説明

大豆の発酵抽出物の製造方法

【課題】 大豆の発酵抽出物を製造する方法を提供する。
【解決手段】 主に乳酸菌や酵母菌の馴化、発酵、培養を経た後で、その濃縮液を作るなどのステップが行われる。
【効果】 作られる抽出物は、アミノ酸受容体、NMDA、kainate興奮剤への結合作用があるので、ペントバルビタール(pentobarbital )に誘起される睡眠時間を延長し、癌患者の化学療法期間中の疲労感を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆の発酵抽出物(fermented soybean extract、略称FSE)、特に、ナチュラルキラー細胞の活性及びγ―アミノ酪酸(GABA)及びグルタミン酸の受容体との結合の阻害性を向上させるためのものを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単純アミノ酸GABA及びグルタミン酸は、人の脳におけるそれぞれ抑制性、興奮性神経伝達物質である。脳において、全てではないとしても、大部分の神経細胞は、細胞外のGABA及びグルタミン酸に対する細胞膜受容体を有している。高い特異性を持つ輸送体(トランスポータ)は、これらのアミノ酸の細胞外の低い濃度を維持している。これらの輸送体はシナプスの周辺から放出されるGABA及びグルタミン酸を除く作用もあり、それらのシナプスでの作用を急速に停止させる。
【0003】
GABAは、三種類の異なるタイプの受容体、GABAA ,GABAB ,GABAc を活性化する。GABAA 受容体はリガンド依存性の塩素イオンチャンネルである。これらの受容体はGABA、ムシモル(muscimol)及びイソグバシン(isoguvacine )により活性化され、ビスカカリン(biscuculline)、ガバジン(gabazine)及び(+)−β−ヒドラスチン(hydrastine)により阻害される。
GABAA 受容体は大変重要であり、脳の興奮の調節において極めて重要な役割を担い、数多くの重要な薬剤、例えば、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines )、バービチュラテス(barbiturates) 、アルコール、ノイロステロイド(neurosteroids )、いくつかの抗けいれん薬及び一般的麻酔剤などは、これら受容体と相互作用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グルタミン酸は二種の特異的な受容体と結合する。これらの受容体は関連するイオンチャンネル(イオンチャンネル共役型受容体)を開き、小さな陽イオンNa+ 及びCa+ を細胞内に向けて通過させる。いままで、三種のイオンチャンネル共役型受容体が確認されている。それらは、N−メチル−D−アスパルテート(N −methyl−D ―aspartate )(NMDA),カイネート(kainate 、)及びα−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾール・プロピオネート(α―amino -3- hydroxy -5- methyl -4- isoxazole propionate)(AMPA)である。グルタミン酸の変化は数多くのCNS病理症状と関連している。CNS病理症状には、例えば、中風、大脳の漸次退化、慢性疼痛、憂鬱症、薬物依存症、てんかん、パーキンソン病及び精神分裂症などが含まれる。
【0005】
本発明の主たる目的は、ナチュラルキラー細胞の活性を増進し、GABA受容体及びグルタミン酸受容体との結合の阻害性を向上させるための大豆の発酵抽出物を製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、濃縮発酵液、すなわち有用な乳酸菌や酵母菌を用いて発酵した大豆発酵乳を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、直接に又はカプセル剤、錠剤もしくは水溶性粉剤として配合され、投与できる濃縮発酵液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記主目的を達成するため、本発明による大豆の発酵抽出物の製造方法は、次の工程からなることを特徴としている。
a.天然の栄養物を培養液に混ぜて、特殊な寒天培地を作る第1工程。
b.第1工程で得られた寒天培地を制御環境に置いて個別に恒温で様々な種類の乳酸菌、酵母菌を培養する第2工程。
c.第2工程で得られた乳酸菌、酵母菌及び前記寒天培地を該大豆培地に植菌し、制御条件下において恒温で全てのバクテリアを培養する第3工程。
d.該乳酸菌、酵母菌を互いにグループごとに分離し、該有機大豆培地に移し、馴化、培養する第4工程。
e.グループごとに培養した乳酸菌、酵母菌を該有機大豆培地に移し、共生的培養を開始し、大豆の発酵抽出物を得る第5工程。
【0007】
本発明の大豆の発酵抽出物の製造方法は、少なくとも、一種の乳酸菌、酵母菌を寒天培地に移送することを含む。抽出物の製造は、乳酸菌、酵母菌の共同培養、発酵から始まる。つまり、乳酸菌、酵母菌の馴化、培養を経たあと、濃縮液を作るステップが行われる。このプロセスに使われる微生物には、Lactobacillus paracasei 、Lactobacillus burglarious 、Saccharomyces cerivisiaeなどが含まれる。
【発明の効果】
【0008】
上記方法により製造される大豆の発酵抽出物は、これを人間に一定数量供給すると、ナチュラルキラー細胞の活性を増進させる外、γ―アミノ酪酸(GABA)受容体、アミノ酸(glutamate )受容体を結合する能力があるので、抑制性を有する。大豆の発酵抽出物は、GABA受容体及びアミノ酸(glutamate )受容体に抑制性があるので、ペントバルビタール(pentobarbital )から招いた睡眠時間を延長する。大豆の発酵抽出物は、化学療法期間中の癌患者の疲労感を軽減する。大豆の発酵抽出物は、カプセル状、錠剤状又は粉末状のいずれの形態でも形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の目的、特徴及び効果などを良く理解するため、以下に、さらに具体的な実施例を図面を参照しながら説明する。
図1は、大豆の発酵抽出物のICRマウスの自発運動への影響を示すグラフ、図2は、大豆の発酵抽出物のペントバルビタールに誘起される睡眠時間への影響を示すグラフ、図3は、大豆の発酵抽出物のGABA受容体の結合への影響を示す表、図4は、大豆の発酵抽出物のアミノ酸(glutamate )受容体の結合への影響を示す表、図5は、大豆の発酵抽出物の癌患者の化学療法期間中の食欲不振、疲労への影響を示す表である。
【0010】
図面に関して、若干の説明を加える。図3において、MBSがGABAA に対して、IC50が0.00075%の稀釈濃度になると推量する。図4において、MBS−2がNMDA,kainate受容体及び活性化剤に対して、IC50はそれぞれ0.069%、0.096%の稀釈濃度になると推量する。図5において、10- cmの視覚アナログ尺度(visual analog scale )を採用する場合は、得点が高ければ、疲労の外、食欲も悪いことを表す。P値は、測定分析の反復を経て得られた。*は、未服用のグループと比べると、0.05の著しい差異があることを表す。**は、未服用のグループと比べると、0.01の著しい差異があることを表す。
【0011】
本発明の製造方法は、主に次の工程を含む。
(ア)培養液に天然の栄養源を混ぜ、特別な寒天培地を作る。
(イ)種々の乳酸菌、酵母菌を上記寒天培地に別々に接種し、それらを恒温、制御条件下に培養する。
(ウ)大豆を脱脂し、蒸留水を加え、約2時間煮沸し、大豆溶液を得、これをろ過し、有機培養液とする。
(エ)乳酸菌、酵母菌とステップ(イ)の培養菌液をそれぞれステップ(ウ)の大豆培養液に接種し、制御条件下、恒温で培養する。
(オ)グループずつで、乳酸菌、酵母菌をそれぞれステップ(ウ)の有機培養液に入れて訓化、培養させる。
(カ)ステッフ(オ)の各グループの培養液をステップ(ウ)で作られた大豆培養液に入れて、共生的に培養を開始する。
(キ)ステップ(カ)の微生物培養液を加熱し、高温で微生物の生長を終止させ、培養液の微生物を除く。また、ろ過液を元来の体積の十五分の一まで濃縮する(約93%−96%の水を除く)。
(ク)ステップ(カ)により作られた濃縮液を室温に少なくとも2ケ月置いて、濃縮液を分離させる。上層の液体を容器へ収集する。また、それを加熱して最終性生物を得る。 本生産工程において、異なる化学、製造、制御のグループの分析を行う。それはゲニスティン(genistein )及びダイゼイン(daidzein)の含量、HPLCの図案、pH値、物理性質(気味、外観、色、透明度、味覚、沈殿物)などを含む。
【0012】
GABA受容体とグルタミン酸受容体との結合力の試験管内分析:
本発明による濃縮発酵液のGABA受容体への作用は、放射線性リガンドを用いる結合活性試験により見積もる。本活性試験は、GABAA 受容体のアゴニスト部位への[3H]Muscimol の結合能を測量する。まずは雄Wistarラットの小脳膜(重量175±25g)を、Tris-HCl、pH7.4緩衝液中に常法により準備する。それから、10mgの脳膜を1nM[3 H]Muscimol とともに4℃の温度で10分間培養する。100nM[ 3 H]Muscimol の存在下で、非特異的な吸着量を算出する。脳膜を濾過し、3回洗浄し、フィルターの放射線量を計数することにより、特異的に結合した[3H]Muscimol を求める。
【0013】
上述の放射線性標識体を用いる結合試験において、本発明の濃縮発酵液で実験を行った。本発明の抽出液IC50値は0.00075%の希釈濃度と算出された。このことにより、濃縮発酵液がGABAのアゴニスト部位に対して強く結合することが示される。また、CGP−39653(選択的アンタゴニスト)のNMDA受容体のアゴニスト部位への結合能力を測定することにより、本発明がアミノ酸(glutamate )受容体に及ぼす影響を研究した。標準の実験ステップに基づいて、雄ラットの脳皮質の細胞膜を常法により分離した。20mgの調整した細胞膜と2.0。0nM[3 H]CGP−39653とともに、4℃の温度で20分間培養した。そして、1000μM L−glutamate 存在下での、非特異的な吸着量を求める。細胞膜を濾過し、緩衝液で3回洗った。フィルターの放射線量を計数することにより、 [3 H] CGP−39653の結合量を決定した。類似の実験により、リガンドとして5.0nM[3 H]kainateを使用し、グルタミン、kainate 受容体との結合能力を測定した。本発明の異なる稀釈濃度の抽出液で実験したところ、NMDA,kainateの二つ受容体に対して、本発明のIC50は図4に示すように、それぞれ0.069%、0.096%となった。
【0014】
ICRマウスにおいて、本発明の抽出液を投与すると、動物の活動力、ペントバルビタール(pentobarbital )から誘起される睡眠時間への影響を調べた。
本発明の濃縮発酵液の経口投与(ヒト換算で13ml量)によりマウスの自発運動を顕著に低下させ、また、ペントバルビタールにより誘起された睡眠時間も延長した(図1、図2参照)。
本発明の人体の臨床試験としては、10−cmの視覚的アナログ尺度(visual analog scale )を採用すれば、本案の抽出液を服用すれば、14〜28日を経て、癌患者の疲労感を著しく軽減し、食欲も大いに増進される(図5参照)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】大豆の発酵抽出物のICRマウスの自発運動への影響を示すグラフ。
【図2】大豆の発酵抽出物のペントバルビタールに誘起される睡眠時間への影響を示すグラフ。
【図3】大豆の発酵抽出物のGABA受容体の結合への影響を示す表。
【図4】大豆の発酵抽出物のアミノ酸(glutamate )受容体の結合への影響を示す表。
【図5】大豆の発酵抽出物の癌患者の化学療法期間中の食欲不振、疲労への影響を示す表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む、大豆の発酵抽出物の製造方法。
a.天然の栄養物を培養液に混ぜて、特殊な寒天培地を作る第1工程。
b.第1工程で得られた寒天培地を制御環境に置いて個別に恒温で様々な種類の乳酸菌、酵母菌を培養する第2工程。
c.第2工程で得られた乳酸菌、酵母菌及び前記寒天培地を該大豆培地に植菌し、制御条件下において恒温で全てのバクテリアを培養する第3工程。
d.該乳酸菌、酵母菌を互いにグループごとに分離し、該有機大豆培地に移し、馴化、培養する第4工程。
e.グループごとに培養した乳酸菌、酵母菌を該有機大豆培地に移し、共生的培養を開始し、大豆の発酵抽出物を得る第5工程。
【請求項2】
少なくとも、一種の乳酸菌及び一種の酵母菌を寒天培地に移すことを特徴とする請求項1記載の大豆の発酵抽出物の製造方法。
【請求項3】
発酵抽出物は、γ―アミノ酪酸(GABA)及びグルタミン酸の受容体との結合阻害を引き起こす能力を有するものであることを特徴とする請求項1記載の大豆の発酵抽出物の製造方法。
【請求項4】
発酵抽出物は、睡眠時間を延長する能力を有するものであることを特徴とする請求項1記載の大豆の発酵抽出物の製造方法。
【請求項5】
発酵抽出物は、化学療法期間中の癌患者における疲労感を軽減する能力を有するものであることを特徴とする請求項1記載の大豆の発酵抽出物の製造方法。
【請求項6】
発酵抽出物は、カプセル状、錠剤状又は粉末状のいずれかの形態を有することを特徴とする請求項1記載の大豆の発酵抽出物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−22038(P2006−22038A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201390(P2004−201390)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(504262926)中天生物科技股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】