説明

大面積X線源を使用した汚染除去・滅菌システム

【課題】取り付け上及び作業上のコストを低減した、高効率なX線処理システムを提供する。
【解決手段】電子源、電子加速器、及び電子ターゲット媒体から構成された大面積フラットパネル源を利用し、ターゲット・ゾーン829内部のターゲット物質には、1つ又は2つ以上のフラットパネル源821、823,825、827からX線831、833、835,837が照射され、ターゲット物質中の汚染物質の生物学的作用を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、X線の発生及び使用に関し、そしてより具体的には、X線を発生させるための大面積源、及びターゲット材料を汚染除去/滅菌するためにこのX線を使用するシステムに関する。
【0002】
背景
X線の形態を成す高エネルギー電磁線が、今日、多くの分野で使用されている。医療用画像形成におけるX線の用途は、ほとんどの人々にとって最も知られた状況ではあるものの、他の用途も同様に多くある。例えば、画像形成のためではなく、医薬品又は薬物のようなものの活性化を目的として医療機関で使用することもできる。さらに、土壌及び地質調査におけるX線放射の多くの用途が、例えば石油探査又は地下画像形成と関連して知られている。X線放射の1つの効果的な用途は、生物学的及びその他の汚染の影響を低減するために物質を処理することにある。例えば、微生物を殺して、食品をより安全に消費するために、食品に照射を施すことができる。汚染の作用を低減するために、廃水又は流出液に同様に照射を施すこともできる。
【0003】
しかしながら、X線が能力のうちのいくつかにおいて有用であるとはいえ、その輻射線が生成され指向される効率は、現時点では次善のものである。典型的なX線源は、点源電子生成器、加速器、及び金属ターゲットを含む。作業中、点源によって発生した電子は、加速器を通って加速され、そして金属ターゲットに衝突する。高エネルギー電子がターゲットと衝突すると、X線が放出される。
【0004】
典型的には、放出された輻射線は、ターゲットの組成及び形態、衝突する電子のエネルギー及び分散などに応じて、衝突領域を超えて円錐パターンを成して広がる。この発散放射パターンを考えると、衝撃領域から所与の距離rを置いた箇所での放射線量は、ほぼ逆二乗(1/r2)様式で低下することが判る。この放射パターンを適正な線量で効果的に採用するためには、距離に伴って低下することを考慮に入れた強い輻射線場を発生させなければならず、そして当該物体を、放射円錐体内に適正に位置決めしなければならない。次善の放出パターンを補うためにいくつかの放射源が複数の点源、又は1つ又は2つ以上の可動の点源を使用しているものの、このようなシステムは、これらの固有の欠点及び複雑さを有している。具体的には、源のタイミング、位置決めなどに関与する厄介な問題が一般的である。
【0005】
具体的には汚染除去又は衛生化を目的とした材料の処理において、微生物(又はより大型の生物)及び汚染物質の影響を低減するために十分な輻射線を確保しつつ、ターゲット材料の過度の劣化を回避するように、均一な、そして十分に強い放射パターンを供給し得ることが重要である。さらに、X線源が、使用コストを軽減するのに十分な出力効率を有することが、商品化にとって重要である。現在のシステムは、これらの分野のうちの1つ又は2つ以上において不十分である。従って、少なくとも効率及び場の均一性の観点において、従来技術のシステムを凌ぐX線処理システムが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施態様は、X線の発生及び使用のための新規の技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本明細書に記載された処理システムは、本発明の実施態様によれば、ターゲット・ゾーン内に指向された1つ又は2つ以上の大面積フラットパネルX線源を利用する。被処理ターゲット物質は、例えばコンベヤ・ベルト、管などを介してターゲット・ゾーン内部に置かれ、そしてターゲット物質中の汚染物質の存在の生物学的作用を低減するために、1つ又は2つ以上のフラットパネル源からの輻射線が、ターゲット物質に照射される。
【0008】
本発明の実施態様によるフラットパネル源は、電子源、電子加速器、及び電子ターゲット媒体を含む。電子源から電子が抽出又は放出され、そして電子ターゲット媒体に向かって加速される。加速された電子がターゲット媒体上に衝突することにより、X線が放出される。電子源は任意の好適な材料及び形態から成っていてよい。例えば、電子源は、フィールド放出法、又は熱イオン放出法によって電子を放出することができる。
【0009】
本発明によるシステムにおいて大面積フラットパネルX線源を使用することにより、取り付け上及び作業上のコストの軽減、並びに効率の増大が可能になる。添付の図面を参照しながら進められる例示のための実施態様の下記詳細な説明から、本発明の更なる特徴及び利点が明らかになる。
【0010】
添付の特許請求の範囲は本発明の特徴を具体性を伴って示すが、添付の図面と併せて行う以下の詳細な説明から、本発明をその目的及び利点とともに、最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、従来技術のX線発生装置の側方断面図である。
【図2】図2は、点源X線装置を使用した従来技術の材料X線処理システムを示す概略頂面図である。
【図3】図3は、フィールド放出電子源を有する透過モードの大面積フラットパネルX線源を備えた、本発明の実施態様の範囲内で使用可能なX線発生装置を示す側方横断面図である。
【図4】図4は、熱イオン放出電子源を有する透過モードの大面積フラットパネルX線源を備えた、本発明の実施態様の範囲内で使用可能なX線発生装置を示す側方横断面図である。
【図5】図5は、フィールド放出電子源を有し、反射・透過組み合わせモードで作業する大面積フラットパネルX線源を備えた、本発明の実施態様の範囲内で使用可能なX線発生装置を示す側方横断面図である。
【図6】図6は、非液体ターゲット材料を輸送するためにコンベヤが使用される、本発明の実施態様によるX線処理システムを示す概略頂面図である。
【図7】図7は、液体又は気体ターゲット材料を輸送するために導管が使用される、本発明の実施態様によるX線処理システムを示す概略頂面図である。
【図8a】図8aは、対向する大面積フラットパネルX線源対が使用される、本発明の別の実施態様によるX線処理システムを示す概略頂面図である。
【図8b】図8bは、対向する2つの大面積フラットパネルX線源対が使用される、本発明の別の実施態様によるX線処理システムを示す概略頂面図である。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、X線の発生及び使用に関し、また、本発明の実施態様において、例えば汚染除去又は滅菌を目的として、ターゲット物質、例えば食品、水、又はその他の材料を処理するための新規のシステム及び技術を含む。総括すると、本発明の実施態様例に基づく構造は、ターゲット・ゾーン(容積)に隣接する、且つ/又はこれを取り囲む1つ又は2つ以上のフラットパネルX線源を含む。ターゲット・ゾーン内部にターゲット物質が置かれ、そしてターゲット物質中の汚染物質の存在の生物学的作用を低減するために、フラットパネル源からの輻射線が、ターゲット物質に照射される。ターゲット物質は、ターゲット・ゾーン内部に定置に存在してよく、或いは、例えばコンベヤを介して通過させるか、又は例えば輻射線透明管を介してゾーンを貫流させることもできる。
【0013】
本発明の実施態様に基づくシステムは、ターゲット物質内の生物学的汚染物質及び化学的汚染物質の両方を無害にするのに有用である。例えば、汚染物質が細菌性、菌性、又はウィルス性である場合、システムは、ターゲット物質の消費者における感染リスクを実質的に低減するのに十分な、又は、ターゲット物質の腐敗を実質的に低減(保留又は防止)するのに十分な量の汚染物質を殺すために使用することができる。汚染物質が化学物質である場合、ターゲット物質の消費者における毒性反応のリスクを実質的に低減するのに十分な量の汚染物質を化学的に改質(例えば破壊又は不活性化)するために使用することができる。
【0014】
本発明の実施態様の詳細を論じる前に、読者の便宜のために、一般化された従来技術のシステムを手短に検討する。図1を参照すると、従来技術のX線源が、いかなる用途からも分離された状態で示されている。源101は封入体103を含む。封入体103は典型的には、電子と気相分子との間の衝突を最小化するために、少なくとも部分的に排気される。源101はさらに、電子源105を含む。電子源105は例えば熱抽出を介して電子107を発生させる。電子107の一部は、加速器格子109によって印加されたフィールドによって静電加速され、そしてターゲット材料111に衝突するために封入体103を横切る。電子のターゲット材料との衝突により、X線が放出され、X線115の一部は、窓113又はその他の出口に指向され、そしてこれを通過する。
【0015】
図2は、従来技術に基づく物質処理システムを概略図で示している。システム201は、図1に関して説明したような点X線源203を含む。X線源203は、半球状の放射パターン205を放出する。システム201は、放出された輻射線205が、ターゲット物質209を含有するターゲット・ゾーン207上に衝突し、これによりターゲット物質209に照射を施すように構成されている。言うまでもなく、結果として生じる照射は極めて不均一である。さらに、点源203から生じる放射パターン205は、システム201において相当の非効率をもたらす。
【0016】
点X線源が、このような源から任意の感知可能な距離を置いて、実際の点というよりはむしろ面から輻射線を放出することは明らかであるが、このパターンは実質的に、共通の点又は小さな容積から拡散するように見える。このような源からの輻射線は球状に拡散し、距離の逆二乗に対して比例的に低下する。従って、源203が本質的に点源であり、そしてターゲット・ゾーン207が1 m2であると仮定すると、源203の有効強度は1 m2/4πd2である。ゾーン207が源203から2.5メートルである場合、これは1/78という因数となる。従って、点源放射の拡散性は、1.3 %の効率(すなわちほとんどの99 %の損失)しかもたらさない。非効率は、ターゲット・ゾーンにおける残存出力が十分であるように、源の出力を設定しなければならないことを意味する。結果として、このようなシステムを操作するためには、高価な電源が必要となる。このような支援機器に加えて、このようなシステムの作業エネルギー・コストは、点源が非効率であることにより極めて高い。
【0017】
本発明の実施態様は、従来のシステムの欠点に対処し、そして食品及びその他の物質を衛生化、汚染除去などを目的として輻射線で処理するための効率的で低コストのシステムを提供する。本発明の実施態様を添付の図面を参照しながらさらに詳しく以下に説明する。本発明の実施態様によるフラットX線源を先ず説明し、これに続いて種々の実施態様において採用されるフラットパネルX線源について論じる。
【0018】
本発明の実施態様の範囲内で使用可能なフラットパネルX線源は、Busta他によって2004年3月31日付けで出願された「Electron source and method for making same(電子源及び電子源の製造方法)」と題される米国特許出願第2004/0198892号明細書に記載されている。上記米国特許出願公開第2004/0198892号明細書は、フラットパネル型の電子源及びX線源の考察に関してここに言及するが、その教示内容はそのように限定されるものではなく、また、前記明細書が教示し、図示し、記述し、そして明らかにする全てのものに関して、その出願の表現又は暗示されたいかなる部分も排除することなしに、その全体を参考のため本明細書中に引用する。
【0019】
本発明の実施態様の範囲内で使用可能な1つの透過モード・フラットパネル源が全体的に図3に示されている。大まかに見ると、フラットパネル源は、電子源と、電子加速器と、ターゲット媒体とを含み、加速された電子がターゲット媒体上に衝突すると、X線が放出される。図3に示されたフラットパネルの図示の実施態様をさらに具体的に参照すると、基板301が電子源組成物303を支持している。電子源組成物303は、そこからの電子のフィールド放出を可能にする物質又は材料を含む。上記特許出願明細書には、組成物例が記載されている。
【0020】
電子源組成物303から電子307を抽出するために、電子源組成物303の近くに、しかしこの電子源組成物303から実質的に電気的に絶縁された状態で、電子抽出格子305が位置決めされている。電子抽出格子305は、フィールド効果下の電子源組成物303から電子を抽出するのに十分な、電子源組成物303に対する電圧V+で維持される。相当な数の抽出された電子307の通路内に概ね位置するように、ターゲット材料309が位置決めされる。さらに、ターゲット材料309は、電子抽出格子305の電位及び電子源組成物303の電位の両方に対して正である電位V++で維持される。こうして、抽出された電子は、ターゲット材料309に向かって加速される。
【0021】
ターゲット材料309は、当業者には明らかなように、数多くの好適な材料のうちのいずれかであってよい。好適な材料は、用いられる特定の電圧及び間隔によって発生する電子エネルギーが、ターゲット材料309からのX線放出を引き起こすのに十分である材料である。好適な材料は、例えば、Cu、W、Moなどを含む。この層は、蒸着、スパッタリング、めっきなどによって堆積させることができ、或いは、例えばフォイルの形態で配置することもできる。
【0022】
ターゲット材料309に衝突すると、電子307の少なくとも僅かな部分がターゲット材料309からX線を放出させる。発生したこの輻射線の一部313は、外方に、すなわち電子307が加速された方向と概ね同じ方向に指向されることになる。本発明の好ましい実施態様の場合、ターゲット材料309のための支持面311は、X線に対して透明であり、ひいては部分313は装置から射出する。
【0023】
図示はしていないが、電子が加速される際に通る空間は、好ましくは、気体分子との衝突なしに弾道移動する電子の部分を最大化するために、少なくとも部分的に排気される。気体分子との衝突は、このような衝突が有効電子収量を低減し、従ってX線発生システムの効率を低減する点で望ましくない。さらに、電子の気体分子との衝突は、正イオンの発生を招くおそれがあり、これらの正イオンは次いで加速されて電子抽出格子305及び電子源組成物303に向かって戻され、潜在的に損傷又は時期尚早の摩耗を引き起こす。
【0024】
本発明の実施態様の範囲内で使用可能な別の透過モード・フラットX線パネル源が、図4に概略的に示されている。図4の装置は、電子源組成物303及び電子抽出格子305の代わりに熱イオン放出素子404、例えばリボン状又はワイヤ状の材料が設けられていることを除けば、図3の装置と類似している。熱イオン放出素子404は側方から示されているが、言うまでもなく、素子404は、ターゲット材料409とのその対応関係が実質的に均一であるように曲げられるか又は延ばされている。すなわち、素子404は、ターゲット材料409の横方向面積の小さな割合に対応する横方向面積を有していてよいが(すなわち、図4の平面に対して垂直な、パネルのフラットな次元において)、ターゲット材料409のそれぞれの部分、例えばそれぞれ8分の1の部分が、ターゲット材料409のそれぞれ他の部分とほぼ同じ割合の素子404と鉛直方向に対応する。このことは、放出された電子の横方向分布の相対的な均一性をもたらし、また、素子404及びターゲット材料409の効率的な使用を促進する。典型的には、要素404は蛇行パターンを成して曲げられるか又は巻かれており、所与の距離におけるパス数は、均一性が望まれるその尺度によって決定される。例えば3パス形態を使用すると、極めて粗い尺度でおおよその均一性がもたらされるのに対して、同じターゲット材料409の領域全体にわたって91パス形態を使用すると、著しく高い均一性がもたらされることになる。
【0025】
熱イオン放出に適した材料が当業者には明らかであるが、しかし典型的な材料は、トリエーテッド・タングステン、及び六ホウ化ランタンである。一般に、好適な材料は、制限無しに、グラファイト、金属、又は金属合金、又は非金属合金、又はこれらの組み合わせを含む。
【0026】
図3及び4に関して上述した装置は、透過モード装置であるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の別の実施態様の場合、他のモードが使用される。従って一般には、作業モード例は、(1)フィールド放出透過(図3に示す);(2)フィールド放出反射;(3)熱イオン放出透過(図4に示す);及び(4)熱イオン放出反射である。反射モードは、(透過モードにおけるような)電子衝撃と対向する側とは反対に、電子衝撃と同じ側でターゲット材料309, 409から射出するX線を利用する。反射モードの場合、ターゲット材料は、透過モードの場合よりも著しく厚い。
【0027】
図示のX線発生装置の形態は、広域にわたって電子を発生させ、そして点源装置よりも著しく大きい面積にわたってX線を提供する。例えば、図示の装置は、100平方インチ以上の面積からX線を容易に放出することができる。
【0028】
食品及び物質を高速で衛生化及び汚染除去するのに必要な出力が高く、また、電子からX線への変換が相対的に非効率に行われることにより、図3及び図4を用いて説明したような装置は、相当な量の熱を発生させる。この熱がシステムから除去されなければ、損傷又は加速された摩耗が生じるおそれがある。従って本発明の好ましい実施態様の場合、フラットパネルX線発生装置は冷却機構を含む。より小さな用途の場合、固体冷却器を介して行うような低出力冷却が用いられてよい。しかし、より高い冷却出力が典型的には必要とされ、そしてこのような事例において、液体熱除去システムが使用される。
【0029】
本発明の実施態様の場合、液体熱除去システムは、熱導電性導管内に収容されたコイル状流体通路を含み、導管は、例えば支持面311, 411を介してターゲット材料309, 409と熱接触している。図3及び4には、導管320, 420は、流体入口315, 415及び流体出口317, 417を有する状態で横断面で示されている。
【0030】
上記X線発生システムの効率は、反射モード及び透過モードの両作業を採用することにより高めることができる。図5に示された装置は、電子を提供するためにフィールド放出を利用するが、この代わりに又はこれに加えて、電子を供給するために熱イオン素子を使用することもできる。図示の装置は図3に示されたものと類似していており、そして同様の要素には、同じ下二桁が付されている。
【0031】
図示の装置は、対向する付加的な抽出格子531が設けられている点で図3の装置とは異なる。第2の抽出格子531は電子533を抽出し、電子は、抽出格子531と第2のターゲット表面535との間の印加フィールドの影響下で第2のターゲット表面535に向かって加速される。電子533がターゲット表面535と衝突すると、X線が発生し、X線の一部が格子に向かって戻るように指向される。ターゲット表面535の厚さに応じて、これらのX線の一部が装置を横切り、そして、装置の透過部分によって産出されたX線部分と一緒に装置から射出する。支持構造511はX線透過性であるべきであるが、支持面537はその必要がないことは言うまでもない。本発明の1実施態様の場合、表面537は、X線を透過させるのではなく、これを遮断及び/又は反射させる。支持体537も同様に、廃熱を除去し、そして装置の作業及び寿命を向上させるために、冷却機構539を備えていてよい。
【0032】
各実施態様が、上記の、そして引用された出願において記載された電子源のために、より一般的な要素(例えばタングステン、カーボンブラックなど)を使用することに注目するべきである。このことは、より新しい種類の材料、例えばナノチューブを利用するシステムを凌ぐコスト及び単純さの利点をもたらす。しかしながら、本発明の実施態様において、この代わりに又はこれに加えて、このような新種の材料が使用されてもよい。さらに、いくつかのシステムとは異なり、図示のシステムの電子は、図示の広域作業を可能にするために、集束することなしに弾道移動する。
【0033】
本発明の実施態様の範囲内で使用可能な数多くのX線発生装置について説明してきたが、このようなシステムのいくつかの使用例を以下に検討する。図6は、固体又は半固体(すなわち非液体)材料の衛生化及び/又は汚染除去のための照射システムを概略的に示す。システム601は、X線606をターゲット・ゾーン605に照射するための上述のX線発生装置603を含む。ターゲット・ゾーン605は、材料608を処理の際にターゲット・ゾーン605内に導入するのを単純化するために、コンベヤ・ベルト607又はその他の輸送メカニズム上に重ね合わせることができる。
【0034】
放出された輻射線に対して垂直の(すなわち、方向B及び頁の次元から出る方向における)ターゲット・ゾーン605の幅及び高さの次元は好ましくは、相対的に均一である、例えば変動率がほぼ20 %未満である輻射線場606の領域内部で、X線発生装置603の正面全体にわたって延びるように選択される。方向A(すなわち放出された輻射線に対して平行な方向)におけるターゲット・ゾーン605の次元は好ましくは、被処理材料608の吸収率及び所要線量に基づいて選択される。例えば、高吸収性材料608は、輻射線606の好適な浸透を保証するために、より浅いターゲット・ゾーン605を必要とすることがある。さらに、所要線量がより高くなると、このことは、ゾーン605内の滞留時間、及び方向Aにおけるゾーン605の深さの両方に影響を及ぼすことがある。
【0035】
任意のコンベヤ・ベルト607は、被処理材料608がX線発生装置603によって放出される場内部に特定の滞留時間を有するように、連続的に運動していてよい。或いは、コンベヤ607は、方向Bにおけるターゲット・ゾーン605の幅次元にほぼ等しい単位で、材料をステップ状に送り、各ステップに続いて、ターゲット・ゾーン605内部で材料608を処理するのを可能にするために必要に応じて遅延を生じさせることもできる。
【0036】
或いは、液状又は気体材料を、本発明の実施態様の範囲内で処理することもできる。具体的には、図7は、液体及び/又は気体材料の衛生化及び/又は汚染除去のための照射システムを概略的に示している。システム701は、X線706をターゲット・ゾーン705に照射するための上述のX線発生装置703を含む。この場合、ターゲット・ゾーン705は、材料708を処理の際にターゲット・ゾーン705内に導入するために、実質的にX線に対して透明な材料から成る導管707上に重ね合わせることができる。
【0037】
図8A-8Bは、液体及び/又は気体材料の衛生化及び/又は汚染除去のための別の照射システムを概略的に示しており、理解しやすさのために、X線発生装置、輻射線、及びターゲット・ゾーン以外の要素は省く。具体的には、図8Aは、2つの対向する上記フラットパネル輻射線源が採用されているシステムを示す。具体的には、輻射線802を方向Aでターゲット・ゾーン803を横切って放出するように、源801が配向され位置決めされる。同時に、輻射線805を方向Bでターゲット・ゾーン803を横切って放出するように、第2の源804が配向され位置決めされる。このようにして、ターゲット・ゾーン803における材料の輻射線処理をより高速に行うことができ、そしてその線量は、ターゲット・ゾーン803内の照射を施される材料全体を通してより均一になる。加えて、源801, 804の出力及び間隔は、処理される材料内部の線量プロフィールを調節するために調整することができる。
【0038】
図8Bは、2対の対向する上記フラットパネル輻射線源が採用されているシステムを示す。具体的には、輻射線831を方向Aでターゲット・ゾーン829を横切って放出するように、源821が配向され位置決めされる。同時に、輻射線833を逆方向でターゲット・ゾーン829を横切って放出するように、源825が配向され位置決めされる。これに呼応して、輻射線835を方向Bでターゲット・ゾーン829を横切って放出するように、源823が配向され位置決めされるのに対して、輻射線837を逆方向でターゲット・ゾーン829を横切って放出するように、源827が配向され位置決めされる。このようにして、ターゲット・ゾーン829における材料の輻射線処理をより高速に行うことができる。やはり上述のように、源821, 823, 825, 827の出力及び間隔は、処理される材料内部の線量プロフィールを変えるために調整することができる。図示の実施態様による全てのターゲット・ゾーンが3次元であり、X線発生装置の正面に対して実質的に平行な高さ及び幅の次元と、放出される輻射線に対して実質的に垂直な深さ次元とを有することは言うまでもない。
【0039】
本発明の更なる実施態様の場合、処理するためのターゲット物質は重合性化学物質であり、その輻射線は材料を重合するのに役立つ。この技術は、高エネルギーX線ではなくUV線を使用する従来の重合システムを凌ぐ。具体的には、X線重合を用いれば、より厚いシートを形成することができる。加えて、システムのスループットは、シート厚とは無関係に、X線のより高いエネルギー及びより高速の作用に起因して従来の方法を凌ぐように改善することができる。
【0040】
数、配向、及び形態に関するX線の図示の配置関係は排他的なものではなく、任意の数の他の配置関係が、本明細書中の教示を与えられた当業者には明らかになる。
【0041】
前述の例示では、輻射線処理システムにおける材料の単一パス処理について述べているが、言うまでもなく、この代わりに又はこれに加えて、その他の手順を用いることもできる。例えば、曝露時間全体を通して、材料をターゲット・ゾーン内でゆっくりと回転させることができる。代わりに、ターゲット材料を所定の時点に特定の単位で回転させることもできる。例えば、放射時間の半ばを過ぎたときに、材料を180度回転させることができる。
【0042】
本発明の特定の実施態様の場合、本明細書中に記載したフラット源処理システムは、効率及び製品スループットを高めるために線量率を増大させることにより、既存の点源処理システムを凌ぐ。しかしながら、本発明のシステムがより低い線量率で使用されるような本発明の実施態様においても、本発明のシステムは競合システムと比較して取り付け上及び作業上のコストを低くすることを依然として可能にする。
【0043】
新しい、そして有用なX線処理システムが本明細書に記載されていることは明らかである。本発明の原理を当てはめることができる数多くの可能な実施態様を考慮しても、図面を参照しながら本明細書中に記載した実施態様が一例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとは見なすべきでないことを認識するべきである。例えば、図示された正確な形態及び形状は一例であること、ひいては、例示された実施態様を、本発明の範囲を逸脱することなしに、配置関係及び詳細において改変できることは当業者には明らかである。
【0044】
従って、本明細書中に記載された本発明は、添付の特許請求の範囲及びこれらの同等のものの範囲内に含まれ得るような実施態様全てを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質中の汚染物質の存在の生物学的作用を低減するために該ターゲット物質に照射を施す方法であって、該方法が:
幅及び高さの次元を有する少なくとも1つのフラットパネルX線源を用意し;
該少なくとも1つのフラットパネルX線源の幅及び高さの次元と整列し、そして該次元と実質的に同じであるか又は該次元よりも小さい幅及び高さの次元を有するターゲット・ゾーン内部に、該ターゲット物質を入れ;そして
該ターゲット物質中の汚染物質の存在の生物学的作用を低減するために、該少なくとも1つのフラットパネル源からの輻射線を、該ターゲット物質に照射する
ことを含む、
ターゲット物質に照射を施す方法。
【請求項2】
該ターゲット物質が食用物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該汚染物質が、細菌性、菌性、又はウィルス性であり、そして、該汚染物質の存在の生物学的作用を低減することは、該ターゲット物質の消費者における感染リスクを実質的に低減するのに十分な量の汚染物質を殺すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該汚染物質が、細菌性、菌性、又はウィルス性であり、そして、該汚染物質の存在の生物学的作用を低減することは、該ターゲット物質の腐敗を実質的に低減するのに十分な量の汚染物質を殺すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該汚染物質が化学物質であり、そして該汚染物質の存在の生物学的作用を低減することは、該ターゲット物質の消費者における毒性反応のリスクを実質的に低減するのに十分な量の汚染物質を化学的に改質することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該ターゲット物質中の汚染物質の存在の生物学的作用を低減するために該ターゲット物質に照射を施すことは、所定の時間にわたって所定の線量レベルで該ターゲット物質に照射を施すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該1つ又は2つ以上のフラットパネルX線源が、ゲートフィールドエミッター電子源を含み、そして反射単独モード、透過単独モード、及び反射/透過組み合わせモードから成る群から選択されたモードで作業する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該1つ又は2つ以上のフラットパネルX線源が、熱イオン・エミッター電子源を含み、そして反射単独モード、透過単独モード、及び反射/透過組み合わせモードから成る群から選択されたモードで作業する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該少なくとも1つのフラットパネルX線源が、該ターゲットゾーンに照射を施すように配列された複数のフラットパネルX線源を含み、そして該フラットパネル源からの輻射線を該ターゲット物質に照射する該工程がさらに、複数のフラットパネルX線源のそれぞれからの輻射線を該ターゲット物質に照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該少なくとも1つのフラットパネルX線源が、電子を提供するための電子源とターゲットとを含み、該電子源によって提供される該電子が、該ターゲットに向かって加速され、そして該ターゲットに衝突し、これにより、該ターゲットからX線を放出させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該ターゲットは、該電子源に対して正に偏倚される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該ターゲットが接地され、そして該電子源が該ターゲットに対して負に偏倚される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ターゲット物質中の汚染物質の存在の生物学的作用を低減するために該ターゲット物質に照射を施す処理システムであって、該処理システムが:
それぞれが幅及び高さの次元を有する1つ又は2つ以上のフラットパネルX線源;及び
該1つ又は2つ以上のフラットパネルX線源のそれぞれの幅及び高さの次元と整列し、そして該次元と実質的に同じであるか又は該次元よりも小さい幅及び高さの次元を有するターゲットゾーン内部
を含み、これにより、該1つ又は2つ以上のフラットパネル源からの輻射線を該ターゲット物質に照射することが、該ターゲット物質中の汚染物質の存在の生物学的作用を低減するのに役立つ、処理システム。
【請求項14】
該ターゲット物質が食用物質を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
該汚染物質が、細菌性、菌性、又はウィルス性であり、そして、該汚染物質の存在の生物学的作用を低減することは、該ターゲット物質の消費者における感染リスクを実質的に低減するのに十分な量の汚染物質を殺すことを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
該汚染物質が、細菌性、菌性、又はウィルス性であり、そして、該汚染物質の存在の生物学的作用を低減することは、該ターゲット物質の腐敗を実質的に低減するのに十分な量の汚染物質を殺すことを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
該汚染物質が化学物質であり、そして該汚染物質の存在の生物学的作用を低減することは、該ターゲット物質の消費者における毒性反応のリスクを実質的に低減するのに十分な量の汚染物質を化学的に改質することを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
該1つ又は2つ以上のフラットパネルX線源が、所定の時間にわたって所定の線量レベルで該ターゲット物質に照射を施すように制御される、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
該1つ又は2つ以上のフラットパネルX線源のうちの少なくとも1つが、ゲートフィールドエミッター電子源を含み、そして反射単独モード、透過単独モード、及び反射/透過組み合わせモードから成る群から選択されたモードで作業する、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
該1つ又は2つ以上のフラットパネルX線源のうちの少なくとも1つが、熱イオン放出電子源を含み、そして反射単独モード、透過単独モード、及び反射/透過組み合わせモードから成る群から選択されたモードで作業する、請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
該1つ又は2つ以上のフラットパネルX線源が、それぞれが該ターゲットゾーンに照射を施すように配列された複数のフラットパネルX線源を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
該ターゲット物質が液体又は気体であり、該システムはさらに、該ターゲット・ゾーンを通して該ターゲット物質を搬送するための、該ターゲット・ゾーンを貫通する導管を含み、該導管が、少なくとも該ターゲット・ゾーン内部に位置する導管部分内でX線に対して実質的に透明である、請求項13に記載のシステム。
【請求項23】
該ターゲット物質を重合するためにターゲット物質に照射を施す方法であって、該方法は:
幅及び高さの次元を有する少なくとも1つのフラットパネルX線源を用意し;
該少なくとも1つのフラットパネルX線源の幅及び高さの次元と整列し、そして該次元と実質的に同じであるか又は該次元よりも小さい幅及び高さの次元を有するターゲット・ゾーンを通して、該ターゲット物質を輸送し;そして
該ターゲット物質を重合するために、該少なくとも1つのフラットパネル源からの輻射線を、該ターゲット物質に照射する
ことを含む、ターゲット物質に照射を施す方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公開番号】特開2013−34870(P2013−34870A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−198336(P2012−198336)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2008−533426(P2008−533426)の分割
【原出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(500397411)キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション (126)
【Fターム(参考)】