説明

太陽光発電モジュール、太陽光発電パネル、および太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板

【課題】 太陽光発電において、雷等の外部サージ電圧からの保護を高めた、太陽光発電モジュール等を提供する。
【解決手段】 支持体11と、支持体上で発電素子を保持するフレキシブルプリント配線板10とを備え、フレキシブルプリント配線板が、絶縁をとるための絶縁基材層1b、および、金属層からなる導電層パターン1a、を有し、導電層パターンおよび当該導電層パターンと絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する、該絶縁基材層の誘電率よりも高い誘電率を有する高誘電体膜7を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電モジュール、太陽光発電パネル、および太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板、に関し、より具体的には、外部からのサージ電圧に対する耐性を高めた、太陽光発電モジュール、太陽光発電パネル、および太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は再生可能なエネルギとして多くの国で普及が図られているが、早急に取り組まなければならない重要な課題も残されている。たとえば、雷等の外部からのサージ電圧の問題がある。この問題に関連して、太陽光発電の出力をパワーコンディショナーに送る際に設けられる接続箱において、開閉機構部に隣接してサージアブソーバを設ける構造が示されている(特許文献1)。これによれば、接続箱内に回路を形成するとき新たにサージアブソーバを組み付ける必要がなく、組み立て工程が簡略化できる。また、同様の太陽光発電モジュールの開閉器の金属ケースに、雷等の外部サージ電圧から保護するためのサージアブソーバを設ける構造が示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−199443号公報
【特許文献2】特開2010−135349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構成は、既存のサージアブソーバを開閉器のケースに取り付けることを開示するもので、たとえば太陽光発電モジュールに直接、印加されようとする外部サージから、当該太陽光発電モジュールを保護するものではない。太陽光発電装置において、太陽光発電モジュールはパネルに組み込まれて非常に大きな面積を占める。大部分の面積を太陽光発電モジュールが占めるといっても過言ではない。このため、直接かかる雷等の外部サージ電圧から、これら太陽光発電モジュールを保護する対策が不可欠である。
また、太陽光発電モジュールでは、多数の発電素子が直列接続されているため、最終段に近い電極または接続配線には、高い静電圧(直流電圧)がかかる。このため、太陽光発電由来の高い静電圧と、外部サージ電圧との両方に対してそなえておく必要がある。
【0005】
本発明は、太陽光発電において、雷等の外部サージ電圧からの保護を高めた、太陽光発電モジュール、太陽光発電パネル、および太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の太陽光発電モジュールは、発電素子を備える。この太陽光発電モジュールは、支持体と、支持体上で発電素子を保持するフレキシブルプリント配線板とを備え、フレキシブルプリント配線板が、絶縁をとるための絶縁基材層、および、絶縁基材層に固着されて発電素子を直列に接続する金属層からなる導電層パターン、を有し、導電層パターンおよび当該導電層パターンと絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する、該絶縁基材層の誘電率よりも高い誘電率を有する高誘電体膜を備えることを特徴とする。
【0007】
高誘電体は、電気的に容量成分として機能する。容量Cは誘電体の誘電率ε、厚みをdとすると、C=ε/dとなる。また、容量の交流抵抗(インピーダンス)Zは、周波数f(ω=2πf)とすると、Z=1/ωC=d/(ωε)となる。よって、周波数に対して誘電体のインピーダンスZは変化し、誘電率εが大きいと容量Cは大きく、周波数成分が高いとインピーダンスはゼロに近くなる。雷などのサージは、周波数成分に分解することができ、各周波数成分に対して高誘電体は、上記した周波数に応じた電気抵抗特性を示す。高誘電体膜が導電層パターンに沿って広く分布することで、雷などのサージ受けた場合、瞬時の巨大なサージは広く分布する高誘電体に分散され、かつサージの高周波成分は高誘電体を通して支持体等のアース系に逃がすため、サージのピーク電圧を低く抑える(緩和する)ことができる。
高誘電体膜の誘電率を絶縁基材層よりも大きくするのは、導電層パターンを被覆する高さ位置で、上記の誘電体膜の作用をより強力に発現させるためである。
なお、太陽光発電モジュールはアース系が接続されていることが前提である。アース系の一部を構成する、またはアース系が取り付けられる支持体は、フレキシブルプリント配線板を配置するために平面状の底板を有するものであれば、どのような形態であってもよく、たとえば平板、上面があいた偏平な直方体(箱体)、などであってよい。材料は何であってもよいが、通常、アルミニウムなどの金属を用いるのがよい。支持体とフレキシブルプリント配線板との間に保護シートなどが介在していてもよい。
上記の絶縁基材層/導電層パターンは、フレキシブルプリント配線板によって形成されるが、フレキシブルプリント配線板の絶縁基材層には。ポリイミド系が用いられ、ポリイミド系の比誘電率は3〜4なので、高誘電体膜はこれより大きい比誘電率を持つ。
上記の高誘電体膜は、直流電圧または静電圧に対しては絶縁材料として働き、絶縁破壊防止の作用をも発揮できる。したがって、高い絶縁破壊電圧を有する高誘電体膜を用いることで、静電圧による絶縁破壊に対しても耐性を高めることができる。
【0008】
高誘電体膜は、導電層パターンの端縁および絶縁基材層の端部さらに支持体の面にまで、各段差を埋めるように幅をとることができる。
上記のように広幅の高誘電体膜とすることで、導電層パターン/絶縁基材層の段差、および絶縁基材層/支持体の段差、の両方の段差を埋めることができる。このため、高誘電体膜は、上記の外部サージを緩和してアース系に逃がす作用を、より確実に発揮することができる。この結果、耐サージ電圧性能をより高くすることができる。
なお、上記の段差は、たとえば導電層パターンの端面と絶縁基材層の端面とがほとんど揃っている場合、(導電層パターン+絶縁基材層)の端面と、支持体との段差が埋められるように、高誘電体膜を配置することで、上記の作用を得ることができる。
【0009】
導電層パターンは、絶縁基材層上において、帯状の連続部と、その連続部間の断続部とが交互に配置されており、発電素子は、該断続部に位置して、対をなす一方の電極を、断続部に面する一方側の連続部に導電接続し、他方の電極を、該断続部に面する他方側の連続部に導電接続することができる。
これによって、発電素子は導電層パターンによって直列接続され、後段に位置する導電層パターンの箇所ほど高電位となる。外部サージ電圧による絶縁破壊は、一概には言えないが、高い静電位により小規模の放電が生じている場合など、そこには雷等のサージ電圧が印加されやすいと考えられる。上記の高誘電体膜は、所定の電位以上の領域、または電位に関係なく全領域において、導電層パターンに沿って、絶縁基材層との段差を埋めるように被覆することができる。これによって、そのような高静電位に起因する小規模の放電箇所も含めて、高誘電体膜はサージ電圧に対する耐性を向上することができる。
なお、断続部は、連続部の端縁方向に直交するような矩形領域とは限らない。たとえば、一方の連続部の端縁から断続部を挟んで位置する相手側の連続部へと細く延びて、相手側はそれに応じて後退してL字状に凹み、その延びた連続部とL字状に凹んだ連続部との間に、逆流防止のダイオードが橋渡しされていてもよい。ダイオードは、発電している操業時には、両方の連続部を電気的に断続している。
また、断続部には、発電素子を設置するための設置部(台座、電極等)を形成することができる。台座には、発電素子の一方の電極である底部電極が載置されて一方側の連続部に導電接続する。また、設置部の電極は、台座の周囲に位置して、発電素子の他方の電極に適当な接続手段で導電接続される。これによって、膨大な数の発電素子の設置が非常に簡単になり、自動化による設置なども可能になる。
【0010】
高誘電体膜は、導電層パターンの連続部では全幅、また断続部では端縁を、当該当該導電層パターンに沿って連続的に配置されるのがよい。
発電素子付近に高誘電体膜を配置する場合、発電素子の集光部を覆うことはできない。発電素子は、断続部に面する連続部を橋渡しするように配置されるので、断続部の幅の両端縁には導電層の連続部の端とくに角部が露出する。高誘電体膜は、これらの断続部の両端縁に露出する導電層(連続部)の角部をも被覆するように配置するのがよい。この結果、発電素子の集光部は、高誘電体膜の開口部から露出することになり、集光に支障をきたさない。
これによって、高誘電体膜の配置の作業を能率よく行うことができ、かつ耐サージ電圧性能を確実に高めることができる。
【0011】
さらに、高誘電体膜の幅に合わせて、高誘電体膜と導電層パターンとの間かつ高誘電体膜と絶縁基材層との間、および高誘電体膜と支持体との間、のうちの一つ以上の間に介在して、導電層パターンに沿って、少なくとも当該導電層パターンと絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する絶縁膜を備え、高誘電体膜はその絶縁膜を被覆することができる。
これによって、外部サージ電圧に対する耐性と、直列接続の発電素子の発電に由来する高い静電圧による絶縁破壊の防止と、を両方とも得ることができる。静電圧による絶縁破壊についてより詳しく説明すると、上記のように導電層パターンは発電素子を直列接続するので、直列段数が大きくなると、所定の位置において非常に高い静電位になる導電層パターンの部分が生じる。導電層パターンは、たとえば数十μm程度の厚みの絶縁基材層に固着されているので、絶縁基材層が間に介在するといっても支持体との距離は小さい。この結果、高電位の導電層パターンの端縁と支持体との間で放電が発生し、絶縁破壊してしまう。
直列接続された発電素子を載置する導電層パターン全体のどこか一箇所でも絶縁破壊が生じると、電圧が立ち上がらなくなり、発電装置として機能しなくなる。上記のように、高誘電体膜の下で導電層パターンと絶縁基材層との段差を埋めるように絶縁破壊防止膜を配置することで、耐絶縁破壊性能を向上させることができる。
高い静電圧の箇所に雷等のサージ電圧が印加されやすいか否かは一概には言えないが、高い静電圧によって絶縁性が劣化して小規模の放電が生じている場合など、サージ電圧は印加されやすいと考えられる。高誘電体膜と絶縁膜とを配置することで、このような静電圧およびサージ電圧の重畳作用に対しても耐性を高めることができる。
【0012】
さらに、高誘電体膜を覆うように、導電層パターンに沿って配置された、絶縁膜を備えることができる。
このような形態の、高誘電体膜/絶縁膜によっても、外部サージ電圧に対する耐性と、直列接続の発電素子の発電に由来する高い静電圧による絶縁破壊の防止と、を両方とも得ることができる。
【0013】
本発明の太陽光パネルは、上記のいずれかの太陽光発電モジュールが面状に配置されていることを特徴とする。
これによって、太陽光発電において大部分の面積を占める太陽光パネルに対して、雷等によるサージ電圧に対する耐性をもつことができ、さらに絶縁膜を配置されたものについては静電圧による絶縁破壊を防止することができる。
【0014】
本発明の太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板は、絶縁基材層と、絶縁基材層に固着され、帯状の金属層からなる連続部と、該連続部の間の断続部とが交互に設けられた導電層パターンと、断続部に位置し、対をなす電極を備える発電素子とを備える。そして、少なくとも連続部で、導電層パターンおよび当該導電層パターンと絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する、該絶縁基材層の誘電率よりも高い誘電率を有する高誘電体膜を備えることを特徴とする。
これによって、雷等による外部サージ電圧に対する耐性を高めた、太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板を得ることができる。太陽光発電モジュールを形成するとき、このフレキシブルプリント配線板を支持体に取り付けるだけで済むので、工数を節約することができる。
【0015】
上記の太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板において、さらに、高誘電体膜と導電層パターンとの間かつ高誘電体膜と絶縁基材層との間に介在して、導電層パターンに沿って、当該導電層パターンと絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する絶縁膜を備え、高誘電体膜はその絶縁膜を被覆する形態をとることができる。
また、さらに、高誘電体膜を覆うように、導電層パターンに沿って配置された、絶縁膜を備えてもよい。
これによって、外部サージ電圧に対する耐性と、直列接続の発電素子の発電に由来する高い静電圧による絶縁破壊の防止と、を両方とも得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の太陽光発電モジュール等によれば、雷等の外部サージ電圧からの保護を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における太陽光発電モジュールを示す図である。
【図2】図1のフレキシブルプリント配線板の部分拡大図である。
【図3】(a)は太陽光発電モジュールもしくはフレキシブルプリント配線板の平面図、(b)はIIIB−IIIB線に沿う断面図、である。
【図4】実施の形態1の変形例の太陽光発電モジュール等を示し、(a)は平面図、(b)はIVB−IVB線に沿う断面図、である。
【図5】本発明の実施の形態2における太陽光発電モジュールもしくはフレキシブルプリント配線板を示し、(a)は平面図、(b)はVB−VB線に沿う断面図、である。
【図6】実施の形態2の変形例の太陽光発電モジュール等を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における太陽光発電モジュール50を示す図である。この太陽光発電モジュールは、集光型である。この太陽光発電モジュール50では、支持体である収容箱11の底面11bにフレキシブルプリント配線板10が、折り返し部を有し、並列状に、またはU字状に、配置されている。発電素子5は、フレキシブルプリント配線板10の導電層ごとに直列接続され、このあと説明するように高い電圧を出力する。図1のモジュールでは、比較的少ない数の発電素子が直列接続されているが、より多数の発電素子が直列接続され、高電位の導電層部分が生じる傾向にある。
支持体または収容箱11の側壁の上面にはフランジ部11fが形成されて、蓋状の集光板13がそのフランジ部11f当接して固定されている。集光板13には、フレキシブルプリント配線板10に固定された発電素子5ごとに、位置を合わせたフレネルレンズ13fが形成されている。集光板13はガラス板を基材として、その裏面(内側)にシリコーン樹脂膜を形成したものを用いるのがよい。フレネルレンズ13fは、このシリコーン樹脂膜に形成される。収容箱11の側壁を貫通して外部へと太陽光発電モジュール50の出力を取り出すためのコネクタ14が設けられている。
【0019】
本実施の形態では、図2に示すように、フレキシブルプリント配線板10が、発電部Gを除いて、高誘電体膜7で被覆されている。発電部Gでは、高誘電体膜7には開口部7hが設けられ、光を遮断しないようにする。高誘電体膜7の端は、導電層パターン1aおよび絶縁基材層1bを覆って、支持体11の底面11bにまで幅をとっている。高誘電体膜7は、この幅内にある2つの段差、導電層パターン1a/絶縁基材層1bの段差、および、絶縁基材層1b/支持体底面11bの段差、を埋めている。
図3(a)は、太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10の平面図、また図3(b)はIIIB−IIIB線に沿う断面図である。なお、平面図では、導電層パターン1aおよび絶縁基材層1bは、高誘電体膜7の下に位置するが、識別が容易であり間違えることがないので、すべて実線で示している。この点、斜視図である図2と相違する。図2では、直線が多く、識別を容易にするために下層に位置する導電層パターン1aおよび絶縁基材層1bに対して、破線を用いて区別を容易にした。
【0020】
支持体の底面11bに接して絶縁基材層1bが固定され、その絶縁基材層1b上に導電層パターン1aが固着されている。そして、高誘電体膜7が、導電層パターン1aの全幅を覆い、かつ絶縁基材層1bをも覆い、支持体11の底面11bにまで届いている。その間、上述のように、導電層パターン1a/絶縁基材層1bの段差、および、絶縁基材層1b/支持体11の段差、を埋めている。高誘電体膜3によって被覆されていない領域は、上述のように、開口部7hであり、発電領域Gまたは導電層パターン3の断続部Dの一部に該当する。開口部7hには、発電素子の設置部(台座、電極など)5a,5bが設けられ、台座5bに底面電極を導通させながら図示しない発電素子が搭載される。対をなす発電素子の電極のもう一方は、台座5bと電気的に隔絶された電極部5aに導電接続される。この断絶部Dを挟んで、一方の導電層と、他方の導電層とは電気的に隔てられているが、逆流防止のためのダイオード6が橋渡しのように設けられる。
【0021】
<本実施の形態のポイント>
導電層パターン1aには、外部からのサージ電圧が印加されやすい。とくに上述のように、導電層パターン1aは発電素子を直列接続するので、直列段数が多くなると、非常に高い静電位になる導電層パターン1aの部分が生じる。その高電位により小規模の放電等が生じて絶縁性能が劣化している場合、外部からのサージ電圧が印加される場所になりやすい。また、静電位の高低に関係なく、導電層パターン1aには、表面に微細な凹凸があり、このような表面箇所に、突然のサージ電圧が印加され、一気に絶縁破壊が生じる場合も多数ある。
本実施の形態では、高誘電体膜7が、導電層パターン1a/絶縁基材層1b/支持体底面11bのフレキシブルプリント配線板付近、をカバーして、導電層パターン1aに沿って配置される。高誘電体は、上述したように、電気的に容量成分として機能する。雷などのサージは、周波数成分に分解することができ、各周波数成分に対して高誘電体は周波数に応じた電気抵抗特性を示す。高誘電体膜7が導電層パターン1aに沿って広く分布することで、雷などのサージ受けた場合、瞬時の巨大なサージは広く分布する高誘電体膜7に分散され、かつサージの高周波成分は高誘電体膜7を通して支持体等のアース系に逃がすため、サージのピーク電圧を低く抑える(緩和する)ことができる。
この結果、本実施の形態における太陽光モジュールは、雷等のサージ電圧が印加されても、絶縁破壊の損傷を受けることはない。
【0022】
高誘電体膜7の材料としては、絶縁基材層1bを形成するポリイミド、ポリアミドイミドなどの比誘電率3〜4よりも大きく、取り扱いが容易であれば何でもよい。たとえば、樹脂単体でもよいし、高誘電体のフィラーを分散した樹脂でもよい。
高誘電体のフィラーとしては、比誘電率をεと記して、TiO(ε:90)、CaTiO(ε:150)、SrTiO(ε:200)、BaTiO(ε:1500)などを挙げることができる。これらのフィラーが配合されて、全体的に比誘電率が3〜4より大きくなれば、樹脂はどのような樹脂でもよい。全体的な比誘電率の測定は、JIS使い方シリーズ「新版プラスチック材料選択のポイント第2版(2003年9月24日発行:財団法人日本規格協会)」の「1.4プラスチックの物性の評価法」によるか又はそこで引用されている、ASTM D149、D150などによって行うのがよい。
また、樹脂単体の場合、たとえばポリウレタン(ε:5.4〜7.6)、ポリフッ化ビニリデン(ε:8.4)、フェノール樹脂成形材料(木粉、綿ブロック充填でのε:5.0〜13.0)、フェノール樹脂(無充填でのε:9.8〜15.7)、ナイロン6(グラスファイバ充填でのε:4.2〜12.1)、繊維系樹脂である硝酸セルロース(ε:7.0〜7.5)などを用いることができる。樹脂単体といっても、材料が充填ざれたタイプのものは、その材料によって大きく変動する。このタイプのものでは、充填材も一種のフィラーと考えることができる。要は、フィラー入り等に関係なく高誘電体膜7として、比誘電率εが、たとえば4よりおおきければよいとして選定すればよい。
上記のフィラー入り樹脂の場合、その樹脂を溶剤に解き、高誘電体のフィラーを配合し分散させたものをスピンコート等既存の方法で塗布することができる。樹脂単体の場合も上記に準じて塗布することができる。塗布以外の方法でもよい。たとえば、上記の材料もしくはフィラーを含む高誘電体テープを作製して、これを、図3などに示すように貼着してもよい。
【0023】
(変形例)
図4は、実施の形態1の変形例を示す太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10を示し、(a)は平面図、(b)はIVB−IVB線に沿う断面図である。この変形例も、本発明の太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10を例示するものである。この変形例では、高誘電体膜7は、導電層パターン1aと絶縁基材層1bとの段差を埋めて、絶縁基材層1bの上でとどまっている。このように、支持体11の底面11bにまで延びていなくても、上記したように、高誘電体膜7が広く導電層パターン1a上に分布することで、雷等のサージ電圧は分散される。このため、絶縁基材層1bなどに絶縁破壊の損傷を与えることがない。
【0024】
本実施の形態におけるフレキシブルプリント配線板10は、高誘電体膜7を当該フレキシブルプリント配線板10に含む形態である。このため、フレキシブルプリント配線板10の製造中に、高誘電体膜7を、図4に示す形態で配置することができる。この結果、太陽光発電モジュール50の作製を、簡単にすることができる。
【0025】
(実施の形態2)
図5(a)は、本発明の実施の形態2における太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10を示す平面図、(b)はVB−VB線に沿う断面図である。本実施の形態では、高誘電体膜7と導電層パターン1aとの間に、絶縁膜3が介在している点に特徴を有する。
【0026】
<本実施の形態のポイント>
上述のように、導電層パターン1aは発電素子を直列接続するので、直列段数が多くなると、非常に高い電位になる導電層パターン1aの部分が生じる。導電層パターン1aの端縁と絶縁基材層1bとの段差に面する導電層の角部Kは、突状であり、電界集中が生じやすい。絶縁破壊を生じる放電は、高電位の導電層パターン1aの端縁、とくに絶縁基材層1bとの段差部に位置する角部K先端において発生する傾向が強い。導電層パターン1aは、たとえば数十μm程度の厚みの絶縁基材層1bに固着されているが、支持体の底面11bとの距離は小さい。この結果、従来のように何も対策をとらなければ高電位の導電層パターンの端縁と支持体11との間で、太陽光発電による静電位に起因する放電が発生し、絶縁破壊してしまう。
本実施の形態では、導電層パターン1aの端縁と絶縁基材層1bとの段差を埋めるように絶縁膜3を配置することで、静電位に対する耐絶縁破壊性能を向上させることができる。絶縁膜3としては、当然、絶縁破壊電圧が高いものがよい。
これによって、太陽光発電による導電層パターン1aの高電位による絶縁破壊(直流電圧による絶縁破壊)は、段差を埋める絶縁膜3によって、また雷等の外部サージによる絶縁破壊は、高誘電体膜7によって、両方とも防止することができる。
【0027】
絶縁膜3の材料としては、とくに限定せず、樹脂製の絶縁テープなどを用いることができる。また絶縁性樹脂層を既存の方法を用いて形成してもよい。絶縁テープまたは絶縁性樹脂層の樹脂としては、たとえば汎用性の絶縁性樹脂でよい。汎用性の樹脂のうち、たとえば絶縁破壊電圧が10kV・mm−1以上のものは多数、というよりはほとんどであり、このような絶縁破壊電圧が高い樹脂を用いるのがよい。これらの体積抵抗率は1011Ω・cm以上であり、太陽光発電の型式に応じて1013Ω・cm以上のものなどを用いるのがよい。
また、とくに絶縁破壊電圧が高い、ポリイミドカプトン(絶縁破壊電圧280kV・mm−1)、ポリエチレンテレフタレート(絶縁破壊電圧300kV・mm−1)、ポリサルフォン(絶縁破壊電圧300kV・mm−1)、ポリエーテル(絶縁破壊電圧100kV・mm−1)、四ふっ化エチレン−六ふっ化プロピレン共重合体(絶縁破壊電圧280kV・mm−1)などを用いてもよい。
絶縁膜3の厚みとしては、市販の絶縁テープの種類により、どのような厚みでもよい。たとえば10μm以上とするのがよい。より好ましくは導電層パターン1aの厚みより厚いほうが好ましく、20μm以上とすることもできる。
絶縁破壊電圧、体積抵抗率等は、上記の「1.4プラスチックの物性の評価法」によるか又はそこで引用されている、JIS K 6911、ASTM D149などによって行うのがよい。
【0028】
本実施の形態におけるフレキシブルプリント配線板10は、絶縁膜3を当該フレキシブルプリント配線板10に含む形態である。このため、フレキシブルプリント配線板10の製造中に、絶縁膜3を、図4に示す形態で配置することができる。絶縁膜3を配置した状態で、フレキシブルプリント配線板10とする。このあと、太陽光発電モジュール50に組み立てるときに、そのフレキシブルプリント配線板10を固定して、上記の高誘電体膜7を、そのフレキシブルプリント配線板10を含めて、支持体11の底面11bにまで延ばして配置することができる。
なお、高誘電体膜7については、実施の形態1に説明したことが当てはまる。
【0029】
(変形例)
図6は、実施の形態2の変形例を示す太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10を示す断面図である。この変形例も、本発明の太陽光発電モジュール50もしくはフレキシブルプリント配線板10を例示するものである。この変形例では、高誘電体膜7は、導電層パターン1aに接するように設けられ、絶縁膜3がその高誘電体膜7を覆うように位置する。この変形例におけるポイントは次のとおりである。
【0030】
<本変形例のポイント>
本変形例では、最外層に絶縁膜3が配置されているが、外部サージ電圧が印加されると、高誘電体膜7が広い範囲にわたって位置しているので、実施の形態2と同様に、当該サージ電圧は分散され、かつ波形は緩和される。このため、外部サージについては、実施の形態2(図5)と遜色なく、確実に絶縁破壊の損傷を避けることができる。
一方、直流電圧については、導電層パターン1a/絶縁基材層1bの段差を直接的に埋めるのは、高誘電体膜7である。高誘電体膜7は、しかしながら、体積抵抗は十分低く、かつ絶縁破壊電圧についても、十分高い。すなわち空気の絶縁破壊電圧3kV・mm−1に比べて、十分高く、たとえば汎用性樹脂における絶縁破壊電圧10kV・mm−1以上は間違いなく期待することができる。また、体積抵抗率1011Ω・cm以上についても問題なく達成することができる。その高誘電体膜7の上層には絶縁膜3が配置されて、実質的に分厚い絶縁膜積層体が配置されることになる。したがって、太陽光発電由来の高電位がかかる導電層箇所であっても、確実に絶縁破壊を防止することができる。
実施の形態2と、本変形例との間では、直流電圧およびサージ電圧による絶縁破壊に対する耐性について、同じであるとみることができる。
【0031】
本変形例におけるフレキシブルプリント配線板10は、高誘電体膜7を当該フレキシブルプリント配線板10に含む形態である。このため、フレキシブルプリント配線板10の製造中に、高誘電体膜7を、図4に示す形態で配置することができる。高誘電体膜3を配置した状態で、フレキシブルプリント配線板10とする。このあと、太陽光発電モジュール50に組み立てるときに、そのフレキシブルプリント配線板10を固定して、上記の絶縁膜3を、そのフレキシブルプリント配線板10を含めて、支持体11の底面11bにまで延ばして配置することができる。
高誘電体膜7および絶縁膜3については、これまで説明したことが当てはまる。
【0032】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の太陽光発電モジュール等によれば、少なくとも導電層パターンおよび絶縁基材層を覆うように、絶縁基材層よりも大きい比誘電率の高誘電体膜を配置することで、雷等のサージ電圧による絶縁破壊等の損傷を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0034】
1a 導電層パターン、1b 絶縁基材層、3 絶縁膜、3h 開口部、5 発電素子、5a,5b 発電素子の設置部、6 ダイオード、7 高誘電体膜、10 フレキシブルプリント配線板、11 支持体(収容箱)、11b 底面、11f フランジ部、13 集光板、13f フレネルレンズ、14 コネクタ、50 太陽光発電モジュール、D 導電層の断続部、G 発電部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電素子を備える太陽光発電モジュールであって、
支持体と、
前記支持体上で前記発電素子を保持するフレキシブルプリント配線板とを備え、
前記フレキシブルプリント配線板が、絶縁をとるための絶縁基材層、および、前記絶縁基材層に固着されて前記発電素子を直列に接続する金属層からなる導電層パターン、を有し、
前記導電層パターンおよび当該導電層パターンと前記絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する、該絶縁基材層の誘電率よりも高い誘電率を有する高誘電体膜を備えることを特徴とする、太陽光発電モジュール。
【請求項2】
前記高誘電体膜が、前記導電層パターンの端縁および前記絶縁基材層の端部さらに前記支持体の面にまで、各段差を埋めるように幅をとっていることを特徴とする、請求項1に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項3】
前記導電層パターンは、前記絶縁基材層上において、帯状の連続部と、その連続部間の断続部とが交互に配置されており、前記発電素子は、該断続部に位置して、対をなす一方の電極を、前記断続部に面する一方側の連続部に導電接続し、他方の電極を、該断続部に面する他方側の連続部に導電接続していることを特徴とする、請求項1または2に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項4】
前記高誘電体膜は、前記導電層パターンの連続部では全幅、また断続部では端縁を、当該当該導電層パターンに沿って連続的に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項5】
さらに、前記高誘電体膜の幅に合わせて、前記高誘電体膜と導電層パターンとの間かつ前記高誘電体膜と絶縁基材層との間、および前記高誘電体膜と前記支持体との間、のうちの一つ以上の間に介在して、前記導電層パターンに沿って、少なくとも当該導電層パターンと前記絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する絶縁膜を備え、前記高誘電体膜はその絶縁膜を被覆していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項6】
さらに、前記高誘電体膜を覆うように、前記導電層パターンに沿って配置された、絶縁膜を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽光発電モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽光発電モジュールが面状に配置されていることを特徴とする、太陽光発電パネル。
【請求項8】
絶縁基材層と、
前記絶縁基材層に固着され、帯状の金属層からなる連続部と、該連続部の間の断続部とが交互に設けられた導電層パターンと、
前記断続部に位置し、対をなす電極を備える発電素子とを備え、
少なくとも前記連続部で、前記導電層パターンおよび当該導電層パターンと前記絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する、該絶縁基材層の誘電率よりも高い誘電率を有する高誘電体膜を備えることを特徴とする、太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板。
【請求項9】
さらに、前記高誘電体膜と導電層パターンとの間かつ前記高誘電体膜と絶縁基材層との間に介在して、前記導電層パターンに沿って、当該導電層パターンと前記絶縁基材層との段差を埋めるように被覆する絶縁膜を備え、前記高誘電体膜はその絶縁膜を被覆していることを特徴とする、請求項8に記載の太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板。
【請求項10】
さらに、前記高誘電体膜を覆うように、前記導電層パターンに沿って配置された、絶縁膜を備えることを特徴とする、請求項8に記載の太陽光発電モジュール用フレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105787(P2013−105787A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246723(P2011−246723)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】