説明

天然高麗人参または高麗人参を含む高麗人参類の形成層由来植物幹細胞株を有効成分として含有する癌予防または治療用組成物

本発明は高麗人参類の形成層由来細胞株、その破砕物、その抽出物またはその培養物を有効成分として含有する癌の予防または治療用組成物に関する。本発明に係る細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液は天然物由来組成物として、既存薬物治療剤の副作用をできるだけ少なくして、人体に安全である共に、効果的に癌の成長において直接関与して、生体内から癌細胞を死滅させ、腫瘍形成及び成長を抑制するか、軽減させる抗癌活性を示し、癌の予防、治療及び、症状緩和に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高麗人参類の形成層由来細胞株、その破砕物、その抽出物またはその培養物を有効成分として含有する癌の予防または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は現代人の死亡原因の最も高い比重をしめる疾患の一つであって、様々な原因による正常細胞の遺伝子の突然変異によって発生する。それは、正常細胞の分化、成長形態に従わない腫瘍のうち、悪性のものである。
【0003】
現在まで悪性腫瘍である癌を治療する方法としては、主に三つの治療法、即ち外科的手術、放射線治療及び化学療法のうちの一つ、またはこれらの組合せによって治療されている。具体的に、外科的手術は疾病組織の大部分を除去する方法で、このような外科的手術は特性の部位、例えば、乳房、結腸及び皮膚に位置する腫瘍を除去することにおいて効果的だが、脊椎のような一部部位にある腫瘍の治療、又は分散性腫瘍の治療には不適切であり、場合によっては臓器を除去しなければならない、及び転移を防止できない等の悪影響の問題があった。
【0004】
放射線治療は急性炎症性疾患、良性または悪性腫瘍、内分泌機能障害及びアレルギー性疾患などに用いられており、一般的に、急速に分裂する細胞から構成される悪性腫瘍に効果的に使用されている。しかしながら、放射線治療により正常組織の機能低下または喪失、及び治療後の治療部位に皮膚疾患の発生の恐れがあり、また臓器の発育が進行している小児の場合、知能発達遅延または骨発育障害など深刻な副作用を齎すことがあり、治療時に患者の苦痛を伴うという問題があった。
【0005】
化学療法の場合も、癌細胞の複製または代謝を阻害し、乳房、肺及び精巣の癌を治療することに広く利用されているが、抗癌剤が癌細胞にだけ作用することはなく、患者の正常細胞にも毒性を発揮する副作用が知られている。化学療法の副作用のうちの大部分は、酷い場合、入院又は痛みを治療するための鎮痛剤が必要になることもある。
【0006】
したがって、癌の成長を抑制し、死滅させる抗癌活性を有する新しい薬物及び製剤開発において、多くの研究が行われて、特に副作用が少ない天然物からの抗癌物質の開発に関する研究に関心が集中している。
【0007】
そこで、本発明者等は既存抗癌剤と比較して、副作用をできるだけ少なくして、癌の発生メカニズムに関与して優れた抗癌活性を表す天然物由来抗癌組成物を開発しようと鋭意努力した結果、天然高麗人参または高麗人参を含む高麗人参類の形成層から誘導された同質的な細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液が癌細胞の死滅活性を表すことを確認し、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、既存抗老化剤の副作用をできるだけ少なくした癌の予防及び治療活性を表す天然物由来組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するために、本発明は高麗人参類(Panax ginseng)の形成層から誘導され、以下の特性を有する細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のいずれか一つ以上を含有する癌の予防または治療用組成物を提供する:
(a)先天的未分化状態(innately undifferentiated)であり;及び
(b)多数の液包(vacuole)を有する形態学的特徴を示す。
【0010】
本発明はまた、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のいずれか一つ以上を含有する癌の予防または治療用組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のいずれか一つ以上の癌の予防及び治療用の用途を提供する。
【0012】
本発明はまた、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のいずれか一つ以上を適用する段階を含む癌の予防及び治療方法を提供する。
【0013】
本発明の他の特徴及び実施態様は次の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより一層明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る細胞株の誘導過程(a)と天然高麗人参の形成層由来細胞株(b)及び高麗人参の子葉由来カルス細胞株(生物自然センター、KCTC PC10224)を示す写真である。
【図2】天然高麗人参の形成層由来細胞株(U2)と天然高麗人参培養根抽出物の8種の癌細胞株に対する細胞増殖抑制活性をEC50値で現れたものである(HCC:肝細胞癌 Hepatocellular carcinoma;−:測定してない)。
【図3】リンパ腫の患者において、天然高麗人参由来の細胞株の投与前(A及びC)と投与後(B及びD)のPET−CTの撮影写真である。
【図4】急性骨髄性白血病患者において、天然高麗人参の形成層由来細胞株の投与期間による白血球及び血小板の数値を表すグラフである。
【図5】肺癌患者における、天然高麗人参由来の細胞株の投与前(A)と投与後(B)のPET−CTの撮影写真である。
【図6】直腸癌患者における、天然高麗人参由来の細胞株の投与前(A)と投与後(B)のPET−CTの撮影写真である。
【図7】胃癌患者における、天然高麗人参由来の細胞株の投与前(a)と投与後(b)をガストローフィバースコプで撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
他の定義がない限り、本明細書で使われた全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する技術分野において熟練した専門家によって通常に分かるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書において使われた命名法は本技術分野においてよく知られており、通常使われるものである。
【0016】
本発明の詳細な説明等において使われる主要用語の定義は下記の通りである。
本願において「形成層(cambium)」とは、植物の幹と根を太くなるようにして、植物が、大きく生長できるようにする組織である。形成層は細胞分裂が最も活発に起きる分裂組織で、植物組織培養の切片体(explant)としての使用時において、細胞の高速及び大量生産が可能だと報告されている(韓国登録特許第0533120)。
【0017】
本願において、「破砕物」とは、細胞を、界面活性剤(detergent)等を利用した化学的方法または物理的方法等で破砕して得た細胞溶解物を意味し、細胞株の「抽出物」とは、細胞を溶媒に溶かして分離した物質であり、蒸留または蒸発を利用して濃縮される。また、細胞株の「培養液」とは、細胞を培養させた後、細胞を除去して残った細胞培養溶液を意味する。
【0018】
本願において「先天的な未分化状態」とは、脱分化過程を経て、未分化状態として存在するのではない、本来、分化前状態を維持することをいう。
【0019】
本発明は一観点において、高麗人参類の形成層由来細胞株、その破砕物、その抽出物またはその培養物のいずれか一つ以上を有効成分として含有する癌の予防または治療用組成物に関する。本発明において、高麗人参類は、天然高麗人参または高麗人参を含む(Lian M.L. et al., J. Plant Biology, 45:201, 2002; Han J.Y. et al., J. Plant Biology, 49:26, 2006; Teng W.L. et al., Tissue and Organ Culture, 68:233, 2002)。この時、本発明で前記天然高麗人参または高麗人参は露地栽培高麗人参または組織培養高麗人参(不定根及び不定根由来細胞株)を含む。
【0020】
本発明に係る高麗人参類の形成層由来細胞株は、(a)先天的未分化状態であること;及び(b)多数の液包を有する形態学的特徴を有することを特徴とする。また、追加的に(a)懸濁培養時に単細胞状態で存在すること;(b)高麗人参類の形成層以外の組織由来細胞株と比べて、バイオリアクターにおいて剪断ストレス(shear stress)に対して低い感受性を有すること;及び(c)高麗人参類の形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速く、安定して培養されることを特徴とする。付け加えて、前記細胞株は同質の細胞株であることを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記細胞株は以下の工程を含む分離方法によって取得されたことを特徴とする:
(a)高麗人参類の形成層含有貯蔵根組織を取得する工程;
(b)前記取得された形成層含有貯蔵根組織をインドール−3−酢酸(IAA:Indole-3-acetic acid)またはインドール−3−酪酸(IBA:Indole-3-butyric acid)を含む培地で培養して、形成層由来細胞株を誘導する工程であって;
この時、前記培養中または培養の前工程または後工程で前記形成層含組織に浸透ストレスを加える工程;及び
(c)前記誘導された形成層由来細胞株を回収する工程。
【0022】
この時、前記工程(b)において、前記浸透ストレス工程は形成層特異的に細胞株を誘導するため、望ましくは前記IAAまたはIBAを含む培地で培養する前に、浸透ストレス工程を行って、形成層以外の一般組織、即ち、皮層(cortex)、篩部(phloem)、木部(xylem)、髄(pith)は、分裂能を失い、この後IAAまたはIBAのように形成層分裂特異的なホルモンで処理して培養する場合、壊死させる。この時浸透剤は0.5〜2Mの含有量で処理して、冷蔵または常温で16時間〜24時間浸透ストレスを加えた後、処理した浸透ストレスを除去することが望ましいが、浸透剤の濃度、処理時間及び温度は植物体の種類、組織の状態によって変わりうるため、これに限定されることはない。また、前記工程(b)において、前記IAAまたはIBAは0.1〜5mg/Lの含有量として含まれることが望ましい。
【0023】
また、前記工程(c)は望ましくは誘導された形成層由来細胞株を2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D:2,4-dichlorophenoxyacetic acid)、ピクロラム(picloram)及びIBAのいずれか一つ以上を含む培地で増殖させた後、形成層由来細胞株を回収することを特徴とする。この時、前記2,4−D、ピクロラム及びIBAのうちいずれか一つは望ましくは1〜5mg/L、さらに望ましくは2mg/Lの含有量として用いる。
【0024】
本発明において使用した培地は、通常の植物組織培養のための培地で、例えば、N6倍地、SH培地、MS培地、AA培地、LS培地、B5倍地、WPM培地、LP培地、White培地、GD培地、DKW培地、DCR培地などが挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
本発明において、前記抽出物は蒸溜水、低級アルコール等のアルコール、アセトン、DMSO(Dimethyl Sulfoxide)及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を用いて抽出されたことが好ましい。この時、前記低級アルコールとしては、メタノール、エタノールなど炭素数が1乃至5のアルコールを意味する。
【0026】
本発明の一実施例では本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株抽出物を膵臓癌細胞株、肺癌細胞株、肝臓癌細胞株、大腸癌細胞株、乳房癌細胞株、子宮癌細胞株、皮膚癌細胞株及び前立腺癌細胞株に処理して前記全ての癌細胞株に対して死滅効果があることを確認した。また、本発明の他の実施例では、本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株培養液の乳房癌細胞株と膵臓癌細胞株に対する死滅効果があることを確認した。
【0027】
付け加えて、本発明のまた他の実施例では本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株をリンパ腫、肺癌、直腸癌及び胃癌等の癌患者に経口投与した後、PET−CTを撮影した結果、高麗人参類の形成層由来細胞株が生体(例えば、患者)内で癌細胞株を死滅させて、腫瘍形成及び成長を抑制するか、軽減させる効果があることを確認し、白血病患者に経口投与した後、血液数値を測定した結果、血液数値が正常に回復されることを確認した。即ち、本発明による細胞株はこれに限定されないが、膵臓癌、肝臓癌、大腸癌、乳房癌、子宮癌、皮膚癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、肺癌、直腸癌及び胃癌の治療及び予防に効果的である。
【0028】
従って、本発明においては前記細胞株破砕物を含有する組成物が癌の予防及び治療を示すことを提示する具体的な実施例がないとしても、前記調べた通りその細胞株、その抽出物及び培養液が癌の予防及び治療に活性を有することを確認しており、本発明に係る細胞株破砕物の場合にも癌の予防及び治療効果を示すことができるということは当業界の通常の知識を有する者には自明である。
【0029】
本発明に係る細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれか一つを含有する癌予防または治療用組成物は、前記細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養物のうちいずれか一つを各々単独で含んだり、一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含んで医薬組成物として提供されてもよく、前記細胞株、その破砕物、その抽出物またはその培養液は疾患及びそれの重症程度、患者の年齢、体重、健康状態、性別、投与経路及び治療期間などによって適切な薬学的に有効な量として医薬組成物に含まれてもよい。
【0030】
本明細書において、「薬学的に許容される組成物」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、通常胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはこれと類似する反応を起こさない組成物のことをいう。前記担体、賦形剤及び希釈剤としては、例えば、ラキトース、テクストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、燐酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0031】
前記医薬組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含んでもよい。また、本発明の医薬組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延された放出を提供することができるよう当業界に公知の方法を用いて剤形化される。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアゾール、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であってもよい。
【0032】
本発明はさらに他の観点において、前記高麗人参類の形成層由来細胞株、その破砕物、抽出物及びその培養液のいずれか一つ以上を含有する癌予防または改善用機能性食品に関する。
【0033】
本願において「機能性食品」とは、一般食品に本発明に係る細胞株、その細胞株の破砕物または抽出物を添加することによって食品の機能性を向上させたことを意味する。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により、本発明をより一層詳細に説明する。この実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこの実施例によって制限されると解釈されないことは当業界の通常の知識を有する者には自明である。
【0035】
特に、下記実施例においては天然高麗人参の形成層由来細胞株、その抽出物及びその培養液の癌の予防及び抑制効果を確認したが、前記細胞株の破砕物を使用しても同じ結果が得られることは当業界の通常の知識を有する者には自明である。
【0036】
[実施例1]天然高麗人参の形成層由来細胞株の製造
[1−1]植物材料の用意
(1)図1(a)のAは本発明において使用した天然高麗人参の典型的な特徴を示す。天然高麗人参を用意した後、天然高麗人参の主根部を使うために流水で表面に付いている土やその他の汚れを除去し、液体洗剤を利用して主根の表面を洗った後、流水に放置した。きれいに洗った組織は、クリーンベンチ内に準備された滅菌フラスコに入れて、70%エタノールで30秒乃至1分程度殺菌した。その後、滅菌水で濯いで1%乃至1.5%次亜鉛素酸ナトリウム(sodium hypochlorite, Junsei, Japan)を利用して、5分乃至15分程度で消毒液で処理した。この時、消毒液が効果的に組織内に侵入するようにするためにTWEEN20(Polyoxyethylenesorbitan monolaurate, Junsei, Japan)を数滴落として処理した。この過程が終わると滅菌水で3回乃至5回濯いだ。その後に殺菌処理した組織の褐変化を防止するために抗酸化剤が含まれたBIM(browning inhibition medium)に殺菌された主根を入れて30分乃至1時間程度振盪培養し、滅菌されたろ紙に置いて水気を除去した。
【0037】
使用されたBIMの組成及び使用濃度は表1に示す。
【表1】

【0038】
ここで、塩濃度は全体の1/4に該当する量だけ添加する。
前記処理された材料を、褐変するのを防止するために抗酸化剤が含まれたCS溶液(cutting solution、表2)が入った滅菌皿に置いて、表皮を薄く剥がし半分に分けて、各部分において分裂能が旺盛な形成層の部分が含まれるようにして、横×縦×高さ=0.5〜0.7cm×0.5〜0.7cm×0.2〜0.5mmの大きさに切断した。図1(a)のBは天然高麗人参の主根部において形成層が含まれるように前記の大きさで切断して切片体を製造した様子を示す。
【表2】

【0039】
(2)バイオリアクターで維持している100年になる天然高麗人参の不定根を用意して、同じく表2のCS溶液が入っている滅菌皿に置いて、前記と同じ方法で形成層が含まれている切片体を取得した。
【0040】
[1−2]天然高麗人参主根部形成層含有切片体への浸透剤の処理
前記実施例1−1で製造された切片体は、分化した組織、即ち、篩部、木部、髄等を壊死させて分裂組織である形成層だけを生存させるために、浸透ストレス処理を行った。前記形成層含有切片体をろ紙が敷かれた前播種培地(培地1、表3)にブロティング(blotting)して、1Mスクロース(Duchefa, Netherland)溶液が入れられたフラスコに入れて、冷蔵状態で16〜24時間浸透ストレス処理した後、0.05Mスクロース溶液(sucrose solution)で5分間、0.1Mスクロース溶液で5分間処理して、高濃度のスクロースによるストレスを解除した。その後、前記浸透ストレスが解除された形成層含有切片体をろ紙が敷かれた前播種培地(培地1)に置いて水気を除去した。
【0041】
【表3】

【0042】
[1−3]天然高麗人参の形成層含有切片体から形成層起源の同質的細胞株誘導
形成層起源の分裂能を有する同質的細胞株を誘導するために、前記実施例1−2で浸透ストレス処理した切片体を細胞株誘導培地(培地2、表4)に播種した。播種に使用された培地は下記表4に示したとおりである。播種された切片体は、22±1℃暗条件で培養した。
【0043】
【表4】

【0044】
この時、浸透処理をしないで直ちに同質性細胞株誘導培地に播種した切片体においては表5に示した通り播種初期(2〜3日)に早く形成層中心に黄色く反応し、時間が経つと共に、切片体全体が黄色く変色する。形成層中心の黄色い反応を示す切片体を形成層起源の分裂能を有する同質性細胞株分離及び増殖最適培地(培地3)に継代して、継続的な同質性細胞株誘導及び増殖を試みたが褐変が酷くなり、時間が経っても褐変反応の他になんら反応も見られなかった。
【0045】
一方、浸透処理を行ってから解除した後、同質性細胞株誘導培地に播種した切片体は、表5に記載した通り、他の組織においては細胞が誘導されなく、形成層だけにおいて特異的に同質性細胞が誘導されることが観察された。即ち、浸透処理を行った後、解除して、播種した切片体においては培養3〜7日の間に切片体の形成層部位が薄い黄色に変わり始めた。それから約7〜14日後、薄い黄色に変わった部位において丸い細胞株が誘導されることを観察した。図1(a)のCは天然高麗人参の形成層含有切片体の中で、形成層特異的分裂能を有する同質性細胞株が誘導された模様を示す。
【0046】
一方、浸透処理を行った切片体を、形成層特異的分裂能を有する同質性細胞株誘導培地でない通常の高麗人参、天然高麗人参など高麗人参類培養に使用する2,4−Dを含む培地を使用し、培養した際には培養7〜10日の間に切片体全体が黄色に変わり始めて、それから約7〜14日後、全体切断面において細胞が誘導されることが観察された。
【0047】
【表5】

【0048】
[1−4]分離した天然高麗人参形成層由来の同質性細胞株の増殖
前記実施例1−3で誘導された形成層起源の分裂能を有する同質性細胞株を利用して増殖に使用した。培地は下記表6に示した基本塩(salt)組成を元に表7に示したように形成層起源の分裂能を有する同質性細胞株の増殖最適培地を使用した。
【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
図1(a)のCに示したように浸透ストレス処理と培地2を使用して、形成層だけにおいて特異的に同質性細胞が誘導された後、表7に示した培地3で継代した結果、形成層起源の分裂能を有する同質性細胞が継続的に分裂及び増殖して、培養約10〜20日後に形成層起源の分裂能を有する同質性細胞株を分離することができた。このように分離した天然高麗人参形成層由来同質性細胞株を同一培地で培養して、分裂能を有する同質性細胞株を再度増殖させた。図1(a)のDは分離した形成層特異的同質性細胞株を表7に示した培地3で増殖させた様子を示す。
【0052】
[1−5]分離した細胞株の特性観察
前記天然高麗人参形成層由来同質性細胞株を下記表8の液状培地が含まれたフラスコに入れて、暗条件で25±1℃で100rpmの回転攪拌機(shaker)で培養した。継代培養周期は2週間に固定することによって培養細胞が常に対数生長期状態で高活力を維持できるようにした。この時、2,4−Dは露地天然高麗人参の形成層から誘導された同質性細胞株の培養に、IBAは天然高麗人参不定根から誘導された同質性細胞株の培養に使用した。
【0053】
一方、高麗人参の子葉由来カルス(callus)も<表8>の培地4で培養して、本発明に係る天然高麗人参形成層由来同質性細胞株と比較した。
【0054】
【表8】

【0055】
先ず細胞凝集の程度を光学顕微鏡(biological microscope CX31, Olympus, Japan)下で見ると、表9のように本発明に係る2,4−Dを処理した露地天然高麗人参形成層由来細胞株は懸濁培養時に95%以上の単細胞状態で存在することが観察され、本発明による細胞株は懸濁培養の時単細胞状態で存在する特徴があることが確認できた。また、図1(b)のAに示したように、2,4−Dを処理した露地天然高麗人参形成層由来細胞株およびIBAを処理した不定根の形成層由来細胞株はすべてが多数の液包を有する形態学的特徴が観察でき、未分化状態であることを確認することができた。しかし、これに反して高麗人参の子葉由来カルス(生物資源センター、KCTC PC10224)を観察した結果、図1(b)のBに示したように、多数の液包が観察されず一つの大きい液包が観察されていることに示した。
【0056】
【表9】

【0057】
一方、大量培養の可能性を調べるために、3Lの内容積を有する空気浮揚式バイオリアクター(airlift bioreactor、ソンウォンサイテク、Korea)で高麗人参の子葉(cotyledon)由来カルスと本発明に係る天然高麗人参の形成層由来同質性細胞を培養した。培地は表8の液状培地を使用し、暗条件で25±1℃で一定に維持した。
【0058】
その結果、表10に示したように、高麗人参の子葉由来培養物の倍加時間(doubling time)は、フラスコにおいては21日であり、一方、リアクター(reactor)においては28日であった。即ち、フラスコ培養時において、本発明に係る形成層由来細胞株が形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度においても3〜5倍程度の高い増殖率を示すことを確認し、そして大量リアクターにおいては本発明に係る形成層由来細胞株が形成層以外の組織由来細胞株に比べて、5〜9倍の高い増殖率を示すことを確認した。これは異質な細胞株はリアクター内における生長輪生成と培養中の植物培養体凝集性と細胞壁が固くて、剪断(shear)に対する感受性により細胞生存率(cell viability)が急激に減少したのが原因であると判断された。
【0059】
一方、本発明に係る2,4−Dを処理した露地天然高麗人参の形成層由来細胞培養物の倍加時間は3〜4日であり、IBAを処理した天然高麗人参不定根の形成層由来細胞培養物の倍加時間は5〜6日で、すべてフラスコと反応器との間には差が見られないか却って短縮された。形成層由来同質性細胞培養物はバイオリアクター内の生長輪面積を極力小さく形成して、培養器に簡単な刺激を与えて、培地を動かすと内壁のリング(ring)が簡単に解消された。また、凝集が小さく、多くの液包を有しており、剪断に対する感受性が低く、細胞生存率の減少を起こさなかった。
【0060】
即ち、本発明に係る形成層由来細胞株は大量培養のためのバイオリアクターで攪拌作用に係る剪断ストレスに対し、低い感受性を有するため、バイオリアクター内の大量培養において急速に産生されることが可能である。従って、本発明に係る形成層由来細胞株が形成層以外の組織由来細胞株に比べて、剪断ストレスに対し5〜9倍の低い感受性を有することが分かった。
【0061】
【表10】

【0062】
一方、異質性細胞株である高麗人参子葉由来カルス(生物資源センター、KCTC PC10224)と形成層由来同質性細胞株に対する凍結保管を実施した。懸濁培養物は培養6〜8日のものを使用し、凍結保存剤は0.5Mグリセロール(DUCHEFA, オランダ)と0.5M DMSO(DUCHEFA, オランダ)と1Mスクロース(DUCHEFA, オランダ)が含まれた培地であって、5mLクライオバイアル(Duran, 米国)に移した、凍結保存剤に処理される細胞の接種量は200mg/mLである。凍結保存剤が処理された懸濁細胞は30分間冷凍庫で維持した後、ディープ・フリーザーに3時間保管後、液体窒素に沈漬させ冷凍させた。
【0063】
そのあと、液体窒素に20分以上維持された培養細胞を出して40℃の恒温水槽にいれて、1〜2分間解凍させた。細胞の再成長のため、細胞懸濁液を無菌状態のろうと、およびろ紙を使用した。ろ過された細胞はろ紙が含まれた固体成長培地上に載せ、30分間室温で安定化させた後、再び新鮮な固体成長培地に移した。
その結果、高麗人参子葉由来の異質的な細胞株は再成長してない反面、形成層由来同質性細胞株は4週後に再成長を始め、増殖する様相を見せて、増殖率において、凍結保存の前後に差を見せなかった。
【0064】
[実施例2]天然高麗人参の形成層由来細胞株の乾燥及び抽出物製造
実施例1の天然高麗人参の不定根の形成層由来細胞株から次のように乾燥及び抽出した。
(1)乾燥細胞株の製造
(i)培養液を除去した細胞株を凍結乾燥または熱風乾燥させた。
(ii)前記乾燥させた細胞株は粉砕機を用いて粉砕された。
(2)蒸溜水抽出物の製造
(i)培養液を除去した細胞株及び熱風乾燥、凍結乾燥細胞株500gに5000mLの蒸溜水を加えて、24時間攪拌させながら抽出した。
(ii)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離し、上層液を回収することによって蒸溜水可溶性物質を得た。
(iii)前記で得た蒸溜水可溶性物質を、回転真空濃縮機を利用して減圧濃縮した。
(3)エタノール抽出物の製造
(i)培養液を除去した細胞株及び熱風乾燥、凍結乾燥細胞株500gに5000mLのエタノールを加えて、24時間攪拌させながら抽出した。
(ii)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離させ上層液を回収することによってエタノール可溶性物質を得た。
(iii)前記で得たエタノール可溶性物質を、回転真空濃縮機を利用して減圧濃縮した。
(4)メタノール抽出物の製造
(i)培養液を除去した細胞株及び熱風乾燥、凍結乾燥細胞株500gに5000mLのメタノールを加えて、24時間攪拌させながら抽出した。
(ii)前記溶解後、3,000gで10分間遠心分離させ上層液を回収することによってメタノール可溶性物質を得た。
(iii)前記で得たメタノール可溶性物質を、回転真空濃縮機を利用して減圧濃縮した。
【0065】
[実験例1]高麗人参類の形成層由来細胞株のインビトロ細胞増殖抑制効果
本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株の癌細胞株の増殖抑制効果を確かめるために、癌細胞株8種に対する前記実施例2の(4)のメタノール抽出物を添加して抑制効率を測定した。
【0066】
実験に使用した細胞株は韓国細胞株銀行(KCLB)から提供されたAsPC−1(膵臓癌)、A549(肺癌)、SK−Hep1(肝臓癌)、HT−29(大腸癌)、MDA−MB−231(乳房癌)、HeLa(子宮癌)、A375P(皮膚癌)、DU−145(前立腺癌)を使用し、培養液は10%子牛血清を含むRPMI1640とDMEM培地を使用した。
【0067】
まず、各細胞株を細胞の成長速度によって、異なる濃度で96−ウェルプレートに播種し、16〜24時間37℃で培養した後、前記実施例2の(4)のメタノール抽出物と対照群として天然高麗人参培養根抽出物を12段階のドーズに段階希釈して処理した。天然高麗人参培養根抽出物は、本発明による細胞株と通常の天然高麗人参組織との効果を比較するためのものであり、凍結乾燥した天然高麗人参培養根を前記実施例2の(4)と同じ方法により、メタノール抽出物を製造して使用した。
【0068】
72時間後、各ウェルに15μL MMT染料溶液(Promega)を加えた後、37℃で4時間放置してから溶解溶液/ストップミックスを1ウェル当り100μLずつ処理して37℃で一晩置いた。生成された染められたフォルマザン生成物が完全に溶解されたことを確認した後、570nmで吸光度を測定した。測定された吸光度は溶媒処理群に対する百分率によって計算され、溶媒処理群と比較し、50%の吸光度の減少を示すときの検体の濃度(EC50)として表示した。
【0069】
その結果、図2に示したように、本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株の抽出物は天然高麗人参不定根抽出物に比べて顕著に少ない濃度で8種のがん細胞株の増殖を抑制させることが確認できた。特に、天然高麗人参培養根抽出物の場合、高濃度であっても細胞増殖阻害活性が低く、EC50を求めることができなかった大腸癌細胞株に対しても、本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株の抽出物は増殖抑制活性を表した。
【0070】
したがって、本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株は天然高麗人参培養根抽出物に比べて顕著に高く癌細胞株抑制活性を有することを示し、優れた抗癌剤として有用に使用できることを提示した。
【0071】
[実験例2]高麗人参類の形成層由来細胞株培養液のインビトロ細胞増殖抑制効果(2)
追加的に、本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株培養液の癌細胞株に対する死滅効果を調べるため、次の実験を行った。
【0072】
試料は前記実施例2の(4)において、細胞株の抽出物の製造工程から除去した培養液を検体として使用し、癌細胞株としては韓国細胞株銀行(KCLB)から提供されたMDA−MB−231(乳房癌)とAsPC−1(膵臓癌)を使用し、培養液は10%子牛血清を含むRPMI1640とDMEM培地を使用した。
【0073】
まず、2種の癌細胞株を細胞の成長速度によって、異なる濃度で96−ウェルプレートに播種し、16〜24時間37℃で培養した後、前記培養液を12段階のドーズに段階希釈して処理した。72時間後、各ウェルに15μL MMT染料溶液を加えた後、37℃で4時間放置してから溶解溶液/ストップミックスを1ウェル当り100μLずつ処理して37℃で一晩置いた。生成された染められたフォルマザン生成物が完全に溶解されたことを確認した後、570nmで吸光度を測定した。測定された吸光度は溶媒処理群に対する百分率によって計算され、溶媒処理群と比較し、50%の吸光度の減少を示すときの検体の濃度(EC50)として表示した。
【0074】
その結果、MDA−MB−231(乳房癌)とAsPC−1(膵臓癌)に対して各々>7.57mg/mL、>1.0mg/mLのEC値を得ることができ、ここで本発明による細胞株だけではなく本発明による培養液も癌細胞株に対して死滅効果を有することが確認できた。
【0075】
[実験例3]高麗人参類の形成層由来細胞株の癌予防及び治療効果の確認
本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株の癌予防及び治療効果を確認するため、癌と診断された患者に対して前記実施例2の(1)から製造された乾燥細胞株粉砕物をパウダー形態で投与した。服用は一日3回(朝、昼および夜)1gずつ水に溶解した形態で経口投与して、具体的な投与量及び期間は以下のとおりであった。一方、投与中、副作用はないことが確認された。
【0076】
3−1:リンパ腫患者への投与
2004年1月8日付でリンパ腫と診断された患者(キム**氏、1957年生まれ、女)に対して、乾燥細胞株の粉末を2ヶ月間1日3gずつ経口投与した。投与期間中、他の抗癌治療は併行して行わなかった。人体内で癌細胞を死滅させる効果を確認するため、投与前及び投与2ヶ月後に、各々ハンヤン大学校病院において、PET−CTを撮影して対比観察した。
【0077】
その結果、図3に示したように、投与前には、左側腹腔及び骨盤腔に、広範囲且つ異常に代謝が増加した部分が検出され、右側の腎臓と心膜及び腹膜から悪性腫瘍が確認された(図3A,C)。対照的に、2ヶ月間本発明による細胞株を投与した後の撮影結果では、広範囲且つ異常に代謝が増加した部位が消えたことが確認できた(図3B,D)。
【0078】
したがって、前記実験結果は本発明による細胞株が癌細胞を死滅させて癌を予防及び治療する効果があることを確認した。
【0079】
一方、一般的に抗癌剤の服用の間、抗癌剤の毒性により肝臓の数値と腎臓の数値が異常に増加する副作用が報告されており、前記投与期間の間、以下のように定期的に、肝臓の数値及び腎臓の数値を測定した。表11に示すように、T.Bil、ALP、AST、ALT、LDHは肝臓の数値の測定点であり、BUNとCREは腎臓の数値の測定点であり、全てハンヤン大病院で測定された。この時、BUN及びCREはセルームクレアチン測定法(Folin−Wu法)により測定され、AST、ALT及びLDHはATBA−200FR、HITACHI7170自動分析機を使用して測定し、ALPはセルーム測定方法で、T.Bilはアサンセットビリルビン測定用試液を利用して測定した。
【0080】
【表11】

【0081】
その結果、表11に示したように、本発明による細胞株の服用時、肝臓及び腎臓の数値が正常に維持することが観察され、本発明による細胞株の毒性がないことを確認した。
【0082】
3−2:急性骨髄性白血病患者に対する投与
急性骨髄性白血病と診断された患者(イ**氏、1995年生まれ、女)に対して8ヶ月間1日3gずつ経口投与した。また体内において、癌を治療する効果を確認するため、投与前及び投与1ヶ月後の各々において、白血球値及び血小板値をcelldyn300自動血液測定器(Abbott, wiesbaden, Germany)を利用して製造社が提示した説明書の測定法により測定した。
【0083】
【表12】

【0084】
その結果、図4及び表12に示したように、投与前白血球の数値が2,000/mmであったが、投与9日後に、白血球数が劇的に増加して投与1ヶ月後には白血球の数値と血小板の数値がすべて正常範囲内に観察された(白血球の数値正常範囲:4,000〜10,000/mm;血小板値正常範囲:141,000〜316,000/mm)。
【0085】
したがって、本発明による細胞株の投与が白血病を治療し、その症状を緩和させる効果があることが確認できた。
【0086】
3−3:急性リンパ芽球性白血病患者に対する投与
急性リンパ芽球性白血病と診断された患者(チョイ**氏、2001年生まれ、男)に対して14ヶ月間1日3gずつ経口投与した。また人体内から癌を治療する効果を確認するため投与前及び投与14ヶ月後の各々の血色素値をcelldyn300自動血液測定器(Abbott, wiesbaden, Germany)を利用して製造社が提示した説明書の測定法により測定した。
【0087】
【表13】

その結果、表13に示したように、投与前に比べて血色素値が増加して正常範囲を表した。
【0088】
白血病は分化過程の一段階が停止したことにより、分化せずに未熟細胞が増殖することに基づいており、そして免疫学的な表現形が一定した未成熟細胞が増殖する(ジョンインサン, Medical Postgraduates 33, 2005)。ここで急性リンパ芽球性白血病は白血球前駆細胞である未熟細胞の癌性増殖により、正常血球が減少し、これにより貧血、出血、及び感染などがよく見られ、臓器に浸潤して、骨の痛み、肝及び脾臓の肥大などが現れて臓器損傷をもたらす。前記投与前の血色素値が3.6gm/dlに過ぎないことから、これは患者が酷い貧血状態にあることを示しているが、本発明による細胞株の投与後、12.8gm/dlの正常値に増加して白血病により症状が改善されたことが確認できた。
【0089】
したがって、本発明による細胞株の投与が白血病の症状を緩和させる効果があることが確認できた。
【0090】
一方、前記経口投与時に、抗癌治療が併行されたが、本発明による細胞株投与の前である、最初の白血病診断の後、持続的に行われたことから、この抗癌治療が投与前または投与後のデータを比較することにおいて影響を及ぼさないと判断された。
【0091】
3−4:肺癌患者に対する投与
(1)2006年7月3日付で肺癌と診断された患者(ユン**氏、1939年生まれ、女)に対して、13ヶ月間、1日3gずつ経口投与し、投与期間中、他の抗癌治療は併行しなかった。体内で癌細胞を死滅させる効果を確認するため、投与前及び投与13ヶ月後に、各々ソウル大学校病院において、PET−CTを撮影して対比観察した。
【0092】
その結果、図5に示したように、投与前(図5A)及び投与後(図5B)を対比すると、投与により不透明度(opacity)が減少されたことが確認されて、腫瘍の大きさも減少されていると判断された。
【0093】
したがって、前記実験結果は、本発明による細胞株が、癌細胞を死滅させて癌を予防及び治療する効果があることを示した。
【0094】
(2)追加的に抗癌剤(アバスチン、ジェネンテク)を投与中である62歳の肺癌患者(J**氏、1946年生まれ、男)に対して、3ヶ月間1日3gずつ投与した。癌細胞の死滅効果を確認するため、CT撮影で直径を測定した。
【0095】
その結果、腫瘍の直径を測定した結果、投与前7cmから5.6cmに腫瘍のサイズが減少したことが確認できた。ここで、本発明による細胞株は癌を死滅させる効果があることが確認できた。
【0096】
一方、前記経口投与時抗癌剤であるアバスチンの投与が併行されたが、本発明による細胞株投与前では、アバスチン単独投与時に腫瘍が、継続的にサイズが増加しており、抗癌治療が投与前または投与後のデータを比較することに影響を及ぼさないと判断される。
【0097】
3−5:直腸癌患者に対する投与
2007年11月13日付で直腸癌と診断された患者(ゴン**氏、1949年生まれ、女)に対して、1日3gずつ経口投与し、投与期間中他の抗癌治療は併行しなかった。体内で癌細胞を死滅させる効果を確認するため、投与前及び投与49日後に各々ジョンブク大学校病院において、PET−CTを撮影して対比観察した。
【0098】
その結果、図6に示したように、投与前(図6A)及び投与後(図6B)を対比した結果、投与前写真の赤い円で表示されている部分の不透明度が減少されたことが確認された。即ち、癌細胞が死滅されたと判断された。
【0099】
したがって、前記実験結果は本発明による細胞株が癌細胞を死滅させて癌を予防及び治療する効果があることを示した。
【0100】
3−6:胃癌患者に対する投与
2007年10月5日付で胃癌と診断された患者(イ**氏、1967年生まれ、男)に対して、1日3gずつ経口投与し、投与期間中他の抗癌治療は併行しなかった。体内で癌細胞を死滅させる効果を確認するため、投与前及び投与4ヶ月後に、各々ウルサン病院において、ガストローフィベルスコペで確認して投与前及び投与後の腫瘍にサイズを対比観察した。
【0101】
その結果、図7に示したように、投与開始時(図7(a))及び腫瘍のサイズは7cmであったが、投与後4ヶ月後(図7(b))測定した結果、2cmで測定されて、腫瘍のサイズが大きく減少されていることが示された。
【0102】
したがって、前記実験結果は本発明による細胞株が癌細胞を死滅させて癌を予防及び治療する効果があることを示した。
【0103】
[実験例4]高麗人参類の形成層由来細胞株の癌予防及び治療効果の確認(2)
本発明による高麗人参類の形成層由来細胞株の癌予防及び治療効果を確認するため、追加的に肺癌患者に対して前記実施例2の(1)において製造された乾燥細胞株粉砕物をパウダー形態で投与した。服用は一日3回(朝、昼および夜)1gずつ水に溶解した形態で経口投与して、投与による副作用はないことが確認された。
【0104】
2008年7月1日投与を始めた後、約1年後である、2009年7月15日に天然高麗人参の形成層由来細胞株の投与による効果を確認するためにケミョン大学校ドンサン医療院で胸部CTを撮影し、その結果投与前26×20mmのサイズであったLLL側面基盤断片で観察された針状形腫塊のサイズが14×14mmのサイズに大きく減少したことが観察できた。また、両方の肺で多数の転移性結節のサイズが顕著に減少したことを確認できた。
【0105】
ここで、本発明による高麗人参類の形成層由来同質的な細胞株は癌腫塊のサイズを減少させ、癌を治療し、予防する効果があることが確認できた。
【0106】
[製造例1]薬学製剤製造例
[製剤例1]錠剤の製造
実施例2で製造された細胞株抽出物100mgをとうもろこし澱粉100mg、乳糖100mg及びステアリン酸マグネシウム2mgを混合して、通常の錠剤製造方法によって製造した。
【0107】
[製剤例2]カプセル剤の製造
実施例2で製造された細胞株抽出物500mgを軟質ゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を製造する。
【0108】
[製剤例3]シロップ剤の製造
実施例1で製造された細胞株1g、異性化糖10g、マンニトール5g、適量の精製水の含有量で通常の液製剤の製造方法によって100mLのシロップ剤を製造した。
【0109】
[製剤例4]注射剤の製造
実施例2で製造された細胞株抽出物200mgを、ポリオキシエチレン水素化カストロオイルを含有する生理食塩水200mgに加熱溶解させて、混合抽出物を0.1%の濃度で含有する注射剤を製造した。
【0110】
[製造例2]機能性食品の製造:機能性飲み物の製造
[製造1]
実施例1で製造した細胞株200mgを96mLの水に溶解させた後、補助剤としてビタミンC500mg、矯味剤としてクエン酸、オリゴ糖を各々1g加え、保存剤として安息香酸ナトリウム0.05gを加えた後、精製水を加えて、全量を100mLにして、機能性飲み物を製造した。
【0111】
[製造2]
実施例2で製造した細胞株抽出物200mgを96mLの水に溶解させた後、補助剤としてビタミンC500mg、矯味剤としてクエン酸、オリゴ糖を各々1g加え、保存剤として安息香酸ナトリウム0.05gを加えた後、精製水を加えて、全量を100mLにして、機能性飲み物を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上説明したように、本発明に係る細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液は天然物由来組成物として、既存薬物治療剤の副作用をできるだけ少なくして、人体に安全である共に、効果的に癌の成長に直接関与して、生体内から癌細胞を死滅させ、腫瘍形成及び成長を抑制するか、軽減させる抗癌活性を現し、癌の予防、治療及び、症状緩和に有用である。
【0113】
以上、発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者には、このような具体的技術は単に望ましい実施様態に過ぎず、これによって、本発明の範囲が制限されるのではない点は明白であろう。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高麗人参類の形成層から誘導され、以下の特性を有する細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液のいずれか一つ以上を含有する癌の予防または治療用組成物:
(a)先天的未分化状態であり;及び
(b)多数の液包を有する形態学的特徴を示す。
【請求項2】
前記細胞株は以下の特性を追加的に有する請求項1に記載の癌の予防または治療用組成物:
(a)懸濁培養時に単細胞状態で存在し;
(b)高麗人参類の形成層以外の組織由来細胞株と比べて、バイオリアクターにおいて剪断ストレスに対して低い感受性を有し;及び
(c)高麗人参類の形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速く、安定して培養される。
【請求項3】
前記細胞株は以下の工程を含む分離方法によって取得された請求項1に記載の癌の予防または治療用組成物:
(a)高麗人参類の形成層含有貯蔵根組織を取得する工程;
(b)前記取得された形成層含有貯蔵根組織をインドール−3−酢酸またはインドール−3−酪酸を含む培地で培養して、形成層由来細胞株を誘導する工程であって、
ここで、前記培養中または培養の前工程または後工程で前記形成層含組織に浸透ストレスを加える工程;及び
(c)前記誘導された形成層由来細胞株を回収する工程。
【請求項4】
前記工程(c)は誘導された形成層由来細胞株を2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ピクロラム及びインドール−3−酪酸のいずれか一つ以上を含む培地で増殖させた後、形成層由来細胞株を回収する請求項3に記載の癌の予防または治療用組成物。
【請求項5】
前記抽出物は蒸溜水、アルコール、アセトン、DMSO及びこれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒を利用して抽出された請求項1に記載の癌の予防または治療用組成物。
【請求項6】
前記癌は膵臓癌、肝癌、大腸癌、乳房癌、子宮頸部癌、皮膚癌、前立腺癌、リンパ腫、白血病、肺癌、直腸癌及び胃癌からなる群から選択される一つである請求項1〜5のいずれか一項に記載の癌の予防または治療用組成物。
【請求項7】
高麗人参類の形成層から誘導され、以下の特性を有する細胞株、その破砕物、その抽出物及びその培養液のいずれか一つ以上を含有する癌の予防または改善用機能性食品:
(a)先天的未分化状態であり;及び
(b)多数の液包を有する形態学的特徴を示す。
【請求項8】
前記細胞株は以下の特性を追加的に有する請求項7に記載の癌の予防または改善用機能性食品:
(a)懸濁培養時に単細胞状態で存在し;
(b)高麗人参類の形成層以外の組織由来細胞株と比べて、バイオリアクターにおいて剪断ストレスに対して低い感受性を有し;及び
(c)高麗人参類の形成層以外の組織由来細胞株に比べて、生長速度が速く、安定して培養される。
【請求項9】
前記細胞株は以下の工程を含む分離方法によって取得された請求項7に記載の癌の予防または改善用機能性食品:
(a)高麗人参類の形成層含有貯蔵根組織を取得する工程;
(b)前記取得された形成層含有貯蔵根組織をインドール−3−酢酸またはインドール−3−酪酸を含む培地で培養して、形成層由来細胞株を誘導する工程であって、
ここで、前記培養中または培養の前工程または後工程で前記形成層含組織に浸透ストレスを加える工程;及び
(c)前記誘導された形成層由来細胞株を回収する工程。
【請求項10】
前記工程(c)は誘導された形成層由来細胞株を2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ピクロラム及びインドール−3−酪酸のいずれか一つ以上を含む培地で増殖させた後、形成層由来細胞株を回収する請求項9に記載の癌の予防または改善用機能性食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−507579(P2012−507579A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535513(P2011−535513)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006523
【国際公開番号】WO2010/053314
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(510077978)株式会社ウンファ (11)
【Fターム(参考)】