説明

大面積有機ダイオードデバイス及びその製造方法

有機ダイオードデバイス(1)は、アノード層(12)、カソード層(13)及び有機層(14)を有する有機ダイオード構造(2)を含んでいる。アノード層(12)及びカソード層(13)の一方は、構造(2)の面(15)の全域に分布された一組のコンタクト領域(19、20)を有している。バリア層(16)は構造(2)を密閉するように覆っており、一組のコンタクト領域(19、20)に位置整合された一組の開口(23、24)を備えている。金属導体(5)はバリア層(16)の上に電気めっきされており、一組の開口(23、24)を介して一組のコンタクト領域(19、20)に接触している。このデバイスを形成する方法は、構造(2)を形成する工程、一組の開口(23、24)を有するバリア層(16)を形成する工程、及び金属導体(5)を形成するために構造(2)を電気めっきプロセスにかける工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード層、カソード層、及びアノード層とカソード層との間に配置された少なくとも1つの有機層を有する有機ダイオード構造を含む有機ダイオードデバイスに関する。本発明はまた、有機ダイオードデバイスを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ダイオードは、有機発光ダイオード及び有機フォトダイオードを含み、光起電(photovoltaic)ダイオードとも呼ばれている。有機発光ダイオード(OLED)はディスプレーとしての使用及び照明用途で注目を集めている。OLEDは2つの薄い電極間に配置された発光性有機化合物の層を有している。有機フォトダイオードは、フォトダイオードは光を吸収してそれを電流に変換することを除いて、OLEDと同一の主設計を有しており、太陽電池や光センサ等に応用されている。OLEDに伴う一般的な問題は、電極がその厚さが薄いことに起因して大きい抵抗を有することである。大面積のOLEDでは、このことは、その領域全体で大きい電圧降下と不均一な輝度が生じることを意味する。どのような面積が電圧降下を生じさせるのに十分な大きさであるかは、使用される材料の種類、使用される電極の厚さ、ディスプレーの明るさ等に依存する。一般的に、今日の技術を用いると、数平方センチメートルより大きいOLEDディスプレーは不均一な輝度に悩まされる。同様の種類の電圧降下問題が大面積のフォトダイオードでも起こる。
【0003】
特許文献1には、上述の問題を解決する試みが記載されている。この試みによれば、導電率を高めるために薄い透明な電極の一方の内部に金属格子が埋め込まれる。この金属格子は、大面積のOLEDの場合でも一様な電圧分布をもたらすために、該金属格子が電源に接続されるように導電性ペースト又はエポキシによって電気リードに接続される。
【0004】
特許文献1のOLEDに伴う問題は、絶縁された電気リードは絶縁されていない端部を有しており、電気リードは導電性ペーストによって金属格子に接続されなければならないために、製造が複雑であることである。OLEDの表面上で曲がりくねった多数の電気リードも美観的に魅力的でない。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0121508号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大面積用途に好適で、従来技術で設けられていた電気リードを排除し、それ故に製造の容易性と魅力的な外観とをもたらす、有機ダイオードデバイスを提供することを目的とする。
【0006】
本発明はまた、大面積用途に好適な有機ダイオードデバイスを製造する効率的な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は:
アノード層、カソード層、アノード層とカソード層との間に配置された少なくとも1つの有機層を有する有機ダイオード構造であり、アノード層及びカソード層の一方は、当該構造の第1の面の全域にわたって分布された第1の組のコンタクト領域群を有する、有機ダイオード構造、
前記構造を密閉して覆うように第1の面上に配置されたバリア層であり、第1の組のコンタクト領域群に位置整合された第1の組の開口群を備えたバリア層、及び
バリア層の第1の組の開口群を介して第1の組のコンタクト領域群に接触している、バリア層上に電気めっきされた少なくとも1つの第1の金属導体、
を有する有機ダイオードデバイスによって達成される。
【0008】
この有機ダイオードデバイスの利点は、このデバイスは、大型の有機ダイオードデバイスの全領域にわたって一様な電圧分布をもたらし、それ故に、一様な輝度、又は太陽電池の場合には一様な電流、を全領域にわたってもたらすことである。バリア層は有機ダイオード構造を保護し、長い寿命を実現する。
【0009】
請求項2に従った方策に伴う利点は、格子によって、有機ダイオードの表面を各々が一様な輝度又は場合によって一様な電流を有するタイル群に分割することが可能にされることである。
【0010】
請求項3に従った方策の利点は、高い導電率でありながら低い製造コストが実現されることである。
【0011】
請求項4に従った方策の利点は、第1の金属導体と、それが接続されるアノード層又はカソード層との間の電気的接触が改善されることである。
【0012】
請求項5に従った方策の利点は、この有機ダイオードデバイスは、カソード層及びアノード層の双方が金属導体を備えているので、有機ダイオードデバイスの全領域にわたって最適な電圧分布と非常に一様な輝度又は電流とをもたらすことである。故に、アノード層又はカソード層における望ましくない電圧降下が存在しない。
【0013】
また、上記課題は:
アノード層とカソード層との間に少なくとも1つの有機層を設けることによって有機ダイオード構造を形成する工程であり、アノード層及びカソード層の一方に、前記構造の第1の面の全域にわたって分布された第1の組のコンタクト領域群が備えられる工程、
前記構造を密閉して覆うように第1の面上にバリア層を形成する工程であり、バリア層に、第1の組のコンタクト領域群に位置整合された第1の組の開口群が備えられる工程、及び
バリア層によって覆われた前記構造を電気めっきプロセスにかける工程であり、第1の面に少なくとも1つの第1の金属導体を形成するように第1の組のコンタクト領域群上に導電性金属が電気めっきされるように、アノード層及びカソード層の前記一方が電気めっきバスの端子の1つに接続される工程、
を有する、有機ダイオードデバイスの製造方法によって達成される。
【0014】
この方法の利点は、OLED又はフォトダイオードの技術に基づく大面積有機ダイオードデバイスの非常に効率的な製造方法がもたらされることである。バリア層を早い段階で設けることにより、有機ダイオード構造は、有機ダイオードデバイスを形成するために必要な更なるプロセス工程において水分及び酸素から保護される。これは、有機ダイオード構造の機能を損なう問題を伴うことなく、金属導体を形成するために水ベースの電解液中での電気めっきを使用することを可能にする。
【0015】
請求項7の実施形態の利点は、分離体の層は、光の放出又は吸収が望まれる領域に金属導体を寄せ付けない効率的な手法を提供することである。金属導体がアノード層及びカソード層の双方に配置される場合、請求項7に従った方策により、これら金属導体は互いに分離されたままにされる。
【0016】
請求項8の利点は、電気めっきプロセス後の分離体の層の除去は、分離体が設けられていた面を介しての輝度又は光吸収を増大させることである。更なる利点は、分離体の層の下に配置されていた部分の如何なる後処理も容易になることである。
【0017】
請求項9に従った方策の利点は、電気めっきプロセス中のアノード層及び/又はカソード層の導電率が高められることである。この改善された導電率は、遥かに速い電気めっき速度をもたらす。何故なら、最初に金属導体を形成するときの、低い導電率が主要因である薄いアノード層及びカソード層での電圧降下が、めっきベースによって回避されるからである。
【0018】
請求項10に従った方策の利点は、めっきベースの余分な部分を除去することにより、第1の面に配置されアノード層に接続されている第1の金属導体が、やはり第1の面に配置されているがカソード層に接続されている第2の金属導体から分離されることである。
【0019】
本発明の更なる実施形態及び効果は、以下の詳細な説明及び添付図面から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
添付図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【0021】
図1は、発光デバイス1の形態の有機ダイオードデバイスを示している。発光デバイス1は、図2で一層と詳細に示される発光構造2を有している。発光デバイス1は、タイル群4に分割された大きい表面3を有している。後述されるように電気めっきすることにより形成された第1の金属導体5が表面3上に第1の格子を形成している。図1にて見て取れるように、第1の金属導体5は、該第1の金属導体5が全てのタイル4に接触するように、幹部(stem)6及び枝部(branch)7を有している。後述されるように電気めっきすることにより形成された第2の金属導体8が表面3上に第2の格子を形成している。図1にて見て取れるように、第2の金属導体8は、該第2の金属導体8が全てのタイル4に接触するように、幹部9及び枝部10を有している。第1の金属導体5及び第2の金属導体8は互いに分離されている。金属導体5、8の各々は、高導電率の金属又は金属の混合物で形成されており、好ましくは銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)若しくはニッケル(Ni)、又はこれらの混合物を含んでいる。
【0022】
図2は、図1の断面II−IIで見た発光デバイス1を概略的に例示している。発光構造2はアノード層12及びカソード層13を有している。アノード層12は、例えばITO(インジウム錫酸化物)等の少なくとも部分的に半透明の導電性材料で形成されている。アノード層12は薄膜で形成されている。すなわち、アノード層12の厚さは1μm未満である。典型的にアノード層12の厚さは、ITOから成るとき、50−200nmである。透明性が要求されない場合には、アノード層はITO層と金属層との組み合わせで形成されていてもよい。カソード層13は少なくとも部分的に半透明の材料から成る薄膜で形成されている。例えば、カソード層13は、例えば3nm厚さといった薄いAl(アルミニウム)膜と10nmのAg(銀)膜との上の、0.5nmの薄いLiF(フッ化リチウム)又は5nmのBa(バリウム)膜で形成されることができ、全体で100nm未満、好ましくは15−50nmの厚さをもたらしている。透明性が要求されない場合には、カソード層、例えば、300nm厚さのAl層上の5nmのBa膜の組み合わせによって形成されていてもよい。アノード層12とカソード層13との間には発光性の有機層14が位置している。発光有機層14は、例えばポリマー等、有機発光ダイオード(OLED)技術でそれ自体知られた、印加電圧により光を放出する如何なる種類の有機材料であってもよい。有機層14の厚さは好ましくは、アノード層12の厚さと同程度である。層14は、他の例として、互いに積層された複数の有機層を有していてもよい。
【0023】
発光構造2の第1の面15上には、バリア層16が位置している。バリア層16は構造2の第1の面15を密閉して覆っており、それを水分、水蒸気及び酸素から保護する。バリア層16は誘電体から形成されており、例えば、NONとも呼ばれる窒化シリコン−酸化シリコン−窒化シリコンの積層構造を有している。更なる既知のバリア層がH.Lifka及びE.Haskalによる国際公開第2003/050894号パンフレットに記載されている。バリア層16の代替材料は、例えば、炭化シリコンSiC及びアルミナAlである。更なる代替例として、これら材料のスタック、及び有機材料との組み合わせがバリア層として用いられてもよい。
【0024】
構造2の第2の面17上にはガラス板18が位置している。ガラス板18は、後述されるように、構造2が形成される基板を形成している。アノード層12は第1の組のコンタクト領域群を備えており、図2にはそのうちの2つのコンタクト領域19、20が示されている。カソード層13は第2の組のコンタクト領域群を備えており、図2にはそのうちの1つのコンタクト領域22が示されている。好適な一実施形態において、コンタクト領域19、20を形成すべきアノード層12の部分にもカソード材料が例えば堆積によって設けられている。このカソード材料はカソード層13自体とは電気的に接触していない。この実施形態の利点は、アノード層12のコンタクト領域19、20とカソード層13のコンタクト領域22との双方が単一且つ同一の種類の材料で形成されることである。これにより、後述のようにアノード層12及びカソード層13にコンタクトを形成するときに、2つの相異なる種類の材料を扱わなければならないという問題が回避される。
【0025】
バリア層16は、第1の組のコンタクト領域群(例えば19、20)と位置整合された第1の組の開口群(図2にはそのうちの2つの開口23、24が示されている)、及び第2の組のコンタクト領域群(例えば22)と位置整合された第2の組の開口群(図2にはそのうちの1つの開口25が示されている)を備えている。堆積された導電性材料から形成されたコンタクトピース26が開口23、24、25の各々内に位置付けられており、アノード層12のコンタクト領域19、20と第1の金属導体5との間、及びカソード層13のコンタクト領域22と第2の金属導体8との間の適正な電気接触を確実にしている。コンタクトピース26は、好ましくは、窒化チタン(TiN)、TiNと銅(Cu)とのスタック、又はクロム(Cr)と銅とのスタックから形成されている。認識されるように、バリア層16の開口23、24、25はコンタクトピース26及び金属導体5、8によって完全に覆われており、故に、発光構造2の適切な密閉被覆が確実にされている。
【0026】
第1及び第2の金属導体5、8の厚さTは、好ましくは0.5−100μmの範囲内であり、更に好ましくは10−50μmの範囲内である。故に、金属導体5、8の厚さはアノード層及びカソード層の厚さの約20−100倍である。さらに、金属導体5、8は上述のように高導電率材料で形成されている。これらの事実により、図1に示されているように第1の金属導体5により形成された格子、及び第2の金属導体8により形成された格子における電圧降下は非常に限られたものであり、故に、発光デバイス1の全てのタイル4は同一電圧でバイアスされ、動作時に発光デバイス1の全領域にわたって一様な輝度がもたらされる。認識されるように、各タイル4の大きさは、アノード層、カソード層、有機層などの種類及び厚さに対して、個々のタイル4の領域での電圧降下が非常に限られたものになるように設計される。本発明は、故に、電圧降下が発光デバイスの領域全体での輝度を一様でなくさせていた従来技術の問題を解決する。
【0027】
続いて、図3−9を参照して発光デバイス1を製造する方法を説明する。
【0028】
図3は第1段階を例示しており、発光構造2が形成されている。基板として機能するガラス板18上にアノード層12が設けられる。例えばプラスチックや金属等のその他の材料が基板として用いられてもよい。アノード層12の頂部に有機発光層14が設けられ、最後に有機層14の頂部にカソード層13が設けられて構造2が完成される。構造2は、アノード層12がコンタクト領域19、20により表された第1の組のコンタクト領域群を備え、且つカソード層13がコンタクト領域22により表された第2の組のコンタクト領域群を備えるように設計されている。発光有機層14は絶縁体として形成されており、第1の組及び第2の組の双方のコンタクト領域群が上記の第1の面15に存在することを可能にしている。図3に例示された第1段階は、好ましくは、有機発光ダイオード(OLED)を形成するそれ自体が既知の方法によって為される。
【0029】
図4は第2段階を例示しており、構造2の第1の面15上にバリア層16が設けられている。バリア層16は好ましくはプラズマ堆積法によって堆積されている。バリア層16の材料は好ましくは上述のNONである。図4に示されているように、バリア層16は、第1の組のコンタクト領域19、20に位置整合された開口23、24によって表された第1の組の開口群と、第2の組のコンタクト領域22に位置整合された開口25によって表された第2の組の開口群とを有している。バリア層16の開口23、24、25は、リソグラフィとそれに続くエッチングによって、堆積中に構造2の上方にシャドーマスクを保持することによって、あるいは、薄い層に開口を形成するそれ自体が既知の別の技術によって形成され得る。
【0030】
図5は第3段階を例示しており、第1の面15のバリア層16の頂部上の層としてめっきベース27が形成されている。めっきベース27の目的は、後述の電気めっきの効率を高めることである。故に、めっきベースはバリア層16の開口23、24及び25を介してコンタクト領域19、20及び22に接触していることが重要である。特に好適な実施形態によれば、めっきベース27は2段階で堆積される。先ず、TiNが堆積される。TiNは、バリア層16の好適材料であるNON、及びアノード層12の好適材料であるITOに非常に良好に接合するという利点を有している。そして、良好な導電性と後述される電気めっきプロセスのための良好な基礎とを提供するために、TiN上に例えばCu等の金属が堆積される。堆積されたTiN及びCuは一緒になってめっきベース27を形成する。めっきベース27の厚さは典型的に50−800nmの範囲内である。
【0031】
図6は第4段階を例示しており、めっきベース27上にレジスト層28が設けられている。レジスト層28は、コンタクト領域19、20である第1の組のコンタクト領域に位置整合された穴29及び30によって表された第1の組の穴と、コンタクト領域22である第2の組のコンタクト領域に位置整合された穴32によって表された第2の組の穴とをもたらすようにパターニングされている。レジスト層28のパターニングは、例えばフォトリソグラフィ等のそれ自体が既知の技術によって為されることができる。手短に言えば、フォトリソグラフィは、液体ポリマーを塗布すること、マスクを使用して照射することによりパターン内の残されるべき部分のみを硬化させること、及び硬化されていないポリマーを洗い落として所望の位置に穴を得ることを含んでいる。
【0032】
図7は第5段階を例示しており、第1及び第2の金属導体を形成するように金属が電気めっきされている。これは、めっきベース27及び/又はアノード層12、カソード層13を、電気化学セルの陰極である第1の端子33に接続することによって達成される。図7において、アノード層12及びカソード層13はめっきベース27を介して第1の端子33に接続されている。そして、バリア層16を有する構造2、めっきベース27、及びレジスト層28は、例えばCuイオン等の好適な金属イオンと、陽極35の形態の第2の端子とを含んだ電気めっきバス内へと降ろされ、図7に概略的に示されるように電気めっきプロセスにかけられる。電気めっきプロセス中、めっきベース27の優れた導電性により、図7に示されているように、めっきベース27から上方に第1及び第2の金属導体がかなり急速に成長し始める。図示されているように、レジスト層28はコンタクト領域19、20、22の真上以外での如何なる成長をも阻止する。第4段階において、レジスト層28の塗布は、後述されるように第1の面15及び第2の面17の双方を通しての光の放出を可能にするために、金属導体5、8による第1の面15の遮蔽を最小にするように設計されている。さらに、レジスト層28は、第1の金属導体5と第2の金属導体8とが互いに分離されることを確実にしている。バリア層16及びめっきベース27は、主として水である電気めっきバス34の液体と構造2との間の如何なる接触をも効果的に防止する。構造2自体は上述のように水の影響を非常に受けやすいので、バリア層16及びめっきベース27は電気めっきプロセスの使用を可能にするために必要である。電気めっきプロセスは、第1及び第2の金属導体5、8がそれらの所望の厚さになるまで行われる。
【0033】
図8は第6段階を例示しており、レジスト層28が除去されている。レジスト層28の除去は、例えば好適な溶剤によってレジスト層を分解すること等、既知の如何なる方法によって為されてもよい。図8にて見て取れるように、レジスト層28が除去されると、めっきベース27が露出される。
【0034】
図9は最終段階でもある第7段階を例示しており、第1及び第2の金属導体5、8で覆われていないめっきベース27の部分がバリア層までエッチングされ、第1の金属導体5が第2の金属導体8に回路短絡することが回避されている。このエッチングは、バリア層16の恩恵により、それ自体が技術的に既知のウェットエッチングプロセスとしてもよい。金属導体5、8によって覆われているめっきベース27の部分はエッチングされずに、上述のコンタクトピース26を形成する。この段階で、第1の金属導体5及び第2の金属導体8は、図示されていない好適な電源に接続されることができ、発光デバイス1は使用準備が整った状態となる。必要に応じて、改善された保護を提供するため、図示されていない第2のガラス板が例えばそれを接着することによって第1の面15、すなわち、金属導体5、8の頂部に取り付けられてもよい。例えばプラスチックフォイル、金属及び金属箔などのその他の材料が保護のために用いられてもよい。電圧の印加により、図9の矢印によって指し示されているように、第1の面15及び第2の面17の双方を介して光が放出される。故に、発光デバイス1は双方向に光を放出することができ、透明であると認められ得る。
【0035】
図10は、発光デバイス101の形態の本発明の第2の実施形態を例示している。発光デバイス101は、ガラス板118上に堆積された上述の構造2と同様の発光構造102を有している。構造102はバリア層116によって密閉されるように覆われている。発光デバイス101と発光デバイス1との主な相違点は、発光デバイス101は透明ではなく、その第2の面117を介してのみ光を放出するように適応されている点である。第1の面115を介しての発光は意図されていないため、幅の広い第1の金属導体105及び幅の広い第2の金属導体108がバリア層116上に電気めっきされてもよい。図10に示されているように、第1の金属導体105と第2の金属導体108との間にはそれらを互いに分離するための小さい隙間121のみが存在している。発光デバイス101の利点は、金属導体105、108の幅が非常に広いので、十分な導電率をもたらすのに中程度の厚さtで十分であることである。更なる利点は、構造102を密閉するように覆い、それを酸素および水蒸気から遮蔽することにおいて、第1の面115のほぼ全面を覆う金属導体105、108がバリア層116を補助することである。この遮蔽は、例えば、アノード層に関連するコンタクト領域である第1の組のコンタクト領域に隣接する領域といった、有機層がカソード層によって覆われていない領域で特に重要である。
【0036】
認識されるように、添付の特許請求の範囲内で上述の実施形態には数多くの変形が可能である。
【0037】
以上では、本発明はOLEDの形態をした有機ダイオードを参照して説明されてきた。認識されるように、本発明はその他の種類の有機ダイオードにも適用可能である。そのような一例は、光を吸収したときに電流を供給するように適応された有機層又は有機層群のスタックが2つの電極間に堆積されたフォトダイオードである。このようなフォトダイオードはフォトセル、そして特には大面積の太陽電池として使用され得る。フォトダイオードの基本設計および製造方法に関しては、OLEDに関して上述されたものと同様である。
【0038】
電気めっきプロセスに先立ってバリア層16の頂部にめっきベース27が堆積されると上述したが、認識されるように、金属導体5、8の電気めっきはめっきベース27なしで為されてもよい。しかしながら、その場合、アノード層及びカソード層の高い抵抗率のために電気めっきプロセスは非常に遅くなる。
【0039】
めっきベースは好ましくは、電気めっき工程の前に構造化される。めっきベースの構造化は、例えば、めっきベースのシャドーマスク堆積によって、あるいはリソグラフィ/印刷によるマスキングとその後のエッチング及びエッチング保護物の除去によってなど、幾つかの方法で行われ得る。めっきベースを構造化する更なる他の一手法は、レジストが所望の構造に堆積され硬化される、いわゆるリフトオフ又は同様のそれ自体が既知の手法を用いるものである。そのとき、めっきベースは構造化されたレジストの上に堆積される。めっきベースが例えばすぐ上で述べられた方法の何れかに従って構造化されることは、レジストの頂部に配置されためっきベースの部分は電気的な接続の欠如のために、電気めっき工程による導体の形成中にめっき金属で覆われないという利点を有する。故に、導体は所望の位置のみに形成されることになる。電気めっき工程後、レジストの頂部に位置するめっきベースの部分は電気めっきされた材料に対して選択的にエッチングされることができ、故に、金属導体は容易に所望の形状に形成される。従って、電気めっき工程に先立って構造化されためっきベースを形成するために為されるめっきベースの構築は、金属導体を所望の位置に電気めっきすることを容易にし、且つ電気めっき工程後の余分な部分のめっきベースの除去を容易にする。
【0040】
また、金属導体5、8の位置を定め且つそれらを互いに分離するためにレジスト層28がパターニングされると上述したが、認識されるように、レジスト層を用いずに、めっきベースの頂部に直接的に、あるいはめっきベースが存在しない場合にはバリア層の頂部に、例えば銅の層などの均一な金属層を電気めっきすることも可能である。更なる工程において、この均一な銅の層はエッチングされ、所望の形状及びパターンを有し、互いに分離された金属導体がもたらされる。しかしながら、レジスト層を用いる上述の方法が好ましい。何故なら、電気めっきされた金属から成る比較的厚い層のエッチングは、下に位置する構造の完全性に害を及ぼすことがあるからである。
【0041】
図1及び2を参照して説明された実施形態においては、アノード及びカソードの双方が透明材料から形成されている。認識されるように、これに代わる実施形態においては、有機ダイオードデバイス全体の透明性が要求されない場合、アノードのみ、あるいはカソードのみが透明にされてもよい。
【0042】
以上の説明によれば、アノード層12はガラス板18上に配置され、その上に有機層14及びカソード層13を有しているが、アノード層とカソード層とを逆の順序で形成することも可能である。すなわち、ガラス板上に先ずカソード層を堆積し、続いて有機層、そして最後にアノード層を堆積することも可能である。
【0043】
上述の発光デバイス1、101の各々は、アノード層12に接続された第1の金属導体5、105と、カソード層13に接続された第2の金属導体8、108とを備えているが、認識されるように、アノード層又はカソード層の何れかに接続された唯一の金属導体を有する発光デバイスを設計することも可能である。一例は、透明ではない発光デバイスである。その場合、カソードは十分な導電性をもたらすように非常に厚く形成されてもよい。好ましくはITOから形成されるアノードは依然として薄くされ、故に、電圧降下を回避するために第1の金属導体を必要とする。
【0044】
まとめると、有機ダイオードデバイス1は、アノード層12、カソード層13及び有機層14を有する有機ダイオード構造2を含んでいる。アノード層12及びカソード層13の一方は、構造2の面15の全域に分布された一組のコンタクト領域19、20を有している。バリア層16は構造2を密閉するように覆っており、一組のコンタクト領域19、20に位置整合された一組の開口23、24を備えている。金属導体5はバリア層16の上に電気めっきされており、一組の開口23、24を介して一組のコンタクト領域19、20に接触している。このデバイスを形成する方法は、構造2を形成する工程、一組の開口23、24を有するバリア層16を形成する工程、及び金属導体5を形成するために、構造2を電気めっきプロセスにかける工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に従った有機ダイオードデバイスを示す上面図である。
【図2】図1のII−II断面で見た本発明に従った有機ダイオードデバイスを概略的に示す断面図である。
【図3】本発明に従った方法の第1段階を概略的に例示する断面図である。
【図4】本発明に従った方法の第2段階を概略的に例示する断面図である。
【図5】本発明に従った方法の第3段階を概略的に例示する断面図である。
【図6】本発明に従った方法の第4段階を概略的に例示する断面図である。
【図7】本発明に従った方法の第5段階を概略的に例示する断面図である。
【図8】本発明に従った方法の第6段階を概略的に例示する断面図である。
【図9】本発明に従った方法の第7段階を概略的に例示する断面図である。
【図10】本発明の代替的な一実施形態に従った有機ダイオードデバイスを概略的に例示する断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード層、カソード層、前記アノード層と前記カソード層との間に配置された少なくとも1つの有機層を有する有機ダイオード構造であり、前記アノード層及び前記カソード層の一方は、当該構造の第1の面の全域にわたって分布された第1の組のコンタクト領域群を有する、有機ダイオード構造、
前記構造を密閉して覆うように前記第1の面上に配置されたバリア層であり、前記第1の組のコンタクト領域群に位置整合された第1の組の開口群を備えたバリア層、及び
前記バリア層の前記第1の組の開口群を介して前記第1の組のコンタクト領域群に接触している、前記バリア層上に電気めっきされた少なくとも1つの第1の金属導体、
を有する有機ダイオードデバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の金属導体は前記第1の面上で格子を形成している、請求項1に記載の有機ダイオードデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の金属導体は0.5−100μmの厚さを有する、請求項1又は2に記載の有機ダイオードデバイス。
【請求項4】
前記コンタクト領域群の各々と前記少なくとも1つの第1の金属導体との間にコンタクトピースを形成するように、前記バリア層上にめっきベースが堆積されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の有機ダイオードデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の金属導体は、前記バリア層の前記第1の組の開口群を介して前記アノード層に接触しており、前記第1の組の開口群は、前記アノード層の前記第1の組のコンタクト領域群に位置整合されており、少なくとも1つの第2の金属導体が、前記バリア層の第2の組の開口群を介して前記カソード層に接触するように前記バリア層上に電気めっきされており、前記第2の組の開口群は、前記カソード層の第2の組のコンタクト領域群に位置整合されており、前記第2の組のコンタクト領域群は前記第1の面の全域にわたって分布されており、前記第1及び第2の金属導体は互いに分離されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の有機ダイオードデバイス。
【請求項6】
アノード層とカソード層との間に少なくとも1つの有機層を設けることによって有機ダイオード構造を形成する工程であり、前記アノード層及び前記カソード層の一方に、前記構造の第1の面の全域にわたって分布された第1の組のコンタクト領域群が備えられる工程、
前記構造を密閉して覆うように前記第1の面上にバリア層を形成する工程であり、前記バリア層に、前記第1の組のコンタクト領域群に位置整合された第1の組の開口群が備えられる工程、及び
前記バリア層によって覆われた前記構造を電気めっきプロセスにかける工程であり、前記第1の面に少なくとも1つの第1の金属導体を形成するように前記第1の組のコンタクト領域群上に導電性金属が電気めっきされるように、前記アノード層及び前記カソード層の前記一方が電気めっきバスの端子の1つに接続される工程、
を有する、有機ダイオードデバイスの製造方法。
【請求項7】
前記構造を電気めっきプロセスにかける工程の直前に、前記第1の面のうちの電気めっきが望まれない領域を覆う分離体の層を設ける工程を更に有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記構造を電気めっきプロセスにかける工程の後に、前記分離体の層を除去する工程を更に有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
バリア層を形成する工程と前記構造を電気めっきプロセスにかける工程との間に、前記第1の組のコンタクト領域群と前記電気めっきバスの電解液との間の電気的接触を改善するために、前記バリア層の頂部に導電性材料からなるめっきベースの層を堆積する工程を更に有する請求項6乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記構造を電気めっきプロセスにかける工程の後に、前記少なくとも1つの第1の金属導体によって覆われていない前記めっきベースの部分の少なくとも一部を除去する工程を更に有する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記めっきベースを堆積する工程は、前記めっきベースを構造化された層として堆積することを有する、請求項9又は10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−511940(P2009−511940A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532928(P2008−532928)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053406
【国際公開番号】WO2007/036850
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】