説明

天井の断熱構造

【課題】施工性が高くかつエネルギー効率のよい住宅の天井の断熱構造を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、建物の天井パネル2に断熱性及び気密性を付与する天井の断熱構造1であって、間隔をおいて配置された複数の野縁3,3・・と、野縁3,3・・の下面側3aに固定された断熱ボード5と、断熱ボード5の下面に固定された天井パネル2と、隣接する野縁3,3の間に跨るように、かつ、これら野縁3,3の下面3aと断熱ボード5の上面5bとの間に配置されるとともに下面3a及び上面5bに貼着された第1の補強シート7とを備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工性が高くかつエネルギー効率のよい住宅の天井の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の建築物には、屋内で冷暖房等を使用する際に、室内の熱が漏れたり外気が屋内に出入したりすることによるエネルギーロスを抑えて住空間の快適性が得られるよう、天井、床、外壁等に断熱材や気密材が施工されている。
住宅のエネルギー効率を高めるには、一般的に、天井、外壁及び床等に断熱材を配するとともに、断熱材同士等の間隙を埋め断熱及び気密化が図られていない箇所をなくす必要があるが、天井部への断熱材の施工は、高所での施工となる上、下地材となるものとして野縁等が組まれているのみであるため、様々な施工方法が開発されている(例えば下記特許文献1)。
【0003】
下記特許文献1に記載の天井の断熱構造では、天井における小屋梁の下方の野縁上に天井断熱材が天井全体に亘って敷設され、野縁下面に天井気密シート材が所定の間隔でタッカーにより固定された状態で貼り付けられている。更に、天井気密シート材の下面には、気密層及び天井面材として天井下地材が連続的に設けられ、その下方に天井仕上げ材が固定されている。そして、天井面材及び外壁等との取合い部は、隙間充填体で覆う構造とされている。
このような構造を採用することにより、「木造建築物の気密性の向上を図りつつ、シート材同士の端部をオーバーラップさせて連続する作業や、テープ等で躯体の隙間を埋める作業を不要として、気密構造の施工性を向上させ、不慣れな作業者でも気密構造の施工を容易に行うことができ、延いては気密構造を有する木造建築物の温暖地域での普及性の向上を図ることができる」としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−59285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記断熱構造によれば、所定の間隔で高所に多数配置された複数の野縁の間からその上部に天井断熱材を通し入れて、これらの複数の野縁上に配置しなければならないため、施工作業が煩雑かつ困難であるという問題があった。
しかも、高所に組まれた複数の野縁上に、天井全体に亘って隙間なく天井断熱材及び天井気密シートを敷設し固定するには、経験に基づく一定の習熟が必要であり、不慣れな作業者が容易に施工できるというものではなかった。
また、野縁上に敷き込む天井断熱材が、ガラスウール,ロックウール又はウレタン等により形成されているものであるため、野縁上で徒に嵩張り、野縁と屋根との間のスペース(いわゆる屋根裏)を有効活用し難いという問題があった。
また更に、嵩張りやすいガラスウール等を天井全体に配するものであるため、施工現場に大量のガラスウール等を運搬しなければならず、また、天井断熱材のための置き場に多くのスペースが取られ、円滑な施工作業の妨げになるという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、施工性が高くかつエネルギー効率のよい住宅の天井の断熱構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、建物の天井パネルに断熱性及び気密性を付与する天井の断熱構造であって、間隔をおいて配置された複数の野縁と、該野縁の下面側に固定された断熱ボードと、該断熱ボードの下面に固定された天井パネルと、隣接する前記野縁の間に跨るように、かつ、これら野縁の下面と前記断熱ボードの上面との間に配置されるとともに前記下面及び前記上面に貼着された第1の補強シートとを備えてなることを特徴とする。
本発明では、断熱ボードを野縁の下面側に貼着し固定する構成とされているため、断熱ボードの敷設を簡便に行うことができる。また、断熱材がボード状に形成されたものであるため、天井全体に亘って一定の厚さをもって水平に隙間なく貼着することが容易である。
また、隣接する野縁間に跨って野縁の下面に配された第1の補強シートに断熱ボードを貼着できるため、断熱ボードを隣接する野縁間方向に弛み及び歪みなく気密性をもって容易に敷設することができる。また、断熱ボードの敷設後も、第1の補強シートにより、断熱ボードを弛み及び歪みを発生させることなく気密性をもって支持することができる。
また、断熱ボードは、野縁の下面に配するため、野縁と屋根との間のスペースを占有することがない。
また更に、断熱ボードは、ガラスウール等のように嵩張らず、一定の厚さに形成され、1のボードが所定の板面積となるようにカットしておくことが可能であるため、施工現場への運搬においても断熱ボードを重ねてコンパクトにすることができ、また、現場での施工時にも断熱ボードをコンパクトにまとめて場所をとらずに載置しておくことができる。
また、第1の補強シートがシート状に形成されたものであるため、この第1の補強シートの厚みが野縁の下面側に配された断熱ボードにひびき難く、第1の補強シートが配された位置で断熱ボードを隆起させて表面が歪な形状になり断熱ボード間で隙間が形成されることを防止することができる。
請求項2の発明は、前記断熱ボードが、前記各野縁間に跨って、かつ、該各野縁の延在する方向に配置された複数の単位断熱ボードからなり、前記第1の補強シートは、前記単位断熱ボードの前記野縁間に跨る方向に延在する端部上面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の天井の断熱構造である。単位断熱ボードとは、一の断熱ボードのことをいう。
本発明では、第1の補強シートが単位断熱ボードの野縁間に跨る方向に延在する端部の上面に沿って配置されているため、この単位断熱ボードの端部の弛み歪みを発生させないよう水平に支持し、隣接する他の単位断熱ボードとの隙間の形成を防止することができる。
請求項3の発明は、前記隣接する単位断熱ボードの前記野縁間を跨る方向に延在する端面同士の間には、第2の補強シートが配置されていることを特徴とする請求項2に記載の天井の断熱構造である。
本発明では、第1の補強シートが断熱ボードの端部の上面に貼着されているのに対し、第2の補強シートが前記端部と同方向に延在し、前記上面と角度を成す断熱ボードの端面に配されているため、断熱ボードの端部に一層の剛性を付与し、弛みや歪みによる隙間の発生をより確実に防止することができる。
請求項4の発明は、前記隣接する単位断熱ボードの前記野縁間に跨る方向に延在する端面同士の間には気密保持部材が介装されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の天井の断熱構造である。
本発明では、隣接する単位断熱ボード間の隙間に気密保持部材が介装されているため、複数の単位断熱ボードを用いて天井に断熱材を配する場合であっても、隙間が形成されやすい断熱ボードの端面間をより確実に気密化することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の天井の断熱構造によれば、断熱ボードを野縁の下面側に貼着し固定する構成とされているため、断熱ボードの敷設を簡便に行うことができ、経験や習熟の少ない者であっても、容易に気密性をもって断熱材を天井に配することができることから施工性が高く、かつ断熱材がボード状に形成され、野縁の下面に隣接する野縁間に跨って配された第1の補強シートに断熱ボードを貼着できるため、断熱ボードを弛みや歪みなく気密性をもって敷設することができることからエネルギー効率のよい住宅の天井の断熱構造を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造を一部の部材を分解して示した斜視図である。
【図2】は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造のA−A線において矢視した断面面図である。
【図3】は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造のB−B線において矢視した断面面図である。
【図4】は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造を構成する端部部材を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造を構成する端部部材の製造工程図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造の施工方法を示した工程図である。
【図7】(a),(b)は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造の施工方法を示した工程図である。
【図8】は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造を構成する端部部材の変形例を示す側面図である。
【図9】は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造を構成する端部部材の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図1〜図9は、天井の断熱構造をその説明の便宜上模式的に示したものであり、各部材の実際の寸法関係を厳密に表したものではない。
図1は、本発明の一実施形態として示した天井の断熱構造1を、天井パネル2を分解して示した斜視図である。
この天井の断熱構造1は、間隔をおいて平行に配置された複数の野縁3,3・・と、該野縁3の下面3aに長手方向に貼着された気密テープ4と、この気密テープ4を介して野縁3の下面3aに固定された断熱ボード5と、該断熱ボード5の下面に固定された天井パネル2と、隣接する野縁3,3の間に跨るように、かつ、野縁3,3の下面3aと断熱ボード5の上面5bとの間に所定の間隔で配置されるとともに、野縁3の下面3a及び断熱ボード5の上面5bに貼着された第1の補強シート7と、第1の補強シート7の端縁に連設された気密保持部材8とを備えて構成されている。
【0010】
図2,図3に示すように、気密テープ4は、野縁3と断熱ボード5との間に気密性を持たせる部材であり、野縁3の下面3aに野縁3の延在する方向に沿って貼着されている。
気密テープ4は、発泡倍率20倍のポリエチレン発泡樹脂シートにより厚さ2mmに形成され、気密テープ4の表面及び裏面には両面テープが予め貼着されている。
【0011】
断熱ボード5は、天井パネル2と略同寸法で矩形に形成されたボード状の部材であり、材料としては特に限定されないが、例えば、ポリスチレン,ポリエチレン,フェノール,硬質ウレタン等の弾性変形して圧縮可能な発泡樹脂材料により形成されている。より具体的には、例えば、「省エネルギー対策等級4 技術基準」表3−1「断熱材の種類一覧」で示された、A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板1〜4号、A種ポリエチレンフォーム保温板1種1号,2号,2種,3種、A種押出法ポリスチレンフォーム保温板1種〜3種、A種フェノールフォーム保温板1種2号,2種1号,2号,2種3号,3種1号,2号、A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板特号,A種硬質ウレタンフォーム保温板1種,2種1号〜4号等を用いることができる。
なお、断熱ボード5は、弾性変形して圧縮可能な発泡樹脂材料により形成されているため、野縁3に接着剤やゴミなどの付着物が付着した際の突起、又は野縁3の多少の段差等は、断熱ボード5が弾性変形して圧縮されることにより効果的に吸収される。
【0012】
断熱ボード5の厚さ寸法は、10mm〜150mmとするのが好ましく、20mm〜100mmとするのが更に好ましい。
図3に示すように、断熱ボード5は、その下面5aに天井パネル2の上面2aを貼り合わせ、その上面5bを野縁3の下面3aの気密テープ4に密着させて固定されている。
【0013】
天井パネル2は、石膏等を芯材としてこの芯材の表面をパネル用の厚紙で被覆し、更にクロスを貼り付け天井最下面に配される仕上げ用の板状部材であり、断熱ボード5と略同寸法の長方形に切り出されたものである。
天井パネル2の厚さ寸法は、特に制限はないが、3mm〜50mmとするのが好ましく、5mm〜30mmとするのが更に好ましい。
かかる天井パネル2は、図1に示すように、例えば釘等の固定部材20により、長手方向に延在する端部2c,2cを、断熱ボード5を介して野縁3,3の下面3aに固定されている。
【0014】
第1の補強シート7は、野縁3,3に固定された断熱ボード5及び天井パネル2を野縁3に直交する方向(野縁3,3間に跨る方向)に保持してこれら断熱ボード5及び天井パネル2を支持する帯状に形成された部材である。
第1の補強シート7の材質としては、例えば、ポリプロピレン,塩化ビニル樹脂,塩化ビニリデン樹脂,酢酸ビニル樹脂,ポリビニルアルコール,ポリビニルアセタール,ポリスチレン,AS樹脂,ABS樹脂,メタクリル樹脂,ポリエチレン,フッ素樹脂,ポリアミド,ポリアセタール,ポリカーボネート,ポリスルホン等の単体もしくはこれらの複合物よりなる合成樹脂材料、ガラス繊維強化プラスチック,炭素繊維強化プラスチック,アラミド繊維強化プラスチック等の樹脂材料に繊維系材料を混入させた複合材料、又は炭素鋼,ステンレス鋼,クロム鋼,マンガン鋼,ニッケルクロム鋼,ニッケルマンガン鋼等を備えてなる金属材料等の耐久性及び剛性を有するものが挙げられる。特に、金属材料の場合は、ステンレス鋼のような錆びにくい材料が用いられるか、塗装、メッキなどの防錆処理がなされていることが好ましい。
第1の補強シート7の厚さ寸法は、0.2mm〜5mmとされていることが好ましく、0.3mm〜3mmとされていることが更に好ましい。第1の補強シート7の厚さ寸法が0.2mmより小さい場合、第1の補強シート7は、断熱ボード5の弛み及び歪みを防止し得る強度及び曲げ剛性を担保することが困難となり、同厚さ寸法が5mmより大きい場合、この第1の補強シート7の厚みが野縁3の下面3a側に配された断熱ボード5にひびく可能性があり、第1の補強シート7が配された位置で断熱ボード5を隆起させて表面が歪な形状なったり断熱ボード5,5同士の間で隙間が形成されたりすることが考えられる。
【0015】
図2,図3に示すように、第1の補強シート7は、隣接する野縁3,3の間に跨るように、所定の間隔をおいて複数平行に配置され、野縁3,3の下面3aに対向する板面に両面テープt1を貼着し該気密テープ4の表面に貼着されている。第1の補強シート7の下方を向く板面には、両面テープt2を貼着し、この両面テープt2によって断熱ボード5の短手方向に延在する端部(断熱ボード5の野縁3,3間に跨る方向に延在する端部)の上面5bを貼り合わせて保持固定している。
【0016】
図3に示すように、気密保持部材8は、野縁3,3に隣接配置される断熱ボード5,5の野縁3,3間に跨る方向(紙面奥行き方向)に延在する端面15,15同士の間に挟持され、該端面15,15間の気密性を持たせる部材であり、発泡倍率が5倍〜50倍のポリエチレン等を材料とする発泡性樹脂により形成されている。
気密保持部材8の板面の寸法は、図1に示すように、長手方向の寸法L1が断熱ボード5の野縁3,3間に跨る方向に延在する端部の長さを有し、短手方向の寸法L2が断熱ボード5の厚さ寸法と同寸法か、この厚さ寸法よりも小寸法とされている。気密保持部材8の厚さ寸法は、1mm〜20mmであればよく、2mm〜10mmとされていると更に好ましい。
【0017】
上記の構成の下に、第1の補強シート7と気密保持部材8とは、図4に示すように、長手方向に延在する各一端縁7m,8mにおいて両面テープt1により略垂直に連結され、断熱ボード5の端部に配される端部部材9を構成している。なお、両面テープt1は、第1の補強シート7の板面全体を覆うものであってもよい。
【0018】
次に、端部部材9の作製方法と天井の断熱構造1の施工方法について説明する。
天井の断熱構造1の施工に際しては、まず、断熱ボード5及び天井パネル2の固定に用いられる端部部材9を用意しておく。
端部部材9の作製は、図5(a)に示す第1の補強シート7に、同図(b)に示すように第1の補強シート7の長手方向に延在する端縁7mに沿って両面テープt1を貼着する。この際、両面テープt1の長手方向に延在する端縁sが第1の補強シート7から突出するように配置する。そして、同図(c)に示すように、第1の補強シート7の板面7aに対して気密保持部材8の板面8aが垂直に立ち上がるように気密保持部材8の端面を両面テープt1に貼着し、断面が略逆L字状になるように端部部材9を形成する。
【0019】
一方、野縁3には、図6(a)に示すように、まずその下面3a全体を覆うように気密テープ4を貼着しておく。
そして、同図(b)に示すように、予め作製しておいた端部部材9を、所定の間隔、具体的には、一の断熱ボード5の長手方向に延在する端部の寸法(すなわち野縁3の延在方向に沿う端部の長さ寸法)と同寸法又は僅かに短い間隔を置いて、野縁3,3に跨ってこれら野縁3,3の延在する方向に直交するように配置し固定していく。同図(c)は、端部部材9が配置された状態を側断面視した図である。
【0020】
端部部材9を上記のように設置していくと、図6(b)に示すように、野縁3,3と端部部材9,9とによって断熱ボード5を固定する下地となる矩形の枠Wが形成される。そこで、この枠Wに予め天井パネル2が貼り合わされた単位断熱ボード5を順次当接させ、図7(a)に示すように、第1の補強シート7の下方の位置で天井パネル2を上方に押圧し、第1の補強シート7に断熱ボード5を確実に貼着する。この際、端部部材9,9・・は、一の断熱ボード5の長手方向に延在する端部の寸法と同寸法又は僅かに短い間隔を置いて配置されているため、気密保持部材8を挟んで隣接する断熱ボード5,5は、気密保持部材8に対して付勢しつつこの気密保持部材8を隙間なく密に挟持して配置される。そして更に、同図(b)に示すように、野縁3に対向する天井パネル2及び断熱ボード5の端部を釘等の固定部材20により、これら天井パネル2及び断熱ボード5を天井部に固定して、天井の断熱構造1の施工が完了する。なお、固定部材20としては、釘、ボルトや木ねじ等が挙げられるが、固定部材20を用いずに、接着剤や嵌合等により固定されてもよい。
【0021】
このようにして、天井の全体に断熱ボード5が配され、断熱ボード5,5同士の間に隙間が形成され得る野縁3,3の延在方向には気密テープ4が配され、野縁3の延在方向に直交する端面15,15同士の間には気密保持部材8が配され、断熱ボード5,5がこの気密保持部材8に付勢しつつ密着して固定されて、天井全体において隙間なく気密材及び断熱材を配することができ、気密性及び断熱性の高い天井の構造1が形成される。
【0022】
以上のように、天井の断熱構造1によれば、断熱ボード5を野縁3の下面3a側に貼着し固定する構成とされているため、断熱ボード5の敷設を簡便に行うことができる。また、断熱材がボード状に形成されたものであるため、天井全体に亘って一定の厚さをもって水平に隙間なく貼着することが容易となる。
【0023】
また、隣接する野縁3,3と、野縁3,3間に跨ってそれらの下面3aに配された第1の補強シート7,7とにより形成された枠Wに断熱ボード5及び天井パネル2を当接させて敷設することができるため、断熱ボード5の敷設が容易であるとともに、断熱ボード5を気密保持部材8に付勢して密着させ、野縁3,3間方向に弛みなく気密性をもって敷設することができる。また、断熱ボード5の敷設後も、第1の補強シート7により、断熱ボード5を弛みなく支持することができ、高い断熱性及び気密性を得ることができる。
【0024】
また、断熱ボード5は、野縁3の下面3aに配するため、野縁3と屋根との間のスペースを占有することなく、このスペースを有効に活用することが可能となる。
また更に、断熱ボード5は、ガラスウール等のように嵩張らず、一定の厚さに形成され、1のボードが所定の板面積となるようにカットしておくことが可能であるため、施工に際して断熱ボード5を現場へ運搬する場合に、断熱ボード5を重ねてコンパクトにすることができ、また、現場での施工時にも断熱ボード5をコンパクトにまとめて場所をとらずに載置しておくことができる。
【0025】
また更に、第1の補強シート7が薄肉のシート状に形成されたものであり、かつ、断熱ボード5が弾性変形して圧縮可能な発泡樹脂製材料により形成されているため、この第1の補強シート7の厚みが野縁3の下面3a側に配された断熱ボード5にひびき難い。また第1の補強シート7の厚さであれば、断熱ボード5の厚さに吸収され得るため、第1の補強シート7が配された位置で断熱パネル5を隆起させて表面が歪な形状とし、断熱ボード5,5同士の間に隙間を形成することを防止することができる。
【0026】
また、第1の補強シート7が、耐久性及び剛性を有する材質で形成されているため、軽量で、シート状でありながら確実かつ長期に亘り断熱ボード5を確実に支持することができる。
また、第1の補強シート7が一の断熱ボード5の野縁3,3間に跨る方向に延在する端部の上面5bに沿って配置されているため、この一の単位断熱ボード5の端部を弛ませないよう水平に支持し、隣接する他の単位断熱ボード5との隙間の形成を防止することができる。
【0027】
上記の実施態様において、天井の断熱構造1の端部部材9は、第1の補強シート7を野縁3の下面3aと前記断熱ボード5の上面5bとの間にのみ配置する構成としたが、図8に示すように、第1の補強シート7と同材料からなる第2の補強シート10が第1の補強シート7に垂直に立ち上がるように気密保持部材8の板面に貼着された構成であってもよい。この場合、第1の補強シート7と第2の補強シート10とは互いに分離したものであっても、一体的に連設されたものであってもよい。
このような構成とすることで、端部部材9ひいては端部部材9に貼着する断熱ボード5の端部の剛性をより一層高めることができるという効果が得られる。
【0028】
又は、第1の補強シート7は、図9に示すように、気密保持部材8を挟んで両側方に隣接配置される断熱ボード5,5の双方を保持固定するものであってもよい。
かかる構成とすることで、断熱ボード5の野縁3,3間に跨る方向に延在する両端部をより一層確実に保持することができるという効果が得られる。
なお、本願発明は、木造住宅での天井の下地である野縁3に施工する天井の断熱構造1を例として述べたが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造などの住宅での天井の下地であるLGS(ライトゲージスタッド)にも適用してもよい。
【0029】
また、上記の実施形態においては、予め張り合わされた天井パネル2と単位断熱ボード5とを野縁3,3及び第1の補強シート7,7に固定したが、天井パネル2は、断熱ボード5の野縁3,3及び第1の補強シート7,7への固定の後に固定されてもよく、また、天井パネル2は断熱パネル5と異なる寸法に形成されたものであってもよい。
また更に、第1の補強シート7,7は、断熱ボード5の野縁3,3間に跨る方向に延在する端部の上面5bに位置するよう配置されているが、断熱ボード5の長手方向(野縁3の延在方向)の中間部において野縁3,3間に跨る方向に位置するよう配置してもよい。第1の補強シート7を断熱ボード5の長手方向の端部のみならず長手方向中間部にも配することによって、より強固に断熱ボード5を支持及び固定することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 天井の断熱構造
2 天井パネル
3 野縁
3a 野縁の下面
5 断熱ボード
7 第1の補強シート
8 気密保持部材
10 第2の補強シート
11 第3の補強シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井パネルに断熱性及び気密性を付与する天井の断熱構造であって、
間隔をおいて配置された複数の野縁と、
該野縁の下面側に固定された断熱ボードと、
該断熱ボードの下面に固定された天井パネルと、
隣接する前記野縁の間に跨るように、かつ、これら野縁の下面と前記断熱ボードの上面との間に配置されるとともに前記下面及び前記上面に貼着された第1の補強シートとを備えてなることを特徴とする天井の断熱構造。
【請求項2】
前記断熱ボードは、前記各野縁間に跨って、かつ、該各野縁の延在する方向に配置された複数の単位断熱ボードからなり、
前記第1の補強シートは、前記単位断熱ボードの前記野縁間に跨る方向に延在する端部上面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の天井の断熱構造。
【請求項3】
前記隣接する単位断熱ボードの前記野縁間を跨る方向に延在する端面同士の間には、第2の補強シートが配置されていることを特徴とする請求項2に記載の天井の断熱構造。
【請求項4】
前記隣接する単位断熱ボードの前記野縁間に跨る方向に延在する端面同士の間には気密保持部材が介装されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の天井の断熱構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−79492(P2013−79492A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218703(P2011−218703)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)