説明

天体表示装置

【課題】 表示画面と実際の星空との差異を無くし、実際に見える星の星図情報を表示する天体表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 現在位置及び現在年月日・時刻をGPS受信機11から取得し、現在位置からの星の方位及び仰角を電子コンパス12と傾きセンサー13で検出し、星図情報記憶媒体17から、CPU18で算出した赤緯・赤経の座標に基づいて得られる視野範囲の星図情報より、地図情報記憶媒体16に蓄積された等高線情報や建物情報の障害物情報に基づいて見えない星を特定し、輝度センサー14からの輝度情報により見えない等級の星を特定し、さらに、天候情報取得モジュール15からの雲位置情報により見えない星を特定し、CPU18により実際に見える星の星図情報のみを赤緯・赤経の座標に基づいて選定して表示装置19に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天体表示装置に関し、特に携帯性を有する天体表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の天体表示装置では、野外の天体観測において、GPS(Global Positioning System)受信機等により外部から位置情報と時刻情報を取得する手段を利用し、現在地や現在時刻を手動で入力することなしに、星や星座の位置を特定し表示する(例えば、特許文献1参照)。野外での観測を目的とすることから、これらは操作性に重点が置かれていた。
【0003】
【特許文献1】特開平7−20775号公報(第2頁右欄第2行〜第16行、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の天体表示装置では、図9に示すように、ビル1、家屋2などの建物や山3などの起伏が障害となって実際には見えることのない星を表示したり、都心部では建物や車等の照明の影響により実際には見えることのない等級の低い星を表示したりして、表示画面と実際の星空との対応がつかないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、表示画面と実際の星空との差異を無くし、正しい星図情報を表示する天体表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る天体表示装置は、現在の位置情報と年月日・時刻情報を取得するGPS受信機と、視線の方位を測定する方位測定手段と、視線の水平面とのなす角度である仰角を測定する傾き測定手段と、星図情報を蓄えた星図記憶手段と、前記GPS受信機で検出される現在年月日・時刻及び位置において、前記方位測定手段と前記傾き測定手段で検出された視野範囲に見得る星に関する第一の星図情報を前記星図記憶手段から取得する取得手段と、障害となる情報に基づいて見えない星を特定して前記第一の星図情報から見える星を選定する選定手段と、この選定手段により得られる第二の星図情報を表示する表示手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内部及び外部から、障害となる情報に基づいて、見えない星を特定することにより、見える星を選定し表示するようにしたので、実際に見える星空に近い画像を表示し、星や星座の情報を対応させることが容易となり、実際の星空の説明ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る天体表示装置の各種実施の形態について、図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1における天体表示装置の構成を示すブロック図である。図1において、11は位置情報取得手段としてのGPS受信機であり、GPS衛星から電波を利用して算出した現在地の緯度・経度を取得する。また、GPS受信機では、年月日・時刻取得手段として現在時刻も取得する。12は方位測定手段としての電子コンパスであり、視線の方向に天体表示装置を向けることにより方位を測定する。13は傾き測定手段としての傾きセンサーであり、視線の方向に天体表示装置を傾けることにより仰角を測定する。
【0009】
14は輝度センサーであり、観測地点の周囲の明るさを輝度情報として取得する。15は天候情報取得モジュールであり、外部からインターネットやFM情報などを通して現在地付近における天候情報を取得する。
【0010】
16は地図記憶手段としての地図情報記憶媒体であり、17は星図記憶手段としての星図情報記憶媒体である。地図情報記憶媒体16に保存されている地図情報には、一般に用いられている位置情報に加え、山などの地形の起伏情報としての等高線情報や、ビルや家屋などの立体形状の情報としての建物情報が含まれている。星図情報記憶媒体17に保存されている星図情報には、例えば、図2に示すように、星の名前、赤緯・赤経での位置座標、星の等級、及び地球から星までの距離等の情報が含まれている。地図情報記憶媒体16、及び星図情報記憶媒体17は、例えばハードディスクやフラッシュメモリー等の記憶媒体からなる。
【0011】
18は、視野範囲の星図情報を取得する取得手段、及び見える星を選定する選定手段としてのCPU(Central Processing Unit)であり、赤緯・赤経への座標変換等の各種演算処理を行う。19は星図画像や地図画像を表示する表示装置であり、星や星座の情報も文字や絵等により表示する。また、18は入力装置としても機能する。20はスピーカー等の音声出力装置であり、星や星座の情報を音声で出力する。
【0012】
図3は、本実施の形態1における天体表示装置での情報の系統を示すブロック図である。図3において、GPS受信機11で現在地の緯度・経度、及び現在年月日・時刻であるGPS受信情報21を取得すると、地図情報記憶媒体16からは、緯度・経度を基に現在地の地図情報22が得られる。星図情報記憶媒体17からは、現在地の緯度・経度と、傾きセンサー13からの傾き情報23、及び電子コンパス12からの方位情報24により、CPU18により赤緯・赤経の座標を算出し、視野範囲における現在年月日・時刻の星図情報25が、第一の星図情報として得られる。また、天候情報取得モジュール15からは、前記緯度・経度から現在地付近の天候情報26が得られる。
【0013】
さらに、地図情報22に含まれる等高線情報28と建物情報29から、CPU18により赤緯・赤経の座標を算出し、現在地からの障害物の位置情報として障害物情報27が得られる。天候情報26からは、CPU18により赤緯・赤経の座標を算出し、現在地からの雲の位置情報として雲位置情報30が得られる。
【0014】
星図情報25から、CPU18により赤緯・赤経の座標に基づいて、障害となる情報としての障害物情報27及び雲位置情報30に基づく見えない星を削除し、障害となる情報としての輝度センサー14からの輝度情報31に基づく見えない等級の星を削除して、実際に見える第二の星図情報としての実際に見える星の星図情報32が得られる。この実際に見える星の星図情報32と、地図情報22が表示情報33となる。
【0015】
次に、図4のフローチャートに従い、本実施の形態1におけるGPS受信機を利用した天体表示装置の動作について説明する。まず、GPS受信機11によりGPS受信情報21として現在地の緯度・経度、及び現在年月日・時刻を検出する(ステップ1)。さらに、電子コンパス12と傾きセンサー13により、天体表示装置の傾き情報23と方位情報24を検出して、現在地の緯度・経度からの視野範囲を、CPU18により赤緯・赤経の座標を算出し、視野範囲における現在年月日・時刻の星図情報25を赤緯・赤経の座標に基づいて星図情報記憶媒体17から取得する(ステップ2)。
【0016】
地図情報記憶媒体16からは、現在地の緯度・経度から地図情報22を取得する(ステップ3)。星図情報25の視野範囲の内で、この地図情報22に含まれる等高線情報28と建物情報29から、障害となる領域を赤緯・赤経の座標としてCPU18で算出し、障害物情報27として取得する(ステップ4)。星図情報25の中で、この障害物情報27に基づき見えない星を、CPU18により赤緯・赤経の座標に基づいて特定する(ステップ5)。
【0017】
輝度センサー14では、周囲の輝度情報31が取得される。(ステップ6)。前もってメモリ(図示せず)に記憶しておいた周囲の輝度と関連付けた見えない等級のデータに基づき、輝度情報31により見えない等級の星を、星図情報25の視野範囲の内で、CPU18により特定する(ステップ7)。
【0018】
天候情報取得モジュール15からは、現在時刻における現在地付近の天候情報26を取得する(ステップ8)。星図情報25の視野範囲の内で、天候情報26により、障害となる雲の領域を赤緯・赤経の座標としてCPU18で算出し、雲位置情報30として取得する(ステップ9)。星図情報25の視野範囲の内で、この雲位置情報30に基づき見えない星を、CPU18により特定する(ステップ10)。
【0019】
最後に、星図情報25から、障害物情報27に基づき見えない星、輝度情報31により見えない等級の星、及び雲位置情報30に基づき見えない星を、CPU18により削除し、実際に見える星のみを選定し、星図情報32として取得する(ステップ11)。図5に示すように、実際に見える星の星図情報32は、表示装置19により表示される(ステップ12)。
【0020】
なお、ここでは、輝度情報として輝度センサー14から実際に検出される周囲の輝度を用いたが、建物情報29から得られる建物や道路の規模や密集度により推測される輝度から、見えない等級の星を特定してもよい。
【0021】
また、ここでは、実際に見える星の星図情報32のみを表示装置19に表示したが、星図情報32の視野範囲に、山やビル、家屋等の障害物情報27を付加して表示してもよい。
【0022】
また、ここでは、実際に見える星の星図情報32を表示装置19により表示したが、星や星座等の情報を音声出力装置20で、音声で出力してもよい。
【0023】
以上のように、本実施の形態1では、地図情報22に含まれる障害物情報27により見えない星を特定し、輝度情報31により見えない等級の星を特定し、さらに、外部からの雲位置情報30により見えない星を特定し、見える星のみを選定するようにしたので、実際に見える星空に近い画像を表示でき、実際の星空の説明ができる。
【0024】
実施の形態2.
実施の形態1の天体表示装置においては、障害となる情報に基づいて見える星を選定して表示する場合について示した。実施の形態2では、実際に見える星と完全に一致する星空のカメラ画像を、見える星を選定した星図情報を対応させて表示する場合について示す。
【0025】
図6は、本実施の形態2における天体表示装置の構成を示すブロック図である。実施の形態2は、実施の形態1の天体表示装置に、撮像手段としてのカメラ34を備えたものである。その他の構成に関しては、実施の形態1と同様であり、相当部分には図1と同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
次に、図7のフローチャートに従い、本実施の形態2における天体表示装置の動作について説明する。図7のステップ1からステップ11までは、実施の形態1の図4のステップ1からステップ11までの動作と同じであり、その説明を省略する。
【0027】
実際に見える星の星図情報32を取得した後、カメラ34から、星空のカメラ画像35を取得する(ステップ3)。このカメラ画像35と星図情報32の相関をとる(ステップ4)。相関をとる方法としては、例えば、図8に示すように、カメラ画像35と星図情報32それぞれの画像を、XY座標の輝度値でプロットする方法がある。プロットしたX軸データ同士、Y軸データ同士を対応させて、カメラ画像35のデータを数ポイントずらせることにより、星図情報32の画像との偏差で最小となる変化量をX軸、Y軸のそれぞれの補正値として対応させる。
【0028】
相関のとれたカメラ画像35は、表示装置19で表示させる(ステップ5)。この表示されたカメラ画像35の星には星図情報32が対応しており、カメラ画像35上に星図情報32の星や星座の情報を文字や絵等で表示される。また、星や星座等の情報を音声出力装置20で、音声で出力してもよい。
【0029】
以上のように、本実施の形態2では、星空のカメラ画像35を星図情報32に対応させて表示するようにしたので、実際に見える星と完全に一致するカメラ画像の上に星や星座の名前や絵等の情報を対応させることが容易となり、実際の星空の説明ができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る天体表示装置の実施の形態1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る天体表示装置の実施の形態1の星図情報記憶媒体に保存されている星図情報の一例である。
【図3】本発明に係る天体表示装置の実施の形態1の情報の系統を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る天体表示装置の実施の形態1の動作手順を示すフローチャート図である。
【図5】本発明に係る天体表示装置の実施の形態1の星図情報を表示した画面の一例である。
【図6】本発明に係る天体表示装置の実施の形態2の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る天体表示装置の実施の形態2の動作手順を示すフローチャート図である。
【図8】本発明に係る天体表示装置の実施の形態2のカメラ画像と星図情報それぞれの画像を、XY座標の輝度値でプロットした図の一例である。
【図9】従来の天体表示装置の星図情報を表示した画面の一例である。
【符号の説明】
【0031】
11 GPS受信機
12 電子コンパス
13 傾きセンサー
14 輝度センサー
15 天候情報取得モジュール
16 地図情報記録媒体
17 星図情報記録媒体
18 CPU
19 表示装置
21 GPS受信情報
22 地図情報
23 傾き情報
24 方位情報
25 星図情報
26 天候情報
27 障害物情報
28 等高線情報
29 建物情報
30 雲位置情報
31 輝度情報
32 実際に見える星の星図情報
33 表示情報
34 カメラ
35 カメラ画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在の位置情報と年月日・時刻情報を取得するGPS受信機と、視線の方位を測定する方位測定手段と、視線の水平面とのなす角度である仰角を測定する傾き測定手段と、星図情報を蓄えた星図記憶手段と、前記GPS受信機で検出される現在年月日・時刻及び位置において、前記方位測定手段と前記傾き測定手段で検出された視野範囲に見得る星に関する第一の星図情報を前記星図記憶手段から取得する取得手段と、障害となる情報に基づいて見えない星を特定して前記第一の星図情報から見える星を選定する選定手段と、この選定手段により得られる第二の星図情報を表示する表示手段を備えたことを特徴とする天体表示装置。
【請求項2】
選定手段が、視野範囲に属する建物情報と等高線情報を障害となる情報とすることを特徴とする請求項1に記載の天体表示装置。
【請求項3】
選定手段が、輝度センサーから得られる周囲の輝度情報を障害となる情報とすることを特徴とする請求項2に記載の天体表示装置。
【請求項4】
選定手段が、視野範囲に属する建物と道路の情報を輝度情報として障害となる情報とすることを特徴とする請求項2に記載の天体表示装置。
【請求項5】
選定手段が、外部から受信した天候情報による雲の位置情報を障害となる情報とすることを特徴とする請求項2に記載の天体表示装置。
【請求項6】
表示手段が、第二の星図情報に、地図記憶手段から得られる視野範囲に属する建物情報と等高線情報を付加して表示することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の天体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−127692(P2007−127692A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318174(P2005−318174)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】