説明

太陽エネルギーを利用した発電設備及びその運転方法

【課題】太陽エネルギーを利用して安価で安定した発電を行う。
【解決手段】集光装置で太陽光線が集光される太陽光レシーバー1を有する集光型太陽光発電装置Aと、熱媒体を循環させる循環流路5に、集光装置で集光された太陽光線で熱媒体を加熱する太陽熱レシーバー2と、熱媒体の通過により蓄熱又は放熱が行なわれる蓄熱装置3と、熱媒体と水との熱交換で蒸気を生成させる熱交換器4が配置されるとともに、熱交換器4で生成した蒸気を用いて発電を行う蒸気タービン発電機6を備えた集光型太陽熱発電装置Bを有し、集光型太陽熱発電装置Bの循環流路5は、太陽熱レシーバー2と蓄熱装置3間で熱媒体を循環させる循環系xと、蓄熱装置3と熱交換器4間で熱媒体を循環させる循環系yを切替可能に形成できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広くは太陽エネルギーを利用した発電技術に関し、詳細には、集光型太陽光発電と集光型太陽熱発電とを組み合わせることで、安価で安定した発電を行うことができる発電設備とその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集光された太陽光線を利用して発電を行う技術として、以下に示すような集光型太陽光発電と集光型太陽熱発電が知られている。
(1)集光型太陽光発電技術
従来の太陽光発電は、太陽電池パネルで直接太陽光を受け、10〜13%程度の発電効率で発電を行ってきた。これに対して、集光型太陽光発電は、ヘリオスタットなどの光学系で集光した太陽光線を多接合型等の高効率太陽電池セルに照射し、より高効率の発電を行うものである。
【0003】
出願人は2011年8月に新たなタワー集光型太陽光発電システムを発表した(JFEエンジニアリング/ニュースリリース2011年/インターネット〈URL:http://www.jfe-eng.co.jp/release/news11/news_e11021.html〉)。この発電システムでは、二次集光機能を有する多接合型太陽電池セルを備えた太陽光レシーバー(太陽電池モジュール)がソーラータワー上部に設置され、太陽光線がヘリオスタットにより太陽光レシーバーに集光され、多接合型太陽電池セルで高効率発電がなされる。この発電システムによる発電効率は最大26%であり、従来の太陽光発電の2倍に達する。太陽電池モジュールには、冷却機構が付設されており、発電中は水などの冷媒を循環して多接合型太陽電池セルを一定温度以下に冷却する。
この発電システムでは、太陽光が得られる昼間の時間帯のみ発電が可能であるが、このシステムに蓄電池を組み合わせれば、昼間は太陽電池セルで発電と蓄電を行い、夜間は蓄電池から電力を供給することで、昼夜連続して電力供給が可能である。
【0004】
(2)集光型太陽熱発電技術
従来の太陽熱発電システムとしては、例えば特許文献1に示すようなものが知られている。この太陽熱発電システムでは、図5に示すように、太陽光をヘリオスタット群30で反射して、集光タワー32の上部に設置されたレシーバー31に集光し、このレシーバー31に循環する流体33を加熱気化して蒸気とする。この蒸気をタービン34に送り、発電機を駆動して電力を得るものである。タービン34を出た蒸気は、凝縮器35で冷却されて凝縮し、凝縮した流体は循環ポンプにより再びレシーバー31に送られる。このシステムでは、太陽光が得られる昼間の時間帯のみ発電が可能である。
【0005】
また、他の太陽熱発電システムとして、非特許文献1に示されるようなものが知られている。この太陽熱発電システムでは、図6に示すように、昼間は太陽光線をパラボラトラフ21で集光し、溶融塩を循環・加熱して熱回収する。加熱された溶融塩の一部は、2基の蓄熱タンク22に蓄えられる。また、残りの溶融塩は熱交換器23で水と熱交換し、蒸気を発生させて蒸気タービン及び発電機24を駆動して発電を行う。蒸気タービンを通過した蒸気は、凝縮機25で復水し、再び熱交換器23に循環する。一方、夜は、蓄熱タンク22に蓄えた高温の溶融塩を熱交換器23に循環させて蒸気を発生させ、上記と同様に発電を行う。このシステムでは、太陽光が得られる昼間の時間帯のみならず、蓄熱した溶融塩の顕熱を利用して夜間の発電も可能である。
図5や図6に示す太陽熱発電システムでは、20%程度の発電効率が実現できるとされている。
また、同一の電力量(単位:kWh)を、蓄電池から供給する場合と、蓄熱装置を有するタワー型太陽熱発電装置から供給する場合を比較すると、後者の方が安価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/105689号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「The parabolic trough power plants Andasol 1 to 3」、Solar Millennium AG、2008年、p.12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電力需要は昼夜を問わず存在するため、太陽光エネルギーを利用する発電システムでは、太陽光が得られない時間帯に、いかに電力を供給するかが課題である。
さきに挙げたような集光型太陽光発電システムでは、従来の太陽光発電に比べ高い発電効率が得られる利点があり、蓄電池と組み合わせれば、昼間は太陽電池セルで発電と蓄電を行い、夜間は蓄電池から電力を供給することで、昼夜連続して電力供給が可能であるが、大容量の蓄電池は極めて高価であるため、安価な電力供給ができない。
【0009】
一方、集光型太陽熱発電は、集光型太陽光発電に較べて昼間の時間帯の発電効率が低いという問題がある。また、図6に示すような集光型太陽熱発電システムでは、昼間の時間帯に集熱するエネルギーが発電と蓄熱に分散されるため、集光装置の容量を2倍以上に大きくする必要があるなど、設備コストが増大するという問題がある。
したがって本発明の目的は、太陽エネルギーを利用して安価で安定した発電を行うことができる発電設備とその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]複数の鏡体を備えた集光装置により集光された太陽光線を受光する受光面に太陽電池セルが配置された太陽光レシーバー(1)を有する集光型太陽光発電装置(A)と、熱媒体を循環させる循環流路(5)に、複数の鏡体を備えた集光装置により集光された太陽光線で熱媒体を加熱する太陽熱レシーバー(2)と、熱媒体の通過により蓄熱又は放熱が行なわれる蓄熱装置(3)と、熱媒体と水との熱交換で蒸気を生成させる熱交換器(4)が配置されるとともに、熱交換器(4)で生成した蒸気を用いて発電を行う蒸気タービン発電機(6)を備えた集光型太陽熱発電装置(B)を有し、集光型太陽熱発電装置(B)の循環流路(5)は、太陽熱レシーバー(2)と蓄熱装置(3)間で熱媒体を循環させる循環系(x)と、蓄熱装置(3)と熱交換器(4)間で熱媒体を循環させる循環系(y)を切替可能に形成できるようにしたことを特徴とする太陽エネルギーを利用した発電設備。
[2]上記[1]の発電設備において、太陽光レシーバー(1)に設けられる太陽電池セルは、多接合型太陽電池セルであることを特徴とする太陽エネルギーを利用した発電設備。
【0011】
[3]上記[1]又は[2]の発電設備において、太陽光レシーバー(1)に設けられる太陽電池セルの背面に水冷式の冷却部(12)を有することを特徴とする太陽エネルギーを利用した発電設備。
[4]上記[3]の発電設備において、集光型太陽熱発電装置(B)は、熱交換器(4)と蒸気タービン発電機(6)との間で蒸気及び水を循環させる循環流路(7)を備え、該循環流路(7)の途中には蒸気タービン発電機(6)を出た蒸気を凝縮させる凝縮器(8)と、該凝縮器(8)で生じた水を貯留し、これを熱交換器(4)に供給する水タンク(9)が設けられ、集光型太陽光発電装置(A)は、太陽光レシーバー(1)の冷却部(12)に冷却水を供給するための冷却水流路(10)を備え、該冷却水流路(10)の各端部が、水タンク(9)−熱交換器(4)間の循環流路(7)の流路部分と、凝縮器(8)−水タンク(9)間の循環流路(7)の流路部分に、それぞれ接続され、循環流路(7)とこれに接続された冷却水流路(10)は、熱交換器(4)と蒸気タービン発電機(6)と水タンク(9)間で蒸気及び水を循環させる循環系(z)と、冷却部(12)と水タンク(9)間で水を循環させる循環系(w)を切替可能に形成できるようにしたことを特徴とする太陽エネルギーを利用した発電設備。
【0012】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの発電設備において、循環流路(5)のうち、蓄熱装置(3)の一方の熱媒体出入口に接続される流路(50)は2つの分岐流路(500),(501)を有し、このうち分岐流路(500)が太陽熱レシーバー(2)の一方の熱媒体出入口に接続され、分岐流路(501)が熱交換器(4)の一方の熱媒体出入口に接続され、蓄熱装置(3)の他方の熱媒体出入口に接続される流路(51)は2つの分岐流路(510),(511)を有し、このうち分岐流路(510)が太陽熱レシーバー(2)の他方の熱媒体出入口に接続され、分岐流路(511)が熱交換器(4)の他方の熱媒体出入口に接続され、各分岐流路(500),(501),(510),(511)には、それぞれ開閉弁(13)が設けられ、これら開閉弁(13)の開閉操作により、分岐流路(500)と分岐流路(510)を経由して太陽熱レシーバー(2)と蓄熱装置(3)間で熱媒体を循環させる循環系(x)と、分岐流路(501)と分岐流路(511)を経由して蓄熱装置(3)と熱交換器(4)間で熱媒体を循環させる循環系(y)が、切替可能に形成されるようにしたこと特徴とする太陽エネルギーを利用した発電設備。
【0013】
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの発電設備において、太陽光レシーバー(1)と太陽熱レシーバー(2)を1つのソーラータワーに設置することを特徴とする太陽エネルギーを利用した発電設備。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの発電設備の運転方法であって、太陽光線の強度が所定レベル以上の時間帯には、集光型太陽光発電装置(A)で発電を行なうとともに、集光型太陽熱発電装置(B)において、循環系(x)で熱媒体を循環させることにより、熱媒体による蓄熱装置(3)への蓄熱を行い、太陽光線の強度が所定レベル未満の時間帯には、集光型太陽熱発電装置(B)において、循環系(y)で熱媒体を循環させることにより、蓄熱装置(3)に蓄えられた熱を熱媒体に放熱するとともに、熱交換器(4)において熱媒体と水との熱交換により蒸気を生成させ、その蒸気で蒸気タービン発電機(6)を駆動させ発電を行なうことを特徴とする太陽エネルギーを利用した発電装置の運転方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、太陽光線の強度が所定レベル以上の時間帯(主に太陽光が得られる昼間の時間帯)では、発電効率の高い集光型太陽光発電を行い、太陽光線の強度が所定レベル未満の時間帯(主に太陽光が得られなくなる夕方乃至夜間の時間帯)では、蓄電池よりも発電電力単価が安い集光型太陽熱発電システムの蓄熱装置を利用した発電を行う、という異なる発電方式の組み合わせで発電を行うため、長時間、安価で安定した発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の発電設備の一実施形態を示す全体フロー図
【図2】図1の発電設備の集光型太陽光発電装置が備える太陽光発電モジュールの一実施形態を示す斜視図
【図3】図1の発電設備の運転方法の実施状況を示す説明図
【図4】図1の発電設備の運転方法の実施状況を示す説明図
【図5】従来の集光型太陽熱発電システムの一例を示す説明図
【図6】従来の集光型太陽熱発電システムの他の例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の発電設備の一実施形態を示す全体フロー図である。
図において、Sは複数の鏡体を備えた集光装置、Tは後述する太陽光レシーバー1と太陽熱レシーバー2が設置されるソーラータワーである。
前記集光装置Sは、複数の鏡体に太陽光線を反射させてレシーバー(後述する太陽光レシーバー1と太陽熱レシーバー2)に集光させるものであり、本実施形態では、鏡体と太陽光線をレシーバー方向に導くための鏡角度制御装置とを組み合わせたヘリオスタットで構成されている。通常、このヘリオスタットは数百台〜数万台設置され、太陽の位置が変化しても、常にレシーバーに太陽光線が集まるように鏡角度が制御される。
個々の集光装置S(ヘリオスタットなど)は後述する太陽光レシーバー1、太陽熱レシーバー2のいずれかに向けて太陽光線を反射するように制御される。
前記ソーラータワーTは、通常は鉄骨などで構成される。その高さは任意であるが、通常50m〜100m程度であり、レシーバー(太陽光レシーバー1、太陽熱レシーバー2)が受ける光の量により高さが適切に設計される。ソーラータワーTは複数本設置してもよい。
【0017】
本発明の発電設備は、集光型太陽光発電装置Aと集光型太陽熱発電装置Bを有する。
このうち、集光型太陽光発電装置Aは、前記集光装置Sにより集光された太陽光線を受光する太陽光レシーバー1を有する。この太陽光レシーバー1は、その受光面に太陽電池セルが配置され、ソーラータワーTの上部に設置されている。太陽光レシーバー1は、集光装置Sで集光した太陽光線を受光面で受け、太陽電池セルで発電を行う。1基の太陽光レシーバー1の受光面の面積は任意であり、発電容量により異なるが、通常、数十平方メートル〜百平方メートル程度である。
【0018】
前記太陽電池セルとしては、任意の方式のものを用いることができるが、発電効率を高めるためには、多接合型太陽電池セルが好ましい。この多接合型太陽電池セルとは、利用波長の異なる太陽電池を複数積み重ねたものであり、太陽光エネルギーを広い波長範囲で利用でき、高い変換効率が得られるという特徴がある。
また、太陽レシーバー1の太陽電池セルは、高温になるため強制冷却することが好ましく、このため太陽電池セルの背面に水冷式の冷却部12を備えることが好ましい。後述するように、この冷却部12には冷却水流路10を通じて冷却水が供給され、太陽電池セルが冷却(抜熱)される。
【0019】
図2は、太陽光レシーバー1の受光面に設けられる太陽光発電モジュール11の一実施形態を示している。
この太陽光発電モジュール11は、複数の太陽電池セル210(例えば、多接合型太陽電池セル)が集合した太陽電池セル集合体21と、その前面に設けられるプリズム式の集光体22(ガラスなどの透明材料からなる)と、太陽電池セル集合体21の背面に設けられる冷却部12とからなる。この太陽光発電モジュール11は、集光体22による二次集光機能を有しており、集光装置Sで集光体22に集光(一次集光)された太陽光線を、集光体22を通じて太陽電池セル集合体21を構成する個々の太陽電池セル210に対して高倍率で集光することができる。
前記冷却部12の内部には複数の冷却水路(図示せず)が形成され、この冷却水路に後述する冷却水流路10が接続され、冷却水が通過できるようになっている。
【0020】
前記集光型太陽熱発電装置Bは、熱媒体を循環させる循環流路5に、前記集光装置Sにより集光された太陽光線で熱媒体を加熱する太陽熱レシーバー2と、熱媒体の通過により蓄熱又は放熱が行なわれる蓄熱装置3と、熱媒体と水との熱交換で蒸気を生成させる熱交換器4が配置されるとともに、熱交換器4で生成した蒸気を用いて発電を行う蒸気タービン発電機6を備えている。前記循環流路5は保温された配管で構成される。
ここで、熱媒体(流体)の種類は任意であり、水や溶融塩などの液体でもよいし、空気などの気体でもよい。
【0021】
前記太陽熱レシーバー2は、太陽光レシーバー1とともにソーラータワーTの上部に設置される。太陽熱レシーバー2の受光面には、例えば、ボイラーチューブのような伝熱管が密に並べられ、集光された太陽光線を受けて加熱される。伝熱管内は熱媒体が流れており、伝熱管からの伝熱により熱媒体が加熱(熱媒体の種類にもよるが、通常約650℃程度まで加熱)される。1基の太陽熱レシーバー2の受光面の面積は任意であり、発電容量により異なるが、通常、数十平方メートル〜百平方メートル程度である。
【0022】
前記蓄熱装置3は、通過する熱媒体の温度に応じて、熱媒体の熱が蓄熱され又は装置に蓄えられた熱が熱媒体に放熱されるものであり、例えば、内部に熱媒体(水や溶融塩などの液体、空気などの気体)が通過する多数の穴が開いた蓄熱体が積層された耐圧容器(例えば、内壁断熱材を鋼製の外殻で覆った耐圧容器)などで構成される。このような蓄熱装置の場合には、装置内の蓄熱体を高温の熱媒体が通過することにより、熱媒体の熱が蓄熱体に蓄えられ(蓄熱)、一方、蓄熱された高温の蓄熱体を低温の熱媒体が通過することにより、蓄熱体の熱で熱媒体が加熱される(蓄熱体への放熱)。本実施形態では、蓄熱装置3は1基設けられているが、2基以上を直列に設けてもよい。各蓄熱装置3の大きさは任意であるが、通常、直径が数メートル〜十メートル程度、高さが数十メートル〜百メートル程度である。熱媒体の種類にもよるが、蓄熱装置3の入側における熱媒体温度は、通常650℃程度である。
【0023】
前記熱交換器4は、器内を通過する熱媒体と水を熱交換させ、水から蒸気を生成させるものであり、この熱交換器4には、下記する循環流路7を通じて必要量の水が供給される。熱媒体の種類にもよるが、通常、高温の熱媒体は650〜550℃で熱交換器4に入り、約150℃で熱交換器4を出る。
前記蒸気タービン発電機6と熱交換器4との間では、循環流路7により水及び蒸気を循環する。この循環流路7には、蒸気タービン発電機6を出た蒸気を凝縮させる空冷式又は水冷式の凝縮器8と、この凝縮器8で生じた水を貯留し、これを熱交換器4に供給する水タンク9と、循環用ポンプ14が、水及び蒸気の流れ方向においてこの順に設けられている。前記循環用ポンプ14は、図示しない制御装置により、熱交換器4に対する送水量を調節できるようになっている。
【0024】
集光型太陽熱発電装置Bの前記循環流路5は、太陽熱レシーバー2と蓄熱装置3間で熱媒体を循環させる循環系xと、蓄熱装置3と熱交換器4間で熱媒体を循環させる循環系yを、切替可能(選択的に切替可能)に形成できるようになっている。これを可能とするために、循環流路5は複数の開閉弁と循環ポンプ(又はファン)を有する配管機構を有している。
すなわち、循環流路5のうち、蓄熱装置3の一方の熱媒体出入口(本実施形態では熱媒体入口)に接続される流路50は2つの分岐流路500,501を有し、このうち分岐流路500が太陽熱レシーバー2の一方の熱媒体出入口(本実施形態では熱媒体出口)に接続され、分岐流路501が熱交換器4の一方の熱媒体出入口(本実施形態では熱媒体入口)に接続されている。
【0025】
また、蓄熱装置3の他方の熱媒体出入口(本実施形態では熱媒体出口)に接続される流路51は2つの分岐流路510,511を有し、このうち分岐流路510が太陽熱レシーバー2の他方の熱媒体出入口(本実施形態では熱媒体入口)に接続され、分岐流路511が熱交換器4の他方の熱媒体出入口(本実施形態では熱媒体出口)に接続されている。各分岐流路500,501,510,511には、それぞれ開閉弁13a,13b,13c,13dが設けられている。そして、これら開閉弁13a〜13dの開閉操作により、分岐流路500と分岐流路510を経由して太陽熱レシーバー2と蓄熱装置3間で熱媒体を循環させる循環系xと、分岐流路501と分岐流路511を経由して蓄熱装置3と熱交換器4間で熱媒体を循環させる循環系yを、切替可能(選択的に切替可能)に形成できるようになっている。
【0026】
循環系xと循環系yには、それぞれ熱媒体を循環させるための循環用ポンプ20a,20bが設けられている。循環用ポンプ20a,20bを設置する位置は任意であるが、本実施形態では、循環系xを構成する分岐流路510(蓄熱装置3の熱媒体出側の流路)に循環用ポンプ20aが、循環系yを構成する分岐流路511(熱交換器4の熱媒体出側の流路)に循環用ポンプ20bが、それぞれ設けられている。なお、熱媒体が気体の場合には、循環用ポンプ20a,20bに代えて循環用ファンが設けられる。
【0027】
集光型太陽光発電装置Aは、太陽光レシーバー1の冷却部12に冷却水を供給するための冷却水流路10を備え、この冷却水流路10の各端部(すなわち、太陽光レシーバー1の冷却水入側の流路100と冷却水出側の流路101の各端部)が、水タンク9−熱交換器4間の循環流路7の流路部分と、凝縮器8−水タンク9間の循環流路7の流路部分に、それぞれ接続されている。そして、循環流路7とこれに接続された冷却水流路10は、熱交換器4と蒸気タービン発電機6と水タンク9間で蒸気及び水を循環させる循環系zと、冷却部12と水タンク9間で水(冷却水)を循環させる循環系wを、切替可能(選択的に切替可能)に形成できるようになっている。これを可能とするために、水タンク9と冷却水流路10(流路100)の接続部との間の循環流路7に循環用ポンプ14が設けられるとともに、冷却水流路10(流路100)の接続部と熱交換器4との間の循環流路7に開閉弁15aが、凝縮器8と冷却水流路10(流路101)の接続部との間の循環流路7に開閉弁15bが、冷却水流路10を構成する流路100,101に開閉弁15c,15dが、それぞれ設けられている。そして、これら開閉弁15a〜15dの開閉操作により、上記循環系zと循環系wを切替可能(選択的に切替可能)に形成できるようになっている。
その他図面において、16は太陽光の日射強度を測定できる日射計、17は集光型太陽光発電装置Aの電力出力用の配線、18は集光型太陽熱発電装置Bの電力出力用の配線であり、電力出力は図示されない制御機器を介して外部電力系統19に繋がる。
【0028】
次に、本発明の発電設備の運転方法を、図1の実施形態を例に、図3及び図4に基づき説明する。なお、図3及び図4に示す開閉弁13a〜13d,15a〜15dは、白抜きのものが開状態、黒く塗りつぶしたものが閉状態であることを示す。
太陽光線の強度が所定レベル以上の時間帯(主に太陽光が得られる昼間の時間帯)には、図3に示すように、集光型太陽光発電装置Aで発電を行なうとともに、集光型太陽熱発電装置Bにおいて、循環系xで熱媒体を循環させることにより、熱媒体による蓄熱装置3への蓄熱を行う。このため循環流路5の開閉弁13a,13cを開き、開閉弁13b,13dを閉じて、循環流路5内に循環系xを形成する。また、循環系wで冷却水を循環させ、太陽光レシーバー1(太陽電池セル)を冷却部12により冷却する。このため冷却水流路10の開閉弁15c,15dを開き、循環流路7の開閉弁15a,15bを閉じて、循環流路7及び冷却水流路10内に循環系wを形成する。一方、この時間帯では、集光型太陽熱発電装置Bの熱交換器4における蒸気の生成と蒸気タービン発電機6による発電は行わない。
【0029】
例えば、集光装置S(ヘリオスタットなど)の約半数を太陽光レシーバー1に向けて集光し、残りの約半数を太陽熱レシーバー2に向けて集光する。このときレシーバー受光面での集光倍率(ヘリオスタット鏡面積の合計÷レシーバー受光面積)は500〜1000倍程度である。
集光型太陽光発電装置Aでは、循環系wにおいて、循環用ポンプ14により太陽光レシーバー1(太陽光発電モジュール11)の冷却部12と水タンク9間で冷却水が循環し、太陽光レシーバー1の太陽電池セルが冷却される。太陽光レシーバー1で発電された電力は、配線18を経由して外部電力系統19に供給される。一方、集光型太陽熱発電装置Bでは、循環系xにおいて、循環用ポンプ20aにより熱媒体が太陽熱レシーバー2と蓄熱装置3間で循環し、熱媒体は太陽熱レシーバー2において太陽熱で加熱される。太陽熱レシーバー2で加熱された熱媒体は、蓄熱装置3を通過する過程で、例えば装置内部の蓄熱体を加熱することで、蓄熱装置3に熱を蓄える。
【0030】
次に、太陽光線の強度が所定レベル未満の時間帯(主に太陽光が得られなくなる夕方乃至夜間の時間帯)には、集光型太陽光発電装置Aによる発電ができなくなるので、図4に示すように、集光型太陽熱発電装置Bにおいて、循環系yで熱媒体を循環させることにより、蓄熱装置3に蓄えられた熱を熱媒体に放熱するとともに、熱交換器4において熱媒体と水との熱交換により蒸気を生成させ、その蒸気で蒸気タービン発電機6を駆動させ発電を行なう。このため循環流路5の開閉弁13b,13dを開き、開閉弁13a,13cを閉じて、循環流路5内に循環系yを形成する。すなわち、循環流路5において形成される熱媒体の循環系を、図3で形成されていた循環系xから循環系yに切り替える。また、熱交換器4と蒸気タービン発電機6間で水及び蒸気を循環させるため、循環流路7の開閉弁15a,15bを開き、冷却水流路10の開閉弁15c,15dを閉じて循環系zを形成する。すなわち、図3で形成されていた循環系wから循環系zに切り替える。
【0031】
集光型太陽熱発電装置Bでは、循環系yにおいて、循環用ポンプ20bにより熱媒体が蓄熱装置3と熱交換器4間で循環し、循環系zにおいて、熱交換器4と蒸気タービン発電機6間で水及び蒸気を循環する。
循環系yでは、熱媒体が蓄熱装置3を通過する際に蓄熱装置3に蓄えられた熱により熱媒体が加熱され、この加熱された熱媒体が熱交換器4において水と熱交換して蒸気を生成させる。熱交換器4で生成した蒸気は、蒸気タービン発電機6に送られ発電が行われる。蒸気タービン発電機6を出た蒸気は、凝縮器8で液化し、水タンク9に戻される。蒸気タービン発電機6で発電された電力は、配線18を経由して外部電力系統19に供給される。
【0032】
なお、日照計16により太陽光の照射強度が測定され、この測定結果に基づいて、図示しない制御装置により、図3の操業形態と図4の操業形態の切り替えが行われる。
以上のように、本発明では、集光型太陽光発電装置Aと集光型太陽熱発電装置Bを組み合わせた設備構成を用い、これらを時間帯によって使い分けことにより、太陽エネルギーを利用して、高い発電効率で且つ安価に安定した発電を行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
A 集光型太陽光発電装置
B 集光型太陽熱発電装置
1 太陽光レシーバー
2 太陽熱レシーバー
3 蓄熱装置
4 熱交換器
5 循環流路
6 蒸気タービン発電機
7 循環流路
8 凝縮器
9 水タンク
10 冷却水流路
11 太陽光発電モジュール
12 冷却部
13a,13b,13c,13d 開閉弁
14 循環用ポンプ
15a,15b,15c,15d 開閉弁
16 日射計
17,18 配線
19 外部電力系統
20a,20b, 循環用ポンプ
21 太陽電池セル集合体
22 集光体
50,51 流路
100,101 流路
210 太陽電池セル
500,501,510,511 分岐流路
x,y 循環系
z,w 循環系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鏡体を備えた集光装置により集光された太陽光線を受光する受光面に太陽電池セルが配置された太陽光レシーバー(1)を有する集光型太陽光発電装置(A)と、
熱媒体を循環させる循環流路(5)に、複数の鏡体を備えた集光装置により集光された太陽光線で熱媒体を加熱する太陽熱レシーバー(2)と、熱媒体の通過により蓄熱又は放熱が行なわれる蓄熱装置(3)と、熱媒体と水との熱交換で蒸気を生成させる熱交換器(4)が配置されるとともに、熱交換器(4)で生成した蒸気を用いて発電を行う蒸気タービン発電機(6)を備えた集光型太陽熱発電装置(B)を有し、
集光型太陽熱発電装置(B)の循環流路(5)は、太陽熱レシーバー(2)と蓄熱装置(3)間で熱媒体を循環させる循環系(x)と、蓄熱装置(3)と熱交換器(4)間で熱媒体を循環させる循環系(y)を切替可能に形成できるようにしたことを特徴とする太陽エネルギーを利用した発電設備。
【請求項2】
太陽光レシーバー(1)に設けられる太陽電池セルは、多接合型太陽電池セルであることを特徴とする請求項1に記載の太陽エネルギーを利用した発電設備。
【請求項3】
太陽光レシーバー(1)に設けられる太陽電池セルの背面に水冷式の冷却部(12)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽エネルギーを利用した発電設備。
【請求項4】
集光型太陽熱発電装置(B)は、熱交換器(4)と蒸気タービン発電機(6)との間で蒸気及び水を循環させる循環流路(7)を備え、該循環流路(7)の途中には蒸気タービン発電機(6)を出た蒸気を凝縮させる凝縮器(8)と、該凝縮器(8)で生じた水を貯留し、これを熱交換器(4)に供給する水タンク(9)が設けられ、
集光型太陽光発電装置(A)は、太陽光レシーバー(1)の冷却部(12)に冷却水を供給するための冷却水流路(10)を備え、該冷却水流路(10)の各端部が、水タンク(9)−熱交換器(4)間の循環流路(7)の流路部分と、凝縮器(8)−水タンク(9)間の循環流路(7)の流路部分に、それぞれ接続され、
循環流路(7)とこれに接続された冷却水流路(10)は、熱交換器(4)と蒸気タービン発電機(6)と水タンク(9)間で蒸気及び水を循環させる循環系(z)と、冷却部(12)と水タンク(9)間で水を循環させる循環系(w)を切替可能に形成できるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の太陽エネルギーを利用した発電設備。
【請求項5】
循環流路(5)のうち、蓄熱装置(3)の一方の熱媒体出入口に接続される流路(50)は2つの分岐流路(500),(501)を有し、このうち分岐流路(500)が太陽熱レシーバー(2)の一方の熱媒体出入口に接続され、分岐流路(501)が熱交換器(4)の一方の熱媒体出入口に接続され、
蓄熱装置(3)の他方の熱媒体出入口に接続される流路(51)は2つの分岐流路(510),(511)を有し、このうち分岐流路(510)が太陽熱レシーバー(2)の他方の熱媒体出入口に接続され、分岐流路(511)が熱交換器(4)の他方の熱媒体出入口に接続され、
各分岐流路(500),(501),(510),(511)には、それぞれ開閉弁(13)が設けられ、これら開閉弁(13)の開閉操作により、分岐流路(500)と分岐流路(510)を経由して太陽熱レシーバー(2)と蓄熱装置(3)間で熱媒体を循環させる循環系(x)と、分岐流路(501)と分岐流路(511)を経由して蓄熱装置(3)と熱交換器(4)間で熱媒体を循環させる循環系(y)が、切替可能に形成されるようにしたこと特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽エネルギーを利用した発電設備。
【請求項6】
太陽光レシーバー(1)と太陽熱レシーバー(2)を1つのソーラータワーに設置することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽エネルギーを利用した発電設備。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の発電設備の運転方法であって、
太陽光線の強度が所定レベル以上の時間帯には、集光型太陽光発電装置(A)で発電を行なうとともに、集光型太陽熱発電装置(B)において、循環系(x)で熱媒体を循環させることにより、熱媒体による蓄熱装置(3)への蓄熱を行い、
太陽光線の強度が所定レベル未満の時間帯には、集光型太陽熱発電装置(B)において、循環系(y)で熱媒体を循環させることにより、蓄熱装置(3)に蓄えられた熱を熱媒体に放熱するとともに、熱交換器(4)において熱媒体と水との熱交換により蒸気を生成させ、その蒸気で蒸気タービン発電機(6)を駆動させ発電を行なうことを特徴とする太陽エネルギーを利用した発電装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105927(P2013−105927A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249350(P2011−249350)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】