説明

太陽光発電用パワーコンディショナ

【課題】部分陰の影響によっていずれかの太陽電池ストリングのP−V特性に複数の電力ピークが現れるような場合でも、供給可能な最大出力を有効に利用することができる太陽光発電用パワーコンディショナを提供する。
【解決手段】複数の太陽電池ストリングについて、最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電力PVn1又はPVn2と、他の太陽電池ストリングの出力電力Vn1などの比率が所定の数値範囲外であり、及び/又は、最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電力Vn1又はVn2と、他の太陽電池ストリングの出力電圧V1などの比率が所定の数値範囲外であるときに、太陽電池ストリングからの出力で夏を段階的に変化させ、太陽電池ストリングからの出力電力の変化から電力ピーク点を検出し、電力ピーク点が複数存在する場合に、最も電力量の大きな電力ピーク点PVn2を動作点として制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電用パワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、太陽光発電用パワーコンディショナ50には、例えば図5に示すように、一群の太陽電池パネルの直列接続体(以下、「太陽電池ストリング」と称する)51a、51b・・・が並列に接続されている。各太陽電池ストリング51a、51b・・・は昇圧チョッパ52に接続され、所定の電圧に昇圧され、昇圧された直流電力はインバータ53により交流電力に変換される。インバータ53の出力は、さらに分電盤54に入力され、家庭用の電気機器55a、55b・・・に供給されると共に、売電用メータ(図示せず)を介して電力系統56に逆潮流される。パワーコンディショナ50には、インバータ53の出力を外部に出力するか否かを切り替えるリレー57が設けられており、インバータ53の起動に合わせてリレー57がオン/オフされる。
【0003】
パワーコンディショナ50に複数の太陽電池ストリング51a、51b・・・が接続される場合には、各太陽電池ストリング51a、51b・・・からの出力電圧は、おおむね太陽電池パネルの直列接続枚数に比例する。太陽電池パネル51a、51b・・・の直列接続枚数が異なると、個々の太陽電池パネルの最大出力点電圧が変わってしまうので、複数の太陽電池ストリング51a、51b・・・の出力を合成すると、その出力特性が複数のピーク点を有することになる。そのため、一般的には、各太陽電池ストリング51a、51b・・・の太陽電池パネルの直列枚数が同じになるように揃えられている。
【0004】
このような各太陽電池ストリング51a、51b・・・の出力電圧や供給可能な電力は、直列接続された太陽電池パネルの出力電圧及び供給可能電力の総和となる。ところが、直列接続された太陽電池パネルのいずれか1つでも樹木や建物などの陰になると(以下、「部分陰」とする)、部分陰になった太陽電池パネルからの出力電圧や供給可能電力が低下したり、あるいは無出力になったりする。そのため、各太陽電池ストリング51a、51b・・・の出力電圧や供給可能な電力にばらつきが生じ、これら太陽電池ストリング51a、51b・・・を並列接続した総出力特性(P−V特性)に、図6に示すような複数の電力ピーク点が現れる原因となる。このような電力ピーク点が複数あるP−V特性に対して開放電圧から徐々に電圧を下げて最大電力点追従制御を行うと、第1ピーク点を最大電力点として最大電力点追従制御を行う。そのため、実際にはさらに大きな電力を供給できるにもかかわらず、最初に現れた第1ピーク点で電力供給を行ってしまい、電力の損失が生じる。そこで、特許文献1では、例えば定期的に動作電圧を変化させて電力ピーク点が複数存在するか否かを探索し、最大電力点を発見することが行われている。
【0005】
近年、戸建て住宅の屋根などに設置される太陽光発電用の太陽電池パネルに関して、寄棟屋根の各面に設置することも提案されている。その場合、屋根の各面の面積に応じて、設置可能な太陽電池パネルの枚数が異なることが考えられる。また、仮に設置された太陽電池パネルの枚数が同じであったとしても、屋根の向きによって日照条件が異なる。そのため、各屋根に設置された一群の太陽電池ストリングから供給可能な電力が異なる。このような場合に、複数の太陽電池ストリングを並列接続すると、太陽電池ストリングの総出力特性(P−V特性)に複数の電力ピーク点が現れる。並列接続された太陽電池ストリングを1つの昇圧チョッパで電圧変換を行うと、最初に現れた第1ピーク点で電力供給を行ってしまい、電力の損失が大きくなる。また、個々の太陽電池ストリングに関しても、直列接続された太陽電池パネルのいずれかに部分陰が生じると、その太陽電池ストリングのP−V特性にも複数の電力ピーク点が現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−76865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、複数の太陽電池ストリングにおける太陽電池の直列枚数が異なり、かつ、部分陰の影響によっていずれかの太陽電池ストリングの出力特性(P−V特性など)に複数の電力ピークが現れるような場合であっても、供給可能な最大出力を有効に利用することができる太陽光発電用パワーコンディショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る太陽光発電用パワーコンディショナは、
一群の太陽電池パネルの直列接続体で構成された複数の太陽電池ストリングにそれぞれ接続され、前記太陽電池ストリングからの出力電圧を所定の電圧に昇圧する複数の電圧変換回路と、
前記複数の電圧変換回路からの直流電力を交流電力に変換する直流/交流変換回路と、
前記複数の電圧変換回路について、前記複数の太陽電池ストリングからの出力電力及び出力電圧のいずれか一方又はその両方を含む電気諸量を検出する電気諸量検出部と、
前記電気諸量検出部によって検出された前記電気諸量の履歴を記憶する記憶部と、
前記複数の電圧変換回路をそれぞれ個別に制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記複数の電圧変換回路のそれぞれについて、前記電気諸量検出部により検出された電気諸量と所定の条件を比較し、前記電気諸量のうちのいずれかが前記所定の条件を満たすときは、その電気諸量が検出された電圧変換回路について最大電力点追従制御を行い、前記電気諸量のうちのいずれかが前記所定の条件を満たさないときは、その電気諸量が検出された電圧変換回路について動作点走査制御を行い、
前記最大電力点追従制御は、前記太陽電池ストリングからの出力電圧を段階的に変化させることによって、前記太陽電池ストリングからの出力電力の変化を検出し、前記出力電力の変化履歴を前記記憶部に記憶させ、前記記憶部に記憶された前記出力電力の変化履歴が増加から減少又は減少から増加に変化したときに、前記出力電圧を下降から上昇に又は上昇から下降に切り替えることにより、前記出力電力の電力ピーク点付近で制御する動作モードであり、
前記動作点走査制御は、前記太陽電池ストリングからの出力電圧を段階的に変化させることによって、前記太陽電池ストリングからの出力電力の変化を検出し、前記出力電力の変化履歴を前記記憶部に記憶させ、前記記憶部に記憶された前記出力電力の変化履歴から電力ピーク点を検出し、電力ピーク点が複数存在する場合に、最も電力量の大きな電力ピーク点を動作点として制御する動作モードであることを特徴とする。
【0009】
前記所定の条件は、前記複数の太陽電池ストリングのそれぞれについて、前記最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電力と、前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電力の比率が所定の数値範囲内であることが好ましい。
【0010】
または、前記所定の条件は、前記複数の太陽電池ストリングのそれぞれについて、前記最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電圧と、前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電圧の比率が所定の数値範囲内であることが好ましい。
【0011】
または、前記所定の条件は、前記複数の太陽電池ストリングのそれぞれについて、前記最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電力と、前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電力の比率が所定の数値範囲内であり、且つ、前記最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電圧と、前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電圧の比率が所定の数値範囲内であることが好ましい。
【0012】
さらに、前記太陽光発電用パワーコンディショナは計時部をさらに備え、
前記複数の太陽電池ストリングのそれぞれについて、前記制御部が最大出力点追従制御を行ったときの前記電気諸量を、前記計時部により計測された時刻又は日時と関連づけて、前記記憶部に記憶させ、
前記制御部は、前記電気諸量検出部により検出された各太陽電池ストリングの前記電気諸量を、その検出が行われた時間帯における前記記憶部に記憶された一定期間の前記電気諸量の値の平均値と比較することが好ましい。
【0013】
さらに、前記制御部が、前記複数の太陽電池ストリングのいずれかについて、開放電圧から所定の電圧範囲で前記動作点走査制御を行い、その間に得られた電力ピーク点の中から最も電力量の大きな電力ピーク点を特定すると、特定された電力ピーク点が得られたときの電圧を初期値として、前記最大電力点追従制御を行うことが好ましい。
【0014】
または、前記制御部が、前記複数の太陽電池ストリングの特定の太陽電池ストリングについて前記動作点走査制御を行い、最も電力量の大きな電力ピーク点を特定すると、その特定された最大電力量の電力ピーク点の出力電力と前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電力の比率を前記記憶部に記憶させ、
前記特定の太陽電池ストリングについて前記動作点走査制御が所定回数行われたときに、その所定回数分の前記出力電力の比率が所定の数値範囲内であれば、その所定回数分の出力電力の比率の平均値を前記記憶部にさらに記憶させ、
前記複数の太陽電池ストリングについて、前記最大電力点制御により電力ピーク点を特定したとき、前記特定の太陽電池ストリングの電力ピーク点における出力電力と前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの電力ピーク点における出力電力の比率が、前記記憶部に記憶されている前記所定回数分の出力電力の比率の平均値に対して所定の数値範囲内であるときは、前記動作点走査制御を行わずに、前記最大電力点追従制御を継続することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、いずれかの太陽電池ストリングに部分陰が発生し、その太陽電池ストリングの出力特性(P−V特性)に複数の電力ピーク点が現れる可能性がある場合に、その太陽電池ストリングに対して動作点走査制御が行われる。動作点制御が行われると、電力ピーク点が検出され、電力ピーク点が複数存在する場合に、最も電力量の大きな電力ピーク点を動作点として制御される。すなわち、最大電力点追従制御のように最初に現れた電力ピーク点を動作点として制御されるものではないので、最大電力量の電力ピーク点が2番目以降に現れる場合であっても、供給可能な最大出力を有効に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽光発電用パワーコンディショナの構成を示すブロック図。
【図2】全ての太陽電池ストリングにおいて部分陰が発生していない場合の各太陽電池ストリングのP−V特性(電力/電圧特性)を示す図。
【図3】いずれかの太陽電池ストリングに部分陰が発生したときのその太陽電池ストリングのP−V特性と電力閾値及び電圧閾値の関係を示す図。
【図4】動作点走査制御を説明するためのP−V特性図。
【図5】従来の一般的な太陽光発電用パワーコンディショナの構成を示すブロック図。
【図6】複数の電力ピーク点が現れた太陽電池ストリングのP−V特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る太陽光発電用パワーコンディショナについて説明する。図1は、本実施形態に係る太陽光発電用パワーコンディショナ1のブロック構成を示す。前述のように、例えば寄棟屋根の各面に太陽電池パネルを設置する場合、屋根の各面の面積に応じて、設置可能な太陽電池パネルの枚数が異なることが予想される。屋根の各面に設置された太陽電池パネルを直列接続して、それを1つの太陽電池ストリングとすると、図1に示すように、各太陽電池ストリング11a、11b、11cにおける太陽電池パネルの直列枚数が異なる。それに伴って、各太陽電池ストリング11a、11b、11cの開放電圧及び供給可能な最大電力も異なる。そこで、このパワーコンディショナ1は、複数の太陽電池ストリング11a、11b、11cにそれぞれ個別に対応する複数の昇圧チョッパ(電圧変換回路)12a、12b、12cを備えている。制御部16によって、各昇圧チョッパ12a、12b、12cを個別に最大出力点追従制御すれば、各太陽電池ストリング11a、11b、11cから供給可能な最大電力を、漏れなく有効に出力することができる。
【0018】
各太陽電池ストリング11a、11b、11cと昇圧チョッパ12a、12b、12cの間には、各太陽電池ストリング11a、11b、11cから出力される出力電力及び出力電圧などの電気諸量を検出するための電気諸量検出部14a、14b、14cが設けられている。昇圧チョッパ12a、12b、12cの出力側は並列に接続され、1つのインバータ(直流/交流変換回路)13に接続されている。また、このパワーコンディショナ1では、複数の昇圧チョッパ12a、12b、12cの並列接続点とインバータ13の間に1つの出力電圧検出部15が設けられている。インバータ13と分電盤54との間にはリレー17が設けられており、制御部16は、インバータ13を起動するときにリレー17をオンし、インバータ13を停止するときにリレー17をオフする。制御部16は、CPU(Central Processing Unit)などで構成され、タイマ18及びメモリ(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなど)19が接続されている。
【0019】
図2は、一例として、全ての太陽電池ストリング11a、11b、11cにおいて部分陰が発生していない場合の各太陽電池ストリング11a、11b、11cのP−V特性(電力/電圧特性)を示す。太陽電池パネルの直列接続枚数が最も多い太陽電池ストリング11bの最大出力電圧をPVb、そのときの出力電圧をVbとする。同様に、太陽電池パネルの直列接続枚数が2番目に多い太陽電池ストリング11cの最大出力電圧をPVc、そのときの出力電圧をVc、太陽電池パネルの直列接続枚数が3番目に多い太陽電池ストリング11aの最大出力電圧をPVa、そのときの出力電圧をVaとする。日照条件が同じであれば、各太陽電池ストリング11a、11b、11cから出力可能な最大出力電力PVa、PVb、PVc及び開放電圧は、おおむね太陽電池パネルの直列接続枚数に比例する。また、各太陽電池ストリング11a、11b、11cから出力可能な最大出力電力PVa、PVb、PVcは、おおむね日照量(快晴、薄曇り、曇天など)に比例する。
【0020】
制御部16による最大電力点追従制御について説明する。連系運転の場合、昇圧チョッパ12a、12b、12cの出力側の電圧は決まっているので、制御部16は、昇圧チョッパ12a、12b、12cをPWM制御して、その入力側の電圧を段階的に変化させる。それに伴って、太陽電池ストリング11a、11b、11cからの出力電圧が段階的に低下し又は上昇し、太陽電池ストリング11a、11b、11cから昇圧チョッパ12a、12b、12cに取り込まれる電流量が増加又は減少する。太陽電池ストリング11a、11b、11cからの出力電力は、これら昇圧チョッパ12a、12b、12cに取り込まれ電流量と太陽電池ストリングの出力電圧(又は昇圧チョッパの入力電圧)から演算で求めることができる。さらに、制御部16は、この出力電力の変化を検出し、出力電力の変化履歴をメモリ19に記憶させ、メモリ19に記憶された出力電力の変化履歴が増加から減少に変化したときに、電圧を低下から上昇に切り替える。さらに、出力電力の変化履歴が減少から増加に変化したときに、電圧を上昇から低下に切り替える。これらの動作を継続して行うことにより、太陽電池ストリング11a、11b、11cから供給可能な出力電力が、電力ピーク点PVa、PVb、PVc付近で安定するように制御することができる。
【0021】
本実施形態では、各太陽電池ストリング11a、11b、11cに対して個別の昇圧チョッパ12a、12b、12cを設けているので、各太陽電池ストリング11a、11b、11c毎に最大出力点追従制御を行うことができる。また、負荷55a、55b・・・で消費されなかった余った電力は、系統56に逆潮流される。そのため、インバータ13の出力電圧は系統56の電圧(例えば、実効電圧200V)よりも高く設定され、それに伴ってインバータ13の入力電圧も決定される。制御部16は、各昇圧チョッパ12a、12b、12cの入力電圧(すなわち、各太陽電池ストリング11a、11b、11cの出力電圧)がVa、Vb、Vcとなるように、各太陽電池ストリング11a、11b、11cから引き出す電流を制御する。同時に、制御部16は、各昇圧チョッパ12a、12b・・・をPWM(Pulse Width Modulation)制御を行い、各入力電圧Va、Vb、Vcをそれぞれインバータ13の入力電圧に昇圧する。
【0022】
ところで、いずれかの太陽電池ストリング11n(例えばn=b)に部分陰が生じ、図3の実線で示すように、その太陽電池ストリング11nのP−V特性に複数の電力ピーク点が現れると仮定する。このような太陽電池ストリング11nに対して、上記のような最大電力点追従制御を行うと、開放電圧から徐々に出力電圧を下げていき、最初に検出された第1ピーク点を電力ピーク点として、昇圧チョッパ12n(例えばn=b)の制御を行う。そのため、実際には第1ピーク点よりも出力可能な電力の大きい第2ピーク点(最大電力点)が存在するにも拘わらず、第2ピーク点の存在は検出されず、太陽電池ストリング11nから出力可能な電力を有効に利用しきれないという問題が生じる。
【0023】
一方、太陽電池パネルは一度設置されると、その枚数や接続方法が変更されることはほとんど無い。換言すれば、太陽電池ストリング11a、11b、11cのP−V特性の相関はほとんど変化しない。そこで、本実施形態では、いずれかの太陽電池ストリング11n(n=a、b又はc)についての電気諸量(出力電力及び出力電圧)と他の太陽電池ストリング11a、11b、11cのいずれかについての電気諸量との比率を求め、その比率を所定の閾値と比較する。
【0024】
部分陰が生じていない図2の状態において、各太陽電池ストリング11a、11b、11cの最大電力点における最大出力電力PVa、PVb、PVc同士を比較する。例えば、PVa:PVb=1:2、PVc:PVb=1:1.33とする(Pva:Pvb:Pvc=1:2:1.5を正常とする)。一方、図3において、部分陰の影響により複数の電力ピークが現れた太陽電池ストリングが図1における太陽電池ストリング11bであったとする。本来PVa:PVb=1:2となるべきものが、PVa:PVb(PVn)=1:1となり、また、PVc:PVb=1:1.33となるべきものが、PVc:PVb(PVn)=1:0.66となり、比率が変わっている。そのため、各太陽電池ストリング11a、11b、11cの電力ピーク点における出力電力同士を比較することにより、太陽電池ストリング11bに部分陰が発生していることを容易に、且つ、精度よく推定することができる。なお、これらの比率の取り方は任意に決定することができ、比率が所定の数値範囲内であれば部分陰が発生していないと推定し、比率が所定の数値範囲外であれば部分陰が発生していると推定することができる。また、出力電圧Va:Vb:Vcの関係についても同様である。これらの比率が所定の数値範囲外であれば、制御部16は、太陽電池ストリング11nに部分陰が発生しているものと推定して、後述する動作点走査制御を行う。
【0025】
さらに、制御部16は、最大出力点追従制御を行ったときの最大出力及びその出力電圧の値を、タイマ18により計測された時刻又は日時と関連づけて、メモリ19に記憶しておくように構成してもよい。例えば、太陽が東側にあるときは、東向きの屋根に設置された太陽電池ストリングからの出力電圧は、西向きの屋根に設置された太陽電池ストリングからの出力電圧よりも高い。太陽が西側にあるときはその逆となる。従って、各太陽電池ストリング11a、11b、11cからの出力電力及び出力電圧は、時間帯によって変化する。そこで、検出された各太陽電池ストリング11a、11b、11cからの出力電力及び出力電圧を、その検出が行われた時間帯におけるメモリ19に記憶されている過去の値と比較する。さらに、一定期間(例えば、過去1週間)におけるその時間帯のこれらの値の平均値と比較してもよい。そして、それらの差が一定値以内であれば、部分陰が発生していないと判断することができる。このように、過去の電気諸量の検出値を記憶させておき、その平均値を上記の所定の閾値として現在の検出値と比較することによって、所定の閾値の設定を省略することができる。また、時間帯毎及び季節毎の日照条件の変化に応じた閾値の変更又は補正を自動的に行うことができる。なお、1つの太陽電池ストリングの出力電力及び/又は出力電圧と他の太陽電池ストリングの出力電力及び/又は出力電圧の比率を取る場合も同様である。すなわち、部分陰発生の判断対象となる太陽電池ストリングの電気諸量の現在の検出値と、他の太陽電池ストリングの過去の一定期間の電気諸量の平均値とを比較することにより、同時に複数の太陽電池ストリングに部分陰が発生している場合の影響を除去することができる。
【0026】
次に、動作点走査制御について、図4を参照しつつ説明する。上記のようにして、制御部16がいずれかの太陽電池ストリング11n(n=a、b又はc)について動作点走査制御を行うことを決定したとする。制御部16は、太陽電池ストリング11nの出力電圧がΔVずつ減少(又は増加)するように、太陽電池ストリング11nに接続されている昇圧チョッパ12n(n=a、b又はc)の入力電圧を制御する。同時に、太陽電池ストリング11nからの出力電力を演算し、その値をメモリ19に記憶させる。この制御及び演算を、開放電圧から所定の電圧範囲で、すなわち、出力電圧がパワーコンディショナ1が動作可能な最低電圧になるまで実行する。得られた演算結果を精査すると、太陽電池ストリング11nのP−V特性に複数(例えば2つ)の電圧ピーク点(第1ピーク点と第2ピーク点)が存在することがわかる。そして、これら第1ピーク点と第2ピーク点の出力電力PV1とPV2を比較して、第2ピーク点の出力電力PV2の方が大きいので、制御部16は、太陽電池ストリング11nからの出力電圧がV2となるように、昇圧チョッパ12nの電圧を制御する。
【0027】
なお、動作モード切り替えの変形例として、上記のようにして最も電力量の大きな電力ピーク点PV2を特定すると、その時点で動作点走査制御を終了し、電力ピーク点PV2が得られた電圧を初期値として、最大電力点追従制御を行うようにしてもよい。単純な動作点走査制御の場合、最大電力量の電力ピーク点PV2が特定されると、太陽電池ストリング11nからの出力電圧がV2に固定されてしまう。しかしながら、部分陰が生じている状態であっても、太陽の移動や雲の動きなどによって、さらに日照条件変化することもありうる。その場合に、動作点走査制御によって特定した最大電力量の電力ピーク点PV2の付近で最大電力点追従制御を行うことにより、より効率的に供給可能な最大出力を有効に利用することができる。また、日照条件が改善され、部分陰が消失したときにも、既に最大電力点追従制御に移行しているので、改めて動作モードを切り替える必要がない。
【0028】
また、部分陰の原因が樹木や建築物などの固定された構造物の場合、同一の太陽電池ストリングに対して、同じような時間帯に同じような位置に部分陰が発生する。そこで、特定の太陽電池ストリング11n(n=a、b又はc)について、動作点走査制御により特定された最大電力量の電力ピーク点の出力電力と、そのときの他の太陽電池ストリング11m(mはa、b又はcのうちのn以外)の出力電力の比率をメモリ19に記憶させておく。そして、その特定の太陽電池ストリング11nについて、動作点走査制御が所定回数行われたときに、その所定回数分の上記出力電力の比率が所定の数値範囲内であれば、その所定回数分の出力電力の比率の平均値をメモリ19にさらに記憶させる。そして、複数の太陽電池ストリング11a、11b、11cについて、最大電力点制御により電力ピーク点を特定したとき、特定の太陽電池ストリング11nの電力ピーク点における出力電力と他の太陽電池ストリング11mの電力ピーク点における出力電力の比率が、メモリ19に記憶されている所定回数分の出力電力の比率の平均値に対して所定の数値範囲内であるときは、動作点走査制御を行わずに、最大電力点追従制御を継続する。すなわち、特定の太陽電池ストリング11nについて、動作点走査制御を行う必要があるか否かを判断する際に、現時点での特定の太陽電池ストリング11nの電力ピーク点と、予想される動作点走査制御を行ったときの電力ピーク点の差が小さいときは、そのまま最大電力点追従制御を続けることにより、動作点走査制御の実施回数を少なくすることができる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態及びその変形例の記載に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、1つの制御部16によって全ての昇圧チョッパ12a、12b、12cを制御しているが、各昇圧チョッパ12a、12b、12cにそれぞれ個別の制御部を設けてもよい。なお、1つの制御部16は時分割的に各昇圧チョッパ12a、12b、12cを制御することによっても、各昇圧チョッパ12a、12b・・・にそれぞれ個別の制御部を設けた場合と等価となる。さらに、電気諸量としては、上記電力ピーク点における出力電力及び出力電圧以外に、昇圧チョッパに引き込まれる電流(出力電流)や太陽電池パネルや昇圧チョッパ内の各部の温度などであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 パワーコンディショナ
11a、11b、11c 太陽電池ストリング
12a、12b、12c 昇圧チョッパ(電圧変換回路)
13 インバータ(直流/交流変換回路)
14a、14b、14c 電気諸量検出部
15 出力電圧検出部
16 制御部
17 リレー
18 タイマ(計時部)
19 メモリ(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一群の太陽電池パネルの直列接続体で構成された複数の太陽電池ストリングにそれぞれ接続され、前記太陽電池ストリングからの出力電圧を所定の電圧に昇圧する複数の電圧変換回路と、
前記複数の電圧変換回路からの直流電力を交流電力に変換する直流/交流変換回路と、
前記複数の電圧変換回路について、前記複数の太陽電池ストリングからの出力電力及び出力電圧のいずれか一方又はその両方を含む電気諸量を検出する電気諸量検出部と、
前記電気諸量検出部によって検出された前記電気諸量の履歴を記憶する記憶部と、
前記複数の電圧変換回路をそれぞれ個別に制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記複数の電圧変換回路のそれぞれについて、前記電気諸量検出部により検出された電気諸量と所定の条件を比較し、前記電気諸量のうちのいずれかが前記所定の条件を満たすときは、その電気諸量が検出された電圧変換回路について最大電力点追従制御を行い、前記電気諸量のうちのいずれかが前記所定の条件を満たさないときは、その電気諸量が検出された電圧変換回路について動作点走査制御を行い、
前記最大電力点追従制御は、前記太陽電池ストリングからの出力電圧を段階的に変化させることによって、前記太陽電池ストリングからの出力電力の変化を検出し、前記出力電力の変化履歴を前記記憶部に記憶させ、前記記憶部に記憶された前記出力電力の変化履歴が増加から減少又は減少から増加に変化したときに、前記出力電圧を下降から上昇に又は上昇から下降に切り替えることにより、前記出力電力の電力ピーク点付近で制御する動作モードであり、
前記動作点走査制御は、前記太陽電池ストリングからの出力電圧を段階的に変化させることによって、前記太陽電池ストリングからの出力電力の変化を検出し、前記出力電力の変化履歴を前記記憶部に記憶させ、前記記憶部に記憶された前記出力電力の変化履歴から電力ピーク点を検出し、電力ピーク点が複数存在する場合に、最も電力量の大きな電力ピーク点を動作点として制御する動作モードであることを特徴とする太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記複数の太陽電池ストリングのそれぞれについて、前記最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電力と、前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電力の比率が所定の数値範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記複数の太陽電池ストリングのそれぞれについて、前記最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電圧と、前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電圧の比率が所定の数値範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記複数の太陽電池ストリングのそれぞれについて、前記最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電力と、前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電力の比率が所定の数値範囲内であり、且つ、前記最大出力点追従制御において最大電力点付近であると判断されたときの出力電圧と、前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電圧の比率が所定の数値範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項5】
前記太陽光発電用パワーコンディショナは計時部をさらに備え、
前記複数の太陽電池ストリングのそれぞれについて、前記制御部が最大出力点追従制御を行ったときの前記電気諸量を、前記計時部により計測された時刻又は日時と関連づけて、前記記憶部に記憶させ、
前記制御部は、前記電気諸量検出部により検出された各太陽電池ストリングの前記電気諸量を、その検出が行われた時間帯における前記記憶部に記憶された一定期間の前記電気諸量の値の平均値と比較することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項6】
前記制御部が、前記複数の太陽電池ストリングのいずれかについて、開放電圧から所定の電圧範囲で前記動作点走査制御を行い、その間に得られた電力ピーク点の中から最も電力量の大きな電力ピーク点を特定すると、特定された電力ピーク点が得られたときの電圧を初期値として、前記最大電力点追従制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。
【請求項7】
前記制御部が、前記複数の太陽電池ストリングの特定の太陽電池ストリングについて前記動作点走査制御を行い、最も電力量の大きな電力ピーク点を特定すると、その特定された最大電力量の電力ピーク点の出力電力と前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの出力電力の比率を前記記憶部に記憶させ、
前記特定の太陽電池ストリングについて前記動作点走査制御が所定回数行われたときに、その所定回数分の前記出力電力の比率が所定の数値範囲内であれば、その所定回数分の出力電力の比率の平均値を前記記憶部にさらに記憶させ、
前記複数の太陽電池ストリングについて、前記最大電力点制御により電力ピーク点を特定したとき、前記特定の太陽電池ストリングの電力ピーク点における出力電力と前記複数の太陽電池ストリングのうちの他の太陽電池ストリングの電力ピーク点における出力電力の比率が、前記記憶部に記憶されている前記所定回数分の出力電力の比率の平均値に対して所定の数値範囲内であるときは、前記動作点走査制御を行わずに、前記最大電力点追従制御を継続することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の太陽光発電用パワーコンディショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105318(P2013−105318A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248665(P2011−248665)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】