説明

天然油供給原料から燃料を精製および製造する方法

天然油供給原料を精製するための方法が提供される。この方法は、オレフィン類とエステル類を含む複分解生成物が形成されるのに十分な条件の下、複分解触媒の存在下で供給原料を反応させることを含む。特定の態様において、この方法はさらに、複分解生成物中のエステル類からオレフィン類を分離することを含む。特定の態様において、この方法はさらに、燃料組成物が形成されるのに十分な条件の下でオレフィン類を水素化することを含む。特定の態様において、この方法はさらに、アルコールの存在下でエステル類をエステル交換させ、それによりエステル交換生成物を形成させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願についてのクロス・リファレンス
[0001]本出願は米国仮特許出願61/250743号(2009年10月12日提出)の利益を請求し、その内容は参考文献としてここに取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]複分解は当分野において一般的に知られる触媒反応であり、炭素−炭素二重結合の形成と開裂によって、一つ以上の二重結合を含む化合物(例えばオレフィン化合物)中のアルキリデン構成単位が交換することを含む反応である。複分解は二つの類似した分子の間で起こり(しばしば自己複分解と呼ばれる)、そして/または二つの異なる分子の間で起こるだろう(しばしば交差複分解と呼ばれる)。自己複分解は、図式的には式Iに示すように表すことができる。
【0003】
【数1】

【0004】
ここで、RとRは有機基である。
[0003]交差複分解は、図式的には式IIに示すように表すことができる。
【0005】
【数2】

【0006】
ここで、R、R、RおよびRは有機基である。
[0004]近年、一般的には石油を供給源とする物質を製造するための、環境に優しい技術に対する必要性が増大している。例えば、研究者らは、野菜や種子をベースとする油のような天然油供給原料を用いてバイオ燃料、ワックス、プラスチック、その他同種類のものを製造する可能性を研究している。一つの非限定的な例として、ろうそくを製造するために複分解触媒が用いられ、それは例えばPCT/US2006/000822号に記載されている。その記載の全体は参考文献としてここに取り込まれる。天然油供給原料を伴う複分解反応は、今日および将来の有望な解決策を提供する。
【0007】
[0005]重要な天然油供給原料の非限定的な例としては、天然油(例えば植物油、魚油、動物脂肪)および天然油の誘導体、例えば脂肪酸および脂肪酸のアルキル(例えばメチル)エステル類がある。これらの供給原料は、任意の数の様々な複分解反応によって工業的に有用な化学物質(例えばワックス、プラスチック、化粧品、バイオ燃料など)に転換することができる。重要な反応の種類としては、非限定的な例として、自己複分解、オレフィン類を用いる交差複分解、および開環複分解の反応がある。有用な複分解触媒の代表的な非限定的な例は、後に提示する。複分解触媒は高価な場合があり、従って、複分解触媒の効率を向上させることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】PCT/US2006/000822号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0006]近年、石油系の輸送燃料に対する需要が増大している。懸念すべきは、世界の石油生産が需要に追いついていくことができないかもしれない、ということである。加えて、石油系の燃料に対する需要の増大は、温室効果ガスの多量の発生をもたらした。特に、航空産業は米国内の温室効果ガスの10%を超える発生源となっている。燃料に対する需要の増大と温室効果ガスの発生量の増大により、環境に優しい代替燃料源を製造する方法を探究する必要がある。特に、天然の供給原料から環境に優しい燃料組成物と特殊化学物質を製造する方法を探究する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0007]複分解触媒の存在下で天然油供給原料の複分解反応によって天然油供給原料を精製するための方法が開示される。
[0008]一つの態様において、この方法は、複分解生成物が形成されるのに十分な条件の下、複分解触媒の存在下で天然油を含む供給原料を反応させることを含み、ここで複分解生成物はオレフィン類とエステル類を含む。この方法はさらに、エステル類からオレフィン類を分離することを含む。この方法はさらに、アルコールの存在下でエステル類をエステル交換させ、それによりエステル交換生成物を形成させることを含む。
【0011】
[0009]特定の態様において、この方法はさらに、供給原料中の触媒毒を減少させるのに十分な条件の下、供給原料を反応させる前に供給原料を処理することを含む。幾つかの態様において、触媒毒を減少させるために、供給原料は化学反応によって化学的に処理される。他の態様において、供給原料は酸素が存在しない中で100℃を超える温度に加熱され、そして触媒毒が減少するのに十分な時間にわたってその温度に保たれる。
【0012】
[0010]特定の態様において、この方法はさらに、水溶性のホスフィン試薬を用いてオレフィン類とエステル類から複分解触媒を分離することを含む。
[0011]特定の態様において、複分解反応の前に、複分解触媒は溶媒中に溶解される。幾つかの態様において、溶媒はトルエンである。
【0013】
[0012]特定の態様において、この方法はさらに、燃料組成物を形成するためにオレフィン類を水素化することを含む。幾つかの態様において、燃料組成物は、5〜16の間の炭素数分布を有するジェット燃料組成物を含む。他の態様において、燃料組成物は、8〜25の間の炭素数分布を有するディーゼル燃料組成物を含む。幾つかの態様において、燃料組成物は、(a)8〜16の間の炭素数分布と、約38℃〜約66℃の間の引火点と、約210℃の自動発火温度、および約−47℃〜約−40℃の間の凝固点を有する灯油のタイプのジェット燃料、(b)5〜15の間の炭素数分布と、約−23℃〜約0℃の間の引火点と、約250℃の自動発火温度、および約−65℃の凝固点を有するナフサのタイプのジェット燃料、または(c)8〜25の間の炭素数分布と、約15.6℃において約0.82〜約1.08の間の比重と、約40よりも大きいセタン価、および約180℃〜約340℃の間の蒸留範囲を有するディーゼル燃料である。
【0014】
[0013]特定の態様において、この方法はさらに、オレフィン類をオリゴマー化し、それによりポリ−アルファ−オレフィン類、ポリ−内部−オレフィン類、鉱油代替え品、またはバイオディーゼルのうちの少なくとも1種を形成させることを含む。
【0015】
[0014]特定の態様において、この方法はさらに、液−液分離によってエステル交換生成物からグリセリンを分離すること、エステル交換生成物を水で洗浄し、それによってグリセリンをさらに除去すること、そしてエステル交換生成物を乾燥し、それによってエステル交換生成物から水を分離することを含む。幾つかの態様において、この方法はさらに、エステル交換生成物を蒸留し、それによって9−デセン酸エステル、9−ウンデセン酸エステル、9−ドデセン酸エステルのそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の特殊化学物質を分離することを含む。幾つかの追加の態様において、この方法はさらに、少なくとも1種の特殊化学物質を加水分解し、それによって9−デセン酸、9−ウンデセン酸、9−ドデセン酸のそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸を形成させることを含む。特定の態様において、加水分解の工程によってさらに、少なくとも1種の酸のアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩のそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせを生成させる。
【0016】
[0015]特定の態様において、この方法は、エステル交換生成物をそれ自体と反応させ、それによって二量体を形成させることを含む。
[0016]特定の態様において、反応工程は、供給原料とそれ自体との間の自己複分解反応を含む。他の態様において、反応工程は、低分子量オレフィンと供給原料との間の交差複分解反応を含む。幾つかの態様において、低分子量オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテンのそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の低分子量オレフィンを含む。幾つかの態様において、低分子量オレフィンはアルファ−オレフィンである。一つの態様において、低分子量オレフィンは、4〜10の間の炭素数を有する少なくとも1種の枝分れオレフィンを含む。
【0017】
[0017]別の態様において、この方法は、複分解生成物が形成されるのに十分な条件の下、複分解触媒の存在下で天然油を含む供給原料を反応させることを含み、ここで複分解生成物はオレフィン類とエステル類を含む。この方法はさらに、エステル類からオレフィン類を分離することを含む。この方法はさらに、燃料組成物が形成されるのに十分な条件の下でオレフィン類を水素化することを含む。
【0018】
[0018]特定の態様において、燃料組成物は、5〜16の間の炭素数分布を有するジェット燃料組成物を含む。他の態様において、燃料組成物は、8〜25の間の炭素数分布を有するディーゼル燃料組成物を含む。幾つかの態様において、燃料組成物は、(a)8〜16の間の炭素数分布と、約38℃〜約66℃の間の引火点と、約210℃の自動発火温度、および約−47℃〜約−40℃の間の凝固点を有する灯油のタイプのジェット燃料、(b)5〜15の間の炭素数分布と、約−23℃〜約0℃の間の引火点と、約250℃の自動発火温度、および約−65℃の凝固点を有するナフサのタイプのジェット燃料、または(c)8〜25の間の炭素数分布と、約15.6℃において約0.82〜約1.08の間の比重と、約40よりも大きいセタン価、および約180℃〜約340℃の間の蒸留範囲を有するディーゼル燃料である。
【0019】
[0019]特定の態様において、この方法はさらに、エステル類からオレフィン類を分離する前に、複分解生成物から軽い末端流れをフラッシュ分離(瞬間流出分離:flash−separating)することを含み、その軽い末端流れはその大部分が2〜4の間の炭素数を有する炭化水素である。
【0020】
[0020]特定の態様において、この方法はさらに、オレフィン類を水素化する前に、オレフィン類から軽い末端流れを分離することを含み、その軽い末端流れはその大部分が3〜8の間の炭素数を有する炭化水素である。
【0021】
[0021]特定の態様において、この方法はさらに、オレフィン類を水素化する前に、オレフィン類からC18+の重い末端流れを分離することを含み、その重い末端流れはその大部分が少なくとも18の炭素数を有する炭化水素である。
【0022】
[0022]特定の態様において、この方法はさらに、燃料組成物からC18+の重い末端流れを分離することを含み、その重い末端流れはその大部分が少なくとも18の炭素数を有する炭化水素である。
【0023】
[0023]特定の態様において、この方法はさらに、燃料組成物を異性化することを含み、このとき燃料組成物中の直鎖パラフィン化合物の部分はイソパラフィン化合物に異性化される。
【0024】
[0024]特定の態様において、反応工程は、供給原料とそれ自体との間の自己複分解反応を含む。他の態様において、反応工程は、低分子量オレフィンと供給原料との間の交差複分解反応を含む。
【0025】
[0025]別の態様において、この方法は、複分解生成物が形成されるのに十分な条件の下、複分解触媒の存在下で天然油を含む供給原料を反応させることを含み、ここで複分解生成物はオレフィン類とエステル類を含む。この方法はさらに、複分解生成物を水素化し、それにより燃料組成物と少なくとも部分的に飽和したエステル類を生成させることを含む。この方法はさらに、少なくとも部分的に飽和したエステル類から燃料組成物を分離することを含む。この方法はさらに、燃料組成物を異性化することを含んでいてもよく、このとき直鎖パラフィンの部分はイソパラフィンに異性化され、これにより異性化された燃料組成物が形成される。この方法はさらに、燃料組成物または異性化された燃料組成物から中間留分(center−cut)燃料流れを分離することを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】[0026]図1は、天然油から燃料組成物とエステル交換生成物を製造するための処理工程の一つの態様を示す概略図である。
【図2】[0027]図2は、天然油から燃料組成物とエステル交換生成物を製造するための処理工程の第二の態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[0028]本出願は、天然油供給原料の複分解反応によって、天然油供給原料を精製する方法に関する。
[0029]ここで用いられるとき、単数形の語は、文脈において特に明確に規定していない限り、複数の指示物を含む。例えば、「置換基」と言及した場合、それは単一の置換基と二つ以上の置換基、その他同種類のものを包含する。
【0028】
[0030]ここで用いられるとき、「例えば」、「のような」あるいは「含む」という用語は、より一般的な主題をさらに明らかにする例を紹介することを意図している。特に断らない限り、これらの例は、本明細書で説明されている本願を理解するための助けとしてのみ提示されていて、いかなるやり方においても限定を行うことは意図されていない。
【0029】
[0031]ここで用いられるとき、そうではないということが明確に述べられない限り、以下の用語は以下の意味を有する。単数形で記載されたいかなる用語も、その複数形の対応するものを含んでいてもよく、逆もまた同様である、ということが理解されよう。
【0030】
[0032]ここで用いられるとき、「複分解触媒」という用語は、複分解反応を触媒するようなあらゆる触媒または触媒系を含む。
[0033]ここで用いられるとき、「天然油」、「天然供給原料」または「天然油供給原料」という用語は、植物または動物の供給源から得られた油を指すだろう。「天然油」という用語は、特に断らない限り、天然油の誘導体を含む。天然油の例としては、これらに限定はされないが、植物油、藻類油、動物脂肪、タル油、これらの油の誘導体、これらの油の任意の組み合わせ、その他同種類のものがある。植物油の典型的で非限定的な例としては、カノーラ油、菜種油、ココナツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、落花生油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、亜麻仁油、パーム核油、桐油、ジャトロファ油、マスタード油、グンバイナズナ油、ツバキ油、およびヒマシ油がある。動物脂肪の典型的で非限定的な例としては、ラード、獣脂、家禽脂肪、イエローグリース、および魚油がある。タル油は木材パルプ製造の副産物である。
【0031】
[0034]ここで用いられるとき、「天然油の誘導体」という用語は、当分野で公知の方法のいずれかのもの、またはそれらの方法の組み合わせを用いて天然油から誘導された化合物または化合物の混合物を指すだろう。そのような方法としては、鹸化、エステル交換、エステル化、(部分的または完全な)水素化、異性化、酸化、および還元がある。天然油の誘導体の典型的で非限定的な例としては、ガム、リン脂質、ソーダ油滓、酸味のあるソーダ油滓、蒸留物または蒸留スラッジ、脂肪酸類および脂肪酸アルキルエステル(例えば、非限定的な例として2−エチルヘキシルエステル)、天然油のヒドロキシ置換した変種がある。例えば、天然油の誘導体は、天然油のグリセリドから誘導された脂肪酸メチルエステル(FAME)であってもよい。幾つかの態様において、供給原料としてはカノーラ油または大豆油があり、非限定的な例として、精製され、漂白され、そして脱臭された大豆油(すなわち、RBD大豆油)がある。大豆油は典型的には、約95重量%以上(例えば99重量%以上)の脂肪酸類のトリグリセリドを含む。大豆油のポリオールエステル類中の主な脂肪酸類としては飽和脂肪酸類があり、その非限定的な例として、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)およびステアリン酸(オクタデカン酸)があり、また不飽和脂肪酸類があり、その非限定的な例として、オレイン酸(9−オクタデセン酸)、リノール酸(9,12−オクタデカジエン酸)、およびリノレン酸(9,12,15−オクタデカトリエン酸)がある。
【0032】
[0035]ここで用いられるとき、「低分子量オレフィン」という用語は、C〜C14の範囲の不飽和直鎖、枝分れ、または環状炭化水素の任意のもの、またはそれらの組み合わせを指すだろう。低分子量オレフィンには「アルファオレフィン類」または「末端オレフィン類」が含まれ、ここで不飽和炭素−炭素結合は化合物の一端に存在する。低分子量オレフィン類には、ジエン類またはトリエン類も含まれる。C〜Cの範囲の低分子量オレフィン類の例としては、これらに限定はされないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、4−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、2−メチル−3−ペンテン、およびシクロヘキセンがある。他の可能性のある低分子量オレフィン類としては、スチレンおよびビニルシクロヘキサンがある。特定の態様において、オレフィン類の混合物を用いるのが好ましく、この場合、その混合物にはC〜C10の範囲の直鎖および枝分れ低分子量オレフィン類が含まれる。一つの態様において、直鎖および枝分れCオレフィン類の混合物(すなわち、1−ブテン、2−ブテン、および/またはイソブテンの組み合わせ)を用いるのが好ましいかもしれない。他の態様において、C11〜C14の高い範囲を用いてもよい。
【0033】
[0036]ここで用いられるとき、「複分解する」および「複分解すること」という用語は、複分解触媒の存在下で供給原料を反応させ、それにより新たなオレフィン化合物を含む「複分解生成物」を形成させることを指すだろう。複分解とは、交差複分解(別名、共複分解)、自己複分解、開環複分解、開環複分解重合(ROMP)、閉環複分解(RCM)、および非環式ジエン複分解(ADMET)を指すだろう。非限定的な例として、複分解とは、天然の供給原料中に存在する二つのトリグリセリドを複分解触媒の存在下で反応させ(自己複分解)、このとき各々のトリグリセリドは不飽和炭素−炭素二重結合を有し、それによりオレフィン類とエステル類からなる新たな混合物(これにはトリグリセリド二量体が含まれていてもよい)を形成させることを指すだろう。そのようなトリグリセリド二量体は一つよりも多いオレフィンを有していてもよく、従って、高級オリゴマーが形成されてもよい。加えて、複分解とは、少なくとも一つの不飽和炭素−炭素二重結合を有する天然の供給原料中のオレフィン(例えばエチレン)とトリグリセリドを反応させ、それにより新たなオレフィン分子と新たなエステル分子を形成させること(交差複分解)を指すだろう。
【0034】
[0037]ここで用いられるとき、「エステル」および「エステル類」という用語は、R−COO−R’の一般式を有する化合物を指し、ここでRおよびR’は、置換基を有するものを含めた任意のアルキル基またはアリール基を示す。特定の態様において、「エステル」または「エステル類」という用語は、上記の一般式を有する化合物の群を指し、このときそれらの化合物は様々な炭素長を有する。
【0035】
[0038]ここで用いられるとき、「オレフィン」および「オレフィン類」という用語は、少なくとも一つの不飽和炭素−炭素二重結合を有する炭化水素化合物を指すだろう。特定の態様において、「オレフィン」または「オレフィン類」という用語は、様々な炭素長を有する不飽和炭素−炭素二重結合化合物の群を指すだろう。R基またはR’基が不飽和炭素−炭素二重結合を有する場合、オレフィンはエステルであってもよく、またエステルはオレフィンであってもよいことに留意されたい。特に断らない限り、オレフィンはエステル官能性を有していない化合物を指し、一方、エステルはオレフィン官能性を有する化合物を含んでいてもよい。
【0036】
[0039]ここで用いられるとき、「パラフィン」および「パラフィン類」という用語は、炭素−炭素単結合だけを有していて、C2n+2の一般式を有する炭化水素化合物を指し、ここで、特定の態様においてnは約20よりも大きい。
【0037】
[0040]ここで用いられるとき、「異性化」、「異性化する」または「異性化すること」という用語は、直鎖パラフィン類のような直鎖炭化水素化合物の、イソパラフィン類のような枝分れ炭化水素化合物への反応と転換を指すだろう。オレフィンまたは不飽和エステルの異性化とは、分子中の炭素−炭素二重結合の別の位置への転換を示し、あるいはそれは、炭素−炭素二重結合における化合物の配置の変化(例えばシスからトランスへの変化)を示す。非限定的な例として、n−ペンタンは、n−ペンタン、2−メチルブタン、および2,2−ジメチルプロパンの混合物へ異性化されるだろう。燃料組成物の全体的な特性を改良するために、直鎖パラフィン類の異性化を用いることができる。さらに、異性化とは、枝分れパラフィン類の、もっと枝分れしたパラフィン類へのさらなる転換を指すかもしれない。
【0038】
[0041]ここで用いられるとき、「収量(yield)」という用語は、複分解反応と水素化反応から生じる燃料の総重量を指すだろう。それはまた、分離工程および/または異性化反応の後の燃料の総重量を指すかもしれない。それは収率%という言葉で定義してもよく、この場合、生じる燃料の総重量を、天然油供給原料の総重量(幾つかの態様においては、低分子量オレフィンを組み合わせたものの総重量)で割る。
【0039】
[0042]ここで用いられるとき、「燃料」および「燃料組成物」という用語は、要求される仕様を満たしている物質、あるいは燃料組成物を配合するのに有用ではあるが、しかしそれ自体は燃料について要求される仕様の全ては満たしていない配合成分を指す。
【0040】
[0043]ここで用いられるとき、「ジェット燃料」または「航空燃料」という用語は、灯油のタイプまたはナフサのタイプの燃料留分または軍事用グレードのジェット燃料組成物を指すだろう。「灯油のタイプ」のジェット燃料(ジェットAおよびジェットA−1を含めて)は、約8〜約16の間の炭素数分布を有する。ジェットAおよびジェットA−1は典型的に、少なくとも約38℃の引火点と、約210℃の自動発火温度、ジェットAについて約−40℃以下でジェットA−1について約−47℃の凝固点、15℃において約0.8g/ccの密度、および約42.8〜43.2MJ/kgのエネルギー密度を有する。「ナフサのタイプ」または「ワイドカット(広い留分:wide−cut)」のジェット燃料(ジェットBを含めて)は、約5〜約15の間の炭素数分布を有する。ジェットBは典型的に、約0℃未満の引火点と、約250℃の自動発火温度、約−51℃の凝固点、約0.78g/ccの密度、および約42.8〜43.5MJ/kgのエネルギー密度を有する。「軍事用グレード」のジェット燃料は、「ジェット推進」すなわち「JP」番号系統のもの(JP−1、JP−2、JP−3、JP−4、JP−5、JP−6、JP−7、JP−8、その他)を指す。軍事用グレードのジェット燃料は、超音速飛行の間に受ける熱と応力に対処するために、ジェットA、ジェットA−1またはジェットBよりも高い引火点を有するように代替の添加剤または追加の添加剤を含んでいてもよい。
【0041】
[0044]ここで用いられるとき、「ディーゼル燃料」という用語は、約8〜約25の間の炭素数分布を含めて、以下の特性を有する炭化水素組成物を指すだろう。また、ディーゼル燃料は典型的に、60°Fにおいて1の比重を有する水に基づいて、15.6℃(60°F)において約0.82〜1.08の比重を有する。ディーゼル燃料は典型的に、約180〜340℃(356〜644°F)の間の蒸留範囲を有する。加えて、ディーゼル燃料は約40の最小セタン価を有する。
【0042】
[0045]ここで用いられるとき、「炭素数分布」という用語は、組成物中に存在する化合物の範囲を指し、このとき各々の化合物は存在する炭素原子の数によって定義される。非限定的な例として、ナフサのタイプのジェット燃料は典型的に、炭化水素化合物の大部分がそれぞれ5〜15の間の炭素原子を有するような炭化水素化合物の分布を有する。灯油のタイプのジェット燃料は典型的に、炭化水素化合物の大部分がそれぞれ8〜16の間の炭素原子を有するような炭化水素化合物の分布を有する。ディーゼル燃料は典型的に、炭化水素化合物の大部分がそれぞれ8〜25の間の炭素原子を有するような炭化水素化合物の分布を有する。
【0043】
[0046]ここで用いられるとき、「エネルギー密度」という用語は、所定の系の中に蓄えられたエネルギーの量であって、単位質量(MJ/kg)または単位容積(MJ/L)当りの量を指し、ここでMJは100万ジュールを指す。非限定的な例として、灯油のタイプまたはナフサのタイプのジェット燃料のエネルギー密度は典型的に、約40MJ/kgよりも大きい。
【0044】
[0047]多くの有用性の高い組成物を、複分解触媒の存在下で、低分子量オレフィンとの天然油供給原料の自己複分解反応または天然油供給原料の交差複分解反応による目標物とすることができる。そのような有用性の高い組成物は燃料組成物を含むであろうが、その非限定的な例としては、ジェット燃料、灯油燃料、またはディーゼル燃料がある。さらに、エステル交換生成物を目標物としてもよく、その非限定的な例としては、脂肪酸メチルエステル類;バイオディーゼル;9−デセン酸(9DA)エステル類、9−ウンデセン酸(9UDA)エステル類、および/または9−ドデセン酸(9DDA)エステル類;9DA、9UDA、および/または9DDA;9DA、9UDA、および/または9DDAのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩;エステル交換生成物の二量体;およびこれらの混合物がある。
【0045】
[0048]特定の態様において、複分解反応の前に、後続の複分解反応のために天然油をより適当なものにするために、天然油供給原料を処理してもよい。特定の態様において、天然油は好ましくは、大豆油のような植物油または植物油の誘導体である。
【0046】
[0049]一つの態様において、天然油を処理することは、複分解触媒の活性を低下させるかもしれない過酸化物のような触媒毒を除去することを含む。触媒毒を減少させるための天然油供給原料の処理方法の非限定的な例としては、PCT/US/2008/09604号、PCT/US/2008/09635号、および米国特許出願12/672651号および12/672652号に記載されたものがあり、それらの全体をここに参照文献として取り込む。特定の態様において、天然油供給原料は、酸素が存在しない中で供給原料を100℃を超える温度に加熱することによって熱処理され、そして供給原料中で触媒毒が減少するのに十分な時間にわたってその温度に保たれる。他の態様において、その温度は約100℃〜約300℃の間、約120℃〜約250℃の間、約150℃〜約210℃の間、あるいは約190℃〜約200℃の間である。一つの態様において、酸素が存在しないことは天然油供給原料に窒素を散布することによって達成され、このとき窒素ガスは供給原料処理容器の中に約10気圧(150psig)の圧力で注入される。
【0047】
[0050]特定の態様において、天然油供給原料は、触媒毒の化学反応によって供給原料中の触媒毒を減少させるのに十分な条件の下で化学的に処理される。特定の態様において、供給原料は還元剤または陽イオン無機塩基組成物を用いて処理される。還元剤の非限定的な例としては、硫酸水素塩、ホウ水素化物、ホスフィン、チオ硫酸塩のそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせがある。
【0048】
[0051]特定の態様において、天然油供給原料は、触媒毒を除去するために吸着剤を用いて処理される。一つの態様において、供給原料は熱処理法と吸着法の組み合わせを用いて処理される。別の態様において、供給原料は化学的処理法と吸着法の組み合わせを用いて処理される。別の態様において、そのような処理は、天然油供給原料の複分解触媒との反応性を改変させるための部分的水素化処理を含む。供給原料の処理のさらなる非限定的な例については、様々な複分解触媒について説明する際に後述される。
【0049】
[0052]さらに、特定の態様において、複分解反応の前に低分子量オレフィンも処理されてもよい。天然油の処理と同様に、触媒活性に影響を及ぼすか、あるいは活性を低下させるかもしれない毒を除去するために、低分子量オレフィンを処理してもよい。
【0050】
[0053]図1に示されるように、天然油供給原料および/または低分子量オレフィンのこの選択的な処理の後、天然油12は、複分解触媒の存在下で複分解反応器20の中で、それ自体と反応するか、あるいは低分子量オレフィン14と一緒にされる。複分解触媒および複分解反応条件については、後にもっと詳しく説明する。特定の態様において、複分解触媒の存在下で、天然油12はそれ自体と自己複分解反応を受ける。他の態様において、複分解触媒の存在下で、天然油12は低分子量オレフィン14と交差複分解反応を受ける。特定の態様において、天然油12は、並列の複分解反応器の中で自己複分解反応と交差複分解反応の両者を受ける。自己複分解反応および/または交差複分解反応によって複分解生成物22が形成され、このとき複分解生成物22はオレフィン類32とエステル類34を含む。
【0051】
[0054]特定の態様において、低分子量オレフィン14はC〜Cの範囲にある。非限定的な例として、一つの態様において、低分子量オレフィン14は以下のもののうちの少なくとも一つを含んでいてもよい:エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、4−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、2−メチル−3−ペンテン、およびシクロヘキセン。別の態様において、低分子量オレフィン14は、スチレンおよびビニルシクロヘキサンのうちの少なくとも一つを含む。別の態様において、低分子量オレフィン14は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、およびイソブテンのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。別の態様において、低分子量オレフィン14は、C〜C10の範囲にある少なくとも1種のアルファオレフィンまたは末端オレフィンを含む。
【0052】
[0055]別の態様において、低分子量オレフィン14は、C〜C10の範囲にある少なくとも1種の枝分れした低分子量オレフィンを含む。枝分れした低分子量オレフィン類の非限定的な例としては、イソブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−3−ペンテン、および2,2−ジメチル−3−ペンテンがある。複分解反応においてこれらの枝分れした低分子量オレフィン類を用いることによって、複分解生成物は枝分れオレフィン類を含むことになり、次いでそれはイソパラフィン類に水素化されうる。特定の態様において、枝分れ低分子量オレフィン類は、ジェット燃料、灯油燃料、またはディーゼル燃料のような燃料組成物のための望ましい性能特性を達成するのを促進するであろう。
【0053】
[0056]すでに言及したように、所望の複分解生成物の分布を達成するために、反応において様々な直鎖または枝分れ低分子量オレフィン類の混合物を用いることができる。一つの態様において、低分子量オレフィンとしてブテン類の混合物(1−ブテン、2−ブテン、および選択的にイソブテン)を用いてもよく、それにより、一つの特定のブテンの精製された供給源の代わりに、低コストで商業的に利用できる供給原料が提供される。そのような低コストの混合ブテン供給原料は典型的に、n−ブタンおよび/またはイソブタンで希釈される。
【0054】
[0057]特定の態様において、天然油12(幾つかの態様においては低分子量オレフィン14)に加えて、下流の分離装置からの再循環流れが複分解反応器20に導入されてもよい。例えば、幾つかの態様において、頂部分離装置からのC〜C再循環オレフィン流れまたはC〜C底部流れを複分解反応器に戻してもよい。一つの態様において、図1に示すように、オレフィン分離装置40からの軽量のオレフィン流れ44を複分解反応器20に戻してもよい。別の態様において、C〜C底部流れと軽量のオレフィン流れ44が一緒にされて、そして複分解反応器20に戻される。別の態様において、オレフィン分離装置40からのC15+底部流れ46が複分解反応器20に戻される。別の態様において、上述の再循環流れの全てが複分解反応器20に戻される。
【0055】
[0058]複分解反応器20における複分解反応によって複分解生成物22が生成する。一つの態様において、複分解生成物22は、CまたはC〜C化合物を目的とする温度および圧力の条件の下で操作されるフラッシュ(瞬間流出)容器に入り、そこで流出され、そして頂部から取り出される。CまたはC〜Cの軽い末端部分は、その大部分が2または3の炭素数を有する炭化水素化合物である。特定の態様において、そのCまたはC〜Cの軽い末端部分は、次いで、頂部分離装置に送られ、ここでCまたはC〜C化合物は、C〜C化合物とともに流出された重い化合物から頂部でさらに分離される。これらの重い化合物は典型的に、CまたはC〜C化合物とともに頂部へ運ばれるC〜C化合物である。頂部分離装置において分離された後、頂部のCまたはC〜C流れは、次に燃料供給源として用いてもよい。これらの炭化水素は、燃料組成物の範囲を外れるそれら自体の有用性を有し、他の有用性のある組成物および用途のためにこの段階で用いられるか、または分離されてもよい。特定の態様において、大部分がC〜C化合物を含む頂部分離装置からの底部流れは、再循環流れとして複分解反応器に戻される。フラッシュ容器において、頂部へ流出されない複分解生成物22は、蒸留塔のような分離装置30において分離するために下流へ送られる。
【0056】
[0059]特定の態様においては、分離装置30の前に、複分解触媒からの複分解生成物22の分離を容易にするために、複分解生成物22を吸着床に導入してもよい。一つの態様において、吸着剤は粘土床である。粘土床は複分解触媒を吸着し、ろ過工程の後、複分解生成物22は、さらなる処理のために分離装置30へ送ることができる。別の態様において、吸着剤は、トリスヒドロキシメチルホスフィン(THMP)のような水溶性ホスフィン試薬である。有機相から水性相をデカントすることによる公知の液−液抽出機構によって、水溶性ホスフィンを用いて触媒を分離してもよい。他の態様において、複分解生成物22を反応物質と接触させ、それによって触媒を失活または抽出してもよい。
【0057】
[0060]特定の態様においては、分離装置30において、複分解生成物22は少なくとも二つの生成物流れに分離される。一つの態様において、複分解生成物22は分離装置30すなわち蒸留塔へ送られ、そこでエステル類34からオレフィン類32が分離される。別の態様において、Cとシクロヘキサジエンを含む副生物流れを分離装置30からの支流において取り出してもよい。特定の態様において、分離されたオレフィン類32は24以下の炭素数を有する炭化水素を含んでいてもよい。特定の態様において、エステル類34は複分解したグリセリド類を含んでいてもよい。言い換えると、好ましくは、軽い末端オレフィン類32はオレフィン組成物へと処理するために頂部で分離または蒸留され、一方、エステル類34(これは大部分がカルボン酸またはエステル官能性を有する化合物である)は底部流れとして取り出される。分離の特質に基づいて、幾分かのエステル化合物を頂部オレフィン流れ32の中へ送ることができ、また、幾分かの重いオレフィン炭化水素をエステルの流れ34の中へ送ることもできる。
【0058】
[0061]一つの態様において、オレフィン類32を回収し、そしていくらでもある公知の用途に売り渡してもよい。他の態様において、オレフィン類32は、オレフィン分離装置40および/または水素化装置50(以下で説明するように、ここではオレフィン結合は水素ガス48を用いて飽和される)においてさらに処理される。他の態様において、重い末端グリセリド類と遊離脂肪酸類を含むエステル類34は、様々な生成物にさらに加工処理するために、底部生成物として分離または蒸留される。特定の態様において、さらなる処理は、以下の非限定的な例のものの製造を目標としてもよい:脂肪酸メチルエステル類;バイオディーゼル;9DAエステル類、9UDAエステル類、および/または9DDAエステル類;9DA、9UDA、および/または9DDA;9DA、9UDA、および/または9DDAのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩;エステル交換生成物の二酸、および/またはジエステル類;およびこれらの混合物。特定の態様において、さらなる処理は、C15〜C18の脂肪酸類および/またはエステル類の製造を目標としてもよい。他の態様において、さらなる処理は、二酸および/またはジエステル類の製造を目標としてもよい。さらに他の態様において、さらなる処理は、ステアリン酸および/またはリノレン酸の分子量よりも大きな分子量を有する化合物の製造を目標としてもよい。
【0059】
[0062]図1に示すように、分離装置30からの頂部オレフィン類32に関して、オレフィン類32は、この流れの様々な成分を分離するために、オレフィン分離装置40においてさらに分離または蒸留されてもよい。一つの態様において、主にC〜C化合物からなる軽い末端オレフィン類44は蒸留されて、オレフィン分離装置40からの頂部流れとしてもよい。特定の態様において、軽い末端オレフィン類44は、その大部分がC〜C炭化水素化合物からなる。他の態様において、大きな炭素数を有する重いオレフィン類は、特定の燃料組成物を目標物とするのを助けるために、頂部で分離されて、軽い末端オレフィン流れ44としてもよい。軽い末端オレフィン類44は複分解反応器20へ再循環され、さらなる処理および販売、あるいはこれら二つの組み合わせを行うために、システムからパージされてもよい。一つの態様において、軽い末端オレフィン類44は、その一部がシステムからパージされ、そして一部が複分解反応器20へ再循環されてもよい。オレフィン分離装置40における他の流れに関しては、重いC16+、C18+、C20+、C22+、またはC24+化合物の流れは、オレフィン底部流れ46として分離されてもよい。このオレフィン底部流れ46は、さらなる処理を行うために、パージされるか、または複分解反応器20へ再循環されるか、あるいはそれら二つの組み合わせが行われてもよい。別の態様において、中間留分オレフィン流れ42が、さらなる処理のために、オレフィン蒸留装置から分離されてもよい。中間留分オレフィン類42は、特定の燃料組成物のために選択された炭素数の範囲を目標とするように設定されてもよい。非限定的な例として、ナフサのタイプのジェット燃料へのさらなる加工処理を行うために、C〜C15の分布を目標としてもよい。あるいは、灯油のタイプのジェット燃料へのさらなる加工処理を行うために、C〜C16の分布を目標としてもよい。別の態様において、ディーゼル燃料へのさらなる加工処理を行うために、C〜C25の分布を目標としてもよい。
【0060】
[0063]特定の態様において、オレフィン類32をオリゴマー化し、それによりポリ−アルファ−オレフィン類(PAOs)またはポリ−内部−オレフィン類(PIOs)、鉱油代替え品、および/またはバイオディーゼル燃料を形成させてもよい。オリゴマー化反応は蒸留装置30の後に、あるいは頂部オレフィン分離装置40の後に行われるだろう。特定の態様において、オリゴマー化反応からの副生物が、さらなる処理を行うために、複分解反応器20へ再循環されるだろう。
【0061】
[0064]すでに述べたように、一つの態様において、分離装置30からのオレフィン類32を水素化装置50へ直接送ってもよい。別の態様において、頂部オレフィン分離装置40からの中間留分オレフィン類42を水素化装置50へ送ってもよい。オレフィン類32または中間留分オレフィン類42のような二重結合を有する化合物を水素化するための、当分野において公知の任意の方法に従って、水素化が行われるだろう。特定の態様において、水素化装置50において、水素化触媒の存在下で水素ガス48がオレフィン類32または中間留分オレフィン類42と反応し、それにより水素化生成物52が生成する。
【0062】
[0065]幾つかの態様において、ニッケル、銅、パラジウム、白金、モリブデン、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、またはイリジウムのそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせを含む水素化触媒の存在下でオレフィン類が水素化される。有用な触媒は不均質または均質であってよい。幾つかの態様において、触媒は、担持されたニッケル触媒またはスポンジニッケルのタイプの触媒である。
【0063】
[0066]幾つかの態様において、水素化触媒は、水素を用いて活性状態に化学的に還元されたニッケル(すなわち、還元ニッケル)であって、支持体上に付与されたものを含む。支持体には、多孔質のシリカ(例えば、珪藻土(kieselguhr)、滴中土、多孔性珪藻土(diatomaceous)、または含石英土)またはアルミナが含まれていてもよい。触媒は、ニッケルのグラム当りの高いニッケル表面積によって特徴づけられる。
【0064】
[0067]担持されたニッケル水素化触媒の市販品の例としては、「NYSOFACT」、「NYSOSEL」および「NI5248D」(BASF Catalysts LLC(Iselin、ニュージャージー州)から)の商品名で入手できるものがある。その他の担持されたニッケル水素化触媒としては、「PRICAT 9910」、「PRICAT 9920」、「PRICAT 9908」、「PRICAT 9936」(Johnson Matthey Catalysts(Ward Hill、マサチューセッツ州)から)の商品名で市販されているものがある。
【0065】
[0068]担持されたニッケル触媒は、米国特許3351566号、米国特許6846772号、欧州特許0168091号、および欧州特許0167201号に記載されたタイプのものであってもよい。これらの記載は、それらの全体がここに参照文献として取り込まれる。水素化はバッチ処理または連続処理で行われ、またそれは部分水素化または完全水素化であろう。特定の態様において、その温度は約50℃〜約350℃、約100℃〜約300℃、約150℃〜約250℃、または約100℃〜約150℃の範囲である。望ましい温度は、例えば水素ガスの圧力に応じて変わるだろう。典型的には、より高いガス圧のときは、より低い温度が必要とされるだろう。水素ガスは反応容器の中へ注入され、それによりHガスの所望の圧力が達成される。特定の態様において、Hガスの圧力は約15psig(1気圧)〜約3000psig(204.1気圧)、約15psig(1気圧)〜約90psig(6.1気圧)、または約100psig(6.8気圧)〜約500psig(34気圧)の範囲である。ガスの圧力が増大するにつれて、より特殊化された高圧処理装置が必要となるだろう。特定の態様において、反応条件は「穏やかな」ものであって、この場合、温度は約50℃〜約100℃の間の程度であり、そしてHガスの圧力は約100psig未満である。他の態様において、温度は約100℃〜約150℃の間であり、そして圧力は約100psig(6.8気圧)〜約500psig(34気圧)の間である。所望の程度の水素化が達成されたときに、反応物質は望ましいろ過温度まで冷却される。
【0066】
[0069]水素化触媒の量は典型的には多くの要因を考慮して選択され、そのような要因とは例えば、用いられる水素化触媒のタイプ、用いられる水素化触媒の量、水素化するべき物質における不飽和の程度、水素化の所望の速度、水素化の所望の程度(例えば、ヨウ素価(IV)によって測定されるもの)、試薬の純度、およびHガスの圧力がある。幾つかの態様において、水素化触媒は約10重量%以下、例えば約5重量%以下または約1重量%以下の量で用いられる。
【0067】
[0070]水素化が行われる間に、オレフィン類における炭素−炭素二重結合を有する化合物は、水素ガス48によって部分的あるいは完全に飽和される。一つの態様において、生じる水素化生成物52は、ナフサのタイプおよび灯油のタイプのジェット燃料組成物について、およそC10〜C12炭化水素を中心とする分布を有する炭化水素を含む。別の態様において、その分布は、ディーゼル燃料組成物についてはおよそC16〜C18を中心とする。
【0068】
[0071]特定の態様において、水素化が行われた後、水素化触媒は当分野で知られた方法(例えば、ろ過)を用いて水素化生成物52から除去されてもよい。幾つかの態様において、水素化触媒は、例えばSparkler Filters,Inc.,(Conroe、テキサス州)から市販されているもののような、プレート−フレームフィルターを用いて除去される。幾つかの態様において、ろ過は圧力または真空を利用して行われる。ろ過性能を高めるために、ろ過助剤を用いてもよい。ろ過助剤を生成物に直接添加してもよく、あるいはそれをフィルターに塗布してもよい。ろ過助剤の典型的で非限定的な例としては、珪藻土、シリカ、アルミナ、および炭素がある。典型的には、ろ過助剤は約10重量%以下、例えば約5重量%以下または約1重量%以下の量で用いられる。用いられた水素化触媒を除去するために、その他のろ過方法とろ過助剤を用いてもよい。他の態様において、水素化触媒は、生成物の遠心分離とそれに続くデカンテーションを用いて除去される。
【0069】
[0072]特定の態様において、水素化装置50において生成した水素化生成物52の品質に基づいて、特に引火点、凝固点、エネルギー密度、セタン価、または終点蒸留温度といったパラメーターのような所望の燃料特性を目標とするのを助けるために、オレフィン水素化生成物52を異性化するのが好ましいかもしれない。異性化反応は当分野において周知であり、例えば米国特許3150205号、4210771号、5095169号、および6214764号に記載されていて、これらの記載は、それらの全体がここに参照文献として取り込まれる。一つの態様において、この段階での異性化反応により、残っているC15+化合物の幾分かが分留されるかもしれず、これは、所望の炭素数の範囲内(例えばジェット燃料組成物のための5〜16のような)の化合物を有する燃料組成物を製造するためのさらなる助けとなるだろう。
【0070】
[0073]特定の態様において、異性化は水素化装置50における水素化工程と同時に起こるかもしれず、それによって所望の燃料生成物が目標に定められる。他の態様において、異性化工程は水素化工程の前に起こるかもしれない(すなわち、オレフィン類32または中間留分オレフィン類42が、水素化装置50の前に異性化されるかもしれない)。さらに他の態様において、複分解反応において用いられる低分子量オレフィン(類)14の選択に基づく範囲において、異性化工程を回避するか、あるいは減少させることができるかもしれない。
【0071】
[0074]特定の態様において、水素化生成物52は、約15〜25重量%のC、約5重量%未満のC、約20〜40重量%のC、約20〜40重量%のC10、約5重量%未満のC11、約15〜25重量%のC12、約5重量%未満のC13、約5重量%未満のC14、約5重量%未満のC15、約1重量%未満のC16、約1重量%未満のC17、および約1重量%未満のC18+を含む。特定の態様において、水素化生成物52は、少なくとも約40、41、42、43または44MJ/kg(ASTM D3338で測定して)の燃焼熱を含んでいる。特定の態様において、水素化生成物52は、水素化生成物のkg当り約1mg未満(ASTM D5453で測定して)の硫黄を含んでいる。他の態様において、水素化生成物52は、約0.70〜0.75(ASTM D4052で測定して)の密度を有している。他の態様において、水素化生成物は、約220〜240℃(ASTM D86で測定して)の最終沸点を有している。
【0072】
[0075]水素化装置50から生成した水素化生成物52は燃料組成物として用いられてもよく、その非限定的な例としては、ジェット燃料、灯油燃料、またはディーゼル燃料がある。特定の態様において、水素化生成物52は、水素化反応、異性化反応、および/または複分解反応からの副生物を含んでいてもよい。図1に示すように、水素化生成物52は燃料組成物分離装置60においてさらに処理されてもよく、そこで水素ガス、水、C〜C炭化水素、またはC15+炭化水素のような、水素化生成物52からの全ての残りの副生物が除去され、それによって目標とする燃料組成物が生成する。一つの態様において、水素化生成物52は、所望の燃料としてのC〜C15生成物64、および軽い末端C〜C留分62および/またはC15+の重い末端留分66に分離されてもよい。これらの留分を分離するために、蒸留が用いられてもよい。あるいは、他の態様において、例えばナフサのタイプまたは灯油のタイプのジェット燃料組成物について、水素化生成物52を約−40℃、−47℃または−65℃まで冷却することによって所望の燃料生成物64から重い末端留分66を分離することができ、次いで、ろ過、デカンテーション、または遠心分離のような当分野で公知の方法によって固体の重い末端留分66を除去する。
【0073】
[0076]蒸留装置30からのエステル類34に関して、特定の態様において、図1に示すように、エステル類34はエステル生成物流れ36として完全に取り出され、そしてさらに処理されるか、あるいはそれ自体の価値に応じて販売されてもよい。非限定的な例として、エステル類34は、潤滑剤として用いることのできる様々なトリグリセリド類を含んでいるかもしれない。オレフィン類とエステル類の間の分離の質に基づいて、エステル類34は、トリグリセリド類とともに運ばれる幾分かの重いオレフィン成分を含んでいるかもしれない。他の態様において、エステル類34は、生物精製(biorefinery)処理装置または当分野で公知の別の化学的処理装置または燃料処理装置においてさらに処理されてもよく、それにより、例えばトリグリセリド類よりも高い価値を有するバイオディーゼルまたは特殊化学物質のような様々な生成物が製造される。あるいは、特定の態様において、エステル類34はシステムから部分的に取り出されて販売され、そして残りの部分は生物精製処理装置または当分野で公知の別の化学的処理装置または燃料処理装置においてさらに処理されてもよい。
【0074】
[0077]特定の態様において、エステルの流れ34はエステル交換装置70へ送られる。エステル交換装置70の中で、エステル類34はエステル交換触媒の存在下で少なくとも1種のアルコール38と反応する。特定の態様において、アルコールはメタノールおよび/またはエタノールを含む。一つの態様において、エステル交換反応は約60〜70℃および約1気圧において行われる。特定の態様において、エステル交換触媒は均質なナトリウムメトキシド触媒である。様々な量の触媒を反応において用いてもよく、そして、特定の態様において、エステル交換触媒はエステル類34の約0.5〜1.0重量%の量で存在する。
【0075】
[0078]エステル交換反応によって、飽和および/または不飽和の脂肪酸メチルエステル類(FAME)、グリセリン、メタノール、および/または遊離脂肪酸類を含むエステル交換生成物72が生成するだろう。特定の態様において、エステル交換生成物72またはその一部分は、バイオディーゼルのための供給源を含むかもしれない。特定の態様において、エステル交換生成物72は、9DAエステル類、9UDAエステル類、および/または9DDAエステル類を含む。9DAエステル類、9UDAエステル類および9DDAエステル類の非限定的な例としては、それぞれメチル9−デセノエート(9−DAME)、メチル9−ウンデセノエート(9−UDAME)、およびメチル9−ドデセノエート(9−DDAME)がある。非限定的な例として、エステル交換反応においては、複分解グリセリドの9DA成分がグリセロール主鎖から除去され、それにより9DAエステルが形成される。
【0076】
[0079]別の態様において、グリセリドの流れを伴う反応において、グリセリンアルコールを用いてもよい。この反応により、モノグリセリド類および/またはジグリセリド類が生成するだろう。
【0077】
[0080]特定の態様において、エステル交換装置70からのエステル交換生成物72を液−液分離装置へ送ることができ、そこでエステル交換生成物72(すなわち、FAME、遊離脂肪酸類、および/またはアルコール類)がグリセリンから分離される。さらに、特定の態様において、グリセリン副生物流れを第二の分離装置においてさらに処理してもよく、そこでグリセリンが除去され、そして残りの全てのアルコール類が、さらなる処理を行うためにエステル交換装置70へ再循環される。
【0078】
[0081]一つの態様において、エステル交換生成物72は水洗装置においてさらに処理される。この装置において、エステル交換生成物は水で洗浄されるときに液−液抽出を受ける。過剰のアルコール、水、およびグリセリンが、エステル交換生成物72から除去される。別の態様において、水洗工程の後に乾燥装置が用いられ、ここでエステル類の所望の混合物(すなわち、特殊化学物質)から過剰の水がさらに除去される。そのような特殊化学物質の非限定的な例としては、9DA、9UDA、および/または9DDA、これらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のそれぞれ、またはこれらの組合せがある。
【0079】
[0082]一つの態様において、特殊化学物質(例えば9DA)をオリゴマー化反応においてさらに処理することによってラクトンを形成してもよく、それは界面活性剤の先駆物質として用いることができる。
【0080】
[0083]特定の態様において、図1に示すように、エステル交換装置70からのエステル交換生成物72または水洗装置あるいは乾燥装置からの特殊化学物質は、様々な個々の化合物または化合物の群をさらに分離するために、エステル蒸留塔80へ送られる。この分離は、これらに限定するものではないが、9DAエステル類、9UDAエステル類、および/または9DDAエステル類の分離を含むだろう。一つの態様において、9DAエステル82は蒸留されるか、あるいはエステル交換生成物または特殊化学物質の残りの混合物84から個々に分離されるだろう。特定の処理条件において、9DAエステル82はエステル交換生成物または特殊化学物質の流れの中の最も軽い成分であるはずであり、エステル蒸留塔80の頂部で出てくる。別の態様において、エステル交換生成物または特殊化学物質の残りの混合物84(すなわち、重い成分)は、塔の底部末端から分離されるだろう。特定の態様において、この底部流れ84はバイオディーゼルとして販売される可能性がある。
【0081】
[0084]9DAエステル類、9UDAエステル類、および/または9DDAエステル類は、エステル蒸留塔における蒸留工程の後に、さらに処理されてもよい。一つの態様において、公知の操作条件の下で、次に9DAエステル、9UDAエステル、および/または9DDAエステルは、水を用いて加水分解反応を受けてもよく、それにより9DA、9UDA、および/または9DDA、これらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせが形成される。
【0082】
[0085]特定の態様において、エステル交換生成物72からの脂肪酸メチルエステル類が互いに反応して、それにより二量体のような他の特殊化学物質が形成されてもよい。
【0083】
[0086]図2は、天然油を燃料組成物および特殊化学物質へと処理するための別の態様を示す。先に説明したように、図2における天然油供給原料および/または低分子量オレフィンは複分解反応の前に前処理工程を受けてもよい。図2において、天然油供給原料112は、複分解触媒の存在下で複分解反応器120の中で、それ自体と反応するか、あるいは低分子量オレフィン114と一緒にされる。特定の態様において、複分解触媒の存在下で、天然油112はそれ自体と自己複分解反応を受ける。他の態様において、複分解触媒の存在下で、天然油112は低分子量オレフィン114と交差複分解反応を受ける。特定の態様において、天然油112は、並列の複分解反応器の中で自己複分解反応と交差複分解反応の両者を受ける。自己複分解反応および/または交差複分解反応によって複分解生成物122が形成され、このとき複分解生成物122はオレフィン類132とエステル類134を含む。
【0084】
[0087]特定の態様において、低分子量オレフィン114はC〜Cの範囲にある。非限定的な例として、一つの態様において、低分子量オレフィン114は以下のもののうちの少なくとも一つを含んでいてもよい:エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、4−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、2−メチル−3−ペンテン、およびシクロヘキセン。別の態様において、低分子量オレフィン114は、スチレンおよびビニルシクロヘキサンのうちの少なくとも一つを含む。別の態様において、低分子量オレフィン114は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、およびイソブテンのうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。別の態様において、低分子量オレフィン114は、C〜C10の範囲にある少なくとも1種のアルファオレフィンまたは末端オレフィンを含む。
【0085】
[0088]別の態様において、低分子量オレフィン114は、C〜C10の範囲にある少なくとも1種の枝分れした低分子量オレフィンを含む。枝分れした低分子量オレフィン類の非限定的な例としては、イソブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−3−ペンテン、および2,2−ジメチル−3−ペンテンがある。特定の態様において、枝分れ低分子量オレフィン類は、ジェット燃料、灯油燃料、またはディーゼル燃料のような燃料組成物のための望ましい性能特性を達成するのを促進するであろう。
【0086】
[0089]すでに言及したように、所望の複分解生成物の分布を達成するために、反応において様々な直鎖または枝分れ低分子量オレフィン類の混合物を用いることができる。一つの態様において、低分子量オレフィン114としてブテン類の混合物(1−ブテン、2−ブテン、およびイソブテン)を用いてもよい。
【0087】
[0090]特定の態様において、天然油112(幾つかの態様においては低分子量オレフィン114)に加えて、下流の分離装置からの再循環流れが複分解反応器120に導入されてもよく、それにより目標とする燃料組成物および/または目標とするエステル交換生成物の収量が向上する。
【0088】
[0091]特定の態様においては、複分解装置120の後、そして水素化装置125の前に、複分解触媒からの複分解生成物122の分離を容易にするために、複分解生成物122を吸着床に導入してもよい。一つの態様において、吸着剤は粘土である。粘土は複分解触媒を吸着し、ろ過工程の後、複分解生成物122は、さらなる処理のために水素化装置125へ送ることができる。別の態様において、吸着剤は、トリスヒドロキシメチルホスフィン(THMP)のような水溶性ホスフィン試薬である。有機相から水性相をデカントすることによる公知の液−液抽出機構によって、水溶性ホスフィンを用いて反応混合物から触媒を分離してもよい。他の態様において、触媒を失活または抽出するための反応物質の添加を用いてもよい。
【0089】
[0092]図2に示すように、複分解生成物122は水素化装置125へ送られ、ここでオレフィン類とエステル類の中の炭素−炭素二重結合は水素ガス124を用いて部分的あるいは完全に飽和される。先に説明したように、複分解生成物122中に存在するオレフィン類とエステル類のような二重結合を有する化合物を水素化するための、当分野において公知の任意の方法に従って、水素化が行われるだろう。特定の態様においては、水素化装置125において、水素ガス124は水素化触媒の存在下で複分解生成物122と反応し、それによって、一部は完全に水素化されたパラフィン類またはオレフィン類および部分的あるいは完全に水素化されたエステル類を含む水素化生成物126が生成する。
【0090】
[0093]典型的な水素化触媒については、図1における態様に関してすでに説明した。反応条件についても説明した。特定の態様において、その温度は約50℃〜約350℃、約100℃〜約300℃、約150℃〜約250℃、または約50℃〜約150℃の範囲である。望ましい温度は、例えば水素ガスの圧力に応じて変わるだろう。典型的には、より高いガス圧のときは、より低い反応温度の使用が可能であろう。水素ガスは反応容器の中へ注入され、それによりHガスの所望の圧力が達成される。特定の態様において、Hガスの圧力は約15psig(1気圧)〜約3000psig(204.1気圧)、または約15psig(1気圧)〜約500psig(34気圧)の範囲である。特定の態様において、反応条件は「穏やかな」ものであって、この場合、温度は約50℃〜約150℃の間の程度であり、そしてHガスの圧力は約400psig未満である。所望の程度の水素化が達成されたときに、反応物質は望ましいろ過温度まで冷却される。
【0091】
[0094]水素化が行われる間に、炭素−炭素二重結合は水素ガス124によって部分的あるいは完全に飽和される。一つの態様において、複分解生成物122中のオレフィン類が水素と反応して、パラフィン類だけを含むか、あるいは大部分がパラフィン類である燃料組成物が形成される。加えて、複分解生成物からのエステル類が水素化装置125において完全に、あるいはほぼ完全に飽和される。別の態様において、生じる水素化生成物126は、部分的に飽和したパラフィン類またはオレフィン類および部分的に飽和したエステル類だけを含む。
【0092】
[0095]図2において、水素化生成物126は分離装置130へ送られ、それによってその生成物は少なくとも二つの生成物流れに分離される。一つの態様において、水素化生成物126は分離装置130(すなわち蒸留塔)へ送られ、そこで、部分的または完全に飽和したエステル類134から部分的または完全に飽和したパラフィン類またはオレフィン類(すなわち燃料組成物132)が分離される。別の態様において、Cとシクロヘキサジエンを含む副生物流れを分離装置130からの支流において取り出してもよい。特定の態様において、燃料組成物132は24以下の炭素数を有する炭化水素を含んでいてもよい。一つの態様において、燃料組成物132は実質的に飽和炭化水素からなる。
【0093】
[0096]特定の態様において、エステル類134は、複分解して部分的または完全に水素化したグリセリド類を含んでいてもよい。言い換えると、好ましくは、軽い末端パラフィン類またはオレフィン類132は燃料組成物へと処理するために頂部で分離または蒸留され、一方、エステル類134(これは大部分がカルボン酸またはエステル官能性を有する化合物である)は底部流れとして取り出される。分離の特質に基づいて、幾分かのエステル化合物を頂部パラフィンまたはオレフィンの流れ132の中へ送ることができ、また、幾分かの重いパラフィンまたはオレフィン炭化水素をエステルの流れ134の中へ送ることもできる。
【0094】
[0097]特定の態様において、生成物流れの品質を改善し、そして特に引火点、凝固点、エネルギー密度、セタン価、または終点蒸留温度といったパラメーターのような所望の燃料特性を目標とするために、燃料組成物132を異性化するのが好ましいかもしれない。異性化反応は当分野において周知であり、例えば米国特許3150205号、4210771号、5095169号、および6214764号に記載されていて、これらの記載は、それらの全体がここに参照文献として取り込まれる。一つの態様において、図2に示すように、燃料組成物132は異性化反応装置150へ送られ、ここで異性化された燃料組成物152が生成される。典型的な反応条件の下で、この段階での異性化反応により、流れ132の中に存在する化合物の幾分かが分留されるかもしれず、これは、所望の炭素数の範囲内(例えばジェット燃料組成物のための5〜16のような)の化合物を有する改善された燃料組成物を製造するためのさらなる助けとなるだろう。
【0095】
[0098]特定の態様において、燃料組成物132または異性化された燃料組成物152は、約15〜25重量%のC、約5重量%未満のC、約20〜40重量%のC、約20〜40重量%のC10、約5重量%未満のC11、約15〜25重量%のC12、約5重量%未満のC13、約5重量%未満のC14、約5重量%未満のC15、約1重量%未満のC16、約1重量%未満のC17、および約1重量%未満のC18+を含む。特定の態様において、燃料組成物132または異性化された燃料組成物152は、少なくとも約40、41、42、43または44MJ/kg(ASTM D3338で測定して)の燃焼熱を含んでいる。特定の態様において、燃料組成物132または異性化された燃料組成物152は、燃料組成物のkg当り約1mg未満(ASTM D5453で測定して)の硫黄を含んでいる。他の態様において、燃料組成物132または異性化された燃料組成物152は、約0.70〜0.75(ASTM D4052で測定して)の密度を有している。他の態様において、燃料組成物132または異性化された燃料組成物152は、約220〜240℃(ASTM D86で測定して)の最終沸点を有している。
【0096】
[0099]燃料組成物132または異性化された燃料組成物152は、燃料の特性に応じて、ジェット燃料、灯油燃料、またはディーゼル燃料として用いてもよい。特定の態様において、燃料組成物は、水素化反応、異性化反応、および/または複分解反応からの副生物を含んでいてもよい。図2に示すように、燃料組成物132または異性化された燃料組成物152は、燃料組成物分離装置160においてさらに処理されてもよい。分離装置160は、水素ガス、水、C〜C炭化水素、またはC15+炭化水素のような、混合物からの全ての残りの副生物が除去されるように操作されてもよく、それによって所望の燃料生成物164が生成する。一つの態様において、混合物は、所望の燃料としてのC〜C15生成物164、および軽い末端C〜C(またはC〜C)留分162および/またはC18+の重い末端留分166に分離されてもよい。これらの留分を分離するために、蒸留が用いられてもよい。あるいは、他の態様において、例えばナフサのタイプまたは灯油のタイプのジェット燃料組成物について、パラフィン類またはオレフィン類を約−40℃、−47℃または−65℃まで冷却することによって所望の燃料生成物164から重い末端留分166を分離することができ、次いで、ろ過、デカンテーション、または遠心分離のような当分野で公知の方法によって固体の重い末端留分166を除去する。
【0097】
[00100]分離装置130からの部分的または完全に飽和したエステル類134に関して、特定の態様において、図2に示すように、エステル類134は部分的または完全に水素化されたエステル生成物流れ136として完全に取り出され、そしてさらに処理されるか、あるいはそれ自体の価値に応じて販売されてもよい。非限定的な例として、エステル類134は、潤滑剤として用いることのできる様々な部分的または完全に飽和したトリグリセリド類を含んでいるかもしれない。パラフィン類またはオレフィン類(燃料組成物132)とエステル類との間の分離の質に基づいて、エステル類134は、トリグリセリド類とともに運ばれる幾分かの重いパラフィン成分およびオレフィン成分を含んでいるかもしれない。他の態様において、エステル類134は、生物精製(biorefinery)処理装置または当分野で公知の別の化学的処理装置または燃料処理装置においてさらに処理されてもよく、それにより、例えばトリグリセリド類よりも高い価値を有するバイオディーゼルまたは特殊化学物質のような様々な生成物が製造される。あるいは、特定の態様において、エステル類134はシステムから部分的に取り出されて販売され、そして残りの部分は生物精製処理装置または当分野で公知の別の化学的処理装置または燃料処理装置においてさらに処理されてもよい。
【0098】
[00101]特定の態様において、エステルの流れ134はエステル交換装置170へ送られる。エステル交換装置170の中で、エステル類134はエステル交換触媒の存在下で少なくとも1種のアルコール138と反応する。特定の態様において、アルコールはメタノールおよび/またはエタノールを含む。一つの態様において、エステル交換反応は約60〜70℃および1気圧において行われる。特定の態様において、エステル交換触媒は均質なナトリウムメトキシド触媒である。様々な量の触媒を反応において用いてもよく、そして、特定の態様において、エステル交換触媒はエステル類134の約0.5〜1.0重量%の量で存在する。
【0099】
[00102]エステル交換反応によって、飽和および/または不飽和の脂肪酸メチルエステル類(FAME)、グリセリン、メタノール、および/または遊離脂肪酸類を含むエステル交換生成物172が生成するだろう。特定の態様において、エステル交換生成物172またはその一部分は、バイオディーゼルのための供給源を含むかもしれない。特定の態様において、エステル交換生成物172は、デセン酸エステル類、デカン酸エステル類、ウンデセン酸エステル類、ウンデカン酸エステル類、ドデセン酸エステル類、および/またはドデカン酸エステル類を含む。別の態様において、複分解グリセリドのデセン酸成分がグリセロール主鎖から除去され、それによりデセン酸エステルが形成される。
【0100】
[00103]別の態様において、トリグリセリドの流れ134を伴う反応において、グリセリンアルコールを用いてもよい。この反応により、モノグリセリド類および/またはジグリセリド類が生成するだろう。
【0101】
[00104]特定の態様において、エステル交換装置170からのエステル交換生成物172を液−液分離装置へ送ることができ、そこでエステル交換生成物172(すなわち、FAME、遊離脂肪酸類、および/またはアルコール類)がグリセリンから分離される。さらに、特定の態様において、グリセリン副生物流れを第二の分離装置においてさらに処理してもよく、そこでグリセリンが除去され、そして残りの全てのアルコール類が、さらなる処理を行うためにエステル交換装置170へ再循環される。
【0102】
[00105]一つの態様において、エステル交換生成物172は水洗装置においてさらに処理される。この装置において、エステル交換生成物は水で洗浄されるときに液−液抽出を受ける。過剰のアルコール、水、およびグリセリンが、エステル交換生成物172から除去される。別の態様において、水洗工程の後に乾燥装置が用いられ、ここでエステル類の所望の混合物(すなわち、特殊化学物質)から過剰の水がさらに除去される。そのような水素化した特殊化学物質の非限定的な例としては、デセン酸、デカン酸、ウンデセン酸、ウンデカン酸、ドデセン酸、ドデカン酸、およびこれらの混合物がある。
【0103】
[00106]図2に示すように、エステル交換装置170からのエステル交換生成物172または水洗装置あるいは乾燥装置からの特殊化学物質は、様々な個々の化合物または化合物の群をさらに分離するために、エステル蒸留塔180へ送ることができる。この分離は、これらに限定するものではないが、デセン酸エステル類、デカン酸エステル類、ウンデセン酸エステル類、ウンデカン酸エステル類、ドデセン酸エステル類、および/またはドデカン酸エステル類の分離を含むだろう。一つの態様において、デカン酸エステルまたはデセン酸エステル182は蒸留されるか、あるいはエステル交換生成物または特殊化学物質の残りの混合物184から個々に分離されるだろう。特定の処理条件において、デカン酸エステルまたはデセン酸エステル182はエステル交換生成物または特殊化学物質の流れの中の最も軽い成分であるはずであり、エステル蒸留塔180の頂部で出てくる。別の態様において、エステル交換生成物または特殊化学物質の残りの混合物184(すなわち、重い成分)は、塔の底部末端から分離されるだろう。特定の態様において、この底部流れ184はバイオディーゼルとして販売される可能性がある。
【0104】
[00107]デセン酸エステル類、デカン酸エステル類、ウンデセン酸エステル類、ウンデカン酸エステル類、ドデセン酸エステル類、および/またはドデカン酸エステル類は、エステル蒸留塔における蒸留工程の後に、さらに処理されてもよい。一つの態様において、公知の操作条件の下で、次にデセン酸エステル、デカン酸エステル、ウンデセン酸エステル、ウンデカン酸エステル、ドデセン酸エステル、および/またはドデカン酸エステルは、水を用いて加水分解反応を受けてもよく、それによりデセン酸、デカン酸、ウンデセン酸、ウンデカン酸、ドデセン酸、および/またはドデカン酸が形成される。
【0105】
[00108]すでに言及したように、天然油の自己複分解または天然油と低分子量オレフィンとの間の交差複分解は複分解触媒の存在下で生じる。先に述べたように、「複分解触媒」という用語は、複分解反応を触媒する全ての触媒または触媒系を含む。任意の公知の複分解触媒または将来開発される複分解触媒を個々に、または1種以上の追加の触媒と組み合わせて用いてもよい。非限定的な例としての複分解触媒および処理条件はPCT/US2008/009635号の18〜47ページに記載されていて、その記載をここに参照文献として取り込む。そこで示されている複分解触媒の幾つかのものは、Materia,Inc.(Pasadena、カリフォルニア州)によって製造されている。
【0106】
[00109]複分解の工程は、所望の複分解生成物を生成するのに適当なあらゆる条件下で行うことができる。例えば、化学量論、雰囲気、溶媒、温度、および圧力は、当業者であれば、所望の生成物を製造して望ましくない副生物を最少にするために選択することができる。複分解の工程を不活性雰囲気の下で行なってもよい。同様に、試薬がガスとして供給される場合は、不活性なガス希釈剤を用いることができる。不活性雰囲気または不活性なガス希釈剤は典型的に不活性ガスであり、これは、そのガスが複分解触媒と相互に作用しないことによって実質的に触媒作用を妨げないことを意味する。例えば、特定の不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素のそれぞれ、またはこれらを組み合わせたものからなる群から選択される。
【0107】
[00110]特定の態様において、複分解触媒は、複分解反応を行う前に溶媒中に溶解される。特定の態様において、選ばれる溶媒は複分解触媒に対して実質的に不活性であるように選択されるだろう。例えば、実質的に不活性な溶媒としては、非限定的に、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのような芳香族炭化水素、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどを含めた脂肪族の溶媒、およびジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのような塩素化アルカン類がある。一つの特定の態様において、溶媒はトルエンを含む。
【0108】
[00111]複分解反応の温度は速度制御性変数であってもよく、このとき、温度は許容できる速度で所望の生成物を与えるように選択される。特定の態様において、複分解反応の温度は約−40℃よりも高く、約−20℃よりも高く、約0℃よりも高く、あるいは約10℃よりも高い。特定の態様において、複分解反応の温度は約150℃未満、あるいは約120℃未満である。一つの態様において、複分解反応の温度は約10℃と約120℃の間である。
【0109】
[00112]複分解反応は、任意の所望の圧力の下で実施することができる。典型的に、溶液中の交差複分解試薬を保持するのに十分なほどに高い総圧力を維持するのが望ましいであろう。従って、交差複分解試薬の分子量が増大すると、交差複分解試薬の沸点が増大するので、より低い圧力範囲が典型的に低下する。総圧力は約0.1気圧(10kPa)よりも大きいように選択され、幾つかの態様においては、約0.3気圧(30kPa)よりも大きいか、あるいは約1気圧(100kPa)よりも大きいように選択されるだろう。典型的に、反応圧力は約70気圧(7000kPa)を超えず、幾つかの態様においては約30気圧(3000kPa)を超えない。複分解反応についての非限定的な例としての圧力範囲は、約1気圧(100kPa)から約30気圧(3000kPa)である。
【0110】
[00113]上に記載した本発明には変形や代替形態があってもよいが、それについての様々な態様については詳細に説明された。しかしながら、これらの様々な態様についてのここでの説明は本発明を限定することを意図してはおらず、それとは逆に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神と範囲の中に入る全ての変形、等価物、および代替物を含むものであることが理解されるべきである。さらに、本発明は以下の非限定的な実施例に関しても説明されるであろうが、特に以上の教示に照らして当業者によって修正がなされるかもしれないので、本発明はこれらの実施例に限定されないことが当然に理解されよう。
【実施例】
【0111】
実施例1
[00114]清浄で乾燥したステンレス鋼を、5ガロンの外被とした。浸漬管、頂部攪拌機、内部冷却・加熱コイル、温度プローブ、試料採取弁、およびヘッドスペースガス放出弁を備えたパー(Parr)反応容器が、アルゴンを用いて15psigまでパージされた。大豆油(SBO(Soybean oil)、2.5kg、2.9モル、Costco、MWn=864.4g/モル、GCによって決定して85重量%不飽和、5ガロンの容器中でアルゴンを1時間散布)を、パー反応器中に添加した。パー反応器は密封され、そしてSBOは2時間にわたってアルゴンでパージされ、同時に10℃まで冷却された。2時間後、内部の圧力が10psigになるまで反応器がガス抜きされた。反応器上の浸漬管弁が1−ブテンシリンダー(エアガス、CPグレード、33psigのヘッドスペース圧力、99重量%超)に接続され、そして1−ブテンの15psigまで再加圧された。ヘッドスペース内の残留アルゴンを除去するために、反応器は再び10psigになるまでガス抜きされた。18〜28psigの1−ブテンの下でSBOは350rpmおよび9〜15℃において攪拌され、この攪拌は、SBOのオレフィン結合当り3モルの1−ブテンが反応器中へ移されるまで行われた(約4〜5時間の間に約2.2kgの1−ブテン)。[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロルテニウム(3−メチル−2−ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)(C827、Materia)のトルエン溶液が、フィッシャー・ポーター圧力容器中で、触媒担体(SBOのオレフィン結合当り10モルppm)としての30グラムのトルエン中に130mgの触媒を溶解することによって調製され、そしてこの溶液が、フィッシャー・ポーター容器内のヘッドスペースをアルゴンで50〜60psigに加圧することによって、反応器の浸漬管を通して反応器に添加された。フィッシャー・ポーター容器と浸漬管は、追加の30gのトルエンですすぎ洗いされた。反応混合物は60℃において2.0時間攪拌された。反応混合物は周囲温度まで冷却され、同時にヘッドスペース内のガスは排気された。圧力が解放された後、反応混合物は、58gの漂白粘土(2%w/wのSBO、Pure Flow B80 CG)と磁気攪拌棒を収容している三つ口丸底フラスコに移された。反応混合物は、アルゴンの下で85℃において攪拌することによって処理された。2時間後、この時間の間に、残りの全ての1−ブテンが排気され、反応混合物は40℃まで冷却され、そしてガラスろ過器を通してろ過された。(60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に)ガスクロマトグラフィー分析によって、生成混合物のアリコートは、約22重量%のメチル9−デセノエート、約16重量%のメチル9−ドデセノエート、約3重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約3重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって)。これらの結果は、23.4重量%のメチル9−デセノエート、17.9重量%のメチル9−ドデセノエート、3.7重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および1.8重量%のメチル9−オクタデセノエートの平衡における計算された収量に首尾よく匹敵する。
【0112】
実施例2
[00115]実施例1に記載された一般的手順によって、1.73kgのSBOと3モルの1−ブテン/SBO二重結合を用いて反応が行われた。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、生成混合物のアリコートは、約24重量%のメチル9−デセノエート、約18重量%のメチル9−ドデセノエート、約2重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約2重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0113】
実施例3
[00116]実施例1に記載された一般的手順によって、1.75kgのSBOと3モルの1−ブテン/SBO二重結合を用いて反応が行われた。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、生成混合物のアリコートは、約24重量%のメチル9−デセノエート、約17重量%のメチル9−ドデセノエート、約3重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約2重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0114】
実施例4
[00117]実施例1に記載された一般的手順によって、2.2kgのSBO、3モルの1−ブテン/SBO二重結合、および60gのトルエン(触媒を移動させるためにSBOと交換されたもの)を用いて反応が行われた。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、生成混合物のアリコートは、約25重量%のメチル9−デセノエート、約18重量%のメチル9−ドデセノエート、約3重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約1重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0115】
実施例5
[00118]磁気攪拌棒、加熱マントル、および温度調節器を備えた12リットルの三つ口ガラス丸底フラスコに、実施例1〜4からの混合反応生成物を8.42kg充填した。真空導入口を有する凝縮器をフラスコの中間口に装着し、受けフラスコを凝縮器に接続した。反応生成物から炭化水素オレフィン類が、下記の範囲の条件で減圧蒸留によって除去された:22〜130℃のポット温度、19〜70℃の蒸留ヘッドの温度、および2000〜160μトルの圧力。揮発性の炭化水素類が除去された後に残った物質の重量は5.34kgであった。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、非揮発性の生成混合物のアリコートは、約32重量%のメチル9−デセノエート、約23重量%のメチル9−ドデセノエート、約4重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約5重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0116】
実施例6
[00119]磁気攪拌棒、凝縮器、加熱マントル、温度プローブ、およびガスアダプターを備えた12リットルの三つ口丸底フラスコに、MeOH中の1%w/wのNaOMeを4リットルと、実施例5で生成された非揮発性の生成混合物5.34kgを充填した。生じた薄黄色の不均質混合物は60℃で攪拌された。約1時間後、混合物は均質なオレンジ色に変わった(pH=11と検出された)。2時間の合計反応時間の後、混合物は周囲温度まで冷却され、そして二つの層が観察された。有機相が3リットルの50%(v/v)水性MeOHで二回洗浄され、分離され、そして冷たいMeOH中のHOAc(1モルHOAc/モルNaOMe)で洗浄することによって中和され、その結果、pHが6.5と検出され、5.03kgの収量が得られた。
【0117】
実施例7
[00120]磁気攪拌器、充填塔、および温度調節器を備えたガラス製で12リットルの三つ口丸底フラスコに、実施例6で生成されたメチルエステル混合物(5.03kg)を充填し、そして加熱マントル中に置いた。フラスコに装着した充填塔は、0.16インチのPro−Pak(登録商標)ステンレス鋼サドルを有する2インチ×36インチのガラス塔であった。この蒸留塔は分別蒸留ヘッドに装着され、このヘッドに、蒸留の留分を捕集するために1リットルの予め秤量された丸底フラスコが装着された。100〜120μトルの減圧下で蒸留が実施された。メチル9−デセノエート(9−DAME)とメチル9−ドデセノエート(9−DDAME)の両者を単離するために、1:3の還流比が用いられた。1:3の還流比は、蒸留塔へ戻される3滴ごとに捕集される1滴に相当する。蒸留を行う間に捕集された試料、減圧蒸留の条件、およびガスクロマトグラフィーによって決定された留分の9−DAMEと9−DDAMEの含有量を表1に示す。留分2〜7を合わせた収量は1.46kgのメチル9−デセノエートで、これは99.7%の純度であった。留分16を捕集した後、2.50kgの物質が蒸留ポット中に残り、これはガスクロマトグラフィーによって約14重量%の9−DDAME、約42重量%のメチルパルミテート、および約12重量%のメチルステアレートを含んでいることが見いだされた。
【0118】
【表1】

【0119】
実施例8
[00121]実施例1に記載された一般的手順によって反応が行われたが、下記のことが変更された:40℃の反応温度において、2.2kgのSBO、7モルのプロペン/モルSBO二重結合、および200mgの[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロルテニウム(ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)(C848触媒、Materia Inc.、Pasadena、カリフォルニア州、米国、90ppm(w/w)対SBO)が用いられた。漂白粘土を用いる触媒除去工程も以下の工程によって置き換えられた:過剰なプロペンを排気した後、反応混合物は三つ口丸底フラスコの中に移され、これにトリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THMP、イソプロパノール中の1.0M、50モルTHMP/モルC848)が添加された。生じた曇った黄色の混合物が60℃で20時間攪拌され、6リットルの分液漏斗へ移され、そして2×2.5リットルの脱イオンHOを用いて抽出された。有機相が分離され、そして無水NaSO上で4時間乾燥され、次いで、シリカゲルの層を収容したガラスろ過器を通してろ過された。
【0120】
実施例9
[00122]実施例8に記載された一般的手順によって反応が行われたが、ただし3.6kgのSBOと320mgのC848触媒が用いられた。触媒が除去された後、実施例9からの反応生成物が実施例8からの反応生成物と一緒にされ、得られた物質の収量は5.12kgであった。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、一緒にされた生成混合物のアリコートは、約34重量%のメチル9−デセノエート、約13重量%のメチル9−ウンデセノエート、1重量%未満のジメチル9−オクタデセンジオエート、および1重量%未満のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0121】
[00123]実施例5に記載された一般的手順によって、上記の一緒にされた反応生成物の5.12kgから炭化水素オレフィン類が減圧蒸留によって除去された。揮発性のオレフィン類が除去された後に残った物質の重量は4.0kgであった。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、非揮発性の生成混合物のアリコートは、約46重量%のメチル9−デセノエート、約18重量%のメチル9−ウンデセノエート、約2重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約1重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0122】
実施例10
[00124]実施例8に記載された一般的手順によって二つの反応が行われたが、ただし、各々の反応について3.1kgのSBOと280mgのC848触媒が用いられた。触媒が除去された後、二つの調製物からの反応生成物が一緒にされ、得られた物質の収量は5.28kgであった。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、一緒にされた生成混合物のアリコートは、約40重量%のメチル9−デセノエート、約13重量%のメチル9−ウンデセノエート、約2重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約1重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0123】
[00125]実施例5に記載された一般的手順によって、一緒にされた反応生成物の5.28kgから炭化水素オレフィン類が減圧蒸留によって除去された。揮発性のオレフィン類が除去された後に残った物質の重量は4.02kgであった。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、非揮発性の生成混合物のアリコートは、約49重量%のメチル9−デセノエート、約16重量%のメチル9−ウンデセノエート、約2重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約3重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0124】
実施例11
[00126]実施例10に記載された一般的手順によって、SBO、7モルのシス−2−ブテン/モルSBO二重結合、および220mgのC848触媒/kgSBOを用いて二つの複分解反応が行われた。触媒が除去された後、二つの調製物からの反応生成物が一緒にされ、得られた物質の収量は12.2kgであった。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、一緒にされた生成混合物のアリコートは、約49重量%のメチル9−ウンデセノエート、約2重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約1重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0125】
[00127]実施例5に記載された一般的手順によって、一緒にされた反応生成物の12.2kgから炭化水素オレフィン類が減圧蒸留によって除去された。揮発性のオレフィン類が除去された後に残った物質の重量は7.0kgであった。60℃におけるメタノール中の1%w/wのNaOMeを用いたエステル交換の後に、ガスクロマトグラフィー分析によって、非揮発性の生成混合物のアリコートは、約57重量%のメチル9−ウンデセノエート、約4重量%のジメチル9−オクタデセンジオエート、および約2重量%のメチル9−オクタデセノエートを含んでいることが見いだされた(ガスクロマトグラフィーによって決定されたもの)。
【0126】
実施例12
[00128]実施例1に記載された一般的手順によって、43mgのC827触媒/kgSBOを用いて、SBOと3モルの1−ブテン/モルSBO二重結合を反応させることによって、約7kgの交差複分解生成物が生成され、次いで、THMPを用いて触媒の除去が行われた。105gのJohnson−Matthey A−7000スポンジメタル(登録商標)触媒を用いて1ガロンバッチのオートクレーブ中で水素の吸収(uptake)が停止するまで、複分解生成物の最初の2.09kgの部分が136℃および400psig Hにおいて水素化された。生じた混合物が温かい中で(22〜55℃)ろ過され、1.40kgのろ液と、触媒と水素化生成物からなる350gの混合物が得られた。触媒を含む混合物の全体が複分解生成物の第二の2.18kgの部分とともに1ガロンの反応器に戻され、そして第二の水素化反応が、水素の吸収が停止するまで同様にして行われた。触媒を沈降させ、そして有機生成物の大部分がデカントされ、そしてろ過され、1.99kgのろ液と、触媒と水素化生成物からなる380gの混合物が得られた。残りの約3kgの複分解生成物が二つの追加のバッチ反応で水素化され、これは前の反応からの触媒を用いて同様にして行われ、その結果、それぞれ1.65kgと1.28kgの水素化生成物が得られた。ろ過された後に単離された水素化生成物の総重量は6.32kgであった。ガスクロマトグラフィー分析によって、水素化生成物のアリコートは、約30重量%のC〜C18n−パラフィン類と約70重量%のトリグリセリド類を含んでいることが見いだされた。水素化生成物中に含まれるC〜C18n−パラフィン類の相対的分布は、下記の炭素数による計算されたオレフィン類の分布と十分に類似している:観察された値(計算された値)2.3(0.6)重量%C、35.6(36.2)重量%C、30.0(27.6)重量%C10、0.6(0.1)重量%C11、22.2(23.6)重量%C12、3.4(3.7)重量%C13、0.1(0.0)重量%C14、4.4(6.3)重量%C15、0.4(0.4)重量%C16、0.1(0.0)重量%C17、および1.0(1.6)重量%C18
【0127】
[00129]水素化パラフィン/トリグリセリド生成物の4.84kgのアリコートから、ふき取りフィルム蒸発(wiped film evaporation)によってパラフィン成分が分離された。300g/hの供給速度を用いて75℃、100トル、300rpm、および15℃の凝縮温度において最初のふき取りフィルム蒸発が行われて凝縮液が生じ、これが125℃、90トル、300rpm、および10℃の凝縮温度において第二のふき取りフィルム蒸発に供され、これにより軽いアルカン類が除去された。得られた残留液は、ガスクロマトグラフィー分析によって、n−アルカン類について下記の分布を有することが見いだされた:17.5重量%C、1.7重量%C、31.0重量%C、28.3重量%C10、0.6重量%C11、17.4重量%C12、2.1重量%C13、0.1重量%C14、1.2重量%C15、0.1重量%C16、0.0重量%C17、および0.1重量%C18。この物質は、43.86MJ/kgの燃焼熱(ASTM D3338)、1mg/kg未満の硫黄(ASTM D5453)、0.7247の密度(ASTM D4052)、および232.3℃の最終沸点(ASTM D86)を有することが見いだされ、このことは、この物質の大部分はディーゼル燃料またはジェット燃料のような燃料用途における混合原料油として適していることを示す。
【0128】
実施例13
[00130]1−オクテンを伴ったパーム油の交差複分解から生成した1−オレフィン/1,4−ジエン(92重量%の1−デセン、4.5重量%の1,4−デカジエン、2重量%の1,4−ウンデカジエン)のオリゴマー化反応が、1.1モル%のエチルアルミニウムジクロリド(ヘキサン中の1M溶液)/1.1モル%のtert−ブチルクロリドを用いて、10℃において3時間にわたって、550gのスケールで行われた。水と1Mの水酸化ナトリウムの溶液を用いて反応混合物が急冷され、そして無色になるまで攪拌された。ヘキサン(300ml)が添加され、そして混合物が分液漏斗へ移された。水とブラインを用いて有機相が洗浄され、次いで、ヘキサンを除去するために回転蒸発器上で濃縮された。オリゴマー混合物がショートパス減圧蒸留(100℃、5トル)によって脱蔵され、そしてGC/MSによって生成物の分布が97%の混合オリゴマー類であると決定された。試料の動力学粘度(ブルックフィールド、#34スピンドル、100rpm、22℃)は540cpsである。40℃における試料の動粘度は232cStである。
【0129】
[00131]上記の例においては、以下の分析方法を用いた。
[00132]揮発性生成物は、ガスクロマトグラフィーと火炎イオン化検出器(FID)によって分析された。アルケンの分析は、Agilent 6890装置と下記の条件を用いて行われた:
分離管: Restek Rtx−5、30m×0.25mm(ID)×0.25μm膜厚
インジェクター温度:250℃
検出器温度:280℃
オーブン温度:35℃の出発温度、4分の保持時間、260℃まで12℃/分の勾配率、8分の保持時間
キャリヤーガス:ヘリウム
平均のガス速度:31.3±3.5%cm/秒(計算値)
分離比率:〜50:1。
【0130】
[00133]生成物は、質量スペクトル分析(GCMS−Agilent 5973N)からの補助データとともに、ピークを既知の標準と比較することによって特徴づけられた。GCMS分析は、上と同じ方法を用いて、第二のRtx−5、30m×0.25mm(ID)×0.25μm膜厚のGC分離管を用いて実施された。アルカンの分析は、Agilent 6850装置と下記の条件を用いて行われた:
分離管: Restek Rtx−65、30m×0.32mm(ID)×0.1μm膜厚
インジェクター温度:250℃
検出器温度:350℃
オーブン温度:55℃の出発温度、5分の保持時間、350℃まで20℃/分の勾配率、10分の保持時間
キャリヤーガス:水素
流量:1.0mL/分
分離比率:40:1。
【0131】
[00134]生成物は、ピークを既知の標準と比較することによって特徴づけられた。脂肪酸メチルエステル(FAME)の分析は、Agilent 6850装置と下記の条件を用いて行われた:
分離管: J&W Scientific、DB−Wax、30m×0.32mm(ID)×0.5μm膜厚
インジェクター温度:250℃
検出器温度:300℃
オーブン温度:70℃の出発温度、1分の保持時間、180℃まで20℃/分の勾配率、220℃まで3℃/分の勾配率、10分の保持時間
キャリヤーガス:水素
流量:1.0mL/分。
【0132】
[00135]上の実施例は、加工処理スキームにおいて説明された主要な工程を全体として例示していて、化学物質、溶媒および燃料混合原料油として有用な天然油からのオレフィン類、パラフィン類、複分解トリグリセリド類、不飽和脂肪酸エステル類および酸類、および二酸化合物の製造を示すものである。
【符号の説明】
【0133】
12 天然油、 14 低分子量オレフィン、 20 複分解反応器、 22 複分解生成物、 30 分離装置、 32 オレフィン類、 34 エステル類、 36 エステル生成物流れ、 38 アルコール、 40 オレフィン分離装置、 42 中間留分オレフィン流れ、 44 軽量のオレフィン流れ、 46 C15+底部流れ、 48 水素ガス、 50 水素化装置、 52 水素化生成物、 60 燃料組成物分離装置、 62 軽い末端C〜C留分、 64 C〜C15生成物、 66 C15+の重い末端留分、 70 エステル交換装置、 72 エステル交換生成物、 80 エステル蒸留塔、 82 9DAエステル、 84 残りの混合物、 112 天然油供給原料、 114 低分子量オレフィン、 120 複分解反応器、 122 複分解生成物、 124 水素ガス、 125 水素化装置、 126 水素化生成物、 130 分離装置、 132 オレフィン類、 134 エステル類、 136 エステル生成物流れ、 138 アルコール、 150 異性化反応装置、 152 異性化された燃料組成物、 160 燃料組成物分離装置、 162 軽い末端留分、 164 燃料生成物、 166 重い末端留分、 170 エステル交換装置、 172 エステル交換生成物、 180 エステル蒸留塔、 182 デカン酸エステルまたはデセン酸エステル、 184 残りの混合物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然油を精製する方法であって、
天然油を含む供給原料を用意すること、
複分解触媒の存在下で供給原料を反応させ、それによりオレフィン類とエステル類を含む複分解生成物を形成させること、および
複分解生成物中のエステル類から複分解生成物中のオレフィン類を分離すること、
を含む前記方法。
【請求項2】
アルコールの存在下でエステル類がエステル交換され、それによりエステル交換生成物を形成させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液−液分離によってエステル交換生成物からグリセリンを分離すること、
グリセリンを分離した後、エステル交換生成物を水で洗浄し、それによってグリセリンをさらに除去すること、および
洗浄の後、エステル交換生成物を乾燥し、それによってエステル交換生成物から水を分離すること、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
エステル交換生成物を蒸留し、それによって9−デセン酸エステル、9−ウンデセン酸エステル、9−ドデセン酸エステルのそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の特殊化学物質を分離することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の特殊化学物質を加水分解し、それによって9−デセン酸、9−ウンデセン酸、9−ドデセン酸のそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の酸を形成させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
加水分解の工程によってさらに、少なくとも1種の酸のアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩のそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせを生成させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
エステル交換生成物をそれ自体と反応させ、それによって二量体を形成させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
複分解触媒の存在下で供給原料を反応させる前に、供給原料中の触媒毒を減少させるのに十分な条件の下で供給原料を処理することをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
触媒毒を減少させるために、供給原料は化学反応によって化学的に処理される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
供給原料は酸素が存在しない中で100℃を超える温度に加熱され、そして触媒毒が減少するのに十分な時間にわたってその温度に保たれる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
水溶性のホスフィン試薬を用いてオレフィン類とエステル類から複分解触媒を分離することをさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
複分解触媒は溶媒中に溶解される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
溶媒はトルエンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
オレフィン類をオリゴマー化し、それによりポリ−アルファ−オレフィン類、ポリ−内部−オレフィン類、鉱油代替え品、またはバイオディーゼルのうちの少なくとも1種を形成させることをさらに含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
反応工程は、供給原料とそれ自体との間の自己複分解反応を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
低分子量オレフィンを用意することをさらに含み、反応工程は、供給原料と低分子量オレフィンとの間の交差複分解反応を含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
低分子量オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテンのそれぞれ、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の低分子量オレフィンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
低分子量オレフィンはアルファ−オレフィンである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
低分子量オレフィンは、4〜10の間の炭素数を有する少なくとも1種の枝分れオレフィンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
オレフィン類を水素化し、それにより燃料組成物を形成することをさらに含む、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
燃料組成物は、5〜16の間の炭素数分布を有するジェット燃料組成物かまたは8〜25の間の炭素数分布を有するディーゼル燃料組成物のいずれかを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
燃料組成物は、(a)8〜16の間の炭素数分布と、約38℃〜約66℃の間の引火点と、約210℃の自動発火温度、および約−47℃〜約−40℃の間の凝固点を有する灯油のタイプのジェット燃料、(b)5〜15の間の炭素数分布と、約−23℃〜約0℃の間の引火点と、約250℃の自動発火温度、および約−65℃の凝固点を有するナフサのタイプのジェット燃料、または(c)8〜25の間の炭素数分布と、約15.6℃において約0.82〜約1.08の間の比重と、約40よりも大きいセタン価、および約180℃〜約340℃の間の蒸留範囲を有するディーゼル燃料である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
エステル類からオレフィン類を分離する前に、複分解生成物から軽い末端流れをフラッシュ分離することをさらに含み、その軽い末端流れはその大部分が2〜4の間の炭素数を有する炭化水素である、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
オレフィン類を水素化する前に、オレフィン類から軽い末端流れを分離することをさらに含み、その軽い末端流れはその大部分が3〜8の間の炭素数を有する炭化水素である、請求項20〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
オレフィン類を水素化する前に、オレフィン類からC18+の重い末端流れを分離することをさらに含み、その重い末端流れはその大部分が少なくとも18の炭素数を有する炭化水素である、請求項20〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
燃料組成物からC18+の重い末端流れを分離することをさらに含み、その重い末端流れはその大部分が少なくとも18の炭素数を有する炭化水素である、請求項20〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
燃料組成物を異性化することをさらに含み、このとき燃料組成物中の直鎖パラフィン化合物の部分はイソパラフィン化合物に異性化される、請求項20〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
燃料組成物を製造する方法であって、
天然油を含む供給原料を用意すること、
オレフィン類とエステル類を含む複分解生成物が形成されるのに十分な条件の下、複分解触媒の存在下で供給原料を反応させること、
複分解生成物を水素化し、それにより燃料組成物と少なくとも部分的に飽和したエステル類を形成させること、および
少なくとも部分的に飽和したエステル類から燃料組成物を分離すること、
を含む、前記方法。
【請求項29】
燃料組成物を異性化することをさらに含み、このとき燃料組成物中の直鎖パラフィン化合物の部分はイソパラフィン化合物に異性化される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
燃料組成物からC18+の重い末端流れを分離することをさらに含み、その重い末端流れはその大部分が少なくとも18の炭素数を有する炭化水素である、請求項28または29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−507441(P2013−507441A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534266(P2012−534266)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/052174
【国際公開番号】WO2011/046872
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512096540)エレバンス・リニューアブル・サイエンシズ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】