説明

天然竹繊維を含む紡績糸とそれを用いた織編物

【課題】 製造工程の環境負荷が小さく、適度な張り、腰と、麻調の清涼感があり、天然繊維ならではの肌に優しく、吸湿性にも優れた天然竹繊維を含む紡績糸と、それを用いた織編物を提供する。
【解決手段】 繊度が0.9〜20.0dtex、平均繊維長が20〜200mmの天然竹繊維を含有し、200〜2000回/mの実撚りが付与されている天然竹繊維を含む紡績糸。紡績糸は、天然竹繊維と他の繊維で構成されていてもよく、他の繊維としては生分解性合成繊維が好ましい。これらの天然竹繊維を含む紡績糸は、この紡績糸を少なくともその一部に用いた織編物として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の竹繊維を含む紡績糸とその紡績糸を用いた織編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、天然繊維は、その特徴を生かして、風合い、吸放湿性、保温性や肌への優しさ等を特徴にした商品化が進められてきた。一般的に、天然繊維としては、綿、麻、羊毛、絹が代表的なものであるが、近年、環境への負荷を軽減させたり、資源の再利用を目的としてケナフ、ヘンプ、砂糖きび等の従来は廃材とされる部位を再利用し、繊維質を取り出して繊維化し、独自の紡績技術により紡績糸とし、さまざまな新天然繊維として位置付けた商品化が進められている。
【0003】
しかし、上記した新天然繊維は、いずれも繊度や繊維長において紡績性に優れた原料が得難く、そのため、細番手の紡績糸や、均整度に優れた紡績糸の生産が難しく、商品展開が制限されているのが現状でさる。
【0004】
また、特許文献1では、竹を原料にした竹レーヨン繊維が提案されている。しかし、この繊維は、一般のレーヨン繊維と同様の方法で製造されるものであるため、製造工程の環境負荷が大きく、また、従来のレーヨン繊維の持つ欠点を大きく改善するまでには至っていない。
【特許文献1】特許第3448526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決し、製造工程の環境負荷が小さく、適度な張り、腰と、麻調の清涼感があり、天然繊維ならではの肌に優しく、吸湿性にも優れた天然竹繊維を含む紡績糸と、それを用いた織編物を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、自然界に存在する天然原料である竹に着目し、レーヨン繊維のように竹を薬品で化学的処理して繊維化するのではなく、竹そのものを細かく分繊化して特定の繊度と繊維長を有する天然竹繊維にしたものを紡績糸とすればよいことを知見して本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の構成を有するものである。
(1)繊度が0.9〜20.0dtex、平均繊維長が20〜200mmの天然竹繊維を含有し、200〜2000回/mの実撚りが付与されていることを特徴とする天然竹繊維を含む紡績糸。
(2)天然竹繊維と他の繊維からなることを特徴とする上記(1)記載の天然竹繊維を含む紡績糸。
(3)他の繊維が生分解性合成繊維であることを特徴とする上記(2)記載の天然竹繊維を含む紡績糸。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の天然竹繊維を含む紡績糸を少なくともその一部に用いた織編物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の天然竹繊維を含む紡績糸は、製造工程の環境負荷が小さく、また、この紡績糸を少なくともその一部に用いた織編物は、適度な張り、腰と、麻調の清涼感があり、天然繊維ならではの肌に優しく、吸湿性にも優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の紡績糸を構成する天然竹繊維(以下、竹繊維ということがある。)は、竹を原料とした竹レーヨン繊維のように竹を薬品で化学的処理して繊維化したものではなく、竹そのものを細かく分繊化した繊維自体が竹そのものであり、このため、竹繊維を製造する工程は、環境への負荷が少ない繊維である。
【0011】
紡績糸を得るために使用する竹繊維は、繊度が0.9〜20.0dtex、好ましくは2.0〜10.0dtexであることが必要である。竹繊維を得るためは竹を物理的に分繊化するため、繊度が0.9dtex未満の繊維を得ようとすると、繊維へのダメージが大きく、竹繊維独特の張り、コシが得難くなる。また、繊度が20.0dtexを超えると、粗硬感が増大して衣料や寝具装備用には不向きなものとなり、同時に紡績性が著しく低下する。また、竹繊維の平均繊維長は20〜200mm、好ましくは30〜150mmであることが必要であり、平均繊維長がこの範囲を外れると、紡績性が低下する。
【0012】
図1,2は本発明の紡績糸を形成する竹繊維の一実施態様の側面と断面を示す2000倍の電子顕微鏡(SEM)写真であるが、図2で示すように断面の中央部分に中空部を糸の長手方向に有しているので、吸放湿性や軽量性にも優れている。
【0013】
本発明の紡績糸は、200〜2000回/m、好ましくは500〜1200回/mの実撚りが付与されていることが必要である。紡績糸が200〜2000回/mの実撚りを有することで、竹繊維が本来有する張り、腰の特徴を効果的に発揮することができる。
【0014】
本発明の紡績糸は、竹繊維だけで形成されていてもよいが、他の繊維との混紡などの複合紡績されていてもよく、他の繊維と併用する場合には、竹繊維が本来有する張り、腰の特徴を効果的に発揮させるために竹繊維を30質量%以上、好ましくは50質量%以上含有させるのが好ましい。
【0015】
竹繊維と併用する他の繊維としては、天然繊維、再生繊維、溶剤紡糸セルロース繊維及び合成繊維がある。併用する他の繊維の具体例として、天然繊維では綿、麻、絹、羊毛、カシミヤ、アルパカ、モヘア、アンゴラ等があり、再生繊維ではビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、アセテート及びトリアセテート等がある。また、併用する合成繊維としてはナイロン、ポリエステル、アクリル等があるが、環境に対する負荷が少ない植物由来の繊維であるポリ乳酸等の生物分解性合成繊維が好ましい。
【0016】
本発明の紡績糸を得るための紡績方法としては、綿紡、そ毛紡、オープンエンド紡、結束紡等を適用できできるが、他の繊維と混紡などの複合紡績を行う場合には、竹繊維と他の繊維の平均繊維長が同程度のものを用いるのが好ましい。
【0017】
次に、本発明の織編物は、上記した竹繊維を含む紡績糸を少なくともその一部に用いて得られるものであり、本発明の紡績糸だけで形成されていてもよいが、他の糸条と併用されていてもよい。他の糸条と併用する場合には、竹繊維が本来有する張り、腰の特徴を効果的に発揮させるために竹繊維が30質量%以上、好ましくは50質量%以上となるように併用するのが好ましい。
【0018】
本発明の織編物の製造には、エアージエット織機、ウオータージエット織機、丸編機、経編機等を使用することができる。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
中国産の竹から分繊化して得た中空部を有する竹繊維(繊度4.2dtex、平均繊維長88mm)を用い、通常のそ毛紡績工程にかけ、スライバーを作成した後、リング紡績機を用いて、そ毛番手1/48、撚数が820回/mの竹繊維100%使いの紡績糸を得た。
【0020】
次いで、この紡績糸を単糸使いで30in×28Gの丸編機を使用して天竺の生機とした後、得られた生機を常法に従い染色仕上げし、Tシャツに縫製した。
(実施例2)
実施例1と同様にして得た竹繊維(繊度4.2dtex、平均繊維長38mm)と綿(繊度1.7dtex、平均繊維長40mm)とを質量比50:50で用いて通常の綿紡績工程により混紡し、英式綿番手30/1、撚数が820回/mの竹繊維を50質量含有する紡績糸を得た。
【0021】
次いで、この紡績糸を用い、実施例1と同様にして製編、染色仕上げしてTシャツに縫製した。
(実施例3)
実施例1と同様にして得た竹繊維(繊度4.2dtex、平均繊維長38mm)とポリ乳酸繊維(繊度1.7dtex、平均繊維長38mm)とを質量比50:50で用いて通常の綿紡績工程により混紡し、英式綿番手30/1、撚数が820回/mの竹繊維を50質量含有する紡績糸を得た。
【0022】
次いで、この紡績糸を用い、実施例1と同様にして製編、染色仕上げしてTシャツに縫製した。
(比較例1)
インド産の竹を原料としたビスコースレーヨン繊維(繊度6.0dtex、平均繊維長88mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして紡績、製編、染色仕上げしてTシャツに縫製した。
(比較例2)
竹繊維に代えてインド産の竹を原料としたビスコースレーヨン繊維(繊度6.0dtex、平均繊維長38mm)を用いた以外は、実施例2と同様にして紡績、製編、染色仕上げしてTシャツに縫製した。
(比較例3)
綿(繊度1.7dtex、平均繊維長40mm)のみを用いて紡績し、綿100質量%の紡績糸を得た以外は、実施例2と同様にして製編、染色仕上げしてTシャツに縫製した。
【0023】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたTシャツを、繊維技術者10名による着用試験を行った結果、実施例1〜3で得られたTシャツは、比較例1〜3のような従来の天然繊維や竹レ−ヨン繊維使いの編物にはない張り、腰と清涼感、ドライ感及び軽量感があり、皺にもなり難く、形態安定性にも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の紡績糸を形成する竹繊維の一実施態様の側面を示す2000倍の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】本発明の紡績糸を形成する竹繊維の一実施態様の断面を示す2000倍の電子顕微鏡(SEM)写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度が0.9〜20.0dtex、平均繊維長が20〜200mmの天然竹繊維を含有し、200〜2000回/mの実撚りが付与されていることを特徴とする天然竹繊維を含む紡績糸。
【請求項2】
天然竹繊維と他の繊維からなることを特徴とする請求項1記載の天然竹繊維を含む紡績糸。
【請求項3】
他の繊維が生分解性合成繊維であることを特徴とする請求項2記載の天然竹繊維を含む紡績糸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の天然竹繊維を含む紡績糸を少なくともその一部に用いた織編物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169666(P2006−169666A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362960(P2004−362960)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(599089332)ユニチカテキスタイル株式会社 (53)
【Fターム(参考)】