説明

天端出し補助具

【課題】基礎構造物内の配筋構成に関係することなく、基礎構造物の天端面のレベル変更に対応可能な天端出し補助具を提供する。
【解決手段】基礎構造物の天端面のレベル出しを行なうための天端出し補助具1であり、基礎として設置された配筋(横筋T)に取着される保持体10と、保持体10に対し摺動可能に配置され鉛直方向における高さを変位可能とするレベル指示体20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎構造物を施工する際に用いる基礎構造物の天端面のレベル出しを行なうための天端出し補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎構造物は、基礎構造物用の型枠を組み、その型枠の内部にコンクリートを打設することで施工されている。このコンクリートの打設工程は2度に分けて成されており、まず、基礎構造物の予定する天端位置に達しないように第1のコンクリートが打設され、その第1のコンクリートが硬化した後に液状近くになるまで軟らかくした第2のコンクリートが打設される。この流動性の高い第2のコンクリートを第1のコンクリート上に打設することで、基礎構造物の天端面の水平出しを行なっている。
【0003】
従来、この第2のコンクリートの打設に際して、特許文献1に開示されるような天端出し補助具40を使用して基礎構造物の天端面のレベル出しが行なわれている。図7(a)に示すように、特許文献1の天端出し補助具40は、一本の鋼線を屈曲形成して成り、その下端部には基礎構造物内に基礎として配置される鉄筋に挿着可能であるとともにその鉄筋の配筋方向にスライド可能な挿着部41が形成され、上端部には天端表示部42が形成されている。このように構成された天端出し補助具40によれば、その挿着部41を基礎構造物内に配置される縦筋43に挿着した後、天端出し補助具40を鉛直方向にスライドさせることで予定する天端面に合わせて天端表示部42の高さ位置を調節することが可能である(図7(b)参照。)。任意の位置に高さ位置を調節した天端出し補助具40の天端表示部42を目印として第2のコンクリートを打設することで、基礎構造物の天端面のレベル出しが行なわれる。
【特許文献1】特開2000−336934
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基礎構造物用の鉄筋を配置するに際して、たとえば、基準面上に載置した鉄筋用スペーサに横筋を支持させる等して、縦筋を配置せずに横筋のみを配置する場合がある。このような横筋のみ配置された基礎構造物を施工する場合には、特許文献1の天端出し補助具40を使用することはできなかった。つまり、特許文献1の天端出し補助具40は、挿着した鉄筋の配筋方向にのみスライド可能に構成されているため、横筋に挿着した際には、天端表示部42の位置は水平方向に移動するのみであり、その高さ位置が変位することはない。そのため、仮に天端出し補助具40の胴部分をL字状に折り曲げることで天端表示部42を横筋よりも高い位置に位置させたとしても、天端表示部42の高さ位置を任意に調節することは不可能であった。
【0005】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、基礎構造物内の配筋構成に関係することなく、基礎構造物の天端面のレベル変更に対応可能な天端出し補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の天端出し補助具は、基礎として設置された配筋、又は配筋を支持するスペーサに取着される保持体と、該保持体に対し摺動可能に配置され鉛直方向における高さを変位可能とするレベル指示体と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の天端出し補助具は、請求項1に記載の発明において、配筋を支持するスペーサと、該スペーサに対して摺動可能に配置され鉛直方向における高さを変位可能とするレベル指示体と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、レベル指示体は保持体又はスペーサに対して摺動するとともに、その鉛直方向における高さ位置が変位する。そのため、配筋がどのような方向に配置されていたとしても、レベル指示体の摺動方向が変更されることはなく、レベル指示体の高さ位置を鉛直方向に調節することが可能である。
【0009】
請求項3〜8に記載の天端出し補助具は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記レベル指示体は弾性変形可能な部材からなり、折り曲げ形成されてその両側が摺動部位とされるとともに、前記保持体又は前記スペーサには前記レベル指示体の前記両摺動部位を挿入する被挿入部が形成され、前記レベル指示体の両摺動部位間の間隔を拡げた又は狭めた状態で両摺動部位が前記被挿入部内に位置していることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、レベル指示体は自身の弾性力に抗して両摺動部位間の間隔を拡げた又は狭めた弾性変形状態で被挿入部内に位置する。このとき、レベル指示体の弾性力は、被挿入部における両摺動部位との両当接部分をそれぞれ内方向、或いはそれぞれ外方向へと相反する方向へ押圧する力として作用する。この押圧作用によって、レベル指示体はその高さ位置を位置決めされた状態で被挿入部内に位置し続けることが可能となるとともに、レベル指示体の位置ずれを抑制することが可能となる。
【0011】
請求項4に記載の天端出し補助具は、請求項3に記載の発明において、前記レベル指示体は、その頂部に段部を形成していることを特徴とする。
上記構成によれば、レベル指示体の最頂部と段部との複数箇所でレベル調整することが可能となる。たとえば、基礎構造物を施工する際、段部によって第1のコンクリートの天端面レベルを表示し、レベル指示体の最頂部によって第2のコンクリートの天端面レベルを表示することが可能となる。
【0012】
請求項5に記載の天端出し補助具は、請求項3又は4に記載の発明において、前記レベル指示体は、その頂部に着色部を形成していることを特徴とする。上記構成によれば、コンクリートを打設する際に、レベル指示体を容易に視認することが可能となり、基礎構造物の施工における作用効率が向上する。
【0013】
請求項6に記載の天端出し補助具は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記レベル指示体の少なくとも一部には、複数の溝が形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、レベル指示体を摺動させる際に、摺動部位の溝が保持体又はスペーサに引っかかるため、レベル指示体を溝に沿って段階的に摺動させることが可能となる。そのため、レベル指示体の高さ位置の調節を容易に行なうことが可能となる。
【0015】
請求項7に記載の天端出し補助具は、請求項3〜6のいずれか一項に記載の発明において、前記保持体は、配筋の外周面を把持するとともに、前記保持体には、配筋の軸方向に交差する方向に形成された長孔状の前記被挿入部を有し、該被挿入部に前記レベル指示体の両摺動部位が位置することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の天端出し補助具は、請求項3〜6のいずれか一項に記載の発明において、前記保持体は、配筋の外周面を把持するとともに、前記保持体には、配筋の軸方向に交差する方向に伸びる羽根部とを有し、該羽根部に前記レベル指示体の両摺動部位が位置する前記被挿入部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の天端出し補助具によれば、基礎構造物内の配筋構成に関係することなく、基礎構造物の天端面のレベル変更に対応可能なレベル出しを行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本願発明を具体化した第1実施形態の天端出し補助具1を図1及び2に基づいて説明する。図1には、第1実施形態の天端出し補助具1を横筋Tに取着した状態を示している。図1に示すように、本実施形態の天端出し補助具1は、保持体10とレベル指示体20とから構成されている。保持体10は、弾性変形可能な板状部材を折り曲げ線Lを中心に折り曲げて断面U字状に形成するとともに、その内側面間の間隔が取着される配筋の直径よりも小さくなるように形成されている。
【0019】
保持体10の外側面には、折り曲げ線L側から下端に向かって折り曲げ線Lに直交する方向に延びる長孔状の被挿入部11が、折り曲げ線Lを対称軸として対称となるように一対設けられている。この被挿入部11は、保持体10の側面を外方に向かって断面半円状に膨出形成して設けられているとともに、その上下両端は開口されている。また、保持体10の側面には、被挿入部11の上端側開口と連続するとともに、折り曲げ線L側に向けて延びる切欠12が設けられている。
【0020】
図2(a)に示すように、レベル指示体20は、弾性変形可能な鋼線を略中央にて折り曲げて逆V字状に形成されているとともに、その下端側ほど鋼線の間隔が広くなるように形成されている。レベル指示体20を保持体10の被挿入部11に挿入した場合、その被挿入部11内に位置する摺動部位21がレベル指示体20の両側に形成されている。本実施形態において、この摺動部位21は、レベル指示体20の両下端部から鋼線の外側面間の間隔Aが一対の被挿入部11における内壁面間の間隔Bと等しくなる高さ位置までの範囲としている(図2(a)、(b)参照。)。そのため、両摺動部位21の外側面間の間隔は、一対の被挿入部11の内壁面間の間隔Bと等しいか、又はそれよりも大きくなる。また、摺動部位21の外側の周面には、断面三角形状の溝24が摺動部位21の軸方向に連続して複数設けられている。
【0021】
本実施形態においては、レベル指示体20の頂部22には、その一部を内側に窪ませて形成した一対の段部23が設けられているとともに、レベル指示体20の段部23よりも上端側には、着色部25が設けられている。この着色部25を着色する色は、何色でも構わないが、周囲に配置される配筋やコンクリートに対して着色部25を識別し易い色であることが好ましく、とくに、赤、青、黄、緑が好ましい。なお、本実施形態において、頂部22とは、レベル指示体20において上記鋼線の外側面間の間隔Aと一対の被挿入部11における内壁面間の間隔Bとが等しい位置よりも上端側を意味する。
【0022】
次に、本実施形態の天端出し補助具1の作用について説明する。図1に示すように、本実施形態の天端出し補助具1は、保持体10に設けられた被挿入部11内にレベル指示体20を挿入し、これらを組み合わせた状態で使用されるものである。
【0023】
図2(b)に示すように、レベル指示体20はその摺動部位21間の間隔を狭めた状態で、両摺動部位21が被挿入部11内にそれぞれ挿入される。このとき、摺動部位21は、その間隔を狭めた状態で被挿入部11内に位置しているため、レベル指示体20には元状態に戻ろうとする復元力Fが作用する。この復元力Fによってレベル指示体20は、被挿入部11の内壁面を外方へ押圧する状態となり、レベル指示体20は被挿入部11内に位置決めされる。
【0024】
この保持体10に対してレベル指示体20が位置決めされた状態において、作業者がレベル指示体20を頂部22方向へ引き上げると摺動部位21は被挿入部11に沿って摺動するとともに、レベル指示体20の高さ位置が変位する。また、レベル指示体20の引き上げを止めるとレベル指示体20は保持体10に対して再び位置決めされる。レベル指示体20を押し下げた場合においても同様に摺動する。なお、本実施形態においては、保持体10を横筋Tに取着した際には、被挿入部11の延びる方向は略鉛直方向となるため、レベル指示体20は略鉛直方向に摺動する。
【0025】
また、本実施形態では、摺動部位21の外側の周面に溝24が連続して設けられている。これにより、レベル指示体20を摺動させる際に、レベル指示体20に設けられている溝24と被挿入部11の端縁との間に一定間隔ごとに引っかかりが生じる。この引っかかりの発生によってレベル指示体20は段階的に摺動する。
【0026】
次に、本実施形態の天端出し補助具1を用いた基礎構造物の天端面のレベル出し方法について説明する。先ず、保持体10に設けられた被挿入部11内にレベル指示体20を挿入し、保持体10とレベル指示体20とを組み合わせた状態にした後、基礎構造物内に基礎として配置されている横筋Tに対して天端出し補助具1の取り付けを行なう。
【0027】
この天端出し補助具1の取り付けは、保持体10の下部開口(図1に示す保持体10の下側)を折り曲げ線Lと横筋Tの軸線とが平行となるように横筋Tの外周面上部に沿わせ、横筋Tによって保持体10の内側面間の間隔が押し広げられながら保持体10が下方に押し込まれる。そして、保持体10の内側面によって横筋Tの外周面が把持された状態となって、横筋Tに天端出し補助具1が取着される。
【0028】
続いて、レベル指示体20を引き上げるか又は押し下げることで鉛直方向に摺動させて、レベル指示体20の最頂部22aの高さと予定する基礎構造物の天端面の高さとが等しくなるようにレベル指示体20の高さ位置の調整を行う。そして、レベル指示体20の段部23を目印として型枠内に第1のコンクリートを打設するとともに、レベル指示体20の最頂部22aを目印として型枠内に第2のコンクリートを打設することで、基礎構造物は、その天端面が予定する高さ位置に水平に形成される。
【0029】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態では、断面U字状に形成した保持体10の外側面に折り曲げ線Lに直交する方向に延びる長孔状の被挿入部11が設けられているとともに、レベル指示体20が被挿入部11に沿って摺動するように構成されている。これにより、天端出し補助具1を横筋Tに取着した場合においても、レベル指示体20を鉛直方向に摺動させることができるとともに、レベル指示体20の高さ位置を鉛直方向に変位させることができる。したがって、横筋Tのみ配筋された基礎構造物についても、コンクリート打設の天端面のレベル出しを実現することができる。
【0030】
(2)本実施形態では、保持体10の側面には、切欠12が被挿入部11の上端側開口と連続して形成されている。これにより、レベル指示体20を被挿入部11に挿入する際の挿入可能面積が拡大するため、レベル指示体20を被挿入部11に挿入するのが容易になる。
【0031】
(3)本実施形態では、被挿入部11は長孔状に形成されている。これにより、保持体10に単に孔を設けて被挿入部11とする場合と比較して、摺動部位21と被挿入部11との間の当接面積が大きくなり、摺動部位21と被挿入部11との間に生じる摩擦抵抗が大きくなる。そのため、レベル指示体20の高さ位置を被挿入部11内に位置決めした状態からの位置ずれの発生が抑制される。
【0032】
(4)本実施形態では、摺動部位21は、両摺動部位21間の間隔が一対の被挿入部11の内壁面間の間隔Bと等しいか、又はそれよりも大きくなるように形成されている。これにより、保持体10とレベル指示体20とが組み合わされた状態では、レベル指示体20は両摺動部位21間の間隔を拡げた状態で被挿入部11内に位置することになる。このとき、レベル指示体20には元状態に戻ろうとする復元力Fが作用するとともに、復元力Fによって、レベル指示体20は被挿入部11の内壁面を外方へ押圧する状態となる。この押圧作用によって、レベル指示体20はその高さ位置を位置決めされた状態で被挿入部内に位置し続けることが可能となるとともに、レベル指示体20の位置ずれを抑制することが可能となる。
【0033】
(5)本実施形態では、摺動部位21の外側の周面に溝24が連続して設けられている。これにより、レベル指示体20を摺動させる際には、この溝24と被挿入部11の端縁との間に一定間隔ごとに引っかかりが生じ、レベル指示体20は段階的に摺動する。したがって、レベル指示体20の高さ位置の調節を容易に行なうことができるとともに、レベル指示体20の鉛直方向の位置ずれを抑制することができる。
【0034】
(6)本実施形態では、レベル指示体20の頂部22には段部23が形成されている。そのため、基礎構造物を施工する際に、段部23によって第1のコンクリートのレベル出しを行ないつつ、レベル指示体20の最頂部22aで第2のコンクリートのレベル出しを行なうことができる。
【0035】
(7)本実施形態では、レベル指示体20の頂部22には、着色が成されている。そのため、コンクリートを打設する際に、レベル指示体20の位置を用意に視認することが可能となり、基礎構造物の施工における作業効率が向上する。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の天端出し補助具2を図3及び4に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一構成の部分は同一の符号を付し、第1実施形態と相違する点を中心にして説明する。
【0036】
図3(b)に示すように、本実施形態の天端出し補助具2は、スペーサ30とレベル指示体20とから構成されている。図3(a)に示すように、このスペーサ30は、略直方体状の部材であるとともに、基礎構造物を施工する際に、基準面となる底面上に載置されて配筋を底面から所定高さをもって支持する部材である。このスペーサ30は、横方向の長さX、高さ方向の長さY、奥行き方向の長さZが全て異なるように形成されており、スペーサ30をどのように載置するかによって支持する配筋の高さ位置を変更することができるものである。さらに、スペーサ30の一面(図3(a)でいう上面)は、高低差のある段状に形成されているとともに、高面30aは低面30bよりも幅広に形成されている。この高面30a及び低面30bは、ともに配筋を支持することが可能に形成されており、高面30a及び低面30bのどちらの面上に配筋を支持させるかによって配筋の高さ位置を変更することができる。また、スペーサ30には、対向面間を貫通する一対の長孔状の被挿入部31がそれぞれの面に設けられ、図3(a)でいう上面の場合、高面30aに設けられている。
【0037】
図4(a)は、本実施形態のレベル指示体20を示している。本実施形態のレベル指示体20の両側は、それぞれ屈曲点Pにて内方に折り曲げられており、その下端側ほど鋼線の間隔が小さくなるように形成されている。屈曲点Pは、レベル指示体20において、鋼線の内側面間の間隔Cが、スペーサ30に設けられる被挿入部31の内壁面間の間隔Dと等しくなる位置に設けられている。そのため、レベル指示体20の屈曲点Pよりも下端側における鋼線の内側面間の間隔Cは、被挿入部31の内壁面間の間隔Dよりも小さくなっている(図4(a)、(b)参照。)。
【0038】
また、本実施形態のレベル指示体20では、その両側の両下端からスペーサ30に設けられる被挿入部31の深さに対応して摺動部位21が形成されているとともに、摺動部位21の内側の周面には断面三角形状の溝24が摺動部位21の軸方向に連続して複数設けられている。
【0039】
次に、本実施形態の天端出し補助具2の作用について説明する。まず、支持する配筋の高さに応じて、スペーサ30の向きを決め基礎構造物の基準面に載置する。図3(b)に示すように、本実施形態の天端出し補助具2は、スペーサ30に設けられた上面の一対の被挿入部31内にレベル指示体20を挿入して使用されるものである。図4(b)に示すように、本実施形態においては、レベル指示体20はその摺動部位21間の間隔を拡げた状態で、両摺動部位21が上記被挿入部31内にそれぞれ挿入される。このとき、摺動部位21を含むレベル指示体20の両側は、直立状態で被挿入部31内に位置する。また、本実施形態においても、被挿入部31内に位置しているレベル指示体20には復元力Fが作用する。この復元力Fによって、レベル指示体20は、被挿入部31の内壁面を内側へ押圧する状態となり、レベル指示体20は被挿入部31内に位置決めされる。
【0040】
本実施形態の天端出し補助具2を用いて基礎構造物の天端面のレベル出しを行なう場合には、先ず、基礎構造物を施工する際の基準面上にスペーサ30を載置し、支持する配筋の高さに応じて、高面30a又は低面30b上に横筋Tを配置する。なお、図3(b)に示すように、本実施形態では低面30b上に横筋Tを配置している。続いて、被挿入部31にレベル指示体20を挿入した後に、レベル指示体20の最頂部22aの高さと予定する基礎構造物の天端面の高さとが等しくなるようにレベル指示体20の高さ位置を調整することで基礎構造物の天端面のレベル出しを行う。
【0041】
第2実施形態においても、上記(5)〜(7)の作用効果を得ることができる。また、第2実施形態においては、以下のような作用効果が得られる。
(8)第2実施形態では、レベル指示体20は両摺動部位21間の間隔を拡げた状態で被挿入部31内に位置する。これにより、レベル指示体20に作用する復元力Fによって、レベル指示体20は被挿入部31の内壁面を内方へ押圧する状態となる。そのため、レベル指示体20は、その高さ位置を位置決めされた状態で被挿入部31内に位置し続けることが可能となるとともに、レベル指示体20の位置ずれを抑制することが可能となる。
【0042】
(9)第2実施形態では、屈曲点Pにおいてレベル指示体20の両側を内方へ折り曲げて形成したことにより、両摺動部位21間の間隔を拡げた状態で摺動部位21がスペーサ30に対して直立するようになっている。そのため、摺動部位21の延びる方向と被挿入部31の形成方向とが平行となるとともに、摺動部位21と被挿入部31との当接部分が大きくなる。したがって、被挿入部31からのレベル指示体20が抜け出しにくくなる。
【0043】
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 第1実施形態では、保持体10は断面U字状に形成したが、保持体10の形状はこれに限られるものではない。たとえば、その断面がC字状となるように形成してもよいし、断面が多角形状となるように形成してもよい。
【0044】
・ 各実施形態では、被挿入部11及び31は、両端が開口した孔状に形成されていたが、下方の端部が閉塞した穴状に形成してもよい。
・ 第1実施形態では、被挿入部11は長孔状に形成されていたが被挿入部11の形状はこれに限られるものではない。たとえば、保持体10の肉厚に相当する長さの単なる孔を設けてこの孔を被挿入部11としてもよい。また、被挿入部11は保持体10の外側面において折り曲げ線L側から下端に向かって折り曲げ線Lに直交する方向に延びるように形成されていたが、被挿入部11の形成方向はこれに限られるものではなく、折り曲げ線Lと交差する方向に形成されていればよい。
【0045】
・ 第1実施形態では、被挿入部11は、保持体10において折り曲げ線Lを対称軸として対称となるように一対設けられていたが、被挿入部11の数はこれに限られるものではない。たとえば、一つの被挿入部11の内径を大きくし、その一つの被挿入部11内にレベル指示体20の両摺動部位21を挿入して第1実施形態のレベル指示体20と同様に機能させることも可能である。この場合には、被挿入部11にレベル指示体20を挿入する際に、摺動部位21をそれぞれ別の被挿入部11に挿入する必要がないため、挿入作業が容易となる。さらに、レベル指示体20を頂部22側から被挿入部11に挿入することも可能となる。また、被挿入部11は、折り曲げ線Lを対称軸として対称となるように設けていなくてもよい。
【0046】
・ 第1実施形態の被挿入部11は、保持体10の側面を外方へ向けて膨出形成したが、これを内方へ向けて膨出形成してもよい。この場合、レベル指示体20の両摺動部位21間の間隔は、一対の被挿入部11の内壁面間の間隔Bと等しいか、又はそれよりも小さくなる。このように構成された保持体10及びレベル指示体20を採用した場合においても第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0047】
・ 第1実施形態では、保持体10は、配筋に対して取着していたがスペーサ30に対して取着する構成としてもよい。たとえば、図5(a)に示すように、スペーサ30の一側面に外方へ向かって突出する直方体状の被係合部33を設け、この被係合部33に対して保持体10を取着した場合においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0048】
また、図5(b)に示すように、断面L字状の板状部材を保持体10とし、その一方の面に孔状の被挿入部11を一対設けるとともに他方の面に接着部17を設け、スペーサ30の側面に対して接着部17を接着させることで保持体10をスペーサ30に取着するようにしてもよい。このように構成した場合には、スペーサ30に被係合部33を設ける必要はない。
【0049】
・ 図6(a)、(b)、(c)、(d)に示す保持体10を採用してもよい。図6(a)に示す保持体10には横羽根部13が設けられ、この横羽根部13は、保持体10の下端に水平方向から下方に傾斜して延びる下羽根部13aと、保持体10の側面に設けた切込みを外方へ打ち起こすとともに、折り曲げ線Lに対して平行となるように形成された上羽根部13bとから構成されている。これらの横羽根部13には、横羽根部13を貫通する孔状の被挿入部11がそれぞれ形成されているとともに、この被挿入部11は鉛直方向に見て少なくとも一部が重なるように形成されている。また、下羽根部13aに形成される被挿入部11は、上羽根部13bに形成される被挿入部11よりも大きく設けられている。なお、保持体10の他方の側面においても同一構成の横羽根部13及び被挿入部11が設けられている。このように構成された保持体10を採用した場合においても第1実施形態と同様の効果を奏する。また、下羽根部13a又は上羽根部13bのどちらか一方のみを備えた保持体10であってもよい。
【0050】
図6(b)に示す保持体10には、その端部に板状の縦羽根部14が設けられているとともに、この縦羽根部14は折り曲げ線Lに対して交差するように形成されている。この縦羽根部14には一対の被挿入部11が形成されている。そのため、この被挿入部11に挿入されるレベル指示体20は、折り曲げ線Lと同方向に摺動することになる。このように構成された保持体10を採用することで、縦筋に取着させた場合においても基礎構造物の天端面のレベル出しを行なうことができる。
【0051】
図6(c)に示す保持体10には、上記横羽根部13及び上記縦羽根部14及び被挿入部11が設けられている。このように構成された保持体10を採用することで、保持体10を横筋に取着させた場合においても縦筋に取着させた場合においても基礎構造物の天端面のレベル出しを行なうことが可能となる。つまり、この保持体10を横筋に取着させた場合には、横羽根部13に設けられた被挿入部11に対してレベル指示体20を挿入し、保持体10を縦筋に取着させた場合には、縦羽根部14に設けられた被挿入部11に対してレベル指示体20を挿入することで、レベル指示体20はいずれの場合にも鉛直方向に摺動することになる。
【0052】
また、図6(d)に示す保持体10を採用してもよい。図6(d)に示す保持体10は、その肉厚が厚く形成されているとともに、その側面には、折り曲げ線L側から下端に向かって延びる窪み状の被挿入部11が一対設けられている。このように構成された保持体10を採用した場合においても第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0053】
・ 各実施形態では、レベル指示体20を鋼線で形成していたが、レベル指示体20の素材はこれに限られるものではない。たとえば、他の組成からなる金属を採用してもよいし、プラスチックやゴム等の樹脂材を採用してもよい。
【0054】
・ 各実施形態では、摺動部位21には、断面三角形状の溝24が摺動部位21の軸方向に連続して複数設けられていたが、溝24の形状はこれに限られるものではない。また、溝24を所定間隔をおいて設けるようにしてもよい。
【0055】
・ 各実施形態では、両摺動部位21にはともに溝24が形成されていたが、両摺動部位21のうちどちらか一方のみに溝24を形成するようにしてもよい。このように構成した場合においても、レベル指示体20を段階的に摺動させることができる。また、摺動部位21に対して部分的に溝24を設けてもよいし、溝24を設けなくてもよい。
【0056】
・ 各実施形態では、摺動部位21の位置を規定していたが、レベル指示体20の両側であれば、どの部分を摺動部位21としてもよい。
・ 各実施形態では、レベル指示体20の頂部22には、その一部を内側に窪ませて形成した一対の段部23が設けられていたが、段部23の形状はこれに限られるものではなく、段部23はどのように設けてもよい。たとえば、段部23を多段に形成してもよいし、レベル指示体20の片側のみに段部23を設けてもよい。また、段部23は設けなくてもよい。
【0057】
・ 各実施形態では、着色部25は、レベル指示体20の段部23よりも上端側に設けられていたが、着色部25は、頂部22のどの位置に設けられていてもよい。たとえば、頂部22全体を着色部25としてもよいし、着色部25を縞状に着色してもよい。縞状に着色した場合には、着色箇所でレベル出しを行なうこともできる。また、着色は成されていなくてもよい。
【0058】
・ 各実施形態では、レベル指示体20は、逆V字状に形成されていたが、レベル指示体20の形状はこれに限られるものではない。たとえば、図6(e)に示すように、レベル指示体20は直線状であってもよい。図6(e)に示すレベル指示体20は直線状に形成されているとともに、その上端には、一部を折り返して形成した頂部22が設けられている。また、図6(e)に示す保持体10の一側面には、上下方向に延びる長孔状の被挿入部11が設けられている。この被挿入部11は、保持体10の側面を外方に向かって膨出形成されているとともに、上下方向に切込11aが形成されている。なお、この被挿入部11の断面形状は、レベル指示体20の断面形状よりも小さく形成されている。
【0059】
このように構成されたレベル指示体20及び保持体10によれば、レベル指示体20を被挿入部11に挿入する際、レベル指示体20は、切込11aの間隔を拡げながら被挿入部11内に圧入される。これにより、レベル指示体20は、被挿入部11の内面及び保持体10の外側面によって挟持され、レベル指示体20はその高さ位置を位置決めされた状態で被挿入部11内に位置し続けることができる。したがって、このように構成した場合においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0060】
・ 第2実施形態では、レベル指示体20の両側を屈曲点Pにて折り曲げていたが、この折り曲げはなくてもよい。また、第2実施形態では屈曲点Pは、レベル指示体20において、鋼線の内側面間の間隔Cが、被挿入部31の内壁面間の間隔Dと等しくなる位置に設けられていたが、屈曲点Pの位置はこれに限られるものではない。また、第2実施形態では、レベル指示体20はそれぞれ屈曲点Pにて内方に折り曲げられていたが、これを外方に折り曲げ、その下端側ほど鋼線の間隔が大きくなるように形成してもよい。
【0061】
・ レベル指示体20と被挿入部11、31との組み合わせは、上記実施形態の組み合わせに限られるものではなく、どのように組み合わせてもよい。
・ 第2実施形態では、スペーサ30の各面に被挿入部31が設けられていたが、この被挿入部31は少なくとも一面に存在してレベル指示体20が挿入されるように構成されていればそれでよい。また、スペーサ30の一面を二段状に形成していたが、三段以上の複数段状に形成してもよいし、段状にすることなく単なる平面状に形成するようにしてもよい。また、スペーサ30の二面以上を段状となるように形成してもよい。
【0062】
・ 両摺動部位21間の間隔を強制的に拡大又は縮小させる間隔調節手段をレベル指示体20に設けてもよい。このように構成した場合には、摺動部位21から被挿入部11に対して作用する押圧力を調節することが可能となる。たとえば、レベル指示体20の位置決めをした後、摺動部位21から被挿入部11に対して作用する押圧力を強めると、レベル指示体20の位置ずれを更に抑制することができる。逆に摺動部位21の押圧力を弱めて、レベル指示体20の摺動性を高めるように機能させることもできる。この間隔調節手段としては、伸縮自在で固定可能な棒状部とその両端に形成されるレベル指示体取付部とから構成したものであってもよいし、また、環状のリング部材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】配筋に取着された状態の第1実施形態の天端出し補助具を示す斜視図。
【図2】(a)は第1実施形態のレベル指示体の正面図。(b)は第1実施形態の保持体とレベル指示体とを組み合わせた状態を示す断面図。
【図3】(a)は第2実施形態のスペーサを示す斜視図。(b)は第2実施形態の天端出し補助具を示す斜視図。
【図4】(a)は第2実施形態のレベル指示体の正面図。(b)は第2実施形態のスペーサとレベル指示体とを組み合わせた状態を示す断面図。
【図5】(a)、(b)は、スペーサに取着された状態の別例の天端出し補助具を示す斜視図。
【図6】(a)、(b)、(c)、(d)は別例の保持体を示す斜視図。(e)は別例の保持具及びレベル指示体を示す斜視図。
【図7】(a)、(b)は従来の天端出し補助具を示す斜視図。
【符号の説明】
【0064】
10…保持体、11,31…被挿入部、13…羽根部、20…レベル指示体、21…摺動部位、22…頂部、23…段部、24…溝、30…スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎として設置された配筋、又は配筋を支持するスペーサに取着される保持体と、該保持体に対し摺動可能に配置され鉛直方向における高さを変位可能とするレベル指示体と、を備えたことを特徴とする天端出し補助具。
【請求項2】
配筋を支持するスペーサと、該スペーサに対して摺動可能に配置され鉛直方向における高さを変位可能とするレベル指示体と、を備えたことを特徴とする天端出し補助具。
【請求項3】
前記レベル指示体は弾性変形可能な部材からなり、折り曲げ形成されてその両側が摺動部位とされるとともに、前記保持体又は前記スペーサには前記レベル指示体の前記両摺動部位を挿入する被挿入部が形成され、
前記レベル指示体の両摺動部位間の間隔を拡げた又は狭めた状態で両摺動部位が前記被挿入部内に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の天端出し補助具。
【請求項4】
前記レベル指示体は、その頂部に段部を形成していることを特徴とする請求項3に記載の天端出し補助具。
【請求項5】
前記レベル指示体は、その頂部に着色部を形成していることを特徴とする請求項3又は4に記載の天端出し補助具。
【請求項6】
前記レベル指示体の少なくとも一部には、複数の溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の天端出し補助具。
【請求項7】
前記保持体は、配筋の外周面を把持するとともに、前記保持体には、配筋の軸方向に交差する方向に形成された長孔状の前記被挿入部を有し、該被挿入部に前記レベル指示体の両摺動部位が位置することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の天端出し補助具。
【請求項8】
前記保持体は、配筋の外周面を把持するとともに、前記保持体には、配筋の軸方向に交差する方向に伸びる羽根部とを有し、該羽根部に前記レベル指示体の両摺動部位が位置する前記被挿入部が形成されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の天端出し補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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