男性不妊症、乳腺痛、男性型禿頭、骨粗しょう症、皮膚科障害、読書障害と他の学習障害、癌悪液質、肥満、潰瘍性大腸炎、クローン病、神経性食欲不振、火傷、骨関節症、骨粗しょう症、注意不足/機能亢進障害、および初期段階の結腸直腸癌、肺および腎疾患、および異常な増殖および発達に関連する障害から選択されるものである極性脂質の使用。
【請求項17】
請求項7に記載のように調製されるEPA濃厚極性脂質物質であって、EPAを0.1〜50グラムの範囲で含む予防的な、健康上のまたは食事による日常の健康サプリメントを提供するために、該物質を製剤化することを特徴とする極性脂質物質。
【請求項18】
請求項15または請求項16に記載の予防的な、健康上のまたは食事療法サプリメントであって、該健康上のサプリメントが、ケーキ、粉末、顆粒、錠剤、ボーラス、ピル、カプセル、ロゼンジまたはビーズを含む範囲から選択される固形物質として製剤化され、ヒトが直接摂取するのに適していることを特徴とするサプリメント。
【請求項19】
請求項15または請求項16に記載の予防的な、健康上のまたは食事療法サプリメントであって、該健康上のサプリメントが、飲料としての消費に適する微細に分散されたEPA濃厚抽出極性脂質を保持する(carry)液体物質として提供され、該飲料の範囲が(限定されるものではないが)水、ビール、ワイン、ミルク、スピリッツ、スポーツドリンク、ジュースおよび炭酸飲料を含み、場合によっては少なくとも1種の安定化物質を含むことを特徴とするサプリメント。
【請求項20】
請求項7に記載の予防的な、健康上のまたは食事療法サプリメントであって、該健康上のサプリメントが、溶液、懸濁液、固形塊、粉末、または顆粒を含む範囲から選択される物質として製剤化され、該物質がEPAに富む抽出されたガラクトリピドの有効量を含み、使用時、製造される食品に含ませる上で適合性を有するものであることを特徴とするサプリメント。
【請求項21】
請求項1または請求項2または請求項3に記載のEPA濃厚組成物の取得方法であって、培養物から収穫されるバイオマスのケーキを取得する工程、およびEPA濃厚ヒトまたは動物食餌サプリメントとして使用するための全バイオマスを実質的に調製する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
50〜60%のEPA、5.5%未満のアラキドン酸を含んでなり、実質的にDHAを含まない組成物。
【請求項23】
60〜70%のEPA、4.5%未満のアラキドン酸を含んでなり、実質的にDHAを含まない組成物。
【請求項24】
95〜99%のEPA、1%未満のアラキドン酸および0.1%未満のDHAを含んでなる組成物。
【請求項25】
99.6〜99.7%のEPA、0.1%未満のアラキドン酸および0.1%未満のDHAを含んでなる組成物。

【公表番号】特表2009−542205(P2009−542205A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518026(P2009−518026)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/NZ2007/000172
【国際公開番号】WO2008/004900
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(509003151)フォトンズ コーポレーション リミテッド (1)
【Fターム(参考)】