説明

天井埋込型空気調和機

【課題】空気調和機本体を天井開口に取り付けたアダプター取付板に沿わせながら押し上げて設置するとき、風漏れ防止用のパッキンを剥がしたりすることなく、スムーズに施工できることを目的とする。
【解決手段】アダプター取付板3に貼付したパッキン9の下方近傍に、弾性を有して設けられ空気調和機本体8との設置時における摩擦抵抗を低減させたパッキン保護部10を設けたことにより、空気調和機本体8の挿入設置時にパッキン9を剥がしたりちぎることなく、スムーズに挿入して設置することができ、品質を確保したうえで施工性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井面に形成した天井開口から天井裏に挿入して天井面に設置する天井埋込型空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の天井埋込型空気調和機は、天井への埋め込み設置時、換気ダクトと連通接続されるアダプターを有したアダプター取付板を天井開口の縁部に取り付けたのち、空気調和機本体を天井開口から挿入してその側面に形成した排気口または吸気口をアダプターに連通させ、天井面に設置している。そして、アダプター取付板と空気調和機本体の排気口または吸気口の外周部との間に風漏れ防止用のパッキンを貼付している。
【0003】
しかし、上記設置時、空気調和機本体をアダプター取付板に沿わせながら押し上げていくので、パッキンがその貼付部の下端部から剥がれたり、途中でちぎれたりすることがあった。
【0004】
そこで、アダプター取付板のパッキン下方近傍に、本体側に突起を形成し、本体を押し上げていったときにパッキンを剥がしたりちぎらない構成としているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のものでは、風漏れ防止用のパッキンの剥がれ等防止のために突起を設けているが、この突起は鋼板等の剛体からなるアダプター取付板に一体に形成され、本体も同じく剛体からなり、本体の設置時に剛体どうしの摺接となり、本体を傾けて押し上げるとスムーズに挿入できず、無理に強く押し上げると、突起を削ったり本体上端角部を傷つけ、その後のメンテナンス時等にパッキンの剥がれ、ちぎれを発生することがあるという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、空気調和機本体を天井開口に取り付けたアダプター取付板に沿わせながら押し上げて設置するとき、風漏れ防止用のパッキンを剥がしたりすることなく、スムーズに施工できる天井埋込型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の天井埋込型空気調和機は、天井面に形成した天井開口から天井裏に挿入して前記天井開口の縁部に取り付けられ、換気ダクトと連通接続されるアダプターを有したアダプター取付板と、前記天井開口から天井裏に挿入されて前記天井面に設置され、前記アダプタと連通する排気口または吸気口を側面に形成した空気調和機本体とを備え、前記空気調和機本体の前記排気口または吸気口の外周部に風洩れ防止用のパッキンを貼付した天井埋込型空気調和機であって、前記空気調和機本体側面のパッキン上方近傍に、弾性を有して設けられ前記アダプター取付板との設置時における摩擦抵抗を低減させたパッキン保護部を設けたものである。
【0009】
また、他の手段は、空気調和機本体側面のパッキン上方近傍に設けたパッキン保護部は、パッキンより硬い弾性材からなる部材を設けてなるものである。
【0010】
また、他の手段は、空気調和機本体側面のパッキン上方近傍に設けたパッキン保護部に摩擦抵抗を低減させる表面処理を施したものである。
【0011】
また、他の手段は、パッキン保護部は、空気調和機本体側面のアダプター取付板側に弾性形状を一体的に形成したものである。
【0012】
また、他の手段は、アダプター取付板の上端部に、空気調和機本体設置時にその側面を引き寄せるように、空気調和機本体側面の上端部に係合する係合部を設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アダプター取付板の空気調和機本体の排気口または吸気口の外周部に対向する面に、または、空気調和機本体の排気口または吸気口の外周部に風洩れ防止用のパッキンを貼付した天井埋込型空気調和機であって、パッキンの上方の近傍に、弾性を有して設けられ空気調和機本体またはアダプター取付板との設置時における摩擦抵抗を低減させたパッキン保護部を設けたことにより、パッキンを剥がしたりちぎることなく、スムーズに空気調和機本体を天井開口に挿入して設置することができ、品質を確保したうえで施工性を向上させることができるという効果のある天井埋込型空気調和機を提供することができる。
【0014】
また、パッキン保護部は、パッキンより硬い弾性材からなる部材を設けてなることにより、パッキン保護部が衝撃を受ける空気調和機本体の挿入が行われても、その衝撃を緩和してパッキンを保護することができる。
【0015】
また、パッキン保護部に摩擦抵抗を低減させる表面処理を施したことにより、空気調和機本体を天井開口によりスムーズに挿入できて、パッキンの保護性が高まる。
【0016】
また、パッキン保護部は、空気調和機本体側面のアダプター取付板側に弾性形状を一体的に形成したことにより、パッキンの保護性がさらに高まる。
【0017】
また、アダプター取付板の上端部に、空気調和機本体設置時にその側面を引き寄せるように、空気調和機本体側面の上端部に係合する係合部を設けたことにより、パッキンの圧縮量を所定値までに規制することとなるパッキン保護部を設けても、パッキンの気密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1の天井埋込型空気調和機を示す本体取り外し時の設置状態図
【図2】同天井埋込型空気調和機のアダプター取付板の斜視図
【図3】同アダプター取付板の側面図
【図4】同天井埋込型空気調和機の本体の設置状況を示す要部拡大図
【図5】同天井埋込型空気調和機の本体設置時の要部拡大図
【図6】同天井埋込型空気調和機のパッキン保護部の他箇所への貼付を示す斜視図
【図7】本発明の実施の形態2の天井埋込型空気調和機のアダプター取付板を示す斜視図
【図8】同天井埋込型空気調和機のパッキン保護部の他箇所への形成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の請求項1記載の天井埋込型空気調和機は、空気調和機本体の排気口または吸気口の外周部に風洩れ防止用のパッキンを貼付した天井埋込型空気調和機であって、前記空気調和機本体側面のパッキン上方近傍に、弾性を有して設けられアダプター取付板との設置時における摩擦抵抗を低減させたパッキン保護部を設けたものであり、空気調和機本体を天井開口から挿入し押し上げると、空気調和機本体に設けた摩擦抵抗の低いパッキン保護部がアダプター取付板に摺接しながら移動していくので、スムーズに挿入でき、しかもパッキンの貼付部上端には引っ掛からず、そして、パッキンに対する摩擦抵抗も低減する。
【0020】
また、請求項2記載の天井埋込型空気調和機は、請求項1におけるパッキン保護部が、パッキンより硬い弾性材からなる部材を設けてなるものであり、パッキン保護部は、空気調和機本体の天井開口への挿入時に衝撃を受けても衝撃を吸収することができる。
【0021】
また、請求項3記載の天井埋込型空気調和機は、請求項2におけるパッキン保護部に摩擦抵抗を低減させる表面処理を施したものであり、この表面処理によってアダプター取付板によりスムーズに沿わせながら押し上げることができる。
【0022】
また、請求項4記載の天井埋込型空気調和機は、請求項1におけるパッキン保護部が、空気調和機本体側面のアダプター取付板側に弾性形状を一体的に形成したものであり、パッキン保護部自体も空気調和機本体の挿入設置時に剥がれたりすることがなく、損傷がなくなる。
【0023】
また、請求項5記載の天井埋込型空気調和機は、請求項1〜4のいずれかにおけるアダプター取付板の上端部に、空気調和機本体設置時にその側面を引き寄せるように、空気調和機本体側面の上端部に係合する係合部を設けたものであり、空気調和機本体を下端部が天井面に当接する位置まで押し上げると、その側面がアダプター取付板に引き寄せられることとなる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜8を参照しながら説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態1の天井埋込型空気調和機は、換気ダクト1に連通接続するアダプター2を板状の取付板3aに設けたアダプター取付板3と、このアダプター取付板3を天井面4に形成した天井開口5に取り付けられた本体取付枠6に垂直状態に取り付けたのち、本体取付枠6の開口から挿入してその複数側面に形成した排気口および吸気口である通気口7をアダプター2に連通させて天井面4に設置する空気調和機本体8とからなる。
【0026】
そして、アダプター2と空気調和機本体8の通気口7とが気密状態に連通されて風漏れがないように、取付板3aの通気口7外周部に対向する面に風漏れ防止用のパッキン9を貼付している。
【0027】
また、取付板3aのパッキン9を貼付した箇所の下方近傍には、パッキン9と同種の弾性材で、パッキン9と比べ同じ荷重では圧縮量の小さい硬い弾性材からなるパッキン保護部10を貼付している。パッキン保護部10はパッキン9に対し、左右方向の寸法が若干大きく、圧縮方向の高さ(自然状態)が若干低いものである。
【0028】
パッキン保護部10には、摩擦抵抗を低減させる表面処理をしている。この表面処理としては、高温のプレート等をパッキン保護部10の表面にごく短時間当てて表面の密度を高め、表面を滑らかな状態にする手段、あるいは、パッキン保護部10の表面をコーティングして滑らかにするために、パッキン保護部10の表面部をコーティング液に浸漬する手段があるが、表面の摩擦抵抗を低減させるものであれば、これらに限定されるものではない。
【0029】
また、図3に示すように、取付板3aのパッキン9を貼付した面は、上方に向かうにしたがって空気調和機本体8の側面に近くなる方向に傾斜している。
【0030】
また、図2に示すように、取付板3aの上端部に、空気調和機本体8側斜め下方に向き、空気調和機本体8の側面上端部8aに係合する係合部11を設けている。
【0031】
上記構成の天井埋込型空気調和機において、図4に示すように、天井に埋め込み設置するために、アダプター取付板3を本体取付枠6の側面に取り付けたのちに、空気調和機本体8を天井開口5から挿入して押し上げていくが、この挿入時、空気調和機本体8は側面上端部8aが取付板3a側に傾いた状態で挿入されることも多く、この場合、側面上端部8aが取付板3aの面に沿いながらパッキン9に向かって移動していく。しかし、パッキン9に至る手前のパッキン9の下方にはパッキン保護部10が設けられているので、側面上端部8aはパッキン保護部10を若干弾性変形させて圧縮しながら摺接していき、この圧縮とパッキン保護部10の表面処理によって摺接時の摩擦抵抗が低減し、側面上端部8aはパッキン保護部10をスムーズに通過していく。
【0032】
このように、空気調和機本体8の側面上端部8aは、パッキン9の近傍にパッキン保護部10が設けられているので、パッキン9の貼付部下端に引っ掛からず、パッキン9を剥がしたりちぎることがなく、また、パッキン9を通過するときの摩擦抵抗も低減する。
【0033】
また、パッキン保護部10はパッキン9より硬い弾性材からなるので、パッキン保護部10が衝撃を受けるような空気調和機本体8の挿入が行われても、衝撃を吸収して上方にスムーズに移動させることができる。
【0034】
そして、空気調和機本体8が上方に押し上げられていくと、その側面に当接する取付板3aのパッキン貼付面は上方が空気調和機本体8の側面側に傾斜しているので、パッキンによる気密性が高まっていく。また、図5に示すように、空気調和機本体8をその下端部が天井面4に当接する位置付近まで押し上げると、取付板3aに設けられ斜め下方に向く係合部11に空気調和機本体8の側面上端部8aが引き寄せられるようにして係合し、最終的にパッキン9が所定量圧縮されて気密性が確保できる。
【0035】
このように、パッキン保護部10を設けることによってパッキンの圧縮を所定量までに規制することとなっても、設置後のパッキン9による気密性を確実に得ることができる。
【0036】
なお、本実施の形態1では、パッキン保護部10がアダプター取付板3に設けられている構成を示したが、図6に示すように、空気調和機本体8の通気口7の外周部にパッキン9を貼付し、パッキン保護部10を空気調和機本体8のパッキン9の上方近傍に貼付しても、同様の作用効果を奏することとなる。
【0037】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の天井埋込型空気調和機は、図7に示すように、上記実施の形態1の天井埋込型空気調和機に対し、取付板3aに、空気調和機本体8側に爪状に切り起こした形状の弾性を有するパッキン保護部10Aを設けた点に特徴がある。
【0038】
上記構成により、パッキン保護部10Aは取付板3aから一体に形成されているので、空気調和機本体8の挿入設置時に、パッキン保護部10A自体が引っ掛けられて剥がれたりちぎれたりすることがなく、パッキン9の保護性が高まる。
【0039】
なお、本実施の形態2では、パッキン保護部10Aがアダプター取付板3に設けられている構成を示したが、図8に示すように、空気調和機本体8の通気口7の外周部にパッキン9を貼付し、パッキン保護部10Aを空気調和機本体8のパッキン9の上方近傍に設けても、同様の作用効果を奏することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る天井埋込型空気調和機は、換気ダクトと連通接続されるアダプター取付板と空気調和機本体との間の気密性を確保してスムーズに施工できるものであり、天井裏に埋め込んで設置する空調用機器に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 換気ダクト
2 アダプター
3 アダプター取付板
4 天井面
5 天井開口
7 通気口
8 空気調和機本体
9 パッキン
10 パッキン保護部
10A パッキン保護部
11 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面に形成した天井開口から天井裏に挿入して前記天井開口の縁部に取り付けられ、換気ダクトと連通接続されるアダプターを有したアダプター取付板と、前記天井開口から天井裏に挿入されて前記天井面に設置され、前記アダプタと連通する排気口または吸気口を側面に形成した空気調和機本体とを備え、前記空気調和機本体の前記排気口または吸気口の外周部に風洩れ防止用のパッキンを貼付した天井埋込型空気調和機であって、前記空気調和機本体側面のパッキン上方近傍に、弾性を有して設けられ前記アダプター取付板との設置時における摩擦抵抗を低減させたパッキン保護部を設けたことを特徴とする天井埋込型空気調和機。
【請求項2】
パッキン保護部は、パッキンより硬い弾性材からなる部材を設けてなる請求項1に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項3】
パッキン保護部に摩擦抵抗を低減させる表面処理を施した請求項2に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項4】
パッキン保護部は、空気調和機本体側面のアダプター取付板側に弾性形状を一体的に形成した請求項1に記載の天井埋込型空気調和機。
【請求項5】
アダプター取付板の上端部に、空気調和機本体設置時にその側面を引き寄せるように、空気調和機本体側面の上端部に係合する係合部を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の天井埋込型空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−68416(P2013−68416A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−273168(P2012−273168)
【出願日】平成24年12月14日(2012.12.14)
【分割の表示】特願2008−200789(P2008−200789)の分割
【原出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】