説明

天端出し補助具

【課題】縦筋に対する固定部材の回転方向の位置ずれを抑制することのできる天端出し補助具を提供する。
【解決手段】天端出し補助具1は、コンクリート打設レベルを示す第1レベル指示部13及びレベル材打設レベルを示す第2レベル指示部12を有する棒材10と、棒材10を縦筋Tに対して上下方向に相対移動可能に取り付ける固定部材20とを備えている。そして、固定部材20には、横筋Yの側部に当接して縦筋Tに対する固定部材20の回転を規制する規制部材25が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎構造物の天端面のレベル出しを行うための天端出し補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎構造物は、基礎構造物用の型枠を組み、その型枠の内部にコンクリート等を打設することで施工されている。一般に、この打設工程は2段階に分けてなされている。まず、基礎構造物の予定する天端位置に達しないようにコンクリートが打設される。そして、そのコンクリートが硬化した後に、予定する天端位置までレベル材(例えば、液状近くまで流動性を高めたコンクリート)が打設される。この流動性の高いレベル材をコンクリート上に打設することで、基礎構造物の天端面の水平出しを行なっている。
【0003】
従来、コンクリート及びレベル材の打設に際して、特許文献1に開示されるような天端出し補助具を使用して天端面のレベル出しが行われている。特許文献1の天端出し補助具は、コンクリート打設レベルを示す目印及びレベル材打設レベルを示す目印を有する棒材と、鉄筋を固定する挟持部及び棒材の上下位置を調整して保持可能な保持部を有する固定部材とから構成されている。この天端出し補助具は、棒材と固定部材とを組立てた状態で使用されるものであり、基礎構造物内に配置される縦筋に固定部材を固定した状態で、固定部材に対する棒材の上下位置を調整することができる。そして、任意の位置に調整された棒材の各目印に基づいてコンクリート及びレベル材を打設することにより基礎構造物の天端面のレベル出しが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−048510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした天端出し補助具は縦筋に取り付けた際に、縦筋に対する固定部材の位置ずれが起こり難い構成となるように考慮する必要がある。特許文献1の天端出し補助具の場合、固定部材の挟持部を、縦筋の外周部分に当接する一対の円弧部から構成している。そして、一方の円弧部には同円弧部と一体に屈曲するラチェット歯を形成するとともに、他方の円弧部には同円弧部と一体に屈曲するラチェット爪を形成している。特許文献1の天端出し補助具の構成によれば、両円弧部間に縦筋を配置した状態でラチェット歯とラチェット爪とを歯合させるとともにその歯合状態を絞ることによって縦筋を強固に挟持することができる。その結果、各円弧部と縦筋との間の摩擦力が高められて、縦筋に対する固定部材の位置ずれを抑制することができる。
【0006】
しかしながら、固定部材と縦筋との間の摩擦力を高めて縦筋に対する固定部材の位置ずれを抑制する構成とした場合、上下方向における位置ずれ抑制作用と比較して、回転方向における位置ずれ抑制作用が弱くなりやすいという問題がある。つまり、縦筋に取り付けられた固定部材に対して回転方向の力が作用した場合に、縦筋に対して固定部材が回転してしまい、回転方向の位置ずれが生じやすいという問題があった。
【0007】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、縦筋に対する固定部材の回転方向の位置ずれを抑制することのできる天端出し補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の天端出し補助具は、配筋に取り付けてコンクリート打設レベル及びレベル材打設レベルを設定する天端出し補助具であって、コンクリート打設レベルを示す第1レベル指示部、及びレベル材打設レベルを示す第2レベル指示部を有する棒材と、該棒材を縦筋に対して上下方向に相対移動可能に取り付ける固定部材とを備え、前記固定部材には、前記固定部材を取り付けた縦筋に組み合わせされる横筋の側部に当接して、前記縦筋に対する前記固定部材の回転を規制する規制部材が固定されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、配筋に取り付けられた状態の天端出し補助具の固定部材に対して回転方向の力が加わった場合に、規制部材が横筋の側部に当接することにより、固定部材の回転を規制することができる。よって、縦筋に対する固定部材の回転方向の位置ずれを抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の天端出し補助具は、請求項1に記載の発明において、前記固定部材は、前記棒材を上下方向に相対移動可能に保持する棒材保持部と、前記縦筋を保持する縦筋保持部とを備え、前記規制部材は、前記固定部材から側方へ延設される横支持部と、該横支持部から下方へ延設される縦支持部と、該縦支持部に形成される弾性片とを備え、前記弾性片と前記棒材保持部とにより前記横筋を挟持するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、弾性片と棒材保持部とによって所定の圧力をもって横筋を挟み込むことにより、固定部材は横筋に対して回転方向に強固に固定された状態となる。よって、固定部材の回転方向の位置ずれをより確実に規制することができる。
【0012】
請求項3に記載の天端出し補助具は、請求項2に記載の発明において、前記弾性片は、前記横筋の側部に当接する本体部を備え、前記本体部の先端には、前記横筋の下部に当接して、前記縦筋に対する前記固定部材の上方向へ移動を規制する下部当接片が形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、配筋に取り付けられた状態の天端出し補助具の固定部材に対して、上方へ移動させようとする力が加わった場合に、弾性片の下部当接片が横筋の下部に当接することにより、固定部材の上方向への位置ずれを規制することができる。
【0014】
請求項4に記載の天端出し補助具は、請求項3に記載の発明において、前記本体部の先端には、前記横筋の上部に当接して、前記縦筋に対する前記固定部材の下方向へ移動を規制する上部当接片が形成され、前記上部当接片と前記下部当接片とにより前記横筋を上下に挟持するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、弾性片の上部当接片と下部当接片とによって横筋を上下に挟み込むことにより、固定部材は横筋に対して上下方向に固定された状態となる。よって、固定部材の上下方向の位置ずれをより確実に規制することができる。
【0016】
なお、「横筋Yの側部」とは、横筋Yの外周面上における最も側方に位置する部位(最側部位)のみを意味するものではない。同様に、「横筋Yの上部」及び「横筋Yの下部」とは、それぞれ横筋Yの外周面上における最も上方に位置する部位(最上部位)、及び最も下方に位置する部位(最下部位)のみを意味するものではない。すなわち、「横筋Yの側部」とは、横筋Yの外周面上における最上部位及び最下部位を除く範囲のすべてを含む概念である。「横筋Yの上部」とは、横筋Yの外周面上における最側部位を除く上側半分の範囲のすべてを含む概念である。「横筋Yの下部」とは、横筋Yの外周面上における最側部位を除く下側半分の範囲のすべてを含む概念である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の天端出し補助具によれば、縦筋に対する固定部材の回転方向の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の天端出し補助具の斜視図。
【図2】(a)は第1実施形態の固定部材の上面図、(b)は第1実施形態の固定部材の側面図。
【図3】(a)は棒材の上面図、(b)は棒材の正面図、(c)は棒材の側面図。
【図4】第2実施形態の天端出し補助具の斜視図。
【図5】(a)は第2実施形態の固定部材の上面図、(b)は第2実施形態の固定部材の側面図。
【図6】第3実施形態の天端出し補助具の斜視図。
【図7】(a)は第3実施形態の固定部材の上面図、(b)は第3実施形態の固定部材の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態の天端出し補助具1を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、天端出し補助具1は、縦筋Tと横筋Yとを組み合わせてなる基礎構造物の配筋に取り付けて使用される。天端出し補助具1は棒材10と、棒材10を縦筋Tに固定する固定部材20とから構成される。棒材10及び固定部材20は、ポリプロピレン、ポリアセタール、ABS樹脂、ポリカーボネート、及びポリアミド等の樹脂材により形成される。なお、本発明の天端出し補助具における上下とは、図1に示すように天端出し補助具を配筋(縦筋T)に装着した状態での方向をいう。
【0020】
図3(a)〜(c)に示すように、棒材10は丸棒を基本形状とする部材であり、その上端がレベル材の打設レベルを示す第2レベル指示部12となっている。棒材10の上端の頭頂部には、十字状の溝として形成される嵌合部14が設けられており、ドライバー等の高さ調節用治具を嵌合可能に構成されている。
【0021】
棒材10の周面上において、第2レベル指示部12である上端から、予定するレベル材厚さに相当する所定幅分だけ下側となる位置には、コンクリートの打設レベルを示す略三角板状の第1レベル指示部13が一対突設されている。棒材10における第1レベル指示部13の形成位置、即ち第2レベル指示部12から第1レベル指示部13までの間隔は、コンクリート上に打設するレベル材の厚みと同等に設定されている。また、棒材10の周面上には、第1レベル指示部13の下側から下端にわたって螺旋状のネジ溝11が形成されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、固定部材20は、共に略筒状をなす縦筋保持部21及び棒材保持部22が柱状の接続部23を介して外面同士で一体に接続された形状をなしている。図2(a)に示すように、縦筋保持部21は断面C字状の筒状体であり、その周壁には一部を軸方向に切り欠いてなる縦筋側開口21aが形成されている。縦筋保持部21の内径は、装着される縦筋Tの径よりも小さくなるように設定されている。なお、基礎構造物に使用される配筋は10、13、16mm等の直径を有する鉄筋であり、固定部材20の縦筋保持部21はこれら各直径にそれぞれ対応した大きさに形成される。
【0023】
縦筋側開口21aには外方へ突出するとともに、先に向かうほど開口幅が拡大する案内部21bが形成されている。縦筋側開口21aの最挟部の開口幅は、縦筋側開口21a側から縦筋保持部21内へ、縦筋保持部21を弾性変形させつつ縦筋Tを嵌入可能な程度の幅に設定されている。
【0024】
図2(a)及び(b)に示すように、棒材保持部22は断面C字状の筒状体であり、その周壁には一部を軸方向に切り欠いてなる棒材側開口22aが形成されている。棒材保持部22の内径は、棒材10におけるネジ溝11が形成されている部位の径と同じになるように設定されている。棒材側開口22aの開口幅は、棒材10のネジ溝11が形成されている部位の径に対して十分に小さい幅に設定されている。また、棒材保持部22の内周面の中央には、棒材10のネジ溝11に係合する突起状の係合部24が設けられている。
【0025】
図1及び図2(a)に示すように、縦筋保持部21及び棒材保持部22は互いの開口を反対側に向けた状態として、それぞれ接続部23に接続されている。具体的には、縦筋保持部21は、その周壁における縦筋側開口21aと反対側の位置(180度ずれた位置)にて柱状の接続部23の下部側面に接続されている。一方、棒材保持部22は、その周壁における棒材側開口22aと反対の位置(180度ずれた位置)にて柱状の接続部23の上部側面に接続されている。
【0026】
図2(a)及び(b)に示すように、接続部23の上端部分には側方へ向かって延びる棒状の横支持部26が延設されるとともに、横支持部26の先端部分には下方へ向かって延びる棒状の縦支持部27が延設されている。横支持部26における接続部23から側方への突出長さは、棒材保持部22と縦支持部27との間に横筋Yの径よりも大きい間隔が確保される程度の長さに設定されている。つまり、図2に示すX方向(水平面上において横筋Yの延びる方向と直交する方向)における棒材保持部22と縦支持部27との間の間隔L1は横筋Yの径よりも大きくなっている。本実施形態においては、横支持部26と縦支持部27とによりL字状の規制部材25が構成されている。
【0027】
(作用)
次に、本実施形態の天端出し補助具1を用いた基礎構造物の天端面のレベル出し方法について説明する。
【0028】
[組立工程]
棒材保持部22内へ上方側から棒材10の下端を挿入する。そして、棒材10を回転させることにより、棒材保持部22の係合部24と棒材10のネジ溝11とを係合させる。このとき、棒材保持部22は棒材側開口22aを広げて内径を大きくするように弾性変形した状態となる。そして、棒材10は係合部24とネジ溝11との係合関係、及び棒材保持部22の復元圧力によって棒材保持部22内に保持される。天端出し補助具1は棒材10と固定部材20とを上記のとおりに組み合わされた状態で使用される。
【0029】
[取付工程]
図1に示すように、基礎構造物内の配筋を構成する縦筋T及び横筋Yに対して、天端出し補助具1を取り付ける。取付対象となる縦筋Tに組み合わされている横筋Yに対して規制部材25を引っ掛けた状態として、縦筋Tに対して縦筋保持部21の縦筋側開口21aを押し当てて、縦筋Tを縦筋保持部21内へ嵌入させる。このとき、縦筋Tは縦筋保持部21の案内部21bに案内されて、縦筋側開口21aを押し広げつつ縦筋保持部21内へ嵌入されるとともに、縦筋Tによって縦筋保持部21は内径を大きくするように弾性変形した状態となる。そして、縦筋Tは縦筋保持部21の復元圧力によって縦筋保持部21内に保持される。
【0030】
その後、縦筋Tに対して固定部材20を下方にスライド移動させて、横筋Yの上部に規制部材25の横支持部26を当接させるとともに、棒材保持部22と縦支持部27との間に横筋Yを位置させる。これにより、配筋に対する天端出し補助具1の取り付けが完了する。
【0031】
天端出し補助具1を配筋に取り付けた状態において、固定部材20を回転させようとする回転方向の力が加わった場合には、固定部材20が所定量回転した段階で規制部材25の縦支持部27が横筋Yの側部に当接して、それ以上の固定部材20の回転が規制される。また、固定部材20を下方へ移動させようとする力が加わった場合には、規制部材25の横支持部26が横筋Yの上部に当接して、固定部材20の下方向への移動(ずり落ち)が規制される。つまり、規制部材25の縦支持部27が、固定部材20の回転方向の位置ずれを規制する回転規制手段として機能するとともに、規制部材25の横支持部26が固定部材20の下方向への位置ずれを規制する下方向規制手段として機能する。
【0032】
なお、縦支持部27が当接する「横筋Yの側部」とは、横筋Yの外周面上において、最も上方に位置する部位(最上部位)及び最も下方に位置する部位(最下部位)を除く範囲のすべてを意味する。具体的には、「横筋Yの側部」の範囲Aは、横筋Yの横断面を見たときに、横筋Yの外周面上における最も側方に位置する部位(最側部位)と横筋Yの中心とを結ぶ線を基準として−90°<A<90°の範囲に該当する範囲である。この範囲内に縦支持部27が当接すれば、縦支持部27と横筋Yとの間に回転方向の引っ掛かりが生じて、固定部材20の回転を規制することができる。なお、固定部材20の回転を規制するという観点においては、「横筋Yの側部」の範囲Aは、横筋Yの横断面を見たときに、最側部位と横筋Yの中心とを結ぶ線を基準として−45°≦A≦45°の範囲に該当する範囲であることが好ましい。
【0033】
また、横支持部26が当接する「横筋Yの上部」とは、横筋Yの外周面上において、最側部位を除く上側半分の範囲のすべてを意味する。具体的には、「横筋Yの上部」の範囲Bは、横筋Yの横断面を見たときに、最上部位と横筋Yの中心とを結ぶ線を基準として−90°<B<90°の範囲に該当する範囲である。この範囲内に横支持部26が当接すれば、横支持部26と横筋Yとの間に上下方向の引っ掛かりが生じて、固定部材20の下方向への移動を規制することができる。なお、固定部材20の下方向への移動を規制するという観点においては、「横筋Yの上部」の範囲Bは、横筋Yの横断面を見たときに、最上部位と横筋Yの中心とを結ぶ線を基準として−45°<B<45°の範囲に該当する範囲であることが好ましい。
【0034】
[打設工程]
天端出し補助具1を配筋に取り付けた状態において、作業者は、固定部材20に対して棒材10を相対回転させ、棒材10を上下方向(鉛直方向)に相対移動させる。そして、棒材10の第1レベル指示部13及び第2レベル指示部12の上下位置と、予定する基礎構造物のコンクリート打設レベル及びレベル材打設レベルとが等しくなるように棒材10の位置調節を行う。このとき、ドライバー等の高さ調節用治具を用いて、棒材10の上下位置を調節することも可能である。つまり、棒材10の上端に設けた嵌合部14に高さ調節用治具を嵌合して、高さ調節用治具と棒材10とを一体回転可能な状態とし、高さ調節用治具に付された目盛り等を参考にして棒材10の上下位置を調整してもよい。そして、棒材10の上下位置の調整が完了した後、棒材10の第1レベル指示部13を目印として基礎構造物の型枠内にコンクリートを打設するとともに、コンクリートの打設後には第2レベル指示部12を目印として型枠内にレベル材を打設する。これにより、基礎構造物は、その天端面が予定する高さ位置に形成される。
【0035】
次に、第1実施形態における効果について、以下に記載する。
(1)天端出し補助具1は、コンクリート打設レベルを示す第1レベル指示部13及びレベル材打設レベルを示す第2レベル指示部12を有する棒材10と、棒材10を縦筋Tに対して上下方向に相対移動可能に取り付ける固定部材20とを備えている。そして、固定部材20には、横筋Yの側部に当接して縦筋Tに対する固定部材20の回転を規制する縦支持部27を有する規制部材25が固定されている。
【0036】
上記構成によれば、配筋に取り付けられた状態の天端出し補助具1の固定部材20に対して回転方向の力が加わった場合に、固定部材20が所定量回転した段階で規制部材25の縦支持部27が横筋Yの側部に当接して、それ以上の固定部材20の回転が規制される。よって、縦筋Tに対する固定部材20の回転方向の位置ずれを抑制することができる。
【0037】
(2)規制部材25は、接続部23から側方へ延びる横支持部26を備えている。
上記構成によれば、配筋に取り付けられた状態の天端出し補助具1の固定部材20に対して、下方へ移動させようとする力が加わった場合に、規制部材25の横支持部26が横筋Yの上部に当接して、固定部材20の下方向への移動が規制される。よって、縦筋Tに対する固定部材20の下方向への位置ずれを抑制することができる。
【0038】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態の天端出し補助具2を図4及び図5に基づいて説明する。なお、本例は、第1実施形態の規制部材25を変更した実施形態であって、他の基本的な構成は第1実施形態と同じである。よって、同一部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0039】
図4及び図5に示すように、接続部23の上端部分には側方へ向かって延びる棒状の横支持部26が延設されるとともに、横支持部26の先端部分には下方へ向かって延びる棒状の縦支持部27が延設されている。そして、縦支持部27には、その側面から棒材保持部22側へ向かって延びる四角板状の弾性片28が一体に形成されている。図5に示すX方向(水平面上において横筋Yの延びる方向と直交する方向)における弾性片28の先端と棒材保持部22との間の間隔L2は横筋Yの径よりも小さくなっている。本実施形態においては、横支持部26と縦支持部27と弾性片28とにより規制部材25が構成されている。
【0040】
天端出し補助具2を配筋に取り付ける際には、規制部材25の弾性片28を屈曲変形させつつ、棒材保持部22と弾性片28との間に横筋Yを圧入させた状態として、縦筋Tに対して縦筋保持部21の縦筋側開口21aを押し当てて、縦筋Tを縦筋保持部21内へ嵌入させる。そして、縦筋Tに対して固定部材20を下方にスライド移動させて、横筋Yの上部に規制部材25の横支持部26を当接させるとともに、棒材保持部22と弾性片28とにより横筋Yを挟持させた状態とする。このとき、屈曲変形された状態にある弾性片28は、復元圧力によって横筋Yを棒材保持部22側へ付勢する。そして、その付勢の反作用によって、固定部材20は棒材保持部22と横筋Yとが当接する側へ回転し、弾性片28及び棒材保持部22が共に横筋Yの側部に当接する一点にて回転方向における固定部材20の位置が固定される。
【0041】
天端出し補助具2を配筋に取り付けた状態においては、棒材保持部22と弾性片28とにより横筋Yが挟持された状態にあるため、固定部材20に対して回転方向の力が加わったとしても、横筋Yが棒材保持部22又は弾性片28に当接することにより固定部材20の回転が規制される。また、固定部材20を下方へ移動させようとする力が加わった場合には、規制部材25の横支持部26が横筋Yの上部に当接して、固定部材20の下方向への移動が規制される。つまり、本実施形態においては、規制部材25の弾性片28及び棒材保持部22が、固定部材20の回転方向の位置ずれを規制する回転規制手段として機能するとともに、規制部材25の横支持部26が固定部材20の下方向への位置ずれを規制する下方向規制手段として機能する。なお、棒材保持部22及び弾性片28が当接する「横筋Yの側部」、及び横支持部26が当接する「横筋Yの上部」の概念は、第1実施形態と同様である。
【0042】
第2実施形態の構成によれば、上記実施形態における(1)及び(2)の効果に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(3)固定部材20の縦支持部27の側面に弾性片28が設けられている。そして、弾性片28と棒材保持部22とにより横筋Yを挟持するように構成している。上記構成によれば、弾性片28と棒材保持部22とによって所定の圧力(弾性片28の復元圧力)をもって横筋Yを挟み込むことにより、固定部材20は横筋Yに対して回転方向に強固に固定された状態となる。よって、固定部材20の回転方向の位置ずれをより確実に規制することができる。また、横筋Yの径に応じて弾性片28の屈曲変形量が変化するため、横筋Yの径に拘わることなく同様の固定状態を形成することができる。
【0043】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態の天端出し補助具3を図6及び図7に基づいて説明する。なお、本例は、第2実施形態の規制部材25の弾性片28を変更した実施形態であって、他の基本的な構成は第2実施形態と同じである。よって、同一部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0044】
図6及び図7に示すように、規制部材25の弾性片28は、基端側(縦支持部27)側に位置する四角板状の本体部28aを備えている。図7(a)及び(b)に示すX方向(水平面上において横筋Yの延びる方向と直交する方向)における本体部28aの先端と棒材保持部22との間の間隔L3は横筋Yの径よりも小さくなっている。
【0045】
本体部28aの先端には、上下に所定の間隔をあけて位置する上部当接片28b及び下部当接片28cが、棒材保持部22へ向かって本体部28aを延長させるように形成されている。上部当接片28b及び下部当接片28cは共に略三角形状に形成されるとともに、その基端から先端へ向かって互いの間隔が徐々に広がるように形成されている。そして、上部当接片28b及び下部当接片28cの先端間の間隔は、横筋Yの径と同じ、又は横筋Yの径よりも大きくなるように設定されている。本実施形態においては、横支持部26と縦支持部27と弾性片28(本体部28a、上部当接片28b、下部当接片28c)とにより規制部材25が構成されている。
【0046】
天端出し補助具3を配筋に取り付ける際には、弾性片28の本体部28aを屈曲変形させつつ、本体部28aと棒材保持部22との間に横筋Yを圧入させた状態として、縦筋Tに対して縦筋保持部21の縦筋側開口21aを押し当てて、縦筋Tを縦筋保持部21内へ嵌入させる。そして、縦筋Tに対して固定部材20を下方にスライド移動させて、弾性片28における上部当接片28bと下部当接片28cとの間に横筋Yを位置させ、上部当接片28bと下部当接片28cとにより横筋Yを上下に挟持させた状態とする。同時に、弾性片28の本体部28aと棒材保持部22とにより横筋Yを挟持させた状態とする。
【0047】
このとき、屈曲変形された状態にある弾性片28の本体部28aは、復元圧力によって横筋Yを棒材保持部22側へ付勢する。そして、その付勢の反作用によって、固定部材20は棒材保持部22と横筋Yとが当接する側へ回転し、本体部28a及び棒材保持部22が共に横筋Yに当接する一点にて回転方向における固定部材20の位置が固定される。また、横筋Yを上下に挟持する弾性片28の上部当接片28b及び下部当接片28cによって、固定部材20の上下方向における位置が固定される。
【0048】
天端出し補助具3を配筋に取り付けた状態においては、棒材保持部22と弾性片28の本体部28aとにより横筋Yが挟持させた状態にあるため、固定部材20に対して回転方向の力が加わったとしても、横筋Yが棒材保持部22又は本体部28aに当接することにより固定部材20の回転が規制される。また、固定部材20を下方へ移動させようとする力が加わった場合には、弾性片28の上部当接片28bが横筋Yの上部に当接して、固定部材20の下方向への移動が規制される。さらに、固定部材20を上方へ移動させようとする力が加わった場合には、弾性片28の下部当接片28cが横筋Yの下部に当接して、固定部材20の上方向への移動が規制される。
【0049】
つまり、本実施形態においては、弾性片28の本体部28a及び棒材保持部22が、固定部材20の回転方向の位置ずれを規制する回転規制手段として機能する。そして、弾性片28の上部当接片28bが固定部材20の下方向への位置ずれを規制する下方向規制手段として機能するとともに、弾性片28の下部当接片28cが固定部材20の上方向への位置ずれを規制する上方向規制手段として機能する。
【0050】
なお、弾性片28の本体部28a及び棒材保持部22が当接する「横筋Yの側部」、並びに弾性片28の上部当接片28bが当接する「横筋Yの上部」の概念は、第1実施形態と同様である。
【0051】
また、弾性片28の下部当接片28cが当接する「横筋Yの下部」とは、横筋Yの外周面上において、最側部位を除く下側半分の範囲のすべてを意味する。具体的には、「横筋Yの下部」の範囲Cは、横筋Yの横断面を見たときに、最下部位と横筋Yの中心とを結ぶ線を基準として−90°<C<90°の範囲に該当する範囲である。この範囲内に弾性片28の下部当接片28cが当接すれば、下部当接片28cと横筋Yとの間に上下方向の引っ掛かりが生じて、固定部材20の上方向への移動を規制することができる。なお、固定部材20の上方向への移動を規制するという観点においては、「横筋Yの下部」の範囲Cは、横筋Yの横断面を見たときに、最下部位と横筋Yの中心とを結ぶ線を基準として−45°<C<45°の範囲に該当する範囲であることが好ましい。
【0052】
ここで、図6及び7に示す弾性片28の上部当接片28bは、横筋Yの外周面上における最上部位と最側部位との間に当接していることから、横筋Yの上部だけでなく、横筋Yの側部にも当接しているとみなすことができる。そのため、弾性片28の上部当接片28bは、固定部材20の回転方向の位置ずれを規制する回転規制手段としても機能することになる。同様に、弾性片28の下部当接片28cは、横筋Yの外周面上における最下部位と最側部位との間に当接していることから、横筋Yの下部だけでなく、横筋Yの側部にも当接しているとみなすこともできる。そのため、弾性片28の下部当接片28cは、固定部材20の回転方向の位置ずれを規制する回転規制手段としても機能することになる。
【0053】
第3実施形態の構成によれば、上記実施形態における(1)〜(3)の効果に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(4)弾性片28は、横筋Yの側部に当接する本体部28aと、本体部28aの先端に形成され、横筋Yの下側に配置される下部当接片28cを備えている。上記構成によれば、配筋に取り付けられた状態の天端出し補助具3の固定部材20に対して、上方へ移動させようとする力が加わった場合に、弾性片28の下部当接片28cが横筋Yの下部に当接して、固定部材20の上方向への移動が規制される。よって、縦筋Tに対する固定部材20の上方向への位置ずれを抑制することができる。
【0054】
(5)弾性片28は、本体部28aの先端に形成され、横筋Yの上側に配置される上部当接片28bを備えている。そして、弾性片28の上部当接片28bと下部当接片28cとにより横筋Yを上下に挟持するように構成している。上記構成によれば、弾性片28の上部当接片28bと下部当接片28cとによって横筋Yを上下に挟み込むことにより、固定部材20は横筋Yに対して上下方向に固定された状態となる。よって、固定部材20の上下方向の位置ずれをより確実に規制することができる。
【0055】
(6)上部当接片28b及び下部当接片28cを、その基端から先端へ向かって互いの間隔が徐々に広がるように形成している。上記構成によれば、横筋Yの径が両当接片の基端部間の間隔より大きく、且つ先端部間の間隔よりも小さい範囲であれば、横筋Yの径に拘わることなく両当接片の間隔と横筋Yの径とが一致した部分で両当接片により横筋Yを挟持することができる。なお、天端出し補助具3の取り付け時には、弾性片28の上部当接片28b及び下部当接片28cは本体部28aによって横筋Yに押し付けられた状態となるため、上部当接片28b及び下部当接片28cの間隔と横筋Yの径とが一致した部分で自然に位置決めされる。
【0056】
なお、上記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。また、次の変更例を互いに組み合わせ、その組み合わせの構成のように上記各実施形態を変更することも可能である。
【0057】
・ 上記各実施形態においては、規制部材25の横支持部26は接続部23から延設していたが、横支持部26の形成位置は特に限定されるものではない。たとえば、縦筋保持部21や棒材保持部22の外周面から横支持部26を延設するように構成してもよい。
【0058】
・ 上記各実施形態において、規制部材25の横支持部26及び縦支持部27の形状は特に限定されるものではない。たとえば、板状の横支持部26及び縦支持部27としてもよいし、横支持部26及び縦支持部27を円弧状に形成してもよい。また、横支持部26と縦支持部27との間に屈曲部等の明確な境界部分がなくてもよい。
【0059】
・ 上記各実施形態において、規制部材25の縦支持部27を横支持部26から上方に向かって延設してもよい。この場合には、天端出し補助具の取り付け時、横支持部26は横筋Yの下側に位置することになる。そのため、固定部材20の上方向への位置ずれを規制する上方向規制手段として横支持部26を機能させることもできる。
【0060】
・ 第1実施形態において、棒材保持部22と縦支持部27との間の間隔L1を横筋Yの径と略同じに設定し、棒材保持部22と縦支持部27とにより横筋Yを挟持するように構成してもよい。この場合には、棒材保持部22と縦支持部27とによって横筋Yを挟み込むことにより、固定部材20は横筋Yに対して回転方向に強固に固定された状態となる。
【0061】
さらに、棒材保持部22と縦支持部27との間の間隔L1が下方側へ向かって徐々に広がるように構成してもよい。この場合には、横筋Yの径に拘わることなく、棒材保持部22と縦支持部27との間の間隔L1と横筋Yの径とが一致したところで、上部当接片28b及び下部当接片28cにより横筋Yを挟持することができる。
【0062】
・ 第2実施形態において、弾性片28の形状は特に限定されるものではなく、棒材保持部22との間で横筋Yを挟持可能な形状であればよい。また、縦支持部27に対して複数の弾性片28が上下方向に並ぶように設けられていてもよい。
【0063】
・ 第3実施形態において、上部当接片28b及び下部当接片28cの形状は特に限定されるものではなく、それぞれ横筋Yの上側及び下側に位置することのできる形状であればよい。また、上部当接片28b及び下部当接片28cの間隔を横筋Yの径よりも大きくなるように設定し、配筋に取り付けた際に、横筋Yとの間に多少の隙間が存在するようにしてもよい。この場合には、固定部材20が上下方向に所定量移動した後に、横筋Yに対して上部当接片28b又は下部当接片28cが当接して、それ以上の上下方向の移動が規制される。
【0064】
・ 第3実施形態において、上部当接片28b又は下部当接片28cを省略してもよい。なお、上部当接片28bを省略した場合には横支持部26を下方向規制手段として機能するように構成し、下部当接片28cを省略した場合には横支持部26を上方向規制手段として機能するように構成することが好ましい。
【0065】
・ 上記各実施形態において、縦筋保持部21及び棒材保持部22の構成は特に限定されるものではない。たとえば、接続部23を省略して縦筋保持部21と棒材保持部22とを直接、接続するように構成してもよい。また、縦筋側開口21aと棒材側開口22aとの位置関係を変更してもよい。また、案内部21b、棒材側開口22a、係合部24は適宜省略することもできる。
【0066】
・ 上記各実施形態において、棒材10に設けられる第1レベル指示部13及び第2レベル指示部12は、コンクリート及びレベル材を打設する際の目印となり得るものであればどのような構成であってもよい。たとえば、棒材10の上端から下側へ所定の範囲にわたって着色を行い、着色部分の下端を第1レベル指示部13、着色部分の上端(棒材10の上端)を第2レベル指示部12としてもよい。
【0067】
・ 配筋に対する天端出し補助具の取り付けに関し、上記各実施形態では棒材10と固定部材20とを組み合わせた状態で固定部材20を配筋に固定していたが、先に固定部材20のみを配筋に固定した後、固定部材20に棒材10を取り付けてもよい。
【0068】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ) 前記弾性片は、前記横筋の側部に当接する本体部と、該本体部の先端に形成され、前記横筋の下側に配置される下部当接片と、前記本体部の先端に形成され、前記横筋の上側に配置される上部当接片とを備える前記天端出し補助具。
【0069】
(ロ) 前記規制部材は、前記横筋の側部に当接して、前記縦筋に対する前記固定部材の回転を規制する回転規制手段と、前記横筋の上部に当接して、前記縦筋に対する前記固定部材の下方向への移動を規制する下方向規制手段と、前記横筋の下部に当接して、前記縦筋に対する前記固定部材の上方向への移動を規制する上方向規制手段とを備えることを特徴とする前記天端出し補助具。
【符号の説明】
【0070】
T…縦筋、Y…横筋、1,2,3…天端出し補助具、10…棒材、12…第2レベル指示部、13…第1レベル指示部、20…固定部材、21…縦筋保持部、22…棒材保持部、25…規制部材、26…横支持部、27…縦支持部、28…弾性片、28a…本体部、28b…上部当接片、28c…下部当接片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配筋に取り付けてコンクリート打設レベル及びレベル材打設レベルを設定する天端出し補助具であって、
コンクリート打設レベルを示す第1レベル指示部、及びレベル材打設レベルを示す第2レベル指示部を有する棒材と、該棒材を縦筋に対して上下方向に相対移動可能に取り付ける固定部材とを備え、
前記固定部材には、前記固定部材を取り付けた縦筋に組み合わせされる横筋の側部に当接して、前記縦筋に対する前記固定部材の回転を規制する規制部材が固定されていることを特徴とする天端出し補助具。
【請求項2】
前記固定部材は、前記棒材を上下方向に相対移動可能に保持する棒材保持部と、前記縦筋を保持する縦筋保持部とを備え、
前記規制部材は、前記固定部材から側方へ延設される横支持部と、該横支持部から下方へ延設される縦支持部と、該縦支持部に形成される弾性片とを備え、
前記弾性片と前記棒材保持部とにより前記横筋を挟持するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の天端出し補助具。
【請求項3】
前記弾性片は、前記横筋の側部に当接する本体部を備え、
前記本体部の先端には、前記横筋の下部に当接して、前記縦筋に対する前記固定部材の上方向へ移動を規制する下部当接片が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の天端出し補助具。
【請求項4】
前記本体部の先端には、前記横筋の上部に当接して、前記縦筋に対する前記固定部材の下方向へ移動を規制する上部当接片が形成され、前記上部当接片と前記下部当接片とにより前記横筋を上下に挟持するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の天端出し補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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