説明

大規模空間を内部にもつ建築物の屋根構造体

【課題】 開閉式の屋根付大規模構造物の建設において、建設コストが従来のものに比べ非常に安価な開閉式屋根構造をもつ大規模空間を形成する方法を提供することを目的とする
【解決手段】 雨や雪を防ぐことのできる高張力に耐える繊維やシートを表皮基本部材として、それを必要な時に移動させて、屋根の梁構造に保持することで、屋根機能を発揮することを特徴とする大規模屋根構造体を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に大規模空間を有する大規模建築物における、開閉式の屋根構造体の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界中の野球、サッカー、テニス等の競技、あるいはコンサート等の催し物等を行う、内部に大規模空間を有する大規模建築物は、雨天などに対応する屋根構造を持ったものと持たないものに大別される。このような大規模構造物に屋根を付けることは、天候に左右されずにイベントを行うことのできる利点を持つ。しかし、例えば野球場では、屋根により太陽光が導入できないため、人口芝しかグランウンドに使用できず、人工芝は天然芝より足腰に負担がかかるため選手生命の短縮などの問題が生じている。これは、太陽光を導入できる開閉式屋根構造にすることで、その問題は解決できる。
【0003】
それを可能とするため、重い屋根材の全体あるいは一部を動かす技術が開発され、屋根構造体をゆっくり移動することで、それを可能とする大規模構造物が現在建設されている。
【特許文献1】特開平5−302394
【特許文献2】特開平9−235816
【特許文献3】特開平9−317253しかし、このような構造物は、重い屋根の構造体の一部あるいは全部を動かすもので、その構造が大きなだけに、その構造物自身が重くなり、さらに移動しろ分だけの余分なスペースが必要で、大きな駆動力とその制御系が必要であり、何よりもコストも問題が大きく、大きさによるが、屋根より下の構造体の建設コストと匹敵するか、それ以上の建設コストが屋根部にかかり、開閉式の屋根付大規模構造物の建設を断念する事業体は多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するため、建設コストが従来のものに比べ非常に安価な開閉式屋根構造をもつ大規模空間を形成する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、雨や雪を防ぐことのできる高張力に耐える繊維やシートを表皮基本部材として、それを必要な時に移動させて、屋根の梁構造に保持することで、屋根機能を発揮することを特徴とする大規模屋根構造体を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、非常に重い屋根構造の移動などという、高い建設コストのみならず、構造物移動中は危険でもある従来の方法に比べ、非常に建設コストが安価で、軽いものの移動のみですむので移動中の安全性も向上し、屋根の被服材として薄い表皮材を使用するので、昼間は、外部光も一部透過し、内部が明るく、よって省エネルギー効果もあり、さらに軽量で簡単な構造であるので、主支柱や補助支柱が既存の建物の内部あるいは外部に設置できれば、現在屋根の付いていない大規模建築物に、後から設置することもできるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図1から図8に基づいて説明する。
【0008】
図1は、実施例の全体構成図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。大規模空間を有する建築物に本発明を適用したもので、大規模空間を有する建築物底部1の上に、4本の主支柱3と計12本の補助支柱4でドーム型の屋根2を形成し、その各1/4のエリアに、先端が直角となっているシート状の個別屋根開閉部材6を矢印の方向に下方から引き上げて、屋根部を覆う一例を示している。
【0009】
建築物底部1は、野球、サッカー、テニス等の競技、あるいはコンサート等の催し物等を行うゾーン、グラウンドゾーンを中央に有し、その周囲に観客席などを廻らせた、鉄筋コークリート製や軽量鉄骨骨格をもつ建造物である。一般的にその形状は上方から見てほぼ円形、楕円、四角形あるいは扇状の形をしており、観客席の周辺上部となるその上部周辺が大規模空間上の屋根開放開口を形成する屋根構造体の下方周囲部分を構成することとなる。
4本の主支柱3は、建築物底部1の上部であって周囲の4方からその中央上方に向けて延びるよう設けられ、各端部が建築物底部1の中央部分で相互に結合されている。この4本の主支柱3の端部の相互結合部は、大型の中心結合体5として構成され、シート状の個別屋根開閉部材6の固定やその開閉機構その他のための装置の配置などに使用されるものとなっている。また、4本の主支柱3とは別に、シート状の個別屋根開閉部材6の開閉のための12本の補助支柱4が、建築物底部1上部と主支柱3間に配設されている。この図1の場合では、その補助支柱4の方向は屋根開閉部材6の移動方向に平行して配置され、その上端部は、大型の中心結合体5に結合されたり、主支柱3に結合されている。
【0010】
上記の4本の主支柱3によって上記建築物底部1上部の屋根開放開口は4つの個別開口に区画されており、各個別開口が4枚のシート状の個別屋根開閉部材6によって、独立して開閉可能に構成されている。すなわち、個別開口が全開された状態では、個別屋根開閉部材6は建築物底部1の上部周辺の内部に折りたたまれて格納されている。屋根の閉作動に伴い、各個別屋根開閉部材6は、図1に矢印で示すように、補助支柱4に支持されながら、主支柱の中央結合部、中心結合体5に向けて引き上げられ、最終的に、2本の隣接する主支柱3と建築物底部1の対応する周辺上部とで画されるエリアを全閉する状態まで引き上げられ、全閉の状態で個別屋根開閉部材6の周囲が個別開口の周辺の屋根構造体、すなわち主支柱3と建築物底部1に固定される。
各個別屋根開閉部材6の全体の形状は、各個別開口の形状に相当したものとなっており、この実施例では、平面で見れば1/4扇形、厳密に言えば1/8球面状をなしている。
個別屋根開閉部材6は、図示を省略したが、ケプラー繊維などの高張力に耐える繊維を含む化学繊維等で織った布もしくはフィルム状のシート部材からなる表皮で、その構成は、1枚でも、内部に吸音効果、もしくは、断熱効果のある充填材を挟んだ多層部材として多数枚で構成することもできる。全体として折りたたみ可能なあるいはロール状に巻き込み可能な、シート状の可撓性部材として構成されている。
【0011】
各主支柱3は、建築物底部1が建設されている地面下から、建築物底部1を通して延びている場合や、建築物底部1の再上端から延ばされている場合もある。その主支柱3の構造は、できるだけ軽量で強度があることが望ましく、金属製あるいはカーボン繊維FRP製などのパイプが望ましく、パイプであれば、強度に影響を与えない範囲で、引き上げワイヤー7(後述)などを内部に通すこともできる。その断面は、強度の関係からは円あるいは楕円状が望ましいが、様々な取り付け具などを配置する上では、矩形状で強度が出ればそれでも適用できる。そのほか、雨樋の役目を果たさせる意味で、上記の様な構造に、雨よけ機能のある部分を結合するか、最初からその様な構造を組み入れた形状にしても良い。また、すでにある建造物にも、後で屋根構造を持たせる場合は、主支柱3を建物周辺の地盤から、建築物底部1上端部と一部を接して延ばすことで、後付けでの屋根構造の施工も可能となる。
【0012】
補助支柱4は、主支柱3より細く、一般に、建築物底部1の上端部から延ばすことが望ましいが、例えば、すでにある建造物に、後で屋根構造を持たせる場合は、補助支柱4も建物周辺の地盤から、建築物底部1上端部と一部を接して延ばすことで、後付けでの屋根構造の施工も可能となる。その補助支柱4の構造は、前記の主支柱3の構造とほぼ同じで良いが、さらに、シート状個別屋根開閉部材6をガイドする為に、そのガイド機構を上面や、側面に結合することが必要である。
【0013】
各支柱の結合中心部には、大型の中心結合体5を配しており、最終引き上げ時に、シート状個別屋根開閉部材6上端部の支柱結合部に空間的余裕をもたせ、雨漏りなどの無いように配置するとともに、引き上げワイヤーなどの為の固定滑車11(後述)の設置を始め、この裏面に、球場などであれば、テレビカメラや照明装置などを配することもできる。この図では、屋根開閉部材6は、屋根部の全面積の1/4ずつをカバーするが、これが3分割されて1/3ずつでも、4分割より多くても構わない。更に、例えば半分が、固定式のテントの様になっていたり、構造物で覆われていて、残りを、この様な方法で、開閉式でカバーすることも可能である。
【0014】
図2は、図1の様な場合の、シート状の個別屋根開閉部材6を、主支柱3と補助支柱4に沿って引き上げる方法の1例を示したもので、屋根開閉部材6の端部に、引き上げワイヤーなど線状部材7の固定点や、引き上げ用滑車10を配置し、数本の引き上げワイヤーなど線状部材7を、上部固定滑車11を介して、ワイヤー引き方向を変え、それぞれに対応した線状部材巻き取りドラムとその駆動体9(建築物底部1の上部に配置されている)により巻き取ることで、屋根開閉部材6を引き上げる様子を示したものである。このときや、屋根開放時に、屋根開閉部材6を引き下げるときや、引き上げるときの張力調整の為に、屋根開閉部材引き下げ・張力調整用ワイヤーなどの線状部材8を配している。この引き下げ・張力調整用ワイヤーなどの線状部材8の屋根開閉部材6への結合点は、屋根開閉部材6を折りたたんで、建築物底部1の上端に収納する場合は、その折り目を中心に配しておくと、一定の折りたたみになる。この方法は、解放時に若干ワイヤー類が沢山見える欠点があるものの、これも、ワイヤー類を最後は支柱側にたくる事ですっきりし、この方法はもっとも単純で、信頼性の高い方法の一つである。
【0015】
この様な方法では、ワイヤーなどの線状部材7で、シート状の個別屋根開閉部材6を引き上げ、その辺縁を最後に雨漏りの無い様、主支柱へ結合する必要が生じる。その方法の一例が図3である。これは主支柱の構造を、雨漏りの無いよう、一部をシート側に延ばした形状になっており、シート辺縁を迎え入れられるようなポケットが作ってある。シートは、最終的に引き上げられ、最高点に達すると、後は主支柱の近くに存在するシートの端部の辺縁部をどうするかが残っている状態である。それ以前から、シート辺縁部は、ワイヤー7で十分引っ張られており、それが、最終的には、図3に書かれたポケットのような部分に、だんだんと入ってゆくことになる。入ってゆく時に、スムースに入って行く様にするためと、さらに入って来た後、このシート状の個別屋根開閉部材6が、シートに接触して、密封性を高める為、そのポケットの入り口は、ラウンドして開いた形状をしており、かつ、その表面は軟質滑面保護部材13でカバーされており、スムースで密着性の高いコンタクトが、シート状個別屋根開閉部材6との間になされるように配慮されている。集中豪雨などの大雨の時に、シート生地に、予想外の張力がかかり、破れる可能性もまったく無いわけではない。この様に密封性を配慮するのは、その様な時に、球場の内圧を上げることで、シートが一時的な重みに耐えられるようにもするためでもある。そのときには、シートと支柱間の密着が重要な鍵となるからである。しかし、シート状の個別屋根開閉部材6の素材を、ケプラー繊維などの高張力に耐える素材で作れば、屋根を流れる雨くらいの重量負荷には耐えられるケースが多いと考えられる。ベタ雪のような接着性の高い場合や、集中豪雨の様な天然現象の場合のみ、大型建築物1の内部空気圧を上げる事が対応として考えられる。
【0016】
図4は、図2のように、沢山のワイヤーなどの引き上げ用線状部材7で、シート状の個別屋根開閉部材6を引き上げるのでは無く、補助支柱4に沿って、位置精度高く引き上げる時の方法の一例を示している。後に図6で述べる方法などのガイド機構を使ったり、あるいは、カーテンレールのように、シートの一部が、補助支柱の溝に沿って、ワイヤーなどの線状部材7により引き上げるようにすることもできるが、この図では、補助支柱3本の上に配されたガイドにそって、シート状の個別屋根開閉部材6が、ワイヤーなどの線状部材7により引き上げられる機構を示した。引き上げの時には、補助支柱4の上端部の主支柱3との結合部に配された固定滑車11で、引き上げ方向を下方に変えられ、それぞれに対応した線状部材巻き取りドラムとその駆動体9(建築物底部1の上部に配置されている)により巻き取ることで、屋根開閉部材6を引き上げる様子を示したものである。最終的に引き上げられた時には、この場合は、二つの主支柱3と、シート状の個別屋根開閉部材6が建築物底部1に接合されている辺縁で囲まれる部分が、閉鎖空間を形成する。この場合も同様であるが、引き下げられる時は、シート状の個別屋根開閉部材6は、屋根下端部に、この図の様に折りたたまれるか、ローラーなどに巻き取られるかされ、いつも再現性よく収納されることを前提にしている。引き下げワイヤーのシートへの取り付け位置は、シートを引き下げて折り曲げる位置になるように配慮する必要がある。そして、収納後は、直射日光や風雨にできるだけ、さらされないように、また、暴風雨などの場合は、屋根を開けたままにするが、降りたたまれたシートが風などで巻き上がらないように、収納ハードカバーが設置される方が好ましい。
【0017】
図5は、扇状にシート状の個別屋根開閉部材6を屋根部に展開する方法を示す。シート状の個別屋根開閉部材6は、最初は屋根開閉部材巻き取り収納室14に収納されており、それから補助支柱4に設置されたガイドに従って、主支柱中心結合体5を中心に扇状に展開して、屋根部を覆う。この場合は、シート状の個別屋根開閉部材6が覆う閉鎖空間は、シート状の個別屋根開閉部材6が最終的に結合する主支柱3と、シート状の個別屋根開閉部材6の下端部(建築物底部1の上端と結合)されるエリアとなる。この様な屋根開閉部材6の展開は、屋根の再下端部から、斜め方向に出て行き、屋根部をその方向ではちまきの様に覆っていき、最後に全部を覆うやり方もある(図省略)。
【0018】
この様な、支柱に設置されたガイド機構の一例を図6に示す。この図では、ワイヤー16に等間隔で結合された屋根開閉部材引き上げ引き下げ摺動ガイドブロック15が、屋根開閉部材6が、そのしかるべき位置に、固定ピン19や固定プレートに縫いつけられて(図省略)結合され、通常はワイヤー部の弾性で折りたたまれているが、これが引き上げられると、導入ガイドレールから、補助支柱4の上に固定された、ガイドブロック摺動固定滑車17とガイドワイヤー摺動固定滑車18で作られる空間内にガイドされ、次々にその線に沿って、シート部材6は引き上げられて行く。この様な機構は、図4の様に、補助支柱に配されたこの様な機構によって引き上げられるときも、図5の様に、横方向に補助支柱に沿って、この様な機構で引かれて行くときも、同様に使用することができる。この方法は、複数本のガイド機構の設置された補助支柱なり支柱なりの間でシートの張りが一定となり、最後にシートを全体で張ることをしなくても、ある程度の張力でその間はシートが張りをもって覆われる点である。
【0019】
その他にも、カーテンレールの様なやり方で、補助支柱上に溝を形成するか、レールを設置し、カーテンレールの中に入る駒に相当するものをシート状の屋根開閉部材6に固定して、シートの移動をガイドすることもできる。そのほかに、自転車のチェーンのように、方向性のある線材に、シート状の屋根開閉部材6に点なり線状に固定して、シートの移動に方向性を持たせることもできる。あまり重たくなると、屋根材の痛みが早くなり、できるだけ軽量な素材で形成することが望ましい。
【0020】
この様にして、引き上げられたり、あるいは図5の様に、横方向に展開されたのち、その辺縁部の固定をなさなければ、風雨により、雨漏りがする。その為には、図3の様に辺縁を何カ所かで引っ張り、固定することも可能であるが、さらにしっかりした固定の仕方は、ファスナーの様に、シート状部材6を、支柱に、しっかりと固定することである。図7は、その一例を示し、シート辺縁は、例えば一本のワイヤーをシートが往復するようにして、引っ張り強度に対抗できるように形成する。その端部に配されたワイヤーを等間隔にくさび形の屋根開閉部材辺縁固定用くさび型位置固定具21が結合されている。全部のシートの展開が完了すると、下端から誘導ガイドレールに乗って、主支柱3上に固定された、ガイドレール25の中で、ローラー26により移動する摺動式の屋根開閉部材辺縁固定用くさび型位置固定具を固定する固定爪ロックおよび開放装置23が、このシート状の屋根開閉部材6の辺縁部をローラー27で、支柱側にたぐり寄せながら進んで行き、同時に、沢山のローラー27のうち、後半のローラー27と支柱との間隔が狭くなったローラー位置で、しっかりと支柱側に接近させられた屋根開閉部材6辺縁のくさび型位置固定具21に、固定用の固定爪22が降り、ロックされる。この摺動式固定爪ロックおよび開放装置23は、どんどん上に引き上げられるとともに、だんだんと上部の辺縁も支柱に固定して行くことになり、最終的に、シート状部材6の辺縁部は、まるでファスナーのようにすべてロックされて、ほとんどの暴風雨でも耐えられるくらいの、確実な支柱への結合がもたらされる。
【0021】
屋根開閉部材辺縁固定用くさび型位置固定具21を屋根開閉部材6辺縁に配置する仕方も、色々考えられ、もっと間隔を狭めて、小さいものを多数配置することも、あるいは、ワイヤーの折り曲げにも対応できる、重なり合った構造で、お互いがつながった連続的な構造にすることもできる。あるいは、ワイヤー系をすこし大型にして、その円周部に、接合する結合ピンが、屋根開閉部材6と支柱間を結合「ロックすることも考えられる(図省略)。このような、シームレスな結合も、摺動式の屋根開閉部材辺縁固定用くさび型位置固定具を固定する固定爪ロックおよび開放装置23と同様な器具で、連続的に、支柱に屋根開閉部材6を結合することが可能である。
【0022】
辺縁を開放するには、この摺動式固定爪ロックおよび開放装置23を逆方向に動かし、移動と共に、そのロックピンがはずれ、辺縁固定用くさび型位置固定具21が開放されて行く。そしてその後、シート状部材6は、補助支柱のガイドを伝って、屋根開閉部材引き下げ・張力調整用線状部材7で引き下げられ、折りたたまれるなり、巻き取られるなりして、収納される。最後に、収納ハードカバーがそれを覆い、一連の収納作業が終了する。雨天の影響を受けないので、図8のように、内部に、巨大スクリーン29を、ワイヤー28を使って設置し、超巨大映画館に大型建築物1を一時的に変身させることも可能である。
【0023】
本発明でもたらされる一例として、超低コストで建設できるドーム球場の内部の例を図8に示している。空の色とほぼ同じ青色に塗った主支柱3や補助支柱4,そして、同じ青色素材で作られたシート状屋根開閉部材6で形成される屋根は、薄いので、日中は明るく、照明のいらない爽快な空間を形成する。開閉式であるので、イベント時以外は屋根を開け、日光を取り込み、天然芝を育て、それをグラウンドに使用することができ、選手の足腰の負担になる人工芝を使用しなくても良い。この様に、天候に影響されないお陰で、野球やスポーツでは、観戦ツアーを企画することもできるようになり、内部に先述の超巨大スクリーンを設置することもでき、スーパー映画館としても、またコンサートや展示会、大規模集会などの、イベントも招致でき、稼働率は飛躍的に上がり、採算性も大幅に向上する。従来の屋根構造体が移動する高コストなドーム技術では想像できなかった世界がそこには実現する。低コスト建設費、高稼働率であれば、そこをフランチャイズにする球団などのスポーツ組織の経営も改善し、社会の様々な活性が引き上げられる事になる。
【0024】
また、本発明によれば、既設の施設の運営が天候が原因で困っている時に、後付けで、しかも安く屋根構造を設置することができ、例えば、申請時現在屋根がなくたびたび雨で中断を余儀なくされるウインブルドンテニスコートをはじめとして、世界中に、本発明へのニーズがある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の基本的な構成図であり、(a)が大規模空間を有する建築物の上から見た図、(b)が横から見た図である。図中の矢印は、個別屋根開閉部材を引き上げる方向を示す。
【図2】シート状屋根開閉部材を、引き上げ用ロープやワイヤーなどの線状部材で引き上げる方法を示した図である。
【図3】シート状屋根開閉部材を、引き上げ用ロープやワイヤーなどの線状部材で引き上げた後、主支柱に雨漏れないように固定する方法を示したものである。(a)は断面図、(b)は横から見た図
【図4】シート状屋根開閉部材を、補助支柱にもうけられたガイドを使って、位置精度高く、引き上げ用ロープやワイヤーなどで引き上げる方法を示した図である。
【図5】扇状に個別屋根開閉部材を屋根部主支柱、補助支柱に沿って覆う方法を示したものである。(a)が大規模空間を有する建築物の上から見た図、(b)が横から見た図である。
【図6】図4あるいは図5において、個別屋根開閉部材を屋根部補助支柱に沿って精度良く移動させるときに用いるガイド機構の一例を示したものである。(a)は横から見た図、(b)は断面図
【図7】図4あるいは図5において、個別屋根開閉部材を展開した後、その部材の辺縁部を雨漏りしないように、主支柱に結合する方法の一例を示したものである。(a)は断面図、(b)は横から見た図
【図8】本発明で実現した野球場(内部)の一例である。屋根を形成できるため、図下の方にある超巨大スクリーンをつり下げ方式で、簡単に設置することもでき、超大型イベントや大型映画館としても経営できることも示した。
【符号の説明】
【0026】
1 大規模空間を有する建築物底部
2 大規模空間を有する建築物屋根部
3 主支柱
4 補助支柱
5 主支柱中心結合体
6 シート状部材を含む個別屋根開閉部材
7 屋根開閉部材引き上げ用線状部材
8 屋根開閉部材引き下げ・張力調整用線状部材
9 線状部材巻き取りドラムとその駆動体
10 滑車
11 固定滑車
12 ワイヤーホルダー
13 屋根開閉部材辺縁収納部用・軟質滑面保護部材
14 屋根開閉部材巻き取り収納室
15 屋根開閉部材引き上げ引き下げ摺動ガイドブロック
16 屋根開閉部材引き上げ引き下げ摺動ガイドワイヤー
17 ガイドブロック摺動固定滑車
18 ガイドワイヤー摺動固定滑車
19 屋根開閉部材固定ピン
20 雨よけ辺縁部
21 屋根開閉部材辺縁固定用くさび型位置固定具
22 21固定具の固定爪(ロック機能付き)
23 摺動式の22の固定爪ロックおよび開放装置
24 23を摺動するための移動用ワイヤー
25 23を摺動するためのレール
26 レール摺動用滑車
27 22のロックセット用滑車
28 巨大スクリーンつり下げワイヤー
29 巨大スクリーン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
野球、サッカー、テニス等の競技、あるいはコンサート等の催し物等を行う内部に大規模空間を有する大規模建築物の開閉式の屋根構造であって、上記大規模空間上に屋根開放開口を形成する屋根構造体と
上記屋根開放開口を開閉するシート状の屋根開口開閉部材と、屋根部材を、上記屋根開放開口が開閉するよう移動させる、開閉駆動手段とを備えたものにおいて、上記屋根構造体が上記大規模空間の周囲から同空間の上部に向けて延びる複数の主支柱を有し、該主支柱によって上記屋根開放開口が複数の個別開口に区画されるとともに、各個別開口には、各個別開口を開閉する個別屋根開閉部材と個別屋根開閉部材が個別開口を閉じた状態で個別屋根開閉部材の位置を保持する補助支柱が配置され、該個別屋根開閉部材は、個別開口を開放した状態で上記主支柱もしくは個別開口周囲の屋根構造体に畳まれもしくは巻き取られた状態で保持され、開閉駆動手段によって閉作動するとき補助支柱に案内されて移動すべく構成され、かつ、該個別屋根開閉部材が個別開口を全閉したとき個別屋根開閉部材の周縁を屋根構造体の個別開口周縁に固定する固定手段を設けたことを特徴とする開閉式の屋根構造。
【請求項2】
上記補助支柱が個別屋根開閉部材の開閉移動方向に沿って配置され個別屋根開閉部材に取付けられた位置保持手段を開閉移動時案内すべく構成されるとともに、上記固定手段が主支柱に取付けられ個別屋根開閉部材の縁部を全閉時保持固定し開作動に先立ち開放するものであることを特徴とする請求項1記載の開閉式の屋根構造。
【請求項3】
複数の主支柱が大規模空間の上部で相互に結合され、上記個別開口がほぼ三角形もしくはほぼ扇形の形状であり、個別屋根開閉部材の全開から全閉への移動が三角形の底辺もしくは扇形の円弧部分から主支柱の結合部である頂点に向けて移動するよう構成されるとともに、補助支柱が前記頂点部分に一端があり個別屋根開閉部材の移動方向に沿って伸びる長補助支柱とこの長補助支柱に同間隔で配置された少なくとも2本の短補助支柱を設けられたことを特徴とする請求項2記載の開閉式の屋根構造。
【請求項4】
複数の主支柱が大規模空間の上部で相互に結合され、上記個別開口がほぼ三角形もしくはほぼ扇形の形状であり、個別屋根開閉部材の全開から全閉への移動が三角形の側辺もしくは扇形の半径部分から他方の側辺もしくは扇形の半径部分に向けて移動するよう構成されるとともに、複数の補助支柱が三角形の底辺もしくは扇形の円弧と並行的に相互に同間隔を持って設けられたことを特徴とする請求項2記載の開閉式の屋根構造。
【請求項5】
個別屋根開閉部材は化学繊維等で織った布もしくはフィルム状のシート部材からなる表皮と、その内部に配置された吸音効果、もしくは、断熱効果のある充填材とを備え、可撓性部材として構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の開閉式の屋根構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−249864(P2006−249864A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70797(P2005−70797)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(501267173)
【Fターム(参考)】