太陽光発電用電力変換装置
【課題】従来の電力変換装置では、ゲート抵抗切り替え回路部に速い応答性が要求されるため、ノイズにより誤動作し易く、場合によっては、誤動作により装置の保護機能が働き、動作停止してしまうことがあった。
【解決手段】太陽電池1の直流電圧を交流電圧に変換し、交流の系統電源に電力を供給する電力変換装置2であって、電力変換装置2は、複数のパワー半導体スイッチSH、SLと、これらのパワー半導体スイッチSH、SLをオン/オフ動作させるゲート駆動回路GH、GLと、これらのゲート駆動回路に挿入されたゲート抵抗RG1、RG2と、ゲート駆動回路GH、GLにオン/オフ信号を供給すると共に、ゲート抵抗値を変更する制御信号を出力する制御回路22とを備え、制御回路22は、予め設定された時刻にゲート抵抗値変更信号を出力するようにした。
【解決手段】太陽電池1の直流電圧を交流電圧に変換し、交流の系統電源に電力を供給する電力変換装置2であって、電力変換装置2は、複数のパワー半導体スイッチSH、SLと、これらのパワー半導体スイッチSH、SLをオン/オフ動作させるゲート駆動回路GH、GLと、これらのゲート駆動回路に挿入されたゲート抵抗RG1、RG2と、ゲート駆動回路GH、GLにオン/オフ信号を供給すると共に、ゲート抵抗値を変更する制御信号を出力する制御回路22とを備え、制御回路22は、予め設定された時刻にゲート抵抗値変更信号を出力するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池で発電した電力を商用系統に連系させる太陽光発電用電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電用電力変換装置を構成する半導体素子に印加される電圧は、太陽電池電圧(Vdc)とターンオフ時のL・di/dt(Lは回路の浮遊インダクタンス)によるサージ電圧(ΔV)があり、一般的にサージ電圧(ΔV)は、半導体素子駆動回路のゲート抵抗値が小さいほど高くなる。従って、太陽電池電圧とサージ電圧の和が半導体素子の最大定格電圧(Vces)を超えないようにしなければならない。太陽光発電用電力変換装置は、太陽電池電圧が入力電圧となるが、この太陽電池電圧は、日射量、太陽電池温度、及び太陽電池の直並列数の組み合わせによるシステム構成により変化する。
【0003】
一般に、半導体素子のターンオフ時のL・di/dtによるサージ電圧(ΔV)と半導体素子損
失は、ゲート抵抗値が大きいほど増加しサージ電圧は低くなるといったトレードオフの関係にある。太陽光発電用電力変換装置のゲート駆動回路においては、サージ電圧が装置の耐圧を超えないようにゲート抵抗が設定されている。一方、モータ駆動用途等の一般的な電力変換装置のゲート駆動回路において、サージ電圧を所定の値に抑制しつつ半導体損失をできるだけ小さくする手段として、半導体素子温度、負荷電流、スイッチング周波数、入力電圧の大きさに応じてゲート抵抗を切り替える方法が特許文献1〜3等で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−199700号公報
【特許文献2】特開2002−119044号公報
【特許文献3】特開2002−125363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の先行技術では、変化する負荷電流や入力電圧に追従してゲート抵抗を切替える必要があるため、ゲート抵抗切替え回路部に速い応答性が要求され、そのために外部あるいは内部からのノイズにより誤動作し易い。その結果、大きなノイズを受けた場合、所望のゲート抵抗切替えが働かず、電圧が高く負荷電流が大きな場合、ゲート抵抗を大きくするといった動作ができず、サージ電圧が装置の耐圧を超過し、装置の保護機能により装置の動作が停止してしまうといった問題があった。また、太陽光発電用電力変換装置においては、太陽電池への日射や温度の変動が大きいため、電圧や負荷電流の変動が大きく、従来のゲート駆動回路では上記誤動作の影響が顕著なものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る太陽光発電用電力変換装置は、太陽電池の直流電圧を交流電圧に変換し、交流の系統電源に電力を供給する電力変換装置であって、前記電力変換装置は、複数のパワー半導体スイッチと、該パワー半導体スイッチをオン/オフ動作させるゲート駆動回路と、該ゲート駆動回路に挿入されたゲート抵抗と、前記ゲート駆動回路にオン/オフ信号を供給すると共に、前記ゲート抵抗値を変更する制御信号を出力する制御回路とを備え、該制御回路は、予め設定された時刻にゲート抵抗値変更信号を出力するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、一日の時刻に応じてゲート駆動回路のゲート抵抗を切替えることが可能となるので、発電量が多い期間にゲート抵抗を大きく設定し、発電量の小さな期間にはゲート抵抗を小さく設定できることから、一日トータルとして半導体損失を小さくすることが可能となる。また、変動が激しい太陽電池の出力に対応してゲート抵抗を切替える従来のゲート駆動回路で問題となる誤動作によるサージ電圧の超過といったことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る太陽光発電用電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図2】実施の形態1のゲート駆動回路の構成を示す回路図である。
【図3】パワー半導体スイッチのオン/オフのスイッチング動作時の端子間電圧と電流を示す図である。
【図4】太陽電池の1日の発電特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明に係る太陽光発電用電力変換装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る太陽光発電用電力変換装置の構成を示す回路図である。図1に示すように、太陽光発電システムは、大きく分けて、太陽電池1、太陽光発電用電力変換装置2、及び商用系統電源3から構成される。太陽光発電用電力変換装置2は、直流電力を発電する太陽電池1と、50Hz或いは60Hzの商用系統電源3との間に配置される。商用系統電源3は、単相3線式、または三相3線式の配電系統である。太陽光発電用電力変換装置2は、太陽電池1の直流電力を交流電力に変換し、商用系統電源3に供給する機能を有している。
【0011】
太陽光発電用電力変換装置2は、主回路21と制御回路22からなり、主回路21は、太陽電池1に接続された直流側スイッチ211、平滑コンデンサ212、入力部センサ213、インバータ214、トランス215、出力センサ216、及び商用系統電源3に接続される交流側スイッチ217で構成される。
【0012】
太陽電池1の直流電力は、制御回路22により制御される直流側スイッチ211を介してインバータ214に入力される。正側・負側の直流電圧間には平滑コンデンサ212が接続され、インバータ214の入力電圧を平滑化している。直流側の入力部センサ213は、インバータ214の入力電圧を検出し、検出された電圧は制御回路22に入力される。インバータ214の出力はトランス215の1次側に接続され、トランス215の2次側は、制御回路22により制御される交流側スイッチ217を介して商用系統電源3に接続されている。トランス215の出力電圧と電流は出力センサ216により検出され、検出された交流電圧及び交流電流は制御回路22に入力される。
【0013】
インバータ214は、直流側の電圧、交流側の電圧、及び電流に基づいて所望の交流電力を出力するように、パルス状の電圧をトランス215へ出力する。出力されたパルス状の電圧は、トランス215のインピーダンスにより平滑化され、滑らかな交流電圧となる。インバータ214を制御するゲート信号は、制御回路22により形成される。
【0014】
次に、太陽光発電用電力変換装置2のゲート駆動回路について説明する。図2は、太陽
電池1、制御回路22、直流側スイッチ211、平滑コンデンサ212、インバータ214の1列分の詳細及びゲート駆動回路GH、GLを示している。ゲート駆動回路GHは、インバータ214を構成する高電圧側のパワー半導体スイッチSHに接続され、パワー半導体スイッチSHのゲートSHGを駆動する。一方、ゲート駆動回路GLは、インバータ214を構成する低電圧側のパワー半導体スイッチSLに接続され、パワー半導体スイッチSLのゲートSLGを駆動する。
【0015】
ゲート駆動回路GHとGLは同じ構成なので、ここではゲート駆動回路GLのみの詳細な構成について説明する。低電圧側のパワー半導体スイッチSLのゲートSLGは、第1のゲート抵
抗RG1の一方の端子に接続されている。ゲート抵抗RG1の他方の端子は第2のゲート抵抗RG2の一方の端子と、切替え信号によってオン/オフするスイッチKSWの一方の端子に接続されている。スイッチKSWとゲート抵抗RG2の他方の端子は互いに接続され、ゲート駆動アンプGAMPの出力端子に接続されている。ゲート駆動アンプGAMPの入力端子は、制御回路22に接続され、制御回路22によって形成されるゲート信号が入力される。スイッチKSWの
切替え制御端子は、制御回路22に接続され、制御回路22によって形成されるスイッチKSW用の切替え信号が入力される。
【0016】
スイッチKSWは、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)で構成されている。ゲート駆動アンプGAMPは、ゲート抵抗RG1、RG2を通してパワー半導体スイッチSLのゲートSLGを駆動するためのもので、入力されたハイ(high)電圧あるい
はロウ(low)電圧の駆動電流や電圧を増幅する機能がある。
【0017】
以下、動作の説明において、高電圧側のパワー半導体スイッチSHと低圧側のパワー半導体スイッチSLを区別する必要がない場合は、以下単にパワー半導体スイッチとして説明する。
【0018】
ここで、パワー半導体スイッチがオン状態からオフ状態に移行するときの電圧・電流波形について説明する。図3は、パワー半導体スイッチの端子間電圧Vdcと電流Ioを示して
いる。パワー半導体スイッチのゲートがハイ電圧からロウ電圧に変化すると、端子間電圧Vdcが上昇し、電流Ioが減少する。平滑コンデンサ212とインバータ回路214で構成
する閉回路には浮遊のインダクタンスが存在するため、電流が減少するスピード(di/dt
)に応じたサージ電圧ΔVが発生し、そのサージ電圧ΔVがパワー半導体スイッチの端子間に印加される。このサージ電圧の最大値とインバータの入力直流電圧の最大値の和は、パワー半導体素子の耐圧Vcesを超過しないように設計されている。
【0019】
電流Ioが減少するスピードは、ゲート抵抗RG1、RG2の値によって制御でき、抵抗値を大きくするとスピードが緩く、小さくすると急になる。従って、サージ電圧ΔVの大小をゲ
ート抵抗RG1、RG2の値で制御することができ、電流が大きく(電力が大きく)di/dtが大
きくなる場合はゲート抵抗を大きく、電流が小さく(電力が小さく)di/dtが小さくなる
場合はゲート抵抗を小さく設定することにより、サージ電圧ΔVの電圧を制御することが
可能となる。
【0020】
なお、インバータ214の入力直流電圧(太陽電池1の電圧)の大きさに応じてパワー半導体スイッチの耐圧との余裕度は変わるが、太陽電池1の電圧は、その出力(電流)で動作点電圧はあまり変化しないことから、太陽光発電用電力変換装置2においては、太陽光発電システムの設計時点で通常動作時の電圧がほぼ決まる。よって、太陽光発電用電力変換装置2の場合、インバータ入力電圧の変化が小さく、従来の電力変換装置に用いられるゲート駆動回路ほどインバータ入力電圧を考慮する必要がない。
【0021】
また、太陽電池1は温度によって発電電圧が変化する。発電電力が大きく(発電電流が
大きく)、太陽電池1の温度が高い状態の場合、発電電圧は低くなり、発電電力が小さく(発電電流が小さく)、太陽電池1の温度が低い状態の場合、発電電圧は高くなる。よって、太陽電池1の温度の変化を考えても、太陽光発電用電力変換装置2に用いられるゲート駆動回路では、電圧だけ、あるいは電流だけでのゲート抵抗切替え動作では不十分で、電力量での切替え動作が必要である。
【0022】
さらに、電圧センサ、電流センサで電圧、電流を検出して電力量を演算しその電力量を把握する方法では、日射急変(日の陰り等で発生する電力量の急変)を考慮すると、下述のような問題がある。発電電力が高い状態から日が陰り、その陰りが急に取り除かれた場合、ゲート抵抗値が高い状態から低い状態に応答性よく変化させる必要があることから、ゲート抵抗の切替えは応答性をよくしなければならないが、応答性のよい制御系は誤動作し易い。
【0023】
次に、本実施の形態におけるゲート駆動回路内のゲート抵抗値を切替える方法について説明する。図4は、1日の太陽電池の発電電力の変化を示している。この図には、上記のような不規則な電力急変は示されておらず、時間平均的な変化が示されている。図に示したように、太陽電池は、朝及び夕方の発電電力が小さく、昼間の発電力が大きい。本発明は、この太陽電池電力の1日の特性を利用して、朝方(例えば〜9時)及び夕方(例えば15時〜)はゲート抵抗値を小さく、昼間(9時〜15時)はゲート抵抗値を大きく設定する。
【0024】
制御回路22内には、図示しないマイクロコンピュータと時計機能を備えている。マイクロコンピュータは時計機能から時刻を読み取り、予め設定された期間、ロウ電圧信号(オフ信号)をゲート駆動回路GL内のスイッチKSWの切替え制御端子に出力し、それ以外の期間はハイ電圧信号(オン信号)をスイッチKSWの切替え制御端子に出力する。図2から明らかなように、ゲート抵抗値は、スイッチKSWがオフの場合はゲート抵抗RG1とRG2の和の値となり、スイッチKSWがオンの場合はゲート抵抗RG1のみの値となる。本実施の形態の場合、9時以前と15時以降の期間(期間AとC:発電電力小)はゲート抵抗はRG1、9時〜15時の期間(期間B:発電電力大)はゲート抵抗はRG1+RG2となる。この動作はゲート駆動回路GHにおいても同じである。
【0025】
なお、ゲート抵抗値の切替えは、上記のように、複数の抵抗をスイッチにより切替える方法に限るものではなく、例えば、制御装置22から与える電圧等の信号により抵抗値が変わる単一の抵抗を用いることも考えられる。
【0026】
上述のように、本発明は、太陽電池の発電量が日中昼間に多く、朝方や夕方に少ないという特性に着目し、時間帯に応じてゲート抵抗値を調整する。日中昼間は負荷電流が大きいためゲート抵抗値を大きく設定し、朝方や夕方は負荷電流が小さいためゲート抵抗値を小さく設定する。このように、ゲート駆動回路のゲート抵抗RG1、RG2の切替えを時刻で行うことにより、1日に2回のみのゲート抵抗の切替え動作となっていることから、切替え動作に高い応答性は必要なく、誤動作のない安定した制御動作が可能となる。
【0027】
本発明では、ゲート抵抗の切替え時刻の設定を以下のようにいくつかのパターンで設定する。
第1のパターン:
太陽光発電システム設計時に太陽電池1の電圧を把握し、太陽光発電用電力変換装置の出荷時に時計機能により、その切替え時刻を設定する。
第2のパターン:
制御回路22に外部との通信機能を備え、太陽光発電用電力変換装置を設置した時に、その太陽電池1の電圧から作業者がその通信機能を通して、時計機能により、その切替え
時刻を設定する。
第3のパターン:
制御回路22に外部との通信機能を備え、その通信機能により外部の中央システム制御装置との通信を可能とする。太陽光発電システム稼動時に、中央システム制御装置からの通信により、時計機能により、その切替え時刻を設定する。この場合、季節により切替え時刻を変更することが可能となり、季節に応じて変化する電力量に対応してゲート抵抗を切替えることができることから、上記よりも1年を通して見た場合電力損失の低減が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 太陽電池、 2 太陽光発電用電力変換装置、
3 商用系統電源、 21 主回路、
22 制御回路、 211 直流側スイッチ、
212 平滑コンデンサ、 213 入力部センサ、
214 インバータ、 215 トランス、
216 出力センサ、 217 交流側スイッチ、
GH、GL ゲート駆動回路、
SH、SL パワー半導体スイッチ、
SHG、SLG パワー半導体スイッチのゲート、
RG1、RG2 ゲート抵抗、
GAMP ゲート駆動アンプ、
KSW スイッチ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池で発電した電力を商用系統に連系させる太陽光発電用電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電用電力変換装置を構成する半導体素子に印加される電圧は、太陽電池電圧(Vdc)とターンオフ時のL・di/dt(Lは回路の浮遊インダクタンス)によるサージ電圧(ΔV)があり、一般的にサージ電圧(ΔV)は、半導体素子駆動回路のゲート抵抗値が小さいほど高くなる。従って、太陽電池電圧とサージ電圧の和が半導体素子の最大定格電圧(Vces)を超えないようにしなければならない。太陽光発電用電力変換装置は、太陽電池電圧が入力電圧となるが、この太陽電池電圧は、日射量、太陽電池温度、及び太陽電池の直並列数の組み合わせによるシステム構成により変化する。
【0003】
一般に、半導体素子のターンオフ時のL・di/dtによるサージ電圧(ΔV)と半導体素子損
失は、ゲート抵抗値が大きいほど増加しサージ電圧は低くなるといったトレードオフの関係にある。太陽光発電用電力変換装置のゲート駆動回路においては、サージ電圧が装置の耐圧を超えないようにゲート抵抗が設定されている。一方、モータ駆動用途等の一般的な電力変換装置のゲート駆動回路において、サージ電圧を所定の値に抑制しつつ半導体損失をできるだけ小さくする手段として、半導体素子温度、負荷電流、スイッチング周波数、入力電圧の大きさに応じてゲート抵抗を切り替える方法が特許文献1〜3等で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−199700号公報
【特許文献2】特開2002−119044号公報
【特許文献3】特開2002−125363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の先行技術では、変化する負荷電流や入力電圧に追従してゲート抵抗を切替える必要があるため、ゲート抵抗切替え回路部に速い応答性が要求され、そのために外部あるいは内部からのノイズにより誤動作し易い。その結果、大きなノイズを受けた場合、所望のゲート抵抗切替えが働かず、電圧が高く負荷電流が大きな場合、ゲート抵抗を大きくするといった動作ができず、サージ電圧が装置の耐圧を超過し、装置の保護機能により装置の動作が停止してしまうといった問題があった。また、太陽光発電用電力変換装置においては、太陽電池への日射や温度の変動が大きいため、電圧や負荷電流の変動が大きく、従来のゲート駆動回路では上記誤動作の影響が顕著なものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る太陽光発電用電力変換装置は、太陽電池の直流電圧を交流電圧に変換し、交流の系統電源に電力を供給する電力変換装置であって、前記電力変換装置は、複数のパワー半導体スイッチと、該パワー半導体スイッチをオン/オフ動作させるゲート駆動回路と、該ゲート駆動回路に挿入されたゲート抵抗と、前記ゲート駆動回路にオン/オフ信号を供給すると共に、前記ゲート抵抗値を変更する制御信号を出力する制御回路とを備え、該制御回路は、予め設定された時刻にゲート抵抗値変更信号を出力するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、一日の時刻に応じてゲート駆動回路のゲート抵抗を切替えることが可能となるので、発電量が多い期間にゲート抵抗を大きく設定し、発電量の小さな期間にはゲート抵抗を小さく設定できることから、一日トータルとして半導体損失を小さくすることが可能となる。また、変動が激しい太陽電池の出力に対応してゲート抵抗を切替える従来のゲート駆動回路で問題となる誤動作によるサージ電圧の超過といったことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る太陽光発電用電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図2】実施の形態1のゲート駆動回路の構成を示す回路図である。
【図3】パワー半導体スイッチのオン/オフのスイッチング動作時の端子間電圧と電流を示す図である。
【図4】太陽電池の1日の発電特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明に係る太陽光発電用電力変換装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る太陽光発電用電力変換装置の構成を示す回路図である。図1に示すように、太陽光発電システムは、大きく分けて、太陽電池1、太陽光発電用電力変換装置2、及び商用系統電源3から構成される。太陽光発電用電力変換装置2は、直流電力を発電する太陽電池1と、50Hz或いは60Hzの商用系統電源3との間に配置される。商用系統電源3は、単相3線式、または三相3線式の配電系統である。太陽光発電用電力変換装置2は、太陽電池1の直流電力を交流電力に変換し、商用系統電源3に供給する機能を有している。
【0011】
太陽光発電用電力変換装置2は、主回路21と制御回路22からなり、主回路21は、太陽電池1に接続された直流側スイッチ211、平滑コンデンサ212、入力部センサ213、インバータ214、トランス215、出力センサ216、及び商用系統電源3に接続される交流側スイッチ217で構成される。
【0012】
太陽電池1の直流電力は、制御回路22により制御される直流側スイッチ211を介してインバータ214に入力される。正側・負側の直流電圧間には平滑コンデンサ212が接続され、インバータ214の入力電圧を平滑化している。直流側の入力部センサ213は、インバータ214の入力電圧を検出し、検出された電圧は制御回路22に入力される。インバータ214の出力はトランス215の1次側に接続され、トランス215の2次側は、制御回路22により制御される交流側スイッチ217を介して商用系統電源3に接続されている。トランス215の出力電圧と電流は出力センサ216により検出され、検出された交流電圧及び交流電流は制御回路22に入力される。
【0013】
インバータ214は、直流側の電圧、交流側の電圧、及び電流に基づいて所望の交流電力を出力するように、パルス状の電圧をトランス215へ出力する。出力されたパルス状の電圧は、トランス215のインピーダンスにより平滑化され、滑らかな交流電圧となる。インバータ214を制御するゲート信号は、制御回路22により形成される。
【0014】
次に、太陽光発電用電力変換装置2のゲート駆動回路について説明する。図2は、太陽
電池1、制御回路22、直流側スイッチ211、平滑コンデンサ212、インバータ214の1列分の詳細及びゲート駆動回路GH、GLを示している。ゲート駆動回路GHは、インバータ214を構成する高電圧側のパワー半導体スイッチSHに接続され、パワー半導体スイッチSHのゲートSHGを駆動する。一方、ゲート駆動回路GLは、インバータ214を構成する低電圧側のパワー半導体スイッチSLに接続され、パワー半導体スイッチSLのゲートSLGを駆動する。
【0015】
ゲート駆動回路GHとGLは同じ構成なので、ここではゲート駆動回路GLのみの詳細な構成について説明する。低電圧側のパワー半導体スイッチSLのゲートSLGは、第1のゲート抵
抗RG1の一方の端子に接続されている。ゲート抵抗RG1の他方の端子は第2のゲート抵抗RG2の一方の端子と、切替え信号によってオン/オフするスイッチKSWの一方の端子に接続されている。スイッチKSWとゲート抵抗RG2の他方の端子は互いに接続され、ゲート駆動アンプGAMPの出力端子に接続されている。ゲート駆動アンプGAMPの入力端子は、制御回路22に接続され、制御回路22によって形成されるゲート信号が入力される。スイッチKSWの
切替え制御端子は、制御回路22に接続され、制御回路22によって形成されるスイッチKSW用の切替え信号が入力される。
【0016】
スイッチKSWは、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)で構成されている。ゲート駆動アンプGAMPは、ゲート抵抗RG1、RG2を通してパワー半導体スイッチSLのゲートSLGを駆動するためのもので、入力されたハイ(high)電圧あるい
はロウ(low)電圧の駆動電流や電圧を増幅する機能がある。
【0017】
以下、動作の説明において、高電圧側のパワー半導体スイッチSHと低圧側のパワー半導体スイッチSLを区別する必要がない場合は、以下単にパワー半導体スイッチとして説明する。
【0018】
ここで、パワー半導体スイッチがオン状態からオフ状態に移行するときの電圧・電流波形について説明する。図3は、パワー半導体スイッチの端子間電圧Vdcと電流Ioを示して
いる。パワー半導体スイッチのゲートがハイ電圧からロウ電圧に変化すると、端子間電圧Vdcが上昇し、電流Ioが減少する。平滑コンデンサ212とインバータ回路214で構成
する閉回路には浮遊のインダクタンスが存在するため、電流が減少するスピード(di/dt
)に応じたサージ電圧ΔVが発生し、そのサージ電圧ΔVがパワー半導体スイッチの端子間に印加される。このサージ電圧の最大値とインバータの入力直流電圧の最大値の和は、パワー半導体素子の耐圧Vcesを超過しないように設計されている。
【0019】
電流Ioが減少するスピードは、ゲート抵抗RG1、RG2の値によって制御でき、抵抗値を大きくするとスピードが緩く、小さくすると急になる。従って、サージ電圧ΔVの大小をゲ
ート抵抗RG1、RG2の値で制御することができ、電流が大きく(電力が大きく)di/dtが大
きくなる場合はゲート抵抗を大きく、電流が小さく(電力が小さく)di/dtが小さくなる
場合はゲート抵抗を小さく設定することにより、サージ電圧ΔVの電圧を制御することが
可能となる。
【0020】
なお、インバータ214の入力直流電圧(太陽電池1の電圧)の大きさに応じてパワー半導体スイッチの耐圧との余裕度は変わるが、太陽電池1の電圧は、その出力(電流)で動作点電圧はあまり変化しないことから、太陽光発電用電力変換装置2においては、太陽光発電システムの設計時点で通常動作時の電圧がほぼ決まる。よって、太陽光発電用電力変換装置2の場合、インバータ入力電圧の変化が小さく、従来の電力変換装置に用いられるゲート駆動回路ほどインバータ入力電圧を考慮する必要がない。
【0021】
また、太陽電池1は温度によって発電電圧が変化する。発電電力が大きく(発電電流が
大きく)、太陽電池1の温度が高い状態の場合、発電電圧は低くなり、発電電力が小さく(発電電流が小さく)、太陽電池1の温度が低い状態の場合、発電電圧は高くなる。よって、太陽電池1の温度の変化を考えても、太陽光発電用電力変換装置2に用いられるゲート駆動回路では、電圧だけ、あるいは電流だけでのゲート抵抗切替え動作では不十分で、電力量での切替え動作が必要である。
【0022】
さらに、電圧センサ、電流センサで電圧、電流を検出して電力量を演算しその電力量を把握する方法では、日射急変(日の陰り等で発生する電力量の急変)を考慮すると、下述のような問題がある。発電電力が高い状態から日が陰り、その陰りが急に取り除かれた場合、ゲート抵抗値が高い状態から低い状態に応答性よく変化させる必要があることから、ゲート抵抗の切替えは応答性をよくしなければならないが、応答性のよい制御系は誤動作し易い。
【0023】
次に、本実施の形態におけるゲート駆動回路内のゲート抵抗値を切替える方法について説明する。図4は、1日の太陽電池の発電電力の変化を示している。この図には、上記のような不規則な電力急変は示されておらず、時間平均的な変化が示されている。図に示したように、太陽電池は、朝及び夕方の発電電力が小さく、昼間の発電力が大きい。本発明は、この太陽電池電力の1日の特性を利用して、朝方(例えば〜9時)及び夕方(例えば15時〜)はゲート抵抗値を小さく、昼間(9時〜15時)はゲート抵抗値を大きく設定する。
【0024】
制御回路22内には、図示しないマイクロコンピュータと時計機能を備えている。マイクロコンピュータは時計機能から時刻を読み取り、予め設定された期間、ロウ電圧信号(オフ信号)をゲート駆動回路GL内のスイッチKSWの切替え制御端子に出力し、それ以外の期間はハイ電圧信号(オン信号)をスイッチKSWの切替え制御端子に出力する。図2から明らかなように、ゲート抵抗値は、スイッチKSWがオフの場合はゲート抵抗RG1とRG2の和の値となり、スイッチKSWがオンの場合はゲート抵抗RG1のみの値となる。本実施の形態の場合、9時以前と15時以降の期間(期間AとC:発電電力小)はゲート抵抗はRG1、9時〜15時の期間(期間B:発電電力大)はゲート抵抗はRG1+RG2となる。この動作はゲート駆動回路GHにおいても同じである。
【0025】
なお、ゲート抵抗値の切替えは、上記のように、複数の抵抗をスイッチにより切替える方法に限るものではなく、例えば、制御装置22から与える電圧等の信号により抵抗値が変わる単一の抵抗を用いることも考えられる。
【0026】
上述のように、本発明は、太陽電池の発電量が日中昼間に多く、朝方や夕方に少ないという特性に着目し、時間帯に応じてゲート抵抗値を調整する。日中昼間は負荷電流が大きいためゲート抵抗値を大きく設定し、朝方や夕方は負荷電流が小さいためゲート抵抗値を小さく設定する。このように、ゲート駆動回路のゲート抵抗RG1、RG2の切替えを時刻で行うことにより、1日に2回のみのゲート抵抗の切替え動作となっていることから、切替え動作に高い応答性は必要なく、誤動作のない安定した制御動作が可能となる。
【0027】
本発明では、ゲート抵抗の切替え時刻の設定を以下のようにいくつかのパターンで設定する。
第1のパターン:
太陽光発電システム設計時に太陽電池1の電圧を把握し、太陽光発電用電力変換装置の出荷時に時計機能により、その切替え時刻を設定する。
第2のパターン:
制御回路22に外部との通信機能を備え、太陽光発電用電力変換装置を設置した時に、その太陽電池1の電圧から作業者がその通信機能を通して、時計機能により、その切替え
時刻を設定する。
第3のパターン:
制御回路22に外部との通信機能を備え、その通信機能により外部の中央システム制御装置との通信を可能とする。太陽光発電システム稼動時に、中央システム制御装置からの通信により、時計機能により、その切替え時刻を設定する。この場合、季節により切替え時刻を変更することが可能となり、季節に応じて変化する電力量に対応してゲート抵抗を切替えることができることから、上記よりも1年を通して見た場合電力損失の低減が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 太陽電池、 2 太陽光発電用電力変換装置、
3 商用系統電源、 21 主回路、
22 制御回路、 211 直流側スイッチ、
212 平滑コンデンサ、 213 入力部センサ、
214 インバータ、 215 トランス、
216 出力センサ、 217 交流側スイッチ、
GH、GL ゲート駆動回路、
SH、SL パワー半導体スイッチ、
SHG、SLG パワー半導体スイッチのゲート、
RG1、RG2 ゲート抵抗、
GAMP ゲート駆動アンプ、
KSW スイッチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の直流電圧を交流電圧に変換し、交流の系統電源に電力を供給する電力変換装置であって、前記電力変換装置は、複数のパワー半導体スイッチと、該パワー半導体スイッチをオン/オフ動作させるゲート駆動回路と、該ゲート駆動回路に挿入されたゲート抵抗と、前記ゲート駆動回路にオン/オフ信号を供給すると共に、前記ゲート抵抗値を変更する制御信号を出力する制御回路とを備え、該制御回路は、予め設定された時刻にゲート抵抗値変更信号を出力するようにしたことを特徴とする太陽光発電用電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、時計機能を内蔵し、該時計機能により、前記ゲート抵抗値変更信号を出力する時刻を設定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電用電力変換装置。
【請求項3】
前記制御回路は、外部との通信機能を備え、該通信機能を通して前記時計機能により前記ゲート抵抗値変更信号を出力する時刻を設定するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電用電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、外部との通信機能により、季節に応じて前記ゲート抵抗値変更の設定時刻を変え得るようにしたことを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電用電力変換装置。
【請求項5】
前記ゲート抵抗は、スイッチにより切替え可能な複数の抵抗からなり、前記制御回路は、前記スイッチの切替え信号を出力することによりゲート抵抗値変更を可能にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽光発電用電力変換装置。
【請求項1】
太陽電池の直流電圧を交流電圧に変換し、交流の系統電源に電力を供給する電力変換装置であって、前記電力変換装置は、複数のパワー半導体スイッチと、該パワー半導体スイッチをオン/オフ動作させるゲート駆動回路と、該ゲート駆動回路に挿入されたゲート抵抗と、前記ゲート駆動回路にオン/オフ信号を供給すると共に、前記ゲート抵抗値を変更する制御信号を出力する制御回路とを備え、該制御回路は、予め設定された時刻にゲート抵抗値変更信号を出力するようにしたことを特徴とする太陽光発電用電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、時計機能を内蔵し、該時計機能により、前記ゲート抵抗値変更信号を出力する時刻を設定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電用電力変換装置。
【請求項3】
前記制御回路は、外部との通信機能を備え、該通信機能を通して前記時計機能により前記ゲート抵抗値変更信号を出力する時刻を設定するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電用電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、外部との通信機能により、季節に応じて前記ゲート抵抗値変更の設定時刻を変え得るようにしたことを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電用電力変換装置。
【請求項5】
前記ゲート抵抗は、スイッチにより切替え可能な複数の抵抗からなり、前記制御回路は、前記スイッチの切替え信号を出力することによりゲート抵抗値変更を可能にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽光発電用電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−222853(P2012−222853A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82695(P2011−82695)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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