説明

太陽エネルギ利用システム

【課題】太陽エネルギの利用効率を従来よりも向上させた太陽エネルギ利用システムを提供する。
【解決手段】太陽電池1を備え、太陽電池1により電力を得る太陽エネルギ利用システムにおいて、太陽電池1を冷却する第1熱交換器2と、第1熱交換器2に接続されたヒートポンプ3と、第1熱交換器2とヒートポンプ3との間で熱媒を循環させる循環ポンプ4と、循環ポンプ4による流量を変更する流量制御部5を備えている、又は、太陽電池1を備え、太陽電池1により電力を得る太陽エネルギ利用システムにおいて、太陽電池1を冷却する第1熱交換器2と、第1熱交換器2に接続された第2熱交換器3eと、第1熱交換器2と第2熱交換器3eとの間で熱媒を循環させる循環ポンプ4と、循環ポンプ4による流量を変更する流量制御部5を備えている、ことを特徴とする、太陽エネルギ利用システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽エネルギ利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料に依存しない自然エネルギの利用が注目されている。例えば、水の加熱に際し、太陽光を利用する技術がある。このような技術として、例えば特許文献1には、太陽電池に接続された水集熱器及び液体熱媒導管により、太陽光を利用する技術が開示されている。また、特許文献2には、ヒートポンプの直接膨張型熱交換器の表面に太陽電池に装着し、太陽光を暖房給湯加熱用エネルギとして利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−66065号公報
【特許文献2】特開平7−253249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献に開示された技術には次の課題がある。
システムを構成する各手段を駆動させるため、駆動電力が必要となる。この電力は、システムの運転条件に拠っては、大きなものとなる。そのため、運転条件に拠っては電力消費量が増加し、太陽電池による発電量以上の電力が消費されることがある。その結果、太陽エネルギの利用効率が低下することがある。また、発電された電力以上の電力が消費されなくても、開示されたシステムではエネルギ効率が依然として不十分である。
【0005】
本発明は前記課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、太陽エネルギの利用効率を従来よりも向上させた太陽エネルギ利用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、熱交換器とヒートポンプ若しくは別の熱交換器と循環ポンプとを少なくとも備え、熱媒循環量を制御することにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
太陽エネルギの利用効率を従来よりも向上させた太陽エネルギ利用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る太陽エネルギ利用システムの構成を示す図である。
【図2】熱交換器2に供給される熱媒温度に対する回収熱量及び太陽電池1による発電量を示す図である。
【図3】太陽エネルギ利用システム100における制御を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態に係る太陽エネルギ利用システムの構成を示す図である。
【図5】第3実施形態に係る太陽エネルギ利用システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.第1実施形態]
<構成>
図1に示すように、太陽エネルギ利用システム100は、太陽電池1と、太陽電池の裏面(太陽光照射面の逆側面)に密着(・近接)して設けられた熱交換器2と、ヒートポンプ3と、インバータ(INV)制御されるポンプ4と、を備える。そして、熱交換器2とヒートポンプ3とは配管を介して接続され、この配管を通じて熱交換器2とヒートポンプ3との間で熱媒が循環するようになっている。なお、図1中の矢印は、冷媒、熱媒及び水(被加熱媒体)の通流方向を示している。
【0010】
さらに、太陽エネルギ利用システム100は、熱媒の循環を制御する演算制御部5を備える。詳細は後記するが、具体的には、演算制御部5は、エネルギ利用システム100における消費電力と太陽電池1の発電量とを計算する。そして、演算制御部5は、この計算結果に基づいてポンプ4を制御することで、熱媒の循環流量を制御する。
【0011】
他にも、太陽エネルギ利用システム100は、太陽電池1の電流を測定する電流センサ61及び電圧を測定する電圧センサ62、ヒートポンプ3から排出される熱媒の温度を測定する温度センサ71、熱交換器2から排出される熱媒の温度を測定する温度センサ72、外部の温度(外気温)を測定する温度センサ79、並びに、熱交換器2から排出される熱媒の流量を測定する流量センサ91を備える。
【0012】
また、太陽エネルギ利用システム100は、ヒートポンプ3で加熱される水を供給、並びに加熱された水を貯蔵する系を備える。具体的には、太陽エネルギ利用システム100は、インバータ制御されるポンプ33、ヒートポンプ3に供給される水の流量を測定する流量センサ93、ヒートポンプ3に供給される水の温度を測定する温度センサ73、ヒートポンプ3から排出される水(即ち、加熱された水)の温度を測定する温度センサ74、ヒートポンプ3から排出された水を貯蔵する給湯タンク13を備える。
【0013】
以下、各手段を詳細に説明する。
【0014】
太陽電池1は、太陽光が有するエネルギを電力に変換し、電力として外部へ供給するものである。本実施形態においては、得られた電力は図示しない外部負荷へ供給される。さらには、本実施形態において、得られた電力は、太陽エネルギ利用システム100を構成する各手段(例えばヒートポンプ3、ポンプ4等)を駆動する電力としても用いられる。
【0015】
熱交換器2は、太陽電池1を冷却するものである。具体的には、熱交換器1に対して温度の低い熱媒を通流させることで、太陽電池1の有する熱を熱媒に伝達し、太陽電池1の温度が低下する。なお、熱交換器2から排出された熱媒(太陽電池1からの熱が伝達された熱媒)は、後記するヒートポンプ3に供給される。なお、熱媒は、水(低温下でも凍結しない設備を別途設けることが好ましい)、不凍液等であってもよい。また、二酸化炭素等のガスであってもよい。
【0016】
ヒートポンプ3は、熱交換器2から排出された熱媒が供給されるものである。ヒートポンプ3は、図1に示すように、蒸発器3aと、圧縮器3bと、凝縮器3cと、膨張弁3dと、を備える。熱媒は、蒸発器3aに供給される。そして、ヒートポンプ3内を、冷媒が図1に示す方向で通流する。一方、ヒートポンプ3に供給される水は、凝縮器3cに供給される。
【0017】
冷媒は、蒸発器3aで熱媒から熱を受け取った後、圧縮器3bで圧縮される。これにより、冷媒は高温高圧の状態になる。そして、高温高圧の冷媒は凝縮器3cで冷却される。即ち、高温高圧の冷媒が有する熱は、ヒートポンプ3(凝縮器3c)に供給される水に伝達される。これにより、加熱された水(湯)が得られる。得られた湯は給湯タンク13に貯蔵される。一方、冷却された冷媒は、膨張弁3dにより膨張し、低温低圧の状態になる。その後、冷媒は再び蒸発器3aに供給される。
【0018】
なお、本実施形態においては、使用に適した温度の湯を貯蔵するため、温度センサ74により測定される温度が45℃になるように、ヒートポンプ3が制御される。
【0019】
ポンプ4は、熱交換器2とヒートポンプ3との間で熱媒を循環させるものである。また、ポンプ4により、熱媒の循環量が変更される。ポンプ4はインバータ制御されるものであり、熱媒流量の多いときには速い回転速度で運転する。一方、熱媒流量が少ないときには遅い回転速度で運転する。このようなインバータ制御されるポンプを用いることで、流量に応じて回転速度を変化させることができる。これにより、熱媒流量が少ないときにポンプ4の回転速度を抑え、消費電力を削減することができる。
【0020】
演算制御部5は、各センサ(電圧センサ、電圧センサ、温度センサ、流量センサ等)、各ポンプ及び各手段(熱交換器2等)に対し、図示しない電気信号線を介して接続されている。そして、演算制御部5は、各センサや各ポンプ等からの情報(電気信号)を受け取って演算(計算)し、演算の結果に基づいて各ポンプや各手段の動作を制御する。
【0021】
演算制御部5は、ポンプ4を制御して熱媒の循環量を変更する流量制御部としての一形態である。即ち、演算制御部5は、各センサ、各ポンプ及び各手段とに接続され、電気信号を授受する通信部5aと、熱交換器2内を通流させる熱媒量を決定する最適出力演算部5bと、太陽電池1の発電量及び太陽エネルギ利用システム100での消費電力量をシミュレート(計算)するシミュレーション部5cと、各ポンプの回転速度(即ち、インバータ周波数)を制御する制御部5dと、を備えている。演算制御部5による具体的な制御は後記する。
【0022】
演算制御部5は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等を備えて構成される。
【0023】
また、温度センサ71,72,73,74,79、流量センサ91,93、電流センサ61、電圧センサ62及びポンプ4,33としてはいずれも、任意の装置や手段を用いることができる。
【0024】
<制御>
はじめに、太陽電池1の特性について説明する。
図2に示すように、熱交換器2の入口での熱媒温度が上昇すると、太陽電池1の発電量及び熱媒への回収熱量が低下する。より具体的には、入口温度が上昇すると、太陽電池1が十分に冷却されず、太陽電池1の温度が高くなる。そのため、太陽電池1の効率が落ち、発電量が低下する。さらに、入口温度が上昇すると、太陽電池1の温度(表面温度)が高くなる。そのため、太陽電池1表面からの外気への放熱量が上昇するため、太陽電池1の背面に備えられる熱交換器2の回収熱量が低下する。
【0025】
次に、図3を参照しながら、太陽エネルギ利用システム100における演算制御部5による制御を説明する。演算制御部5は、太陽エネルギ利用システム100における消費電力ができるだけ小さく、しかも太陽電池1の発電量ができるだけ大きくなるように、熱交換器2に供給される熱媒の流量を制御する。即ち、太陽エネルギ利用システム100における、発電量と消費電力との差分が最も大きくなるように、熱交換器2への熱媒の供給流量を制御する。以下、具体的に説明する。
【0026】
まず、演算制御部5の最適出力演算部5bに、太陽電池1が設置される場所の緯度及び経度等の位置情報が入力される(ステップS101)。この位置情報として、図示しないキーボード等の入力装置等を用いて位置情報が記録された電子ファイルを作成し、その電子ファイルに記録した値が入力される。さらに、シミュレーション開始時刻が入力される。そして、最適出力演算部5bは、電流センサ61、電圧センサ62、各温度センサ及び各流量センサから測定値を取得する。
【0027】
そして、最適出力演算部5bは、測定された太陽電池1の電流値及び電圧値から、太陽電池1による発電量を計算する(ステップS102)。計算された発電量は現実の発電量である。なお、太陽電池1は、図示しない二次電池に接続されている。即ち、太陽電池1により発電された電力は二次電池に充電される。これにより、太陽電池1で電流が流れる。
【0028】
そして、最適出力演算部5bは、計算された発電量に基づき、太陽電池1の表面の温度を計算する(ステップS103)。ここで、表面温度は、太陽電池1の発電量と熱交換器2に供給及び排出される熱媒の温度とに関する所定の式(熱バランス、伝熱特性)に基づき、計算される。
【0029】
即ち、最適出力演算部5bは、温度センサ71,72及び流量センサ91により、熱交換器2で熱媒が受け取った熱量(即ち、太陽電池1及び熱交換器2間での熱交換量)を計算する。具体的には、温度センサ71により熱交換器2の入口での熱媒温度(即ち、ヒートポンプ3(具体的には前記の蒸発器3a)から排出された熱媒の温度)が測定される。また、温度センサ72により熱交換器2の出口での熱媒温度(即ち、ヒートポンプ3に供給される熱媒の温度)が測定される。そして、熱交換器2での入口及び出口の熱媒温度の差分を算出し、この差分と流量センサ91により測定される熱媒流量とにより、熱交換器2で熱媒が受け取った熱量が計算される。
【0030】
そして、計算して得られた熱量、温度センサ79で測定された外気温、熱交換器2の伝熱特性、系内の熱バランス等を考慮し、太陽電池1の表面温度を計算する。なお、ステップS103においては表面温度以外にも、太陽電池1から外気(即ち系外)への放熱量、熱交換器2から外気への放熱量等も併せて計算される。
【0031】
その後、最適出力演算部5bは、ステップS101において入力された緯度、経度、時刻等に基づき太陽の軌道を計算し、太陽の高度及び方位角を計算する。そして、ステップS102で計算された発電量とステップS103で計算された表面温度とにより、太陽電池1への日射量が計算される(ステップS104)。この日射量は、太陽電池1の温度−効率特性を反映する所定の式に基づき計算される。
【0032】
以上の計算を行って発電量、表面温度及び日射量等を求めた後、最適出力演算部5bは、熱交換器2に供給される熱媒の供給量を設定する(ステップS105)。即ち、ポンプ4による流量値が設定される。なお、本実施形態における初期流量は、ポンプ4で変更可能な最大の流量とする。
【0033】
次に、シミュレーション部5cが、以下の制御(ステップS106〜ステップS111)を行う。
【0034】
はじめに、シミュレーション部5cに、熱媒の温度が入力される。この際の入力は、前記のステップS101の入力方法と同様の方法が用いられる。ただし、本実施形態においては、温度センサ79で測定される外気温が熱媒温度(熱交換器2の出口温度)として設定される(ステップS106)。
【0035】
そして、設定された熱媒温度とステップS105で設定された熱媒流量とに基づき、ポンプ4の消費電力が計算される(ステップS107)。さらに、流量センサ93に基づいて同様にして、ポンプ33の消費電力も計算される(ステップS107)。なお、これらの計算に際しては、予め計算された、各ポンプにおける流量と消費電力との関係に基づいて行われる。
【0036】
そして、ヒートポンプ3の消費電力も計算される(ステップS108)。即ち、シミュレーション部5cは、予め設定されたヒートポンプ3の特性に基づき、ヒートポンプ3の消費電力及びヒートポンプ3内の蒸発器3aでの熱媒の出口温度を計算する。
【0037】
また、この計算に際して、ヒートポンプ3内の凝縮器3cの入口温度、出口温度、流量、蒸発器3aの入口温度及び流量がパラメータとして用いられる。なお、ヒートポンプ3内の凝縮器3cの入口温度、出口温度及び流量は、それぞれ温度センサ73,74及び流量センサ93による測定値を用いる。さらに、蒸発器3aの熱媒の流量は、ステップS105で設定した値(2回目の計算以降は、ステップS113で設定した値)、蒸発器3aの熱媒の入口温度は、ステップS106により設定された熱交換器2の出口温度の値(2回目の計算以降は、ステップS109により計算された熱交換器2の出口温度の値)である。
【0038】
以上のステップS107で求められたポンプ4,33の消費電力と、ステップS108で求められたヒートポンプ3の消費電力とに基づき、シミュレーション部5cは、太陽電池1の発電量並びに太陽電池1と熱交換器2との熱バランスを計算する(ステップS109)。まず、太陽電池1の表面温度が計算される。具体的な計算方法は、ステップS103において説明した方法と同様である。そして、熱バランスの計算により、熱交換器2の出口温度、つまりヒートポンプ3の蒸発器3aの熱媒の入口温度が計算される。なお、計算される表面温度は、ステップS105で設定された熱媒流量(2回目の計算以降は、ステップS113で設定した熱媒流量)における推算値である。さらに、太陽電池1の表面温度から、太陽電池1の温度−効率特性を反映する所定の式に基づき太陽電池1の発電量が計算される。
【0039】
また、この計算に際し、日射量、外気温度、太陽電池1の発電量、熱媒体の入口温度、流量がパラメータとして用いられる。日射量はステップS104で計算した値、外気温度は温度センサ79の計測値が用いられる。また、太陽電池1の発電量はステップS102で計算された値(2回目の計算以降は、前回このステップS109で計算された値)が用いられる。さらに、熱媒の熱交換器2の入口温度は、ステップS108で計算されたヒートポンプ3の蒸発器3aの熱媒の出口温度が用いられ、熱媒の流量は、ステップS105で設定された値(2回目以降はステップS113で設定された値)が用いられる。ステップS109で計算(推算)された熱媒の熱交換器2の出口温度は、図示しない記憶部に記憶される。
【0040】
計算された熱媒の熱交換器2の出口温度が記憶される一方、シミュレーション部5cは、既に記憶されている前回の計算時の熱媒の熱交換器2の出口温度と今回計算された値とを比較(判定)する(ステップS110)。なお、初回計算時には比較対象が存在しないため、判定は行われない。具体的には、シミュレーション部5cは、記憶された前回の値と今回計算された値が予め決めた値(例えば0.1℃以下)よりも小さいか否か(収束したか否か)を判定する。
【0041】
この収束判定の結果、収束していないと判断した場合(ステップS110のNo方向)、ステップS107〜ステップS110を再度行って、再び収束判定を行う。そして、収束したと判断した場合(ステップS110のYes方向)、ステップS111に進む。そして、計算された発電量とステップS107,S108で計算した消費電力との差分を計算し、図示しない記憶部に記憶する(ステップS111)。なお、この差分は、ステップS105で設定された流量とともに記憶される。ちなみに、熱媒の熱交換器2の出口温度(推算値)が収束すると、熱交換器2の入口温度(推算値)も収束する。
【0042】
最適出力演算部5bは、ステップS105で設定された流量が、ポンプ4の設定可能な最低流量であるか否かを判定する(ステップS112)。本実施形態においては、ステップS105では、運転開始時には最大流量で設定している。従って、1回目の計算後にはステップS112のNo方向に進む。そして、熱媒の流量が所定の刻み幅分減少させて(ステップS113)、減少後の流量が改めて設定される(ステップS105)。その後、ステップS106〜S112が繰り返される。
【0043】
ステップS112において、ステップS105で設定された流量が最低流量である場合、ステップS112のYes方向に進む。そして、最適演算出力部5bは、シミュレーション部5cにより記憶された差分の値を全て比較する(ステップS114)。比較後、最適演算出力部5bは、差分が最も小さくなる、即ち、外部へ取り出し可能な電力が最も大きくなるときの流量を抽出し、外部へ出力する(ステップS115)。なお、この外部への出力は、例えばディスプレイに表示されるようにしてもよく、制御部5dに直接伝達されてポンプ4が制御されるようにしてもよい。この実施形態では、この外部への出力は、制御部5dに直接伝達されてポンプ4が制御される。
【0044】
<効果>
以上の太陽エネルギ利用システム100に拠れば、日射量、ポンプ及びヒートポンプの消費電力、太陽電池1表面から外部への放熱等の複雑な要素で決定される供給可能な電力を、最大限外部へ取り出すことができる。そのため、太陽エネルギのより効率のよい利用を図ることができる。
【0045】
なお、前記の説明においては、熱媒の循環を主に説明したが、ポンプ33により制御される水の流れ(ヒートポンプ3への給水)は特に制限されない。従って、給湯タンク13に貯蔵される水の温度や貯蔵量が所望のものになるように、ポンプ33等を適宜制御すればよい。
【0046】
[2.第2実施形態]
次に、図4を参照して、太陽エネルギ利用システム200の構成を説明する。図1の太陽エネルギ利用システム100と同様のものを示すものは同様の符号を付すものとし、その詳細な説明は省略する。
【0047】
太陽エネルギ利用システム200は、ヒートポンプ3に代えて熱交換器3eを備えている。太陽エネルギ利用システムの設置場所が、例えば熱帯地区等の1年を通じて暑い場所等の場合、熱交換器2に供給される熱媒の温度が1年を通じて高くなる。そのため、熱交換器3eで太陽熱を水に対して直接伝達することで水を十分に加熱することができ、ヒートポンプを設ける必要が無い。従って、ヒートポンプよりも消費電力の少ない熱交換器を用いることで、太陽エネルギ利用システム200での消費電力を抑えることができる。
【0048】
また、太陽電池1の冷却を促し太陽電池1での発電効率を上昇させる観点から、熱交換器3eから排出された熱媒は図示しない冷却器により冷却され、この冷却された熱媒が熱交換器2に供給されるように構成してもよい。この際、冷却器による冷却ではなく、自然放熱による冷却(即ち放熱)としてもよい。
【0049】
なお、太陽エネルギ利用システム200においても、図3に示すフローと同様にして制御を行うことができる。
【0050】
[3.第3実施形態]
次に、図5を参照して、太陽エネルギ利用システム300の構成を説明する。図1の太陽エネルギ利用システム100と同様のものを示すものは同様の符号を付すものとし、その詳細な説明は省略する。なお、図5において、給湯タンク13は紙面の都合上横長の形態となっているが、実際には縦長(鉛直方向に長い)形態となっている。
【0051】
太陽エネルギ利用システム300においては、各位置の温度を測定する温度センサ73〜78,81〜84が備えられている。さらに、各位置の水又は熱媒の流量を制御する、インバータ制御のポンプ32〜37が備えられている。そして、各位置の流量を測定する流量センサ92〜97が備えられている。これらは全て図1で説明したものと同じ機能を有するものであるため、説明を省略する。
【0052】
太陽エネルギ利用システム300では、熱交換器2から排出された熱媒を高温熱媒タンク11にいったん貯蔵する。そして、貯蔵された熱媒は分岐して、ヒートポンプ14,16及び熱交換器15に供給される。そして、ヒートポンプ14,16及び熱交換器15で水に対して熱を供給した後、低温熱媒タンク12に貯蔵される。その後、低温熱媒タンクに貯蔵された熱媒は、再び熱交換器2に供給される。
なお、ヒートポンプ14,16は、図1に示すヒートポンプ3と同様の構成を備える。従って、ヒートポンプ14,16についての説明は省略する。
【0053】
本実施形態でも、ヒートポンプ14及び熱交換器15のいずれにおいても、排出される水の温度(温度センサ74,76で測定される温度)が45℃となるように設定されている。従って、高温熱媒タンク11内の熱媒温度が46℃以上である場合、この熱媒は熱交換器15に供給される。このような場合とは、例えば温度センサ79により測定される外気温が高い場合(例えば夏季、設置場所が熱帯地区等)である。一方、46℃未満である場合には、ヒートポンプ14に供給される。このように、高温熱媒タンク11内の温度に応じてヒートポンプ14に供給されるか熱交換器15に供給されるかを選択することで、無駄なエネルギ消費を避けつつも、確実に水を加熱することができる。熱媒供給先の選択は、ポンプ32,34を制御することで行われる。
【0054】
即ち、熱媒の温度が所定値(前記の例では46℃)以上である場合には熱媒の温度を上昇させる必要が無いため、熱媒は熱交換器15に供給されればよい。一方、熱媒の温度が所定値未満であり、水を加熱する(前記の例では45℃まで)ための熱量が不足する場合には、熱媒はヒートポンプ14に供給される。このように、熱媒を熱交換器2から排出される熱媒の温度に応じてヒートポンプ14又は熱交換器15に供給されるようにすることで、ヒートポンプ14の消費電力を削減することができる。従って、エネルギ効率のより良い太陽エネルギ利用システムを提供することができる。
【0055】
ただし、水の熱交換器15の出口の温度を45℃に制御するには、熱媒の流量を調整する必要がある。そこで、熱交換器15から排出される水の温度を測定する温度センサ76とポンプ34とに、PID制御器110が電気信号線を介して接続されている。
【0056】
このように、温度センサ76により排出水の温度を測定しながらポンプ34を制御することで、45℃に水を加熱することができる。即ち、温度センサ76により測定される温度が45℃よりも低い場合にはポンプ34を制御して熱媒流量を多くすればよいし、温度が45℃よりも高い場合には熱媒流量を少なくする制御をポンプ34に対して行えばよい。これにより、水の温度が45℃となるように確実に水を加熱することができる。
【0057】
また、太陽エネルギ利用システム300においては、熱媒はヒートポンプ16にも供給される。そして、この熱媒の通流方向に対して対向する方向に、水等の流体が通流している。そのため、ヒートポンプ16においても、ヒートポンプ14と同様に熱交換が行われ、ファンコイルユニット17に伝熱された熱媒が供給される。これにより、ファンコイルユニット17から温風が排出される。即ち、太陽エネルギ利用システム300に拠れば、太陽光を利用した外部への電力供給、給湯及び暖房の3つを同時に行うことができる。
【0058】
なお、ヒートポンプ14及び熱交換器15に供給される水の温度や流量については特に制限されず、前記した太陽エネルギ利用システム100と同様に設定すればよい。また、各ポンプ、熱交換器2,15、及びヒートポンプ14,16等の制御は、図3を参照して説明した太陽エネルギ利用システム100の制御と同様にして行えばよい。
【0059】
[4.変更例]
図5を示しながら説明した第3実施形態においては、PID制御器110を熱交換器15についての制御に用いたが、ヒートポンプ14或いはヒートポンプ16の制御に用いてもよい。また、このようなPID制御器110は、図1に示す第1実施形態や図4に示す第2実施形態であっても同様に設けてもよい。さらには、排出される水の温度ではなく、供給される水の温度に応じて制御してもよい。これらのようにしても同様の効果を奏する。即ち、水等の加熱対象の流体の温度に応じて、熱媒の供給量(供給流量)を制御するようにしてもよい。
【0060】
また、PID制御以外のフィードバック制御、或いは、フィードフォワード制御等の制御も適宜行うことができる。
【0061】
さらに、本実施形態において、ポンプ4による流量制御をインバータによる回転制御で行うこととしたが、インバータではなく、通常のポンプとダンパや流量調整弁とを設け、ダンパの開度や流量調整弁の開度等で変化させるようにしてもよい。このような場合も、「循環ポンプによる流量(循環量)の制御」に相当する。
【符号の説明】
【0062】
1 太陽電池
2 熱交換器(第1熱交換器)
3 ヒートポンプ
3e 熱交換器(第2熱交換器)
4 ポンプ(インバータ制御されるポンプ;循環ポンプ)
5 演算制御部(流量制御部)
14 ヒートポンプ(一組のヒートポンプ及び熱交換器のうちの一方)
15 熱交換器(一組のヒートポンプ及び熱交換器のうちの一方)
16 ヒートポンプ
100 太陽エネルギ利用システム
200 太陽エネルギ利用システム
300 太陽エネルギ利用システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を備え、前記太陽電池により電力を得る太陽エネルギ利用システムにおいて、
前記太陽電池を冷却する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器に接続されたヒートポンプと、
前記第1熱交換器と前記ヒートポンプとの間で熱媒を循環させる循環ポンプと、
前記循環ポンプを制御して熱媒の循環量を変更する流量制御部と、を備えている
ことを特徴とする、太陽エネルギ利用システム。
【請求項2】
前記流量制御部は、循環する熱媒の流量を算出し、算出された流量となるように前記循環ポンプを制御する演算制御部であり、
前記演算制御部は、
前記太陽エネルギ利用システムにおける消費電力と前記太陽電池による発電量とを計算し、
計算された消費電力と発電量との差分が最も大きくなるように、前記循環ポンプによる熱媒の流量を制御することを特徴とする、請求項1の太陽エネルギ利用システム。
【請求項3】
太陽電池を備え、前記太陽電池により電力を得る太陽エネルギ利用システムにおいて、
前記太陽電池を冷却する第1熱交換器と、
前記第1熱交換器に接続された第2熱交換器と、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間で熱媒を循環させる循環ポンプと、
前記循環ポンプを制御して熱媒の循環量を変更する流量制御部と、を備えている
ことを特徴とする、太陽エネルギ利用システム。
【請求項4】
前記流量制御部は、循環する熱媒の流量を算出し、算出された流量となるように前記循環ポンプを制御する演算制御部であり、
前記演算制御部は、
前記太陽エネルギ利用システムにおける消費電力と前記太陽電池による発電量とを計算し、
計算された消費電力と発電量との差分が最も大きくなるように、前記循環ポンプによる熱媒の流量を制御することを特徴とする、請求項3の太陽エネルギ利用システム。
【請求項5】
前記演算制御部は、前記太陽電池から外気への放熱量と、前記太陽電池及び前記第1熱交換器間での熱交換量と、を計算する
ことを特徴とする、請求項2又は4に記載の太陽エネルギ利用システム。
【請求項6】
前記第1熱交換器に対して並列に接続される一組のヒートポンプ及び熱交換器を備え、
前記第1熱交換器から排出される熱媒の温度に応じて、前記一組のヒートポンプ及び熱交換器のうちのいずれか一方に熱媒が供給される
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の太陽エネルギ利用システム。
【請求項7】
熱媒による加熱対象の流体の温度に応じて、熱媒の流量が制御される
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の太陽エネルギ利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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