説明

天井走行車システム

【構成】 走行レール4と並行にコンベヤ20を設け、ロードポート11,12とコンベヤ20間で物品を移載自在な天井走行車6を用いる。ロードポート11からコンベヤ20へ天井走行車6で物品を連続的に移載し、コンベヤ20でロードポート12側へ物品を搬送して、天井走行車6でロードポート12へ連続的に移載する。
【効果】 天井走行車を周回させずに、ロードポートからコンベヤへ、あるいはまたコンベヤからロードポートへ、天井走行車で物品を連続的に移載できる。コンベヤは高い位置に配置できるので、コンベヤの下方のスペースを利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は天井走行車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天井走行車システムでは、クリーンルームなどの天井付近に設置した走行レールを用いて天井走行車を走行させて、処理装置のロードポート間などで物品を搬送する。天井走行車は走行方向が固定で逆向きの走行は許されない。そこで近接した処理装置間で、多数個の物品を連続して搬送するような場合、天井走行車でロードポートからロードポートへ搬送すると、天井走行車がバックできないため、走行レールを1周してから、次の物品を搬送する必要がある。そこでロードポートとロードポートとの間をコンベヤで接続することが考えられるが、ロードポートは一般に人手でアクセスできるように、人の背丈よりも低い位置に配置される。そしてこの高さにコンベヤを設けると、そのスペースを通路などに使用しにくくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、処理装置のロードポートとその付近に設けたコンベヤとの間で物品を速やかに移載でき、しかもコンベヤを高い位置に配置して、コンベヤの下部の空間を有効利用できるようにすることにある。
請求項2の発明での追加の課題は、コンベヤ上の物品の搬送順序を任意に変更できるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、コンベヤの下方の空間の有効利用をより容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の天井走行車走行車システムは、走行レールの下方にロードポートを設けて、天井走行車の昇降台を昇降させて物品を受け渡すようにしたシステムにおいて、前記ロードポートの付近の走行レールの側方に走行レールと並行にコンベヤを設けると共に、前記天井走行車に前記コンベヤと前記ロードポートとの間で物品を移載するための手段を設けたことを特徴とする。
なお処理装置は広義に解し、搬送する物品を加工する装置(狭義の処理装置)の他に、物品の検査装置などを含む。また天井バッファは、クリーンルームなどの建屋内の天井付近にあるバッファを意味し、必ずしも天井で支持されているバッファとの意味ではない。
【0005】
好ましくは、前記コンベヤに対する天井走行車の停止位置を選択自在にして、例えばコンベヤ上の物品載置位置のほぼ全体に対して、天井走行車が選択的に停止できるようにする。そしてこれによって、コンベヤ上の複数の物品位置から選択された位置との間で、天井走行車が物品を移載自在にし、物品の搬送順序を変更したり、特定の物品載置位置を特急品の載置位置に割り当てて他の物品よりも優先的に搬送したりできるようにする。
【0006】
また好ましくは、前記コンベヤを走行レールを設置した建屋の天井から吊り下げて支持し、コンベヤの下方のスペースを支柱などのない空きスペースとして活用するとと共に、コンベヤの高さを天井走行車での物品の搬送面の高さよりもやや低い高さにするのを容易にして、天井走行車との間の物品の受け渡しを容易にする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の天井走行車システムでは、天井走行車を用いて、処理装置のロードポートとコンベヤとの間で直接物品を移載でき、ロードポートとコンベヤ間を接続する他の移載手段などが不要である。またコンベヤの高さ位置を、天井走行車で物品を搬送する高さレベルの付近にでき、コンベヤの下方のスペースを通路その他に有効利用できる。この発明の天井走行車システムは、例えば処理装置間で物品を連続的に搬送するために用いることができる。この場合、搬出側のロードポートの上部で天井走行車が停止して、ロードポートからコンベヤへ例えば1バッチ分の物品を連続的に移載し、コンベヤで搬入側のロードポートの付近まで物品を搬送する。そして天井走行車は搬入側のロードポートの上方へ移動し、同様にコンベヤからロードポートへ天井走行車で連続的に物品を移載できる。この発明の天井走行車システムは、処理装置間の物品の連続移動に限らず、ロードポートの付近に複数物品分の収容能力を持つバッファを設けるためなどにも使用できる。
【0008】
請求項2の発明では、天井走行車はコンベヤ上の物品載置位置を選択して停止でき、選択して停止した位置との間で物品を移載(受け渡し)できる。このため例えば天井走行車が荷下ろしする位置を選択する、あるいは荷積みする位置を選択することにより、物品の搬送順序を変更できる。またコンベヤ上の特定の物品載置位置を特急品などの特定の用途に割り当てることにより、搬送の柔軟性を増すことができる。
【0009】
請求項3の発明では、コンベヤを天井から吊して支持するので、コンベヤの下側に支柱などを設ける必要が無く、コンベヤの下側のスペースを有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図10に、実施例とその変形とを示す。これらの図において、2は天井走行車システムで、クリーンルームの内部などに設置され、処理装置間などで半導体基板や液晶基板などを搬送する。走行レール4は例えばクリーンルームの天井から吊り下げられて支持され、天井走行車6は走行レール4に沿って走行する。なお天井走行車6は走行レール4に沿って図1の矢印方向に1方向に走行し、バックは許されないものとし、28は搬送物品の例としてのカセットである。8,9は処理装置で、ロードポート10,11,12,13を備えている。そして図1,図2の例では、処理装置8の搬出側のロードポート11から、処理装置9の搬入側のロードポート12へ、天井走行車6とコンベヤ20,22を用いて物品を搬送する。また16は制御部で、天井走行車6並びにコンベヤ20,22などを制御する。
【0012】
図2の24,26は受け渡しコンベヤで、物品を天井走行車6とコンベヤ22の内部との間で搬送するためのコンベヤである。受け渡しコンベヤ24は搬出用のロードポート11から物品を受け入れるためのコンベヤで、受け渡しコンベヤ26は搬入用のロードポート12へ物品を搬出するためのコンベヤである。受け渡し用のコンベヤ24,26とロードポート11,12間の物品の受け渡しには天井走行車6を用いる。
【0013】
図1,図2の例では、コンベヤ20は走行レール4と平行に配置され、カセット28の搬送面の高さは、天井走行車6でカセットを搬送する際の、カセットの底面の高さよりやや低い位置である。そしてコンベヤ20,22は例えばクリーンルームの天井から吊されて支持され、コンベヤ20の下方は通路などに有効利用することができる。一方ロードポート10〜13は人手でアクセスできるように、床面から高さ1m程度の低い位置に配置され、ロードポート11,12とコンベヤ20,22との間のカセットの受け渡しは、天井走行車6の昇降台の昇降と横移動とを組み合わせて行う。ここで天井走行車とコンベヤ20,22間の物品の受け渡しでは、昇降台の昇降ストロークがロードポート10〜13の場合よりも短いので、昇降台の昇降動作に要する時間を短くできる。
【0014】
図1,図2の天井走行車システムでは、処理装置8のロードポート11からバッチ的に多数搬出するカセット28を、天井走行車6によりコンベヤ20,22に連続的に移載する。この間、天井走行車6は例えばロードポート11の上部の位置で停止したままで、昇降台の昇降と横送りのみによりカセットを受け渡しする。コンベヤ20,22に渡されたカセットをコンベヤ内で搬送する。処理装置8からのカセットの搬出が終わると、天井走行車6はロードポート12の上部の位置へと走行し、コンベヤ20,22上のカセットを昇降台の横移動と昇降とにより、ロードポート12へ連続的に積み下ろす。この間、ロードポート11からロードポート12へ走行する際の他は、天井走行車6は走行する必要がない。これに対してコンベヤ20,22を用いないと、天井走行車6はバックできないので、1カセット搬送する毎に、走行レールを1周して戻ってくる必要があり、走行経路を塞ぐとと共に所要時間が長くなる。なおこの例では、最長でもコンベヤ20,22は、2つの処理装置8,9間でカセット28を搬送している。しかし多数の処理装置間でカセットを搬送できるように、コンベヤ20,22を延長して、多数の処理装置間に渡るように設けても良い。
【0015】
図3の例では、処理装置8に対するバッファとしてコンベヤ20を用いる。そこで例えば、ロードポート10,11の双方に面した位置で、走行レール4の側方にコンベヤ20を配置する。処理装置8が複数のカセットを一括して処理できる場合、必要数のカセットが溜まるまで、搬入するカセットをコンベヤ20上に仮置きする。次いで天井走行車6をロードポート10の上部で停止させて、コンベヤ20から天井走行車6を介してロードポート10へカセットを搬入する。複数カセットの処理が一括して終了し、これらがロードポート11に搬出されると、天井走行車6でロードポート11からコンベヤ20へ移し替え、他の処理装置などへの搬送を開始するまで仮置きする。
【0016】
図1,図3で、天井走行車6はコンベヤ20に接した任意の位置で停止できるので、コンベヤ20の任意の物品載置位置に対して物品を荷下ろしし、コンベヤ20の任意の物品載置位置から物品をピックアップして搬送できる。このためコンベヤ20を利用して、物品の搬送順序を変更できる。
【0017】
天井走行車6の停止制御にはドッグなどのマークが必要であるが、コンベヤ20,22の各位置に対して、停止制御用のドッグなどを走行レール4などに取り付けるのは面倒である。そこでロードポート10〜13に対する停止位置と同じ位置で、物品の受け渡しができるコンベヤ上の位置に対して、ロードポート10〜13の停止制御用のドッグなどのマークやデータをそのまま利用する。走行レール4の走行方向位置が、ロードポート10〜13から離れた位置に対しては、その上流側で最寄りのロードポートに対する停止制御用のドッグを利用し、ドッグから停止位置までの走行距離をロードポートの場合と異ならせてこの距離を記憶する。これにより、ロードポートから離れた位置への停止制御を行う。
【0018】
図4に、処理装置8に対するコンベヤ20の配置を示す。この配置は、コンベヤ22の場合や処理装置9などに対する場合も同様である。走行レール4には例えば天井走行車6に対する給電線や通信線などが設けられ、図示しない走行駆動部により天井走行車6は走行レール4に沿って走行する。32は横送り部で、昇降駆動部30をコンベヤ20上の位置と、ロードポート10などの直上の位置との間で横移動させ、34は昇降台で、搬送台車のカセット28などをチャックして搬送する。コンベヤ20などには例えば落下防止柵40などを設け、支柱42などにより天井43から吊して支持する。またコンベヤの種類はローラコンベヤやベルトコンベヤなどとし、好ましくは1物品ずつ独立して搬送できるアキュムレートタイプのコンベヤとする。
【0019】
コンベヤ20でのカセット28の搬送面は、天井走行車6でカセット28を搬送する際の高さ(カセット底面の高さ)より、例えばDだけ低い高さとする。搬送面の高さの差Dは例えば5〜30cm程度とし、この結果、コンベヤ20などが干渉する高さの範囲は、天井走行車6の場合とほぼ同様になり、その下部のスペースを通路などに有効利用できる。クリーンルームの場合、コンベヤ20などの底面の床面44からの高さH1は例えば2〜3m程度で、ロードポート10などの床面44からの高さH2は例えば1m程度となる。45は、ロードポート10から処理装置8へ物品を搬入するための扉である。
【0020】
図5に、横送り部32によるカセット28の横移動を示す。48はラテラルドライブで、50,51はスプロケットで、この間にベルト52を掛け渡す。54はボールネジで、55はベルト52を横送り部32の底面に固定する固定部、56はボールネジ駆動部である。58はスプロケット50,51間を接続するフレームで、ボールネジ54の回転により左右動する。60はベルト52の下面を昇降駆動部30に固定する固定部である。
【0021】
ボールネジ54を回転させると、ラテラルドライブ48は横送り部32の底面から図5の左側へ移動し、これに伴ってスプロケット50と固定部55間の距離が縮まって、ベルト52は図5で時計回りに移動し、固定部60に取り付けられた昇降駆動部30は図5の左側に送り出される。図5のラテラルドライブ48は、ボールネジ54によるストロークを、ベルト52などを用いて2倍に増加させる一種の倍速機構である。また図5には示さなかったが、適宜のリニアガイドなどを設けて、昇降駆動部30が水平面内で左右動するようにガイドする。吊持材62は昇降台34と昇降駆動部30とを接続し、吊持材62の巻き取りや繰り出しにより昇降台34が昇降する。
【0022】
図6〜図8に、天井走行車の制御を示す。天井走行車の停止制御では、図6に示すように、ロードポート用のドッグを検出し、ロードポートの直上部で停止する場合には、ロードポートに対する停止データを用いてそのまま停止する。ロードポートの直上部から離れた位置に停止する場合、これらの間のシフトに応じて停止位置をシフトさせる。そして目的位置に停止するように制御し、失敗すればリトライする。
【0023】
図7は天井走行車とコンベヤ間の移載を示し、ラテラルドライブを左右方向に前進させて昇降台を下降させ、コンベヤとの間でカセットなどの物品を移載する。次いで昇降台を昇降させ、ラテラルドライブを後退させる。
【0024】
図8はコンベヤからロードポートへの移載を示し、ロードポートからコンベヤへの移載では、図8の前半のCの部分と後半のC’の部分の順序を変更すればよい。そしてコンベヤからロードポートへカセットなどの物品を移載する場合、ラテラルドライブをコンベヤ側へ前進させて昇降台を下降させ、コンベヤからカセットを移載し、昇降台を上昇させてラテラルドライブを後退させる。ここでコンベヤとロードポートとの間に走行方向位置のシフトがなければ、昇降台を下降させてロードポートへ移載し、昇降台を上昇させればよい。コンベヤとロードポートとの間にシフトがある場合、その分だけ天井走行車を走行させた後に、昇降台を下降させればよい。
【0025】
図9に、図1,図2の例で、処理装置の間でカセットを搬送する際のアルゴリズムを示す。天井走行車を例えば搬出側ロードポートの直上で停止させ、搬出側ロードポートからコンベヤへ物品を移載(受け渡し)する。次いでコンベヤ内でカセットを搬送する。全カセットの搬出を終了すると、天井走行車を搬入側ロードポートへ移動させ、コンベヤでカセットを天井走行車側へ搬送し、天井走行車でコンベヤから搬入側のロードポートへカセットを受け渡しする。そしてこの処理を全カセットの搬入が終了するまで繰り返す。
【0026】
図10に、図3の例でのカセットの一時保管のアルゴリズムを示す。天井走行車を例えば搬出側ロードポートの直上で停止させ、ロードポートからコンベヤへ天井走行車を用いてカセットを受け渡しする。そしてコンベヤによりカセットをコンベヤ内で搬送する。コンベヤから物品を搬送する場合、天井走行車をコンベヤに対する所望の位置に停止させて、任意のカセットをピックアップして搬送できる。このための搬送順序の変更等を容易に行える。
【0027】
実施例では、コンベヤを処理装置の走行レールに対する反対側に配置したが、例えば処理装置の上部に空きスペースがある場合、このスペースにコンベヤを配置しても良い。また実施例で用いた横送り部の構造は一例であるが、倍速機構を用いた横送り部が好ましい。

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】処理装置間の搬送装置としての実施例を示す平面図
【図2】図1の実施例に対する変形例を示す平面図
【図3】処理装置へのバッファとしての実施例を示す平面図
【図4】実施例の天井走行車システムの要部正面図
【図5】実施例の天井走行車システムでの昇降台の横移動を模式的に示す図
【図6】実施例での天井走行車の停止制御を示すフローチャート
【図7】実施例での、天井走行車と天井バッファ間の受け渡し制御を示すフローチャート
【図8】実施例での、天井バッファからロードポートへの受け渡し制御を示すフローチャート
【図9】処理装置間の搬送に関する実施例での、搬送アルゴリズムを示すフローチャート
【図10】ロードポート付近での物品の一時保管に関する実施例での、搬送アルゴリズムを示すフローチャート
【符号の説明】
【0029】
2 天井走行車システム
4 走行レール
6 天井走行車
8,9 処理装置
10〜13 ロードポート
16 制御部
20,22 コンベヤ
24,26 受け渡しコンベヤ
28 カセット
30 昇降駆動部
32 横送り部
34 昇降台
40 落下防止柵
42 支柱
43 天井
44 床面
45 扉
48 ラテラルドライブ
50,51 スプロケット
52 ベルト
54 ボールネジ
55 固定部
56 ボールネジ駆動部
58 フレーム
60 固定部
62 吊持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールの下方にロードポートを設けて、天井走行車の昇降台を昇降させて物品を受け渡すようにしたシステムにおいて、
前記ロードポートの付近の走行レールの側方に走行レールと並行にコンベヤを設けると共に、前記天井走行車に前記コンベヤと前記ロードポートとの間で物品を移載するための手段を設けたことを特徴とする、天井走行車システム。
【請求項2】
前記コンベヤに対する天井走行車の停止位置を選択自在にして、該コンベヤ上の複数の物品位置から選択された位置との間で、天井走行車が物品を移載自在にしたことを特徴とする、請求項1の天井走行車システム。
【請求項3】
前記コンベヤを、走行レールを設置した建屋の天井から吊り下げて支持したことを特徴とする、請求項1または2の天井走行車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−44920(P2006−44920A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231883(P2004−231883)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】