説明

太陽光発電フィルム

【課題】高い発電効率を維持しながら、透明性と遮熱効果を有する太陽光発電フィルムを提供すること。
【解決手段】一対のプラスチックフィルムと、前記一対のプラスチックフィルム間に設けられた有機太陽電池部と、前記有機太陽電池部の受光面側において前記プラスチックフィルムよりも外側に設けられた粘着剤層とを備え、前記有機太陽電池部が、青色又は緑色の有機色素及びフラーレン誘導体を含有するバルクへテロ接合型の光電変換層を有し、前記光電変換層の厚みが100〜200nmである太陽光発電フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感型太陽電池又は有機薄膜太陽電池に代表されるような、比較的薄い太陽電池が開発されている。例えば、特許文献1には、両面から光の入射を可能とすることで発電効率の向上等を図った透明フィルム型太陽電池モジュールが開示されている。特許文献2には、フィルムの間に電極層及び電解液を封入した、可撓性の色素増感型太陽電池が開示されている。また、特許文献3には、2つの電極の間に光電材料を含む典型的な光電セル(サンドイッチ型)であって、露光側にメッシュ電極を利用した色素増感太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−243989号公報
【特許文献2】特開2005−056627号公報
【特許文献3】特表2006−523369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
意匠性や採光の目的で、壁面をガラス張りにした建物の他、ガラス製の屋根や天井を有する建造物が増加している。これら建造物のガラスに、薄型の太陽電池を取り付けることができれば、太陽光を効果的に利用して発電することができる。しかし従来の薄型の太陽電池では、発電に用いる色素化合物のため、太陽電池の色が濃くなる傾向があり、建造物のガラスに取り付けたり貼付したりすると、視界が遮られる、室内の採光が不足する、あるいは建造物の外観が悪くなるという問題がある。
【0005】
また、ガラスを多用した建造物や車両では、太陽光により室内の温度が上昇するという問題がある。
【0006】
さらに、太陽電池に使用される色素は、太陽光のうち特定の波長を吸収することにより、太陽電池本体が熱を吸収する傾向がある。このような太陽電池をガラスに貼りつけて使用すると、ガラスが熱くなって割れる(熱割れ)という問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、高い発電効率を維持しながら、視界や室内の採光を妨げない透明性、及び室内の温度低下に寄与しガラスの熱割れを防止する遮熱効果を有する太陽光発電フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一対のプラスチックフィルムと、一対のプラスチックフィルム間に設けられた有機太陽電池部と、有機太陽電池部の受光面側においてプラスチックフィルムよりも外側に設けられた粘着剤層とを備え、有機太陽電池部が、青色又は緑色の有機色素及びフラーレン誘導体を含有するバルクへテロ接合型の光電変換層を有し、光電変換層の厚みが100〜200nmである、太陽光発電フィルムを提供するものである。
【0009】
上記構成の有機太陽電池部を備えることにより、高い発電効率を維持しながら、透明性と遮熱効果を有する太陽光発電フィルムを提供できる。また、太陽光発電フィルムは粘着剤層を備えるため、建物のガラス等にそのまま貼付することができ、地震や災害等によりガラスが破損した場合に、ガラスの飛散や落下を防止することができる。
【0010】
本発明の太陽光発電フィルムは、可視光線の透過率が20〜40%であることが好ましい。可視光線の透過率が20%以上である場合、太陽光発電フィルムの透明性を確保でき、太陽光発電フィルムを窓ガラス等に貼り付けても視界や室内の採光が妨げられずに済む。可視光線の透過率が20%未満である場合、遮熱効果が十分でなく、室内の温度を十分に下げることができない。また、可視光線の透過率が40%を超えると、十分な発電効率が得られにくくなる傾向がある。
【0011】
本発明の太陽光発電フィルムは、プラスチックフィルムと粘着剤層との間に設けられた赤外線反射層を更に備えることができる。この場合、太陽光のうち赤外線を効果的に反射させることが可能なため、遮熱効果をより高められる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い発電効率を維持しながら、透明性と遮熱効果を有する太陽光発電フィルムを提供できる。さらに、本発明によれば、ガラスの飛散や落下を防止する機能(ガラス飛散防止機能)を有する太陽光発電フィルムを提供できる。さらにまた、本発明によれば、被着体から剥離することができ、被着体の現状復帰をすることが可能な太陽光発電フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る太陽光発電フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の太陽光発電フィルムの好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。図面において、同一の要素については同一の符号を付し、同一の要素の符号の一部は省略する。太陽光発電フィルムの寸法比は図面に示すものに限定されない。
【0015】
図1は、太陽光発電フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す太陽光発電フィルム100は、対向する一対のプラスチックフィルム20a、20bと、かかる一対のプラスチックフィルム間に設けられた有機太陽電池部10と、有機太陽電池部10の受光面S1側においてプラスチックフィルム20bよりも外側に設けられた赤外線反射層30と粘着剤層40とを備える。太陽光発電フィルム100は、粘着剤層40を窓ガラス等のような被着体に貼着して使用する。太陽光発電フィルム100の厚み方向における可視光線の透過率は、好ましくは20〜40%である。
【0016】
一対のプラスチックフィルム20a及び20bは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又はポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを含む。すなわち、一対のプラスチックフィルムのうち、少なくともいずれか一方が、PETフィルム又はPENフィルムである。当該プラスチックフィルム基材は、引張り張力で約100N/25mm以上、伸び率で約60%以上の強度を有するものを使用することが、飛散防止の観点から好ましい。当該一対のプラスチックフィルムは互いに同じ素材であっても、異なる素材であっても良い。例えば、一対のうちいずれかがPET又はPENフィルムであり、他方がPENフィルムである場合、一対のいずれもがPETフィルム、あるいはいずれもがPENフィルムである場合を挙げることができる。「他の素材のフィルム」としては、例えば、シンジオタクチックプリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、又は透明ポリイミド(PI)等からなるフィルムを挙げることができる。
【0017】
各プラスチックフィルム20aまたは20bの厚さはとくに限定されない。各プラスチックフィルムの厚さが同一であっても異なっていてもよい。具体的には、各プラスチックの厚さを、たとえば、約50μm以上、かつ約500μm以下、約200μm以下、または約100μm以下とすることができる。ガラス飛散防止の観点から、好ましくは約50μm以上とすることができる。
【0018】
粘着剤層40とは反対側のプラスチックフィルム20aの外側の表面には、必要に応じて、耐擦傷性向上などのために耐擦傷性コーティングを施したり、保護フィルムを積層することができる。これら耐擦傷性コーティングまたは保護フィルムとしては、装飾フィルムやガラス飛散防止フィルムの分野で公知のプラスチックフィルム又はコーティングを用いることができる。
【0019】
次に、有機太陽電池部10について順に説明する。
【0020】
本実施形態に係る有機太陽電池部10は、図1に示すように、受光面S1を有する光電変換層1と、光電変換層1の受光面S1側に設けられた導電層2bと、導電層2bの光電変換層1とは反対側の面に設けられたグリッド電極3と、光電変換層1の受光面S1と反対側の面S2に設けられた導電層2aと、導電層2aの光電変換層1とは反対側の面に設けられた透明電極層4と、透明電極層4の導電層2aとは反対側の面に設けられた基材層11を有する。
【0021】
光電変換層1は、電子受容性材料(n型有機半導体)及び電子供与性材料(p型有機半導体)の混合物から形成されたバルクヘテロ接合型の光電変換層である。
【0022】
n型有機半導体は、電子受容体としての機能を有するフラーレン誘導体であれば特に限定されるものではない。中でも、フラーレン(C60)と、これを置換するアリール基及び脂肪酸アルキルエステル基を含む置換基とを有するフラーレン誘導体が好ましい。特に、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)が好ましい。
【0023】
p型有機半導体としては、青色又は緑色の有機色素を用いることができる。ここでいう青色の有機色素は、波長450〜495nm以外の光を吸収する色素をいう。このような色素として、具体的にはたとえば、下記化学式(1)に示すポリマ(PB3OTB)を挙げることができる。また、ここでいう緑色の有機色素は、波長が495〜570nm以外の光を吸収する色素をいう。緑色の有機色素としては、下記化学式(2)に示すポリマ(APFO Green1)または下記化学式(3)に示すポリマ(APFO Green2)を好ましいものとしてあげることができる。青色又は緑色の有機色素は、一種類または二種類以上を混合して用いることができる。このとき、さらに他の色素を混合してもよい。光電変換層1で用いる、電子受容性材料(n型有機半導体)及び電子供与性材料(p型有機半導体)の好ましい組み合わせとして、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)と下記化学式(1)に示すポリマ(PB3OTB)、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)と下記化学式(2)に示すポリマ(APFO Green1)、および、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)と下記化学式(3)に示すポリマ(APFO Green2)を挙げることができる。
【0024】
青色又は緑色の有機色素を用いることにより、450〜495nm以外の波長および/または495〜570nm以外の波長を有する光を吸収するため、太陽光発電フィルムにより、熱を吸収(遮熱効果)し、太陽光の熱による室内の温度上昇を防ぐことができる。さらに、フラーレン誘導体と青色又は緑色の有機色素とを用いることにより、遮熱効果はより大きくなる。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
【化3】

【0028】
光電変換層1の厚みは、100〜200nmである。光電変換層1の厚みが100nm未満である場合、太陽光発電フィルムの透明性を維持しながら高い光電変換率を確保するのが難しくなる傾向があり、また遮熱効果も低下するので室内の温度を十分に下げることができなくなる。一方、光電変換層1の厚みが200nmより厚い場合、太陽光発電フィルムの透明性が低下して、視野が低下しまた、より多くの熱を吸収することになるため被着体であるガラスが熱割れを起こす可能性がある。すなわち、光電変換層1の厚みが上記範囲にあることで高い光電変換率を確保しながら透明性を維持し、十分な遮熱効果を有する太陽光発電フィルム100を提供できる。
【0029】
光電変換層1は、受光面S1と、受光面と反対側の面S2を有する。受光面S1とは、図1に示されるように、被着体である窓ガラスG側の面、すなわち主に太陽光L1を受ける面を示す。そして、受光面と反対側の面S2とは、S1と反対側の面を示す。しかし、太陽光発電フィルムは透明性を有するので、S1側のみならずS2の側からも室内の照明器具等による光や太陽光の散乱光L2を受けて発電に利用することができる。
【0030】
導電層2aおよび2bは、光電変換層1に設けられる導電性高分子からなる層である。図1に示す実施形態においては、光電変換層1の両側に導電層2aおよび2bが設けられているが、かかる形態に限定されず、例えばグリッド電極3側の導電層2bは省略して、光電変換層1に直接グリッド電極3を設けることも可能である。導電性高分子は、太陽光発電フィルムの透明性を維持するため、透明性を有するものが好ましい。このような導電性高分子としては、例えば太陽電池の対向電極として用いられる導電性の高分子を用いることができ、とくに限定されない。具体的には、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリ4−スチレンスルホン酸(PSS)との混合物を用いることができる。
【0031】
グリッド電極3は、発電した電流を集めて太陽光発電フィルム100の外部に取り出す機能を有する。グリッド電極3の材料としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、及び白金(Pt)等が挙げられる。中でも、比抵抗が低く、コストが抑えられる点から銀を好ましいものとして挙げることができる。
【0032】
グリッド電極3は、グラビア印刷法などにより、格子状(グリッド)に設けることができる。グリッドを構成する線の太さは、とくに限定されないが、例えば約10μm〜約50μmとすることができる。またグリッドのピッチ(格子間の距離)は、とくに限定されないが、太陽光フィルムの透明性、意匠性の観点から、例えば、約200μm〜約300μm(グリッド線間の内側、線を含まない距離)とすることができる。
【0033】
透明電極層4は、発電した電流を集めて太陽光発電フィルム100の外部に取り出す機能を有する。透明電極層4に用いられる透明電極としては、有機太陽電池に通常用いられているものから適宜選択することが可能であり、特に限定されない。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウムなどの金属、黒鉛、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素又はTIO、SnO、ZnO、Nb、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、インジウム塩酸化亜鉛(IZO)、酸化スズ、酸化亜鉛、アンチモンをドープした酸化スズなどの導電性金属酸化物などを用いることができる。中でもインジウム−スズ複合酸化物(ITO)、またはインジウム塩酸化亜鉛(IZO)を好ましいものとして用いることができる。
【0034】
透明電極層4の表面抵抗は、例えば、約15Ω/□以下、または約10Ω/□以下であることが好ましい。透明電極層4の厚さはとくに限定されないが、例えば約10nm〜約15000nm、約20nm〜約5000nm、または約30nm〜約500nmとすることができる。
【0035】
透明電極層4は、例えば基材層11にスパッタリングや真空蒸着などにより設けることができる。
【0036】
本明細書中において、「透明」とは、太陽光又は人工照明光を透過すること、例えば約380nm〜780nm波長の可視光領域における平均光線透過率が約5%以上であることをいう。
【0037】
基材層11は、有機太陽電池部10の基体となるものである。基材層11の素材は、とくに限定されないが、例えば上述の一対のプラスチックフィルムと同様のプラスチックフィルムを用いることができる。
【0038】
基材層11の厚さは、とくに限定されないが、例えば約50μm〜約250μmとすることができる。
【0039】
太陽光発電フィルム100は、有機太陽電池部10の受光面S1側に設けられた赤外線反射層30及び粘着剤層40を有する。
【0040】
赤外線反射層30は、太陽光のうち赤外線を選択的に反射する層である。赤外線反射層30としては、例えば、特表平11−508380号公報に開示されている透明多層デバイスを用いることができる。この透明多層デバイスは、例えば、第1のポリマ材料の層と、第2のポリマ材料の層とを含む多層ポリマフィルムである。第1および第2のポリマ材料の屈折率の差は、3つの互いに垂直な軸の第1の軸に沿って約0.05未満であることが好ましい。第1および第2のポリマ材料の屈折率の差は、該3つの互いに垂直な軸の第2の軸に沿って少なくとも約0.05であることが好ましい。該3つの互いに垂直な軸の該第1の軸は、多層ポリマフィルムの面に直交する。より具体的には、この多層ポリマフィルムは、例えば、半結晶質のナフタレンジカルボン酸ポリエステルの層と、所定の他のポリマの層とから構成される。ナフタレンジカルボン酸ポリエステルの層が、他のポリマの層よりも、面内の少なくとも1つの軸に関して大きい屈折率を有することが好ましい。好ましい半結晶質のナフタレンジカルボン酸ポリエステルとしては、例えば、2,6−ポリエチレンナフタレート(「PEN」)が挙げられる。特に好ましい所定の他のポリマとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)が挙げられる。好ましくは0.5μm以下である。多層ポリマフィルムは、少なくとも1つの方向に延伸され、かつ延伸前のその方向の寸法の少なくとも2倍の長さに引き伸ばされていてもよい。
【0041】
本発明においては、光電変換層が遮熱効果を有するため、赤外線反射層30を設けなくても、室内の温度低下及び熱割れ防止に寄与することができる。そして赤外線反射層30を設けることにより、さらに赤外線(主に850〜1100nmの光)をカットすることができるので、遮熱効果がさらに付与され太陽光による室内の気温上昇をより抑えることが可能となる。
【0042】
粘着剤層40は、太陽光発電フィルム100の最外層に設けられ、太陽光発電フィルムをガラス等の被着体に貼着するための層である。粘着剤層40は、従来公知の粘着剤を使用することができる。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン粘着剤、及びポリウレタン系粘着剤等を挙げることができる。中でも、耐候性の観点からアクリル系粘着剤が好ましい。
【0043】
粘着剤層40の外側には、さらに太陽光発電フィルムを使用する際に剥離可能な、剥離ライナーを設けることができる。
【0044】
粘着剤層40は、公知の方法で有機太陽電池部10に、直接あるいは赤外線反射層30を介して設けることができる。例えば、剥離紙上に設けられた粘着剤を、赤外線反射層30にドライラミネートしたのち剥離紙を剥がすことにより設けることができる。
【0045】
粘着剤層40は、ガラス破損時にガラスが飛び散らないために充分な接着力や粘着力を有することが好ましい。具体的には、JIS A5759に示された方法で、約4.0N/25mm以上の剥離力を有するものを用いることができる。
【0046】
粘着剤層40の厚さは、とくに限定されないが、例えば約30μm〜約300μmとすることができる。
【0047】
太陽光発電フィルム100の厚さは、ガラス等の被着体に貼付または剥離する際の作業性や有機太陽電池部を安全に保持できる程度であればよくとくに限定されない。具体的には例えば、約100μm〜約2000μm、約180μm〜約1600μm、または約200μm〜約500μmとすることができる。
【0048】
以上、太陽光発電フィルム100の実施形態について説明したが、本発明の太陽光発電フィルムはこの実施形態に限定されない。
【0049】
太陽光発電フィルムは、上述の各部の作成方法を含めて、公知の方法により作成することが可能である。具体的な作成方法の例は実施例に示すとおりである。
【0050】
太陽光発電フィルムは、建物や車両等の、窓、ドア、壁面、又は天井等のガラス等、パーティション等のガラス等の被着体に貼りつけて使用することができる。この際、太陽光、室内の照明、室内の太陽光の散乱光等を利用して発電し、透明電極層4とグリッド電極3から取り出した電力を、公知の電流電圧変換回路、蓄電池等を利用して充電、利用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
図1は、実施例1で作成する太陽光発電フィルム100を示す模式断面図である。図1を参照しながら、太陽光発電フィルム100の製造方法について説明する。
【0053】
有機太陽電池部の作成(有機太陽電池(OPV)タイプ)
まず、125μm厚の透明ポリエステルフイルム基材11上に、透明電極層4としてのITO膜(表面シート抵抗10Ω/□)をスパッタリングにより蒸着し、アセトンで洗浄後得られたITO膜の上に、PEDOT:PSS(ポリ(3,4)―エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネイト)の水分散液(Bayer社製、Baytron P)を塗布し、120℃で10分乾燥させて、厚さ80nmの導電層2aを形成した。得られた導電層2aに、APFO Green 1(化学式(2)のポリマ)及びPCBM([6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル)(重量比1:4)をクロロホルムとトルエンの混合液(重量比1:1)に溶解した溶液を塗布し、90℃で10分間乾燥させて、厚さ100nm(乾燥後)のバルクへテロ接合型の光電変換層1を形成した。
【0054】
得られた光電変換層1の上から再度PEDOT:PSS(ポリ(3,4)―エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネイト)の水分散液(Bayer社製、Baytron P)を塗布し、120℃で10分して厚さ80nm(乾燥後)の導電層2bを形成した。さらに導電層2b上に、グラビア用導電性銀インク(東洋インク社製)を用い、グリッド線の太さが25μm、グリッドのピッチ(グリッド線の内側の距離)が250μmのマイクログリッドをグラビア印刷で印刷してグリッド電極3を形成し、有機太陽電池部10を得た。
【0055】
太陽光発電フィルムの作成
50μmのPETフイルム(帝人デュポンフィルム社製)を2枚用意し、各々のフィルムの一方の面にSiOをスパッタリングし(防湿性付与)、他方の面に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製 #3000−1)をメチルエチルケトン(MEK)とトルエンの混合溶媒(MEK:トルエン=1:1(重量比))に溶解した溶液を塗布し、乾燥して厚さ20μm(乾燥後)の粘着剤層を形成した。この粘着剤層を介して、2枚のPETフィルムを上記で得られた有機太陽電池部の両面に貼り合わせた。
【0056】
さらに、有機太陽電池部の受光面S1側のPETフィルムに、3M Scotchtint Nano90フィルム(赤外線反射層30、住友スリーエム社製)を貼り合わせ、更ににアクリル系粘着剤(スリーエム製粘着剤転写テープ)をドライラミネートにより積層して粘着剤層40(厚さ125μm)を形成し太陽光発電フィルム100を作成した。電極はITO膜(透明電極層)及び銀ペーストのマイクログリッド(グリッド電極)からバスバーにより取り出した。
【0057】
(実施例2)
3M Scotchtint Nano90フィルムを貼り合わせないこと以外は、実施例1と同様に太陽光発電フィルムを作成した。
【0058】
(実施例3)
光電変換層1の厚さを100nmから150nmに変更したこと以外は実施例2と同様に太陽光発電フィルムを作成した。
【0059】
(実施例4)
光電変換層1の厚さを100nmから200nmに変更したこと以外は実施例2と同様に太陽光発電フィルムを作成した。
【0060】
(実施例5)
p型有機半導体のドナー材料であるAPFO Green 1(化学式(1)のポリマ)を、PB3OTP(化学式(1)のポリマ)に変更したこと以外は実施例4と同様に太陽光発電フィルムを作成した。
【0061】
(比較例1)
p型有機半導体のドナー材料であるAPFO Green 1(化学式(2)のポリマ)を、下記化学式(4)に示す赤色の有機色素であるPTPTBに変更したこと以外は実施例4と同様に太陽光発電フィルムを作成した。
【0062】
【化4】

【0063】
(比較例2)
グレイの染料により着色した250μmのポリエステルフイルム(東洋紡社製着色フィルム)にアクリル系粘着剤をドライラミネートにより積層して125μmの粘着剤層を形成して、着色ポリエステルフィルムと粘着剤層との積層体を作成した。
【0064】
(比較例3)
光電変換層1の厚さを100nmから80nmに変更したこと以外は実施例2と同様に太陽光発電フィルムを作成した。
【0065】
(比較例4)
太陽光発電フィルム(色素増感型太陽電池(DSSC)タイプ)
プラスチックフィルムと透明電極の積層体(ペクセルテクノロジーズ(株)社製PECP−IP)に、スリーエム社製シルクスクリーン印刷機を用いて、80mm×8mm×6列のパターン(長方形)を湿潤膜厚125μmでシルクスクリーン印刷した。インクは、TiOインク(ペクセルテクノロジーズ(株)社製PECC−K1)を用いた。30分間自然乾燥した後、さらに乾燥機で乾燥した(150℃で30分)。続いて、Ru錯体色素(ペクセルテクノロジーズ(株)社製PECD−07)0.357gを、t−ブチルアルコール:エチルアルコール:アセトニトリル=25:25:50の溶媒1000mlに溶かした色素吸着液中に、浸漬(40℃120分)して、TiOの表面に色素を吸着させた後、アセトニトリルで洗浄し自然乾燥した。
【0066】
印刷面に、上記印刷パターン(80mm×8mm×6列の長方形)と同じ形を事前に切り抜いておいたホットメルトフィルム(スリーエム社製TBF−615)を、印刷パターンと切り抜きの形が合わさるようにして重ね、ヒートシールラミネーターにより接着した。
【0067】
続いて、印刷パターンが露出しているホットメルトフィルムの切り抜き部分に電解液(電荷輸送層、ペクセルテクノロジーズ(株)社製PECE−K01)をピペッターを用いて流し込みながら、対向電極層付きプラスチックフィルム(ペクセルテクノロジーズ(株)社製 対極触媒付フィルムPECF−CAT)を、ヒートシールラミネーターで接着して太陽電池部(色素増感型)を作成した。
【0068】
粘着剤(ビッグテクノス(株)社製AR−2327)100質量部に、イソホロンジイソシアネート系架橋剤(ビッグテクノス(株)社製NV315E)1.0質量部を加えて、カウレスミキサーで攪拌後、厚さ25μmの剥離処理PETフィルム(東レフィルム加工(株)社製 セラピール)にナイフコーターを用いて、乾燥後の厚さが25μmとなるようにコーティングし、粘着剤層を作成した。
【0069】
得られた粘着剤層の表面と、上記で得られた太陽電池部の対向電極層付きプラスチックフィルムとをラミネートして太陽光発電フィルムを得た。
【0070】
(比較例5)
光電変換層1の厚さを200nmから80nmに変更したこと以外は比較例1と同様に太陽光発電フィルムを作成した。
【0071】
(比較例6)
ルテニウム錯体系色素(商品名N719、ダイソル社製)を用いたこと以外は、比較例4と同様にして太陽光発電フィルムを作成した。
【0072】
(比較例7)
光電変換層1の厚さを200nmから80nmに変更したこと以外は実施例5と同様に太陽光発電フィルムを作成した。
【0073】
(比較例8)
シャ−プ(株)製のシースルータイプ薄膜シリコンタイプ太陽電池を使用した。この製品は、合わせガラス(強化ガラス)に太陽電池部が挟持されていた。
【0074】
(比較例9)
富士電機製造(株)製アモルファスフイルム型太陽電池を用いて、太陽光発電フィルムを作成した。
【0075】
実施例及び比較例で得られた太陽光発電フィルムおよび積層体の粘着剤層を市販の窓ガラス(旭硝子(株)社製フロート板ガラス)に貼り付けてサンプルとし、可視光透過率、日射反射率、日射透過率、温度差、赤外線カット率、熱割れ性、飛散防止、発電効率を測定又は評価した。得られた結果を作成した太陽光発電フィルムの条件とともに表1及び表2に示す。これらの特性は、下記の評価方法により求めた。
【0076】
(a)可視光透過率;JIS R3106に準じ日立製作所製 分光光度計U−4100にて測定した
(b)日射反射率:JIS R3106に準じて日立製作所製分光光度計U−4100にて測定した
(c)日射吸収率:JIS R3106に準じて日立製作所製 分光光度計U−4100にて測定した
(d)温度差:スリーエム製スコッチティント(TM)窓用フイルム用体感デモキットMDTS001で150W電球を30分点灯した後の、サンプルを貼り付けたガラスの、電球と反対側の温度を、ガラスから100mm離した位置で測定し、通常のガラスの場合との温度差を計算した。
(e)赤外線カット率 :JIS R3106に準じて日立製作所製 分光光度計U−4100にて測定した
(f)熱割れ性:150W電球を30分点灯した後のガラスを目視で判断し、熱割れが観測されないものを「A」、熱割れが観察されたものを「C」と評価した。
(g)飛散防止:JIS R3106に準じて測定し、飛散防止性が特に優れているものを「AA」、飛散防止性が優れているものを「A」、飛散防止性が劣っているものを「C」と評価した。
(h)発電効率:以下の測定装置により、光量AM1.5、1SUNの条件で、0.28cmあたりの発電効率(η)を測定した。
使用装置:
ソーラーシミュレータ:ペクセルテクノロジーズ株式会社製PEC−L11
IVカーブアナライザー:ペクセルテクノロジーズ株式会社製PECK2400−N
使用測定ソフト:
Peccell I−V curve analyzer(ペクセルテクノロジーズ株式会社製)
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【符号の説明】
【0079】
1…光電変換層、2a,2b…導電層、3…グリッド電極、4…透明電極層、10…有機太陽電池部、11…基材層、20a、20b…プラスチックフィルム、30…赤外線反射層、40…粘着剤層、100…太陽光発電フィルム、S1…受光面、S2…受光面と反対側の面、L1…太陽光、L2…室内照明及び太陽光の散乱光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプラスチックフィルムと、
前記一対のプラスチックフィルム間に設けられた有機太陽電池部と、
前記有機太陽電池部の受光面側において前記プラスチックフィルムよりも外側に設けられた粘着剤層と、
を備え、
前記有機太陽電池部が、青色又は緑色の有機色素及びフラーレン誘導体を含有するバルクへテロ接合型の光電変換層を有し、
前記光電変換層の厚みが100〜200nmである、太陽光発電フィルム。
【請求項2】
可視光線の透過率が20〜40%である、請求項1に記載の太陽光発電フィルム。
【請求項3】
前記一対のプラスチックフィルムのうち受光面側のプラスチックフィルムと前記粘着剤層との間に設けられた赤外線反射層を更に備える、請求項1又は2に記載の太陽光発電フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−186310(P2012−186310A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48273(P2011−48273)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】