説明

天然ガス発熱量測定システム及び天然ガス発熱量測定システムの校正方法

【課題】天然ガスの発熱量を容易かつ正確に測定可能な天然ガス発熱量測定システムを提供する。
【解決手段】測温素子及び複数の発熱温度で発熱する発熱素子が設けられ、気体が注入される容器101と、測温素子からの電気信号及び複数の発熱温度における発熱素子からの電気信号を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置402と、発熱量算出式の独立変数に、測温素子及び発熱素子からの電気信号の測定値を代入して、容器に注入された気体の発熱量の測定値を算出する発熱量算出部305と、容器に注入された気体がメタンガスである場合、発熱量算出部が算出したメタンガスの発熱量の測定値に、メタンガスの発熱量の標準値と、発熱量算出式で算出されたメタンガスの発熱量の測定値と、の差である補正値を加える補正部307と、を備える、天然ガス発熱量測定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス検査技術に係り、天然ガス発熱量測定システム及び天然ガス発熱量測定システムの校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスの発熱量を求める際には、高価なガスクロマトグラフィ装置等を用いて天然ガスの成分比を分析する必要がある。また、天然ガスの熱伝導率及び天然ガス雰囲気における音速を測定することにより、天然ガスに含まれるメタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び炭酸ガス(CO2)の成分比率を算出し、天然ガスの発熱量を求める方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−514138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された方法は、熱伝導率を測定するためのセンサの他に、音速を測定するための高価な音速センサが必要である。そこで、本発明は、天然ガスの発熱量を容易かつ正確に測定可能な天然ガス発熱量測定システム及び天然ガス発熱量測定システムの校正方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、(a)測温素子及び複数の発熱温度で発熱する発熱素子が設けられ、気体が注入される容器と、(b)測温素子からの電気信号及び複数の発熱温度における発熱素子からの電気信号を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、(c)発熱量算出式の独立変数に、測温素子及び発熱素子からの電気信号の測定値を代入して、容器に注入された気体の発熱量の測定値を算出する発熱量算出部と、(d)メタンガスの発熱量の標準値と、発熱量算出式で算出されたメタンガスの発熱量の測定値と、の差である補正値を保存する補正値記憶装置と、(e)容器に注入された気体がメタンガスである場合、発熱量算出部が算出したメタンガスの発熱量の測定値に補正値を加える補正部と、を備える、天然ガス発熱量測定システムが提供される。
【0006】
また、本発明の態様によれば、(a)測温素子及び複数の発熱温度で発熱する発熱素子が設けられた容器に気体を注入することと、(b)測温素子からの電気信号及び複数の発熱温度における発熱素子からの電気信号を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、(c)発熱量算出式の独立変数に、測温素子及び発熱素子からの電気信号の測定値を代入して、容器に注入された気体の発熱量の測定値を算出することと、(d)メタンガスの発熱量の標準値と、発熱量算出式で算出されたメタンガスの発熱量の測定値と、の差である補正値を用意することと、(e)容器に注入された気体がメタンガスである場合、発熱量算出式を用いて測定されたメタンガスの発熱量の測定値に補正値を加えることと、を含む、天然ガス発熱量測定システムの校正方法が提供される。
【0007】
また、本発明の態様によれば、(a)気体の放熱係数又は熱伝導率の測定値を測定する測定部と、(b)放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、(c)発熱量算出式の独立変数に、気体の放熱係数又は熱伝導率の測定値を代入して、気体の発熱量の測定値を算出する発熱量算出部と、(d)メタンガスの発熱量の標準値と、発熱量算出式で算出されたメタンガスの発熱量の測定値と、の差である補正値を保存する補正値記憶装置と、(e)気体がメタンガスである場合、発熱量算出部が算出したメタンガスの発熱量の測定値に補正値を加える補正部と、を備える、天然ガス発熱量測定システムが提供される。
【0008】
また、本発明の態様によれば、(a)気体の放熱係数又は熱伝導率の測定値を測定することと、(b)放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、(c)発熱量算出式の独立変数に、気体の放熱係数又は熱伝導率の測定値を代入して、気体の発熱量の測定値を算出することと、(d)メタンガスの発熱量の標準値と、発熱量算出式で算出されたメタンガスの発熱量の測定値と、の差である補正値を用意することと、(e)気体がメタンガスである場合、発熱量算出式を用いて測定されたメタンガスの発熱量の測定値に補正値を加えることと、を含む、天然ガス発熱量測定システムの校正方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、天然ガスの発熱量を容易かつ正確に測定可能な天然ガス発熱量測定システム及び天然ガス発熱量測定システムの校正方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロチップの斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロチップの図1のII−II方向から見た断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る発熱素子に関する回路図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る測温素子に関する回路図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る発熱素子の温度と、ガスの放熱係数の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システムの第1の模式図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システムの第2の模式図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る天然ガスの発熱量の測定方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係るガスの特性を示す表である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システムの校正方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システムの校正方法を示すフローチャートである。
【図13】本発明のその他の実施の形態に係るガスの熱伝導率と、放熱係数と、の関係を示すグラフである。
【図14】本発明の実施の形態の実施例2に係るサンプル混合ガスの算出された発熱量の真値からの誤差を示す第1のグラフである。
【図15】本発明の実施の形態の実施例2に係るサンプル混合ガスの算出された発熱量の真値からの誤差を示す第2のグラフである。
【図16】本発明の実施の形態の実施例2に係るサンプル混合ガスの算出された発熱量の真値からの誤差を示す第3のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
(第1の実施の形態)
まず、斜視図である図1、及びII−II方向から見た断面図である図2を参照して、第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システムに用いられるマイクロチップ8について説明する。マイクロチップ8は、キャビティ66が設けられた基板60、及び基板60上にキャビティ66を覆うように配置された絶縁膜65を備える。基板60の厚みは、例えば0.5mmである。また、基板60の縦横の寸法は、例えばそれぞれ1.5mm程度である。絶縁膜65のキャビティ66を覆う部分は、断熱性のダイアフラムをなしている。さらにマイクロチップ8は、絶縁膜65のダイアフラムの部分に設けられた発熱素子61と、発熱素子61を挟むように絶縁膜65のダイアフラムの部分に設けられた第1の測温素子62及び第2の測温素子63と、基板60上に設けられた保温素子64と、を備える。
【0013】
発熱素子61は、キャビティ66を覆う絶縁膜65のダイアフラムの部分の中心に配置されている。発熱素子61は、例えば抵抗器であり、電力を与えられて発熱し、発熱素子61に接する雰囲気ガスを加熱する。第1の測温素子62及び第2の測温素子63は、例えば抵抗器等の受動素子等の電子素子であり、雰囲気ガスのガス温度に依存した電気信号を出力する。以下においては、第1の測温素子62の出力信号を利用する例を説明するが、これに限定されず、例えば第1の測温素子62の出力信号及び第2の測温素子63の出力信号の平均値を、測温素子の出力信号として利用してもよい。
【0014】
保温素子64は、例えば抵抗器であり、電力を与えられて発熱し、基板60の温度を一定に保つ。基板60の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜65の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。キャビティ66は、異方性エッチング等により形成される。また発熱素子61、第1の測温素子62、第2の測温素子63、及び保温素子64のそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。また、発熱素子61、第1の測温素子62、及び第2の測温素子63は、同一の部材からなっていてもよい。
【0015】
マイクロチップ8は、マイクロチップ8の底面に配置された断熱部材18を介して、雰囲気ガスが充填されるチャンバ等の容器に固定される。断熱部材18を介してマイクロチップ8をチャンバ等に固定することにより、マイクロチップ8の温度が、チャンバ等の内壁の温度変動の影響を受けにくくなる。ガラス等からなる断熱部材18の熱伝導率は、例えば1.0W/(m・K)以下である。
【0016】
図3に示すように、発熱素子61の一端には、例えば、オペアンプ170の+入力端子が電気的に接続され、他端は接地される。また、オペアンプ170の+入力端子及び出力端子と並列に、抵抗素子161が接続される。オペアンプ170の−入力端子は、直列に接続された抵抗素子162と抵抗素子163との間、直列に接続された抵抗素子163と抵抗素子164との間、直列に接続された抵抗素子164と抵抗素子165との間、又は抵抗素子165の接地端子に電気的に接続される。各抵抗素子162−165の抵抗値を適当に定めることにより、例えば5.0Vの電圧Vinを抵抗素子162の一端に印加すると、抵抗素子163と抵抗素子162との間には、例えば2.4Vの電圧VL3が生じる。また、抵抗素子164と抵抗素子163との間には、例えば1.9Vの電圧VL2が生じ、抵抗素子165と抵抗素子164との間には、例えば1.4Vの電圧VL1が生じる。
【0017】
抵抗素子162及び抵抗素子163の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW1が設けられており、抵抗素子163及び抵抗素子164の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW2が設けられている。また、抵抗素子164及び抵抗素子165の間と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW3が設けられており、抵抗素子165の接地端子と、オペアンプの−入力端子との間には、スイッチSW4が設けられている。
【0018】
オペアンプ170の−入力端子に2.4Vの電圧VL3を印加する場合、スイッチSW1のみが通電され、スイッチSW2,SW3,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に1.9Vの電圧VL2を印加する場合、スイッチSW2のみが通電され、スイッチSW1,SW3,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に1.4Vの電圧VL1を印加する場合、スイッチSW3のみが通電され、スイッチSW1,SW2,SW4は切断される。オペアンプ170の−入力端子に0Vの電圧VL0を印加する場合、スイッチSW4のみが通電され、スイッチSW1,SW2,SW3は切断される。したがって、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉によって、オペアンプ170の−入力端子に0V又は3段階の電圧のいずれかを印加可能である。そのため、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の開閉によって、発熱素子61の発熱温度を定める印加電圧を3段階に設定可能である。
【0019】
ここで、オペアンプ170の+入力端子に1.4Vの電圧VL1を印加した場合の発熱素子61の温度をTH1とする。また、オペアンプ170の+入力端子に1.9Vの電圧VL2を印加した場合の発熱素子61の温度をTH2、オペアンプ170の+入力端子に2.4Vの電圧VL3を印加した場合の発熱素子61の温度をTH3とする。
【0020】
図4に示すように、第1の測温素子62の一端には、例えば、オペアンプ270の−入力端子が電気的に接続され、他端は接地される。また、オペアンプ270の−入力端子及び出力端子と並列に、抵抗素子261が接続される。オペアンプ270の+入力端子は、直列に接続された抵抗素子264と抵抗素子265との間に電気的に接続される。これにより、第1の測温素子62には、0.3V程度の弱い電圧が加えられる。
【0021】
図1及び図2に示す発熱素子61の抵抗値は、発熱素子61の温度によって変化する。発熱素子61の温度THと、発熱素子61の抵抗値RHの関係は、下記(1)式で与えられる。
RH = RH_STD×[1+αH (TH-TH_STD) + βH (TH-TH_STD)2] ・・・(1)
ここで、TH_STDは発熱素子61の標準温度を表し、例えば20℃である。RH_STDは標準温度TH_STDにおける予め測定された発熱素子61の抵抗値を表す。αHは1次の抵抗温度係数を表す。βHは2次の抵抗温度係数を表す。
【0022】
発熱素子61の抵抗値RHは、発熱素子61の駆動電力PHと、発熱素子61の通電電流IHから、下記(2)式で与えられる。
RH = PH / IH2 ・・・(2)
あるいは発熱素子61の抵抗値RHは、発熱素子61にかかる電圧VHと、発熱素子61の通電電流IHから、下記(3)式で与えられる。
RH = VH / IH ・・・(3)
【0023】
ここで、発熱素子61の温度THは、発熱素子61と雰囲気ガスの間が熱的に平衡になったときに安定する。なお、熱的に平衡な状態とは、発熱素子61の発熱と、発熱素子61から雰囲気ガスへの放熱とが釣り合っている状態をいう。下記(4)式に示すように、平衡状態における発熱素子61の駆動電力PHを、発熱素子61の温度THと雰囲気ガスの温度TIとの差ΔTHで割ることにより、雰囲気ガスの放熱係数MIが得られる。なお、放熱係数MIの単位は、例えばW/℃である。
MI = PH / (TH - TI)
= PH /ΔTH ・・・(4)
【0024】
上記(1)式より、発熱素子61の温度THは下記(5)式で与えられる。
TH = (1 / 2βH)×[-αH+ [αH2 - 4βH (1 - RH / RH_STD)]1/2] + TH_STD ・・・(5)
したがって、発熱素子61の温度THと、雰囲気ガスの温度TIと、の差ΔTHは、下記(6)式で与えられる。
ΔTH = (1 / 2βH)×[-αH+ [αH2 - 4βH (1 - RH / RH_STD)]1/2] + TH_STD - TI ・・・(6)
【0025】
雰囲気ガスの温度TIは、自己発熱しない程度の電力を与えられる第1の測温素子62の温度TIに近似する。第1の測温素子62の温度TIと、第1の測温素子62の抵抗値RIと、の関係は、下記(7)式で与えられる。
RI = RI_STD×[1+αI (TI-TI_STD) + βI (TI-TI_STD)2] ・・・(7)
I_STDは第1の測温素子62の標準温度を表し、例えば20℃である。RI_STDは標準温度TI_STDにおける予め測定された第1の測温素子62の抵抗値を表す。αIは1次の抵抗温度係数を表す。βIは2次の抵抗温度係数を表す。上記(7)式より、第1の測温素子62の温度TIは下記(8)式で与えられる。
TI = (1 / 2βI)×[-αI+ [αI2 - 4βI (1 - RI / RI_STD)]1/2] + TI_STD ・・・(8)
【0026】
よって、雰囲気ガスの放熱係数MIは、下記(9)式で与えられる。
MI = PH /ΔTH
=PH/[(1/2βH)[-αH+[αH2-4βH (1-RH/RH_STD)]1/2]+TH_STD-(1/2βI)[-αI+[αI2-4βI (1-RI/RI_STD)]1/2]-TI_STD]
=(RH IH2)/[(1/2βH)[-αH+[αH2-4βH (1-RH/RH_STD)]1/2]+TH_STD-(1/2βI)[-αI+[αI2-4βI (1-RI/RI_STD)]1/2]-TI_STD] ・・・(9)
【0027】
発熱素子61の通電電流IHと、駆動電力PH又は電圧VHは測定可能であるため、上記(2)式又は(3)式から発熱素子61の抵抗値RHを算出可能である。同様に、第1の測温素子62の抵抗値RIも算出可能である。よって、マイクロチップ8を用いて、上記(9)式から雰囲気ガスの放熱係数MIが算出可能である。
【0028】
なお、保温素子64で基板60の温度を一定に保つことにより、発熱素子61が発熱する前のマイクロチップ8の近傍の雰囲気ガスの温度が、基板60の一定の温度と近似する。そのため、発熱素子61が発熱する前の雰囲気ガスの温度の変動が抑制される。温度変動が一度抑制された雰囲気ガスを発熱素子61でさらに加熱することにより、より高い精度で放熱係数MIを算出することが可能となる。
【0029】
ここで、雰囲気ガスが混合ガスであり、混合ガスが、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDの4種類のガス成分からなっていると仮定する。ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDの総和は、下記(10)式で与えられるように、1である。
VA+VB+VC+VD=1 ・・・(10)
【0030】
また、ガスAの単位体積当たりの発熱量をKA、ガスBの単位体積当たりの発熱量をKB、ガスCの単位体積当たりの発熱量をKC、ガスDの単位体積当たりの発熱量をKDとすると、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の単位体積当たりの発熱量を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(11)式で与えられる。なお、単位体積当たりの発熱量の単位は、例えばMJ/m3である。
Q = KA×VA+ KB×VB+ KC×VC+KD×VD ・・・(11)
【0031】
また、ガスAの放熱係数をMA、ガスBの放熱係数をMB、ガスCの放熱係数をMC、ガスDの放熱係数をMDとすると、混合ガスの放熱係数MIは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の放熱係数を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの放熱係数MIは、下記(12)式で与えられる。
MI = MA×VA+ MB×VB+ MC×VC+MD×VD ・・・(12)
【0032】
さらに、ガスの放熱係数は発熱素子61の温度THに依存するので、混合ガスの放熱係数MIは、発熱素子61の温度THの関数として、下記(13)式で与えられる。
MI (TH)= MA(TH)×VA+ MB(TH)×VB+ MC(TH)×VC+MD(TH)×VD ・・・(13)
【0033】
したがって、発熱素子61の温度がTH1のときの混合ガスの放熱係数MI1(TH1)は下記(14)式で与えられる。また、発熱素子61の温度がTH2のときの混合ガスの放熱係数MI2(TH2)は下記(15)式で与えられ、発熱素子61の温度がTH3のときの混合ガスの放熱係数MI3(TH3)は下記(16)式で与えられる。
MI1 (TH1)= MA(TH1)×VA+ MB(TH1)×VB+ MC(TH1)×VC+MD(TH1)×VD ・・・(14)
MI2 (TH2)= MA(TH2)×VA+ MB(TH2)×VB+ MC(TH2)×VC+MD(TH2)×VD ・・・(15)
MI3 (TH3)= MA(TH3)×VA+ MB(TH3)×VB+ MC(TH3)×VC+MD(TH3)×VD ・・・(16)
【0034】
ここで、発熱素子61の温度THに対して各ガス成分の放熱係数MA(TH),MB(TH),MC(TH),MD(TH)が非線形性を有する場合、上記(14)乃至(16)式は、線形独立な関係を有する。また、発熱素子61の温度THに対して各ガス成分の放熱係数MA(TH),MB(TH),MC(TH),MD(TH)が線形性を有する場合でも、発熱素子61の温度THに対する各ガス成分の放熱係数MA(TH),MB(TH),MC(TH),MD(TH)の変化率が異なる場合は、上記(14)乃至(16)式は、線形独立な関係を有する。さらに、(14)乃至(16)式が線形独立な関係を有する場合、(10)及び(14)乃至(16)式は線形独立な関係を有する。
【0035】
図5は、天然ガスに含まれるメタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の放熱係数と、発熱抵抗体である発熱素子61の温度と、の関係を示すグラフである。発熱素子61の温度に対して、メタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のそれぞれのガス成分の放熱係数は線形性を有する。しかし、発熱素子61の温度に対する放熱係数の変化率は、メタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のそれぞれで異なる。したがって、混合ガスを構成するガス成分がメタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)であるである場合、上記(14)乃至(16)式は、線形独立な関係を有する。
【0036】
(14)乃至(16)式中の各ガス成分の放熱係数MA(TH1),MB(TH1),MC(TH1),MD(TH1),MA(TH2),MB(TH2),MC(TH2),MD(TH2),MA(TH3),MB(TH3),MC(TH3),MD(TH3)の値は、測定等により予め得ることが可能である。したがって、(10)及び(14)乃至(16)式の連立方程式を解くと、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDのそれぞれが、下記(17)乃至(20)式に示すように、混合ガスの放熱係数MI1(TH1),MI2(TH2),MI3(TH3)の関数として与えられる。なお、下記(17)乃至(20)式において、nを自然数として、fnは関数を表す記号である。
VA=f1[MI1 (TH1), MI2 (TH2), MI3 (TH3)] ・・・(17)
VB=f2[MI1 (TH1), MI2 (TH2), MI3 (TH3)] ・・・(18)
VC=f3[MI1 (TH1), MI2 (TH2), MI3 (TH3)] ・・・(19)
VD=f4[MI1 (TH1), MI2 (TH2), MI3 (TH3)] ・・・(20)
【0037】
ここで、上記(11)式に(17)乃至(20)式を代入することにより、下記(21)式が得られる。
Q = KA×VA+ KB×VB+ KC×VC+KD×VD
= KA×f1[MI1 (TH1), MI2 (TH2), MI3 (TH3)]
+ KB×f2[MI1 (TH1), MI2 (TH2), MI3 (TH3)]
+ KC×f3[MI1 (TH1), MI2 (TH2), MI3 (TH3)]
+ KD×f4[MI1 (TH1), MI2 (TH2), MI3 (TH3)] ・・・(21)
【0038】
上記(21)式に示すように、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、発熱素子61の温度がTH1,TH2,TH3である場合の混合ガスの放熱係数MI1(TH1),MI2(TH2),MI3(TH3)を変数とする方程式で与えられる。したがって、混合ガスの発熱量Qは、gを関数を表す記号として、下記(22)式で与えられる。
Q = g[MI1 (TH1), MI2 (TH2), MI3 (TH3)] ・・・(22)
【0039】
よって、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDからなる混合ガスについて、予め上記(22)式を得れば、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDが未知の検査対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを容易に算出可能であることを、発明者は見出した。具体的には、発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の検査対象混合ガスの放熱係数MI1(TH1),MI2(TH2),MI3(TH3)をそれぞれ測定し、(22)式に代入することにより、検査対象混合ガスの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
【0040】
また、混合ガスの放熱係数MIは、上記(9)式に示すように、発熱素子61の抵抗値RHと、第1の測温素子62の抵抗値RIと、に依存する。そこで、本発明者は、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(23)式に示すように、発熱素子61の温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61の抵抗値RH1(TH1),RH2(TH2),RH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62の抵抗値RIと、を変数とする方程式でも与えられることを見出した。
Q = g[RH1 (TH1), RH2 (TH2), RH3 (TH3), RI] ・・・(23)
【0041】
よって、検査対象混合ガスに接する発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61の抵抗値RH1(TH1),RH2(TH2),RH3(TH3)と、検査対象混合ガスに接する第1の測温素子62の抵抗値RIを測定し、(23)式に代入することによっても、検査対象混合ガスの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
【0042】
また、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(24)式に示すように、発熱素子61の温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61の通電電流IH1(TH1),IH2(TH2),IH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62の通電電流IIと、を変数とする方程式でも与えられる。
Q = g[IH1 (TH1), IH2 (TH2), IH3 (TH3), II] ・・・(24)
【0043】
あるいは混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(25)式に示すように、発熱素子61の温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61にかかる電圧VH1(TH1),VH2(TH2),VH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62にかかる電圧VIと、を変数とする方程式でも与えられる。
Q = g[VH1 (TH1), VH2 (TH2), VH3 (TH3), VI] ・・・(25)
【0044】
またあるいは混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(26)式に示すように、発熱素子61の温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61に接続されたアナログ−デジタル変換回路(以下において「A/D変換回路」という。)の出力信号ADH1(TH1),ADH2(TH2),ADH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62に接続されたA/D変換回路の出力信号ADIと、を変数とする方程式でも与えられる。例えばA/D変換回路が二重積分型である場合、A/D変換回路の出力信号は、カウント値である。
Q = g[ADH1 (TH1), ADH2 (TH2), ADH3 (TH3), ADI] ・・・(26)
【0045】
よって、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(27)式に示すように、発熱素子61の発熱温度がTH1,TH2,TH3である場合の発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)と、混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIと、を変数とする方程式で与えられる。
Q = g[SH1 (TH1), SH2 (TH2), SH3 (TH3), SI] ・・・(27)
【0046】
なお、混合ガスのガス成分は、4種類に限定されることはない。例えば、混合ガスがn種類のガス成分からなる場合、まず、下記(28)式で与えられる、少なくともn−1種類の発熱温度TH1,TH2,TH3,・・・,THn-1における発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3),・・・,SHn-1(THn-1)と、混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIと、を変数とする方程式を予め取得する。そして、n−1種類の発熱温度TH1,TH2,TH3,・・・,THn-1における、n種類のガス成分のそれぞれの体積率が未知の検査対象混合ガスに接する発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3),・・・,SHn-1(THn-1)の値と、検査対象混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、を測定し、(28)式に代入することにより、検査対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを一意に求めることが可能となる。
Q = g[SH1 (TH1), SH2 (TH2), SH3 (TH3), ・・・, SHn-1 (THn-1), SI] ・・・(28)
【0047】
ただし、混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)、プロパン(C38)に加えて、jを自然数として、メタン(CH4)とプロパン(C38)以外のアルカン(Cj2j+2)を含む場合、メタン(CH4)とプロパン(C38)以外のアルカン(Cj2j+2)を、メタン(CH4)とプロパン(C38)の混合物とみなしても、(28)式の算出には影響しない。例えば、エタン(C26)、ブタン(C410)、ペンタン(C512)、ヘキサン(C614)を、下記(29)乃至(32)式に示すように、それぞれ所定の係数を掛けられたメタン(CH4)とプロパン(C38)の混合物とみなして(28)式を算出してもかまわない。
C2H6 = 0.5 CH4 + 0.5 C3H8 ・・・(29)
C4H10 = -0.5 CH4 + 1.5 C3H8 ・・・(30)
C5H12 = -1.0 CH4 + 2.0 C3H8 ・・・(31)
C6H14 = -1.5 CH4 + 2.5 C3H8 ・・・(32)
【0048】
したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなる混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)、プロパン(C38)に加えて、メタン(CH4)とプロパン(C38)以外のz種類のアルカン(Cj2j+2)を含む場合、少なくともn−z−1種類の発熱温度における発熱素子61からの電気信号SHと、第1の測温素子62からの電気信号SIと、を変数とする方程式を求めてもよい。
【0049】
なお、(28)式の算出に用いられた混合ガスのガス成分の種類と、単位体積当たりの発熱量Qが未知の検査対象混合ガスのガス成分の種類が同じ場合に、検査対象混合ガスの発熱量Qの算出に(28)式を利用可能であることはもちろんである。さらに、検査対象混合ガスがn種類より少ない種類のガス成分からなり、かつ、n種類より少ない種類のガス成分が、(28)式の算出に用いられた混合ガスに含まれている場合も、(28)式を利用可能である。例えば、(28)式の算出に用いられた混合ガスが、メタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の4種類のガス成分を含む場合、検査対象混合ガスが、窒素(N2)を含まず、メタン(CH4)、プロパン(C38)、及び二酸化炭素(CO2)の3種類のガス成分のみを含む場合も、検査対象混合ガスの発熱量Qの算出に(28)式を利用可能である。
【0050】
さらに、(28)式の算出に用いられた混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)とプロパン(C38)を含む場合、検査対象混合ガスが、(28)式の算出に用いられた混合ガスに含まれていないアルカン(Cj2j+2)を含んでいても、(28)式を利用可能である。これは、上述したように、メタン(CH4)とプロパン(C38)以外のアルカン(Cj2j+2)を、メタン(CH4)とプロパン(C38)の混合物とみなしても、(28)式を用いた単位体積当たりの発熱量Qの算出に影響しないためである。
【0051】
ここで、図6に示す第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20は、複数のサンプル混合ガスのそれぞれが注入される容器であるチャンバ101と、チャンバ101に配置され、図1に示す第1の測温素子62及び複数の発熱温度THで発熱する発熱素子61を含むマイクロチップ8と、を備える。さらに、図6に示す天然ガス発熱量測定システム20は、複数のサンプル混合ガスのそれぞれの温度TIに依存する第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、複数の発熱温度THのそれぞれにおける発熱素子61からの電気信号SHの値と、を測定する測定部301と、複数の混合ガスの既知の発熱量Qの値、第1の測温素子62からの電気信号SIの値、及び複数の発熱温度における発熱素子61からの電気信号の値に基づいて、第1の測温素子62からの電気信号SI及び複数の発熱温度THにおける発熱素子61からの電気信号SHを独立変数とし、気体の発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を作成する式作成部302と、を備える。なお、サンプル混合ガスは、複数種類のガス成分を含む。
【0052】
マイクロチップ8は、断熱部材18を介してチャンバ101内に配置されている。チャンバ101には、サンプル混合ガスをチャンバ101に送るための流路102と、サンプル混合ガスをチャンバ101から外部に排出するための流路103と、が接続されている。
【0053】
それぞれ発熱量Qが異なる4種類のサンプル混合ガスが使用される場合、図7に示すように、第1のサンプル混合ガスを貯蔵する第1のガスボンベ50A、第2のサンプル混合ガスを貯蔵する第2のガスボンベ50B、第3のサンプル混合ガスを貯蔵する第3のガスボンベ50C、及び第4のサンプル混合ガスを貯蔵する第4のガスボンベ50Dが用意される。第1のガスボンベ50Aには、流路91Aを介して、第1のガスボンベ50Aから例えば0.2MPa等の低圧に調節された第1のサンプル混合ガスを得るための第1のガス圧調節器31Aが接続されている。また、第1のガス圧調節器31Aには、流路92Aを介して、第1の流量制御装置32Aが接続されている。第1の流量制御装置32Aは、流路92A及び流路102を介して天然ガス発熱量測定システム20に送られる第1のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0054】
第2のガスボンベ50Bには、流路91Bを介して、第2のガス圧調節器31Bが接続されている。また、第2のガス圧調節器31Bには、流路92Bを介して、第2の流量制御装置32Bが接続されている。第2の流量制御装置32Bは、流路92B,93,102を介して天然ガス発熱量測定システム20に送られる第2のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0055】
第3のガスボンベ50Cには、流路91Cを介して、第3のガス圧調節器31Cが接続されている。また、第3のガス圧調節器31Cには、流路92Cを介して、第3の流量制御装置32Cが接続されている。第3の流量制御装置32Cは、流路92C,93,102を介して天然ガス発熱量測定システム20に送られる第3のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0056】
第4のガスボンベ50Dには、流路91Dを介して、第4のガス圧調節器31Dが接続されている。また、第4のガス圧調節器31Dには、流路92Dを介して、第4の流量制御装置32Dが接続されている。第4の流量制御装置32Dは、流路92D,93,102を介して天然ガス発熱量測定システム20に送られる第4のサンプル混合ガスの流量を制御する。
【0057】
第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えば発熱量が異なる天然ガスである。第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えばメタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の4種類のガス成分を異なる比で含む。
【0058】
図6に示すチャンバ101に第1のサンプル混合ガスが充填された後、図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第1のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、発熱素子61は、図6に示す駆動回路303から駆動電力PH1,PH2,PH3を与えられる。駆動電力PH1,PH2,PH3を与えられた場合、第1のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、例えば、100℃の温度TH1、150℃の温度TH2、及び200℃の温度TH3で発熱し、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0059】
チャンバ101から第1のサンプル混合ガスが除去された後、第2乃至第4のサンプル混合ガスがチャンバ101に順次充填される。第2のサンプル混合ガスがチャンバ101に充填された後、図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第2のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、第2のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0060】
第3のサンプル混合ガスが図6に示すチャンバ101に充填された後、図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第3のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、第3のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0061】
第4のサンプル混合ガスが図6に示すチャンバ101に充填された後、図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、第4のサンプル混合ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、第4のサンプル混合ガスに接する発熱素子61は、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0062】
なお、それぞれのサンプル混合ガスがn種類のガス成分を含む場合、マイクロチップ8の図1及び図2に示す発熱素子61は、少なくともn−1種類の異なる温度で発熱させられる。ただし、上述したように、メタン(CH4)及びプロパン(C38)以外のアルカン(Cj2j+2)は、メタン(CH4)及びプロパン(C38)の混合物とみなしうる。したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなるサンプル混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)及びプロパン(C38)に加えてz種類のアルカン(Cj2j+2)を含む場合は、発熱素子61は、少なくともn−z−1種類の異なる温度で発熱させられる。
【0063】
図6に示すように、マイクロチップ8は、測定部301を含む中央演算処理装置(CPU)300に接続されている。CPU300には、電気信号記憶装置401が接続されている。測定部301は、第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、発熱素子61からの発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)の値と、を測定し、測定値を電気信号記憶装置401に保存する。
【0064】
なお、第1の測温素子62からの電気信号SIとは、第1の測温素子62の抵抗値RI、第1の測温素子62の通電電流II、第1の測温素子62にかかる電圧VI、及び第1の測温素子62に接続されたA/D変換回路304の出力信号ADIのいずれであってもよい。同様に、発熱素子61からの電気信号SHとは、発熱素子61の抵抗値RH、発熱素子61の通電電流IH、発熱素子61にかかる電圧VH、及び発熱素子61に接続されたA/D変換回路304の出力信号ADHのいずれであってもよい。
【0065】
CPU300に含まれる式作成部302は、例えば第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの既知の発熱量Qの値と、第1の測温素子62からの電気信号SIの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の複数の測定値と、を収集する。さらに式作成部302は、収集した発熱量Q、電気信号SI、及び電気信号SHの値に基づいて、多変量解析により、第1の測温素子62からの電気信号SI及び発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)を独立変数とし、気体の発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を算出する。
【0066】
なお、「多変量解析」とは、A. J Smola及びB. Scholkopf著の「A Tutorial on Support Vector Regression」(NeuroCOLT Technical Report (NC−TR−98−030)、1998年)に開示されているサポートベクトル回帰、重回帰分析、及び特開平5−141999号公報に開示されているファジィ数量化理論II類等を含む。
【0067】
天然ガス発熱量測定システム20は、CPU300に接続された式記憶装置402をさらに備える。式記憶装置402は、式作成部302が作成した発熱量算出式を保存する。さらにCPU300には、入力装置312及び出力装置313が接続される。入力装置312としては、例えばキーボード、及びマウス等のポインティングデバイス等が使用可能である。出力装置313には液晶ディスプレイ、モニタ等の画像表示装置、及びプリンタ等が使用可能である。
【0068】
次に、図8に示すフローチャートを用いて、第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20を用いた、発熱量算出式の作成方法について説明する。
【0069】
(a)ステップS100で、図7に示す第2乃至第4の流量制御装置32B−32Dの弁を閉じたまま、第1の流量制御装置32Aの弁を開き、図6に示すチャンバ101内に第1のサンプル混合ガスを導入する。ステップS101で、測定部301は、第1のサンプル混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIの値を測定し、電気信号記憶装置401に保存する。次に、駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61に駆動電力PH1を与え、発熱素子61を100℃で発熱させる。図6に示す測定部301は、100℃で発熱する発熱素子61からの電気信号SH1(TH1)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0070】
(b)ステップS102で、駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61の温度の切り替えが完了したか否か判定する。温度150℃及び温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS101に戻り、図6に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61を150℃で発熱させる。図6に示す測定部301は、150℃で発熱する発熱素子61からの電気信号SH2(TH2)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0071】
(c)再びステップS102で、図1及び図2に示す発熱素子61の温度の切り替えが完了したか否か判定する。温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS101に戻り、図6に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61を200℃で発熱させる。図6に示す測定部301は、200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号SH3(TH3)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0072】
(d)発熱素子61の温度の切り替えが完了した場合には、ステップS102からステップS103に進む。ステップS103で、サンプル混合ガスの切り替えが完了したか否かを判定する。第2乃至第4のサンプル混合ガスへの切り替えが完了していない場合には、ステップS100に戻る。ステップS100で、図7に示す第1の流量制御装置32Aを閉じ、第3乃至第4の流量制御装置32C−32Dの弁を閉じたまま第2の流量制御装置32Bの弁を開き、図6に示すチャンバ101内に第2のサンプル混合ガスを導入する。
【0073】
(e)第1のサンプル混合ガスと同様に、ステップS101乃至ステップS102のループが繰り返される。測定部301は、第2のサンプル混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIの値を測定し、電気信号記憶装置401に保存する。また、測定部301は、第2のサンプル混合ガスに接し、100℃、150℃、及び200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。その後、ステップS100乃至ステップS103のループが繰り返される。これにより、第3のサンプル混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、第3のサンプル混合ガスに接し、100℃、150℃、及び200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の値と、第4のサンプル混合ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、第4のサンプル混合ガスに接し、100℃、150℃、及び200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の値とが、電気信号記憶装置401に保存される。
【0074】
(f)ステップS104で、入力装置312から式作成部302に、第1のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、第2のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、第3のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値、及び第4のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値を入力する。また、式作成部302は、電気信号記憶装置401から、第1の測温素子62からの電気信号SIの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の複数の測定値と、を読み出す。
【0075】
(g)ステップS105で、第1乃至第4のサンプル混合ガスの発熱量Qの値と、第1の測温素子62からの電気信号SIの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の複数の測定値と、に基づいて、式作成部302は、重回帰分析を行う。重回帰分析により、式作成部302は、第1の測温素子62からの電気信号SI及び発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)を独立変数とし、気体の発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を算出する。その後、ステップS106で、式作成部302は作成した発熱量算出式を式記憶装置402に保存し、第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法が終了する。
【0076】
以上示したように、第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20を用いた発熱量算出式の作成方法によれば、気体の発熱量Qの値を一意に算出可能な発熱量算出式を作成することが可能となる。
【0077】
次に、発熱量Qが未知の測定対象天然ガスの発熱量Qの値を測定する際の、第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20の機能を説明する。未知の体積率でメタン(CH4)、プロパン(C38)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)等を含む、発熱量Qが未知の天然ガスが、測定対象天然ガスとして、チャンバ101に導入される。図1及び図2に示すマイクロチップ8の第1の測温素子62は、測定対象天然ガスの温度に依存する電気信号SIを出力する。次に、発熱素子61は、図6に示す駆動回路303から駆動電力PH1,PH2,PH3を与えられる。駆動電力PH1,PH2,PH3を与えられた場合、測定対象天然ガスに接する発熱素子61は、例えば、100℃の温度TH1、150℃の温度TH2、及び200℃の温度TH3で発熱し、発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)を出力する。
【0078】
図6に示す測定部301は、測定対象天然ガスに接し、測定対象天然ガスの温度TIに依存する第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、測定対象天然ガスに接する発熱素子61からの発熱温度TH1における電気信号SH1(TH1)、発熱温度TH2における電気信号SH2(TH2)、及び発熱温度TH3における電気信号SH3(TH3)の値と、を測定し、測定値を電気信号記憶装置401に保存する。
【0079】
上述したように、式記憶装置402は、第1の測温素子62からの電気信号SI及び複数の発熱温度THにおける発熱素子61からの電気信号SHを独立変数とし、気体の発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を保存している。発熱量算出式は、第1の測温素子62からの電気信号SIと、発熱温度TH1が100℃の発熱素子61からの電気信号SH1(TH1)と、発熱温度TH2が150℃の発熱素子61からの電気信号SH2(TH2)と、発熱温度TH3が200℃の発熱素子61からの電気信号SH3(TH3)と、を独立変数とする。
【0080】
第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20は、さらに、発熱量算出式の第1の測温素子62からの電気信号SIの独立変数、及び発熱素子61からの電気信号SHの独立変数に、第1の測温素子62からの電気信号SIの測定値、及び発熱素子61からの電気信号SHの測定値をそれぞれ代入し、チャンバ101に注入された気体の発熱量Qの測定値を算出する発熱量算出部305を備える。発熱量算出部305は、発熱量算出式の第1の測温素子62からの電気信号SI及び発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の独立変数に、電気信号記憶装置401に保存されている測定値をそれぞれ代入し、測定対象天然ガスの発熱量Qの値を算出する。CPU300には、発熱量記憶装置403がさらに接続されている。発熱量記憶装置403は、発熱量算出部305が算出した測定対象天然ガスの発熱量Qの値を保存する。
【0081】
次に、図9に示すフローチャートを用いて、第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20を用いた、天然ガスの発熱量の測定方法について説明する。
【0082】
(a)ステップS200で、図6に示すチャンバ101内に測定対象天然ガスを導入する。ステップS201で、測定部301は、測定対象天然ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIの値を測定し、電気信号記憶装置401に保存する。次に、駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61に駆動電力PH1を与え、発熱素子61を100℃で発熱させる。図6に示す測定部301は、測定対象天然ガスに接し、100℃で発熱する発熱素子61からの電気信号SH1(TH1)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0083】
(b)ステップS202で、図6に示す駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61の温度の切り替えが完了したか否か判定する。温度150℃及び温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS201に戻り、駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61に駆動電力PH2を与え、発熱素子61を150℃で発熱させる。図6に示す測定部301は、測定対象天然ガスに接し、150℃で発熱する発熱素子61からの電気信号SH2(TH2)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0084】
(c)再びステップS202で、図1及び図2に示す発熱素子61の温度の切り替えが完了したか否か判定する。温度200℃への切り替えが完了していない場合には、ステップS201に戻り、駆動回路303は、図1及び図2に示す発熱素子61に駆動電力PH3を与え、発熱素子61を200℃で発熱させる。図6に示す測定部301は、測定対象天然ガスに接し、200℃で発熱する発熱素子61からの電気信号SH3(TH3)の値を、電気信号記憶装置401に保存する。
【0085】
(d)発熱素子61の温度の切り替えが完了した場合には、ステップS202からステップS203に進む。ステップS203で、図6に示す発熱量算出部305は、式記憶装置402から、第1の測温素子62からの電気信号SI及び発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)を独立変数とし、気体の発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を読み出す。また、発熱量算出部305は、電気信号記憶装置401から、測定対象天然ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIの測定値、及び測定対象天然ガスに接する発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の測定値を読み出す。
【0086】
(e)ステップS204で、発熱量算出部305は、発熱量算出式の電気信号SI及び電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の独立変数に、それぞれ測定値を代入し、測定対象天然ガスの発熱量Qの値を算出する。その後、発熱量算出部305は、算出した発熱量Qの値を発熱量記憶装置403に保存し、第1の実施の形態に係る天然ガスの発熱量の測定方法を終了する。
【0087】
以上説明した第1の実施の形態に係る発熱量算出方法によれば、高価なガスクロマトグラフィ装置や音速センサを用いることなく、測定対象天然ガスに接する第1の測温素子62からの電気信号SIの値と、測定対象天然ガスに接する発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の値と、から、測定対象天然ガスの発熱量Qの値を測定することが可能となる。
【0088】
天然ガスは、産出ガス田によって炭化水素の成分比率が異なる。また、天然ガスには、炭化水素の他に、窒素(N2)や炭酸ガス(CO2)等が含まれる。そのため、産出ガス田によって、天然ガスに含まれるガス成分の体積率は異なり、ガス成分の種類が既知であっても、天然ガスの発熱量Qは未知であることが多い。また、同一のガス田由来の天然ガスであっても、発熱量Qが常に一定であるとは限らず、採取時期によって変化することもある。
【0089】
従来、天然ガスの使用料金を徴収する際には、天然ガスの使用発熱量Qでなく、使用体積に応じて課金する方法がとられている。しかし、天然ガスは由来する産出ガス田によって発熱量Qが異なるため、使用体積に課金するのは公平でない。これに対し、第1の実施の形態に係る発熱量算出方法を用いれば、ガス成分の種類が既知であるが、ガス成分の体積率が未知であるために発熱量Qが未知の天然ガス等の混合ガスの発熱量Qを、簡易に算出することが可能となる。そのため、公平な使用料金を徴収することが可能となる。
【0090】
また、ガラス加工品の製造業においては、ガラスを加熱加工する際、加工精度を一定に保つために、一定の発熱量Qを有する天然ガスが供給されることが望まれている。そのためには、複数のガス田由来の天然ガスのそれぞれの発熱量Qを正確に把握し、総ての天然ガスの発熱量Qが同一になるよう調整した上で、ガラスの加熱加工工程に天然ガスを供給することが検討されている。これに対し、第1の実施の形態に係る発熱量算出方法を用いれば、複数のガス田由来の天然ガスのそれぞれ発熱量Qを正確には把握することが可能となるため、ガラスの加熱加工精度を一定に保つことが可能となる。
【0091】
さらに、第1の実施の形態に係る発熱量算出方法によれば、天然ガスの正確な発熱量Qを容易に知ることが可能となるため、天然ガスを燃焼させる場合に必要な空気量を適切に設定することが可能となる。そのため、無駄な二酸化炭素(CO2)の排出量を削減することも可能となる。
【0092】
次に、メタンガスを校正ガスとして用いる、第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20の校正機能を説明する。天然ガスの成分の中では、メタンが最も熱伝導率が高い。天然ガス又は天然ガスと同様の成分を含む混合ガスにおいては、図10に示すように、メタンの濃度が下がるにつれて、熱伝導率が下がる傾向にある。一方、天然ガス又は天然ガスと同様の成分を含む混合ガスにおいて、発熱量は、必ずしもメタンの濃度に比例しない。したがって、図6に示すチャンバ101内に注入された気体の熱伝導率を監視することによって、チャンバ101内に注入された気体が、純粋なメタンガスであるか否かを、判定することが可能である。
【0093】
図1に示す発熱素子61に定電流を流して発熱させると、図6に示すチャンバ101に注入された気体の熱伝導率の違いにより、図1に示す発熱素子61から奪われる熱量の大きさが変化する。発熱素子61から奪われる熱量の大きさの変化は、発熱素子61の抵抗の変化、あるいは発熱素子61の両端電圧の変化として表れる。したがって、発熱素子61からの電気信号SHは、チャンバ101内に注入された気体の熱伝導率に相関する。そのため、発熱素子61を用いて、チャンバ101内に注入された気体の熱伝導率を測定することが可能である。
【0094】
ここで、第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20は、図6に示すように、純粋なメタンガスの発熱量Qの標準値と、式記憶装置402に保存されている発熱量算出式を用いて、天然ガス発熱量測定システム20が算出した純粋なメタンガスの発熱量Qの測定値と、の差である補正値εを保存する補正値記憶装置405を備える。メタンガスの発熱量Qの標準値とは、例えばメタンガスの発熱量Qの文献値又は理論値であり、37.78MJ/m3である。あるいは、メタンガスの発熱量Qの標準値とは、オペレータが任意に設定した値であってもよい。
【0095】
さらに、天然ガス発熱量測定システム20は、チャンバ101に注入された気体が、メタンガスであるか否かを判定する判定部306と、チャンバ101に注入された気体がメタンガスである場合、発熱量算出部305が算出したメタンガスの発熱量Qの測定値に補正値を加える等して、メタンガスの発熱量Qの測定値を補正する補正部307と、を備える。
【0096】
判定部306は、発熱素子61からの電気信号SHに基づいて、チャンバ101内部の気体の熱伝導率を測定する。さらに判定部306は、熱伝導率の測定値と、予め設定されたメタンガスの熱伝導率の標準値と、を比較する。予め設定されたメタンガスの熱伝導率の標準値とは、例えばメタンガスの熱伝導率の文献値又は理論値である。あるいは、予め設定されたメタンガスの熱伝導率の標準値とは、オペレータが任意に設定した値であってもよい。判定部306は、熱伝導率の測定値が、予め設定されたメタンガスの熱伝導率の標準値と一致する場合、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定する。なお、判定部306は、熱伝導率の測定値が、予め設定されたメタンガスの熱伝導率の標準値そのものでなくとも、熱伝導率の測定値が、予め設定されたメタンガスの熱伝導率の標準値に近似している場合には、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定してもよい。
【0097】
また、発熱素子61からの電気信号SHは熱伝導率に相関することから、判定部306は、発熱素子61からの電気信号SHに基づいて、チャンバ101に注入された気体が、メタンガスであるか否かを判定してもよい。例えば、チャンバ101に純粋なメタンガスが注入された場合のA/D変換回路304のカウント値が既知である場合、判定部306は、A/D変換回路304が出力するカウントの測定値と、予め取得された、チャンバ101に純粋なメタンガスが注入された場合のA/D変換回路304のカウント値と、を比較する。判定部306は、カウントの測定値が、チャンバ101に純粋なメタンガスが注入された場合のカウント値であるカウントの標準値と一致する場合、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定する。なお、判定部306は、カウントの測定値が、カウントの標準値そのものでなくとも、カウントの測定値が、カウントの標準値に近似している場合には、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定してもよい。例えば、判定部306は、カウントの測定値と、カウントの標準値と、の差の絶対値が、カウントの標準値に0.1%を乗じた値以下であれば、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定してもよい。
【0098】
判定部306がチャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定した場合、発熱量算出部305は、チャンバ101内部のメタンガスの発熱量Qの測定値を算出する。補正部307は、発熱量算出部305が算出したメタンガスの発熱量Qの測定値に、補正値記憶装置405に保存されている補正値εを加え、メタンガスの発熱量Qの測定値を補正する。
【0099】
判定部306がチャンバ101内部の気体がメタンガスでないと判定した場合、発熱量算出部305は、チャンバ101内部の気体の発熱量Qの測定値を、天然ガスの発熱量Qの測定値として算出する。この場合、補正部307は、発熱量算出部305が算出した天然ガスの発熱量Qの測定値を補正しない。
【0100】
天然ガス発熱量測定システム20は、CPU300に接続された標準値記憶装置404をさらに備える。標準値記憶装置404は、判定部306に参照される予め設定されたメタンガスの熱伝導率の標準値を保存する。メタンガスの熱伝導率の標準値は、例えば入力装置312を介して、標準値記憶装置404に保存される。
【0101】
次に、図11に示すフローチャートを用いて、第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20の校正方法について説明する。
【0102】
(a)ステップS300で、図6に示すチャンバ101に純粋なメタンガスを注入する。判定部306は、標準値記憶装置404から、チャンバ101に純粋なメタンガスが注入された場合のA/D変換回路304のカウントの標準値を読み出す。次に、判定部306は、A/D変換回路304から出力されたカウントの測定値と、カウントの標準値と、を比較し、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると自動的に判定する。また、判定部306は、発熱量算出部305に、チャンバ101内部のメタンガスの発熱量の測定値の算出を指示する。
【0103】
(b)ステップS301で、発熱量算出部305は、図9のステップS200乃至S204で説明した方法と同様の方法により、発熱量算出式を用いて、図6に示すチャンバ101内部のメタンガスの発熱量Qの測定値を算出する。ステップS302で、補正部307は、発熱量算出部305から、発熱量Qの測定値を受信する。また、補正部307は、補正値記憶装置405から、補正値εを読み出す。次に、補正部307は、メタンガスの発熱量Qの測定値に補正値εを加え、メタンガスの発熱量Qの測定値を補正する。補正部307は、補正したメタンガスの発熱量Qの測定値を出力装置313に出力する。また、補正部307は、補正したメタンガスの発熱量Qの測定値を発熱量記憶装置403に保存する。
【0104】
多変量解析により導かれた発熱量算出式を用いて算出される気体の発熱量は、わずかな誤差を含みうる。そのため、校正ガスとしてメタンガスを天然ガス発熱量測定システム20に流した場合、算出されるメタンガスの発熱量Qが37.78MJ/m3からずれる場合がある。これに対し、第1の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20によれば、校正ガスとしてメタンガスがチャンバ101に注入された場合、メタンガスが純粋なものであれば、算出される発熱量Qを37.78MJ/m3に近づけることが可能となる。
【0105】
なお、気体の熱伝導率は、気体の温度が高くなるほど、大きくなる傾向にある。したがって、標準値記憶装置404は、熱伝導率又はカウントの標準値を、複数の温度毎に保存してもよい。この場合、判定部306は、第1の測温素子62からの電気信号SIに基づき、チャンバ101内部の気体の温度に対応する熱伝導率又はカウントの標準値を、標準値記憶装置404から読み出す。
【0106】
あるいは、標準値記憶装置404は、ある一点の温度の熱伝導率又はカウントの標準値を保存し、判定部306が、第1の測温素子62からの電気信号SIに基づき、ある一点の温度の熱伝導率又はカウントの標準値を補正してもよい。例えば、標準値記憶装置404が、23℃における熱伝導率又はカウントの標準値を保存しており、チャンバ101内部の気体の温度が13℃である場合は、判定部306は、23℃における熱伝導率又はカウントの標準値を小さくする補正してもよい。また、チャンバ101内部の気体の温度が33℃である場合は、判定部306は、23℃における熱伝導率又はカウントの標準値を大きくする補正してもよい。
【0107】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、図6に示す判定部306が、A/D変換回路304から出力されたカウントの測定値と、標準値記憶装置404に保存されているカウントの標準値と、の差の絶対値が、カウントの標準値に0.1%を乗じた値以下であれば、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定し、補正部307がメタンガスの発熱量Qの測定値を補正する例を示した。しかし、チャンバ101内部に注入される校正ガスとしてのメタンガスに不純物が含まれ、不純物の濃度が一定でない場合もあり得る。この場合、A/D変換回路304から出力されたカウントの測定値と、標準値記憶装置404に保存されているカウントの標準値と、の差の絶対値が小さいほど、不純物の濃度は低く、差の絶対値が大きいほど、不純物の濃度は高い。
【0108】
これに対し、第2の実施の形態では、補正部307は、補正値εに、校正ガスとしてチャンバ101内部に注入されたメタンガスの純度に応じて係数を乗じ、係数をかけられた補正値εを用いて、メタンガスの発熱量Qの測定値を補正する。係数は、例えば1を最大値として、メタンガスの純度が高いほど大きくなり、メタンガスの純度が低いほど小さくなる。
【0109】
上述したように、カウントの標準値に対する、カウントの測定値の近似度は、校正ガスとしてのチャンバ101内部に注入されたメタンガスの純度に相関する。以下においては、カウントの標準値に対する、カウントの測定値の近似度に応じて、補正値εに係数を乗じる例であって、カウントの標準値に対するカウントの測定値の近似度を3段階に分けて判定する場合を説明する。例えば、判定部306は、A/D変換回路304から出力されたカウントの測定値と、カウントの標準値と、の差の絶対値が、カウントの標準値に0.033%を乗じた値以下であるか否かを判定する。差の絶対値が、標準値に0.033%を乗じた値以下でない場合、判定部306は、差の絶対値が、例えば標準値に0.067%を乗じた値以下であるか否かを判定する。差の絶対値が、標準値に0.067%を乗じた値以下でない場合、判定部306は、差の絶対値が、例えば標準値に0.1%を乗じた値以下であるか否かを判定する。
【0110】
判定部306は、差の絶対値が、標準値に0.1%を乗じた値以下である場合、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定する。差の絶対値が、標準値に0.1%を乗じた値以下でない場合、判定部306は、チャンバ101内部の気体が天然ガスであると判定する。
【0111】
差の絶対値が標準値に0.033%を乗じた値以下である場合、校正ガスとしてのメタンガスにおける不純物の濃度は極めて低く、純粋なメタンガスを用いて算出された補正値εは適当な値であり得る。よって、判定部306が、カウントの測定値と、カウントの標準値と、の差の絶対値が、標準値に0.033%を乗じた値以下であると判定した場合、補正部307は、メタンガスの発熱量Qの測定値を、補正値εを用いて補正する。
【0112】
差の絶対値が、標準値に0.033%を乗じた値より大きく、標準値に0.067%を乗じた値以下である場合、校正ガスとしてのメタンガスにおいて、不純物が非常にわずかに含まれている可能性があり得る。この場合、純粋なメタンガスを用いて算出された補正値εは大きい場合があり得る。よって、判定部306が、差の絶対値が、標準値に0.033%を乗じた値より大きく、標準値に0.067%を乗じた値以下であると判定した場合、補正部307は、補正値εに例えば係数として2/3を乗じる。さらに補正部307は、メタンガスの発熱量Qの測定値を、2/3を乗じた補正値εを用いて補正する。
【0113】
差の絶対値が、標準値に0.067%を乗じた値より大きく、標準値に0.1%を乗じた値以下である場合、校正ガスとしてのメタンガスにおいて、不純物が非常にわずかであるが、差の絶対値が標準値に0.067%を乗じた値以下である場合より多く含まれている可能性があり得る。この場合も、純粋なメタンガスを用いて算出された補正値εは大きい場合があり得る。よって、判定部306が、差の絶対値が、標準値に0.067%を乗じた値より大きく、標準値に0.1%を乗じた値以下であると判定した場合、補正部307は、補正値εに例えば係数として1/3を乗じる。さらに補正部307は、メタンガスの発熱量Qの測定値を、1/3を乗じた補正値εを用いて補正する。
【0114】
次に、図12に示すフローチャートを用いて、第2の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20の校正方法について説明する。
【0115】
(a)ステップS400で、図6に示すチャンバ101に校正ガスとしてメタンガスを注入する。ステップS401で、判定部306は、標準値記憶装置404から、チャンバ101に純粋なメタンガスが注入された場合のA/D変換回路304のカウントの標準値を読み出す。次に、判定部306は、A/D変換回路304から出力されたカウントの測定値と、標準値と、の差の絶対値が、標準値に0.033%を乗じた値以下であるか否かを判定する。差の絶対値が、標準値に0.033%を乗じた値以下である場合、判定部306は、発熱量算出部305に、チャンバ101内部の校正ガスの発熱量の測定値の算出を指示する。さらに、判定部306は、補正部307に、補正値εを用いて校正ガスの発熱量Qの測定値を補正することを指示する。
【0116】
(b)差の絶対値が標準値に0.033%を乗じた値以下である場合、ステップS402で、発熱量算出部305は、図9のステップS200乃至S204で説明した方法と同様の方法により、発熱量算出式を用いて、図6に示すチャンバ101内部の校正ガスの発熱量Qの測定値を算出する。次に、補正部307は、補正値記憶装置405から補正値εを読み出す。さらに補正部307は、校正ガスの発熱量Qの測定値を、補正値εを用いて補正する。補正部307は、補正したメタンガスの発熱量Qの測定値を出力装置313に出力する。
【0117】
(c)差の絶対値が標準値に0.033%を乗じた値以下でない場合、ステップS403で、判定部306は、A/D変換回路304から出力されたカウントの測定値と、標準値と、の差の絶対値が、標準値に0.067%を乗じた値以下であるか否かを判定する。差の絶対値が、標準値に0.067%を乗じた値以下である場合、判定部306は、発熱量算出部305に、チャンバ101内部の校正ガスの発熱量の測定値の算出を指示する。さらに、判定部306は、補正部307に、2/3を乗じた補正値εを用いて校正ガスの発熱量Qの測定値を補正することを指示する。
【0118】
(d)差の絶対値が、標準値に0.033%を乗じた値より大きく、かつ標準値に0.067%を乗じた値以下である場合、ステップS404で、発熱量算出部305は、図9のステップS200乃至S204で説明した方法と同様の方法により、発熱量算出式を用いて、図6に示すチャンバ101内部の校正ガスの発熱量Qの測定値を算出する。次に、補正部307は、補正値記憶装置405から補正値εを読み出す。さらに補正部307は、補正値εに2/3を乗じる。その後、補正部307は、校正ガスの発熱量Qの測定値を、2/3を乗じた補正値εを用いて補正する。補正部307は、補正したメタンガスの発熱量Qの測定値を出力装置313に出力する。
【0119】
(e)差の絶対値が標準値に0.067%を乗じた値以下でない場合、ステップS405で、判定部306は、A/D変換回路304から出力されたカウントの測定値と、標準値と、の差の絶対値が、標準値に0.1%を乗じた値以下であるか否かを判定する。差の絶対値が、標準値に0.1%を乗じた値以下である場合、判定部306は、発熱量算出部305に、チャンバ101内部の校正ガスの発熱量の測定値の算出を指示する。さらに、判定部306は、補正部307に、1/3を乗じた補正値εを用いて校正ガスの発熱量Qの測定値を補正することを指示する。
【0120】
(f)差の絶対値が、標準値に0.067%を乗じた値より大きく、かつ標準値に0.1%を乗じた値以下である場合、ステップS406で、発熱量算出部305は、図9のステップS200乃至S204で説明した方法と同様の方法により、発熱量算出式を用いて、図6に示すチャンバ101内部の校正ガスの発熱量Qの測定値を算出する。次に、補正部307は、補正値記憶装置405から補正値εを読み出す。さらに補正部307は、補正値εに1/3を乗じる。その後、補正部307は、校正ガスの発熱量Qの測定値を、1/3を乗じた補正値εを用いて補正する。補正部307は、補正したメタンガスの発熱量Qの測定値を出力装置313に出力する。
【0121】
(g)差の絶対値が標準値に0.1%を乗じた値以下でない場合、判定部306は、チャンバ101内部に注入された気体は校正ガスではなく、天然ガスであると判定し、発熱量算出部305に、チャンバ101内部の天然ガスの発熱量Qの測定値の算出を指示する。また、判定部306は、補正部307に、発熱量Qの測定値を補正しないよう指示する。この場合、ステップS407で、発熱量算出部305は、図9のステップS200乃至S204で説明した方法と同様の方法により、発熱量算出式を用いて、図6に示すチャンバ101内部の天然ガスの発熱量Qの測定値を算出する。
【0122】
以上説明した第2の実施の形態に係る天然ガス発熱量測定システム20の校正方法によれば、校正ガスとしてのメタンガスの純度に応じて、補正値εに係数が乗じられる。よって、高い精度で校正ガスの発熱量Qの測定値を補正することが可能となる。なお、上述した0.033%、0.067%、及び0.1%との数値は、あくまで例示的なものである。これらの数値は、カウント値の大きさ、及び要求される測定精度によって、任意に設定し得る値である。
【0123】
(第3の実施の形態)
第1の実施の形態では、図6に示す判定部306が、発熱素子61からの電気信号SHに基づいて、チャンバ101に注入された気体が、メタンガスであるか否かを判定する例を説明した。第3の実施の形態では、判定部306は、第1の印加電圧を加えられた場合の発熱素子61からの電気信号SHの測定値と、第1の印加電圧とは異なる第2の印加電圧を加えられた場合の発熱素子61からの電気信号SHの測定値と、を測定する。さらに判定部306は、第1の印加電圧を加えられた場合の発熱素子61からの電気信号SHの測定値を、第2の印加電圧を加えられた場合の発熱素子61からの電気信号SHの測定値で割った値である、発熱素子61からの電気信号SHの比の測定値を算出する。
【0124】
発熱素子61からの電気信号SHは、チャンバ101に注入された気体の流量によって変動する場合がある。また、発熱素子61からの電気信号SHは、経年劣化等によりドリフトする場合がある。これに対し、第1の印加電圧を加えられた場合の発熱素子61からの電気信号SHの測定値を、第2の印加電圧を加えられた場合の発熱素子61からの電気信号SHの測定値で割ることによって、チャンバ101に注入された気体の流量の影響、及び経年劣化等によるドリフトの影響を除去することが可能となる。なお、発熱素子61からの電気信号SHの比も、チャンバ101に注入された気体の熱伝導率に相関する。
【0125】
判定部306は、発熱素子61からの電気信号SHの比の測定値と、予め取得された、チャンバ101に純粋なメタンガスが注入された場合の発熱素子61からの電気信号SHの比の標準値と、を比較する。判定部306は、発熱素子61からの電気信号SHの比の測定値が、チャンバ101に純粋なメタンガスが注入された場合の発熱素子61からの電気信号SHの比の標準値と一致する場合、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定する。なお、判定部306は、発熱素子61からの電気信号SHの比の測定値が、標準値そのものでなくとも、測定値が標準値に近似している場合には、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定してもよい。
【0126】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、判定部306は、発熱素子61からの電気信号SHの測定値と、第1の測温素子62からの電気信号SIの測定値と、を測定する。さらに判定部306は、発熱素子61からの電気信号SHの測定値を、第1の測温素子62からの電気信号SIの測定値で割った値である、電気信号SIに対する電気信号SHの比の測定値を算出する。
【0127】
発熱素子61からの電気信号SHの測定値を、第1の測温素子62からの電気信号SIの測定値で割ることによっても、チャンバ101に注入された気体の流量の影響、及び経年劣化等によるドリフトの影響を除去することが可能となる。なお、電気信号SIに対する電気信号SHの比も、チャンバ101に注入された気体の熱伝導率に相関する。
【0128】
判定部306は、電気信号SIに対する電気信号SHの比の測定値と、予め取得された、チャンバ101に純粋なメタンガスが注入された場合の電気信号SIに対する電気信号SHの比の標準値と、を比較する。判定部306は、電気信号SIに対する電気信号SHの比の測定値が、チャンバ101に純粋なメタンガスが注入された場合の電気信号SIに対する電気信号SHの比の標準値と一致する場合、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定する。なお、判定部306は、電気信号SIに対する電気信号SHの比の測定値が、標準値そのものでなくとも、測定値が標準値に近似している場合には、チャンバ101内部の気体がメタンガスであると判定してもよい。
【0129】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、第1の実施の形態では、図6に示す式記憶装置402が、図1に示す第1の測温素子62からの電気信号及び複数の発熱温度における発熱素子61からの電気信号を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を保存する例を説明した。
【0130】
これに対し、上記(22)式で説明したように、気体の発熱量Qは、発熱素子61の温度がそれぞれTH1,TH2,TH3である場合の気体の放熱係数MI1(TH1),MI2(TH2),MI3(TH3)を変数とする方程式で与えられる。よって、図6に示す式記憶装置402は、発熱素子61の複数の発熱温度における気体の放熱係数を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を保存してもよい。この場合、測定部301は、チャンバ101に注入された気体の放熱係数の測定値を、発熱素子61を複数の発熱温度に発熱させて測定する。なお、気体の放熱係数をマイクロチップ8を用いて測定可能であることは、上記(9)式で説明したとおりである。発熱量算出部305は、式記憶装置402に保存されている発熱量算出式の独立変数に、気体の放熱係数の測定値を代入して、気体の発熱量Qの測定値を算出する。
【0131】
次に、図13は、発熱抵抗体に2mA、2.5mA、及び3mAの電流を流した際の、混合ガスの放熱係数と、熱伝導率と、の関係を示す。図13に示すように、混合ガスの放熱係数と、熱伝導率と、は一般に比例関係にある。したがって、図6に示す式記憶装置402は、発熱素子61の複数の発熱温度における気体の熱伝導率を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする発熱量算出式を保存してもよい。この場合、測定部301は、チャンバ101に注入された気体の熱伝導率の測定値を、発熱素子61を複数の発熱温度に発熱させて測定する。発熱量算出部305は、式記憶装置402に保存されている発熱量算出式の独立変数に、気体の熱伝導率の測定値を代入して、気体の発熱量Qの測定値を算出する。
【0132】
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【0133】
(実施例1)
まず、発熱量Qの値が既知の23種類のサンプル混合ガスを用意した。23種類のサンプル混合ガスのそれぞれは、ガス成分としてメタン(CH4)、エタン(C26)、プロパン(C38)、ブタン(C410)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のいずれか又は全部を含んでいた。例えば、あるサンプル混合ガスは、90vol%のメタン、3vol%のエタン、1vol%のプロパン、1vol%のブタン、4vol%の窒素、及び1vol%の二酸化炭素を含んでいた。また、あるサンプル混合ガスは、85vol%のメタン、10vol%のエタン、3vol%のプロパン、及び2vol%のブタンを含み、窒素及び二酸化炭素を含んでいなかった。また、あるサンプル混合ガスは、85vol%のメタン、8vol%のエタン、2vol%のプロパン、1vol%のブタン、2vol%の窒素、及び2vol%の二酸化炭素を含んでいた。
【0134】
次に、23種類のサンプル混合ガスのそれぞれを用いて、図6に示す第1の測温素子62からの電気信号SIの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の複数の測定値と、を取得した。その後、23種類のサンプル混合ガスの既知の発熱量Qの値と、第1の測温素子62からの電気信号SIの複数の測定値と、発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)の複数の測定値と、に基づいて、サポートベクトル回帰により、第1の測温素子62からの電気信号SI及び発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする、発熱量Qを算出するための1次方程式、2次方程式、及び3次方程式を作成した。
【0135】
発熱量Qを算出するための1次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、3乃至5個を目安に、適宜決定できる。作成された1次方程式は下記(33)乃至(35)式で与えられた。23種類のサンプル混合ガスの発熱量Qを(33)乃至(35)式で算出し、真の発熱量Qと比較したところ、最大誤差は2.1%であった。
Q = 40.1 + 17.4×VH1 (100℃) + 17.9×VH2 (150℃) - 28.9×VH3 (200℃) - 10.4×VI ・・・(33)
Q = 40.1 + 23.8×RH1 (100℃) + 6.07×RH2 (150℃) - 22.8×RH3 (200℃) - 11.4×RI ・・・(34)
Q = 40.1 + 17.4×ADH1 (100℃) + 17.9×ADH2 (150℃) - 28.9×ADH3 (200℃) - 10.4×ADI ・・・(35)
【0136】
発熱量Qを算出するための2次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、8乃至9個を目安に、適宜決定できる。23種類のサンプル混合ガスの発熱量Qを作成された2次方程式で算出し、真の発熱量Qと比較したところ、最大誤差は1.2乃至1.4%であった。
【0137】
発熱量Qを算出するための3次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、10乃至14個を目安に、適宜決定できる。23種類のサンプル混合ガスの発熱量Qを作成された3次方程式で算出し、真の発熱量Qと比較したところ、最大誤差は1.2%未満であった。
【0138】
(実施例2)
実施例1で使用したサンプル混合ガスと同様に、発熱量Qの値が既知の23種類のサンプル混合ガスを用意した。ここで、発熱素子61で加熱される前のサンプル混合ガスの温度を、−10℃、5℃、23℃、40℃、及び50℃に設定した。次に、サポートベクトル回帰により、第1の測温素子62からの電気信号SI及び発熱素子61からの電気信号SH1(TH1),SH2(TH2),SH3(TH3)を独立変数とし、発熱量Qを従属変数とする、発熱量Qを算出するための3次方程式を作成した。すると、図14乃至図16に示すように、発熱素子61で加熱される前のサンプル混合ガスの温度にかかわらず、算出される発熱量Qの誤差にばらつきが生じなかった。なお、図14の結果は、電気信号Sとして抵抗Rを用いて得られた。図15の結果は、電気信号Sとして電圧Vを用いて得られた。図16の結果は、電気信号SとしてA/D変換回路304からの出力信号ADを用いて得られた。
【符号の説明】
【0139】
8 マイクロチップ
18 断熱部材
20 天然ガス発熱量測定システム
31A,31B,31C,31D ガス圧調節器
32A,32B,32C,32D 流量制御装置
50A,50B,50C,50D ガスボンベ
60 基板
61 発熱素子
62 第1の測温素子
63 第2の測温素子
64 保温素子
65 絶縁膜
66 キャビティ
91A,91B,91C,91D,92A,92B,92C,92D,93,102,103 流路
101 チャンバ
160,161,162,163,164,165,261,264,265 抵抗素子
170,270 オペアンプ
301 測定部
302 式作成部
303 駆動回路
304 A/D変換回路
305 発熱量算出部
306 判定部
307 補正部
312 入力装置
313 出力装置
401 電気信号記憶装置
402 式記憶装置
403 発熱量記憶装置
404 標準値記憶装置
405 補正値記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測温素子及び複数の発熱温度で発熱する発熱素子が設けられ、気体が注入される容器と、
前記測温素子からの電気信号及び前記複数の発熱温度における前記発熱素子からの電気信号を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、
前記発熱量算出式の独立変数に、前記測温素子及び前記発熱素子からの電気信号の測定値を代入して、前記容器に注入された気体の発熱量の測定値を算出する発熱量算出部と、
メタンガスの発熱量の標準値と、前記発熱量算出式で算出された前記メタンガスの発熱量の測定値と、の差である補正値を保存する補正値記憶装置と、
前記容器に注入された気体がメタンガスである場合、前記発熱量算出部が算出した前記メタンガスの発熱量の測定値に前記補正値を加える補正部と、
を備える、天然ガス発熱量測定システム。
【請求項2】
前記容器に注入された気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する判定部を更に備える、請求項1に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項3】
前記判定部が、前記容器に注入された気体の熱伝導率に基づき、前記容器に注入された気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項2に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項4】
前記判定部が、前記容器に注入された気体の熱伝導率に依存する前記発熱素子の抵抗の変化に基づき、前記容器に注入された気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項2又は3に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項5】
第1の印加電圧を加えられた場合の前記発熱素子からの電気信号の値を、第2の印加電圧を加えられた場合の前記発熱素子からの電気信号の値で割った値に基づき、前記容器に注入された気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項4に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項6】
前記判定部が、前記容器に注入された気体の熱伝導率に相関する前記測温素子及び前記発熱素子からの電気信号の値に基づき、前記容器に注入された気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項2又は3に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項7】
前記発熱素子からの電気信号の値を、前記測温素子からの電気信号の値で割った値に基づき、前記容器に注入された気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項6に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項8】
前記補正部が、前記容器に注入されたメタンガスの純度に応じて、前記補正値に係数を乗じる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項9】
前記メタンガスの純度が高いほど前記係数が大きくなり、前記メタンガスの純度が低いほど前記係数が小さくなる、請求項8に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項10】
前記メタンガスの発熱量の標準値が、メタンガスの発熱量の理論値である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項11】
複数種類のガス成分を含む複数のサンプル混合ガスの発熱量の値と、前記複数のサンプル混合ガスのそれぞれに接する前記測温素子及び前記発熱素子からの電気信号の値とに基づいて、前記発熱量算出式が作成された、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項12】
前記発熱量算出式を作成するために、サポートベクトル回帰が用いられた、請求項11に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項13】
測温素子及び複数の発熱温度で発熱する発熱素子が設けられた容器に気体を注入することと、
前記測温素子からの電気信号及び前記複数の発熱温度における前記発熱素子からの電気信号を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、
前記発熱量算出式の独立変数に、前記測温素子及び前記発熱素子からの電気信号の測定値を代入して、前記容器に注入された気体の発熱量の測定値を算出することと、
メタンガスの発熱量の標準値と、前記発熱量算出式で算出された前記メタンガスの発熱量の測定値と、の差である補正値を用意することと、
前記容器に注入された気体がメタンガスである場合、前記発熱量算出式を用いて測定された前記メタンガスの発熱量の測定値に前記補正値を加えることと、
を含む、天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項14】
前記容器に注入された気体が、前記メタンガスであるか否かを判定することを更に含む、請求項13に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項15】
前記容器に注入された気体の熱伝導率に基づき、前記測温素子及び前記発熱素子に接する前記気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項14に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項16】
前記容器に注入された気体の熱伝導率に依存する前記発熱素子の抵抗の変化に基づき、前記測温素子及び前記発熱素子に接する前記気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項14又は15に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項17】
第1の印加電圧を加えられた場合の前記発熱素子からの電気信号の値を、第2の印加電圧を加えられた場合の前記発熱素子からの電気信号の値で割った値に基づき、前記容器に注入された気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項16に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項18】
前記容器に注入された気体の熱伝導率に相関する前記測温素子及び前記発熱素子からの電気信号の値に基づき、前記測温素子及び前記発熱素子に接する前記気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項14又は15に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項19】
前記発熱素子からの電気信号の値を、前記測温素子からの電気信号の値で割った値に基づき、前記容器に注入された気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項18に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項20】
前記補正値を加えることにおいて、前記容器に注入されたメタンガスの純度に応じて、前記補正値に係数を乗じる、請求項13乃至19のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項21】
前記メタンガスの純度が高いほど前記係数が大きくなり、前記メタンガスの純度が低いほど前記係数が小さくなる、請求項20に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項22】
前記メタンガスの発熱量の標準値が、メタンガスの発熱量の理論値である、請求項13乃至21のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項23】
複数種類のガス成分を含む複数のサンプル混合ガスの発熱量の値と、前記複数のサンプル混合ガスのそれぞれに接する前記測温素子及び前記発熱素子からの電気信号の値とに基づいて、前記発熱量算出式が作成された、請求項13乃至22のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項24】
前記発熱量算出式を作成するために、サポートベクトル回帰が用いられた、請求項23に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項25】
気体の放熱係数又は熱伝導率の測定値を測定する測定部と、
前記放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、
前記発熱量算出式の独立変数に、前記気体の放熱係数又は熱伝導率の測定値を代入して、前記気体の発熱量の測定値を算出する発熱量算出部と、
メタンガスの発熱量の標準値と、前記発熱量算出式で算出された前記メタンガスの発熱量の測定値と、の差である補正値を保存する補正値記憶装置と、
前記気体がメタンガスである場合、前記発熱量算出部が算出した前記メタンガスの発熱量の測定値に前記補正値を加える補正部と、
を備える、天然ガス発熱量測定システム。
【請求項26】
前記気体が、前記メタンガスであるか否かを判定する判定部を更に備える、請求項25に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項27】
前記判定部が、前記気体の熱伝導率に基づき、前記気体が前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項26に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項28】
前記補正部が、前記メタンガスの純度に応じて、前記補正値に係数を乗じる、請求項25乃至27のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項29】
前記メタンガスの純度が高いほど前記係数が大きくなり、前記メタンガスの純度が低いほど前記係数が小さくなる、請求項28に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項30】
前記メタンガスの発熱量の標準値が、メタンガスの発熱量の理論値である、請求項25乃至29のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項31】
複数種類のガス成分を含む複数のサンプル混合ガスの発熱量の値と、前記複数のサンプル混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値とに基づいて、前記発熱量算出式が作成された、請求項25乃至30のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項32】
前記発熱量算出式を作成するために、サポートベクトル回帰が用いられた、請求項31に記載の天然ガス発熱量測定システム。
【請求項33】
気体の放熱係数又は熱伝導率の測定値を測定することと、
前記放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、
前記発熱量算出式の独立変数に、前記気体の放熱係数又は熱伝導率の測定値を代入して、前記気体の発熱量の測定値を算出することと、
メタンガスの発熱量の標準値と、前記発熱量算出式で算出された前記メタンガスの発熱量の測定値と、の差である補正値を用意することと、
前記気体がメタンガスである場合、前記発熱量算出式を用いて測定された前記メタンガスの発熱量の測定値に前記補正値を加えることと、
を含む、天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項34】
前記気体が、前記メタンガスであるか否かを判定することを更に含む、請求項33に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項35】
前記気体の熱伝導率に基づき、前記気体が前記メタンガスであるか否かを判定する、請求項34に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項36】
前記補正値を加えることにおいて、前記メタンガスの純度に応じて、前記補正値に係数を乗じる、請求項33乃至35のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項37】
前記メタンガスの純度が高いほど前記係数が大きくなり、前記メタンガスの純度が低いほど前記係数が小さくなる、請求項36に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項38】
前記メタンガスの発熱量の標準値が、メタンガスの発熱量の理論値である、請求項33乃至37のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項39】
複数種類のガス成分を含む複数のサンプル混合ガスの発熱量の値と、前記複数のサンプル混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値とに基づいて、前記発熱量算出式が作成された、請求項33乃至38のいずれか1項に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。
【請求項40】
前記発熱量算出式を作成するために、サポートベクトル回帰が用いられた、請求項39に記載の天然ガス発熱量測定システムの校正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図13】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate