説明

太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ

【課題】1つのキャビティ型レシーバで全方位タワー集光システムを実現する。
【解決手段】器体1内にガイドブロック2を有するレシーバであり、太陽光ビームダウン集光システムの集光位置に設置される。器体1は、キャビティを構成する中空箱体であり、ガイドブロック2は、器体1の開口全面に縦横に配列して太陽光の集光ビームを受け入れる受光面CPを形成するとともに、器体1内を前側の低温保熱領域LZと後側の高温加熱領域HZとに区画するものである。低温保熱領域LZは、隣接するガイドブロック2,2間に形成され、器体1内に受光した太陽光の熱の外部への放散を抑制して周辺部へ逃がさない領域であり、高温加熱領域HZは、器体1の開口全面から各ガイドブロック2内を通して器体1内に受光した太陽光の集光ビームを受け入れ、熱交換器の熱媒体を加熱する領域である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光のビームダウン集光システムに適用して全方位タワー集光システムを実現するキャビティ型レシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
(太陽光集光システムの種類)
太陽光集光システムは、全方位集光システムと、区分フィールド集光システムとに大別される。全方位集光システムは、タワーを中心とするほぼ円形のヘリオスタットフィールドにおいて、ヘリオスタットからの反射光をタワートップから見て360度の視界から集光する方式(特許文献1参照)であり、レシーバには、円筒型ボリュメトリック方式や円筒型チュブラー方式などの円筒型レシーバが用いられる。
【0003】
一方、区分フィールド集光システムは、タワーを扇の中心とする扇形のヘリオスタットフィールドにおいて、ヘリオスタットからの反射光をタワートップから見て扇形円弧角度範囲において集光する方式であり、レシーバにはキャビティ型レシーバが用いられる。
【0004】
(レシーバの構造)
円筒型レシーバは、円筒状の集熱器をタワーのトップに置き、円筒側面の全面を集光面とするものである。ボリュメトリック方式レシーバは、気体が通過できるようにハニカム状またはポーラス状としたセラミックスや金属を板型に形成し、板面に、太陽光を集光すると同時にそこにガスを通過させ、板面に発生する集光熱を通過ガスを熱媒体として熱流体へと熱変換するものであり、チュブラー方式のレシーバは、耐熱管をらせん状もしくは直管状に用いて円筒型、またはキャビィティ型とし、集光ビームが照射されて耐熱管に発生する集光熱を、管内にガスを流通させて熱流体へと熱変換するものである。
【0005】
キャビティ型レシーバは、集光ビームの入射口を洞穴形状(キャビティ)の入り口とし、その中側をつぼ形に広くし、その壁面や底面をボリュメトリック方式かチュブラー方式によって熱変換するもので、600−1500℃の高温でのレシーバからの再放射が低減できる利点がある。
【0006】
(全方位集光システムの集熱器としての問題点)
ところで、全方位集光システムでは、全方位フィールドを区別しないで1つのキャビティ型レシーバとすることが望ましい。ヘリオスタットフィールドとタワーとからなるタワー集光システムでは、低緯度において春夏と秋冬とでは、太陽光の射す方向が、タワーを挟んで南北方向で逆転するため、ヘリオスタットからの反射光を効率よく受けるには、円形のヘリオスタットフィールドとし、その中心にタワーを設置した全方位集光システムに構成する必要がある。
【0007】
しかしながら、全方位集光システムのレシーバに円筒型レシーバを適用する場合は、タワートップに一台の円筒型レシーバを設置し、その一台のレシーバを運転すればよい。しかし円筒型レシーバは、キャビティ型レシーバよりも再放射による熱損失が大きく、熱効率の面からは、キャビティ型に比べて必ずしも円筒型のレシーバが有利であるとは言えない。
【0008】
一方、キャビティ型レシーバを適用したときには、フィールドをいくつかに区分し、それぞれに対応するレシーバを複数基設置しなければならず、さらに、各フィールドごとに受光する太陽光の集光熱量が異なり、しかも太陽高度に応じてレシーバへの入力熱量が異なるため、レシーバごとに個別に熱バランスを調整しつつレシーバを運転する必要がある。このような理由から全方位集光システムでは、全方位フィールドを区別しないで1つのキャビティ型フラットレシーバを用いることは難しいと考えられていた。
【0009】
さらに、そもそもキャビティ型レシーバそのものは、区分集光フィールドに用いる場合においても、つぼ型構造の前面の入射口がヘリオスタットフィールドに対して開口しているために、円筒型に比べれば再放射熱による熱損失が小さいとはいえ、開口部からの再放射熱が熱損失となる。これを防ぐには、開口部を塞ぐことができないので、レシーバ表面そのものを微細なキャビティ構造にする必要がある。
【0010】
それでもなお、再放射熱による5−10%程度の熱損失は避けられない。そこで、レシーバのつぼ型構造の入射口(開口部)を塞ぐことなく、再放射熱そのものを低減できれば、この問題は解決できるが、実際には、これを実現することは困難となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2951297号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、全方位集光システムでは、全方位フィールドを区別しないで1つのキャビティ型レシーバを用いることは難しいと考えられていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明によるレシーバは、全方位集光システムに適用し、全フィールドを区切らず、1つのキャビティ型レシーバとして設置し、レシーバのつぼ型構造の入射口(開口部)を塞ぐことなく、再放射熱を低減して高温の集熱を可能とした点を最大の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、太陽光のビームダウン集光システムに適用し、全方位から集光された太陽光の集光ビームをキャビティの上方から照射してキャビティの全開口面に受光させ、全方位のフィールド集光でありながら、全フィールドを区切らないで、実質的に一つのキャビティ型レシーバとして設置して運転することができる。
【0015】
しかも、キャビティ内に受光された集光ビームは、キャビティ内に設定された高温加熱領域の熱媒体を加熱し、余剰の熱はキャビティ内の低温保熱領域内にとどめるため、キャビティ内からの再放射熱損失を低減してキャビティの全開口内に受光された集光ビームの熱の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1によるキャビティ型レシーバを示すもので、(a)はレシーバの平面図、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【図2】(a)はガイドブロックの平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
【図3】本発明によるキャビティ型レシーバに配管された高温吸熱配管と低温保熱配管と、熱交換器との関係を略示的に示す図である。
【図4】ヘリオスタットを用いた太陽光集光システムとしてのビームダウン式集光システムの基本構造を示す図である。
【図5】ヘリオスタットの構成例を示す図である。
【図6】リフレクターの構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施例2によるキャビティ型レシーバを示すもので、(a)はレシーバの平面図、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【図8】(a)ガイドブロックの他の実施例を示す平面図、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【図9】本発明の実施例3によるキャビティ型レシーバを示すもので、(a)はレシーバの平面図、(b)は(a)の中央縦断面図である。
【図10】本発明の実施例3における蓄熱層を予熱する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明の基本的構成)
以下に本発明の実施例を図によって説明する。本発明は、ビームダウン式太陽光集光システムに用いる全方位フィールド用キャビティ型レシーバである。図1〜3に本発明の基本的構成を説明する。
【0018】
図1(a)、(b)において、本発明によるレシーバ11は、器体1と、ガイドブロック2とから構成されている。器体1は、キャビティを構成する中空円形の箱体であり、底部及び周面の立上り部は断熱構造となっている。ガイドブロック2は、キャビティの開口に太陽光の集光ビームの受光面CPを形成するとともに器体1内を前後段(図1では、器体1を上面開放の箱体として描いているので上下段)に区画するものであり、器体1のキャビティ内に一定の深さで器体1の開口内に互いに密接して縦横に配列されたものである。
【0019】
ガイドブロック2は、その内壁に傾斜面を有し、図2に示すように、器体1の前縁(上縁)側に大径の受光口5、後縁(下縁)側に小径の透光口6がそれぞれ開口された中空逆6角錐形の成形体であり、ガイドブロック2の各辺の傾斜内壁面は、例えばセラミックス表面をZnOアルミナ処理した材料を用いて集光された太陽エネルギーの反射率80〜90%程度の反射面であればよく、あまり高い反射率を必要とするものではない。器体1の開口内には、ガイドブロック2が最稠密配列で縦横方向に配列され、器体1の開口全面にハニカム状の受光面CPを形成している。
【0020】
図2(b)において、器体1の開口内の縦横方向に密接して配列されたガイドブロックのうち、任意のガイドブロック2と、当該ガイドブロック2と横方向の前後(あるいは左右)に互いに隣接する他のガイドブロック2´との間には、その上縁間が閉止され、下方に向けて開拡し、下縁が開放された角錐形の空間S1が形成される。
【0021】
本発明において、器体1内は、ガイドブロック2の配列によって前段(上段)の低温保熱領域LZと、後段(下段)の高温加熱領域HZとに区画される。器体1内で互いに隣接するガイドブロック間に囲まれた空間が低温保熱領域LZ、ガイドブロック2の後方(下方)に形成される器体1内の空間は高温加熱領域HZである。低温保熱領域LZは、器体1内に受光した太陽光の熱を熱の外部への放散を抑制して外部に逃がさない領域である。
【0022】
低温保熱領域LZは、高温加熱領域HZとは互いに連通しているが、集光ビームの受光面CPからは隔離されている。一方、高温加熱領域HZは、集光ビームの受光面CPに開口され、ガイドブロック2内に受け入れた太陽光の集光ビームの照射を受けて加熱される領域である。本発明においては、器体1内の内部構造を高温加熱領域HZからの再放射熱の低温保熱領域LZへの入射量が大きくなるように設定している。
【0023】
本発明は、高温加熱領域HZに、図3に示す熱交換器7の高温吸熱部7aを設置し、高温吸熱部に得られた熱媒体の熱を放熱部7bに取り出して熱エネルギー、あるいは化学エネルギーとして利用するものである。なお、低温保熱領域LZに閉じ込められた熱は、高温吸熱部7aに送りこむ熱媒体の予熱の熱源に利用することができる。以下に本発明の実施例を説明する。
【0024】
(実施例1)
実施例1は、熱交換器7の高温吸熱部7aに高温吸熱配管3を利用する例である。ガイドブロック2の下方の高温加熱領域HZには、各ブロックの透光口6の位置に向き合わせて列方向(又は行方向)に高温吸熱配管3が並列に配管されている。高温吸熱配管3は耐熱性の配管であり、熱交換器7の高温吸熱部7aとして管内には熱媒体である流体が充填されている。
【0025】
高温吸熱配管3は、ガイドブロック2上縁の大径の受光口5から下縁の小径の透光口6を透過して入射してくる太陽光の集光ビームの照射を受け、集光ビームによって、配管内で加熱された熱媒体を図3に示す熱交換器7の放熱部7bに送り込むものである。一方、低温保熱領域LZには、各ガイドブロックを行方向(あるいは列方向)に貫いて熱交換器7の高温吸熱部7aの予熱部7cとして低温保熱配管4が高温吸熱配管3と平行に配管されている。低温保熱配管4は、低温保熱領域LZ内の熱を吸収し、配管内を流動する熱媒体を予熱し、予熱された熱媒体を高温吸熱配管3に送りこむための通路である。
【0026】
高温加熱領域HZ内に並列に配列された高温吸熱配管3の各一端が、図3に示す熱交換器7の放熱部7bに通じる送気管9に接続され、放熱部7bの戻り管8に各一端が接続された低温保熱配管4の各他端が接続管10によって、高温吸熱配管3の各他端に接続されているものである。なお、熱交換器7の熱媒体には、水、蒸気、スチーム、空気などの流体を用いることができる。
【0027】
図4において、本発明によるレシーバ11は、ビームダウン式集光システムに適用される。レシーバ11は、タワー12上に設置されたリフレクター13に向き合わせ、その受熱面を上向きにしてリフレクター13直下に設置される。
【0028】
ビームダウン式集光システムは、地上に分散して配置されたヘリオスタット14,14、14、・・・群と、リフレクター13及びレシーバ11との組み合わせで構成される。リフレクター13はタワー12の上部の上方焦点の位置に設置された反射鏡であり、レシーバ11はリフレクター13の下方の集光位置(焦点位置)に設置される。
【0029】
ヘリオスタット(1次反射鏡)14は、図5に示すように鏡15を任意の方向に向け、鏡15が向けられた方向へ太陽光を反射させる装置であり、垂直軸16、水平軸17を中心に転回して太陽光をリフレクター13に向けて照射する装置であり、リフレクター(2次反射鏡)13は図6に示すようにヘリオスタット14反射された太陽光b1を鏡面18により、レシーバ11に向けて再度反射させる装置である。リフレクター13には、回転双曲面型、セグメント型などがある。
【0030】
ビームダウン式集光システムにおいてはタワーとその周囲のヘリオスタット群との組み合わせによって構成されるのであるが、本発明はマルチタワー式集光システムにも同様に適用できる。マルチタワー式集光システムにおいては、地上に分散して配列されたヘリオスタット群の間に一定間隔を置いて設置された複数のタワーとの組み合わせからなり、それぞれのヘリオスタットは、近傍に設置された何本かのタワー4のリフレクター2に向けて太陽光が照射される。
【0031】
そしてリフレクター13に受光した太陽光はその直下のレシーバ11に集光される。図1(b)において、レシーバ11の器体1の開口全面に形成される受光面CPに入光した集光ビームは、図2の各ガイドブロック2の上縁の受光口5に受け入れられ、内壁の反射面で反射を繰り返しながら下縁の透光口6を通って高温加熱領域HZに入射され、それぞれの透光口6の直下に配管された高温吸熱配管3を直射する。高温吸熱配管3内の熱媒体は、高温加熱領域HZ内で各ガイドブロック2の透光口6の直下を通過するたびごとに加熱されて熱交換器7の放熱部7bに送り込まれ、放熱部7b内では例えば高温蒸気を生成して蒸気タービン発電に利用したり、あるいは吸熱化学反応によって、化学エネルギー燃料に加工される。
【0032】
一方、ガイドブロック2の透光口6から高温加熱領域HZ内に照射された集光ビームの大部分は熱媒体の加熱に消費されるが、その一部は高温吸熱配管3の表面から再放射され、その一部はガイドブロック2の透光口6から器体1の外部に失われるか、もしくは低温保熱領域LZに入射する。
【0033】
しかしながら、低温領域LZに入射した放射熱がこの領域から再放射する熱量は低温であるがゆえに小さく、さらに、図1のごとく、低温保熱領域LZへの入射分が比較的大きくなるような内部構造とすることにより、結果的に高温加熱領域HZに生じた再放射熱の多くは低温保熱領域LZ内に貯められる。
【0034】
低温保熱領域LZ内に貯められた熱は、低温保熱領域LZに予熱部7cとして配管された低温保熱配管4内の熱媒体に吸熱され、低温保熱配管4内の熱媒体は、図3に示すように高温吸熱配管3に供給され、高温加熱領域HZ内でさらに加熱されて熱交換器7の放熱部7bに送りこまれる。
【0035】
なお、各ガイドブロック2の内壁面は反射面(反射率80〜90%)となっているため、集光ビームがガイドブロック2の受光口5から透光口6に抜ける間に、ガイドブロック2の内壁面で反射が繰り返され、その間、非反射光のエネルギーによって各ガイドブロック2の壁面が加熱されるが、低温保熱領域LZに設置された低温保熱配管4により、ガイドブロック2の発熱が抑制され、低温化するべく熱が吸収されることによって、加熱された熱媒体により、非反射光のエネルギーのかなりの部分を回収でき、予熱された熱媒体が高温吸熱配管3内に送りこまれる。
【0036】
上記したように低温保熱領域LZにて回収された非反射光エネルギーを含む予備加熱流体(低温)は、高温加熱領域HZに並列に配列された各高温吸熱配管3内を流動し、ガイドブロック2の受光口5を通過するたびに繰り返し集光ビームの照射を受け、その熱を吸収して加熱された流体は、高温ガスとなって熱交換器の放熱部7bに入力されるが、高温吸熱配管3に照射された集光ビームの一部は、高温吸熱配管3の表面から再放射され、それが、低温保熱領域LZに予熱部7cとして配管された低温保熱配管4との間で行われる熱伝導、対流による伝熱過程によって最終的に高温加熱領域と低温保熱領域の間で一定の動的熱平衡に達する。実用的には、低温領域を200〜300℃、高温加熱領域を500〜1000℃の範囲内で熱平衡を任意に設定して運転を行うことが望まれる。
【0037】
(実施例2)
以上実施例1では、高温加熱領域に高温吸熱配管を配置して集光ビームを直接吸熱配管に照射する例を説明した。実施例1では、太陽光の集光ビームの照射を直接に受けて高温吸熱配管内の熱媒体が加熱されるが、実施例2は、太陽光の集光ビームを高温熱吸収プレートに吸熱させると同時に、その熱を高温吸熱配管内の流体に伝導する例である。
【0038】
図7において、この実施例においても、レシーバ20は、器体21と、ガイドブロック22とから構成され,ガイドブロック22は、上縁に大径の受光口25、下縁に小径の透光口26がそれぞれ開口された中空逆6角錐形の成形体であり、器体21の開口内には、ガイドブロック22が最稠密配列で縦横方向に配列され、器体1の開口全面にハニカム状の受光面CPを形成し、互いに隣接するガイドブロック間に囲まれた空間を低温保熱領域LZ、ガイドブロック22の後方(下方)に形成される器体21内の空間を高温加熱領域HZとして器体21内を区画している点は実施例1と同じである。図7では構成を分かりやすく示すため、器体21の受光面CPを合計7個のガイドブロック22の配列によって形成した例を図示している。
【0039】
実施例2においては、器体21の受光面CPに配列されたガイドブロック22の後方(直下)の高温加熱領域HZに平板状の高温熱吸収プレート(例えば炭化ケイ素板)23を配設し、その裏面に接して高温吸熱配管24を設置している。この実施例において、高温吸熱配管24は、平板状の高温熱吸収プレート23と同じ形状の中空缶であり、裏面要所には、各ガイドブロック22に対応して給気管27と送気管28との組を接続したものである。従って合計7個のガイドブロック22の配列によって器体21の受光面CPを形成されているときには、7組の給気管27と送気管28との組を高温吸熱配管24に接続することになる。
【0040】
また、実施例2においては、低温保熱領域LZ内の熱を吸収して高温吸熱配管24へ供給する熱媒体を予熱するための流体通路29をガイドブロック22の各外壁に形成している。流体通路29は、図8に示すようにガイドブロック22の外壁と、その外面を覆う吸熱パネル30間に形成されたものであり、流体通路29の下縁は開放され、上縁は、隣り合うガイドブロックの上縁間で閉鎖された空間内に開口している。隣接するガイドブロック間に形成される流体通路29の上縁開口と、給気管27の吸引口とはチューブ29aによって接続され、吸熱配管24の各送気管28は、前実施例と同様に熱交換器の放熱部に接続されている。
【0041】
本実施例によれば、太陽光の集光ビームは、各ガイドブロック22の透光口26を通して高温熱吸収プレート23に照射され、高温熱吸収プレート23が高温に加熱される。そして、高温熱吸収プレート23の熱が高温吸熱配管24を通して高温吸熱配管24内を流動する熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体は、実施例1と同様に熱交換器の放熱部に送り込まれる。本実施例において熱媒体は空気であり、流体通路29内には、その下縁開口を通してガイドブロック22内から空気が引き込まれ、引き込まれた空気が流体通路29内を通過する間に、ガイドブロック22の外壁の熱や低温保熱領域LZが有する熱によって予熱され、熱媒体として高温吸熱配管24に供給される。
【0042】
この実施例によれば、平板状の高温熱吸収プレート23を介して太陽光の集光ビームの熱が高温吸熱配管24に伝えられるため、ガイドブロック22内を通して高温熱吸収プレート23に照射された集光ビームは、高温熱吸収プレート23の全面に拡散し、高温熱吸収プレート23の全面が加熱され、各送気管28からは、均等に熱せられた熱媒体を取り出すことができる。しかも、高温吸熱配管24内へは、低温保熱領域LZ内でガイドブロックの内壁及びガイドブロックの外壁に触れながら有効に予熱された流体を供給することができる。
【0043】
(実施例3)
実施例3は、ガイドブロックを通して照射された集光ビームの熱を高温熱吸収プレートに吸熱させると同時に蓄熱体に蓄熱させ、蓄熱体に貯蔵された熱で吸熱配管内の流体を加熱する例である。
【0044】
図9において、本実施例においてもレシーバは、器体31と、ガイドブロック32とから構成されている。この実施例に用いたガイドブロック32は、実施例2に用いたものと同じである。すなわち、上縁に大径の受光口35、下縁に小径の透光口36がそれぞれ開口された中空逆6角錐形の成形体であり、器体31の開口内には、ガイドブロック32が最稠密配列で縦横方向に配列され、器体31の開口全面にハニカム状の受光面CPを形成し、互いに隣接するガイドブロック間に囲まれた空間を低温保熱領域LZ、ガイドブロック32の下方に形成される器体31内の空間を高温加熱領域HZに区画している。
【0045】
本実施例3においては、器体31の受光面CPに配列されたガイドブロック32の直下の高温加熱領域HZに平板状の高温熱吸収プレート(例えば炭化ケイ素板)33を配設し、その裏面(下面)に接して一定厚みの蓄熱体37を積層し、蓄熱体37の層の内部に高温吸熱配管34を設置している。
【0046】
蓄熱体37は例えばグラファイト、高熱伝導性セラミックスその他の高熱伝導材料である。図9においては、高温吸熱配管34が蓄熱体37の層内に埋め込まれている様子を分かりやすく図示するために、高温吸熱配管34をつづら折りに上下に折り返して蓄熱体37の層内に埋設した例を図示しているが、蓄熱体37は器体31の形状にあわせた円柱状のため、高温吸熱配管34は、渦巻き状の配管あるいはつづら折りの配管を互いに連結して上下段に配置して蓄熱体の横断面に密に埋設されているものである。高温吸熱配管34の下端開口が流体の流入口34aであり、上端開口が加熱流体の送出口34bである。
【0047】
実施例において、太陽光の集光ビームは、各ガイドブロック32を通して高温熱吸収プレート33を照射し、その熱が蓄熱体37に伝えられ、蓄熱体37の層内へは上層から下層に伝熱浸透し、蓄熱体37の層内に蓄熱される。一方、熱媒体は、下端の流入口34aから高温吸熱配管34内に流入し、蓄熱体37の層内を下層から上層にむけて繰り返し層内を流動する間に蓄熱体37の熱が伝導されて高温に加熱され、高温流体となって上端の送出口34bから前実施例と同様に熱交換器の放熱部に向けて送りこまれる。
【0048】
本実施例によれば、蓄熱体37には一定の厚みがあり、その上層部分は高温熱吸収プレートを通して高温に熱せられるが、下層になるほど高温熱吸収プレートからの熱の影響が小さくなり、急激な熱勾配の層(サーモクライン)より下層において、蓄熱温度は流入口34aからの流体温度へと低下する。図10は、低温保熱領域LZの温度にある熱流体を、それよりも低い温度の蓄熱体37の層に通過させ、熱交換することにより、低温保熱領域LZの回収熱を蓄熱体37に貯めて、蓄熱効率を高める例である。
【0049】
この実施例では、低温保熱領域LZの温度よりやや低い温度となる蓄熱体37の蓄熱層内に少なくとも1巻きの蓄熱補助管38を埋設し、その流体送入口38aと、前実施例と同様にガイドブロック42の外壁に形成された流体通路41の上縁開口とをチューブ39でつなぎ、流体送出口38bと、流体通路41の下縁開口とをチューブ40によって連通させたものである。
【0050】
これによって、ガイドブロック32の下縁から流体通路41内に空気が流入し、流体通路41内で低温保熱領域LZの温度に加熱された空気が上縁開口からチューブ39を介して蓄熱補助管38内に流入し、蓄熱体37の低温層部分での熱交換によって低温化した後に、流出口38bからチューブ40内に流出し、ガイドブロック内の空気とともに、ガイドブロックの下縁から流体通路41内に流入して循環を繰り返す。
蓄熱体37の蓄熱補助管38近傍の低温層部分には、下端の流入口34aからの低温熱流体が高温吸熱配管34に供給されており、この熱流体は蓄熱補助管内を流動する低温保熱領域の回収熱からなる熱流体との間での熱交換によって加熱され、さらに、高温吸熱配管34を通じて蓄熱体上層部分に移動して蓄熱高温度での熱平衡状態に達する。このようにして蓄熱高温度までに加熱した熱媒体の流体を熱交換器の放熱部に供給することができる。
【0051】
本発明によるレシーバは、ビームダウン集光系に適用することにより、全方位フィールドに対し、一つのキャビティ型レシーバとして活用されるものである。レシーバの器体内には、後側(下段)に高温領域、前側(上段)に低温領域が形成され、器体内には上昇気流が発生し、その一部はガイドブロックの透光口から受光口を経て外部に放散されるが、その大部分は、ガイドブロックの開口縁間で塞がれた低温領域内で循環するため、この気流発生によるトータルとしてのエネルギーロスは少ない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、集光した太陽熱エネルギーを化学反応の吸熱反応に利用した燃料生産や、安定した発電電力の供給が可能となり、さらには、一酸化炭素からメタノールを合成する技術に適用してメタノール製造工程における二酸化炭素の排出を大幅に削減することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1,21,31 器体、2,22,32 ガイドブロック、3,24,34 高温吸熱配管、4 低温保熱配管、5,25,35 受光口、6,26,36 透光口、7 熱交換器、11,20 レシーバ、12 タワー、13 リフレクター、14 ヘリオスタット、23,33 高熱吸収プレート、29 流体通路、37 蓄熱体、38 蓄熱補助管、LZ 低温保熱領域、HZ 高温加熱領域、CP 受光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器体内にガイドブロックを有し,太陽光ビームダウン集光システムの集光位置に設置して全方位タワー集光システムを構成するキャビティ型レシーバであって、
器体は、レシーバのキャビティを構成する中空箱体であり、
ガイドブロックは、器体の開口全面に縦横に配列して太陽光の集光ビームを受け入れる受光面を形成するとともに、器体内を前側の低温保熱領域と後側の高温加熱領域とに区画するものであり、
低温保熱領域は、隣接するガイドブロック間に形成され、器体内に受光した太陽光の熱の外部への放散を抑制して周辺部へ逃がさない領域であり、
高温加熱領域は、器体の開口全面から各ガイドブロック内を通して器体内に受光した太陽光の集光ビームを受け入れ、熱交換器の熱媒体を加熱する領域であることを特徴とする太陽光ビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。
【請求項2】
前記低温保熱領域は、前記高温加熱領域に送りこむ熱媒体を予熱する領域であり、
前記高温加熱領域は、前記低温保熱領域内で予熱された熱媒体を加熱する領域であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。
【請求項3】
前記ガイドブロックは、前縁に大径の受光口、後縁に小径の透光口がそれぞれ開口された中空逆6角錐形の成形体であり、中空成形体の内壁は反射面となっており、器体の開口内に、最稠密配列で配列されて器体の開口内にハニカム状の受光面を形成しているものであることを特徴とする請求項1に記載の太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。
【請求項4】
前記器体の開口内に配列されたガイドブロックのうち、任意のガイドブロックと、当該ガイドブロックに隣接する他のガイドブロックとの間には、その上縁間が閉止され、下方に向けて開拡し、下縁が開放された角錐形の空間が形成され、
前記低温保熱領域は、互いに隣接するガイドブロック間に囲まれた空間であり、
前記高温加熱領域は、ガイドブロックの後方に形成される器体内の空間であることを特徴とする請求項3に記載の太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。
【請求項5】
前記高温加熱領域内には、高温吸熱配管が設置され、
前記高温加熱領域には、高温吸熱配管が並列に配管され、
前記高温吸熱配管は耐熱性の配管であり、熱交換器の吸熱部として管内には熱媒体となる流体が充填され、ガイドブロック上縁の大径の受光口から下縁の小径の透光口を透過して入射してくる太陽光の集光ビームの照射を受け、集光ビームによって、配管内で加熱された流体を熱交換器の放熱部に送り込むものであることを特徴とする請求項1又は3のいずれか1に記載の太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。
【請求項6】
前記高温加熱領域に、平板状の高温熱吸収プレートを有し、
前記平板状の高温熱吸収プレートは、太陽光の集光ビームの照射を受けて加熱されるものであり、その裏面に接して高温吸熱配管が設置され、
前記高温吸熱配管は、前記高温熱吸収プレートから受熱して加熱された配管内の熱媒体を熱交換器の放熱部に送り込むものであることを特徴とする請求項1又は3のいずれか1に記載の太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。
【請求項7】
前記高温加熱領域に、平板状の高温熱吸収プレートを有し、
前記平板状の高温熱吸収プレートは、太陽光の集光ビームの照射を受けて加熱されるものであり、その裏面に接して蓄熱体が積層され、
前記蓄熱体は、平板状の高温熱吸収プレートから伝導された熱を受熱して蓄熱するものであり、蓄熱体の層の内部に高温吸熱配管が設置され、
前記高温吸熱配管は、蓄熱体から受熱し、配管内の熱媒体を加熱して熱交換器の放熱部に送り込むものであることを特徴とする請求項1又は3のいずれか1に記載の太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。
【請求項8】
前記低温保熱領域内には、低温保熱配管が配管され、
前記低温保熱配管は、前記低温保熱領域内の熱を吸収し、管内を流動する熱媒体を予熱し、予熱された熱媒体を高温吸熱配管に送りこむための通路であることを特徴とする請求項2に記載の太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。
【請求項9】
前記ガイドブロックの各外壁には、ガイドブロック内および低温保熱領域内の熱を吸収する予熱通路を有し、
前記予熱通路は、その下縁開口を通してガイドブロック内から空気を引きこみ、通路内を通過する間にガイドブロックおよび低温保熱領域の有する熱によって予熱され、熱媒体として高温吸熱配管に供給する通路であることを特徴とする請求項5に記載の太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。
【請求項10】
前記ガイドブロックの各外壁には、ガイドブロック内および低温保熱領域内の熱を吸収する予熱通路を有し、
前記予熱通路は、その下縁開口を通してガイドブロック内から空気を引きこみ、通路内を通過する間にガイドブロックおよび低温保熱領域の有する熱によって予熱され、
前記蓄熱体は、少なくとも1巻きの蓄熱補助管を有し、
前記蓄熱補助管は、保温領域の温度よりやや低い温度となる個所の層内に埋設され、
前記蓄熱補助管は、前記ガイドブロックの外壁に形成された予熱通路内で低温保熱領域の温度に加熱された熱流体と蓄熱体の低温層部分との間で熱交換させるものであることを特徴とする請求項7に記載の太陽光のビームダウン集光システムのキャビティ型レシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−63086(P2012−63086A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208051(P2010−208051)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】