説明

天然繊維に対する抗菌加工方法

【課題】 超分散微粒子の銀等の抗菌剤を用いて、動物及び植物の天然繊維にバインダーを使用せず加工し、抗菌効果の持続性を高めると共に安価に抗菌加工ができるようにする。
【解決手段】
動物又は植物の天然繊維を、メタケ酸ソーダ等の助剤を添加したアルカリ洗剤に温水を加えてPH12〜13になるように調整した洗剤で、約60℃で15〜60分洗浄することと、
洗浄した上記繊維を真水で3〜5回濯ぎ、上記洗剤を洗い流すことと、
上記洗剤を洗い流した繊維に、1〜20ナノメートルサイズで濃度150PPM〜5PPMの超分散微粒子の銀等の抗菌剤のイオン水を噴霧するか又は浸漬して、該抗菌剤を該繊維の組織内に浸透させ、つぎに温度60℃〜120℃にて乾燥させ、該繊維の組織中に該抗菌剤を固定化することと、
から構成される天然繊維に対する抗菌加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽毛、人毛等の動物天然繊維、綿、麻等の植物天然繊維に対する抗菌加工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、羽毛等の動物天然繊維或いは綿等の植物天然繊維に抗菌剤を付与する加工方法として、銀粒子が抗菌作用を有することは良く知られていて、最初は、例えば羽毛の天然繊維にコロイド状の銀粉末を吹きつけて付着させていたが、1、2回の洗濯で銀粉末は剥げ落ち、抗菌作用はその効力を失っていた。そこで、該銀粉末をバインダーによって付着させる方法が用いられるようになった。
しかし、これでも洗うたびにバインダーと共に剥げ落ち、抗菌効果が長続きしなかった。
【特許文献1】特開平8−157900
【特許文献2】特開2002−339243
【0003】
このことは、羽毛、綿等の天然繊維は油脂分を保有しており、バインダーを用いて繊維に抗菌剤を付着させても、洗浄によって剥げ落ち、又は抗菌剤がコロイド状の粉末であっても、微細な細胞組織から成る繊維の組織内に浸透せず、繊維の表面にバインダーにより付着するのみであるため、数回の洗濯でこれ等抗菌剤が剥げ落ち、抗菌効果を減殺することが、発明者の研究の結果判明した。
そこで、抗菌効果を持続せしめるためには天然繊維の組織内に抗菌剤を浸透せしめ、その組織内に固定する必要があり、天然繊維の組織内に抗菌剤を浸透させるためには、該抗菌剤を微細な細胞組織の繊維の組織内に浸透し得る粒子にすべきであるとの結論に達したのである。
【0004】
そのため、抗菌剤をこのような繊維の組織内に浸透し得る大きさはナノメートルサイズにすれば可能であることが実験の結果判明し、抗菌剤を1〜20ナノメートルサイズの超分散微粒子にするため、従来低電圧少量生産されていた生産方式を高電圧による生産方式に代え、安価で大量生産できるようにした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記超分散微粒子の抗菌剤を用いて、上記天然繊維にバインダーを使用せず加工し、抗菌効果の持続性を高めると共に安価に抗菌加工ができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、
動物又は植物の天然繊維を、メタケ酸ソーダ等の助剤を添加したアルカリ洗剤に温水を加えてPH12〜13になるように調整した洗剤で、約60℃で15〜60分洗浄することと、
洗浄した上記繊維を真水で3〜5回濯ぎ、上記洗剤を洗い流すことと、
上記洗剤を洗い流した繊維に、1〜20ナノメートルサイズで濃度150PPM〜5PPMの超分散微粒子の銀等の抗菌剤のイオン水(蒸留水)を噴霧するか又は浸漬して、該抗菌剤を該繊維の組織内に浸透させ、つぎに温度60℃〜120℃にて乾燥させ、該繊維の組織中に該抗菌剤を固定化することと、
から構成される天然繊維に対する抗菌加工方法を提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、天然繊維をアルカリ洗剤を用いて約60℃で洗浄して完全に脱脂させ、組織が膨張した該天然繊維の組織内へ、1〜20ナノメートルサイズで濃度150PPM〜5PPMの抗菌剤の超分散微粒子のイオン水が浸透して行き、そして60℃〜120℃の温度で乾燥させることによって組織内のイオン水が蒸発し、抗菌剤の超分散微粒子のみが該繊維の組織中に残留し、そして固定することとなるため、加工された天然繊維は50回に及ぶ洗濯でも抗菌剤が剥げ落ちることなく、抗菌作用を継続発揮でき、抗菌率も高度の好結果を得ることができ、ダニの忌避剤としても好結果を発揮し、特に従来抗菌剤の付着のため使用されていたバインダーを使用することなく加工できる画期的な方法で、その効果甚大なるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
天然繊維は、羽毛、人毛髪、ウール、シルク等の動物天然繊維並びに木綿、麻等の植物天然繊維を含み、抗菌剤として、銀、銅、酸化チタン等のナノメートルサイズの超分散微粒子を使用することができ、アルカリ洗剤の助剤としては、メタケ酸ソーダに限らず、重曹、アンモニア等が使用され、助剤はアルカリ洗剤に1:1の割合で添加するようにするとよい。
【実施例1】
【0009】
木綿繊維を、メタケ酸ソーダの助剤を添加したアルカリ洗剤に温水を加えてPH12になるように調整した洗剤で、約60℃の温度で15分洗浄する。
洗浄した木綿繊維を真水で5回濯ぎ、上記洗剤を洗い流す。
脱脂された上記木綿繊維に、4ナノメートルサイズの超分散微粒子で濃度150PPMの銀イオン水を噴霧し、該銀イオン水を該木綿繊維の組織内に浸透させる。
つぎに60℃の温度で該木綿繊維を乾燥させ、該木綿繊維の組織内に上記銀粒子を残留、固定させる。
【0010】
このようにして木綿の繊維に抗菌加工された木綿繊維で縫製した白衣を抗菌性試験した結果、〔表1〕に示すとおり、50回洗濯しても洗濯する前と比較して菌数、殺菌活性値及び静菌活性値が変わらないことが実証された。このことは、木綿繊維内に銀超分散微粒子が浸透、固定されて、剥げ落ちず、銀超分散微粒子が木綿繊維内に残留している証である。
【表1】

【実施例2】
【0011】
ウール繊維を重曹の助剤を添加したアルカリ洗剤に温水を加え、PH13になるように調整した洗剤で約60℃で30分洗浄する。
洗浄したウール繊維を真水で3回濯ぎ、上記洗剤を洗い流す。
脱脂された上記ウール繊維に、10ナノサイズの超分散微粒子で濃度100PPMの銅イオン水を浸漬して該銅イオン水を該ウール繊維の組織内に浸透させる。
つぎに、温度80℃で該ウール繊維を乾燥させ、該ウールの繊維の組織内に該銅超分散微粒子を残留、固定させる。
【0012】
このようにして加工されたウール繊維も実施例1に示した作用、効果と同様に該ウール繊維の組織内に銅超分散微粒子が残留、固定されているため、該ウールを50回洗濯しても該銅超分散微粒子は剥げ落ちず、該ウール繊維の組織内に残留しており、抗菌作用が劣化することはなかった。
【実施例3】
【0013】
羽毛をアンモニアを助剤として添加したアルカリ洗剤に温水を加え、PH13になるように調整した洗剤で、約60℃で20分洗浄する。
洗浄した羽毛繊維を真水で5回濯ぎ、上記洗剤を洗い流す。
脱脂された上記羽毛繊維に15ナノメートルサイズで濃度5PPMの超分散微粒子の酸化チタンイオン水に浸漬し、該酸化チタンイオン水を該羽毛繊維の組織内に浸透させる。
つぎに、100℃の温度で該羽毛繊維を乾燥させ、該羽毛繊維の組織内に該酸化チタン超分散微粒子を残留、固定させる。
【0014】
このようにして加工した羽毛の繊維も、上記実施例1、2に示した作用、効果と同様に、該羽毛繊維の組織内に酸化チタンの超分散微粒子が残留、固定されているため、該羽毛を50回に及ぶ洗濯をしても該酸化チタンの超分散微粒子が剥げ落ちることなく、該羽毛の繊維の組織内に残留して抗菌作用を継続発揮していることが判明した。
【実施例4】
【0015】
人毛髪をメタケ酸ソーダの助剤を添加したアルカリ洗剤に温水を加え、PH12になるように調整した洗剤で、約60℃の温度で20分洗浄する。
洗浄した人毛髪を真水で3回濯ぎ、上記洗剤を洗い流す。
脱脂された上記人毛髪に5ナノメートルサイズの超分散微粒子で濃度70PPMの銀イオン水に浸漬し、該銀イオン水を該人毛髪の組織内に浸透させる。
つぎに、80℃の温度で該人毛髪を乾燥させ、該人毛髪の繊維の組織内に上記銀粒子を残留、固定する。
【0016】
このようにして抗菌加工された人毛髪をブドウ球菌を試験菌としてフラスコ振動方法で試験した結果、〔表2〕に示すとおり、その減少率は99.9%との結果を得た。
このことは、人毛髪の組織内に残留している銀超分散微粒子の抗菌剤が、その抗菌作用を継続発揮していることを示すものである。
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物又は植物の天然繊維を、メタケ酸ソーダ等の助剤を添加したアルカリ洗剤に温水を加えてPH12〜13になるように調整した洗剤で、約60℃で15〜60分洗浄することと、
洗浄した上記繊維を真水で3〜5回濯ぎ、上記洗剤を洗い流すことと、
上記洗剤を洗い流した繊維に、1〜20ナノメートルサイズで濃度150PPM〜5PPMの超分散微粒子の銀等の抗菌剤のイオン水(蒸留水)を噴霧するか又は浸漬して、該抗菌剤を該繊維の組織内に浸透させ、つぎに温度60℃〜120℃にて乾燥させ、該繊維の組織中に該抗菌剤を固定化することと、
から構成される天然繊維に対する抗菌加工方法。