説明

太陽光発電用接続箱

【課題】太陽電池アレイの異常を判定する機能を有し、発電中の太陽電池アレイ全体の異常を常時監視することができ、低コストな太陽光発電用接続箱を提供する。
【解決手段】太陽電池ストリング102のそれぞれと電気的に接続される入力用の複数の分岐線11と、分岐線11を介して各太陽電池ストリング102から入力された電力を集電して出力する出力用の集合線12と、分岐線11のそれぞれに設けられた逆流防止ダイオード14と、逆流防止ダイオード14に並列接続されたキャパシタ2と、集合線12に設けられ太陽電池アレイ101に交流電圧を印加可能な交流電圧発生器3と、太陽電池アレイ101に流れる交流電流を測定する測定手段4と、交流電圧発生器3が印加した交流電圧と、測定手段4が測定した交流電流とを基に、太陽電池アレイ101の異常を判定する異常判定部6を有する制御装置5と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池アレイの各太陽電池ストリングで発電した電力を集電して出力する太陽光発電用接続箱に係り、特に、太陽電池アレイの故障等の異常を判定する機能を付与した太陽光発電用接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽電池アレイの故障等の異常を判定する方法として、特許文献1がある。なお、太陽電池アレイとは、複数の太陽電池パネルを直列接続した太陽電池ストリングを複数備えたものである。
【0003】
特許文献1では、太陽電池ストリングの静電容量を測定することで、太陽電池ストリング内の断線位置を検出する方法が開示されている。しかし、特許文献1では、太陽電池ストリングをシステムから切り離した状態で太陽電池ストリングの静電容量を測定する必要があるために、太陽電池ストリングの発電中に太陽電池ストリングの異常を判定することができないという問題がある。
【0004】
これに対して、本発明者らは、太陽電池パネルの交流特性から太陽電池パネルの異常を判定する方法を提案中である。この方法では、発電中の太陽電池パネルの正極側から交流電圧を印加し、太陽電池パネルの交流特性、すなわちインピーダンス成分の評価を行うことにより、太陽電池パネルでの異常を判定するようにしている。この方法を、複数の太陽電池パネルを直列に接続した太陽電池ストリング全体に適用することにより、発電中の太陽電池ストリングの異常の判定を行うことが可能になる。
【0005】
ところで、複数の太陽電池ストリングを備えた太陽電池アレイを有する太陽光発電システムでは、各太陽電池ストリングで発電した電力を集電してパワーコンディショナー等に出力する太陽光発電用接続箱(集電箱ともいう)が一般に用いられている。
【0006】
従来用いられている太陽光発電用接続箱の一例を図6に示す。
【0007】
図6に示す太陽光発電用接続箱61は、太陽電池ストリング102のそれぞれと電気的に接続される入力用の複数の分岐線11と、複数の分岐線11を合流し、複数の分岐線11を介して各太陽電池ストリング102から入力された電力を集電してパワーコンディショナー13に出力する出力用の集合線12と、を備えている。図6では、一例として、太陽電池アレイ101が4つの太陽電池ストリング102からなり、各太陽電池ストリング102が4つの太陽電池パネル103からなる場合を示している。
【0008】
分岐線11のそれぞれには、集合線12側から太陽電池ストリング102側に向かって流れる電流を阻止する逆流防止ダイオード14が設けられている。逆流防止ダイオード14は、太陽電池ストリング102の個々の電圧レベルの違いにより電流が逆流してしまうことを防止するためのものである。
【0009】
また、分岐線11のそれぞれには、太陽電池ストリング102を個別に遮断するための分岐線側遮断器15が設けられている。集合線12には、太陽電池アレイ101全体を遮断するための集合線側遮断器16が設けられている。
【0010】
本発明者らは、この太陽光発電用接続箱61に、太陽電池アレイ101の故障等の異常を判定する機能を付与することを考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−91828号公報
【特許文献2】特開2011−66320号公報
【特許文献3】特開2001−68706号公報
【特許文献4】特許第3754898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述のように、太陽光発電用接続箱61では各分岐線11に逆流防止ダイオード14が設けられているため、上述の提案した方法を太陽光発電用接続箱61に適用するとなると、交流電圧を印加する交流電圧発生器(交流電源)と、各太陽電池ストリング102を流れる交流電流を測定する測定手段とを、逆流防止ダイオード14よりも太陽電池ストリング102側に設ける必要が生じる。
【0013】
そのため、太陽電池アレイ101を構成する全ての太陽電池ストリング102の異常を判定しようとすると、各分岐線11に交流電圧発生器と測定手段を設けなければならず、太陽電池ストリング102の数が多い太陽電池アレイ101に適用する場合には、コストが非常に高くなってしまうという問題がある。
【0014】
なお、図7に示すように、太陽光発電用接続箱61と別体に交流電圧発生器71と測定手段としての受信機72を用意し、順次接続を切り替えて各太陽電池ストリング102の異常を判定することも可能であるが、この方法では、太陽電池ストリング102の数が多くなると非常に手間がかかり作業性が悪い上に、太陽電池アレイ101全体の異常を常時監視することができないという問題がある。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、太陽電池アレイの異常を判定する機能を有し、発電中の太陽電池アレイ全体の異常を常時監視することができ、低コストな太陽光発電用接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数の太陽電池パネルを直列接続した太陽電池ストリングを複数備えた太陽電池アレイに電気的に接続され、前記各太陽電池ストリングで発電した電力を集電して出力する太陽光発電用接続箱であって、前記太陽電池ストリングのそれぞれと電気的に接続される入力用の複数の分岐線と、該複数の分岐線を合流し、前記複数の分岐線を介して前記各太陽電池ストリングから入力された電力を集電して出力する出力用の集合線と、前記分岐線のそれぞれに設けられ、前記集合線側から前記太陽電池ストリング側に向かって流れる電流を阻止する逆流防止ダイオードと、前記逆流防止ダイオードのそれぞれに並列接続されたキャパシタと、前記集合線に設けられ、前記集合線、前記分岐線、及び前記キャパシタを介して前記太陽電池アレイに交流電圧を印加可能な交流電圧発生器と、前記太陽電池アレイに流れる交流電流を測定する測定手段と、前記交流電圧発生器が印加した交流電圧と、前記測定手段が測定した交流電流とを基に、前記太陽電池アレイの異常を判定する異常判定部を有する制御装置と、を備えた太陽光発電用接続箱である。
【0017】
前記測定手段は、前記集合線に流れる交流電流を測定するように構成され、前記異常判定部は、前記交流電圧発生器が印加した交流電圧と、前記測定手段が測定した交流電流とを基に、前記太陽電池アレイの異常を判定するように構成されてもよい。
【0018】
前記測定手段は、前記分岐線のそれぞれに流れる交流電流を測定するように構成され、前記異常判定部は、前記交流電圧発生器が印加した交流電圧と、前記測定手段が測定した前記分岐線のそれぞれに流れる交流電流とを基に、前記太陽電池ストリングの異常を個別に判定するように構成されてもよい。
【0019】
前記測定手段は、前記集合線に流れる交流電流を測定するように構成され、前記逆流防止ダイオードと並列、かつ、前記キャパシタと直列にインダクタを設け、前記キャパシタと前記インダクタとで前記分岐線ごとに通過域の異なるバンドパスフィルタを形成するようにし、前記異常判定部は、前記交流電圧発生器が印加する交流電圧の周波数を制御することで、交流電圧を印加する前記太陽電池ストリングを選択し、前記交流電圧発生器が印加した交流電圧と、前記測定手段が測定した交流電流とを基に、選択した前記太陽電池ストリングの異常を判定することを繰返し、前記太陽電池ストリングの異常を個別に判定するように構成されてもよい。
【0020】
前記異常判定部は、前記太陽電池ストリングの発電中に、前記太陽電池アレイの異常を判定するように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、太陽電池アレイの異常を判定する機能を有し、発電中の太陽電池アレイ全体の異常を常時監視することができ、低コストな太陽光発電用接続箱を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る太陽光発電用接続箱を用いた太陽光発電システムの概略構成図である。
【図2】図1の太陽光発電システムの太陽電池ストリングを示す概略構成図である。
【図3】図1の太陽光発電用接続箱の異常判定部における異常判定処理の制御フローを示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る太陽光発電用接続箱を用いた太陽光発電システムの概略構成図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る太陽光発電用接続箱を用いた太陽光発電システムの概略構成図である。
【図6】従来の太陽光発電用接続箱を用いた太陽光発電システムの概略構成図である。
【図7】図6の従来の太陽光発電用接続箱において、交流電圧発生器と受信機を用意し、順次接続を切り替えて各太陽電池ストリングの異常を判定する場合の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る太陽光発電用接続箱を用いた太陽光発電システムの概略構成図である。
【0025】
図1に示すように、太陽光発電システム100は、太陽電池アレイ101と、本発明の太陽光発電用接続箱1と、パワーコンディショナー13と、を主に備えている。
【0026】
太陽電池アレイ101は、複数の太陽電池パネル103を直列接続した太陽電池ストリング102を複数備えたものである。本実施の形態では、一例として、太陽電池アレイ101が4つの太陽電池ストリング102からなり、各太陽電池ストリング102が4つの太陽電池パネル103からなる場合を説明する。ただし、太陽電池アレイ101を構成する太陽電池ストリング102の数、および太陽電池ストリング102を構成する太陽電池パネル103の数については、これに限定されるものではない。
【0027】
太陽光発電用接続箱1は、太陽電池アレイ101に電気的に接続され、各太陽電池ストリング102で発電した電力を集電してパワーコンディショナー13に出力するものである。
【0028】
太陽光発電用接続箱1は、太陽電池ストリング102のそれぞれと電気的に接続される入力用の複数(ここでは4本)の分岐線11と、複数の分岐線11を合流し、複数の分岐線11を介して各太陽電池ストリング102から入力された電力を集電して出力する出力用の集合線12と、を備えている。
【0029】
分岐線11の一端には、各太陽電池ストリング102の正極から延びる電源線104がそれぞれ電気的に接続される。各分岐線11の他端は、集合線12の一端に電気的に接続され、集合線12の他端は、パワーコンディショナー13に延びる電源線105が電気的に接続される。本実施の形態では、各太陽電池ストリング102の負極から延びる電源線(DCリターン用の電線)106を、太陽光発電用接続箱1を介さずに直接パワーコンディショナー13に接続するようにしているが、太陽光発電用接続箱1を介してパワーコンディショナー13に接続するようにしてもよい。
【0030】
分岐線11のそれぞれには、集合線12側から太陽電池ストリング102側に向かって流れる電流を阻止する逆流防止ダイオード14が設けられている。
【0031】
また、分岐線11のそれぞれには、太陽電池ストリング102を個別に遮断するための分岐線側遮断器15が設けられている。集合線12には、太陽電池アレイ101全体を遮断するための集合線側遮断器16が設けられている。
【0032】
さて、本実施の形態に係る太陽光発電用接続箱1は、逆流防止ダイオード14のそれぞれに並列接続された交流通過用のキャパシタ(容量素子)2と、集合線12に設けられ、集合線12、分岐線11、キャパシタ2、及び電源線104を介して太陽電池アレイ101に交流電圧を印加可能な交流電圧発生器3と、太陽電池アレイ101に流れる交流電流を測定する測定手段4と、交流電圧発生器3が印加した交流電圧と測定手段4が測定した交流電流とを基に、太陽電池アレイ101の異常を判定する異常判定部6を有する制御装置5と、警報手段9と、をさらに備えている。
【0033】
太陽光発電用接続箱1では、逆流防止ダイオード14と並列にキャパシタ2を設けることにより、逆流防止ダイオード14を回避して交流電圧を各太陽電池ストリング102に伝送することを可能としており、その結果、逆流防止ダイオード14よりも出力側(パワーコンディショナー13側)の集合線12に、各太陽電池ストリング102で共通の交流電圧発生器3を設けることを可能としている。
【0034】
制御手段5と交流電圧発生器3とは制御線7を介して電気的に接続されており、交流電圧発生器3が出力する交流電圧を制御装置5にて制御できるようになっている。
【0035】
本実施の形態では、測定手段4は、集合線12に流れる交流電流を測定するように構成される。集合線12に流れる交流電流は、各太陽電池ストリング102を流れる交流電流の合計値、すなわち太陽電池アレイ101全体を流れる交流電流と等しい。測定手段4は、集合線12に設けられた変流器(CT)4aと、変流器4aに接続された受信機(交流電流計)4bとで構成される。受信機4bと制御装置5とは制御線8を介して電気的に接続されており、受信機4bでの測定結果が制御装置5に入力されるようになっている。
【0036】
また、本実施の形態では、異常判定部6は、交流電圧発生器3が印加した交流電圧Vと、測定手段4が測定した交流電流Iとを基に、太陽電池アレイ101全体の異常を判定するように構成されている。より具体的には、異常判定部6は、交流電圧Vと交流電流Iとの比V/I、すなわち太陽電池アレイ101全体でのインピーダンス成分Zを演算し、その値が予め設定した閾値よりも大きいときに、太陽電池アレイ101に異常があると判定するように構成される。異常判定部6は、太陽電池アレイ101に異常があると判定すると、警報手段9に異常信号を送信する。
【0037】
なお、本実施の形態では、交流電圧Vと交流電流Iとの比V/I(つまりインピーダンス成分Z)を基に太陽電池アレイ101の異常を判定するようにしたが、これに限らず、交流電圧Vと交流電流Iの位相差を基に、太陽電池アレイ101の異常を判定するようにしてもよい。異常判定部6は、制御装置5に実装され、メモリ(RAM、ROM)やCPU、I/Oインターフェイス、ソフトウェア等を適宜組み合わせて実現される。
【0038】
本実施の形態では、制御装置5が交流電圧発生器3を制御するように構成しているため、異常判定部6での異常の判定に用いる交流電圧Vとしては、その指示値を用いることができる。ただし、これに限らず、交流電圧発生器3の出口に交流電圧計を設置して交流電圧発生器3が出力する交流電圧Vを測定し、その測定値を用いて異常の判定を行うようにしてもよい。
【0039】
太陽光発電用接続箱1では、異常判定部6は、太陽電池ストリング102の発電中に、太陽電池アレイ101の異常を判定するように構成される。この理由を図2を用いて説明する。
【0040】
図2に示すように、太陽電池ストリング102では、複数の太陽電池パネル103を直列接続しているが、各太陽電池パネル103の正極と負極の間には、後段の太陽電池パネル103からの電流をバイパスするためのバイパスダイオード107がそれぞれ設けられている。このため、太陽電池ストリング102(太陽電池パネル103)が発電していないときに交流電圧を印加した場合には、太陽電池パネル103のみならずバイパスダイオード107にも交流電流が通過してしまい、太陽電池ストリング102の異常、すなわち太陽電池ストリング102を構成する各太陽電池パネル103の異常を判定することが困難になる。
【0041】
これに対して、太陽電池ストリング102の各太陽電池パネル103が発電しているときに交流電圧を印加すると、太陽電池ストリング102が発電している直流電圧に交流電圧が重畳されることになるため、バイパスダイオード107が常に逆方向バイアスされた状態となる。その結果、交流電流は、バイパスダイオード107を通らずに、太陽電池パネル103のみを通るようになり、バイパスダイオード107の影響を受けずに、高精度に太陽電池ストリング102の異常を判定できるようになる。
【0042】
警報手段9は、異常判定部6が太陽電池アレイ101に異常があると判定したときに、警報を発して管理者に通知を行うものである。警報手段9の構成は特に限定するものではないが、例えば、異常判定部6から異常信号を受信したときに、警告灯を点灯して太陽電池アレイ101の異常を検知したことを管理者に知らせると共に、モニタ等に太陽電池アレイ101の異常を検知したことを表示し、これと同時期に、管理者の携帯電話等に警報メールを送信して、太陽電池アレイ101の異常を検知したことを通知するように構成すればよい。
【0043】
次に、太陽光発電用接続箱1の異常判定部6における異常判定処理の制御フローについて図3を用いて説明する。この異常判定処理は、太陽電池パネル103が発電を行っているときに実行される。
【0044】
異常判定処理を実行するトリガは特に限定するものではなく、管理者が所望するときに実行するようにしてもよいし、設定した時間になると自動的に実行するようにしてもよい。また、設定した時間範囲(例えば発電が行われている昼間)において、所定の時間間隔で(例えば1時間おきに)実行するようにしてもよい。
【0045】
図3に示すように、異常判定処理では、まず、ステップS1にて、制御装置5から交流電圧発生器3に信号を送信し、交流電圧発生器3から太陽電池アレイ101に交流電圧Vを印加する。その後、ステップS2にて、測定手段4の受信機4bにより集合線12に流れる交流電流Iを測定する。
【0046】
その後、ステップS3にて、異常判定部6が、交流電圧Vと交流電流Iとの比V/I、すなわち太陽電池アレイ101全体でのインピーダンス成分Zを演算し、ステップS4にて、そのインピーダンス成分Zが予め設定した閾値以下か判断する。
【0047】
ステップS4にてYESと判断されれば、ステップS5にて、異常判定部6が、太陽電池アレイ101に異常がないと判定し、処理を終了する。
【0048】
ステップS4にてNOと判断されれば、ステップS6にて、異常判定部6が、太陽電池アレイ101に異常があると判定し、ステップS7にて、警報手段9に異常信号を送信した後、処理を終了する。
【0049】
本実施の形態の作用を説明する。
【0050】
本実施の形態に係る太陽光発電用接続箱1では、逆流防止ダイオード14に交流通過用のキャパシタ2を並列接続し、集合線12に設けた交流電圧発生器3から各太陽電池ストリング102に交流電圧Vを印加し、その印加した交流電圧Vと、測定手段4で測定した各太陽電池ストリング102を流れる交流電流Iとを基に、太陽電池アレイ101の異常を判定するようにしている。
【0051】
逆流防止ダイオード14にキャパシタ2を並列接続することにより、逆流防止ダイオード14よりも出力側(パワーコンディショナー13側)の集合線12に、各太陽電池ストリング102で共通の交流電圧発生器3と測定手段4を設けることが可能になり、太陽電池アレイ101の異常を判定する機能を有する太陽光発電用接続箱1を低コストに実現することが可能になる。
【0052】
また、太陽光発電用接続箱1では、図7で説明した交流電圧発生器71と受信機72を別途用意する場合のように、太陽電池ストリング102ごとに接続を切り替える必要がなく、発電中の太陽電池アレイ101全体の異常を自動で常時監視することが可能になる。太陽光発電用接続箱1では、複数の太陽電池ストリング102を一括して監視することができるため、特に、太陽電池ストリング102を多数備えた大規模な太陽光発電システム100に好適である。
【0053】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0054】
図4に示す太陽光発電用接続箱41は、図1の太陽光発電用接続箱1において、測定手段4を、分岐線11のそれぞれに流れる交流電流Iを測定するように構成し、異常判定部6を、交流電圧発生器3が印加した交流電圧Vと、測定手段4が測定した分岐線11のそれぞれに流れる交流電流Iとを基に、太陽電池ストリング102の異常を個別に判定するように構成したものである。
【0055】
測定手段4は、各分岐線11に変流器4aを設け、受信機4bを、スイッチングにより変流器4aを順次選択し、分岐線11のそれぞれに流れる交流電流Iの測定を順次行うように構成している。分岐線11のそれぞれに流れる交流電流Iは、対応する太陽電池ストリング102のそれぞれに流れる交流電流と等しい。
【0056】
異常判定部6は、受信機4bより分岐線11のそれぞれに流れる交流電流Iの値を順次受信し、太陽電池ストリング102ごとにインピーダンス成分Zを算出して、太陽電池ストリング102ごとに個別に異常の判定を行うように構成されている。
【0057】
なお、図4では変流器4aを逆流防止ダイオード14よりも太陽電池アレイ101側に設ける場合を示しているが、変流器4aは、分岐線11のどの位置に設けてもよく、逆流防止ダイオード14よりも出力側(パワーコンディショナー13側)に設けてもよい。
【0058】
図1の太陽光発電用接続箱1では、太陽電池アレイ101全体の異常を判定するのみであったが、図4の太陽光発電用接続箱41によれば、どの太陽電池ストリング102で異常が発生したかを個別に判定することが可能になる。
【0059】
図5に示す太陽光発電用接続箱51は、図1の太陽光発電用接続箱1において、逆流防止ダイオード14と並列、かつ、キャパシタ2と直列にインダクタ(誘導素子)52を設け、キャパシタ2とインダクタ52とで分岐線11ごとに通過域(通過周波数帯域)の異なるバンドパスフィルタ53を形成するようにしたものである。
【0060】
この太陽光発電用接続箱51では、異常判定部6は、交流電圧発生器3が印加する交流電圧の周波数を制御することで、交流電圧を印加する太陽電池ストリング102を選択し、交流電圧発生器3が印加した交流電圧Vと、測定手段4が測定した交流電流Iとを基に、選択した太陽電池ストリング102の異常を判定することを繰返し、太陽電池ストリング102の異常を個別に判定するように構成される。太陽光発電用接続箱51では、図1の太陽光発電用接続箱1と同様に、測定手段4は集合線12に流れる交流電流を測定するように構成される。
【0061】
なお、交流電圧発生器3から、出力周波数を所定の帯域内で掃引した交流電圧を出力するようにし、受信機4bで交流電流の周波数特性を測定し、交流電圧発生器3で印加する交流電圧の周波数特性と、受信機4bで測定した交流電流の周波数特性とを基に、一括して各太陽電池ストリング102の異常を判定するように構成することも可能である。
【0062】
太陽光発電用接続箱51によれば、図4の太陽光発電用接続箱41と同様に、どの太陽電池ストリング102で異常が発生したかを個別に判定することが可能になる。さらに、図4の太陽光発電用接続箱41では分岐線11ごとに変流器4aを設ける必要があったが、図5の太陽光発電用接続箱51では分岐線11ごとにインダクタ52を設けるのみでよく、非常に低コストである。
【0063】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1 太陽光発電用接続箱
2 キャパシタ
3 交流電圧発生器
4 測定手段
4a 変流器
4b 受信機
5 制御装置
6 異常判定部
11 分岐線
12 集合線
14 逆流防止ダイオード
100 太陽光発電システム
101 太陽電池アレイ
102 太陽電池ストリング
103 太陽電池パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池パネルを直列接続した太陽電池ストリングを複数備えた太陽電池アレイに電気的に接続され、前記各太陽電池ストリングで発電した電力を集電して出力する太陽光発電用接続箱であって、
前記太陽電池ストリングのそれぞれと電気的に接続される入力用の複数の分岐線と、
該複数の分岐線を合流し、前記複数の分岐線を介して前記各太陽電池ストリングから入力された電力を集電して出力する出力用の集合線と、
前記分岐線のそれぞれに設けられ、前記集合線側から前記太陽電池ストリング側に向かって流れる電流を阻止する逆流防止ダイオードと、
前記逆流防止ダイオードのそれぞれに並列接続されたキャパシタと、
前記集合線に設けられ、前記集合線、前記分岐線、及び前記キャパシタを介して前記太陽電池アレイに交流電圧を印加可能な交流電圧発生器と、
前記太陽電池アレイに流れる交流電流を測定する測定手段と、
前記交流電圧発生器が印加した交流電圧と、前記測定手段が測定した交流電流とを基に、前記太陽電池アレイの異常を判定する異常判定部を有する制御装置と、
を備えたことを特徴とする太陽光発電用接続箱。
【請求項2】
前記測定手段は、前記集合線に流れる交流電流を測定するように構成され、
前記異常判定部は、前記交流電圧発生器が印加した交流電圧と、前記測定手段が測定した交流電流とを基に、前記太陽電池アレイの異常を判定するように構成される
請求項1記載の太陽光発電用接続箱。
【請求項3】
前記測定手段は、前記分岐線のそれぞれに流れる交流電流を測定するように構成され、
前記異常判定部は、前記交流電圧発生器が印加した交流電圧と、前記測定手段が測定した前記分岐線のそれぞれに流れる交流電流とを基に、前記太陽電池ストリングの異常を個別に判定するように構成される
請求項1記載の太陽光発電用接続箱。
【請求項4】
前記測定手段は、前記集合線に流れる交流電流を測定するように構成され、
前記逆流防止ダイオードと並列、かつ、前記キャパシタと直列にインダクタを設け、前記キャパシタと前記インダクタとで前記分岐線ごとに通過域の異なるバンドパスフィルタを形成するようにし、
前記異常判定部は、前記交流電圧発生器が印加する交流電圧の周波数を制御することで、交流電圧を印加する前記太陽電池ストリングを選択し、前記交流電圧発生器が印加した交流電圧と、前記測定手段が測定した交流電流とを基に、選択した前記太陽電池ストリングの異常を判定することを繰返し、前記太陽電池ストリングの異常を個別に判定するように構成される
請求項1記載の太陽光発電用接続箱。
【請求項5】
前記異常判定部は、前記太陽電池ストリングの発電中に、前記太陽電池アレイの異常を判定するように構成される
請求項1〜4いずれかに記載の太陽光発電用接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−16640(P2013−16640A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148427(P2011−148427)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】