説明

天井埋込型空気調和機の室内機

【課題】フィルタの移動を正確かつ円滑に案内することができるガイドレールを有するフィルタの自動清掃機構を備えた天井埋込型空気調和機の室内機を提供する。
【解決手段】フィルタ自動清掃機構は、自動清掃時にフィルタ12の移動を案内するフィルタガイド13と、フィルタ12を移動させるフィルタローラ14と、フィルタ12に捕集された塵埃を掻き取り又は掻き落とすブラシ15と、ブラシ15が掻き取った塵埃を掻き落とす櫛16と、塵埃を収納するダストボックス17とを有し、フィルタガイド13は、互いに平行で、フィルタ12の両側縁がそれぞれ侵入する一対の断面略コ字状の下ガイドレール溝20と上ガイドレール溝21と、を有し、フィルタローラ14の下端および上端の近くに、それぞれ下ガイドレール溝20の一方の端縁および上ガイドレール溝21の一方の端縁が位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天井埋込型空気調和機の室内機、特に、フィルタ自動清掃機構を有する天井埋込型空気調和機の室内機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井埋込型空気調和機の室内機は、室内の天井に設置され、内部に設置されたファンによって吸込口から室内空気を内部に吸込み、熱交換器を通過させることにより空気を冷却または加熱して温度調整あるいは湿度調整(以下、「調和」と称す)を行い、吹出口から調和された空気(以下、「調和空気」と称す)を室内へ吹出し、室内空気を循環させている。
吸込口には、室内空気中に存在する埃等の浮遊物(以下、「塵埃」と称す)が内部へ侵入し、熱交換器等を汚染することを防ぐためにフィルタが設置されている。したがって、天井埋込型空気調和機の運転を続けると、塵埃がフィルタに付着して蓄積され、フィルタに目詰まりが生じる。そうすると、通風抵抗が増加して、運転効率の悪化や省エネルギー性の低下に至っていた。
また、天井埋込型空気調和機の室内機は高所である天井に取り付けられたものであるため、フィルタの清掃は、脚立等を用いた困難な作業となっていた。
【0003】
そのため、人手による困難な作業を解消し、フィルタに付着して蓄積された塵埃を自動で取り除くことができるフィルタ自動清掃機構に関する技術提案が多々なされている。
例えば、フィルタに形成されたフィルタギアに噛み合うローラギアが形成され、吸込口の一方側に配置されたフィルタローラと、フィルタローラの下端(南極)に略接し、天井面と平行に配置された水平ガイドレールと、フィルタローラの上端(北極)に略接し、水平ガイドレールの略中央に向かって傾斜した傾斜ガイドレールと、を有している。
【0004】
そして、天井埋込型空気調和機の運転中は、フィルタの両側縁の略全長が水平ガイドレールに支持されて吸込口の全域を覆っている。一方、天井埋込型空気調和機の運転停止中に、フィルタローラが回転(正転)して自動清掃が開始されると、フィルタはフィルタギアの回転(正転)によってフィルタローラ側に引き出され、フィルタの両側縁の一方の端縁(「左端縁」と仮称する)は傾斜ガイドレールに侵入し、やがて、ガイドレール中央合流部を経由して水平ガイドレールに侵入する。
そして、フィルタの両側縁の他方の端縁(「右端縁」と仮称する)が水平ガイドレールから完全に引き出されたところで、フィルタローラは回転を停止し、逆転を開始する。
なお、フィルタに付着した塵埃を除去するためのブラシが、フィルタに押し当てられるため、かかる正転および逆転の間、フィルタは自動的に清掃される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−32194号公報(第10−12頁、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたフィルタ自動清掃機構は、フィルタに付着した塵埃を、人手を介することなく自動的に掻き落とすことを可能にし、水平ガイドレールの略中央に、傾斜ガイドレールが交差する合流部(以下、「ガイドレール中央合流部」と称す)を形成することで構造の簡素化を図っている。
しかしながら、天井埋込型空気調和機の運転中、フィルタギアは上方を向き、フィルタの平坦面(フィルタギアが形成されていない面)が水平ガイドレールの上面(水平ガイドレールが断面コ字状であるとき、下方のフランジの上面)に当接しているものの、自動清掃が開始され、フィルタローラによって傾斜ガイドレール上に送り出された後は、フィルタギアは下方を向いている。このため、ガイドレール中央合流部を過ぎると、フィルタギアが水平ガイドレールに当接して摺動することになる。
また、フィルタローラによってフィルタギアが凹面側になるように曲げられたフィルタは、傾斜ガイドレールにおいて直線状に曲げ戻され、さらに、ガイドレール中央合流部をおいて折り曲げられ(曲げられた直後に再度曲げ戻されて)直線状になって水平ガイドレールに進入することになる。一方、フィルタローラが逆転する場合は、直線状のフィルタは、ガイドレール中央合流部をおいて折り曲げられ(曲げられた直後に再度曲げ戻されて)直線状となって傾斜ガイドレールに進入することになる。
【0007】
このため、フィルタレール合流部の近傍における水平ガイドレールとフィルタとの隙間や傾斜ガイドレールとフィルタとの隙間が、フィルタレール合流部から離れた範囲における隙間より大きくなっている。そうすると、自動清掃時に、フィルタが移動してフィルタレール合流部を通過するとき、フィルタがわずかに浮くことで隙間ができ、塵埃がバイパスすることによって熱交換器が汚損される可能性があるという問題があった。
【0008】
また、フィルタギアがフィルタレール合流部の通過を開始するとき、フィルタギアの歯先と歯面とが交差する部分が水平ガイドレールに摺動する。このとき、フィルタギアの前記摺動部分は、フィルタを移動させる力が作用する位置(板厚中心に略同じ)から偏位しているため、フィルタギアには上方向に向かって倒そうとする曲げモーメントが作用し、上方向に向かって倒れる。一方、フィルタギアが水平ガイドレールに進入した状態では、フィルタギアは直立している(歯先が水平ガイドレールに当接している)から、フィルタは、前記曲げモーメントに打ち勝つだけの大きな力によって送り出されたことになる。
なお、フィルタローラが逆転する時は、前記に準じ、水平ガイドレールにおいて傾斜ガイドレールから離れる方向に倒されたフィルタギアが、傾斜ガイドレールにおいて傾斜ガイドレールに垂直になる。
【0009】
一方、フィルタギア同士の間がフィルタレール合流部を通過するとき、前記曲げモーメントは発生しないから、フィルタは、直立したフィルタギアの歯先が水平ガイドレールに摺動するだけの力によって送り出されたことになる。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するものであって、フィルタの移動を正確かつ円滑に案内することができるガイドレールを有するフィルタの自動清掃機構を備えた天井埋込型空気調和機の室内機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る天井埋込型空気調和機の室内機は、空調空間の天井側に埋込状態で設置されたときに、下面となる面が開口している筐体と、前記筐体内に配置される送風機と、前記筐体の下面側に設置され、吸込口が形成された化粧パネルと、前記化粧パネルと前記送風機との間に着脱自在または着脱不能に設けられたフィルタ自動清掃機構と、前記フィルタ自動清掃機構内に移動自在に配置され、可撓性を有する略四角形の板状のフィルタとを備え、前記フィルタ自動清掃機構は、自動清掃時に前記フィルタの移動を案内する、向かい合って配置された下ガイドレール溝および上ガイドレール溝を有するフィルタガイドを、備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る天井埋込型空気調和機の室内機は、装備するフィルタ自動清掃機構が、向かい合って配置された下ガイドレール溝および上ガイドレール溝とを備えているから、フィルタを自動清掃する際、フィルタは側面視で平面状、J字状およびU字状を呈するため、フィルタは下ガイドレール溝と上ガイドレール溝との間で曲げられるものの、下ガイドレール溝および上ガイドレール溝の途中で折り曲げられることがない。
このため、フィルタの移動が正確に案内されることにより、フィルタと下ガイドレール溝あるいはフィルタと上ガイドレール溝との間に隙間ができないから、塵埃がバイパスすることによって熱交換器が汚損されることがなくなる。
また、フィルタの移動が円滑に案内されることにより、フィルタの一部(後記するフィルタに形成されたフィルタギアの歯先(または歯先と歯面とが交差する部分))が下ガイドレールあるいは上ガイドレールに強く摺動することがないから、フィルタの移動が円滑になり、フィルタに不測の振動が発生するおそれがなくなる。また、フィルタの一部が局部的に摩耗するおそれがなくなる。
さらに、フィルタの移動が円滑になることから、フィルタは、引っ掛かりが外れる時のような急速な移動(stick slip)をしないため、異音が発生するおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る天井埋込型空気調和機の室内機の設置状況を示す斜視図。
【図2】図1に示す室内機を説明する全体を示す平面視の断面図。
【図3】図1に示す室内機を説明する全体を示す側面視の断面図。
【図4】図1に示す室内機を説明する全体を分解して示す斜視図。
【図5】図1に示す室内機のフィルタ自動清掃機構を抜き出して示す斜視図。
【図6】図1に示す室内機のフィルタ自動清掃機構を示す斜視図。
【図7】図1に示す室内機のフィルタ自動清掃機構を分解して示す斜視図およびフィルタを示す斜視図および一部を拡大して示す側面図。
【図8】図1に示す室内機のフィルタ自動清掃機構の動作を説明する断面図。
【図9】図1に示す室内機のフィルタ自動清掃機構の動作を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態1について、図を参照して本発明を説明する。なお、各図において同じ部位または対応する部位には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各図は模式的に描かれたものであって、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0015】
[実施の形態1]
図1〜図9は本発明の実施の形態1に係る天井埋込型空気調和機の室内機を説明するものであって、図1は設置状況を示す斜視図、図2は全体を示す平面視の断面図、図3は全体を示す側面視の断面図、図4は全体を分解して示す斜視図、図5は構成部材(フィルタ自動清掃機構)を抜き出して示す斜視図、図6は構成部材(フィルタ自動清掃機構)を示す斜視図、図7の(a)は構成部材(フィルタ自動清掃機構)を分解して示す斜視図、図7の(b)は構成部材(フィルタ)を示す斜視図、図7の(c)は構成部材(フィルタ)の一部を拡大して示す側面図、図8および図9は構成部材(フィルタ自動清掃機構)の動作を説明する側面視の断面図である。
【0016】
(室内機)
図1は、天井埋込型空気調和機の室内機(以下、「室内機」と称す)100が部屋(空調空間に同じ)45の天井46に取り付けられた状態を部屋45から見た斜視図である。
図1において、室内機100のユニット筐体1は、部屋45の天井46に埋め込まれ、室内機100の下部に設けられた略四角形状の化粧パネル7が見える状態で設置されている。
化粧パネル7の中央付近には、略四角形のグリル18が配置され、グリル18の周囲には、化粧パネル7の各辺(四辺)にそれぞれ沿った吹出口8(4個)が配置されて、吹出口8には吹出し風の風向を制御するベーン9が備えられている。
なお、グリル18は、室内機100への空気吸込口(後記するベルマウス4)へ連通し、本体吸込口として機能すると共に、室内機100に意匠性を付与している。また、吹出口8は後記する本体吹出路40に連通している(図3参照)。
【0017】
図4において、室内機100は、以下の構成部材を有している。
(a)ユニット筐体1、
(b)フィルタ自動清掃機構50(ケースメント11内に収納される)、
(c)化粧パネル7(グリル18が配置されている)。
但し、図4は一例であり、フィルタ自動清掃機構50をユニット筐体1に設けてもよいし、化粧パネル7に設けてもよい。
なお、ユニット筐体1および化粧パネル7とは別体であるケースメント11に、フィルタ自動清掃機構50を収納する形態にすれば、既存の室内機に、後付け(オプションとして)でフィルタ自動清掃機構50を取付けることができる。
【0018】
(a:ユニット筐体)
図3において、ユニット筐体1は、天井46に設置され、一方の面(下面)が開口する箱形状(外郭が正四角筒)であり、開口した下面が天井46と略同一面に配置され、熱交換器5、ファン2を駆動するファンモータ3とを有する送風機等を備える。送風機はユニット筐体1内の略中央部に配置される(図2〜4参照)。
【0019】
(ファン)
図3において、ユニット筐体1内の略中央部に、下側を吸込口とするファン2(ターボファン)と、このファン2を駆動するファンモータ3とを備える送風機(遠心送風機)が配置される。ファンモータ3がユニット筐体1の天面側に取付けられているとともに、ファン2の下部にファン2へ空気を導入するためのベルマウス4が配置されている。
【0020】
(熱交換器)
また、ファン2を囲むように略環状に熱交換器5(平面視において略C字形状、図示しない)が配置され、熱交換器5の下部にドレンパン6が設置されている。熱交換器5は、図示しない室外機に設置された冷媒を圧縮する圧縮機等と共に冷凍サイクルを構成する。熱交換器5において、ファン2によってグリル18を経由して吸い込まれる室内空気と冷凍サイクルを実行する冷媒とが熱交換を行うことにより、室内空気を調和(冷却又は加熱、あるいは除湿又は加湿)して、調和空気を生成する。
【0021】
(吹出口)
ドレンパン6の各辺に沿う外側には、熱交換器5の外側(下流側)と室内とを連通させる本体吹出路40が配置され、本体吹出路40は化粧パネル7に形成された吹出口8に連通している。
吹出口8にはベーン9が取付けられており、熱交換器5で生成された調和空気の吹出方向の調整が可能になっている。ベーン9の形状は吹出口8と略同形状であり、ベーン9が閉じた状態で、ベーン9は吹出口8を略塞ぐように、意匠性を考慮した設計になっている。
【0022】
(c:化粧パネル)
化粧パネル7の略中央の開口部に、略四角形のグリル18が取付けられている。グリル18は、例えば爪(図示しない)等により化粧パネル7に係合している。
【0023】
(b:フィルタ自動清掃機構)
フィルタ自動清掃機構50の構成を、図3〜図7を参照しながら説明する。
図3〜図5において、ユニット筐体1の下部には、上面と下面とが開口した(断面四角形の角筒に同じ)ケースメント11が取付けられ、その中にフィルタ自動清掃機構50が設置されている。但し、ユニット筐体1にフィルタ自動清掃機構50を設置する形態も可能であり、ユニット筐体1と別体のケースメント11とは必須の構成ではない。
【0024】
図3、図6〜図9において、フィルタ自動清掃機構50は、フィルタ12の移動方向に平行な一対の平行方向部材(以下、「ガイドレール」と称す)51と、一対のガイドレール51の端部同士を連結する直角方向部材52によって形成された枠体の他に、以下に示す部品を備える。
(b1)フィルタ12、
(b2)フィルタガイド13、
(b3)フィルタローラ14、
(b4)ブラシ15、
(b5)櫛16、
(b6)ダストボックス17、
(b7)ギアボックス19、
(b8)下ガイドレール溝20および上ガイドレール溝21、
(b9)上フィルタセンサ22aおよび下フィルタセンサ22b。
なお、ガイドレール(平行方向部材)51には、フィルタガイド13と、下ガイドレール溝20および上ガイドレール溝21と、上フィルタセンサ22aおよび下フィルタセンサ22bとが、それぞれ設置されている。以下、それぞれの部品について説明する。
【0025】
(b1:フィルタ)
図7の(b)および(c)において、フィルタ12は、グリル18(吸込口)から吸い込まれる空気中の塵埃を捕えるものであって、略四角形の板状で可撓性を有する。フィルタ12は、所定の大きさの開口部(目開き)を具備するフィルタ面材12dと、フィルタ面材12dが設置された複数のフィルタ縦桟12aと複数のフィルタ横桟12bとを有している。すなわち、フィルタ面材12dのフィルタ縦桟12aおよびフィルタ横桟12bに当接する部分を除いた範囲がフィルタ部を形成している。なお、説明の便宜上、フィルタ縦桟12aとフィルタ横桟12bとから形成された格子形状を「フィルタ格子形状」と称す。
さらに、側縁に位置する一対のフィルタ縦桟12aには、ラック状にフィルタギア12cが設けられている。フィルタギア12cの形状は限定するものではなく、例えば、断面円弧状の山と、断面円弧状の谷を有している。
【0026】
なお、フィルタ12のフィルタ縦桟12aおよびフィルタ横桟12bは、フィルタガイド13に摺動して、Uターン式で移動するため、湾曲しやすいように柔軟性と可撓性を持たせる必要がある。このため、厚みを薄くしても破壊強度が維持され、折り返し時に樹脂が白化したり、破壊してしまわないよう、熱可塑性エラストマー樹脂を用いる。
【0027】
(b2:フィルタガイド)
フィルタガイド13は、フィルタ12の上下方向(鉛直方向)を案内(移動を規制)するものであって、フィルタガイド中間ガイド格子(以下、「中間ガイド格子」と称す)13cと、中間ガイド格子13cの上方に配置されたフィルタガイド上部ガイド格子(以下、「上部ガイド格子」と称す)13aと、中間ガイド格子13cの下方に配置されたフィルタガイド下部ガイド格子(以下、「下部ガイド格子」と称す)13bと、フィルタ12の移動方向を反転するフィルタガイド折り返しガイド格子(以下、「折り返しガイド格子」と称す)13dと、フィルタ12の側縁(移動方向に直角の方向)を案内する一対のガイドレール51と、から形成されている。
【0028】
(上部ガイド格子等)
そして、自動清掃時を除いて、フィルタ12は中間ガイド格子13cと下部ガイド格子13bとの間に水平方向に移動自在に配置され、自動清掃時には、フィルタ12は上部ガイド格子13aと中間ガイド格子13cとの間に侵入するようになっている(これについては別途詳細に説明する)。
なお、室内機100(フィルタ自動清掃機構50)が天井46に設置された状態で、少なくとも下部ガイド格子13bの上面は水平(天井46に平行)になっているから、空調運転時のフィルタ12は水平になっている。
【0029】
上部ガイド格子13a、中間ガイド格子13cおよび下部ガイド格子13bは、平面視において略正方形の枠形状であって、それぞれ縦桟および横桟によって形成された格子形状である。そして、それぞれの格子形状(縦桟同士の間隔および横桟同士の間隔)は同じになっている(以下、「ガイド格子形状」と称す)から、上部ガイド格子13a、中間ガイド格子13cおよび下部ガイド格子13bを形成する縦桟および横桟は、平面視において重なっている。
さらに、空調運転時、フィルタ12が中間ガイド格子13cと下部ガイド格子13bとの間に配置された状態で、中間ガイド格子13cおよび下部ガイド格子13bを形成する縦桟および横桟は、それぞれフィルタ12のフィルタ縦桟12aおよびフィルタ横桟12bに、平面視において重なっている。すなわち、ガイド格子形状はフィルタ格子形状に同じであるから、フィルタ12におけるフィルタ縦桟12aまたはフィルタ横桟12bを適宜削除した(間引いた)ものである。
【0030】
また、上部ガイド格子13aと中間ガイド格子13cとの間隔、および中間ガイド格子13cと下部ガイド格子13bとの間隔は限定されるものではないが、フィルタ12が移動(摺動)自在な程度にフィルタ12を押さえることができるから、フィルタ12を安定して収納することができる。また、それぞれに縦桟および横桟が平面視において重なり、フィルタ12のフィルタ部に吸い込み空気を遮るものがないため、空気抵抗が小さくなっている。さらに、フィルタ12のフィルタ部に傷をつける恐れが少なくなる。
【0031】
折り返しガイド格子13dは、フィルタローラ14の外周面と所定の間隔を形成する断面円弧状の縦桟を有している。したがって、フィルタ12は、折り返しガイド格子13dとフィルタローラ14の外周面との間を移動することになる。また、折り返しガイド格子13dを形成する縦桟同士の隙間から、ブラシ15の先端がフィルタローラ14側に突出している。
【0032】
(b3:フィルタローラ)
フィルタガイド13のフィルタ12の移動方向側の一方の辺(ガイドレール51のない辺のうちの一方に同じ)に、該辺と平行に円筒状のフィルタローラ14が設けられている。フィルタローラ14は、フィルタ12を移動(往復)させると共に、フィルタ12をブラシ15に押し付けている(挟圧している)。そして、フィルタローラ14の両端部に近い外周に、フィルタギア12cに噛み合うローラギア(ピニオン、図示しない)が形成されている。
【0033】
(b4:ブラシ)
フィルタローラ14に隣接して、フィルタローラ14の斜め下方にブラシ15が設けられている(図3参照)。ブラシ15は、フィルタローラ14と平行になるように設置され、移動して来たフィルタ12に押し当てられ、フィルタ12に捕集された塵埃を掻き取りあるいは掻き落とす。
ブラシ15の形態は限定するものではないが、例えば、アルミパイプ23に植毛テープ24を螺旋状に巻きつけて構成される(図7の(a)、図8および図9参照)。ブラシ15は、フィルタ12に捕集された塵埃を掻き落とす。
【0034】
(b5:櫛)
櫛16は、掻き取ったままブラシ15に付着している塵埃を、ブラシ15から除去するものであって、ブラシ15の斜め下方(フィルタローラ14の反対側)に設置される。
櫛16の先端は、ブラシ15(ブラシ回転軸または毛先)と平行で、ブラシ15の毛先と接触する位置に設置されている(図3、図8および図9参照)。
櫛16の設置姿勢は限定するものではないが、例えば、ブラシ15の回転軸からの放射線(回転軸を通過する直線)に平行で、ブラシ15の回転方向の反対側に所定距離だけ偏位(オフセット)させておけば、ブラシ15に付着している掻き取った塵埃を効率よく掻き落とすことができる。
【0035】
(b6:ダストボックス)
櫛16の下方には、略直方体のダストボックス17が取り付けられている。フィルタ12やブラシ15から落下した塵埃を受ける位置に、着脱自在に設置されている(図3、図8および図9参照)。
【0036】
(b7:ギアボックス)
図6において、フィルタローラ14のフィルタローラ回転軸(図示せず)とブラシ15のブラシ回転軸33(図7参照、図8に示すアルミパイプ23に同じ)とは、それぞれの一方の端部に設けられたギア(図示せず)を介してローラモータ26aとブラシモータ26bとに接続されている。フィルタローラ回転軸と、ブラシ回転軸33とは鉛直方向に所定のオフセットを有して設置されている。
すなわち、フィルタローラ14は、ローラモータ26aによりギア(図示しない)を介して駆動され、ブラシ15は、ブラシモータ26bによりギアを介して駆動される。
そして、ギアはギアボックス19によって覆われており、その外側にローラモータ26aおよびブラシモータ26bが設置されている。
なお、本発明はフィルタローラ14およびブラシ15の駆動形態を前記の形態に限定するものではなく、例えば、ギアを介しないで、ローラモータ26aおよびブラシモータ26bにそれぞれ直結させてもよいし、一方のモータを撤去して、他方の1台の回転をギアを介してフィルタローラ14およびブラシ15に伝えるようにしてもよい。
【0037】
(b8:下ガイドレール溝および上ガイドレール溝)
図8および図9において、下ガイドレール溝20および上ガイドレール溝21は、一対のガイドレール51にそれぞれ形成された断面コ字状の溝であって、それぞれ、化粧パネル7に平行で、下ガイドレール溝20はフィルタローラ14の下端(南極)に略接し、上ガイドレール溝21はフィルタローラ14の上端(北極)に略接している。
下ガイドレール溝20は、中間ガイド格子13cと下部ガイド格子13bとの間に配置されたフィルタ12の両端部(フィルタギア12cが形成されている)がそれぞれ侵入可能な高さを有し、下ガイドレール溝20の直線部(以下、「下溝直線部」と称す)20aを形成する下面(以下、「下溝直線部下面」と称す)20akは、下部ガイド格子13bの上面と、高さ方向の位置が略一致している。
一方、上ガイドレール溝21は、上部ガイド格子13aと中間ガイド格子13cとの間に配置されたフィルタ12の両端部(フィルタギア12cが形成されている)がそれぞれ侵入可能な高さを有し、上ガイドレール溝21の直線部(以下、「上溝直線部」と称す)21aを形成する下面(以下、「上溝直線部下面」と称す)21akは、中間ガイド格子13cの上面と、高さ方向の位置が略一致している。
【0038】
上ガイドレール溝21は、直線状の上ガイドレール溝直線部(以下、「上溝直線部」と称す)21aと、上溝直線部21aのフィルタローラ14の反対側の端部付近に、側面視で略円弧状で、端部に近づくほど徐々に上に位置する湾曲部(以下、「上溝湾曲部」と称す)21bと、を有している。上溝湾曲部21bを有することによって、全長を上溝直線部21aによって形成した場合(上溝湾曲部21bを有さない場合)と比較して、上ガイドレール溝21の長さを短くすることができる。
なお、上溝直線部21aのフィルタローラ14に近い範囲に、折返しガイド格子13dに滑らかに繋がった曲線部分を有しているが、かかる曲線部分を省略してもよい。
【0039】
同様に、下ガイドレール溝20は、直線状の下溝直線部20aと、下溝直線部20aのフィルタローラ14の反対側の端部付近に、端部に近づくほど徐々に上に位置する湾曲部(以下、「下溝湾曲部」と称す)20bと、を有している。そして、下溝直線部20aは上溝直線部21aよりも高くなり、下溝直線部20aの終端面と上溝直線部21aの終端面とが同じ高さに位置している。なお、下溝湾曲部20bの形成を省略してもよい。
そして、下ガイドレール溝20と上ガイドレール溝21とは平行であって、それぞれ往路と復路を形成するUターン式になっている(図3、図8および図9参照)が、本発明は平行であるものに限定するものではなく、所定の角度をもって向かい合っていてもよい。
【0040】
(b9:上フィルタセンサおよび下フィルタセンサ)
上ガイドレール溝21には、上溝直線部21aのフィルタローラ14の反対側の終点(上溝湾曲部21bが始まる上溝湾曲部始端21c)の近くに、上フィルタセンサ22a(例えば、リミットスイッチ等)が設置され、下ガイドレール溝20には、下溝直線部20aのフィルタローラ14の反対側の終点(下溝湾曲部20bが始まる下溝湾曲部始端20c)の近くに、下フィルタセンサ22b(例えば、リミットスイッチ等)が、それぞれ設置されている。
【0041】
上フィルタセンサ22aがフィルタ12の一方の端部を検知すると、検知してから一定時間(例えば、約30秒)が経過したところで、フィルタローラ14の回転を停止するようになっている。すなわち、フィルタ12の一方の端部は、上フィルタセンサ22aの位置を過ぎても往路の移動を続け、上ガイドレール溝21の上溝湾曲部終端21d付近に到達した状態で停止し、フィルタ12の往路の移動が終了することになる(これについては別途詳細に説明する)。
また、下フィルタセンサ22bがフィルタ12の他方の端部を検知すると、検知してから一定時間(例えば、約30秒)が経過したところで、フィルタローラ14の回転を停止するようになっている。すなわち、フィルタ12の他方の端部は、下フィルタセンサ22bの位置を過ぎても復路の移動を続け、下ガイドレール溝20の下溝湾曲部20bが始まる下溝湾曲部始端20c付近に到達した状態で停止し、フィルタ12の復路の移動が終了することになる(これについては別途詳細に説明する)。
【0042】
(フィルタの移動)
図8および図9に基づいて、フィルタ自動清掃機構50において、フィルタローラ14がフィルタ12を移動(往復)させる仕組みを詳述する。尚、フィルタ自動清掃機構50のブラシ15がフィルタ12に付着した塵埃を掻き取る仕組みの説明は省略する。
【0043】
(フィルタの往路の移動)
次に、図8の(a)を参照して、自動清掃時におけるフィルタ12の移動状況を説明する。
フィルタ12の自動清掃を開始する前(例えば、空調実施中)、フィルタ12は下ガイドレール溝20(中間ガイド格子13cと下部ガイド格子13bとの間)に配置され、フィルタ12の両側縁を除く大部分の範囲が下部ガイド格子13bの上面に載置された状態で、フィルタ12の両側縁が下ガイドレール溝20に侵入している。
そして、フィルタ12の一方の端部は、折り返しガイド格子13dに案内されている。
すなわち、フィルタ12の一方の端部において、両側縁は折り返しガイド格子13dと、フィルタローラ14の両端に設けられたローラギア(図示しなし)とによって挟圧された状態で、フィルタギア12c(図7参照)とローラギアとが噛み合っている。
【0044】
したがって、フィルタ自動清掃機構50が自動清掃を実施する際、ローラモータ26aを回転するとフィルタローラ14が回転するから、図において、フィルタローラ14を時計回りの方向に回転させると、フィルタ12は右方向に移動(往路の移動を開始)し、反対に、フィルタローラ14を反時計回りの方向に回転させると、フィルタ12は左方向に移動(復路の移動を開始)することになる。
そのため、フィルタ12が右方向に移動を開始(往路の移動を開始)すると、フィルタ12は折り返しガイド格子13dに案内され、まず一方(図中、左側)の端部における曲げられる範囲が拡大して側面視において略J字状を呈する。さらに移動すると、一方の端部が上ガイドレール溝21(上部ガイド格子13aと中間ガイド格子13cとの間)に侵入する。
すなわち、曲げられる位置がフィルタ12の中央に移動し、既に曲げられていた範囲は平面状に曲げ戻されて、フィルタ12の全体は、側面視において略U字状を呈することになる(図示しない)。
【0045】
図8(b)において、往路の移動が進み、フィルタ12は側面視において略J字状を呈し、上ガイドレール溝21に設置された上フィルタセンサ22a(例えば、リミットスイッチ等)がフィルタ12の一方の端部を検知している。この後、フィルタローラ14は一定時間(例えば、約30秒)あるいは一体回転数だけ回転を持続する。
【0046】
図8(c)において、上フィルタセンサ22aがフィルタ12の一方の端部を検知した後、一定時間(例えば、約30秒)が経過したところでフィルタローラ14は回転を停止している。すなわち、フィルタ12の一方の端部が上ガイドレール溝21の上溝湾曲部終端21d付近に到達し、フィルタ12の往路の移動が終了する。
すなわち、フィルタ12の一方の端部は、折り返しガイド格子13dに摺動しているときは、フィルタギア12cを内側にした円弧状に曲げられ、上溝直線部21aに摺動しているときは、平面状に曲げ戻され、さらに、上溝湾曲部21bに摺動するときは、フィルタギア12cが外側になるように曲げられることになる。
このとき、一方の端部に近に限られた範囲のみが、フィルタギア12cが外側になるように曲げられるから、限られた僅かな数のフィルタギア12cのみが上溝湾曲部21bに押し当てられることになるから、仮に引っ掛かり(異音)が発生したとしてもその数は僅かである(後記するように、シボ加工が施されているから、引っ掛かりの発生そのものが抑えられている)。
なお、フィルタ12の他方の端部におけるフィルタギア12cは、ローラギアに噛み合っている。
【0047】
(フィルタの復路の移動)
図9(a)において、フィルタ12の復路の移動が開始する。このとき、ローラモータ26aによりフィルタローラ14は図中において反時計方向に回転する。フィルタローラ14に設けられたローラギアは、フィルタ12に形成されたフィルタギア12cと噛み合っているので、フィルタローラ14の回転によりフィルタ12は復路の移動を開始する。
【0048】
図9の(b)において、フィルタ12の復路の移動を継続すると、やがて、下ガイドレール溝20に設置された下フィルタセンサ22bがフィルタ12の他方の端部を検知する。
そして、該検知の後、所定の時間が経過した後に、フィルタローラ14の回転を停止させて、復路の移動を終了する。すなわち、フィルタ自動清掃機構50の動作が終了する(なお、複数回の往復移動によって自動清掃する場合は、次の往路の移動を開始する)。
なお、下フィルタセンサ22bが、下溝直線部20aのフィルタローラ14とは反対側の終端(下溝湾曲部20bが開始する位置に近い位置)に設置された場合には、下フィルタセンサ22bがフィルタ12の他方の端部を検知したところで、フィルタローラ14の回転を停止し、復路の移動を終了する。
【符号の説明】
【0049】
1 ユニット筐体、2 ファン、3 ファンモータ、4 ベルマウス、5 熱交換器、6 ドレンパン、7 化粧パネル、8 吹出口、9 ベーン、 11 ケースメント、 12 フィルタ、12a フィルタ縦桟、12b フィルタ横桟、12c フィルタギア、12d フィルタ面材、13 フィルタガイド、13a 上部ガイド格子、13b 下部ガイド格子、13c 中間ガイド格子、13d 折り返しガイド格子、14 フィルタローラ、15 ブラシ、16 櫛、17 ダストボックス、18 グリル、19 ギアボックス、20 下ガイドレール溝、20a 下溝直線部、20b 下溝湾曲部、20c 下溝湾曲部始端、21 上ガイドレール溝、21a 上溝直線部、21b 上溝湾曲部、21c 上溝湾曲部始端、21d 上溝湾曲部終端、22a 上フィルタセンサ、22b 下フィルタセンサ、23 アルミパイプ、24 植毛テープ、26a ローラモータ、26b ブラシモータ、33 ブラシ回転軸、40 本体吹出路、45 部屋、46 天井、50 フィルタ自動清掃機構、51 ガイドレール、52 直角方向部材、100 室内機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空間の天井側に埋込状態で設置されたときに、下面となる面が開口している筐体と、前記筐体内に配置される送風機と、前記筐体の下面側に設置され、吸込口が形成された化粧パネルと、前記化粧パネルと前記送風機との間に着脱自在または着脱不能に設けられたフィルタ自動清掃機構と、前記フィルタ自動清掃機構内に移動自在に配置され、可撓性を有する略四角形の板状のフィルタとを備え、
前記フィルタ自動清掃機構は、自動清掃時に前記フィルタの移動を案内する、向かい合って配置された下ガイドレール溝および上ガイドレール溝を有するフィルタガイドを、備えていることを特徴とする天井埋込型空気調和機の室内機。
【請求項2】
前記フィルタ自動清掃機構は、前記下ガイドレール溝の一方の端縁の近傍および前記上ガイドレール溝の一方の端縁の近傍に配置されたフィルタローラを備えていることを特徴とする請求項1記載の天井埋込型空気調和機の室内機。
【請求項3】
前記下ガイドレール溝は、前記フィルタの両側縁がそれぞれ侵入する一対の断面略コ字状であり、前記上ガイドレール溝は、前記フィルタの両側縁がそれぞれ侵入する一対の断面略コ字状であることを特徴とする請求項1または2記載の天井埋込型空気調和機の室内機。
【請求項4】
前記フィルタ自動清掃機構は、前記フィルタに捕集された塵埃を掻き取り又は掻き落とすブラシと、前記ブラシが掻き取った前記塵埃を掻き落とす櫛と、前記ブラシ及び前記櫛が掻き落とした前記塵埃を収納するダストボックスとを備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の天井埋込型空気調和機の室内機。
【請求項5】
前記上ガイドレール溝の前記フィルタローラの上端から遠い方の終端部分に、断面略円弧状の湾曲部が延設されていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の天井埋込型空気調和機の室内機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113446(P2013−113446A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256879(P2011−256879)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】