説明

太陽光発電装置およびその設置方法

【課題】十分な空気を太陽光発電パネルの冷却のためにスムーズに導入することのできる太陽光発電装置を提供する。
【解決手段】建物の屋根面3に太陽光発電パネル1を保持したパネル体10と、パネル体10を支持する架台2とを設け、架台2は、パネル体10の縁部のうち屋根面3の傾斜方向に沿う縦辺を構成する縦枠13を支持固定する縦レール部材20を有し、縦レール部材20が所定間隔で配置されてパネル体10が屋根面3の傾斜方向と直交する左右方向に沿って複数並設され、パネル体10の軒側端面に沿って、パネル体10と屋根面3との間で開口する空気導入口80が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根に設置される太陽光発電パネルを支持してなる太陽光発電装置およびその設置方法に関し、特に太陽光発電パネルの下面側に空気を導入して冷却を図る太陽光発電装置およびその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根面に太陽光発電パネルを設置するには、それを支持、固定する支持構造を設け、太陽光発電装置を構成する必要がある。太陽光発電装置のうち、屋根一体型の構造では、まず、木材からなる野地板に防水加工を施した上で、その表面に鋼板を敷設する。この鋼板の上、または鋼板の下に潜り込ませるようにして、太陽光発電パネルを支持する架台を設置する。太陽光発電パネルは、これを四周に渡って保持する枠体に囲まれてパネル体を構成しており、パネル体は枠体の周縁部が架台に載置され、固定がなされる。
【0003】
太陽光発電パネルは、温度が上昇すると効率が低下するため、適宜冷却する必要がある。そのために、太陽光発電パネルと屋根面との間の空間に空気を導入し、この空気の流れによって太陽光発電パネルを冷却しようとした構造が知られている。かかる構成を有する太陽光発電装置としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3373064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の太陽光発電装置では、特許文献1のように屋根面の下側から孔を介してパネル体の下側に空気を導入するものであったので、導入経路が長く、またその大きさも小さいので、十分に空気を導入できないことがあった。また、上向きに導入口を設けていると、ゴミが溜まりやすいなどの問題もあった。
【0006】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、十分な空気を太陽光発電パネルの冷却のためにスムーズに導入することのできる太陽光発電装置およびその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る太陽光発電装置は、建物の屋根面に太陽光発電パネルが固定される太陽光発電装置において、
前記太陽光発電パネルを保持してなるパネル体と、該パネル体を支持する架台とが設けられ、
前記パネル体は前記太陽光発電パネルの前記屋根面の傾斜方向に沿う縦辺を保持する縦枠を有し、前記架台は前記パネル体の縦枠を支持固定するパネル固定部を備えた縦レール部材を有し、該縦レール部材が所定間隔で配置されて前記パネル体が前記屋根面の傾斜方向と直交する左右方向に沿って複数並設され、前記パネル体の軒側端面に沿って、前記パネル体と屋根面との間で開口する空気導入口が設けられることを特徴として構成されている。
【0008】
また、本発明に係る太陽光発電装置は、前記縦レール部材の軒側端部には、前記空気導入口を有する軒側端部材が固定され、該軒側端部材は並設される前記パネル体の軒側端面に沿って伸びる長尺部材からなることを特徴として構成されている。
【0009】
さらに、本発明に係る太陽光発電装置は、前記軒側端部材は、前記パネル体の軒側辺前方を覆う前面カバー部と、該前面カバー部から前記パネル体側に伸びる上面カバー部とを有し、前記前面カバー部の下端と屋根面の間の隙間によって前記空気導入口が形成され、前記上面カバー部は前記パネル体と同等の高さに配置されることを特徴として構成されている。
【0010】
さらにまた、本発明に係る太陽光発電装置は、前記軒側端部材の前面カバー部と上面カバー部に覆われる領域には、前記空気導入口からの空気の流路と対向する返し面部を有する返し部材が設けられることを特徴として構成されている。
【0011】
そして、本発明に係る太陽光発電装置は、前記返し面部の下方には、前記返し面部の下端から屋根面または屋根面近傍まで伸びる遮蔽面部が設けられ、該遮蔽面部と屋根面の間には孔部または隙間部が形成されることを特徴として構成されている。
【0012】
また、本発明に係る太陽光発電装置は、前記空気導入口は、該空気導入口よりも高い位置に形成される空気排出口と繋がっていることを特徴として構成されている。
【0013】
さらに、本発明に係る太陽光発電装置の設置方法は、建物の屋根面に太陽光発電パネルを固定する太陽光発電装置の設置方法において、
前記太陽光発電パネルを保持してなり、該太陽光発電パネルの前記屋根面の傾斜方向に沿う縦辺を保持する縦枠を有するパネル体と、該パネル体を支持し、前記パネル体の縦枠を支持固定するパネル固定部を備えた縦レール部材を有する架台とを前記屋根面に固定し、
前記縦レール部材を所定間隔で配置し、前記パネル体は前記屋根面の傾斜方向と直交する左右方向に沿って複数並設し、前記パネル体の軒側端面に沿って、前記パネル体と屋根面との間で開口する空気導入口を形成することを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る太陽光発電装置によれば、縦レール部材が所定間隔で配置されてパネル体が屋根面の傾斜方向と直交する左右方向に沿って複数並設され、パネル体の軒側端面に沿って、パネル体と屋根面との間で開口する空気導入口が設けられることにより、屋根面の傾斜方向に沿って空気の流路が形成され、かつパネル体の軒側端面に沿う大きな空気導入口を形成することができるので、太陽光発電パネルの冷却のための空気を大量に取り込むことができると共に、冷却経路も効率的にすることができ、十分な空気を太陽光発電パネルの冷却のためにスムーズに導入することができる。
【0015】
また、本発明に係る太陽光発電装置によれば、縦レール部材の軒側端部には、空気導入口を有する軒側端部材が固定され、軒側端部材は並設されるパネル体の軒側端面に沿って伸びる長尺部材からなることにより、空気導入口を有する軒側端部材の固定を、空気の流路を阻害することなく行うことができる。
【0016】
さらに、本発明に係る太陽光発電装置によれば、前面カバー部の下端と屋根面の間の隙間によって空気導入口が形成され、上面カバー部はパネル体と同等の高さに配置されることにより、前面カバー部により屋根面とパネル体の間の領域に鳥等が侵入することを防止すると共に、空気の流路のための空間を十分に確保することができる。
【0017】
さらにまた、本発明に係る太陽光発電装置によれば、軒側端部材の前面カバー部と上面カバー部に覆われる領域には、空気導入口からの空気の流路と対向する返し面部を有する返し部材が設けられることにより、風雨が強い場合に、屋根面とパネル体の間の領域に雨水が浸入することを防止することができる。
【0018】
そして、本発明に係る太陽光発電装置によれば、返し面部の下方には、返し面部の下端から屋根面または屋根面近傍まで伸びる遮蔽面部が設けられ、遮蔽面部と屋根面の間には孔部または隙間部が形成されることにより、屋根面に沿って雨水が浸入することを防止すると共に、浸入した水は隙間部から排水することができる。
【0019】
また、本発明に係る太陽光発電装置によれば、空気導入口は、該空気導入口よりも高い位置に形成される空気排出口と繋がっていることにより、自然対流により円滑に空気を通すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態における太陽光発電装置の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図2のうち縦レール部材付近の拡大図である。
【図5】図4の分解図である。
【図6】図3のうち中間ブラケット付近の拡大図である。
【図7】図3のうち軒側端部材付近の拡大図である。
【図8】縦レール部材端部へのスタータ部材の取付前後の状態を表した斜視図である。
【図9】図3のうち棟側端部材付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。本実施形態の太陽光発電装置は、傾斜面状に構成されてなる建物の屋根に取付けられるものである。すなわち、太陽光発電装置は、屋根面の傾斜に沿って設けられている。また、本実施形態の太陽光発電装置は、建物の施工時に屋根と一体的に形成されるものであり、建物の屋根を兼ねた屋根一体型の支持構造を有してなるものである。
【0022】
図1には、本実施形態における太陽光発電装置の平面図を示している。本実施形態では、屋根面の傾斜方向に沿って2枚、屋根面の傾斜方向と直交する左右方向に沿って3枚の太陽光発電パネル1を並設しており、合計で6枚の太陽光発電パネル1を支持固定している。太陽光発電パネル1は、方形状に枠組みされた枠体11によって周縁部を保持されてパネル体10を構成しており、このパネル体10が屋根面に設置される架台2によって支持されている。
【0023】
枠体11は、太陽光発電パネル1の縁部のうち屋根面の傾斜方向に沿う縦辺を保持する縦枠13と、太陽光発電パネル1の縁部のうち屋根面の傾斜方向と直交する左右方向に沿う横辺を保持する横枠12とからなっている。横枠12は、パネル体10の上辺を構成する上枠50と、パネル体10の下辺を構成する下枠55とからなっている。縦枠13は、架台2を構成する縦レール部材20によって支持固定されており、横枠12は、架台2を構成する中間ブラケット21によって支持されている。
【0024】
架台2を構成する縦レール部材20は、左右方向に隣接するパネル体10の縦辺をそれぞれ支持固定できるように、長尺状に形成され、左右方向に一定間隔で配置される。本実施形態では、パネル体10は左右方向に3枚配置されるので、図1に示すように、左右方向両端に配置されて一方側のみパネル体10を支持固定する縦レール部材20と、左右方向中間位置に配置されて両側でパネル体10を支持固定する縦レール部材20が、それぞれ設けられる。
【0025】
パネル体10の横辺については、短尺状に形成された中間ブラケット21によって支持される。その詳細な構成については後述する。また、太陽光発電装置の下端部には、左右方向に沿って軒側端部材22が、太陽光発電装置の上端部には、左右方向に沿って棟側端部材23が、それぞれ設けられる。
【0026】
太陽光発電装置につきより詳細に説明する。図2には図1のA−A断面図を、図3には図1のB−B断面図を、それぞれ示している。なお、図2はA−A断面のうち左半分を省略すると共に、中間の一部を省略し、また、図3ではB−B断面のうち中間の一部を省略している。図2に示すように、建物の屋根面3は、左右方向に一定間隔で配置される垂木32によって野地板30が支持されて構成されている。野地板30は木材からなり、その表面には防水シート31が張られている。
【0027】
屋根面3の表面には、鋼板4が敷設され、鋼板4の上に架台2が設置されてパネル体10を支持固定している。架台2は、前述のようにパネル体10の縦辺を支持固定する縦レール部材20を有している。縦レール部材20は、垂木32の間隔に合わせてその直上に配置され、屋根面3及び垂木32に対してビス止め固定される。これにより、架台2の固定強度を大きくすることができる。
【0028】
架台2は、縦レール部材20と、縦レール部材20間に設けられる中間ブラケット21とによって構成されている。縦レール部材20は、パネル体10の縦枠13を長手方向に沿って支持し、中間ブラケット21は、パネル体10の横枠12を一定間隔毎に支持している。中間ブラケット21の左右方向の長さは、縦レール部材20間の距離よりも小さいため、架台2にはパネル体10の下方に屋根面の傾斜方向に沿って貫通する空間領域が形成され、この空間領域を空気が抜けることができるようになっている。
【0029】
図3に示すように、中間ブラケット21は、屋根面の傾斜方向に沿って隣接する2枚のパネル体10を構成する各横枠12、12を支持し、棟側端部と軒側端部では、それぞれ1つの横枠12を支持しており、各パネル体10の左右方向における中間部において、パネル体10の厚み方向への移動を規制している。これにより、風圧等によるパネル体10の撓みを防止することができる。
【0030】
次に、縦レール部材20の固定構造につき詳細に説明する。図4には図2のうち縦レール部材20付近の拡大図を、図5には図4の分解図を、それぞれ示している。縦レール部材20は、屋根面3に敷設される鋼板4に載置され、鋼板4を介して屋根面3に対して固定される底面部40と、底面部40から立ち上がる内側レール部41及び外側レール部42と、内側レール部41のさらに内側に形成されるアタッチメント固定部43を有している。
【0031】
底面部40は、前述のように鋼板4の突き合わせ部5よりも幅広となるように形成されていて、突き合わせ部5を外部に直接露出させないようにしている。また、底面部40の中央位置において、縦レール部材20はビス48によって屋根面3に対し固定されている。
【0032】
内側レール部41と外側レール部42は、それぞれアタッチメント固定部43を挟んだ一組の立ち上がり片からなっている。内側レール部41は、底面部40から垂直方向に立ち上がっており、その上端部にはそれぞれ縦レール部材20の中央側に向かって伸びる面状のパネル固定部44を有していて、内側レール部41とパネル固定部44とで断面略L字状をなすように形成されている。
【0033】
縦レール部材20は、外側レール部42と内側レール部41を備えているから、底面部40とで内側レール部41と外側レール部42と底面部40とからなる外側の大きな凹部と内側レール41とアタッチメント固定部43と底面部40とからなる内側の小さな凹部をそれぞれ形成している。したがって、太陽光発電パネル1間より水が浸入したとしても、これらの凹部が水通路となり屋根下方に水が流れるので、ビス48による固定位置に水が浸入しないようにすることができる。さらに、パネル固定部44は、縦レール部材20の中央側端部がアタッチメント固定部43よりも外側位置にあるため、仮にパネル固定部44の上面側に水が浸入したとしても、浸入した水はアタッチメント固定部43よりも外側の内側レール部41間の領域に落ちるから、アタッチメント固定部43の内側、すなわちビス48の固定位置側には水が浸入しないようにすることができる。
【0034】
また、底面部40のビス48を固定する部分は、厚肉状とされた凸部40aが形成されており、凸部40aが形成されていることで、アタッチメント固定部43で囲まれたビス48の固定位置に仮に水が浸入したとしても、アタッチメント固定部43と凸部40aにより凹部による水通路が形成され、該通路を通り屋根下方に水が流れるので、屋根面3に挿通されるネジ面に水が浸入しないようにすることができ、防水性をさらに高くすることができる。
【0035】
縦レール部材20のパネル固定部44に対しては、パネル体10の縦枠13が載置され、締結具であるボルトにより固着されている。縦枠13は、太陽光発電パネル1の周面と対向する周面部13aと、周面部13aからパネル体10の外周側に突出する平面状の固定面部13bと、周面部13aからパネル体10の内周側に突出し太陽光発電パネル1の周縁部を保持するパネル保持部13cとを備えている。このうち縦枠13の固定面部13bが、縦レール部材20のパネル固定部44に載置され、固着される。
【0036】
縦レール部材20は、中央部のアタッチメント固定部43を挟んで両側にそれぞれパネル固定部44が形成されるので、隣接する左右のパネル体10の縦枠13を、それぞれ支持固定することができる。左右のパネル固定部44は、先端部間が離隔しているため、縦レール部材20においてはアタッチメント固定部43及びビス48の上方が開放状となっている。これに伴い、隣接する両縦枠13も離隔した状態で支持固定されている。このため、パネル体10の取付けや取外しの際には、縦枠13を左右方向にスライド移動させることが可能となっている。
【0037】
また、左右のパネル固定部44が離隔しており、アタッチメント固定部43及びビス48の上方が開放状となっているため、縦レール部材20を屋根面3に対し容易に固定することができると共に、取外しも容易にすることができる。さらには、縦枠13を縦レール部材20に固定する際には、縦枠13の固定面部13bを縦レール部材20のパネル固定部44に載置して固定すればよいので、位置合わせも容易にすることができる。
【0038】
縦レール部材20のアタッチメント固定部43は、ビス48による固定位置を挟んで断面略L字状の一組の突出部からなっている。このアタッチメント固定部43には、カバー用アタッチメント46が係合固定され、カバー用アタッチメント46には縦レールカバー45が固定される。
【0039】
カバー用アタッチメント46は、下端部にアタッチメント固定部43に対し係合自在な係合部46aを備えている。カバー用アタッチメント46はアタッチメント固定部43からパネル体10の上面近傍位置までの高さを有しており、上端部には縦レールカバー45を固定自在なカバー固定部46bを備えている。
【0040】
縦レールカバー45は、カバー固定部46bに対してビス止め固定されるカバー側固着部45aと、カバー側固着部45aから左右に伸びるカバー部45bとからなっている。カバー部45bは、左右方向に隣接する縦枠13の周面部13a間に形成される空間部分を覆うと共に、パネル体10を構成する縦枠13のパネル保持部13cの周縁部にかかる位置まで伸びるように形成されており、縦レール部材20への水の浸入を防止している。
【0041】
次に、中間ブラケット21の構成につき詳細に説明する。図6には図3のうち中間ブラケット付近の拡大図を示している。この図に示すように、中間ブラケット21は、屋根面3に載置されて固定される底面部60と、底面部60の上部に形成される断面中空状の中空部61とを有して形成されている。中空部61の上面には、屋根面3の傾斜方向に沿って被係合部62と差込被係合部63とが形成されている。被係合部62は、上側に開口しており、開口側が幅狭で、奥側が幅広となるように形成されている。差込被係合部63は、棟側に向かって開口する凹状に形成されている。
【0042】
パネル体10を構成する上枠50は、中空部51の内周側に太陽光発電パネル1を保持するパネル保持部52が形成され、下面には中間ブラケット21の被係合部62に対して係合される係合部53が形成されている。係合部53は、中空部から下方に向かって突出し、先端部が幅広に形成されていて、中間ブラケット21の被係合部62に係合されることで、パネル体10の厚み方向への上枠50の移動が規制される。
【0043】
パネル体10を構成する下枠55は、中空部56の内周側に太陽光発電パネル1を保持するパネル保持部57が形成され、下面には中間ブラケット21の差込被係合部63に対して係合される差込係合部58が形成されている。差込係合部58は、中空部56から下方に向かって突出し、先端部はさらに軒側に向かって突出するように形成されていて、中間ブラケット21の差込被係合部63に対して差込状に係合されることで、パネル体10の厚み方向への下枠55の移動が規制される。
【0044】
これら係合部53と被係合部62の係合及び差込係合部58と差込被係合部63の係合により、上枠50と下枠55はそれぞれ中間ブラケット21に支持されると共に、パネル体10の下面側から風により吹き上げられた際には、パネル体10の撓みを抑えることができる。本実施形態の太陽光発電装置では、屋根面3の傾斜方向については、縦レール部材20により長手方向に沿ってパネル体10が支持されている一方、屋根面3の傾斜方向と直交する左右方向については、長手方向に沿う支持部材は設けられていないが、中間ブラケット21が設けられていることにより、パネル体10を十分に支持固定することができる。
【0045】
そして、中間ブラケット21は縦レール部材20間の距離よりも短い短尺状に形成されているから、パネル体10の下面側には、屋根面3の傾斜方向に沿う空間が形成され、太陽光発電パネル1の下面に風を通すことができる。空間が屋根面の傾斜方向に沿って形成されるから、自然対流により効率的に太陽光発電パネル1の冷却をなすことができる。
【0046】
次に、軒側端部材22について詳細に説明する。図7には、図3のうち軒側端部材22付近の拡大図を示している。なお、この図では中間ブラケット21は省略している。軒側端部材22は、太陽光発電パネル1の支持構造において、並設されるパネル体10の軒側端部に沿って設けられる長尺状の部材である。軒側端部材22は、パネル体10の軒側端部に沿って設けられることにより、パネル体10と屋根面3との間で開口する空気導入口80を形成する。軒側端部材22は長手方向に沿って同形状を有してなるから、空気導入口80も、パネル体10の軒側端部に沿って同じ形状を有するように形成される。
【0047】
軒側端部材22は、下枠55の外周面と対向し、パネル体10の軒側辺の前方を覆う前面カバー部81と、前面カバー部81からパネル体10の下枠55上面に向かって伸びる上面カバー部82とを有して構成されている。前面カバー部81の下端と屋根面3との間には大きく隙間が空いており、これが空気導入口80となる。また、上面カバー部82はパネル体10と同等の高さ、具体的にはパネル体10の上面位置と略同じ高さに配置されるから、前面カバー部81と上面カバー部82によって、空気導入口80から入った空気をパネル体10の下面と屋根面3との間の領域に導くことができる。
【0048】
空気導入口80は、比較的大きく開口しているので、空気を多く取り入れることができる一方、前面カバー部81が形成されていることにより、鳥等がパネル体10と屋根面3の間に侵入することを防止することができる。
【0049】
軒側端部材22の下方には、返し部材83が設けられている。返し部材83は、軒側端部材22と同様、パネル体10の軒側端部に沿う長尺状に形成され、空気導入口80からの空気の流路に対向する断面略L字状の返し面部83aを有している。また、返し部材83の下部には、返し面部83aの下端から軒側下方に向かって傾斜状に伸びる遮蔽面部83bが形成されている。返し面部83a及び遮蔽面部83bにより、空気導入口80からの空気の流路は、軒側端部材22の前面カバー部81に沿って一旦、上側に屈曲し、さらに軒側端部材22の上面カバー部82に沿ってパネル体10の下面側に向かうように形成される。
【0050】
返し面部83aにより、風雨が強い場合において、パネル体10下方の屋根面3に、空気導入口80から入る空気と共に雨水が浸入することを防止することができる。また、遮蔽面部83bにより、風雨によって雨水が屋根面3に沿って縦レール部材20やパネル体10の下方に浸入することを防止することができる。
【0051】
遮蔽面部83bの下端と屋根面3との間には、隙間部83cが形成されている。隙間部83cは、ごく小さい寸法に設定され、雨水が屋根面3に沿って浸入することは防止する一方、パネル体10下方の屋根面3や縦レール部材20に水が浸入した場合に、これを軒側に排水することができる。なお、本実施形態では遮蔽面部83bと屋根面3との間に隙間部83cを形成しているが、遮蔽面部83bの下端を屋根面3に当接させ、該下端部に適宜孔部を設けて排水を行うようにしてもよい。
【0052】
縦レール部材20の軒側端部には、ブロック状からなるスタータ部材70が設けられる。図8には、縦レール部材20端部へのスタータ部材70の取付前後の状態を表した斜視図を示している。図8(a)に示すように、縦レール部材20の軒側端部では、パネル固定部44が切り欠かれて挿入用孔部44aが形成されている。スタータ部材70は、挿入用孔部44aから縦レール部材20の内側レール部41間の領域に挿入される挿入部71と、パネル固定部44より上方に突出してパネル体10を仮支持するストッパー部72とが、それぞれブロック状をなすように形成されている。
【0053】
挿入部71とストッパー部72との間には、切欠部73が形成されていて、図8(b)に示すように、挿入部71を挿入用孔部44aから内側レール部41間に挿入した状態で、スタータ部材70を軒側にスライドさせることで、パネル固定部44が切欠部73内に配置される。そして、図7に示すように、切欠部73の最深部がパネル固定部44に対して当接し、スタータ部材70がそれ以上スライドしないようにすることができる。
【0054】
このように固定されたスタータ部材70は、図7に示すように、スライド方向後面が、パネル体10を構成する下枠55の外周端部と当接するパネル体支持面部76となっている。パネル体支持面部76は、パネル体10を屋根面3に取付ける際、固定するまでの間に、屋根面3の傾斜によりパネル体10の位置がずれないようにこれを仮支持する。パネル体10が縦レール部材20及び中間ブラケット21に対して固定されると、パネル体支持面部76にはパネル体10からの荷重はかからないようになっている。
【0055】
このように、縦レール部材20の軒側端部にスタータ部材70を設けたことにより、パネル体10の取付作業時において、パネル体10の位置合わせを容易にすることができると共に、屋根面3の傾斜によりパネル体10がずれることを防止することができ、取付作業を容易にすることができる。
【0056】
また、スタータ部材70は、ストッパー部72の上面が、軒側端部材22をネジ止め固定する軒側端部材固定面部74となっており、挿入部71の軒側面が、返し部材83をネジ止め固定する返し部材固定面部75となっている。図7に示すように、軒側端部材22及び返し部材83は、それぞれスタータ部材70の軒側端部材固定面部74と返し部材固定面部75にネジ止め固定されている。
【0057】
このように、縦レール部材20の軒側端部に設けられるスタータ部材70に対して、長尺状の軒側端部材22や返し部材83を固定するようにしたことで、軒側端部材22や返し部材83を固定するための部材が空気導入口80を塞がないようにすることができ、円滑に空気を取り込むことができる。
【0058】
次に、棟側端部材23について詳細に説明する。図9には、図3のうち棟側端部材23付近の拡大図を示している。なお、この図でも中間ブラケット21は省略している。棟側端部材23は、パネル体10及び縦レール部材20に対して固定され、パネル体10と屋根面3の間を通った空気を外部に排出させる機能を有している。棟側端部材23には、該棟側端部材23と屋根の棟部分を覆うように棟カバー部材24が固定される。棟側端部材23及び棟カバー部材24は、パネル体10の棟側端部に沿って長尺状に形成される。
【0059】
棟側端部材23には、パネル体10の上面に当接して固定されるパネル固定面部85と、縦レール部材20の上面に当接して固定される縦レール部材固定面部86とが形成され、パネル固定面部85の棟側端部と縦レール部材固定面部86の軒側端部を繋ぐように、屋根面3に対して垂直な後面カバー部87が形成される。また、後面カバー部87の上端から棟側に向かって断面略L字状に突出する垂下遮蔽面部88も形成されて、この垂下遮蔽面部88と後面カバー部87とが対向する。
【0060】
後面カバー部87には、パネル固定面部85より下方に下側通気口87aが形成され、この下側通気口87aによって、屋根面3とパネル体10の間の領域から、後面カバー部87と垂下遮蔽面部88が対向する領域に空気が導かれる。さらに、後面カバー部87のパネル固定面部85より上方には上側通気口87bが形成され、この上側通気口87bによって、後面カバー部87と垂下遮蔽面部88が対向する領域から、パネル固定面部85と棟カバー部材24との間の領域に空気が導かれる。
【0061】
また、パネル固定面部85の後面カバー部87より軒側には、棟カバー部材24に向かって屈曲しながら突出する立ち上がり面部89が形成されている。立ち上がり面部89には、パネル固定面部85と対向する面に排出通気口89aが形成されており、この排出通気口89aによって、空気が最終的に外部に排出される。また、下方から吹き上げる風雨に対して、立ち上がり面部89や後面カバー部87からなる通路により浸入を抑制することができる。仮に浸入したとしても、棟側の垂下遮断面部88によって、浸入した雨は垂下遮断面部88にあたって下方へ垂れ下がり、軒側へ流れていくこととなる。
【0062】
このように、棟側端部材23の後面カバー部87よりも棟側に垂下遮蔽面部88を設け、軒側から棟側に上がってきた空気を反転させて排出通気口89aから排出させるようにしたことにより、棟部分の最上部を覆うように設けられる棟カバー部材24の下部に、暖まった空気が溜まることを防止することができ、効率よく太陽光発電パネル1の冷却をなすことができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 太陽光発電パネル
2 架台
3 屋根面
10 パネル体
11 枠体
12 横枠
13 縦枠
20 縦レール部材
21 中間ブラケット
22 軒側端部材
23 棟側端部材
24 棟カバー部材
50 上枠
55 下枠
70 スタータ部材
80 空気導入口
81 前面カバー部
82 上面カバー部
83 返し部材
83a 返し面部
83b 遮蔽面部
83c 隙間部
85 パネル固定面部
86 縦レール部材固定面部
87 後面カバー部
88 垂下遮蔽面部
89 立ち上がり面部
89a 排出通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根面に太陽光発電パネルが固定される太陽光発電装置において、
前記太陽光発電パネルを保持してなるパネル体と、該パネル体を支持する架台とが設けられ、
前記パネル体は前記太陽光発電パネルの前記屋根面の傾斜方向に沿う縦辺を保持する縦枠を有し、前記架台は前記パネル体の縦枠を支持固定するパネル固定部を備えた縦レール部材を有し、該縦レール部材が所定間隔で配置されて前記パネル体が前記屋根面の傾斜方向と直交する左右方向に沿って複数並設され、前記パネル体の軒側端面に沿って、前記パネル体と屋根面との間で開口する空気導入口が設けられることを特徴とする太陽光発電装置。
【請求項2】
前記縦レール部材の軒側端部には、前記空気導入口を有する軒側端部材が固定され、該軒側端部材は並設される前記パネル体の軒側端面に沿って伸びる長尺部材からなることを特徴とする太陽光発電装置。
【請求項3】
前記軒側端部材は、前記パネル体の軒側辺前方を覆う前面カバー部と、該前面カバー部から前記パネル体側に伸びる上面カバー部とを有し、前記前面カバー部の下端と屋根面の間の隙間によって前記空気導入口が形成され、前記上面カバー部は前記パネル体と同等の高さに配置されることを特徴とする請求項2記載の太陽光発電装置。
【請求項4】
前記軒側端部材の前面カバー部と上面カバー部に覆われる領域には、前記空気導入口からの空気の流路と対向する返し面部を有する返し部材が設けられることを特徴とする請求項3記載の太陽光発電装置。
【請求項5】
前記返し面部の下方には、前記返し面部の下端から屋根面または屋根面近傍まで伸びる遮蔽面部が設けられ、該遮蔽面部と屋根面の間には孔部または隙間部が形成されることを特徴とする請求項4記載の太陽光発電装置。
【請求項6】
前記空気導入口は、該空気導入口よりも高い位置に形成される空気排出口と繋がっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽光発電装置。
【請求項7】
建物の屋根面に太陽光発電パネルを固定する太陽光発電装置の設置方法において、
前記太陽光発電パネルを保持してなり、該太陽光発電パネルの前記屋根面の傾斜方向に沿う縦辺を保持する縦枠を有するパネル体と、該パネル体を支持し、前記パネル体の縦枠を支持固定するパネル固定部を備えた縦レール部材を有する架台とを前記屋根面に固定し、
前記縦レール部材を所定間隔で配置し、前記パネル体は前記屋根面の傾斜方向と直交する左右方向に沿って複数並設し、前記パネル体の軒側端面に沿って、前記パネル体と屋根面との間で開口する空気導入口を形成することを特徴とする太陽光発電装置の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−76307(P2013−76307A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218194(P2011−218194)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】