説明

天然材料から作られた、吹き動かされることが可能な断熱クラスタ

天然繊維又は材料からなるランダム形状の吹き動かされることが可能なクラスタから構成された、吹き動かされることが可能な断熱材料。好ましい実施形態では、そのクラスタは人工繊維又は材料からも構成される。吹き動かされることが可能なクラスタを製造する工程も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽毛状の断熱クラスタ、及び該クラスタを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、衣類、寝袋、掛け布団、及び同様のものといった断熱製品において、羽毛(down)のような性質を有する断熱材料を獲得するための多くの試みがなされてきた。しかし、実現可能な材料を開発するための従来の努力によって得られた断熱材料は、重くかつ密集し過ぎており、羽毛状と言えるものではなかった。
【0003】
以上のような従来の断熱材料の例外としては、例えば特許文献1があり、そこには、優れた合成羽毛が開示されており、低密度集合体である細繊維を使用することによって獲得される軽量断熱システムが言及されている。及び、前記特許文献1には様々な細繊維が記載されており、該細繊維は、断熱バットを作るために使用されるとき、重さに対する暖かさの比率が高く、柔らかで、かつ圧縮に対する復元力が高いといった羽毛のような性質をもたらす。この材料は、天然羽毛の断熱性能に匹敵する、場合によってはそれを凌駕することさえある。しかし、機械的な観点からしてみると、極めて細い繊維は剛性及強度が不足しており、製造、コントロール及び使用が難しい。そのような合成断熱材料の復元能力は大きな直径の繊維によって高められるのであるが、繊維の直径が増大すると断熱性能が全体的に著しく減少してしまう。また、細繊維の集合体の機械的安定性が湿潤状態において悪化するという問題もある。なぜならば、毛管水の存在に関連した表面張力は、重力又は他の通常使用における負荷による力と比べて非常に大きく、表面に大きな悪影響を及ぼすからである。しかし、水鳥の羽毛と異なり、開示されている繊維の組み合わせは、湿潤に対して高い抵抗性を提供している。
【0004】
もう1つの例外としては、特許文献2があり、そこには、望ましい特質を損なうことなしに断熱材の一体性を改善するために、バインダー(binder)繊維要素を使用することが開示されている。より詳細には、そこに開示されている発明は密着繊維構造を有する合成繊維断熱材料に関し、該構造は、(a)3〜12ミクロンの直径を有する合成重合マイクロ繊維(microfibers)が70〜95重量%、(b)12〜50ミクロンの直径を有する合成重合マクロ繊維(macrofibers)が5〜30重量%の組み合わせて構成されており、その繊維の少なくとも幾らかが複数の接触点において結合されたものであり、その結合によって得られた構造の密度は3〜16kg/mの範囲以内にあり、結合された集合体の断熱性能は結合されていない集合体の断熱性能と同じくらい、又は少なくとも実質的に同じ程度である。また、前記特許文献2には、好ましい繊維混合の羽毛状クラスタ(cluster)形態が記載されている。また、バット形態とは異なる、クラスタ形態の性能上の利点もそこには記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの先行技術のクラスタは、遅くて時間がかかる一括処理でしばしば一般的に製造される。さらに、先行技術における容易に吹き動かされる可能な材料は、通常の製造装置を用いては製造されない。したがって、羽毛と部分的又は全体的に置き換えられて使用されることが可能であり、かつ通常の装置を使用して製造することができる、吹き動かされることが可能な材料が必要とされている。
【0006】
この必要性を満たすために、特許文献3に記載されているような吹き動かされることが可能な断熱クラスタが、ある程度開発されている。該文献には、細断された接着バット又は接着ウェブから作られた、吹き動かされることが可能なクラスタが記載されている。そのウェブ又はバットは、特許文献2に記載の繊維混合と同様のものである。特許文献2に記載の材料から形成されたバット又はウェブを細断することによって、クラスタには厚み及び断熱性質を有する羽毛のような特質が付与されている。特許文献4には、天然材料と混合されたそのようなクラスタが記載されている。前述の全ての特許文献は、ここにおいて本明細書に組み込まれる。
【特許文献1】米国特許第4588635号明細書
【特許文献2】米国特許第4992327号明細書
【特許文献3】米国特許第6329051号明細書
【特許文献4】米国特許第6329052号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3及び特許文献4に記載の吹き動かされることが可能な断熱クラスタは、合成繊維のみしか含んでいない。それに対し、本発明は、天然材料、人工材料、又は人工材料と組み合わされた天然材料から作られる、吹き動かされることが可能な断熱クラスタを提供することに向けられている。
【0008】
本発明の目的は、羽毛と部分的又は完全に置き換えられて使用される、吹き動かすことが可能な断熱材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態の1つは、天然繊維又は材料から形成された、又は天然繊維又は材料と人工繊維又は材料を組み合わせて形成されたランダム形状の吹き動かされることが可能なクラスタになるように1回以上細断された、バット、ウェブ、結合されたバット、結合されたウェブ、結合されたバットの一部分、結合された接着ウェブの一部分といった材料の1つ以上を含む、吹き動かされることが可能な断熱材料である。もう1つの好ましい実施形態では、クラスタは、撥水又は潤滑加工された繊維及び/又はドライ繊維及び/又はそれらとともに混合されるバインダー繊維から構成される。吹き動かされることが可能なクラスタを製造する方法も、開示されている。
【0010】
本発明を特徴づける新規性の様々な特徴は、本開示の一部を形成している付属の請求項において特に指摘されている。本発明、その作動上の利点及びそれを使用することの特別な目的をより良く理解するために 本発明の好ましい実施形態が説明されている付随の説明事項を参照することが可能である。
【0011】
したがって、本発明によって、以下の詳細な記載と併せて、その目的及び利点は実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の1つの実施形態は、天然繊維若しくは材料のみから、又は該天然のものと人工繊維若しくは材料を組み合わせたものから作られたクラスタからなる。出発地点となる材料は、例えば前述したようなバット又はウェブ等の形態をしたもの、又は目的に適した形態の材料であってよく、それは熱調整(heatset)されていてもよいし、されていなくてもよい。特定の適用のために、バット又はウェブは、撥水加工又は潤滑加工された繊維及び/又はドライ繊維及び/又はバインダー繊維を含んでいてもよい。それから、バット又はウェブは、吹き動かされることが可能で望ましい羽毛のような特性を有する小さなクラスタになるように、1回以上機械的に細断される。ウェブ(一般的に単層材料)及びバット(一般的に多層材料)、又はそれらの諸部分が、本発明のクラスタを作るために使用されることが可能であると考えられる。
【0013】
本発明においては、天然繊維又は材料として、ウール、コットン、亜麻、獣毛、シルク、羽毛だけでなく、他の同様の天然繊維又は材料も範囲に含まれる。
【0014】
繊維クラスタは、適切な繊維材料又は混合体で作られた軽量の梳毛スライバー(card sliver)から作られてよい。人工繊維を天然繊維又は材料に単バットにおいて組み込むとき、人工繊維の繊維混合は、好ましくは特許文献2に開示されている繊維混合である。前述したように、本発明は、マイクロ繊維のための支持構造を形成するためにマクロ繊維が1つに結合されている断熱材料を開示している。マクロ繊維間及び幾つかのマイクロ繊維間の両者においても様々な接触点において結合は生じている。しかし、利用の際には、結合はそれらの接触点における人工繊維のマクロ繊維間で生じていることが好ましい。こうすることで、断熱材料の機械的性質に著しく寄与する支持構造を提供することが可能となる。また、バットの人工要素の繊維構造は一般的に、3〜12ミクロンの直径を有する合成重合マイクロ繊維が70〜95重量%、12〜50ミクロンの直径を有する合成重合マクロ繊維が5〜30重量%という構成をなす。他の好ましい実施形態では、撥水加工又は潤滑加工繊維及び/又はドライ繊維及び/又はバインダー繊維からなる繊維の混合を利用することができる。
【0015】
一般的に、スライバーは梳毛カードの出口側に最初に集められ、必要がある又は望ましいとき、もし該スライバーが使用されるならば、バインダー繊維混合体を熱接着する加熱管のなかを直接通過する。用いられる接着工程は、非常に厚みのある梳毛スライバーを細断及び圧縮することなしに実行される。スライバーのそれぞれの端部は垂直の管のなかを落下し、その間にガイドリングによって中央に寄せられる。そして、管のなかを上方に向かって加熱された空気が通過し、厚く線状に伸びた繊維の集まりを接着させる。加熱管から出る際に、スライバーはギロチン型の短繊維カッターの入り口側に導かれる。そこでは、カットにおける繊維溶解の圧縮効果なしに、綺麗なカットがなされる。この方法によって、非常に厚い繊維クラスタを集めることができる。
【0016】
好ましくは、積層された梳毛のラップ(plied card−laps)からなるバットが使用されるが、同等に適切であれば他の繊維形態を用いてもよい。しかし、通常の梳毛カードが天然材料と人工材料の両方が用いられる状況において使用される場合、そのような梳毛カードは、ウェブから例えば羽毛といった天然材料を分離しないということを注意する。また、梳毛のラップ又はウェブは、羽毛の密度特性と同程度の密度を有するバットへと好ましくは形成される。また、梳毛のラップ又はウェブも、0.5〜6.0デニールのバインダー繊維及び/又はドライ繊維(すなわち、非潤滑/非帯電防止)及び/又は撥水繊維から作られてもよい。好ましい方法では、梳毛のラップ又はウェブはバインダー繊維、ドライ繊維、及び撥水繊維からなる。これらの繊維は、天然繊維及び人工繊維と前述した材料を組み合わせたものであってもよい。これらの選択された繊維は、望ましくない分離が生じない限り、好ましくは梳毛されてよい。固定フラットを有する単円筒形金属梳毛カード(a single cylinder metallic card)によって集めることが可能である。例えば天然繊維及び人工繊維のバットを準備するときには、梳毛カードの出口は、バインダー繊維を熱調整するために電気及び/又はガス火による熱源へと向けられる。バットは、ある一定の時間の間、繊維を密着させるのに十分な温度、例えば華氏300〜400度で加熱される。熱調整の後に、又はもし非加熱バット又はウェブが使用される場合はそれらが形成された後に、バットは、吹き動かされることが可能なクラスタを形成するためにブレンダーによって好ましくは2度細断される。
【0017】
他の様々な可変要素は、吹き動かされることが可能なクラスタにおいて望ましい効果を獲得するために修正されてよい。例えば、次のようなものがある。
【0018】
1.クラスタの一体性及び耐久性を向上させるために、梳毛における限界までステープルの長さを増大させる。
【0019】
2.クラスタの“微調整(fine− tune)”細断性、切断性、密着性、及び性能特性を満足するバインダー繊維に変更する。
【0020】
3.クラスタのサイズ、形状及びアスペクト比を変える。
【0021】
4.目的に適しているならば超音波結合手段を用いる。
【0022】
5.クラスタを2回以上細断する。
【0023】
6.バット又はウェブの一部分のみを細断する。
【0024】
当業者ならば、他の要素も、吹き動かされることが可能なクラスタに対して効果を有していること、及び、それらの要因は、本発明の範囲を超えることがないならば望ましい目的のために最適化されることが可能であることを認識するであろう。
【0025】
2回細断されたクラスタは、一回だけ細断されたクラスタと比較して、一般的により滑らかであり、より容易に混合される。さらに、細長く切られている加熱調節されたバットのストリップ又はスライバーを得ることが可能であるし、及び、クラスタを形成するための標準的な細断工程を通してこれらの細断された一部を得ることも可能である。
【0026】
さらに、本発明では、上述されていないような、人工繊維混合、又は天然繊維混合と人工繊維混合を混ぜ合わせたものを利用することもできる。これらにおいては、断熱性能を高レベルに保つために平均繊維直径の範囲が限定されている。場合によっては、平均繊維直径は、引用された特許文献によって規定された範囲より大きいことが望ましい。例えば、比較的に大きな直径の繊維は、最終製品が枕又は室内装飾用品であり及び圧縮剛性が特に必要とされている場合に利用される。
【0027】
また、適用によっては、異なる天然及び/又は人工材料から作られた他のクラスタを混ぜ合わせて形成された、又は天然及び/又は人工繊維若しくは求められている望ましい結果に応じた材料を混ぜ合わせて形成されたクラスタを混合することが望ましい。
【0028】
したがって、本発明によって、以上のような利点が実現されるのであり、及び好ましい実施形態がこれまで詳細に開示及び記載されてきたのであるが、その範囲は以上の記載によって限定されるものではなく、それは付属の請求項によって決定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹き動かされることが可能な断熱材料であって、
前記断熱材料は、バット、ウェブ、結合されたバット、結合されたウェブ、結合されたバットの一部分、及び結合されたウェブの一部分からなるグループから1つ以上選択された材料からなり、前記グループの材料は、天然繊維又は材料から構成されたランダム形状の吹き動かされることが可能なクラスタになるように1回以上細断されている、前記断熱材料。
【請求項2】
吹き動かされることが可能なクラスタは、人工繊維又は材料からも構成されることを特徴とする請求項1に記載の吹き動かされることが可能な断熱材料。
【請求項3】
バット、ウェブ、結合されたバット、結合されたウェブ、結合されたバットの一部分、及び結合されたウェブの一部分は、天然繊維又は材料のみから構成されることを特徴とする請求項1に記載の吹き動かされることが可能な断熱材料。
【請求項4】
バット、ウェブ、結合されたバット、結合されたウェブ、結合されたバットの一部分、及び結合されたウェブの一部分は、人工繊維又は材料と天然繊維又は材料とを組み合わせて構成されることを特徴とする請求項1に記載の吹き動かされることが可能な断熱材料。
【請求項5】
結合されたバット、結合されたウェブ、結合されたバットの一部分、及び結合されたウェブの一部分は、熱調整されていることを特徴とする請求項2に記載の吹き動かされることが可能な断熱材料。
【請求項6】
吹き動かされることが可能なクラスタは、複数の接着点において1つに結合されているランダム繊維から構成されることを特徴とする請求項5に記載の吹き動かされることが可能な断熱材料。
【請求項7】
人工繊維は、3〜12ミクロンの直径を有する合成重合マイクロ繊維が70〜95重量%、12〜50ミクロンの直径を有する合成重合マクロ繊維が5〜30重量%で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の吹き動かされることが可能な断熱材料。
【請求項8】
バット、ウェブ、結合されたバット、結合されたウェブ、結合されたバットの一部分、及び結合されたウェブの一部分は、0.5〜6.0デニールの撥水又は潤滑加工された繊維、ドライ繊維、及びバインダー繊維からなるグループから1つ以上選択された材料から構成されることを特徴とする請求項1に記載の吹き動かされることが可能な断熱材料。
【請求項9】
天然材料及び人工材料の1つ以上を混ぜ合わせていることを特徴とする請求項1に記載の吹き動かされることが可能な断熱材料。
【請求項10】
天然材料及び人工材料の1つ以上を混ぜ合わせていることを特徴とする請求項2に記載の吹き動かされることが可能な断熱材料。

【公表番号】特表2009−521612(P2009−521612A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547240(P2008−547240)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/044967
【国際公開番号】WO2007/078450
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】