説明

大規模施設の脱臭法

本発明は、固形又は液状の悪臭物質を開放性で貯蔵している大規模施設を脱臭する方法であって、悪臭物質の表面上の汚染された空気を、その空気中に含まれる悪臭物質と反応するかもしくは該物質を隠蔽する活性剤で処理することによる方法に関する。活性剤は、親水性基を有する架橋されたポリマーからなるマトリクス中に分配されており、そして該ポリマーと一緒にスポンジ状物を形成し、該スポンジ状物から活性剤が緩慢に遊離かつ蒸発される。スポンジ状物は、2つの平行な板(3)の間に挿入されており、これらは悪臭物質の表面上又は大規模施設の周辺を囲って取り付けられており、かつ気流が平行な板(3)の間で通り抜け、そして活性剤が遊離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形又は液状の悪臭物質を開放性に貯蔵している大規模施設を脱臭するにあたり、悪臭物質の表面上の汚染された空気を、その空気中に含まれる悪臭物質と反応するかもしくは該物質を隠蔽する活性剤で処理することによる方法に関する。
【0002】
悪臭物質を貯蔵している大規模施設は、例えば:
− 傾斜した縁部を有し、広さが何百平方メートルであってよい浄化槽。該槽は主に多量の固体を含有する工業廃水で満たされている。
【0003】
− 生活排水及び工業廃水並びに動物利用施設からの排水を浄化する丸い槽を有する浄化施設
− 生活排水及び庭園排水並びに工業沈泥用の堆肥化施設
− 生活排水及び工業廃水が貯蔵されている集積場
− ゴミ選別施設
− 排水集積槽、例えば砂糖工業、農業及び化学工業における排水集積槽
− 港湾及び開水路、特に排水路
− 野外家畜小屋、特に豚小屋
− 様々な排気を伴う大工業施設。
【0004】
前記の施設の表面上の空気は悪臭ガス、例えばアンモニア、アミン及び硫黄化合物で充満している。近隣地域、また更なる周辺地域における臭いの問題及び環境汚染を抑えるために、高価な措置、例えば囲い板、閉空間での貯蔵、煙突及び吸引施設の設置を行わねばならないが、これらはたいてい不十分である。従って効果的かつ迅速に作用する前記の異臭の排除又は少なくともその低減が切望されている。
【0005】
そこから生じる課題は、本発明による方法によって解決される。本発明の対象は、従って前記の大規模施設を脱臭するための方法であって、汚染された空気を、その空気中に含まれる悪臭物質と反応するか又はこれを隠蔽する活性剤で処理するにあたり、その活性剤は親水性基を有する架橋されたポリマーからなるマトリクス中に分配されており、かつそのポリマーと一緒にスポンジ状物を形成し、そこから活性剤が緩慢に遊離され、かつ蒸発される方法である。該方法は、スポンジ状物が2つの平行な板の間に挿入されており、これらが悪臭物質の表面上又は大規模施設の周辺に取り付けられており、かつ気流が平行な板の間でスポンジ状物を通り抜け、そして活性剤が遊離することを特徴としている。
【0006】
WO01/78794号A2は、空気又は閉空間の脱臭のための水不含のゲル体であって、官能化された液状ポリマーを架橋剤により脱臭剤の存在下に架橋させることによって製造されるゲル体を記載している。該ゲル体は、周囲空気と接触するケーシング中に収納されている格子上に載置することができる。気流による脱臭剤の意図的な遊離は対象となってはいない。従って相応の装置を用いても大規模施設は脱臭できない。
【0007】
適当なマトリクスポリマーは、親水性基を有する架橋された重縮合物及び架橋された(メタ)アクリレートポリマーである。
【0008】
マレイン化又はエポキシ化されたポリマーと架橋剤、有利にはポリアミンとからなる縮合生成物が有利である。適当なポリマーは、例えばポリジエンの反応生成物、例えばポリブタジエン、ポリデカジエン及び大豆油と無水マレイン酸との反応生成物、更にオレフィン、例えばエチレンと無水マレイン酸とのコポリマー並びにエポキシ化ポリブタジエンである。有利な架橋剤は、ポリアミン、特にポリオキシプロピレンジアミン及びポリオキシプロピレントリアミンである。その他にも尿素、ポリエチレンイミン並びにトリエチレングリコールが架橋剤として適当である。架橋反応は、活性剤の存在下に及び/又はアルコール溶液中、例えばジプロピレングリコール中で高められた温度で行ってよい。特にポリオキシアルキレンポリアミンに由来する−CRH−O−基が親水性基として作用し、その他にも架橋されたポリマーの無水マレイン酸基及びカルボキシル基又はエポキシ基もしくは−NR−CO−基が親水性基として作用する。
【0009】
他の種類の架橋されたポリマーは、一官能性の(メタ)アクリレートモノマー、例えばヒドロキシエチルアクリレート又はポリ(プロピレンオキシド)(エチレンオキシド)モノメタクリレートと架橋剤としての多官能性の(メタ)アクリレートモノマー、例えばエチレングリコールジメタクリレート又はポリエチレングリコール−400−ジメタクリレートとの共重合体である。架橋された(メタ)アクリレートポリマーの製造はモノマーのラジカル共重合によって行われる。
【0010】
有利なスポンジ状物の製造における出発材料の典型的な組成は以下の通りである:
マレイン化又はエポキシ化されたポリマーもしくは
一官能性の(メタ)アクリレートモノマー: 10〜30質量%
架橋剤: 0.2〜10質量%
水: 0.5〜20質量%
難燃剤: 0〜20質量%
活性剤: 残分
両者の場合において、架橋されたポリマーは、液体及び気体、例えば活性剤を吸収することが可能であり、その際、スポンジ状構造が形成される。架橋されたポリマーは細孔を有する三次元網状構造を有し、その中に揮発性の異物が吸い込まれ、そして吸収されうるので、該ポリマーはスポンジ状に膨潤する。膨潤された状態では、三次元網状構造は、平均して1〜1000nm、有利には3〜200nmの容積を有する基本セルからなる。
【0011】
架橋されたポリマーは本発明によれば活性剤を積載しており、そしてその活性剤と一緒にスポンジ状物を形成する。活性剤は、そこから緩慢に遊離され、そして次いで施設中に存在する悪臭物質、例えばアミン、アンモニア及び硫黄化合物と反応し、該物質を低減又は隠蔽できる。活性剤は、主に液状のアルデヒド、ケトン、アルコール又はエステル、例えばバニリン、オイゲノール、チモール、ゲラニオール、ショウノウ油、シトロネロール、リナノール、メントール、クマリン、シトラール、α−ピネン、ネリルアセテート、リナリルアセテート、ブチルヒドロキシトルエン、C〜C12−アルデヒド、サリチル酸ベンジルエステル及び天然の精油である。本来の化学反応の他に、例えば硫化水素又はアンモニアとアルデヒドとの間で、静電力又はファンデルワールス力によっても結合することができ、それによって認められる臭いは少なくとも低下される。
【0012】
活性剤を、縮合もしくは重合により架橋されたポリマーを製造する際に添加するか、又は架橋されたポリマーを活性剤で浸漬し、更に膨潤させてもよい。活性剤は、スポンジ状物中に10〜90質量%、有利には40〜80質量%の量で含まれることが望ましい。
【0013】
スポンジ状物は、ポリマーマトリクス及び活性剤の他に更に添加物質を、特に水を少なくとも0.1質量%、有利には0.5〜20質量%、特に1〜8質量%の量で含有してよく、更に1〜20質量%の難燃剤、例えば糖類、アゾジカルボンアミド又は臭素化合物並びに燃焼を減らす粉末及び昇華助剤を含有してよい。水は、架橋されたポリマーの製造の際に細孔及びチャネルを形成させ、活性剤が細孔中に容易に侵透でき、そこに保持され、そして均一に再び拡散放出されるようにする。
【0014】
活性剤を、使用される架橋されたポリマー及び場合により水の含分をもって、スポンジ状物から緩慢にかつ均一に遊離され、そしてその作用が少なくとも3日、有利には少なくとも1週間、特に1ヶ月以上にわたり保持されるように調節することが重要である。遊離される活性剤は、悪臭物質と気相中で反応し、かつ/又は不快な臭いを隠蔽することができる。更にスポンジ状物は、気体状の悪臭物質を吸収し、かつそれにより該物質を空気から除去することができる。
【0015】
活性剤を含有するスポンジ状物は、球状、屑状又は顆粒状で使用できる。しかしながら該スポンジ状物は、有利には0.2〜5cm、特に0.5〜3cmの厚さを有する小屑状、板状又は条板状で使用され、目的に応じて格子又は網状物上に載置する。スポンジ状物は、本発明によれば2つの平行な板の間に挿入する。これらの板は、木材、金属又はプラスチックからなっていてよい。その寸法は、有利には5×5cm〜100×100cmであり、板の相互間隔は、2〜20cm、特に5〜15cmであってよい。板の対は全方面で開放性なので、気流は全方面から流通できる。これらの板は、有利には垂直にある支柱で固定されるが、またロープで吊されているか、又は床に無造作に置かれてもよい。
【0016】
これらの平行な板の間を通じて、スポンジ状物に気流が通り抜け、その気流が活性剤を遊離する。主な使用目的においては、自然の風が気流としてはたらき、その際、おそらく平行な板の間でスポンジ状物の抵抗によって空気が圧縮され、そしてそれにより空気と活性剤との間の接触が強められる。
【0017】
これでも不十分であれば、気流をブロワ又はベンチレータによって強めてもよい。遊離される剤は、悪臭物質から放出されるガスと混和され、そしてこれと反応でき、もしくは隠蔽できる。可能であれば気流を強めること、及び活性剤の選択及びポリマーと場合により水との共同作用によって、遊離される剤の量を調節でき、それにより放散位置と暴露位置との間のより大きな距離を超えても十分な臭い低減を達成できる。
【0018】
有利には、平行な板の間にはスポンジ状物が網状物又は格子中に挿入されており、その板は垂直にある支柱上に水平に固定されている。これらの支柱は、大規模施設の周辺で、及び/又は該施設中に分配されて配置されていてよい。例えば多数の平行な板、例えば5個より多く、特に10〜200個の平行な板を大規模施設の周りを環状にか、又はその中に分配して配置する。次いで一方向から風が吹いている(どの方向でも無関係であるが)場合に、悪臭物質はこの方向で施設の表面から押し流されるだけでなく、同時に気流は活性剤をスポンジ状物から遊離し、活性剤は同じ方向に押し流され、そして悪臭物質と反応しもしくはこれを隠蔽する。
【0019】
本発明の更なる対象は、全方面で開放性の平行な板の対からなり、該板の間にスポンジ状物が挿入されており、該スポンジ状物が揮発性の脱臭剤を含有する大規模施設の脱臭装置である。かかる装置を図1及び2に示す。この場合、1は悪臭物質の表面を示し、2は支柱を示し、そして3は平行な板を示しており、その板の間で網状物又は格子4中にスポンジ状物5が挿入されている。
【0020】
実施例1
21gのマレイン化されたポリブタジエン(液状のポリブタジエンと無水マレイン酸との反応生成物 − Revertex社のLITHENE)を5gの水及び79gの活性剤としての精油の混合物を45℃で混合した(混合物A)。94gの活性剤及び7.5gのポリオキシプロピレントリアミン(MG400)を混合した(混合物B)。これらの混合物AとBとを一緒に撹拌した。得られたスポンジ状物を、2cm厚、20cm巾及び20cm長さを有する板に切断し、そして金網上に載置した。この網状物を2つの平行な50×50cm大のプラスチック板の間に10cmの間隔で挿入した。16個の係る板を100m大の浄化槽の傾斜した縁部周りに載置した。
【0021】
実施例2
閉鎖容器中で4gのポリ(プロピレンオキシド)(エチレンオキシド)モノメタクリレートと0.5gのポリエチレングリコール−400−ジメタクリレートとを混合し、そして100マイクロリットルの30%の過酸化水素を注入した。該混合物を30分間にわたり超音波浴中で減圧排気にした。次いで該混合物を開放性の平坦容器中にあけ、そこで10℃で5分間にわたりUV光(290〜400nm、40mW/cm)で5cmの距離で照射した。得られる架橋されたポリマーを3gの活性剤としてのサリチル酸ベンジルエステルで浸漬させた。得られるスポンジ状物を本発明による装置中に取り付けた。100個のかかる装置を支柱で固定し、そしてゴミ集積場に分配して載置させた。
【0022】
実施例3
15gのエポキシ化されたポリブタジエン(Atofina社のPOLY BD)、3gのポリオキシプロピレンジアミン(Huntsman社のJeffamine D400)及び8gの水を70gの液状アルデヒドと混合し、脱ガスし、そして撹拌した。該材料を5mmの厚さで支持体上に塗布し、そして80℃の熱気流で重合させた。
生じた薄板を三層に重ね、20mm巾の切片に切断した。これらを網状物上に載置し、2つの板の間に挿入した。10個のかかる板を堆肥化施設に配置した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明による装置の斜視図を示している
【図2】図2は本発明による装置の側面図及び上面図を示している
【符号の説明】
【0024】
1 悪臭物質の表面、 2 支柱、 3 平行な板、 4 網状物又は格子、 5 スポンジ状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形又は液状の悪臭物質が開放性に貯蔵されている大規模施設を脱臭するにあたり、その悪臭物質の表面上の汚染された空気を、該空気中に含まれる悪臭物質と反応するか又はそれを隠蔽する活性剤で処理する方法において、該活性剤が親水性基を有する架橋されたポリマーからなるマトリクス中に分配されており、そして該ポリマーと一緒にスポンジ状物を形成し、そこから活性剤が緩慢に遊離され、かつ蒸発される方法であって、スポンジ状物が2つの平行な板の間に挿入されており、これらは悪臭物質の表面上又は大規模施設の周辺部に取り付けられており、かつ気流が平行な板の間でスポンジ状物を通じて通り抜け、そして活性剤が遊離することを特徴とする方法。
【請求項2】
スポンジ状物が、有利には0.2〜5cmの厚さを有する小屑状、板状又は条板状で格子又は網状物上に載置されていて、これらが平行な板の間に挿入されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
架橋されたポリマーが、マレイン化又はエポキシ化されたポリマー及び架橋剤としてのポリアミンからなる縮合生成物である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
架橋されたポリマーが、一官能性の(メタ)アクリレートモノマー及び架橋剤としての多官能性(メタ)アクリレートモノマーからのコポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
活性剤が、少なくとも3日の時間にわたり緩慢かつ均一にスポンジ状物から遊離する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
活性剤がスポンジ状物中に10〜90質量%の量で含まれている、請求項1記載の方法。
【請求項7】
活性剤が、アルデヒド、ケトン、アルコール、エステル又は天然の精油である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
スポンジ状物が少なくとも0.1質量%、有利には1〜8質量%の水を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
スポンジ状物が更に難燃剤、昇華助剤及び/又は燃焼を減らす粉末を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
多数の平行な板が大規模施設中に分配されて又はその周辺を囲って配置されている、請求項1記載の方法。
【請求項11】
全方面で開放性の平行な板の対から構成され、その間にスポンジ状物が挿入されており、該スポンジ状物は親水性基を有する架橋されたポリマーからなるマトリクス及び該マトリクス中に分配されて揮発性の脱臭剤を含有する、大規模施設の脱臭のための装置。
【請求項12】
スポンジ状物が網状物又は格子上に載置されている、請求項11記載の装置。
【請求項13】
平行な板が寸法5×5cm〜100×100cmを有し、そして互いに2〜20cmの間隔を有する、請求項11記載の装置。
【請求項14】
平行な板が垂直にある支柱上に水平に固定されている、請求項11記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−501040(P2006−501040A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552554(P2004−552554)
【出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012553
【国際公開番号】WO2004/045657
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(504286427)
【Fターム(参考)】