説明

天然ガスの輸送及び貯蔵並びに利用方法

【課題】 天然ガスを効率的に輸送、貯蔵及び利用する。
【解決手段】 生産した天然ガスを所定温度にて平衡圧力以上で水に混合接触させハイドレート化によりハイドレートを生成し、該ハイドレートに可燃性のスラリー媒体を加えてハイドレートスラリー燃料を合成し、該ハイドレートスラリー燃料を所定場所に輸送し、貯蔵する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然ガスの輸送及び貯蔵並びに利用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、事業用及び工業用の燃料には、単位燃焼量当たりのCO排出量が少ない天然ガスを用いている。
【0003】天然ガスは、主成分のメタンにエタン、プロパン、ブタンを数%含んだガスであり、図2に示す如くガス田より産出されている。
【0004】ガス田には天然ガスを生産するプラント1と共に天然ガスをLNGに処理するLNGプラント2を備えており、LNGプラント2では、生産された天然ガスを−162℃以下の極低温で処理するLNG化により液化天然ガスの状態にしている。
【0005】天然ガスをLNGプラント2によりLNGにすると、LNGは、特殊な構造を備えたLNG船等の輸送手段3により需要先へ天然ガスを供給するよう輸送され、需要先の貯蔵施設4に保管される。
【0006】次いで貯蔵施設4に保管されたLNGを使用する際には、LNGをガス化プラント5によりガス化して天然ガスにし、パイプライン等の搬送手段6を介して需要先の発電所等の発電施設7へ搬送する。
【0007】発電施設7では、天然ガスを燃焼することによりガスタービン(図示せず)を介して発電し、更に前記ガスタービンより排出される混合ガスにより発生せしめた水蒸気を用いスチームタービン(図示せず)を介して複合発電する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、天然ガスをLNGとして輸送、貯蔵及び利用する場合には、天然ガスを液化するLNGプラント2や、天然ガスを極低温で輸送するLNG船等の輸送手段3及び貯槽し得る貯蔵施設4が必要になり、設備の建設費、運転コスト等が増加するという問題がある。
【0009】又、天然ガスをLNGにするLNGシステムは、LNGプラント2等が必要になるため設備が大型になり、中小規模のガス田では適用ができず、ガス田の開発が著しく制限されるという問題がある。
【0010】本発明は、天然ガスを効率的に輸送、貯蔵及び利用することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の天然ガスの輸送及び貯蔵方法は、生産した天然ガスを所定温度にて平衡圧力以上で水に混合接触させハイドレート化によりハイドレートを生成し、該ハイドレートに可燃性のスラリー媒体を加えてハイドレートスラリー燃料を合成し、該ハイドレートスラリー燃料を所定場所に輸送し、貯蔵するものである。
【0012】又、本発明の天然ガスの利用方法は、ハイドレートスラリー燃料の状態で輸送及び貯蔵された天然ガスを需要先に供給するものである。
【0013】更に、需要先は、ハイドレートスラリー燃料を燃焼することによりガスタービンを介して発電し、更に前記ガスタービンより排出される混合ガスにより発生せしめた水蒸気を用いスチームタービンを介して発電する複合発電システムであっても良い。
【0014】生産された天然ガスは、所定温度にて平衡圧力以上で水に混合接触することによりハイドレート化して安定な固体のハイドレートとなり、更に可燃性のスラリー媒体を加えることによりスラリー化して、流動性に優れ且つ発熱量の高い液体燃料状のハイドレートスラリー燃料となり、該ハイドレートスラリー燃料の状態で輸送及び貯蔵される。
【0015】このように、天然ガスをハイドレートスラリー燃料として取り扱うと、ハイドレートスラリー燃料は平易な温度及び略常圧で保持されるので、輸送及び貯蔵等の際に、極低温のLNGに対応する特殊な設備等を不要にして設備の建設費、運転コストを抑制することができる。
【0016】又、ガス田等の産出場所においてLNGプラント等の大型の設備を不要にするので、大規模なガス田のみならず、中小規模のガス田においても容易に適用することができる。
【0017】更に、ハイドレートスラリー燃料はハイドレートにスラリー燃料を加えることによりハイドレートを流動性に優れたものにすると共に安定に保持するので容易に輸送及び貯蔵することができる。
【0018】ハイドレートスラリー燃料の状態で貯蔵された天然ガスを需要先に供給すると、スラリー燃料を加えて発熱量が大きいハイドレートスラリー燃料は、そのまま燃焼して使用し得るので、ハイドレートのみの場合に必要であったガス化等の処理を不要にして、ハイドレートスラリー燃料の状態のままで需要先に供給及び使用することができ、結果として効率良く供給及び使用して一層経済性を向上させることができる。
【0019】需要先が、ハイドレートスラリー燃料を燃焼することによりガスタービンを介して発電し、更に前記ガスタービンより排出される混合ガスにより発生せしめた水蒸気を用いスチームタービンを介して発電すると、ガスタービン及びスチームタービンの複合発電により高効率の発電をすることができる。又、ハイドレートスラリー燃料が分解により炭化水素ガスと水を発生して膨張し、更に燃焼により排ガス及び水蒸気を発生して一層膨張するのでガスタービンの燃料として非常に優れていると共に、ガスタービンに送る過剰な空気量を低減し且つ発電の効率を向上させるので排出CO、NOx量を削減し、資源も節約することができる。なお、ハイドレートのみではガスタービンの燃料とはならない。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0021】図1は本発明を実施する形態例を示すフローシートであって、天然ガスをハイドレートとして輸送及び貯蔵並びに利用する方法を示している。
【0022】天然ガスの供給先であるガス田には天然ガスを生産するプラント8と共に、ハイドレート化設備9a及びスラリー化設備9bからなる処理プラント9を備えており、処理プラント9より需要先へ天然ガスを供給する手段には船舶等の輸送手段10を使用している。
【0023】天然ガスの需要先には貯蔵する貯蔵施設11を備えており、貯蔵施設11はパイプライン等の搬送手段12を介して需要先に接続されている。
【0024】需要先は主に複合発電システムを備えた発電施設13であり、発電施設13は、ガスタービンを備えた燃焼ライン(図示せず)と、スチームタービンを備えた蒸発ライン(図示せず)とを設けている。
【0025】以下、本発明の実施の形態例の作用を説明する。
【0026】天然ガスはガス田より産出されてプラント8により生産されており、生産された天然ガスは、処理プラント9のハイドレート化設備9aにより、温度0℃〜10℃、圧力15〜70ataの範囲の任意値に調節された水中に吹き込まれる。
【0027】天然ガスは水中に吹き込まれることによりハイドレートを生成しており、ここで、ハイドレートは、水分子が弱く結合して形成された籠状構造に、天然ガスの成分であるメタン、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素が閉じ込められたシャーベット状の固体化合物である。メタンが閉じ込められるハイドレートの場合は、0℃、26ataで生成されるハイドレートであって、1Lのハイドレートに、100L〜170Lのメタンガスが固定されている。
【0028】水中のハイドレートは水から分離され、更に処理プラント9のスラリー化設備9bによりスラリー媒体と混合されてハイドレートスラリー燃料になる。ここで、スラリー媒体は、エーテル類、ナフサ・灯油・軽油等の原油蒸留成分、原油、プロパン・ブタン等の炭素数3以上の炭化水素類、ケトン類からなる群から選ばれる1種もしくは2種以上のものである。なお、メタノール、エタノールはハイドレートを分解するので使用できない。
【0029】続いてハイドレートスラリー燃料は、ハイドレートが略常圧の約1ataで分解しない平衡温度、若しくはスラリー燃料中のハイドレートが圧力約1ataで分解しない温度の−30℃〜−5℃で冷却される。
【0030】ハイドレートスラリー燃料が略常圧の約1ataまで減圧されると、ハイドレートスラリー燃料は、−30℃〜−5℃で常圧の雰囲気を有する輸送手段10のスラリー船に搬入されて需要先へ輸送される。
【0031】天然ガスの需要先ではハイドレートスラリー燃料を、スラリー船と略同様な−30℃〜−5℃で常圧の雰囲気を有する貯蔵施設11に搬入して所定期間保管する。
【0032】次いで貯蔵施設11に保管されたハイドレートスラリー燃料を使用する際には、ハイドレートスラリー燃料をパイプライン等の搬送手段12を介して需要先の発電所等の発電施設13へ搬送する。
【0033】需要先の発電施設13では、ハイドレートスラリー燃料を加圧して燃焼用空気と混合させつつ燃焼することにより燃焼ガスと水蒸気の混合ガスを生じ、混合ガスは燃焼ラインでガスタービンを介して発電すると共にスチームタービンを備えた蒸発ラインの水を水蒸気にし、水蒸気はスチームタービンを介して発電し、総合的に複合発電となる。
【0034】以上のことから、天然ガスをハイドレートスラリー燃料として取り扱うと、ハイドレートスラリー燃料は、温度−30℃〜0℃の範囲内の平易な温度及び略常圧の1ataで保持されるので、輸送及び貯蔵等の際に、極低温のLNGに対応する特殊な設備等を不要にして設備の建設費、運転コストを抑制することができる。ここで、略常圧の約1ataのハイドレートスラリー燃料の温度が−30℃〜0℃より低いと、スラリー媒体が凍結してしまうので流動性が失われ燃料として取り扱いが困難になり、この温度範囲より高いと、略常圧に保つことができなくなる。
【0035】又、ガス田等の産出場所においてLNGプラント等の大型の設備を不要にするので、大規模なガス田のみならず、中小規模のガス田においても容易に適用することができる。
【0036】更に、ハイドレートスラリー燃料はハイドレートにスラリー燃料を加えることによりハイドレートを流動性に優れたものにすると共に安定に保持するので容易に輸送及び貯蔵することができる。
【0037】ハイドレートスラリー燃料の状態で貯蔵された天然ガスを需要先に供給すると、スラリー燃料を加えて発熱量が大きいハイドレートスラリー燃料は、そのまま燃焼して使用し得るので、ハイドレートのみの場合に必要であったガス化等の処理を不要にして、ハイドレートスラリー燃料の状態のままで需要先に供給及び使用することができ、結果として効率良く供給及び使用して一層経済性を向上させることができる。
【0038】需要先が、ハイドレートスラリー燃料を燃焼することによりガスタービンを介して発電し、更に前記ガスタービンより排出される混合ガスにより発生せしめた水蒸気を用いスチームタービンを介して発電すると、ガスタービン及びスチームタービンの複合発電により高効率の発電をすることができる。又、ハイドレートスラリー燃料が分解により炭化水素ガスと水を発生して膨張し、更に燃焼により排ガス及び水蒸気を発生して一層膨張するのでガスタービンの燃料として非常に優れていると共に、ガスタービンに送る過剰な空気量を低減し且つ発電の効率を向上させるので排出CO、NOx量を削減し、資源も節約することができる。なお、ハイドレートのみではガスタービンの燃料とはならない。
【0039】なお、本発明の天然ガスの輸送及び貯蔵並びに利用方法は、上述の実施の形態例に限定されるものではなく、スラリー化されたハイドレートはハイドレートスラリー燃料のみならず氷被覆膜のハイドレートスラリー燃料でも良いこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0040】
【発明の効果】本発明の天然ガスの輸送及び貯蔵並びに利用方法によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0041】I)天然ガスをハイドレートスラリー燃料として取り扱うと、ハイドレートスラリー燃料は平易な温度及び略常圧で保持されるので、輸送及び貯蔵等の際に、極低温のLNGに対応する特殊な設備等を不要にして設備の建設費、運転コストを抑制することができる。
【0042】II)ガス田等の産出場所においてLNGプラント等の大型の設備を不要にするので、大規模なガス田のみならず、中小規模のガス田においても容易に適用することができる。
【0043】III)ハイドレートスラリー燃料はハイドレートにスラリー燃料を加えることによりハイドレートを流動性に優れたものにすると共に安定に保持するので容易に輸送及び貯蔵することができる。
【0044】IV)ハイドレートスラリー燃料の状態で貯蔵された天然ガスを需要先に供給すると、スラリー燃料を加えて発熱量が大きいハイドレートスラリー燃料は、そのまま燃焼して使用し得るので、ハイドレートのみの場合に必要であったガス化等の処理を不要にして、ハイドレートスラリー燃料の状態のままで需要先に供給及び使用することができ、結果として効率良く供給及び使用して一層経済性を向上させることができる。
【0045】V)需要先が、ハイドレートスラリー燃料を燃焼することによりガスタービンを介して発電し、更に前記ガスタービンより排出される混合ガスにより発生せしめた水蒸気を用いスチームタービンを介して発電すると、ガスタービン及びスチームタービンの複合発電により高効率の発電をすることができる。又、ハイドレートスラリー燃料が分解により炭化水素ガスと水を発生して膨張し、更に燃焼により排ガス及び水蒸気を発生して一層膨張するのでガスタービンの燃料として非常に優れていると共に、ガスタービンに送る過剰な空気量を低減し且つ発電の効率を向上させるので排出CO、NOx量を削減し、資源も節約することができる。なお、ハイドレートのみではガスタービンの燃料とはならない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の天然ガスの輸送及び貯蔵並びに利用方法を示すフローシートである。
【図2】従来の天然ガスの輸送及び貯蔵並びに利用方法を示すフローシートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 生産した天然ガスを所定温度にて平衡圧力以上で水に混合接触させハイドレート化によりハイドレートを生成し、該ハイドレートに可燃性のスラリー媒体を加えてハイドレートスラリー燃料を合成し、該ハイドレートスラリー燃料を所定場所に輸送し、貯蔵することを特徴とする天然ガスの輸送及び貯蔵方法。
【請求項2】 ハイドレートスラリー燃料の状態で輸送及び貯蔵された天然ガスを需要先に供給することを特徴とする天然ガスの利用方法。
【請求項3】 需要先が、ハイドレートスラリー燃料を燃焼することによりガスタービンを介して発電し、更に前記ガスタービンより排出される混合ガスにより発生せしめた水蒸気を用いスチームタービンを介して発電する請求項2記載の天然ガスの利用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−192683(P2001−192683A)
【公開日】平成13年7月17日(2001.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−3559(P2000−3559)
【出願日】平成12年1月12日(2000.1.12)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】