説明

天井クレーン

【課題】クレーンガーダの落下を防止することができる鉛直方向の揺れに対して強い天井クレーンを提供する。
【解決手段】建屋壁面に設けられ、水平面上で円形の旋回用走行レール、旋回用走行レールに差し渡され、旋回用走行レールとは旋回用車輪により回転支持されているクレーンガーダ、クレーンガーダに設けられた縦走用走行レールに縦走用車輪により回転支持されている走行式巻き上げ機、クレーンガーダと交叉する方向に設けられ、その端部に設けた旋回用車輪により旋回用走行レールと回転支持されている梁とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井クレーンに係り、特に円形面上に配置される天井クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
円形面上に配置される天井クレーンとして、原子炉建屋の頂上部に配置される天井クレーンがある。
【0003】
ここで、従来の原子炉建屋は、特許文献1に示されるように、円筒状に構成されており、その建屋内部には、球形の原子炉格納容器が据えつけられている。原子炉格納容器には、内部中央下部に原子炉圧力容器が備えられ、原子炉圧力容器のまわりには、原子炉遮へい壁がある。原子炉遮へい壁の外側の上半球部には、天井クレーンの一部であるクレーンガーダを支持するための円筒状の原子炉建屋天井構体の旋回用走行レールが設けられている。この円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レールには相当な強度が要求される。
【0004】
強度を考慮したクレーンガーダと円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レールの配置関係については、特許文献2で提案されるものがある。
【0005】
特許文献2に示される天井クレーンは、円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レールを持つ。クレーンガーダは、円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール上に敷設されている。クレーンガーダの上には、走行式巻き上げ機がある。
【0006】
特許文献2に示される天井クレーンは、走行式巻き上げ機が走行レール上に乗ることのみによって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−218689号公報
【特許文献2】特開平9−278363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の天井クレーンは、旋回用走行レールが円筒状の原子炉建屋天井構体が構成する水平円周面に沿って設置されており、クレーンガーダは水平円周面の直径を通る両端の2点間で支持されている。クレーンガーダには縦走用の走行レールが設けられており、この上を走行式巻き上げ機が荷を吊り上げて径方向に移動する。この旋回用走行レールと縦走用走行レールにより、走行式巻き上げ機は、水平円形面の任意の場所に位置することができる。
【0009】
この従来の天井クレーンの構造によれば、クレーンガーダは水平円周面の直径を通る両端の2点間で支持されている。このため、大地震が発生した際に、天井クレーンに鉛直方向の力が作用して鉛直方向に大きな揺れが加わりその応答が大きくなると、クレーンガーダの中央部が大きく撓む。その勢いで走行式巻き上げ機が走行レールから浮き上がって脱輪し、走行式巻き上げ機が落下、及びクレーンガーダが落下してしまう恐れがある。
【0010】
本発明においては、クレーンガーダの落下を防止することができる鉛直方向の揺れに対して強い天井クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、建屋壁面に設けられ、水平面上で円形の旋回用走行レール、旋回用走行レールに差し渡され、旋回用走行レールとは旋回用車輪により回転支持されているクレーンガーダ、クレーンガーダに設けられた縦走用走行レールに縦走用車輪により回転支持されている走行式巻き上げ機、クレーンガーダと交叉する方向に設けられ、その端部に設けた旋回用車輪により旋回用走行レールと回転支持されている梁とを含む。
【0012】
また、クレーンガーダは、差し渡し方向中央部が空間の枠体で構成されている。
【0013】
また、梁は、クレーンガーダの中央部から垂直に延び、走行レールと接地されている。
【0014】
また、梁は、クレーンガーダの両端部から、走行レールに向かって垂直に伸び、走行レールと接地されている。
【0015】
また、クレーンガーダの両端部は、円弧上の走行レールを広範囲に支持する構造である。
【0016】
また、走行レールは、高さ方向に傾斜を備え、傾斜部によりクレーンガーダ及び梁に設けられた旋回用車輪の脱輪を防止する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、クレーンガーダの落下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】原子炉建屋上部の縦断面図。
【図2】原子炉建屋上部の斜視図。
【図3】天井クレーン全体構成を示す図。
【図4】旋回用走行レールとクレーンガーダと梁の位置関係の一例を示す図。
【図5】旋回用走行レールとクレーンガーダと梁の位置関係の一例を示す図。
【図6】旋回用走行レールとクレーンガーダと梁の位置関係の一例を示す図。
【図7】図1のA部を拡大表示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【実施例】
【0020】
図2は、原子炉建屋上部の斜視図である。ここで、1が円筒状の原子炉建屋天井部1であり、20が原子炉建屋本体である。Hは、原子炉建屋上部の水平断面であり、この平面上に天井クレーンが設置される。まず、原子炉建屋上部の壁面(円筒状の原子炉建屋天井構体1)を利用して、円形状に走行レール2を配置する。円形状の走行レール2は、旋回用走行レールである。
【0021】
クレーンガーダ3は、円形状の走行レール2の2点間に差し渡されるが、通常は円形の中心を通る2点間に配置されるのがよい。クレーンガーダ3には、縦走用の走行レール7が設けられており、この上を走行式巻き上げ機4が荷を吊り上げて径方向に移動する。この旋回用走行レール2と縦走用走行レール7により、走行式巻き上げ機4は、水平円形面Hの任意の場所に位置することができる。なお、この例では旋回と縦走を行うので、水平円形面Hの任意の場所に位置するためには、360度旋回とするのであれば、走行式巻き上げ機4の縦走範囲は円形レール直径に対して半径の距離だけ移動できればよい。また図2において、梁5は、本発明により付加されたものであり、これについては後で説明する。
【0022】
図1は原子炉建屋上部の縦断面図である。この図でAの部分が、原子炉建屋上部の壁面(円筒状の原子炉建屋天井構体1)を利用して設けられた円形状の旋回用走行レール2と、旋回用走行レール上2に設けられた旋回用車輪21との取り付け関係を示している。旋回用車輪21は、クレーンガーダ3に取り付けられている。
【0023】
図3は、天井クレーン全体構成を示す図である。ここでは、旋回用走行レール2と縦走用走行レール7とクレーンガーダ3と梁5と走行式巻き上げ機4の接続関係について説明する。まず、円形状の旋回用走行レール2上には、クレーンガーダ3に取り付けられた旋回用車輪21が乗っている。図では、クレーンガーダ3の右側が図示表記されていないが、こちら側も旋回用走行レール2上に旋回用車輪21が乗っている。
【0024】
クレーンガーダ3は、枠体で構成され、中央部分が空間とされている。径方向の枠体の上部に縦走用の走行レール7が設けられており、この上に縦走用車輪22を介して走行式巻き上げ機4が載置されている。クレーンガーダ3中央部分の空間は、巻き上げ機のワイヤなどを通すために設けられた空間である。
【0025】
本発明では、さらにクレーンガーダ3の枠体に交叉して梁5を設けている。梁5もまたクレーンガーダ3と同様に、円形状の走行レール2の2点間に差し渡されて、旋回用車輪23により、走行レール2上に回転可能に取り付けられる。クレーンガーダ3の枠体とこれに交叉する梁5は、溶接などにより互いに固定されている。
【0026】
図4は、旋回用走行レール2とクレーンガーダ3と梁5の位置関係を上部から見た図であり、例えば円形の旋回用走行レール2が形成する円の中心を通る位置に、クレーンガーダ3と梁5を直行配置している。このように、一体構造のクレーンガーダ3と梁5は、旋回用走行レール2上に4点支持されている。
【0027】
係る構造とすることにより、地震発生時には、鉛直方向の力が作用し、鉛直方向に大きな揺れが加わりその応答が大きくなると、クレーンガーダ3が大きく撓む。このとき、クレーンガーダ3と梁5は円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2と4点で支持されていることにより安定し、従来のものより撓みが抑えられる。
【0028】
またクレーンガーダ3と梁5、及び円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2との支持点が4点有ることにより、一点に応力が集中することを防げる。このため、クレーンガーダ3や円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2の剛性を極めて高いものにする必要がない。
【0029】
そして、クレーンガーダ3が両輪とも脱輪したとしても、梁5により落下を防ぐことができる。また、梁5が脱輪したとしてもクレーンガーダ3により、落下を防ぐことができる。
【0030】
図5は、本発明を実施する形態の他一例であって、梁6を旋回用走行レール2の形成する円形の中心を通る位置に直行配置するのではなく、クレーンガーダ3の端部側にそれぞれ直行配置することにより、6点での回転支持としている。なお、クレーンガーダ3と梁6が一体に固定されていることは図4の場合と同じである。
【0031】
この実施例では、地震発生時には、鉛直方向の力が作用し、鉛直方向に大きな揺れが加わりその応答が大きくなると、クレーンガーダ3が大きく撓む。このとき、クレーンガーダ3と梁6は、円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2との支持が6点あることにより安定し、従来のポーラクレーンよりも撓みが抑えられる。
【0032】
また、クレーンガーダ3と梁6は、円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2との支持点が6点有していることにより、一点に応力が集中することを防げる。ゆえに、クレーンガーダ3や円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2の剛性を極めて高いものにする必要がない。
【0033】
そして、クレーンガーダ3が両輪とも脱輪したとしても梁6により落下を防ぐことができる。梁6が脱輪したとしてもクレーンガーダ3により、落下を防ぐことができる。
【0034】
図6は、本発明を実施する形態の他一例であって、クレーンガーダ3の両端部に、走行レール2を広範囲に支持する梁構造7を備える天井クレーンをあらわしたものである。梁構造7は、少なくてもa1からa4の4点で回転支持されている。なお、クレーンガーダ3と梁構造7が一体に固定されていることは図4の場合などと同じである。
【0035】
係る構造によれば、地震発生時には、鉛直方向の力が作用し、鉛直方向に大きな揺れが加わりその応答が大きくなると、クレーンガーダ3が大きく撓む。このとき、クレーンガーダ3と、走行レール2を広範囲に支持する梁構造7は、円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2と広範囲に接地され、安定する。このことから、従来のものより撓みが抑えられる。
【0036】
クレーンガーダ3と、円弧上の円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レールを広範囲に支持する構造7は、円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2と広範囲に接地されることにから、支持点1点に応力が集中することを防げる。このことから、クレーンガーダ3や円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2の剛性を極めて高いものにする必要がない。
【0037】
そして、円弧上の円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レールを広範囲に支持する構造7と、円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2との支持面積が広範囲にある。地震時にクレーンガーダ3に浮き上がりが起きても、円弧上の円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レールを広範囲に支持する構造7が支えになり、クレーンガーダ3の落下を防ぐことができる。
【0038】
図7は、図1のA部分の走行レール2と、クレーンガーダ3との接地部分を拡大表示したものである。円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール2には、傾斜が付けられており、クレーンガーダ3が内側に脱輪することを防ぐ構造になっている。このように、簡単な構造で、地震発生時におけるクレーンガーダ3の落下を防止することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:円筒状の原子炉建屋天井部
2:円筒状の原子炉建屋天井構体の走行レール
3:クレーンガーダ
4:走行式巻き上げ機
5,6,7:梁
21、23:旋回用車輪
22:縦走用車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋壁面に設けられ、水平面上で円形の旋回用走行レール、該旋回用走行レールに差し渡され、旋回用走行レールとは旋回用車輪により回転支持されているクレーンガーダ、該クレーンガーダに設けられた縦走用走行レールに縦走用車輪により回転支持されている走行式巻き上げ機、前記クレーンガーダと交叉する方向に設けられ、その端部に設けた旋回用車輪により前記旋回用走行レールと回転支持されている梁とを含む天井クレーン。
【請求項2】
請求項1記載の天井クレーンにおいて、
前記クレーンガーダは、差し渡し方向中央部が空間の枠体で構成されていることを特徴とする天井クレーン。
【請求項3】
請求項1記載の天井クレーンにおいて、
前記梁は、前記クレーンガーダの中央部から垂直に延び、前記走行レールと接地されていることを特徴とする天井クレーン。
【請求項4】
請求項1記載の天井クレーンにおいて、
前記梁は、前記クレーンガーダの両端部から、前記走行レールに向かって垂直に伸び、前記走行レールと接地されていることを特徴とする天井クレーン。
【請求項5】
請求項1記載の天井クレーンにおいて、
前記クレーンガーダの両端部は、円弧上の走行レールを広範囲に支持する構造であることを特徴とする天井クレーン。
【請求項6】
請求項1記載の天井クレーンにおいて、
前記走行レールは、高さ方向に傾斜を備え、傾斜部によりクレーンガーダ及び梁に設けられた旋回用車輪の脱輪を防止することを特徴とする天井クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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