説明

太陽光発電モジュール、太陽光発電パネル、および太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板

【課題】 太陽光発電において、静電圧による絶縁破壊を防止することができる、太陽光発電モジュール等を提供する。
【解決手段】 支持体11と、支持体上で発電素子を保持するフレキシブルプリント配線板10とを備え、フレキシブルプリント配線板が、絶縁をとるための絶縁基材層1b、および、絶縁基材層に固着されて発電素子を直列に接続する金属層からなる導電層パターン1a、を有し、少なくとも導電層パターンの端縁に沿って、当該端縁と絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する絶縁破壊防止膜3を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電モジュール、太陽光発電パネル、および太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板、に関し、より具体的には、発電素子を直列接続することで高電圧が印加される配線パターンの耐絶縁破壊性能を高めた太陽光発電モジュール、太陽光発電パネル、および太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は再生可能なエネルギとして多くの国で普及が図られている。本格的な普及が開始されたばかりのため、これまでにない重大な問題が現れる。たとえば、耐絶縁破壊の問題がある。これに正面から対処する方策が示された例はほとんどないが、これに類似した技術分野には、いくつか参考になる提案がなされている。たとえば、太陽電池や配線等の絶縁が破壊され、漏電または地絡が生じる場合があり、その地絡箇所を検知する太陽光発電システムなどが提案されている(特許文献1)。また、絶縁破壊そして漏電の原因となる過酷な気象条件に耐えるための太陽光発電モジュール用保護シートなどの提案がなされている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−199443号公報
【特許文献2】特開2010−135349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の漏電等の絶縁破壊の主因は、過酷な気象条件などであり、太陽電池モジュールにおける、太陽光発電の結果、生じた高電圧ではない。太陽光発電の中には、たとえば集光型太陽光発電では、発電効率の高い化合物半導体からなる発電素子に、レンズで集光された太陽光を入射することで大きな発電能力を実現している。このような集光型太陽光発電では、多数の発電素子を直列に接続するため、太陽光発電モジュール内の特定の箇所、または太陽光発電パネルの内の特定の箇所において、電位が数百ボルトから数千ボルトに到達する。通常、発電素子の間は帯状の銅箔パターンなどで導電接続されているが、この銅箔パターンに上記の数百ボルトから数千ボルトの電位が印加される。太陽光発電パネルは筐体に形成されるが、銅箔パターンはポリイミド樹脂などの絶縁基材上に支持されており、筐体からこの絶縁基材によって絶縁されている。絶縁基材は、その厚みが数十μm程度であり、厚みが薄いために、高い静電圧によって、とくに銅箔パターンの端縁では絶縁破壊が生じやすい。
【0005】
巨大な太陽光発電設備が多くの場所で建設されようとしている今、太陽光発電装置内における電圧は、太陽光発電の形式によらず、設備が巨大化する分、高くなると考えられる。このため、静電圧による絶縁破壊は、上述の集光型太陽光発電モジュール等に限られず、対処すべき重要課題である。また、上記の数百ボルトから数千ボルトの電位が生じる設備では、実際に、絶縁破壊が生じている。
【0006】
本発明は、集光型太陽光発電を含む太陽光発電において、静電圧による絶縁破壊を防止することができる、太陽光発電モジュール、太陽光発電パネル、および太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽光発電モジュールは、発電素子を備える。この太陽光発電モジュールは、支持体と、支持体上で発電素子を保持するフレキシブルプリント配線板とを備え、フレキシブルプリント配線板が、絶縁をとるための絶縁基材層、および、絶縁基材層に固着されて発電素子を直列に接続する金属層からなる導電層パターン、を有し、少なくとも導電層パターンの端縁に沿って、当該端縁と絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する絶縁破壊防止膜を備えることを特徴とする。
【0008】
絶縁破壊を生じる放電は、電極に導通する導電層パターンの端縁、とくに下層の絶縁基材層との段差における角部先端付近で発生する傾向が強い。上記のように導電層パターンは発電素子を直列接続するので、直列段数が大きくなると、最終段近くの所定の位置において非常に高い電位になる部分が生じる。導電層パターンは、たとえば数十μm程度の厚みの絶縁基材層に固着されているので、絶縁基材層が間に介在するといっても支持体との距離は小さい。この結果、高電位の導電層パターンの端縁付近と支持体との間で放電が発生し、絶縁破壊してしまう。たとえば通常の乾燥空気の直流的な絶縁破壊電圧は3MV・m−1(3kV/mm)である。20μmの厚みの絶縁基材層が介在したとして、乾燥空気の絶縁破壊電圧は300V/20μm(15kV/mm)程度と換算されるので、多数の発電素子が直列接続された最終段近くの導電層パターンの部分では、絶縁破壊の可能性は相当高いといえる。一気に絶縁破壊に進まなくても、部分放電が続いたあと何かのきっかけで絶縁破壊に至る場合も多い。
直列接続された発電素子を載置する導電層パターン全体のどこか一箇所でも絶縁破壊が生じると、電圧が立ち上がらなくなり、発電装置として機能しなくなる。
なお、支持体は、フレキシブルプリント配線板を配置するために平面状の底板を有するものであれば、どのような形態であってもよく、たとえば平板、上面があいた偏平な直方体、などであってよい。材料も何であってもよい。支持体とフレキシブルプリント配線板との間に保護シートなどが介在していてもよい。
【0009】
上記のように、導電層パターンの端縁における下層の絶縁基材層との段差を埋めるように絶縁破壊防止膜を配置することで、空気やガス成分等の耐絶縁破壊性能が低い空気が排除されて、耐絶縁破壊性能を向上させることができる。絶縁破壊防止膜の機能は、(E1)空気の代わりに絶縁破壊電圧の高い物を配置すること、(E2)導電層パターンの端縁における局所的な急勾配の電位分布を広い範囲にわたる緩い勾配の電位勾配に変えること、などに基づく。
直列接続された発電素子によって後段ほど高電位になるが、絶縁破壊防止膜は、所定の電位以上になる領域に限って、上記の形態で配置してもよいし、電位に関係なく全領域に配置してもよい。
絶縁破壊防止膜は、上記の(E1)の場合、さらに、直流電圧または静電圧だけでなく、雷などのサージ電圧に対しても、絶縁破壊を防止するのに貢献することができる。
【0010】
絶縁破壊防止膜を、絶縁材料、および抵抗体、のうちのいずれかで形成するのがよい。
絶縁材料は、上述のように絶縁破壊電圧が高い。例を挙げると、たとえば絶縁性能が高いことで知られるポリエチレンテレフタレートでは、絶縁破壊電圧は300kV/mm、体積抵抗率は5×1018Ωcmである。このような絶縁材料は、主として上記の(E1)の働きにより、耐絶縁破壊性能を向上させることができる。(E1)の働きのうちには、部分放電を生じにくい作用も重要な要素として含まれる。絶縁材料は、樹脂でも、ガラス繊維でも、マイカ材料でも何でもよい。樹脂は、導電層パターンの端の段差を埋めるように配置するのに、取り扱いが容易であるので、好ましい。
また、抵抗体では、たとえば体積抵抗率が1kΩcm〜数十MΩcmの抵抗体を、導電層パターンの端縁から絶縁基材層にかけてその段差を埋めるように配置することで、局所的な高勾配の電位分布を、広い範囲にわたる緩和した勾配の電位分布に変えることができる。すなわち上記の(E2)の働きを主に作動させるものである。これによって、段差部の上部に位置する導電層パターンの角部に集中していた電気力線の分布を、角部の周辺部に分散させ、かつ電位勾配も緩くすることができる。これによって、耐絶縁破壊性能を向上することができる。抵抗体の材料は、適当な抵抗値を有するもので、導電層パターンの端の段差を埋めるように配置する上で取り扱いが容易な材料であれば何でもよい。たとえば、導電フィラー入り樹脂などを用いることができる。
【0011】
絶縁破壊防止膜を、導電層パターンの端縁および絶縁基材層の端部さらに支持体の面にまで、各段差を埋めるように幅をとる形態とすることができる。
上記のように広幅の絶縁破壊防止膜とすることで、導電層パターン/絶縁基材層の段差、および絶縁基材層/支持体の段差、の両方の段差を埋めることができる。このため、絶縁材料は上記(E1)の働き、抵抗体は(E2)の働きを、より確実に発揮することができる。この結果、耐絶縁破壊性能をより高くすることができる。
なお、上記の段差は、たとえば導電層パターンの端面と絶縁基材層の端面とがほとんど揃っている場合、(導電層パターン+絶縁基材層)の端面と、支持体との段差が埋められるように、絶縁破壊防止膜を配置することで、上記の働き(E1)または(E2)を得ることができる。
【0012】
導電層パターンは、絶縁基材層上において、帯状の連続部と、その連続部間の断続部とが交互に配置されており、発電素子は、該断続部に位置して、対をなす一方の電極を、断続部に面する一方側の連続部に導電接続し、他方の電極を、該断続部に面する他方側の連続部に導電接続するようにできる。
これによって、発電素子は導電層パターンによって直列接続され、後段に位置する導電層パターンの箇所ほど高電位となる。上記の絶縁破壊防止膜は、所定の電位以上の領域、または電位に関係なく全領域において、導電層パターンの端縁に沿って、当該端縁と絶縁基材層との段差を埋めるように被覆することができる。
なお、断続部は、連続部の端縁方向に直交するような矩形領域とは限らない。たとえば、一方の連続部の端縁から断続部を挟んで位置する相手側の連続部へと細く延びて、相手側はそれに応じて後退してL字状に凹み、その延びた連続部とL字状に凹んだ連続部との間のような形態(平面形状)であってもよい。また、そのような形態の断続部に逆流防止のダイオードが配置されていてもよい。ダイオードは、正常に発電している操業時には、両方の連続部を電気的に断続している。
また、断続部には、発電素子を設置するための設置部(台座、電極部など)が形成されていてもよい。設置部は、発電素子の一方の電極に導通されて一方側の連続部に導電接続する台座と、他方の電極に導通されて他方側の連続部に導電接続する電極部と、で構成される。これによって、膨大な数の発電素子の設置が非常に簡単になり、自動化なども可能になる。
【0013】
絶縁破壊防止膜は、導電層パターンの連続部および断続部にわたって、少なくとも当該導電層パターンの端縁に沿って連続して配置することができる。
発電素子付近に絶縁破壊防止膜を配置する場合、導電層パターンが途切れている断続部が存在するが、その断続部も含めて絶縁破壊防止膜を連続して配置する。これによって、絶縁破壊防止膜の配置の作業を能率よく行うことができ、かつ耐絶縁破壊性能を確実に高めることができる。
【0014】
絶縁破壊防止膜は、発電素子が配置される領域を除いて、導電層パターンの全幅を覆い、かつ該導電層パターンの両端縁における段差を埋めるように配置されているようにできる。
これによって、フレキシブルプリント配線板の製造における積層工程において、導電層パターンの端縁にのみ限定して絶縁破壊防止膜を配置するのは、比較的多くの工数を要する。これに対して、導電層パターンの両端縁も含めて全幅にわたって絶縁破壊防止膜を配置するのは、比較的簡単に実施できる。また、絶縁破壊防止という見地からも、全幅にわたって配置するほうが好ましい。とくに絶縁破壊防止膜を抵抗体で構成する場合に好ましい。
【0015】
本発明の太陽光パネルは、上記のいずれかの太陽光発電モジュールが面状に配置されていることを特徴とする。
これによって、耐絶縁破壊性能に優れた太陽光パネルを得ることができるので、太陽光発電モジュールを多段に接続して、使用や蓄電が容易な電位の高い電力を得ることができる。
【0016】
本発明の太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板は、絶縁基材層と、絶縁基材層に固着され、帯状の金属層からなる連続部と、該連続部の間の断続部とが交互に設けられた導電層パターンと、断続部に位置し、対をなす電極を備える発電素子とを備え、その発電素子は、対をなす電極の一方を、断続部に面する一方側の連続部と導電接続し、他方を、該断続部に面する他方側の連続部と導電接続していることを特徴とする。
これによって、多段に直列接続された発電素子を含むフレキシブルプリント配線板を得ることができる。絶縁破壊防止膜は、フレキシブルプリント配線板という形態において配置されず、支持体を含む太陽光モジュールが完成する段階において配置される場合がある。すなわち太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板として製造されたあと、支持体を含む太陽光モジュールが完成する段階において、はじめて絶縁破壊防止膜が形成される場合がある。上記本発明の太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板は、そのような場合も含めた形態を示すものである。
【0017】
太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板において、少なくとも導電層パターンの端縁に沿って、当該端縁と前記絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する絶縁破壊防止膜を備えることができる。
これによって、支持体と関係なく、太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線それ自体において、絶縁破壊防止膜が配置されたものとして、支持体への取り付け時または取り付け後に、絶縁破壊防止膜の配置工程を省略することができる。
【0018】
太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板において、絶縁破壊防止膜は、発電素子が配置される領域を除いて、導電層パターンの全幅を覆い、かつ該導電層パターンの両端縁における段差を埋めるように配置することができる。
これによって、フレキシブルプリント配線板の製造における積層工程において、導電層パターンの端縁にのみ限定して絶縁破壊防止膜を配置するのは、比較的多くの工数を要する。これに対して、導電層パターンの両端縁も含めて全幅にわたって絶縁破壊防止膜を配置するのは、比較的簡単に実施できる。また、絶縁破壊防止という見地からも、全幅にわたって配置するほうが好ましい。とくに絶縁破壊防止膜を抵抗体で構成する場合に好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の太陽光発電モジュール等によれば、集光型太陽光発電を含む太陽光発電において、静電圧による絶縁破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1における太陽光発電モジュールを示す図である。
【図2】図1のフレキシブルプリント配線板の部分拡大図である。
【図3】太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10の部分平面図である。
【図4】(a)は図3のIVA−IVA線に沿う断面図、(b)は導電層の端縁の拡大図、である。
【図5】実施の形態1における変形例を示し、(a)は平面図、(b)はVB−VB線に沿う断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における太陽光発電モジュールもしくはフレキシブルプリント配線板を示す平面図である。
【図7】(a)は図6のVIIA−VIIA線に沿う断面図、(b)は従来のものの断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における太陽光発電モジュール50を示す図である。この太陽光発電モジュールは、集光型である。この太陽光発電モジュール50では、支持体である収容箱11の底面11bにフレキシブルプリント配線板10が、折り返し部1箇所で折り返しながら並行に、またはU字状に、配置されている。発電素子5は、フレキシブルプリント配線板10ごとに直列接続され、このあと説明するように最終的に高い電圧を出力する。図1のモジュールでは、比較的少ない数の発電素子が直列接続されているが、より多数の発電素子が直列接続され、高電位の導電層部分が生じる傾向にある。
収容箱11の側壁の上面にはフランジ部11fが形成されて、蓋状の集光板13がそのフランジ部11f当接して固定される。集光板13には、フレキシブルプリント配線板10に固定された発電素子5に位置を合わせたフレネルレンズ13fが形成されている。発電素子5ごとに1つのフレネルレンズ13fが設けられている。集光板13はガラス板を基材として、その裏面(内側)にシリコーン樹脂膜を形成したものを用いるのがよい。フレネルレンズ13fは、このシリコーン樹脂膜に形成される。収容箱11の側壁を貫通して外部へと太陽光発電モジュール50の出力を取り出すためのコネクタ14が設けられている。
【0022】
本実施の形態では、図2に示すように、フレキシブルプリント配線板10が、発電部Gを除いて、絶縁破壊防止膜3で被覆されている。本実施の形態では、絶縁破壊防止膜3は絶縁膜で構成されている。このため本実施の形態に限定して、絶縁破壊防止膜としての絶縁膜3に、符合3を用いる。発電部Gでは、絶縁膜3には開口部3hが設けられ、光を遮断しないようにする。絶縁膜3の端は、絶縁基材層1bの上面にとどまっている。
図3は、太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10の部分平面図である。図3に示す平面図では、導電層パターン1aは、絶縁膜3の下に位置するが、識別が容易であり間違えることがないので、すべて実線で示している。この点、斜視図である図2と相違する。図2では、直線が多く、識別を容易にするために下層に位置する導電層パターン1aに対して、破線を用いて区別を容易にした。また図4(a)は図3中のIVA−IVA線に沿う断面図である。
支持体の底面11bに接して絶縁基材層1bが固定され、その絶縁基材層1b上に導電層パターン1aが固着されている。そして、少なくとも導電層パターン1aの端縁を覆い、かつ導電層パターン1aと絶縁基材層1bとの段差を埋めるように、絶縁膜3が配置されている。絶縁膜3によって被覆されていない領域は、上述のように、開口部3hであり、発電部Gまたは導電層パターン1aの断続部Dの一部に対応している。開口部3hには、発電素子の設置部5a,5bが設けられ、この設置部の台座(電極部でもある)5bに底面電極を導通させながら図示しない発電素子が搭載される。対をなす電極のもう一方は電極部5aに導電接続される。この断絶部Dを挟んで、一方の導電層と、他方の導電層とは電気的に隔てられているが、逆流防止のためのダイオード6が橋渡しのように設けられている。
【0023】
<本実施の形態のポイント>
図4(b)の拡大図に示すように、導電層パターン1aの端縁と絶縁基材層1bとの段差に面する導電層の角部Kは、突状であり、電界集中が生じやすい。絶縁破壊を生じる放電は、高電位の導電層パターン1aの端縁、とくに絶縁基材層1bとの段差部に位置する角部K先端において発生する傾向が強い。絶縁破壊の形態には、一気に絶縁破壊が生じる場合、小規模の放電を持続させながら絶縁材料の劣化の末に完全に絶縁破壊する場合などがある。導電層パターン1aは発電素子を直列接続するので、直列段数が多くなると、非常に高い電位になる導電層パターン1aの部分が生じる。直列段の最終段に近い部分では、数百ボルトから数千ボルトに達する箇所も生じる。導電層パターン1aは、たとえば10μm〜30μm程度の厚みの絶縁基材層1bに固着されているので、絶縁基材層1bが間に介在するといっても支持体の底面11aとの距離は小さい。この結果、高電位の導電層パターンの端縁角部Kと支持体11aとの間で放電が発生し、絶縁破壊してしまう。
乾燥空気の直流的な絶縁破壊電圧は3MV・m−1(3kV/mm)である。20μmの厚みの絶縁基材層1bが介在したとして、乾燥空気の絶縁破壊電圧は300V/20μm(15kV/mm)程度と換算される。発電素子を直列接続する導電層パターン1aの所定の部分では、上記のような段数が大きい直列接続の最終段近くでは、何も対策をとらずに放置すれば絶縁破壊の可能性は低くはない。むしろ高いといえる。一気に絶縁破壊に進まなくても、部分放電が続いたあと何かのきっかけで絶縁破壊に至る場合も多い。
直列接続された発電素子を載置する導電層パターン全体のどこか一箇所でも絶縁破壊が生じると、電圧が立ち上がらなくなり、発電装置として機能しなくなる。
なお、支持体は、フレキシブルプリント配線板を配置するために平面状の底板を有するものであれば、どのような形態であってもよく、たとえば平板、上面があいた偏平な直方体、などであってよい。材料も何であってもよい。支持体とフレキシブルプリント配線板との間に保護シートなどが介在していてもよい。放熱性を確保する上では、アルミニウムなどの金属で形成されるのがよい。
【0024】
本実施の形態では、導電層パターン1aの端縁と絶縁基材層1bとの段差を埋めるように絶縁膜3を配置することで、空気やガス成分等の耐絶縁破壊性能が低い気体が排除されて、耐絶縁破壊性能を向上させることができる。絶縁膜3の機能は、(E1)空気の代わりに絶縁破壊電圧の高い物を配置すること、に基づく。
直列接続された発電素子によって後段ほど高電位になるが、絶縁膜3は、所定の電位以上になる領域に限って、上記の形態で配置してもよいし、電位に関係なく全領域に配置してもよい。
なお、雷などの外部からのサージ電圧が印加された場合、上記の絶縁膜3は、無体策の場合に比べて、絶縁破壊防止に貢献することは言うまでもない。
【0025】
上述のように、絶縁基材層1bの厚みは、たとえば10μm〜30μmの範囲にある。絶縁基材層の材料には、絶縁性樹脂であれば何を用いてもよいが、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂を用いるのがよい。
また、導電層パターン1aの厚みは、たとえば2μm〜25μmの範囲にある。導電層パターン1aは、無電解めっき、電解めっき等を駆使して形成されており、無電解めっきやスパッタリングによるシード膜としてクロム膜、銅膜が0.05μm〜0.2μm積層され、そのあと電解めっきによってたとえば銅層が形成されている。
【0026】
導電層パターン1aと絶縁基材層1bとの段差を埋める絶縁膜3の材料としては、とくに限定せず、樹脂製の絶縁テープなどを用いることができる。また絶縁性樹脂層を既存の方法を用いて形成してもよい。絶縁テープまたは絶縁性樹脂層の樹脂としては、たとえば汎用性の絶縁性樹脂でよい。汎用性の樹脂のうち、たとえば絶縁破壊電圧が10kV/mm以上のものは多数、というよりはほとんどであり、このような絶縁破壊電圧が高い樹脂を用いるのがよい。これらの体積抵抗率は1011Ω・cm以上であり、太陽光発電の型式に応じて1013Ω・cm以上のものなどを用いるのがよい。
また、とくに絶縁破壊電圧が高い、ポリイミドカプトン(絶縁破壊電圧280kV/mm)、ポリエチレンテレフタレート(絶縁破壊電圧300kV/mm)、ポリサルフォン(絶縁破壊電圧300kV/mm)、ポリエーテル(絶縁破壊電圧100kV/mm)、四ふっ化エチレン−六ふっ化プロピレン共重合体(絶縁破壊電圧280kV/mm)などを用いてもよい。絶縁破壊電圧、体積抵抗率等は、JIS規格等に基づいて測定することができる。
絶縁膜3の厚みとしては、市販の絶縁テープの種類により、どのような厚みでもよい。たとえば10μm以上とするのがよい。より好ましくは導電層パターン1aの厚みより厚いほうが好ましく、20μm以上とすることもできる。
【0027】
本実施の形態におけるフレキシブルプリント配線板10は、絶縁層3を当該フレキシブルプリント配線板10に含む形態である。このため、フレキシブルプリント配線板10の製造中に、絶縁膜3を、図3および図4に示す形態で配置することができる。これにより、支持体もしくは収容箱11にフレキシブルプリント配線板を取り付けるとき、または取り付けた後、絶縁膜3を配置することは不要であり、太陽光発電モジュール作製工程を複雑にしないですむ。
【0028】
(変形例)
図5は、実施の形態1の変形例を示す太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10を示し、(a)は平面図、(b)はVB−VB線に沿う断面図である。この変形例も、本発明の太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10を例示するものである。この変形例では、絶縁膜3は、導電層パターン1aと絶縁基材層1bとの段差を埋めて、導電層パターン1aの幅中央を被覆していない。絶縁膜3の材料および厚みについては、実施の形態1での説明がそのまま当てはまる。
【0029】
<本変形例のポイント>
放電は、導電性パターン1aの端縁に集中して生じやすい。このため、図5(a),(b)に示す形態で絶縁膜を配置することで、絶縁破壊を実施の形態1の図3の場合と、同じレベルで防止することができる。この結果、耐絶縁破壊性能を確保した上で、たとえば絶縁テープを広幅から狭幅に変更することができ、たとえば絶縁テープのコストの低減を得ることができる。
【0030】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10を示す図である。また、図7(a)は、図6におけるVIIA−VIIA線に沿う断面図である。そして図7(b)は、絶縁破壊防止膜がない場合の従来のものの対応する断面図である。
本実施の形態では、フレキシブルプリント配線板10は、帯状のフレキシブルプリント配線板本体の全幅を含み、支持体11の底面11bにまで至るように、絶縁破壊防止膜3が覆っている。この絶縁破壊防止膜3は、高抵抗体もしくは抵抗体で形成される。本実施の形態では、絶縁破壊防止膜3を抵抗体とするので、抵抗体3にも同じ符合3を用いる。抵抗体3を構成する材料の体積抵抗は1kΩ・cm以上、より好ましくは100kΩ・cm以上とする。抵抗値の上限は、たとえば絶縁体と呼ばれるレベルでなければよいとする。たとえば100MΩ・cm(10V・cm)以下とするのがよい。
【0031】
<本実施の形態のポイント>
導電層パターン1aに生成される高電位Voと、接地電位Eoとが、図7(b)に示すように近接すると、その局所的な空間に大きな電位勾配すなわち大きな電界が分布する。この結果、放電が生じやすく絶縁破壊を生じやすくなる。これに対して、抵抗体3を、導電層パターン1aの全幅を含めて支持体の底面11bに至るまで被覆すると、図7(a)に示すように、導電層パターン1aに生成する高電位Voが抵抗体3に沿って、接地電位Eoまで徐々に低下する。図7(a)では、Vo→Vo/2→Vo/4、のように電位がEoに近づく状況を示している。この結果、この空間では、比較的緩い勾配の電位となり、電界もそれに応じて限定的となり、放電が生じにくくなる。
本実施の形態では、抵抗体3の機能は、主として(E2)導電層パターンの端縁における局所的な急勾配の電位分布を広い範囲にわたる緩い勾配の電位勾配に変えること、に基づく。また抵抗体が空気に比べて絶縁破壊電圧が高い材料である場合、副次的に、(E1)空気の代わりに絶縁破壊電圧の高い物を配置すること、の作用も得ることができる。
【0032】
抵抗体3の材料は、体積抵抗が上述の範囲にあり、取り扱いが容易であれば、どのようなものであってもよい。たとえば樹脂の中に導電性フィラーを均一分布させたものであってもよい。導電性フィラーとしては、カーボンブラック、ポリアニリン、金属被覆した各種の粒子、金属粒子などを用いることができる。樹脂に配合する割合を調整することで、所望の体積抵抗率を得ることができる。フレキシブルプリント配線板本体への樹脂の塗布は、既存の方法で容易に行うことができる。また、導電性フィラー含有樹脂で所望の体積抵抗率の範囲にある材料でテープを作製して、そのテープを用いてもよい。
【0033】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の太陽光発電モジュール等によれば、集光型太陽光発電を含む太陽光発電において、導電層パターンと絶縁基材層との段差を埋めるように絶縁膜を、また、また導電層パターンの端縁から支持体の底面にかけて抵抗体を配置することで、静電圧による絶縁破壊を防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1a 導電層パターン、1b 絶縁基材層、3 絶縁破壊防止膜(絶縁膜、高抵抗膜)、3h 開口部、5 発電素子、5a,5b 発電素子の設置部、6 ダイオード、10 フレキシブルプリント配線板、11 支持体(収容箱)、11b 底面、11f フランジ部、13 集光板、13f フレネルレンズ、14 コネクタ、50 太陽光発電モジュール、D 導電層の断続部、G 発電部、K 導電層の端縁角部、Vo 導電層の電位、Eo 接地電位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電素子を備える太陽光発電モジュールであって、
支持体と、
前記支持体上で前記発電素子を保持するフレキシブルプリント配線板とを備え、
前記フレキシブルプリント配線板が、絶縁をとるための絶縁基材層、および、前記絶縁基材層に固着されて前記発電素子を直列に接続する金属層からなる導電層パターン、を有し、
少なくとも前記導電層パターンの端縁に沿って、当該端縁と前記絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する絶縁破壊防止膜を備えることを特徴とする、太陽光発電モジュール。
【請求項2】
前記絶縁破壊防止膜が、絶縁材料、および抵抗体、のうちのいずれかで形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項3】
前記絶縁破壊防止膜が、前記導電層パターンの端縁および前記絶縁基材層の端部さらに前記支持体の面にまで、各段差を埋めるように幅をとっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項4】
前記導電層パターンは、前記絶縁基材層上において、帯状の連続部と、その連続部間の断続部とが交互に配置されており、前記発電素子は、該断続部に位置して、対をなす一方の電極を、前記断続部に面する一方側の連続部に導電接続し、他方の電極を、該断続部に面する他方側の連続部に導電接続していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項5】
前記絶縁破壊防止膜は、前記導電層パターンの連続部および断続部にわたって、少なくとも当該導電層パターンの端縁に沿って連続的に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項6】
前記絶縁破壊防止膜は、前記発電素子が配置される領域を除いて、前記導電層パターンの全幅を覆い、かつ該導電層パターンの両端縁における前記段差を埋めるように配置されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽光発電モジュールが面状に配置されていることを特徴とする、太陽光発電パネル。
【請求項8】
絶縁基材層と、
前記絶縁基材層に固着され、帯状の金属層からなる連続部と、該連続部の間の断続部とが交互に設けられた導電層パターンと、
前記断続部に位置し、対をなす電極を備える発電素子とを備え、
前記発電素子は、前記対をなす電極の一方を、前記断続部に面する一方側の連続部と導電接続し、他方を、該断続部に面する他方側の連続部と導電接続していることを特徴とする、太陽光発電モジュール用フレキシブル配線板。
【請求項9】
少なくとも前記導電層パターンの端縁に沿って、当該端縁と前記絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する絶縁破壊防止膜を備えることを特徴とする、請求項8に記載の太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板。
【請求項10】
前記絶縁破壊防止膜は、前記発電素子が配置される領域を除いて、前記導電層パターンの全幅を覆い、かつ該導電層パターンの両端縁における前記段差を埋めるように配置されていることを特徴とする、請求項8または9に記載の太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105786(P2013−105786A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246718(P2011−246718)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】