天然繊維の製造方法
【課題】天然繊維の強度の低下を招くことなく、天然繊維が高温環境下にさらされた場合であっても、天然繊維特有のにおいの発生を抑えることができる天然繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】植物をレッティング処理で解繊することにより、前記植物から天然繊維を取り出す解繊処理工程S1と、取り出された前記天然繊維に高圧洗浄液を吹き付けることにより、該天然繊維を洗浄する洗浄処理工程S2と、洗浄された前記天然繊維を浸漬液に浸漬し、該浸漬液を加熱することにより、前記天然繊維を蒸煮する蒸煮処理工程S3と、を少なくとも含む。
【解決手段】植物をレッティング処理で解繊することにより、前記植物から天然繊維を取り出す解繊処理工程S1と、取り出された前記天然繊維に高圧洗浄液を吹き付けることにより、該天然繊維を洗浄する洗浄処理工程S2と、洗浄された前記天然繊維を浸漬液に浸漬し、該浸漬液を加熱することにより、前記天然繊維を蒸煮する蒸煮処理工程S3と、を少なくとも含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を解繊して天然繊維を製造する方法に係り、特に、天然繊維のにおいを好適に低減することができる天然繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源枯渇の問題や炭酸ガス排出量増加に伴う地球温暖化といったエコロジーの観点より、天然繊維が幅広く利用され始めている。天然繊維の材料となる植物としては、例えば、サイザル、ジュート、ケナフなどの靭皮植物が用いられることが多い。
【0003】
このような靭皮植物は、靭皮に良質の繊維を多く含んでいるため繊維材料としては好適であり、木材由来のパルプ、樹脂成形体の充填材や木質成形体の木質原料の代替材料として利用されつつある。例えば、自動車などの車両の内装材の場合、この天然繊維は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を接着剤として複合化して用いられる。
【0004】
このような天然繊維の原材料となる靭皮植物は、例えば、図11(a),(b)に示すように、靭皮1の他に外皮(表皮)2や芯材(コア)3を有しており、靭皮中の天然繊維10はリグニンやヘミセルロースなどの接着物質12によって互いに接着結合した状態となっている。
【0005】
このため、この天然繊維10を傷つけることなく繊維間の接着物質12を除去して解繊するために、靭皮1を含む靭皮植物を、繊維間に存在する接着物質12を分解する微生物を含む解繊液に数週間から1ヶ月浸漬させて、この靭皮1を繊維化するレッティング処理が行われる。
【0006】
このようにレッティング処理による解繊処理工程において、解繊液に生息する微生物(リグニン分解菌やヘミセルロース分解菌)によって天然繊維同士を接着しているリグニンやヘミセルロースなどを分解するので、図11(c)に示すように、靭皮(草木質材料)1を天然繊維10に解繊することができる。
【0007】
この際、解繊処理により取り出された天然繊維10の表面には、接着物質12の分解により発生するにおい物質14と、分解しきれなかった接着物質15とが存在し、におい物質14が天然繊維特有のにおいの原因となっている。
【0008】
そこで、においの原因となる物質を除去すべく、解繊処理によって得られた天然繊維10を水で洗い流して、天然繊維10を洗浄することがなされている。また、天然繊維(木質材)のにおいを低減する別の方法として、炭酸水素ナトリウムを消臭剤として天然繊維に含浸させる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−289005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように解繊処理後の天然繊維を水洗した場合には、におい物質14を洗い流すことができ、天然繊維が発するにおいの発生を抑えることができる。しかしながら、洗浄後の天然繊維を用いて、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の接着剤とこれを複合化し、加熱工程を経て、自動車部品等の成形品に成形した場合、この成形品からにおいが発生することがある。これは、図11(d)に示すように、加熱工程において、水洗により洗浄しきれなかった接着物質15が、加熱により生じた熱で分解され、においの発生を促進するからであると考えられる。
【0011】
したがって、洗浄工程において、におい物質を除去し、一見、天然繊維がきれいになったとしても、僅かな接着物質15が天然繊維に付着していると、これが結果としてにおいの発生源となる。さらに、この加熱工程において、接着物質15の全てが分解するわけではないので、その後、自動車等室内に、この成形品が取り付けられ、室内において高温環境下に晒されたときには、接着物質の分解が進行し、これにより、さらににおいが発生してしまうことが予想される。
【0012】
このような熱分解によるにおいの発生状況下においては、特許文献1の消臭剤(炭酸水素ナトリウム)を用いたとしても、充分に消臭効果を発揮することはできない。そこで消臭剤の添加量をさらに増やした場合、多少なりとも消臭効果を期待することができる。しかしながら、このような消臭剤は化学物質であるため、その増量は、エコロジーを目的として天然繊維を用いたそもそもの趣旨に反することになる。
【0013】
このような点を鑑みると、洗浄前に、アルカリ水溶液を用いたアルカリ洗浄により、におい物質及び接着物質の双方を除去すればよいとも考えられる。しかしながら、アルカリ洗浄は、これら物質を除去するばかりでなく、アルカリ水溶液のアルカリが天然繊維そのものを攻撃するため、天然繊維の強度が著しく低下してしまい、例えば自動車部品用の繊維としては使用に耐えがたいものとなる。
【0014】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、天然繊維の強度の低下を招くことなく、天然繊維が高温環境下に晒された場合であっても、天然繊維特有のにおいの発生を抑えることができる天然繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決すべく、本発明に係る天然繊維の製造方法は、植物をレッティング処理で解繊することにより、前記植物から天然繊維を取り出す解繊処理工程と、取り出された前記天然繊維に高圧洗浄液を吹き付けることにより、該天然繊維を洗浄する洗浄処理工程と、洗浄された前記天然繊維を浸漬液に浸漬し、該浸漬液を加熱することにより、前記天然繊維を蒸煮する蒸煮処理工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、まず、解繊処理工程において、例えば上述したケナフなどの靭皮植物などの植物から、接着物質を微生物(菌)などにより分解して、天然繊維を取り出す(植物を繊維化する)ことができる。ここで、レッティング処理では、ヘミセルロースなどの接着物質が微生物(菌)により分解されるが、これらは完全に分解されるものではなく、解繊(繊維化)された天然繊維の繊維表面には、一部分解しきれずに残存した接着物質と、におい物質と、が付着している。
【0017】
そこで、洗浄処理工程において、高圧洗浄液を、繊維化された天然繊維に吹き付けることにより、接着物質を天然繊維から取り除くことができる。これにより、接着物質の熱分解が起因となった、においの発生を抑えることができる。このように洗浄処理工程は、解繊された天然繊維の表面に付着した異物(天然繊維以外の物質)を、加圧した洗浄液を吹き付けて取り除く洗浄処理のことである。
【0018】
そして、洗浄された天然繊維を浸漬液に浸漬し、この浸漬液を加熱することにより、天然繊維を蒸煮するので、天然繊維の細部に浸漬液が浸透し、天然繊維からのにおい物質(におい成分)の溶出力を増加させ、繊維中のにおい物質を取り除くことができる。また、洗浄処理工程において、観察できないレベルのごく微量の接着物質が残っていたとしても、この接着物質を熱分解し、におい物質として取り除くことができるので、大半のにおい発生源は、この時点で天然繊維から排除できる。
【0019】
前記高圧洗浄液は、天然繊維に付着した接着物質(異物)が天然繊維から除去することができる圧力に加圧した洗浄液のことであり、その圧力は、レッティング処理より発生した天然繊維に付着した異物を除去することができるのであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、後述する発明者らの実施例からも明らかなように、前記洗浄処理工程において、天然繊維の表面に対して高圧洗浄液を吹き付けるための吹き付け圧力は、4MPa以上に設定することがより好ましい。
【0020】
このような圧力範囲に設定することにより、より確実に、解繊された天然繊維の表面から、接着物質を除去し、その後、接着物質の熱分解が起因となるにおいの発生を抑制することができる。従って、吹き付け圧力が4MPa未満である場合には、この接着物質を充分に除去できないことがある。
【0021】
また、蒸煮処理工程は、天然繊維を蒸煮することができ、これにより、におい物質を溶出することができるのであれば、浸漬液を加熱する温度は特に限定されるものではなく、少なくとも80℃以上であれば、におい物質を除去することができる。しかしながら、より好ましくは、後述する発明者らの実施例からも明らかなように、蒸煮処理工程において、前記浸漬液の加熱温度を、100℃以上に調整することがより好ましい。
【0022】
本発明によれば、この温度範囲で蒸煮を行うことにより、安定的に、においの発生を抑えることができる。従って、この温度未満の場合は、蒸煮後の天然繊維が、高温環境下で、僅かながらにおいが発生する場合もある。また、蒸煮処理工程における浸漬液の加熱温度の上限値は、天然繊維の加熱による天然繊維の損傷(セルロースの加水分解により強度低下)を考慮すると、200℃以下であることが好ましく、自動車の部材への適用を考慮すると、より好ましくは120℃以下である。
【0023】
そして、100℃〜120℃の温度範囲は、自動車の室内の最高温度に相当するので、蒸煮処理工程において、予めこの温度範囲でにおい物質を放出することができ、この結果、この温度範囲で処理された天然繊維を自動車の内装材に用いたとしても、自動車の室内において、この天然繊維が起因となるにおいが発生することはほとんどない。
【0024】
さらに、前記蒸煮処理工程において、前記天然繊維の蒸煮を密閉容器内で行うことがより好ましい。本発明によれば、密閉容器内で天然繊維の蒸煮を行うので、容器内が浸漬液の蒸発により加圧され、浸漬液をより迅速に天然繊維に浸透させることができる。この結果、大気圧下で行う場合に比べて短時間で処理できるので、浸漬液による天然繊維の加水分解を抑制しつつ、におい物質をより確実に天然繊維から溶出させることができる。
【0025】
また、洗浄処理工程に用いる高圧洗浄液、及び、蒸煮処理に用いる浸漬液は、その処理時に、天然繊維の強度低下を招かず、においの発生を抑制することができる液であれば特に、その液は限定されるものではない。より好ましくは、前記浸漬液は、蒸留水である。本発明によれば、蒸留水を用いることにより、天然繊維からのにおい物質をより好適に溶出させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、天然繊維の強度の低下を招くことなく、天然繊維が高温環境下に晒された場合であっても、天然繊維特有のにおいの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る実施形態の天然繊維の製造方法を示したフロー図。
【図2】実施例1及び比較例1のケナフ繊維の、加熱前後のにおいの強さの結果を示した図。
【図3】比較例2のケナフ繊維のにおいの強さの結果を示した図。
【図4】実施例1及び比較例1のケナフ繊維を加熱時間と加熱温度を変更して加熱したときの繊維のにおいの強さを示した図。
【図5】実施例1及び比較例1のケナフ繊維の繊維引張強度比を示した図。
【図6】比較例2のケナフ繊維の繊維引張強度比を示した図。
【図7】実施例3、比較例1及び3のケナフ繊維のにおいの強さを示した図。
【図8】実施例3、比較例1及び3のケナフ繊維を顕微鏡観察したときの写真図であり、(a)が、比較例1のケナフ繊維の写真図、(b)が、比較例3のケナフ繊維の写真図、(c)が実施例3のケナフ繊維の写真図。
【図9】実施例4のケナフ繊維の蒸煮温度とにおい強さの関係を示した図。
【図10】実施例4のケナフ繊維の蒸煮温度と繊維引張強度比の関係を示した図。
【図11】天然繊維のにおい発生メカニズムを説明するための図であり、(a)は、靭皮植物の構成を説明するための図、(b)は、その靭皮を説明するための図、(c)は、解繊処理後の天然繊維を説明するための図、(d)は、天然繊維からのにおい発生を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明する。図1は、本発明に係る実施形態の天然繊維の製造方法を示したフロー図である。
【0029】
まず、本実施形態では、天然繊維を繊維化する植物として、靭皮植物を用いる。この靭皮植物は、葉や茎の靭皮に天然繊維を含有しており、この天然繊維が織物・紙・縄・編物などの工業用原料となる植物である。得られる天然繊維は、繊維長が比較的大きく強靭で抵抗力が強いものである。このような植物としては、例えば、ケナフ、ジュート、ヘンプ、アサ、アマ、コウゾ、ミツマタ、サイザルなどを挙げることができる。ケナフは栽培が容易で、これらの中でも長い繊維を得ることができるためより好ましい。
【0030】
ここで、まず事前準備として、靭皮植物の芯材から表皮と靭皮とが一体となった皮を剥がし取り、この皮をプレス等により、靭皮のみを抽出してもよい。この靭皮には、接着物質により束ねられた天然繊維が含まれている。また、この事前準備は、必ずしも必要でなく、後述するように、レッティング処理後に、芯材及び表皮から天然繊維のみを取り出してもよい。
【0031】
まず、図1に示す解繊処理工程S1を行う。具体的には、得られた靭皮(植物)を、レッティング処理により解繊して、靭皮(植物)から天然繊維を取り出す。
【0032】
より具体的には、レッティング処理において、靭皮を、微生物(リグニン分解菌やヘミセルロース分解菌)が生息する解繊液に、数週間から1ヶ月浸漬させて、天然繊維同士を接着しているリグニンやヘミセルロースなどの接着物質を分解し、天然繊維に繊維化(解繊)する。また、解繊処理工程では、靭皮のみをレッティング処理したが、例えば、靭皮植物そのものを解繊液に浸漬し、その後、接着物質が分解した天然繊維のみを取り出してもよい。
【0033】
ここで、このレッティング処理により、接着物質が微生物(菌)により分解されるが、解繊(繊維化)された天然繊維の繊維表面には、一部分解しきれずに残存した接着物質と、におい物質と、が付着している。
【0034】
次に、図1に示す洗浄処理工程S2を行う。具体的には、解繊された天然繊維に高圧洗浄水を吹き付けて洗浄する。これにより、解繊された天然繊維の繊維表面に付着した接着物質を取り除くことができ、接着物質の熱分解が起因となった、においの発生を抑えることができる。
【0035】
ここで、高圧洗浄水の吹き付けは、天然繊維の表面に対して4MPa以上の吹き付け圧力に調整されることがより好ましい。たとえば、高圧洗浄機を用いて、洗浄水の圧力を4MPa以上に調整し、吹き付け時に圧力ドロップがほとんどない位置にノズルを配置し、このノズルを介して圧力調整した高圧洗浄水を吹き付けてもよい。洗浄処理工程で使用される高圧洗浄水は、特に限定されず、各種金属イオン等や、塩素系殺菌剤などを含む水であってもよく、例えば水道水を用いることができる。
【0036】
さらに、図1に示す蒸煮処理工程S3を行う。具体的には、洗浄処理工程S2により洗浄された天然繊維を、高圧釜内の蒸留水(浸漬液)に浸漬し、この高圧釜内で、浸漬液を100℃〜120℃加熱して天然繊維を蒸煮する。ここでは、浸漬液に蒸留水を用いたが、例えば、水道水などを用いてもよい。なお、ここで、使用する高圧釜は、高圧釜内の圧力を調整するための圧力調整弁付の密閉容器である。
【0037】
この天然繊維の蒸煮により、天然繊維の細部に浸漬液を浸透させ、におい物質(におい成分)の溶出力を増加させ、繊維中のにおい物質を取り除くことができる。また、洗浄処理工程において、観察できないレベルのごく微量の接着物質が残っていたとしても、この接着物質を熱分解し、におい物質として抽出できるので、大半のにおい発生源は、この時点で天然繊維から排除される。
【0038】
また、高圧釜内、すなわち、密閉容器内で蒸留水を加熱して、天然繊維を蒸煮するので、天然繊維を加熱・加圧環境下で蒸煮することができる。これにより、大気圧下の蒸煮に比べて、より迅速に、天然繊維の繊維束内部に蒸留水を浸透させ、におい物質を取り除き、さらには、残留した接着物質の熱分解を促進させることができる。また、迅速に蒸煮処理が完了するので、天然繊維が蒸留水により加水分解することはほとんど無く、強度低下を抑えることができる。
【0039】
さらに、特に、蒸煮処理工程における蒸留水の加熱温度範囲は、100℃〜120℃の温度範囲であり、自動車室内の最高温度に相当温度条件で、予めにおい物質を放出することができる。これにより、この温度範囲で処理された天然繊維を自動車の内装材に用いたとしても、自動車の室内において、天然繊維の付着物を起因としたにおいの発生を、抑えることができる。
【0040】
このようにして、蒸煮処理工程後に得られた天然繊維を、自然乾燥、または加熱して乾燥させることにより、その後、天然繊維が高温環境下に晒された場合であっても、天然繊維特有のにおいの発生を抑えることができる。また、洗浄処理工程及び蒸煮処理工程において、アルカリ水溶液等を用いなかったので、天然繊維の強度は低下することがない。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を実施例により説明する。なお、以下の実施例に本発明は限定して解釈されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
<ケナフの解繊処理工程>
靭皮植物として、麻の一種であるケナフを用い、レッティング処理によりケナフを解繊して、天然繊維としてケナフ繊維を取り出した。具体的には、ケナフの茎部を、30℃の水中に、20日間浸漬して、その後、靭皮を構成していた繊維のみに分離して、ケナフ繊維を得た。
【0043】
<ケナフ繊維の洗浄処理工程>
得られたケナフ繊維4gを束ねて、片端を固定した。次に、固定したケナフ繊維から20cmはなれた位置に、高圧洗浄機のノズルをセットし、吹き付け圧力8MPaの水圧で、高圧洗浄水を10分間、ケナフ繊維に吹き付けて、ケナフ繊維の洗浄を行った。
【0044】
<ケナフ繊維の蒸煮処理工程>
高圧洗浄を行ったケナフ繊維を乾燥させ、この乾燥繊維5gを500mlの蒸留水に浸漬し、100℃、30分間の条件で蒸留水を高圧釜内で、ケナフ繊維とともに加熱し、ケナフ繊維の蒸煮を行った。そして、得られた繊維を蒸留水でさらに洗浄し、80℃、2時間で乾燥させて、以下の評価試験用のケナフ繊維を得た。
【0045】
〔比較例1〕
実施例1と同じように、評価試験用のケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、洗浄処理工程において、高圧洗浄液で洗浄せず、蒸留水で洗い流した点と、蒸煮処理工程を行っていない点である。
【0046】
〔比較例2〕
実施例1と同じように、評価試験用のケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、洗浄処理工程において、高圧洗浄液で洗浄せず、100℃、30分の条件で水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した点と、蒸煮処理工程を行っていない点である。なお、水酸化ナトリウム水溶液による洗浄は、図3及び図6に示す水準で行った。
【0047】
<評価方法>
[ケナフ繊維のにおい試験]
実施例1,比較例1,比較例2のケナフ繊維に対してにおい試験(官能試験)を行った。具体的には、におい評価用サンプルバック(4L)に、評価対象となるケナフ繊維2gを入れ、窒素ガスを充填した。次いで、100℃、30分加熱して、室温まで冷却した。このサンプルバック内のケナフ繊維のにおいを、5人のパネラーに嗅いでもらい、以下の5段階評価をしてもらい、これらの平均値を、ケナフ繊維のにおいの強さとした。
【0048】
においの強さの段階
5:強烈に感じられるにおい
4:強く感じられるにおい
3:楽に感じられるにおい
2:弱く感じるにおい(嗅いだにおいの対象物が特定できる程度のにおい)
1:かすかに感知できるにおい(嗅いだにおいの対象物が特定でいないにおい)
【0049】
(におい試験1)
実施例1と比較例1のケナフ繊維に対して、それぞれ220℃、3分加熱して、加熱前後のそれぞれのケナフ繊維のにおい強さを評価した。この結果を、図2に示す。
【0050】
(におい試験2)
比較例2のケナフ繊維それぞれに対して、におい試験を行った。この結果を図3に示す。
【0051】
(におい試験3)
実施例1及び比較例1のケナフ繊維に対して、加熱温度の水準を160℃、180℃、200℃、220℃、240℃、260℃とし、加熱時間の水準を、1分、3分、5分、7分、9分として、これらの水準を組み合わせて、熱処理を行った後、におい試験を行った。この結果を図4に示す。
【0052】
なお、図4には、においの強さが3以下の場合は○、においの強さが3を超えている場合には×を記した。実施例1の結果は、温度の縦ラインの左側、比較例1の結果は、温度のラインの右側に、それぞれ示した。なお、図4の領域Aは、実施例1及び比較例1のケナフ繊維のにおいの強さが3を超えた領域、領域Bは、比較例1のケナフ繊維のにおいの強さが3を超え、かつ実施例1のケナフ繊維のにおいの強さが3以下の領域、領域Cは、実施例1及び比較例1のケナフ繊維のにおいの強さが3以下の領域を示している。
【0053】
[ケナフ繊維の引張り試験]
実施例1,比較例1,比較例2のケナフ繊維をそれぞれ70mmの長さに切断し、それぞれのケナフ繊維に対して、10kNのロードセルをセットしたオートグラフにより引張って荷重を増大させていき、切断される直前を最大荷重として読み取った。
【0054】
実施例1及び比較例1の試験結果を図5に、比較例2の試験結果を図6に示す。なお、これらの引張り試験の結果は、比較例1の最大荷重を100%として正規化し、繊維引張強度比としたものである。
【0055】
(結果1)
図2の結果より、実施例1の加熱前後のケナフ繊維のにおいの強さは、比較例1のものに比べて小さかった。また、加熱前後であっても、実施例1のケナフ繊維のにおいの強さは、ほとんど変化が無かったのに対して、比較例1のものは、加熱後によりにおいの強さが大きくなった。
【0056】
図3の結果より、比較例2のケナフ繊維のにおい強さは、水酸化ナトリウムの濃度にかかわらず、実施例1のものと同程度であった。
【0057】
図4の結果より、実施例1のケナフ繊維は、比較例1のものに比べて、各温度において、においの強さが3に達するまでの加熱時間が増加し、においの強さの変化において、熱への耐性が大幅に向上したことが確認できた。
【0058】
以上の結果より、実施例1の如き洗浄処理工程及び蒸煮処理工程をおこなったケナフ繊維は、アルカリ洗浄をおこなった比較例2と同等のにおいの強さとなり、高温環境下においても、においの発生が低減できた。これは、一連の工程を経ることで、解繊処理後のケナフ繊維の表面に付着したにおいの発生源を除去できたからであると考えられる。
【0059】
(結果2)
図5に示すように、実施例1及び比較例1の繊維引張り強度比は同程度であるのに対して、図6に示すように、比較例2の繊維引張り強度比は、これらのものに比べて小さくなった。これは、アルカリ洗浄により、比較例2のケナフ繊維の強度が低下したからであると考えられる。従って、実施例1の如く洗浄処理工程及び蒸煮処理工程を行っても、ケナフ繊維の強度が低下しないと考えられる。
【0060】
〔実施例3〕
実施例1と同じように、ケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、洗浄処理工程において、高圧洗浄水の吹き付け圧力を4MPa以上で、図7に示す吹き付け圧力の水準で、解繊処理後のケナフ繊維を洗浄した点である。
【0061】
〔比較例3〕
実施例3と同じように、ケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、洗浄処理工程において、高圧洗浄水の吹き付け圧力を2MPで洗浄した点である。なお、この比較例3は、実施例3の比較例であり、本発明の範囲内の例である。
【0062】
(におい試験4)
実施例3及び比較例3のケナフ繊維に対して、それぞれ220℃、3分加熱して、加熱後のそれぞれのケナフ繊維のにおい強さを評価した。この結果を、図7に示す。なお、参考例として、比較例1の結果も合わせて示す。
【0063】
[ケナフ繊維の表面観察試験]
実施例3及び比較例3のケナフ繊維の表面を、光学顕微鏡で観察した。また、参考例として、比較例1のケナフ繊維の表面も、同様に光学顕微鏡で観察した。この結果を図8に示す。図8(a)が、比較例1のケナフ繊維の写真図、図8(b)が、比較例3のケナフ繊維の写真図、図8(c)が実施例3のケナフ繊維の写真図である。
【0064】
(結果3)
図7に示すように、実施例3のケナフ繊維のにおい強さは、比較例3のものに比べて小さく、高圧洗浄水の吹き付け圧力の増加にかかわらず、においの強さはほぼ一定となった。
【0065】
図8(a)に示すように、比較例1のケナフ繊維の表面には、目視で確認できる程度の接着物質が付着していることが確認できた。図8(b)に示すように、比較例2のケナフ繊維の表面には、拡大観察により、部分的に接着物質がしていることが確認できた。図8(c)に示すように、実施例3のケナフ繊維の表面には、拡大観察しても接着物質が付着していないことが確認できた。
【0066】
以上のことから、実施例3のごとく、洗浄処理工程において、高圧洗浄水の吹き付け圧力を4MPa以上で、ケナフ繊維を洗浄することにより、接着物質をケナフ繊維からほぼ取り除くことができ、これにより、においの強さも安定的に低減することができると考えられる。
【0067】
[実施例4]
実施例1と同じように、ケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、蒸煮処理工程における蒸留水を加熱する温度(蒸煮処理温度)を、40℃〜120℃の範囲で図9及び図10に示す水準で、洗浄処理工程後のケナフ繊維に対して蒸煮処理を行った点である。そして、これらのケナフ繊維に対して、実施例1と同じようにして、ケナフ繊維のにおい試験及びケナフ繊維の引張り試験を行った。この結果を、図9及び図10に示す。
【0068】
(結果4)
図9に示すように、蒸煮処理温度が80℃以上で、ケナフ繊維のにおいの強さは、ほぼ2で好適であり、100℃以上で、ケナフ繊維のにおい強さには、ほとんど変化がなかった。このことから、安定的なにおいの強さにするには、蒸煮処理温度を、100℃以上に調整することが好ましいといえ、この温度範囲は、自動車の室内の最高温度に相当し、予めこの温度でケナフ繊維を蒸煮することにより、におい物質を溶出することができる。これにより、自動車の室内において、好適にケナフ繊維を使用することができると考えられる。
【0069】
また、図10に示すように、蒸煮処理温度の増加とともに、繊維引張り強度比が低下した。これは、温度上昇とともに、ケナフ繊維のセルロースの加水分解が促進されたからであると考えられる。そして、自動車の内装に好適な繊維引張り強度比(80%以上)を確保するには、蒸煮処理温度は、120℃以下が好ましい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、本実施形態では、解繊処理工程後、洗浄処理工程、洗浄処理工程後、蒸煮処理工程を行ったが、においの発生源を取り除くことが妨げられないのであれば、これらの工程の間に、水洗工程や、乾燥工程を設けてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:靭皮,2:外皮(表皮),3:芯材(コア),10:天然繊維,12:接着物質,14:におい物質,15:接着物質,S1:解繊処理工程,S2:洗浄処理工程,S3:蒸煮処理工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を解繊して天然繊維を製造する方法に係り、特に、天然繊維のにおいを好適に低減することができる天然繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源枯渇の問題や炭酸ガス排出量増加に伴う地球温暖化といったエコロジーの観点より、天然繊維が幅広く利用され始めている。天然繊維の材料となる植物としては、例えば、サイザル、ジュート、ケナフなどの靭皮植物が用いられることが多い。
【0003】
このような靭皮植物は、靭皮に良質の繊維を多く含んでいるため繊維材料としては好適であり、木材由来のパルプ、樹脂成形体の充填材や木質成形体の木質原料の代替材料として利用されつつある。例えば、自動車などの車両の内装材の場合、この天然繊維は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を接着剤として複合化して用いられる。
【0004】
このような天然繊維の原材料となる靭皮植物は、例えば、図11(a),(b)に示すように、靭皮1の他に外皮(表皮)2や芯材(コア)3を有しており、靭皮中の天然繊維10はリグニンやヘミセルロースなどの接着物質12によって互いに接着結合した状態となっている。
【0005】
このため、この天然繊維10を傷つけることなく繊維間の接着物質12を除去して解繊するために、靭皮1を含む靭皮植物を、繊維間に存在する接着物質12を分解する微生物を含む解繊液に数週間から1ヶ月浸漬させて、この靭皮1を繊維化するレッティング処理が行われる。
【0006】
このようにレッティング処理による解繊処理工程において、解繊液に生息する微生物(リグニン分解菌やヘミセルロース分解菌)によって天然繊維同士を接着しているリグニンやヘミセルロースなどを分解するので、図11(c)に示すように、靭皮(草木質材料)1を天然繊維10に解繊することができる。
【0007】
この際、解繊処理により取り出された天然繊維10の表面には、接着物質12の分解により発生するにおい物質14と、分解しきれなかった接着物質15とが存在し、におい物質14が天然繊維特有のにおいの原因となっている。
【0008】
そこで、においの原因となる物質を除去すべく、解繊処理によって得られた天然繊維10を水で洗い流して、天然繊維10を洗浄することがなされている。また、天然繊維(木質材)のにおいを低減する別の方法として、炭酸水素ナトリウムを消臭剤として天然繊維に含浸させる方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−289005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように解繊処理後の天然繊維を水洗した場合には、におい物質14を洗い流すことができ、天然繊維が発するにおいの発生を抑えることができる。しかしながら、洗浄後の天然繊維を用いて、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の接着剤とこれを複合化し、加熱工程を経て、自動車部品等の成形品に成形した場合、この成形品からにおいが発生することがある。これは、図11(d)に示すように、加熱工程において、水洗により洗浄しきれなかった接着物質15が、加熱により生じた熱で分解され、においの発生を促進するからであると考えられる。
【0011】
したがって、洗浄工程において、におい物質を除去し、一見、天然繊維がきれいになったとしても、僅かな接着物質15が天然繊維に付着していると、これが結果としてにおいの発生源となる。さらに、この加熱工程において、接着物質15の全てが分解するわけではないので、その後、自動車等室内に、この成形品が取り付けられ、室内において高温環境下に晒されたときには、接着物質の分解が進行し、これにより、さらににおいが発生してしまうことが予想される。
【0012】
このような熱分解によるにおいの発生状況下においては、特許文献1の消臭剤(炭酸水素ナトリウム)を用いたとしても、充分に消臭効果を発揮することはできない。そこで消臭剤の添加量をさらに増やした場合、多少なりとも消臭効果を期待することができる。しかしながら、このような消臭剤は化学物質であるため、その増量は、エコロジーを目的として天然繊維を用いたそもそもの趣旨に反することになる。
【0013】
このような点を鑑みると、洗浄前に、アルカリ水溶液を用いたアルカリ洗浄により、におい物質及び接着物質の双方を除去すればよいとも考えられる。しかしながら、アルカリ洗浄は、これら物質を除去するばかりでなく、アルカリ水溶液のアルカリが天然繊維そのものを攻撃するため、天然繊維の強度が著しく低下してしまい、例えば自動車部品用の繊維としては使用に耐えがたいものとなる。
【0014】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、天然繊維の強度の低下を招くことなく、天然繊維が高温環境下に晒された場合であっても、天然繊維特有のにおいの発生を抑えることができる天然繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決すべく、本発明に係る天然繊維の製造方法は、植物をレッティング処理で解繊することにより、前記植物から天然繊維を取り出す解繊処理工程と、取り出された前記天然繊維に高圧洗浄液を吹き付けることにより、該天然繊維を洗浄する洗浄処理工程と、洗浄された前記天然繊維を浸漬液に浸漬し、該浸漬液を加熱することにより、前記天然繊維を蒸煮する蒸煮処理工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、まず、解繊処理工程において、例えば上述したケナフなどの靭皮植物などの植物から、接着物質を微生物(菌)などにより分解して、天然繊維を取り出す(植物を繊維化する)ことができる。ここで、レッティング処理では、ヘミセルロースなどの接着物質が微生物(菌)により分解されるが、これらは完全に分解されるものではなく、解繊(繊維化)された天然繊維の繊維表面には、一部分解しきれずに残存した接着物質と、におい物質と、が付着している。
【0017】
そこで、洗浄処理工程において、高圧洗浄液を、繊維化された天然繊維に吹き付けることにより、接着物質を天然繊維から取り除くことができる。これにより、接着物質の熱分解が起因となった、においの発生を抑えることができる。このように洗浄処理工程は、解繊された天然繊維の表面に付着した異物(天然繊維以外の物質)を、加圧した洗浄液を吹き付けて取り除く洗浄処理のことである。
【0018】
そして、洗浄された天然繊維を浸漬液に浸漬し、この浸漬液を加熱することにより、天然繊維を蒸煮するので、天然繊維の細部に浸漬液が浸透し、天然繊維からのにおい物質(におい成分)の溶出力を増加させ、繊維中のにおい物質を取り除くことができる。また、洗浄処理工程において、観察できないレベルのごく微量の接着物質が残っていたとしても、この接着物質を熱分解し、におい物質として取り除くことができるので、大半のにおい発生源は、この時点で天然繊維から排除できる。
【0019】
前記高圧洗浄液は、天然繊維に付着した接着物質(異物)が天然繊維から除去することができる圧力に加圧した洗浄液のことであり、その圧力は、レッティング処理より発生した天然繊維に付着した異物を除去することができるのであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、後述する発明者らの実施例からも明らかなように、前記洗浄処理工程において、天然繊維の表面に対して高圧洗浄液を吹き付けるための吹き付け圧力は、4MPa以上に設定することがより好ましい。
【0020】
このような圧力範囲に設定することにより、より確実に、解繊された天然繊維の表面から、接着物質を除去し、その後、接着物質の熱分解が起因となるにおいの発生を抑制することができる。従って、吹き付け圧力が4MPa未満である場合には、この接着物質を充分に除去できないことがある。
【0021】
また、蒸煮処理工程は、天然繊維を蒸煮することができ、これにより、におい物質を溶出することができるのであれば、浸漬液を加熱する温度は特に限定されるものではなく、少なくとも80℃以上であれば、におい物質を除去することができる。しかしながら、より好ましくは、後述する発明者らの実施例からも明らかなように、蒸煮処理工程において、前記浸漬液の加熱温度を、100℃以上に調整することがより好ましい。
【0022】
本発明によれば、この温度範囲で蒸煮を行うことにより、安定的に、においの発生を抑えることができる。従って、この温度未満の場合は、蒸煮後の天然繊維が、高温環境下で、僅かながらにおいが発生する場合もある。また、蒸煮処理工程における浸漬液の加熱温度の上限値は、天然繊維の加熱による天然繊維の損傷(セルロースの加水分解により強度低下)を考慮すると、200℃以下であることが好ましく、自動車の部材への適用を考慮すると、より好ましくは120℃以下である。
【0023】
そして、100℃〜120℃の温度範囲は、自動車の室内の最高温度に相当するので、蒸煮処理工程において、予めこの温度範囲でにおい物質を放出することができ、この結果、この温度範囲で処理された天然繊維を自動車の内装材に用いたとしても、自動車の室内において、この天然繊維が起因となるにおいが発生することはほとんどない。
【0024】
さらに、前記蒸煮処理工程において、前記天然繊維の蒸煮を密閉容器内で行うことがより好ましい。本発明によれば、密閉容器内で天然繊維の蒸煮を行うので、容器内が浸漬液の蒸発により加圧され、浸漬液をより迅速に天然繊維に浸透させることができる。この結果、大気圧下で行う場合に比べて短時間で処理できるので、浸漬液による天然繊維の加水分解を抑制しつつ、におい物質をより確実に天然繊維から溶出させることができる。
【0025】
また、洗浄処理工程に用いる高圧洗浄液、及び、蒸煮処理に用いる浸漬液は、その処理時に、天然繊維の強度低下を招かず、においの発生を抑制することができる液であれば特に、その液は限定されるものではない。より好ましくは、前記浸漬液は、蒸留水である。本発明によれば、蒸留水を用いることにより、天然繊維からのにおい物質をより好適に溶出させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、天然繊維の強度の低下を招くことなく、天然繊維が高温環境下に晒された場合であっても、天然繊維特有のにおいの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る実施形態の天然繊維の製造方法を示したフロー図。
【図2】実施例1及び比較例1のケナフ繊維の、加熱前後のにおいの強さの結果を示した図。
【図3】比較例2のケナフ繊維のにおいの強さの結果を示した図。
【図4】実施例1及び比較例1のケナフ繊維を加熱時間と加熱温度を変更して加熱したときの繊維のにおいの強さを示した図。
【図5】実施例1及び比較例1のケナフ繊維の繊維引張強度比を示した図。
【図6】比較例2のケナフ繊維の繊維引張強度比を示した図。
【図7】実施例3、比較例1及び3のケナフ繊維のにおいの強さを示した図。
【図8】実施例3、比較例1及び3のケナフ繊維を顕微鏡観察したときの写真図であり、(a)が、比較例1のケナフ繊維の写真図、(b)が、比較例3のケナフ繊維の写真図、(c)が実施例3のケナフ繊維の写真図。
【図9】実施例4のケナフ繊維の蒸煮温度とにおい強さの関係を示した図。
【図10】実施例4のケナフ繊維の蒸煮温度と繊維引張強度比の関係を示した図。
【図11】天然繊維のにおい発生メカニズムを説明するための図であり、(a)は、靭皮植物の構成を説明するための図、(b)は、その靭皮を説明するための図、(c)は、解繊処理後の天然繊維を説明するための図、(d)は、天然繊維からのにおい発生を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明する。図1は、本発明に係る実施形態の天然繊維の製造方法を示したフロー図である。
【0029】
まず、本実施形態では、天然繊維を繊維化する植物として、靭皮植物を用いる。この靭皮植物は、葉や茎の靭皮に天然繊維を含有しており、この天然繊維が織物・紙・縄・編物などの工業用原料となる植物である。得られる天然繊維は、繊維長が比較的大きく強靭で抵抗力が強いものである。このような植物としては、例えば、ケナフ、ジュート、ヘンプ、アサ、アマ、コウゾ、ミツマタ、サイザルなどを挙げることができる。ケナフは栽培が容易で、これらの中でも長い繊維を得ることができるためより好ましい。
【0030】
ここで、まず事前準備として、靭皮植物の芯材から表皮と靭皮とが一体となった皮を剥がし取り、この皮をプレス等により、靭皮のみを抽出してもよい。この靭皮には、接着物質により束ねられた天然繊維が含まれている。また、この事前準備は、必ずしも必要でなく、後述するように、レッティング処理後に、芯材及び表皮から天然繊維のみを取り出してもよい。
【0031】
まず、図1に示す解繊処理工程S1を行う。具体的には、得られた靭皮(植物)を、レッティング処理により解繊して、靭皮(植物)から天然繊維を取り出す。
【0032】
より具体的には、レッティング処理において、靭皮を、微生物(リグニン分解菌やヘミセルロース分解菌)が生息する解繊液に、数週間から1ヶ月浸漬させて、天然繊維同士を接着しているリグニンやヘミセルロースなどの接着物質を分解し、天然繊維に繊維化(解繊)する。また、解繊処理工程では、靭皮のみをレッティング処理したが、例えば、靭皮植物そのものを解繊液に浸漬し、その後、接着物質が分解した天然繊維のみを取り出してもよい。
【0033】
ここで、このレッティング処理により、接着物質が微生物(菌)により分解されるが、解繊(繊維化)された天然繊維の繊維表面には、一部分解しきれずに残存した接着物質と、におい物質と、が付着している。
【0034】
次に、図1に示す洗浄処理工程S2を行う。具体的には、解繊された天然繊維に高圧洗浄水を吹き付けて洗浄する。これにより、解繊された天然繊維の繊維表面に付着した接着物質を取り除くことができ、接着物質の熱分解が起因となった、においの発生を抑えることができる。
【0035】
ここで、高圧洗浄水の吹き付けは、天然繊維の表面に対して4MPa以上の吹き付け圧力に調整されることがより好ましい。たとえば、高圧洗浄機を用いて、洗浄水の圧力を4MPa以上に調整し、吹き付け時に圧力ドロップがほとんどない位置にノズルを配置し、このノズルを介して圧力調整した高圧洗浄水を吹き付けてもよい。洗浄処理工程で使用される高圧洗浄水は、特に限定されず、各種金属イオン等や、塩素系殺菌剤などを含む水であってもよく、例えば水道水を用いることができる。
【0036】
さらに、図1に示す蒸煮処理工程S3を行う。具体的には、洗浄処理工程S2により洗浄された天然繊維を、高圧釜内の蒸留水(浸漬液)に浸漬し、この高圧釜内で、浸漬液を100℃〜120℃加熱して天然繊維を蒸煮する。ここでは、浸漬液に蒸留水を用いたが、例えば、水道水などを用いてもよい。なお、ここで、使用する高圧釜は、高圧釜内の圧力を調整するための圧力調整弁付の密閉容器である。
【0037】
この天然繊維の蒸煮により、天然繊維の細部に浸漬液を浸透させ、におい物質(におい成分)の溶出力を増加させ、繊維中のにおい物質を取り除くことができる。また、洗浄処理工程において、観察できないレベルのごく微量の接着物質が残っていたとしても、この接着物質を熱分解し、におい物質として抽出できるので、大半のにおい発生源は、この時点で天然繊維から排除される。
【0038】
また、高圧釜内、すなわち、密閉容器内で蒸留水を加熱して、天然繊維を蒸煮するので、天然繊維を加熱・加圧環境下で蒸煮することができる。これにより、大気圧下の蒸煮に比べて、より迅速に、天然繊維の繊維束内部に蒸留水を浸透させ、におい物質を取り除き、さらには、残留した接着物質の熱分解を促進させることができる。また、迅速に蒸煮処理が完了するので、天然繊維が蒸留水により加水分解することはほとんど無く、強度低下を抑えることができる。
【0039】
さらに、特に、蒸煮処理工程における蒸留水の加熱温度範囲は、100℃〜120℃の温度範囲であり、自動車室内の最高温度に相当温度条件で、予めにおい物質を放出することができる。これにより、この温度範囲で処理された天然繊維を自動車の内装材に用いたとしても、自動車の室内において、天然繊維の付着物を起因としたにおいの発生を、抑えることができる。
【0040】
このようにして、蒸煮処理工程後に得られた天然繊維を、自然乾燥、または加熱して乾燥させることにより、その後、天然繊維が高温環境下に晒された場合であっても、天然繊維特有のにおいの発生を抑えることができる。また、洗浄処理工程及び蒸煮処理工程において、アルカリ水溶液等を用いなかったので、天然繊維の強度は低下することがない。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を実施例により説明する。なお、以下の実施例に本発明は限定して解釈されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
<ケナフの解繊処理工程>
靭皮植物として、麻の一種であるケナフを用い、レッティング処理によりケナフを解繊して、天然繊維としてケナフ繊維を取り出した。具体的には、ケナフの茎部を、30℃の水中に、20日間浸漬して、その後、靭皮を構成していた繊維のみに分離して、ケナフ繊維を得た。
【0043】
<ケナフ繊維の洗浄処理工程>
得られたケナフ繊維4gを束ねて、片端を固定した。次に、固定したケナフ繊維から20cmはなれた位置に、高圧洗浄機のノズルをセットし、吹き付け圧力8MPaの水圧で、高圧洗浄水を10分間、ケナフ繊維に吹き付けて、ケナフ繊維の洗浄を行った。
【0044】
<ケナフ繊維の蒸煮処理工程>
高圧洗浄を行ったケナフ繊維を乾燥させ、この乾燥繊維5gを500mlの蒸留水に浸漬し、100℃、30分間の条件で蒸留水を高圧釜内で、ケナフ繊維とともに加熱し、ケナフ繊維の蒸煮を行った。そして、得られた繊維を蒸留水でさらに洗浄し、80℃、2時間で乾燥させて、以下の評価試験用のケナフ繊維を得た。
【0045】
〔比較例1〕
実施例1と同じように、評価試験用のケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、洗浄処理工程において、高圧洗浄液で洗浄せず、蒸留水で洗い流した点と、蒸煮処理工程を行っていない点である。
【0046】
〔比較例2〕
実施例1と同じように、評価試験用のケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、洗浄処理工程において、高圧洗浄液で洗浄せず、100℃、30分の条件で水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した点と、蒸煮処理工程を行っていない点である。なお、水酸化ナトリウム水溶液による洗浄は、図3及び図6に示す水準で行った。
【0047】
<評価方法>
[ケナフ繊維のにおい試験]
実施例1,比較例1,比較例2のケナフ繊維に対してにおい試験(官能試験)を行った。具体的には、におい評価用サンプルバック(4L)に、評価対象となるケナフ繊維2gを入れ、窒素ガスを充填した。次いで、100℃、30分加熱して、室温まで冷却した。このサンプルバック内のケナフ繊維のにおいを、5人のパネラーに嗅いでもらい、以下の5段階評価をしてもらい、これらの平均値を、ケナフ繊維のにおいの強さとした。
【0048】
においの強さの段階
5:強烈に感じられるにおい
4:強く感じられるにおい
3:楽に感じられるにおい
2:弱く感じるにおい(嗅いだにおいの対象物が特定できる程度のにおい)
1:かすかに感知できるにおい(嗅いだにおいの対象物が特定でいないにおい)
【0049】
(におい試験1)
実施例1と比較例1のケナフ繊維に対して、それぞれ220℃、3分加熱して、加熱前後のそれぞれのケナフ繊維のにおい強さを評価した。この結果を、図2に示す。
【0050】
(におい試験2)
比較例2のケナフ繊維それぞれに対して、におい試験を行った。この結果を図3に示す。
【0051】
(におい試験3)
実施例1及び比較例1のケナフ繊維に対して、加熱温度の水準を160℃、180℃、200℃、220℃、240℃、260℃とし、加熱時間の水準を、1分、3分、5分、7分、9分として、これらの水準を組み合わせて、熱処理を行った後、におい試験を行った。この結果を図4に示す。
【0052】
なお、図4には、においの強さが3以下の場合は○、においの強さが3を超えている場合には×を記した。実施例1の結果は、温度の縦ラインの左側、比較例1の結果は、温度のラインの右側に、それぞれ示した。なお、図4の領域Aは、実施例1及び比較例1のケナフ繊維のにおいの強さが3を超えた領域、領域Bは、比較例1のケナフ繊維のにおいの強さが3を超え、かつ実施例1のケナフ繊維のにおいの強さが3以下の領域、領域Cは、実施例1及び比較例1のケナフ繊維のにおいの強さが3以下の領域を示している。
【0053】
[ケナフ繊維の引張り試験]
実施例1,比較例1,比較例2のケナフ繊維をそれぞれ70mmの長さに切断し、それぞれのケナフ繊維に対して、10kNのロードセルをセットしたオートグラフにより引張って荷重を増大させていき、切断される直前を最大荷重として読み取った。
【0054】
実施例1及び比較例1の試験結果を図5に、比較例2の試験結果を図6に示す。なお、これらの引張り試験の結果は、比較例1の最大荷重を100%として正規化し、繊維引張強度比としたものである。
【0055】
(結果1)
図2の結果より、実施例1の加熱前後のケナフ繊維のにおいの強さは、比較例1のものに比べて小さかった。また、加熱前後であっても、実施例1のケナフ繊維のにおいの強さは、ほとんど変化が無かったのに対して、比較例1のものは、加熱後によりにおいの強さが大きくなった。
【0056】
図3の結果より、比較例2のケナフ繊維のにおい強さは、水酸化ナトリウムの濃度にかかわらず、実施例1のものと同程度であった。
【0057】
図4の結果より、実施例1のケナフ繊維は、比較例1のものに比べて、各温度において、においの強さが3に達するまでの加熱時間が増加し、においの強さの変化において、熱への耐性が大幅に向上したことが確認できた。
【0058】
以上の結果より、実施例1の如き洗浄処理工程及び蒸煮処理工程をおこなったケナフ繊維は、アルカリ洗浄をおこなった比較例2と同等のにおいの強さとなり、高温環境下においても、においの発生が低減できた。これは、一連の工程を経ることで、解繊処理後のケナフ繊維の表面に付着したにおいの発生源を除去できたからであると考えられる。
【0059】
(結果2)
図5に示すように、実施例1及び比較例1の繊維引張り強度比は同程度であるのに対して、図6に示すように、比較例2の繊維引張り強度比は、これらのものに比べて小さくなった。これは、アルカリ洗浄により、比較例2のケナフ繊維の強度が低下したからであると考えられる。従って、実施例1の如く洗浄処理工程及び蒸煮処理工程を行っても、ケナフ繊維の強度が低下しないと考えられる。
【0060】
〔実施例3〕
実施例1と同じように、ケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、洗浄処理工程において、高圧洗浄水の吹き付け圧力を4MPa以上で、図7に示す吹き付け圧力の水準で、解繊処理後のケナフ繊維を洗浄した点である。
【0061】
〔比較例3〕
実施例3と同じように、ケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、洗浄処理工程において、高圧洗浄水の吹き付け圧力を2MPで洗浄した点である。なお、この比較例3は、実施例3の比較例であり、本発明の範囲内の例である。
【0062】
(におい試験4)
実施例3及び比較例3のケナフ繊維に対して、それぞれ220℃、3分加熱して、加熱後のそれぞれのケナフ繊維のにおい強さを評価した。この結果を、図7に示す。なお、参考例として、比較例1の結果も合わせて示す。
【0063】
[ケナフ繊維の表面観察試験]
実施例3及び比較例3のケナフ繊維の表面を、光学顕微鏡で観察した。また、参考例として、比較例1のケナフ繊維の表面も、同様に光学顕微鏡で観察した。この結果を図8に示す。図8(a)が、比較例1のケナフ繊維の写真図、図8(b)が、比較例3のケナフ繊維の写真図、図8(c)が実施例3のケナフ繊維の写真図である。
【0064】
(結果3)
図7に示すように、実施例3のケナフ繊維のにおい強さは、比較例3のものに比べて小さく、高圧洗浄水の吹き付け圧力の増加にかかわらず、においの強さはほぼ一定となった。
【0065】
図8(a)に示すように、比較例1のケナフ繊維の表面には、目視で確認できる程度の接着物質が付着していることが確認できた。図8(b)に示すように、比較例2のケナフ繊維の表面には、拡大観察により、部分的に接着物質がしていることが確認できた。図8(c)に示すように、実施例3のケナフ繊維の表面には、拡大観察しても接着物質が付着していないことが確認できた。
【0066】
以上のことから、実施例3のごとく、洗浄処理工程において、高圧洗浄水の吹き付け圧力を4MPa以上で、ケナフ繊維を洗浄することにより、接着物質をケナフ繊維からほぼ取り除くことができ、これにより、においの強さも安定的に低減することができると考えられる。
【0067】
[実施例4]
実施例1と同じように、ケナフ繊維を製造した。実施例1と相違する点は、蒸煮処理工程における蒸留水を加熱する温度(蒸煮処理温度)を、40℃〜120℃の範囲で図9及び図10に示す水準で、洗浄処理工程後のケナフ繊維に対して蒸煮処理を行った点である。そして、これらのケナフ繊維に対して、実施例1と同じようにして、ケナフ繊維のにおい試験及びケナフ繊維の引張り試験を行った。この結果を、図9及び図10に示す。
【0068】
(結果4)
図9に示すように、蒸煮処理温度が80℃以上で、ケナフ繊維のにおいの強さは、ほぼ2で好適であり、100℃以上で、ケナフ繊維のにおい強さには、ほとんど変化がなかった。このことから、安定的なにおいの強さにするには、蒸煮処理温度を、100℃以上に調整することが好ましいといえ、この温度範囲は、自動車の室内の最高温度に相当し、予めこの温度でケナフ繊維を蒸煮することにより、におい物質を溶出することができる。これにより、自動車の室内において、好適にケナフ繊維を使用することができると考えられる。
【0069】
また、図10に示すように、蒸煮処理温度の増加とともに、繊維引張り強度比が低下した。これは、温度上昇とともに、ケナフ繊維のセルロースの加水分解が促進されたからであると考えられる。そして、自動車の内装に好適な繊維引張り強度比(80%以上)を確保するには、蒸煮処理温度は、120℃以下が好ましい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、本実施形態では、解繊処理工程後、洗浄処理工程、洗浄処理工程後、蒸煮処理工程を行ったが、においの発生源を取り除くことが妨げられないのであれば、これらの工程の間に、水洗工程や、乾燥工程を設けてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:靭皮,2:外皮(表皮),3:芯材(コア),10:天然繊維,12:接着物質,14:におい物質,15:接着物質,S1:解繊処理工程,S2:洗浄処理工程,S3:蒸煮処理工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物をレッティング処理で解繊することにより、前記植物から天然繊維を取り出す解繊処理工程と、
取り出された前記天然繊維に高圧洗浄液を吹き付けることにより、該天然繊維を洗浄する洗浄処理工程と、
洗浄された前記天然繊維を浸漬液に浸漬し、該浸漬液を加熱することにより、前記天然繊維を蒸煮する蒸煮処理工程と、を少なくとも含むことを特徴とする天然繊維の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄処理工程において、前記高圧洗浄液の吹き付け圧力を、4MPa以上に設定することを特徴とする請求項1に記載の天然繊維の製造方法。
【請求項3】
前記蒸煮処理工程において、前記浸漬液の加熱温度を、100℃以上に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の天然繊維の製造方法。
【請求項4】
前記天然繊維の蒸煮を密閉容器内で行うことを特徴とする請求項1〜3に記載の天然繊維の製造方法。
【請求項5】
前記浸漬液は、蒸留水からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の天然繊維の製造方法。
【請求項1】
植物をレッティング処理で解繊することにより、前記植物から天然繊維を取り出す解繊処理工程と、
取り出された前記天然繊維に高圧洗浄液を吹き付けることにより、該天然繊維を洗浄する洗浄処理工程と、
洗浄された前記天然繊維を浸漬液に浸漬し、該浸漬液を加熱することにより、前記天然繊維を蒸煮する蒸煮処理工程と、を少なくとも含むことを特徴とする天然繊維の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄処理工程において、前記高圧洗浄液の吹き付け圧力を、4MPa以上に設定することを特徴とする請求項1に記載の天然繊維の製造方法。
【請求項3】
前記蒸煮処理工程において、前記浸漬液の加熱温度を、100℃以上に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の天然繊維の製造方法。
【請求項4】
前記天然繊維の蒸煮を密閉容器内で行うことを特徴とする請求項1〜3に記載の天然繊維の製造方法。
【請求項5】
前記浸漬液は、蒸留水からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の天然繊維の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−156835(P2011−156835A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22695(P2010−22695)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]