説明

天然素材であるヘチマを用いた集塵フィルターの製造方法

【課題】ウリ科植物であるヘチマが完熟後に繊維だけにしたもの〔以下、乾燥ヘチマという)を、種々の加工をすることにより集塵効率のよいヘチマ繊維を用いた集塵フィルターの製造方法を開発・提供する。
【解決手段】適宜の直径(X)と長さ(Y)を有する乾燥ヘチマ(1)を、繊維で支えられている中心部分の芯を取り除いて円筒形に形成する工程と、該円筒形に形成した乾燥ヘチマ(1)を、適宜の温度を有する温水に浸漬し、多様な形をした空孔性ときめ細やかな骨組み構造を持つ網目構造中に、水が充分に行き渡り、繊維を膨潤させる工程と、この温水の浸漬により膨潤したヘチマを、温水より取り出し、二枚の取り出し板(A,A)に挟んで適宜な圧力でプレスする工程と、挟んだヘチマを、そのまま内温60〜70°Cに保たれている恒温槽中で4時間程度乾燥する工程と、これにより、元の円筒形の乾燥ヘチマを板状に圧縮する工程と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天然素材であるヘチマを用いた集塵フィルターの製造方法に関し、また、この方法により製造された、CO2 低減の再生エネルギーを生産する際に発生する排煙吸着フィルターの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス繊維を素材としたフィルターは、高コストであり、水分・油滴などを伴う排煙の処理には不向きであり、廃棄処理時には注意を要するなどの諸問題がある。
【0003】
また、石油系素材であるプラスチックフィルターでは、繊維表面の凹凸が少ない等の理由から長期間使用すると目詰まりなどを起こし効率のよい吸着効果が発揮されていない。
【0004】
ところで、環境負荷低減に立った工業生産において、装置開発における素材を、自然界に求めることは、一つの必須条件になってきている。
【0005】
そして、その一つとして、臭いならびに微粉塵を伴う食品ならびに鉱・工業生産時における排気は、近隣の生活圏における大きな環境問題となっている。
【0006】
その改善として、オゾン酸化による脱臭あるいは石油系由来のプラスチックを素材にしたフィルターによる吸着などによる方法が数多く開発され、使用されている。
【0007】
しかし、その際の大きな問題として、長時間使用すると経済的負担とともに、油滴および集塵フィルターの目詰まりを起こし、二次的悪臭がフィルターから発生する要因にもなっている。
【0008】
また、吸着能が低下したフィルターの後処理は、環境の面からも専門業者に委託し焼却もしくは地中に埋める方法で処理されているのが現状である。
【0009】
一方、間伐材をチップにした燃焼エネルギーの用途開発は、地球温暖化改善の面からも炭素源の循環型環境負荷低減である。
【0010】
この発明は、天然素材でウリ科植物であるヘチマを用いた集塵フィルターの製造方法を開発・提供しようとするものである。
【0011】
木材をエネルギーとした燃焼装置開発における排煙フィルター装置に、天然素材でヘチマ〔糸瓜,Luffa cyhndrica (L.)Roem. 〕が完熟後に繊維だけにしたものを熱プレス加工し乾燥したものを利用する方法がある。
例えば特許文献1のように。
【0012】
ヘチマを利用した液体用フィルターは存在する。例えば、特許文献1,特許文献2のように。さらに、ヘチマを利用した気体用フィルターも存在している。例えば、特許文献3,特許文献4,特許文献5,特許文献6のように。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実用新案登録第3003791号実用新案公報
【特許文献2】特公平7−85767号公報
【特許文献3】特開平10−211413号公報
【特許文献4】特開平06−220209号公報
【特許文献5】特開平5−339860号公報
【特許文献6】登録実用新案第3149444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、発明が解決しようとする課題は、ウリ科植物であるヘチマが完熟後に繊維だけにしたもの〔以下、乾燥ヘチマという〕を、種々の加工をすることにより集塵効率のよいヘチマ繊維を用いた集塵フィルターの製造方法を開発・提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明による課題を解決するための手段としては、乾燥ヘチマを、温水に浸漬して膨潤し、板に挟んでプレス加工し、繊維を圧縮し、より密度の高い網目構造にして乾燥させるヘチマ繊維を用いた集塵フィルターの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
この発明によると、乾燥ヘチマを、繊維で支えられている中心部分の芯を取り除いて円筒形にし、その後、温水に浸漬し、繊維を膨潤にし、板に挟んで内温60〜70°Cに保たれた恒温槽中で4時間程度乾燥することにより、より密度の高い網目構造となる結果、臭いと水分を吸収し、排煙に含まれる気化されたタール微粒子も同時に吸着され、安価なヘチマの繊維を利用した集塵フィルターであるため、排気状況により、汚染の程度によって、簡単に取り替えることもできる等の効果を奏する。
【0017】
また、使用後の集塵フィルターである,ヘチマ廃棄物については、多くの炭素源を付着していることから、木質バイオ燃料を燃焼した時に、燃焼時に出るタールなどを含む排気ガスのフィルターとして利用でき、また、使用後の集塵フィルターは、ボイラーなどの熱源の補助材として使用可能であることにより、廃棄物ゼロミッション型再環境エネルギーとしての役割に大きく付与できる等、極めて有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施例を示し、(a)は、原料のヘチマの斜視図であり、(b)は、加工後のヘチマを示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施例を示し、(a)は、原料のヘチマ繊維を示す一部欠截拡大斜視図であり、(b)は、使用後のヘチマ繊維を示す一部欠截拡大斜視図であり、(c)は、洗浄後のヘチマ繊維を示す一部欠截拡大斜視図である。
【図3】この発明の方法により得られたヘチマを利用したガスフィルター装置の一実施例を示す側面図である。
【図4】この発明の方法により得られたヘチマを利用したガスフィルター装置の一実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施の形態について述べると、ウリ科植物であるヘチマが完熟後に繊維だけにした乾燥ヘチマを、温水に浸漬して膨潤し、板に挟んでプレス加工し、繊維を圧縮し、より密度の高い網目構造にして乾燥させるヘチマ繊維を用いた集塵フィルターの製造方法とするものである。
【0020】
上記の製造方法をより詳しく述べると、適宜の直径(X)と長さ(Y)を有する乾燥ヘチマ(1)を、繊維で支えられている中心部分の芯を取り除いて円筒形に形成する工程と、該円筒形に形成した乾燥ヘチマ(1)を、適宜の温度を有する温水に浸漬し、多様な形をした空孔性ときめ細やかな骨組み構造を持つ網目構造中に、水が充分に行き渡り、繊維が膨潤させる工程と、浸漬したヘチマを、温水より取り出し、二枚の取り出し板に挟んで適宜な圧力でプレスする工程と、そのまま内温60〜70°Cに保たれている恒温槽中で4時間程度乾燥する工程と、これにより、元の円筒形の乾燥ヘチマを板状に圧縮する工程からなる天然素材である乾燥ヘチマの繊維を集塵フィルターとして利用する方法である。
【実施例】
【0021】
そこで、この発明の一実施例を図1,図2に基づいて詳細に説明すると、天然素材である乾燥したヘチマの繊維を利用するフィルターの製造方法であって、
適宜の直径(X)と長さ(Y)を有する乾燥ヘチマ(1)を、繊維で支えられている中心部分の芯を取り除いて円筒形に形成する工程と、
該円筒形に形成した乾燥ヘチマ(1)を、適宜の温度を有する温水に浸漬し、多様な形をした空孔性ときめ細やかな骨組み構造を持つ網目構造中に、水が充分に行き渡り、繊維を膨潤させる工程と、
この温水の浸漬により膨潤したヘチマを、温水より取り出し、二枚の取り出し板(A,A)に挟んで適宜な圧力でプレスする工程と、
挟んだヘチマを、そのまま内温60〜70°Cに保たれている恒温槽中で4時間程度乾燥する工程と、
これにより、元の円筒形の乾燥ヘチマを板状に圧縮する工程と、
からなることを特徴とする天然素材である乾燥ヘチマの繊維を利用する集塵フィルターの製造方法から構成される。
【0022】
尚、繊維で支えられている中心部分の芯を取り除いて円筒形に形成し、乾燥ヘチマを板状に圧縮した乾燥ヘチマを、そのままか、あるいは1箇所を切り開いて平板状にして使用することを特徴とする天然素材である乾燥ヘチマの繊維を利用する集塵フィルターの製造方法である。
【0023】
次に、前記の天然素材である乾燥ヘチマの繊維を利用する集塵フィルターの製造方法から構成された、ヘチマの具体的なガスフィルター装置の一実施例を、図4,図5に基づいて説明すると、加工成型したヘチマ(縦10cm×横15cm×厚み0.7mm)の複数個を加工成型し、縦に並べた乾燥ヘチマ(ロ)を複数金網枠(2)に入れ、これを、ステンレス製ボックス(縦15cm×横20cm×深さ10cm)(3)に並べ、さらに、タンク(4)にも横に並べた乾燥ヘチマ(ハ)を複数設け、最大20枚を縦列して並べて、水分およびタール質を含んだガス(イ)を通過させ、ヘチマの多孔質を利用し清浄ガス(ニ)にするものである。その際に、水分、タールは多孔質であるヘチマに吸着され、流下に従って受器であるタンク(4)に回収される構造である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明の天然素材である乾燥ヘチマの繊維を利用する集塵フィルターの製造方法の技術を確立し、該技術を実施・販売することにより、産業上利用可能性があるものである。
【符号の説明】
【0025】
1 乾燥ヘチマ
2 金網枠
3 ステンレス製ボックス
4 タンク
X 原料ヘチマの直径
Y 原料ヘチマの長さ
イ 水分およびタール質を含んだガス
ロ 縦に並べた乾燥ヘチマ
ハ 横に並べた乾燥ヘチマ
ニ 清浄ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然素材である乾燥したヘチマの繊維を利用するフィルターの製造方法であって、
適宜の直径(X)と長さ(Y)を有する乾燥ヘチマ(1)を、繊維で支えられている中心部分の芯を取り除いて円筒形に形成する工程と、
該円筒形に形成した乾燥ヘチマ(1)を、適宜の温度を有する温水に浸漬し、多様な形をした空孔性ときめ細やかな骨組み構造を持つ網目構造中に、水が充分に行き渡り、繊維を膨潤させる工程と、
この温水の浸漬により膨潤したヘチマを、温水より取り出し、二枚の取り出し板(A,A)に挟んで適宜な圧力でプレスする工程と、
挟んだヘチマを、そのまま内温60〜70°Cに保たれている恒温槽中で4時間程度乾燥する工程と、
これにより、元の円筒形の乾燥ヘチマを板状に圧縮する工程と、
からなることを特徴とする天然素材である乾燥ヘチマの繊維を利用する集塵フィルターの製造方法。
【請求項2】
繊維で支えられている中心部分の芯を取り除いて円筒形に形成し、乾燥ヘチマを板状に圧縮した乾燥ヘチマを、そのままか、あるいは1箇所を切り開いて平板状にして使用することを特徴とする天然素材である乾燥ヘチマの繊維を利用する集塵フィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61401(P2012−61401A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206449(P2010−206449)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(592031709)有限会社東根製作所 (3)
【Fターム(参考)】