説明

大譜表の習得、及び、ピアノ演奏能力教習装置。

【課題】 大譜表の読譜と、簡単な鍵盤楽器演奏を習得することを目的とするアミューズメントシステムを提供する。
【解決手段】 電子鍵盤楽器を、コンピューター・ゲームの操作機器として使用することで、楽譜を使用した鍵盤楽器演奏の習得を支援する。コンピューターに接続したディスプレイに表示する楽譜や、ゲームの操作機器としての鍵盤の一部を2色で彩色し、楽譜と鍵盤の関係を平明にした。楽譜に大譜表を使用することで、演奏できる音域が拡がり、演奏によって得られる音響が充実するとともに、ゲームから鍵盤楽器演奏への移行を容易にした

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鍵盤楽器の読譜と演奏能力を指導するゲーム装置、及び、その方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2000−206963
【特許文献2】特開2004−194955
【特許文献3】特許公表2005−507095
押鍵すべき鍵盤を光などで直接示すことにより演奏をガイドする電子ピアノ、打楽器を演奏する技術を競うコンピューターゲームなど、楽器演奏に関してコンピューターを利用する装置はよく知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
押鍵すべき鍵盤を直接光らせたり、間接的に映像で表示することで、演奏をガイドする電子ピアノや、楽譜を表示するためのディスプレーを持った電子ピアノ、打楽器を演奏する技術を競うコンピューターゲームなど、楽器演奏に類することを行うためにコンピューターを利用する装置はよく知られている。しかし、これらの方法では、簡単な演奏であれば辛うじてできたとしても、鍵盤と楽譜との関連を理解することはできなかった。
【0004】
大譜表の読譜は非常に難しく、ピアノ習得の苦痛の最大要因になっている。その対策として、様々な、楽譜を読まずにピアノを弾く工夫が、教育現場でも楽器の開発面においてもなされてきた。しかし楽譜を使用せずに未知の曲を弾く事は不可能であり、習った曲であっても忘れてしまえば確認はできない。したがって、ピアノを演奏する能力を習得する過程において、特に古典音楽を演奏する場合、大譜表を読譜する能力は不可欠である。それにもかかわらず、読譜能力の習得を支援する決定的な方法は現れなかった。この発明はピアノ譜の教習を簡略化し、習得を容易にする事を課題とする。
【0005】
読譜能力を習得しても、必ずしもピアノを演奏できるわけではなく、実際に指を動かす練習は必要不可欠である。難易度の高い曲の演奏を習得するには、それだけ厳しい練習が要求される。この発明は、ゲームの常習性をピアノ演奏の習熟に応用することで、ピアノ練習の苦痛をアミューズメントに変換することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
楽譜を読んでそれを演奏する上で最も基本的な要素は、五線と音符のたまによって示される鍵盤と、鍵盤楽器上の押鍵されるべき鍵盤を照合することである。その問題を解決する為には、楽譜は縦書きされた方が、実際の鍵盤と視覚上照合しやすい。
【0007】
その上、実際の鍵盤の五線に対応する鍵盤を色付けすることによって、視覚的に鍵盤上、五線譜を認識させる。ト音記号の五線、ヘ音記号の五線に当たる鍵盤をそれぞれ色付けすることで、大譜表は一層、鍵盤上で視覚的に認識されやすくなる。しかし、大譜表の、線に対応する鍵盤は10本で、楽譜に不慣れな者にとっては認識が難しい。これを解決するために、五線のうち内側の3本を異なる色で表示する。それに対応する3本の鍵盤にも楽譜上表示された色を施す。その結果、大譜表であっても意識すべき鍵盤は6本となる。
【0008】
初めは、上記の6本の線上の音符を使用した曲を教習する。ト音記号上の上記の3本上の音を同時に鳴らすとGの和音となり、習得の困難な、和音の読譜の教習としての効果も期待できる。
【0009】
ソプラノ譜表とバス譜表の間の空隙は、実際の鍵盤の形態に基づき、線1本分とする。
【0010】
この方法で、従来の教授法より楽譜の習得がはるかに簡略化されるが、意欲の無い者にとってはまだ苦痛が残る。それを解決するために、単純なゲームを活用する事は有効な方法である。ここで、特にコンピューターゲームの創成期より存在したシューティングゲームをこれに応用する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 本発明の実施の様態の代表例。
【図2】 ゲームプログラムの動作の概略を示すフローチャート。
【図3】 コンピューターがディスプレーに表示するゲーム画面の主要部分の一例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この課題を解決するために、映像ディスプレイ、及び記録媒体読取装置を備えたパーソナルコンピューター、又はコンピューターゲーム装置と、MIDIなどによって接続された電子鍵盤楽器を使用する。あるいは、コンピューターと大型のディスプレーを電子鍵盤楽器に内蔵させる。
【0013】
コンピューターには、五線に見立てたコース上を音楽の進行に合わせ動く標的が、定められた範囲に入っている間に射的する、という内容のシューティングゲームがインストールされている。
【0014】
標的は、音符の意味を持っており、標的の進行するコースにそれぞれ割りつけられた電子鍵盤楽器の鍵盤を押鍵することで標的を射撃する。その標的は、実際の楽譜と鍵盤の関係を踏まえて、上方にスクロールしなければならない。その上、射撃操作を正しく行うと音楽の演奏ができるように標的を配置する。
【0015】
鍵盤を押すと、ディスプレーに表示された楽譜上の、押鍵した鍵盤に該当するコースが光るなど、変色する。それにより、ゲームのプレーヤーは、押した鍵盤が楽譜上のどの位置に該当するのかを認識しやすくなる。
【0016】
ト音記号、ヘ音記号、それぞれの五線の中3本の示す鍵盤を同時に押すことで、ゲーム開始とする。その動作で、左右の手の、それぞれ3本の指の準備ができることとなる。これにより、和音の演奏の基本を教習することができ、同時に、鍵盤を複数の指で扱う事に慣れる効果がある。同時に、意思に反してゲームが始まることを避ける効果がある。
【0017】
初歩の段階ではその3音だけを用いた曲を使用する。習熟度に応じて使用鍵盤数を増やしていくが、既存のコンピューターゲームの操作ボタンの数が、片手当り5、乃至6であることを考慮すれば、次の段階ではまだ使用音域を拡げず、間の2音を含めた5音を使用する。使用する音の数は少なくても、最初の段階からヘ音記号の音域を使用することで音響が充実する。
【0018】
複数種類の標的を設定する。黒い標的は瞬間的な押鍵で破壊できるが、白い標的は長い押鍵が必要であるように設定する。これは、楽譜上の短い音価の音符の黒いたま、長い音符の白いたまの教習に有効である。
【0019】
ディスプレイ上の楽譜は、基本的に演奏するべき速度でスクロールする。予備段階として、ゲームのスピード、つまり演奏のテンポは可変であることが望ましいが、上記の動作を、曲の拍子の回数繰り返すことでテンポの設定が出来れば、なお利便性が高まる。同じように、正しい鍵盤を押すまでスクロールを待つ機能を持たせる事で習得はより容易になる。
【0020】
小節線に相当する線を表示する機能や、曲の一部分を指定して繰り返しゲームを実施できる機能、ト音記号、ヘ音記号をそれぞれクローズアップしてゲームを実施できる機能を持たせることで効率的な練習が可能となる。
【0021】
縦書きの楽譜が習得できたと思われる段階で、本来、読譜に必要とされる横書きの楽譜に移行する。準備段階として、左に45°楽譜を傾ける段階を用意することも効果がある。横書きの状態に慣れた時点で棒、はたなどのリズム要素の表記を加え、本来の楽譜に近づける。
【0022】
命中を知らせる音響と視覚効果を持たせ、ゲームのプレーヤーに命中を認識させることで、アミューズメント性を高めることができる。
【0023】
〔図1〕上、102は記録媒体読取機能を持つCPUで、ハードディスクを装備し、101の映像ディスプレーと接続される。103の電子鍵盤楽器は音源、アンプ、スピーカーを装備し、MIDIなどを用いて、102のCPUとデジタル接続される。電子鍵盤楽器は、このゲームを実施するために、4オクターブの鍵盤を必要とする。
【0024】
〔図1〕上、鍵盤上の斜線、及び格子模様は彩色されていることを表す。斜線と格子はそれぞれ、色が異なることを意味する。鍵盤を彩色するために、張り替え可能な素材の、鍵盤の形に合わせた2色のテープを用意することで、電子鍵盤楽器は汎用の物が使用できる。同時に、頻出する臨時記号である、ファのシャープ、シのフラットを、ト音記号、ヘ音記号、それぞれにおいて1つずつ、同じ素材で鍵盤上に表示する。黒鍵を使用することで、彩色のない鍵盤上でも、位置を特定しやすくなる。それとともに、演奏できる曲の調性の自由度が増す。
【0025】
最初に、CPUは、ステップs11までに、各種のデータをクリアし、DVDなどの記録媒体よりゲームプログラムをインストール。〔図3〕の楽譜、画像をディスプレーに表示する。ゲームを開始するために押すべき鍵盤の音符を表示し、それに該当する電子鍵盤楽器からの押鍵情報を待機する。106は、魚雷に見立てた音符であり、104の海上都市を攻撃目標としている。
【0026】
一例として〔図3〕に記載したゲームは、五線に見立てたコース上を進む、魚雷のような兵器によって攻撃される海上都市を守るために、その魚雷が海上都市に当たる前にその魚雷を射撃し爆破するという内容である。しかし、魚雷が海中を進む間はその射撃は効果が無く、しかも海上都市の寸前まで魚雷は浮上しない。つまり、魚雷が浮上し、海上都市に当たる寸前にのみ、魚雷の攻撃を阻止できる。
【0027】
ゲーム画面上の海上都市は、魚雷が命中すると、次第に形が崩れる。海上都市が攻撃により崩れ去ったり、押鍵の回数である弾丸の量が規定量を超えると、ゲームは中途終了となる。
【0028】
〔図3〕の10本の線は魚雷が進行するコースであり、楽譜の五線に相当する。コースは、ディスプレー画像上の鍵盤とともに、実際に電子鍵盤楽器の鍵盤に施された色と同系の色で表示される。
【0029】
ト音記号の五線上のソ、シ、レ、ヘ音記号の五線上のシ、レ、ファの演奏情報が同時に得られると、ステップs12、ゲームの開始。〔図3〕106の魚雷はコース上を海上都市104に向かって移動する。
【0030】
ステップs13、ゲーム開始以降、演奏情報を得られたら、直ちにその総数をカウントする。総数が、楽譜データの音符の総数+ミスタッチの許容数を超えたらステップs14、ゲーム終了の画面を表示し、終了処理を行う。
【0031】
ステップs15、魚雷106は、シューティングレンジ105にある間に、そのコースに該当する演奏情報によって攻撃されなければならない。正しい演奏情報を得られた時には直ちに魚雷は消え、点数が加点される。演奏情報が得られなかった場合、海上都市104の形を変化させる。
【0032】
ゲーム終了、ステップs16。次のゲームの準備のために、データをクリアーする。
【0033】
鍵盤に彩色する際、塗料を鍵盤に塗布するよりも、液晶画面の保護シートのような、貼ったり剥がしたりが容易な素材を鍵盤上面に貼ることで彩色するのが望ましい。
【0034】
ゲームの実施者がバンド演奏のキーボード・パートを演奏しているかのように感じるような映像と音響を付加し、なお、パーソナルコンピューターやゲーム装置に付属させたCCDカメラによって撮影された、演奏者本人をその映像上に嵌めこむ事で、よりアミューズメント性を増加させることもできる。
【0035】
海上都市を宇宙都市に、魚雷をミサイルに置き換え、現代的な設定にする他、作物をねらいコース上を進むモグラを地上に出た瞬間にハンマーで叩くゲーム等で代替することもできる。
【0036】
電子鍵盤楽器を4分の3程度のスケールの鍵盤にすることで、対象年齢を下げることが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
五線譜の、第2、第3、第4線と第1、第5線が異なる色で示される五線譜。上段と下段の空隙を線一本分とする大譜表。
【請求項2】
五線譜のそれぞれの線が指示する鍵盤に、請求項1に記載された楽譜と同じ色を、それぞれ施した鍵盤楽器と、鍵盤に彩色するためのテープ。
【請求項3】
請求項2に記載された特徴を持つ電子鍵盤楽器と、請求項1に記載された特徴を持つ楽譜を表示できるコンピューターを同期させたゲーム装置。
【請求項4】
縦書きの楽譜の五線に見立てたコース上を、上方に進行する標的を攻撃するゲームを、電子鍵盤楽器を介して操作することで、読譜、鍵盤楽器演奏教習プログラムとして活用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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