説明

天然繊維の光改質方法および装置

【課題】省エネルギー型であり、室温でかつ簡便な操作で安全に、天然繊維を含む繊維や繊維製品の染色性等を改質できる方法およびそのための装置を提供する。
【解決手段】天然繊維を含む繊維又は繊維製品を、光照射によりラジカルを発生する化合物の存在下で光照射する。光照射によりラジカルを発生する化合物としては、好ましくは、過酸化物が用いられる。また、光照射後に繊維及び繊維製品を還元剤で処理する態様も包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維を含む繊維又は繊維製品の光改質方法およびこれを実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、天然繊維やこれを含む混紡繊維等は、衣料品等の原料として広く大量に用いられている。これらの繊維製品では、一般に、原料自体に不足している性能を付与するための改質がなされている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0003】
しかし、これらの改質の多くは高温処理により行われているため、大量のエネルギーを要する多消費型プロセスとなり、多量の二酸化炭素の放出を伴い、また、装置を始動してからの温度が高温で安定する迄に長時間要し、その間に無駄なエネルギーを要するという問題があった。
【0004】
また、これらの改質法では各種樹脂類、塩類、金属類、有機化合物などの機能性物質を物理的に付与することが多いため、長期間の使用や洗浄等により機能性物質が繊維や繊維製品から脱離し、その効果が十分に発現しないという問題もあった。
【0005】
そのため、繊維に対する化学反応により改質し機能を付与することも行われているが、この化学反応は通常高温処理やプラズマや電子線等の物理的手段により行われる場合が多く、いずれの場合もエネルギー多消費型プロセスとなり、また大型の装置や高真空等の特殊な条件も時には必要とするといった難点があった。
【0006】
ここで用いられる化学反応により行われた天然繊維または該天然繊維を含む繊維、及び天然繊維または該天然繊維を含む繊維からなる繊維製品の改質は多くの場合加水分解により失われ、その為洗濯等により徐々に機能が低下するという問題も有った。
【0007】
【非特許文献1】塩澤和男、染色仕上加工技術、地人書館、1991年発行、3.5, 3.7〜3.9、3.12節、及び第6、7章
【非特許文献2】日本学術振興会、繊維・高分子機能加工第120委員会編、学振版染色機能加工要論、色染社、2003年発行、第7、8章
【非特許文献3】繊維学会編著、やさしい繊維の基礎知識、日刊工業新聞社、2004年発行、第9章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点を克服するためになされたものであって、省エンルギー型であり、室温でかつ簡便な操作で安全に、天然繊維を含む繊維や繊維製品の改質を容易とする方法およびそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる従来技術の難点を解消するために鋭意検討した結果、天然繊維を含む繊維や繊維製品を、光照射によりラジカルを発生する化合物の存在下で光照射する方法が極めて有効であることを見出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉光照射によりラジカルを発生する化合物の存在下、天然繊維を含む繊維又は繊維製品に対し、光照射することを特徴とする天然繊維を含む繊維又は繊維製品の改質方法。
〈2〉光照射によりラジカルを発生する化合物を、天然繊維を含む繊維又は繊維製品の一部だけに付与して光照射することを特徴とする〈1〉に記載の改質方法。
〈3〉光照射によりラジカルを発生する化合物が過酸化物であることを特徴とする〈1〉又は〈2〉に記載の改質方法。
〈4〉光ビームまたはマスクを通して光照射を行うことを特徴とする〈1〉〜〈3〉の何れかに記載の改質方法。
〈5〉光照射後に繊維及び繊維製品を還元剤で処理することを特徴とする〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の繊維及び繊維製品の改質方法。
〈6〉光照射によりラジカルを発生する化合物の存在下で天然繊維を含む繊維又は繊維製品に光照射する手段を備えた、〈1〉〜〈5〉のいずれかに記載の方法を実施するための天然繊維を含む繊維又は繊維製品の改質装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明方法によれば、天然繊維を含む繊維又は繊維製品の改質を室温で簡便な装置を用いて安全に行うことができ、また、上記繊維及び繊維製品の改質範囲を拡大して新たな機能の発現や染色性の改善等を実現することができる。また、本発明方法は、持続的な社会の発展に必要な、省資源、省エネルギー、環境負荷低減技術として多いに寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明でいう、天然繊維を含む繊維とは、天然繊維単独の他、複数の天然繊維からなる繊維を意味する。また、天然繊維以外の繊維の1種類以上と、天然繊維の1種類以上とが混合した繊維も含む。ここで、天然繊維以外の繊維とは、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維を指すものとする。
【0013】
本発明の対象となる天然繊維としては植物繊維や動物繊維が挙げられる。植物繊維としては木綿、麻、竹繊維、バクテリアやその他の原料から得られるナノファイバー等が挙げられ、動物繊維としては絹や羊毛等が挙げられるが、この他にも天然繊維に由来する繊維はすべて用いることが出来る。また、これらの天然繊維の構成要素であるフィブリル等の微細繊維構造を有する物質もすべて用いることができる。
【0014】
天然繊維を含む繊維製品としては糸、織物、衣服、各種容器、装飾品等、主に天然繊維からなる製品以外にも、他の素材との複合体等からなる製品にも天然繊維に由来する繊維が含まれている場合にはすべて用いることができる。
【0015】
本発明でいう、天然繊維を含む繊維又は繊維製品の改質とは、該繊維及び繊維製品が本来有する機能、性能、性質等とは異なる新たな機能、性能、性質等を付与することを意味し、新たな機能、性能、性質等が付与されていれば、本来有する機能、性能、性質等を併せ持っていても良い。
繊維及び繊維製品の具体的な改質態様としては、染色性、濃色性、深色性、風合い、防縮性、親水性、撥水性、防水性、親油性、形状記憶性、導電性、しわ加工性、防しわ性、難燃性、樹脂加工性、防虫性、妨カビ性、消臭性、加工性、減量加工、グラフト性、架橋、SR性、電磁波シールド性、メッキ性、芳香性、芳香徐放性等が挙げられるが、これらの機能、性質等に限定されるものではなく、該繊維や繊維製品が本来有する機能、性能、性質等とは異なる新たな機能、性能、性質等を付与するものであればよい。
【0016】
本発明において用いる照射光としては120〜800nmの、好ましくは190〜600nmの紫外線や可視光(以下、紫外可視光ともいう)を用いることが望ましい。紫外可視光源としては特に制限はなく、連続光でもパルス光でも良く、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノン灯、ブラックライト、各種LED、各種エキシマランプ等の通常の光源を用いることができるが、これらに限定されるものではなく従来公知の光源を全て用いることができる。照射光強度にも特に制限は無いが、紫外可視光の連続光源としては0.1mW〜10kWの光源が適している。
【0017】
また光源として各種レーザーを用いることが出来、レーザー光はパルス光でも連続照射光でもよいが、エキシマレーザー(ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザー、XeFエキシマレーザー等)、アルゴンイオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、YAGレーザーの第2、及び第3高調波等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく従来公知のレーザーを全て用いることができる。
紫外可視レーザー光としては、特別な制約はないが、波長が140〜800nm、好ましくは190〜600nm程度のものを用いることが望ましい。
レーザー照射光強度にも特に制限は無いが、パルス光では0.1mJ/パルス〜1kJ/パルス、連続光は0.1mW〜10kWの光源が適している。
【0018】
光照射には光ビームを用いることができる。このような光ビームとしては各種レーザーの使用が適しているが、通常の光源を用いて各種レンズやミラー類等の光学系を用いて光を特定の方向に照射できるものであればビームが平行光線でなくても用いることができる。これらの光ビームを各種ミラー類等の光学系を用いることにより移動しながら対象となる天然繊維を含む繊維または繊維製品に照射することができる。
【0019】
また、マスクを通して光照射を行うこともできる。マスクを用いて光照射を行う場合には、マスクは光源と対象となる天然繊維を含む繊維または繊維製品の間の何れの位置に置いても良く、光源としては上記の光源の何れをも用いることができる。また、光源とマスクの間、及び/又はマスクと対象となる天然繊維を含む繊維または繊維製品の間に各種レンズやミラー類等の光学系を設置して、マスクのパターンを縮小、拡大、変形することもできる。
【0020】
また、通常の光照射、光ビームによる光照射、及びマスクを用いる光照射において、光源の特性、及び/又は各種レンズやミラー類等の光学系を用いることにより光照射面内の光強度に強弱を付けることにより天然繊維を含む繊維または繊維製品の改質の度合いにグラデーションを付けることもできる。
【0021】
光照射時間は、布の種類、厚さ、形態、溶液の種類と濃度、更には、照射紫外可視光の種類や光強度等を考慮することにより適宜定められるが、定常光源の場合は通常1秒〜120分、各種レーザーを用いた場合には連続レーザーでは通常1μ秒〜30分、パルスレーザーでは通常1〜1000パルスもあれば充分であるが、これらの照射時間に関わらず必要な改質が起こるのに必要な時間光照射を行えばよい。
【0022】
本発明において用いる光照射によりラジカルを発生する化合物としては、好ましくは各種過酸化物、各種光重合開始剤、等が挙げられ、特に過酸化水素や過酸類が好ましいが、これらに限定されるものではなく、該化合物が光照射により単独、或いは他の化合物との相互作用により、ラジカル、ラジカルカチオン、或いはラジカルアニオンを発生するものであればよい。
【0023】
また、本発明においては、改質により付与された新たな機能、性能、性質等の安定化等や、該機能、性能、性質等の更なる改質のために、光照射後に繊維及び繊維製品を還元剤で処理する方法も採ることもできる。
還元剤としては、特に制約はなく従来公知の還元剤が全て使用できる。このような還元剤としては、チオ硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト、水素化ホウ素ナトリウム、ロンガリット、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ヒドラジン等、或いは還元性を有するビタミンC、各種アルデヒド類、ギ酸等の有機化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく還元性を有するものであれば良い。また、これらの還元剤のいずれかを単独で用いても良いが、複数の還元剤からなる混合物を用いることもできる
【0024】
本発明の光照射によりラジカルを発生する化合物の作用についてであるが、光照射により発生したラジカル(ラジカル、ラジカルカチオン、ラジカルアニオン)種により上記繊維または繊維製品の表面上にラジカルが発生し、この様に発生したラジカルが分解すること、或いは酸素、添加した薬剤、溶媒等との反応、又はその反応に引き続いて起こる分解等により改質が起こるものと考えられる。
しかし、本発明方法では、上記の推定反応機構に関わらず、光照射によりラジカルを発生する化合物の存在下で、天然繊維を含む繊維や繊維製品が光照射を受けることにより改質が起これば良いことは勿論である。
【0025】
本発明の実施の態様に特別な制限はないが、好ましい実施の態様としては、天然繊維を含む繊維又は繊維製品を、光照射によりラジカルを発生する化合物を含む溶液に浸漬或いは懸濁させて光照射する方法、或いは該溶液に浸して引き上げた所に光照射する方法、或いは該溶液を上記繊維または繊維製品に塗布、吹きつけ等を行い光照射する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
特に該溶液を上記繊維または繊維製品に塗布、吹きつけ等を行う際にはエアーブラシやブラシ類等を用いて上記繊維または繊維製品全体に該溶液を付与するばかりではなく、対象物の一部に付与することにより部分的な改質を起こすことも可能で、この部分的な改質により文字、図表等の形態を有する改質を起こすことができる。また、これらの光照射は上記繊維または繊維製品が静置している状態、或いは移動している状態で行うことができる。
【0026】
光照射によりラジカルを発生する化合物の溶液を用いる場合の溶媒としては、照射光を殆ど吸収しないで光照射による繊維及び繊維製品の改質を著しく阻害するものでなければ特に制約はなく従来公知の溶媒が全て使用できる。
このような溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒の他に、デカン、ドデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素(分子内に脂肪族基を有する芳香族炭化水素も含む)等の無極性溶媒、プロピルアミン、エチレンジアミン、各種カルボン酸、各種ポリカルボン酸、などのプロトン性溶媒等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの溶媒のいずれかを単独で用いても良いが、複数の溶媒からなる混合溶媒を用いることもできる。
【0027】
また、光照射によりラジカルを発生する化合物、或いはその溶液の繊維及び繊維製品への浸透性を高める為に界面活性剤を共存させることができる。
界面活性剤としては、光照射による繊維及び繊維製品の改質を著しく阻害するものでなければ従来公知の界面活性剤が全て使用できる。このような界面活性剤としては、たとえば、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどの非イオン界面活性剤、アミノ酸などの両性表面活性剤などが例示される。
【0028】
また、これらの界面活性剤のいずれかを単独で用いても良いが、複数の界面活性剤からなる混合物を用いることもできる。
また、それらの界面活性剤の溶液を用いることもできるが、このような溶媒としては、水、アルコール類、鎖状または環状の炭化水素類、エーテル類等の単独溶媒あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。界面活性剤の含有量は溶媒に対する界面活性剤の飽和濃度以下であれば特に制限はないが、好ましくは溶媒に対して、0.0001〜50重量%、より好ましくは0.01〜10重量%とするのが適当である。
【0029】
つぎに、本発明方法を実施するための代表的な改質装置の幾つかを以下に例示するが、本装置はこれらに限定されるものではない。
【0030】
図1の装置は、糸状または織物状の天然繊維を含む繊維や繊維製品を改質するために好ましく用いられる改質装置の例である。図1の装置の概要は、天然繊維を含む繊維や繊維製品の全体に、薬液槽で光照射によりラジカルを発生する化合物を付与し、該繊維や繊維製品全体に光照射を行い、その後で洗浄槽に於いて過剰な薬液などを除去するものである。
この装置によれば、上記繊維または繊維製品を薬液に浸漬し、引き上げた所に光照射することができる。
【0031】
図2の装置は、糸状または織物状の天然繊維を含む繊維や繊維製品の改質するために好ましく用いられる改質装置の他の例である。図2の装置の概要は天然繊維を含む繊維や繊維製品の全体に、薬液槽で光照射によりラジカルを発生する化合物を付与し、光ビームにより該繊維や繊維製品の一部に光照射を行い、その後で洗浄槽に於いて過剰な薬液などを除去し、その後、還元処理槽で還元剤によって処理するものである。
この装置によれば、上記繊維または繊維製品を薬液に浸漬し、引き上げた所に光学系を用いて光ビームを動かす光照射を行うことにより、必要な箇所に任意のパターンを伴う改質が可能となる。還元剤で処理することによって、光照射時に発生したカルボニル基や過酸化物などの不安定物質をアルコールなどの安定した化合物に変換することができる。
【0032】
図3の装置は、糸状または織物状の天然繊維を含む繊維や繊維製品の改質するために好ましく用いられる改質装置の更に他の例である。図3の装置の概要は、光照射によりラジカルを発生する化合物により満たされている薬液槽に、天然繊維を含む繊維や繊維製品を投入し、該薬液と合成繊維を含む繊維や繊維製品を撹拌しながら光照射を行ものである。
この装置によれば、上記繊維または繊維製品を薬液に浸漬し、必要に応じ薬液を注入しながら撹拌中で光照射を行うことにより、取り扱いが煩雑な小さな上記繊維または繊維製品の改質を容易とする。
【0033】
図4の装置は、織物状又は成形された天然繊維を含む繊維や繊維製品の改質するために好ましく用いられる改質装置の例である。図4の装置の概要は、天然繊維を含む繊維や繊維製品の一部にスプレー等により薬液を部分的に付与し、光ビームにより該繊維や繊維製品の一部に光照射を行い、その後で洗浄槽に於いて過剰な薬液などを除去するものである。
この装置によれば、薬液を対象とする上記繊維または繊維製品に吹き付けてから光照射を行うため、薬液の吹きつけにロボットアーム等の可動機能を付与することにより上記繊維または繊維製品の形態に関係なく必要な箇所に薬液を付与することができ、また、三次元的な光照射の制御を行うことにより、上記繊維または繊維製品の形態に関係なく必要な箇所の改質が可能となる。
【実施例】
【0034】
次に実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
実施例1
綿布を5%の過酸化水素水溶液に含浸させ引き上げ、含浸させた過酸化水素に対して15Wの低圧水銀灯照射を60分行い、過酸化水素の光分解によりOHラジカルを発生させこれと綿布との反応を行い、水、メタノール、水、中性洗剤、水の順で洗浄した後、一晩減圧乾燥した。得られた綿布のDNPH試験を行うと本来染まらない綿布が黄色を呈したことより綿布にカルボニル基が導入されたことが判った。これはOHラジカルが綿の水素原子をラジカル的に引き抜き、その結果綿上に発生した炭素ラジカルが空気中の酸素と反応、分解してカルボニル基が導入されたものと推定される。また、得られた布を鑑別染料(カヤスティン)により染色したところ、未処理の綿布と比べてやや淡色化したことより、綿布の表面構造が変化し改質が起きたことが判明した。
【0036】
実施例2
マーセル化した綿布を5%の過酸化水素水溶液に含浸させ引き上げ、含浸させた過酸化水素に対して15Wの低圧水銀灯照射を60分行い、過酸化水素の光分解によりOHラジカルを発生させこれと綿布との反応を行い、水、メタノール、水、中性洗剤、水の順で洗浄した後、一晩減圧乾燥した。得られた布を鑑別染料(カヤスティン)により染色したところ、未処理の綿布と比べてやや淡色化したことより、綿布の表面構造が変化し綿布の改質が起きたことが判明した。淡色化の度合いは通常の綿布よりも顕著であった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明方法を実施するために使用される代表的な改質装置の説明図。
【図2】本発明方法を実施するために使用される他の代表的な改質装置の説明図。
【図3】本発明方法を実施するために使用される更に他の代表的な改質装置の説明図。
【図4】本発明方法を実施するために使用される更に他の代表的な改質装置の説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射によりラジカルを発生する化合物の存在下、天然繊維を含む繊維又は繊維製品に対し、光照射することを特徴とする天然繊維を含む繊維又は繊維製品の改質方法。
【請求項2】
光照射によりラジカルを発生する化合物を、天然繊維を含む繊維又は繊維製品の一部だけに付与して光照射することを特徴とする請求項1に記載の改質方法。
【請求項3】
光照射によりラジカルを発生する化合物が過酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の改質方法。
【請求項4】
光ビームまたはマスクを通して光照射を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の改質方法。
【請求項5】
光照射後に繊維及び繊維製品を還元剤で処理することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の繊維及び繊維製品の改質方法。
【請求項6】
光照射によりラジカルを発生する化合物の存在下で天然繊維を含む繊維又は繊維製品に光照射する手段を備えた、請求項1〜5のいずれかに記載の方法を実施するための天然繊維を含む繊維又は繊維製品の改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−240166(P2008−240166A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78453(P2007−78453)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】